2010年12月30日木曜日

2010年もう一度金を払っても見たい映画(順不同)

2010年邦画
『ライブテープ(*)』松江哲明監督
『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』大森立嗣監督
『書道ガールズ!!わたしたちの甲子園』猪股隆一監督
『ハーブ&ドロシー(*)』佐々木芽生監督
『キャタピラー』若松孝二監督

邦画次点
『パーマネント野ばら』吉田大八監督
『カケラ』安藤モモ子監督
『時をかける少女』谷口正晃監督
『川の底からこんにち』石井裕也監督

2010年洋画
『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』サーシャ・ガヴァシ監督
『インビクタス 負けざる者たち』クリント・イーストウッド監督
『NINE』ロブ・マーシャル監督
『息もできない』ヤン・イクチュン監督
『クロッシング』キム・テギュン監督
『クレージー・ハート』スコット・クーパー監督
『オーケストラ!』ラデュ・ミヘイレアニュ監督
『ソウル・パワー(*)』ジェフリー・レヴィ=ヒント監督
『ゾンビランド』ルーベン・フライシャー監督


洋画次点
『彼とわたしの漂流日記』イ・ヘジュン監督
『ぼくのエリ 200歳の少女』トーマス・アルフレッドソン監督
『ジョニー・マッド・ドッグ』ジャン=ステファーヌ・ソヴェール監督
『エンター・ザ・ボイド』ギャスパー・ノエ監督
『ハート・ロッカー』キャサリン・ビグロー監督
『ジャームス 狂気の秘密』ロジャー・グロスマン監督
『ザ・インフォーマント!』スティーブン・ソダーバーグ監督
『ベンダ・ビリリ! ~もう一つのキンシャサの奇跡(*)』ルノー・バレ&フローランド・ドラテュライ監督

金返せ。
『ACACIA』辻仁成監督
『ナチュラル・ウーマン2010』野村誠一監督
『ソラニン』三木孝浩監督
『ランブリングハート』村松亮太郎監督
『東京島』篠崎誠監督
『人間失格』荒戸源次郎監督

女優
寺島しのぶ(キャタピラ)
菅野美穂(パーマネント野ばら)
ちすん(ヒーローショー)
安藤サクラ(ケンタとジュンとカヨちゃんの国)
成海璃子(書道ガールズ!!わたしたちの甲子園)
桜庭ななみ(書道ガールズ!!わたしたちの甲子園)
近衛はな(獄[ひとや]に咲く花)
中村映里子(カケラ)
黒川芽衣(ボーイズ・オン・ザ・ラン)

2010映画(162本)

1月井上昭『陸軍中野学校 密命』井上昭『陸軍中野学校 開戦前夜』森一生『陸軍中野学校 雲一号指令』田中徳三『陸軍中野学校 竜三号指令』川頭義郎『風の視線』石井輝男『黄色い風土』押井守『アサルトガールズ』犬童一心『ゼロの焦点』スティーブン・ソダーバーグ『ザ・インフォーマント!』ロジャー・グロスマン『ジャームス 狂気の秘密』田中徳三『大殺陣 雄呂血』久松静児『喜劇 駅前飯店』池広一夫『ひとり狼』竹内英樹『のだめカンタービレ最終楽章前編』石田民三『花つみ日記』若松孝二『壁の中の秘事』曽根中生『大人のオモチャダッチワイフレポート』曽根中生『悪魔の部屋』鈴木清順『殺しの烙印』松江哲明『ライブテープ』木下恵介『女の園』山本嘉次郎『春の戯れ』マイケル・ムーア『キャビタリズム マネーは踊る』佐伯幸三 『喜劇駅前女将』久松静児『喜劇駅前温泉』吉村公三郎『その夜は忘れない』大島渚『日本の夜と霧』曽根中生『博多っ子純情』曽根中生『天使のはらわた 赤い教室』村松亮太郎『ランブリングハート』スパイク・ジョーンズ『かいじゅうたちのいるところ』山本薩夫『忍びの者』山本薩夫『続忍びの者』曽根中生『嗚呼!!花の応援団 男涙の親衛隊』曽根中生『新宿乱れ街 いくまで待って』ジェームス・キャメロン『アバター3D』帯盛迪彦『高校生ブルース』小谷承靖『はつ恋』広瀬襄『スプーン一杯の幸せ』

2月木村恵吾『やっちゃ場の女』山根成之『さらば夏の光よ』藤田敏八『帰らざる日々』鈴木清順『暗黒街の美女』豊田四郎『雁』三隅研次『なみだ川』藤田敏八『妹』山根成之『九月の空』国府拓『ヤノマミ~奥アマゾン・原初な森に生きる~』内田吐夢『暴れん坊街道』三浦大輔『ボーイズ・オン・ザ・ラン』田中徳三『手討』山田洋次『おとうと』ジェームス・キャメロン『アバター』島耕二『処女受胎』鈴木英夫『青い芽』丸山誠治『憎いもの』クリント・イーストウッド『インビクタス 負けざる者たち』豊田四郎『波影』岡本喜八『若い娘たち』森一生『博徒ざむらい』サーシャ・ガヴァシ『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』リチャード・カーティス『パイレーツ・ロック』

3月アラン・レネ『去年マリエンバートで』篠田正浩『暗殺』家城巳代治『姉妹』荒戸源次郎『人間失格』ペドロ・アルモドバル『抱擁のかけら』ヴェルナー・ヘルツォーク『バッド・ルーテナント』谷口正晃『時をかける少女』野村芳太郎『春の山脈』マキノ雅弘『やくざ囃子』ロブ・マーシャル『NINE』池広一夫『おんな極悪帖』

4月三木孝浩『ソラニン』増村保造『妻は告白する』谷口千吉『潮騒』今村昌平『果てしなき欲望』岡本喜八『地獄の饗宴{うたげ}』山本薩夫『台風騒動記』安藤モモ子『カケラ』川村泰裕『のだめカンタビーレ 最終楽章』池広一夫『影を斬る』鈴木英夫『その場所に女ありて』算正典・鈴木英夫・成瀬巳喜男『くちづけ』

5月石原興『獄[ひとや]に咲く花』野村誠一『ナチュラル・ウーマン2010』三池崇史『ゼブラーマンⅡ ゼブラシティの逆襲』カイル・ニューマン『ファンボーイズ』キム・テギュン『クロッシング』ジャン=ステファーヌ・ソヴェール『ジョニー・マッド・ドッグ』鈴木英夫『花の慕情』鈴木英夫『殺人容疑者』勅使河原宏『砂の女』キャサリン・ビグロー『ハート・ロッカー』ニール・プロムカンプ『第9地区』石井裕也『川の底からこんにちは』猪股隆一『書道ガールズ!!わたしたちの甲子園』新藤兼人『悪党』ヤン・イクチュン『息もできない』

6月ギャスパー・ノエ『エンター・ザ・ボイド』ジョン・ファブロー『アイアンマン2』大森立嗣『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』辻仁成『ACACIA』井筒和幸『ヒーローショー』中島哲也『告白』吉田大八『パーマネント野ばら』スコット・クーパー『クレージー・ハート』イ・ヘジュン『彼とわたしの漂流日記』大庭秀雄『命美わし』

7月中村登『鏡の中の裸像』塚本晋也『鉄男 THE BULLET MAN』阪本順治『座頭市 THE LAST』トーマス・アルフレッドソン『ぼくのエリ 200歳の少女』中平康『おんなの渦と淵と流れ』米林宏昌『借りぐらしのアリエッティ』本広克行『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!』滝沢英輔『しろばんば』スティーブン・ソダーバーグ『ガールフレンド・エクスペリエンス』ジガ・ヴェルトフ『キノプラウダNo.1ー9』

8月ジェフリー・レヴィ=ヒント 『ソウル・パワー』スティーヴン・キジャック『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実』ラデュ・ミヘイレアニュ『オーケストラ!』伊藤俊也『ロストクライム-閃光-』沖田修一『俺の切腹』福田雄一『ヒューマンドキュメンタリー 遠き少年の日々』大竹まこと『Dark on Dark』きたろう『ドキュメント 中村有志』石井輝男『いれずみ突撃隊』石井輝男『温泉あんま芸者』クリストファー・ノーラン『インセプション』ルーベン・フライシャー『ゾンビランド』村山三男『樺太1945年夏 氷雪の門』ルノー・バレ&フローランド・ドラテュライ『ベンダ・ビリリ! ~もう一つのキンシャサの奇跡』ロジェ・ヴァディム『素直な悪女』篠崎誠『東京島』小栗旬『シュアリー・サムデイ』

9月長谷川安人『集団奉行所破り』グラント・ヘスロヴ監督『ヤギと男と男と壁と』李相日監督『悪人』

11月ロバート・ログバル『神の子どもたちはみな踊る』ルノー・バレ&フローランド・ドラテュライ『ベンダ・ビリリ! ~もう一つのキンシャサの奇跡』石井隆『ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う』中川翔子『七瀬ふたたび~プロローグ~』小中和哉『七瀬ふたたび』若松孝二『キャタピラー』冨永昌敬『乱暴と待機』カン・ウソク『黒く濁る村』小津安二郎『出来ごころ』小津安二郎『東京の宿』小津安二郎『長屋紳士録』小津安二郎『一人息子』廣木隆一『雷桜』

12月佐々木芽生『ハーブ&ドロシー』山崎貴 『SPACE BATTLESHIP ヤマト』黒澤明『野良犬』黒澤明『用心棒』黒澤明『悪い奴ほどよく眠る』黒澤明『いきものの記録』黒澤明『椿三十郎』黒澤明『どですかでん』黒澤明『まあだだよ』黒澤明『酔いどれ天使』

2010年12月25日土曜日

朝日新聞とTBS。

    ようやく、朝日新聞の購読を止めた。物心がついてから、少なくとも一般紙は、朝日以外取ったことはない。サラリーマン時代の後輩には、新聞を取れ、それもこの仕事なら朝日新聞だと言って、朝日でないと文化程度が疑われると冗談半分、本音は、エンタメ情報は記事も広告も他紙では取りこぼすと教えて来た。
  そんな朝日だが、この数年の記事のレベルの低下は酷い。現代のジャーナリズム云々を言うのではなくとも、今まで自分はエンタメ業界にいて、朝日の記者たちの露骨な選民意識に辟易し、嫌悪しながらも、文化面は他紙を圧倒し、朝日に取り上げられることのみがマーケットを動かすことを思い知らされてきたし、広告にしても、3面記事、社会面下の小枠でも、他紙に比べ割高でも、費用対効果は絶対的だった。今だから言うが、事務所対策のためと割り切って他紙に、はるかに安い料金で、大きなサイズの広告も打っていたのも事実だが、売上げに影響はなかった。
    しかし、今の朝日新聞の広告は、出版社と、中高年向けの通販ばかりだ。これなら、出版情報であれば、書店に行けば充分だ。中高年向けの健康通販には興味深深だが、今の財布と相談すると、衝動買いすることもできない(苦笑)。他紙を圧倒していた筈の社会面下のコンサート広告も、最近は費用対効果が低く、極端に減っている気がする。不動産の購入を検討したり、パチンコ屋の新台導入に関心のない自分には、折込チラシもいらなくなった。決定的だったのは、文化面の音楽と映画の今年の総括の記事だ。中学生、失礼、小学生の感想文だ。記者はよく署名記事で掲載したと感心する。
  とはいえ、新聞不要で、ネットがあれば済むと言う世代ではないのが面倒だ。しかたなしに、近くの図書館で各紙を丹念に読み比べた結果、今52歳の自分は、(少なくともハイハイして新聞紙を舐めたり、くしゃくしゃにしたり、破ったりするのがファーストコンタクトであろうから)半世紀に渡る朝日新聞から東京新聞に宗旨替えすることになったのだ。

  昨日帰宅してTVをつけると「小田和正 - クリスマスの約束-2010-」をやっている。横浜赤レンガでやっているライブ自体は悪くない。しかし、見ていて違和感を感じる。参加しているミュージシャンもアレンジも、好き嫌いは別にして悪くはない。むしろ、ここ数年の音楽番組の中では、良質で丁寧に企画されているものだろう。
    しかし、決定的なのは、ライブ収録そのものだ。かって、TBSは、「輝く!日本レコード大賞」、「TBS歌のグランプリ」、「ロッテ歌のアルバム」、「サウンド・イン“S”」、「東京音楽祭」、「ザ・ベストテン」・・・。ヤング720、オーケストラがやってきたまで入れると、少なくとも、音楽の中継番組には、録画であろうと生放送であろうと、他局を凌駕するレベルがあったと思う。
  しかし、この番組は何だ!?出演者に遠慮しているのか、中途半端なカメラ位置と妙なタイミングでのスイッチング。この番組は、小田和正のイベントを中継させてもらっているのではなく、TBSの音楽番組ではないのか?ディレクター、カメラマン・・・TBSの優秀な職人たちは、どこに行ってしまったのだ。少なくとも、TXを含めた民放各局、NHK・・・他局ではこれは無い気がする。まあ、無料放送だから、こういうレベルでオンエアし、有料チャンネルやペーパービューや有料パッケージ用に幾つかのカメラでの収録映像を取ってあるとでも言うのだろうか(苦笑)。出演者は、プレイバックをチェックしなかったのだろうか。
  あとは、レコ大だ。今年こそ、ようやく娑婆っけが抜けた非業界人として、生放送を見て、音楽番組として成立しているのか確かめよう。

2010年12月24日金曜日

今日も飽きもせず黒澤2本。

    午前中は、大門の睡眠障害クリニック。酒を飲んだ日以外は、割といい数値だと言われる。そりゃそうなんだが…。

    京橋フィルムセンターで、生誕百年 映画監督 黒澤明

    93年大映/電通/黒澤プロ黒澤明監督『まあだだよ(159)』
    教室の青いドア。始業のベルが鳴っている。学生たちは騒がしい。ドアを開けて詰め襟の学生が「来た!」と叫びながら入って来て静かになる。先生(松村達郎)入ってくる。教壇の前に紫煙が漂っている。「誰か煙草を吸っていたな。教室で煙草を吸ってはいけない。しかし、いけないと言われることはやりなさい」歓声を上げる学生たち。「私も、教員室で、始業のベルが鳴ると、どうしても1本吸いたくなる。ついもう1本、2本と吸ってしまって遅れてしまうのだ」「今日はどうして?(早い?)」と言う声に、「私は先生と言われて、30数年が経った。しかし、今日をもって先生を辞める」「どうしてですか?」「私もどうやら、書いたものが売れるようになったからだ。もちろん私は、若い諸君と語り合うこの仕事は嫌いでなはい。しかし、二兎を追う者、一兎も得ずの例えもある。物書きとして、その位の覚悟は必要だとも思う」高山(吉岡秀隆)「先生!確かに先生は僕たちにドイツ語を教えてくれています。しかし、本校の卒業生である私の父も同じですが、今でも先生のことを先生先生と慕っています。そして先生は金無垢だって・・・」「ありがとう。30数年わたしの前を多くの学生が通り過ぎて行った。全ての学生の顔と名前を記憶している訳ではない。しかし、目を開けたまま、眠っていた学生の名前は、今でも忘れることは出来ない。高山!それは君のお父さんです」爆笑する学生たち、頭をかく高山。学生皆で“仰げば尊し”を歌う。目頭が熱くなり、ハンカチを出して鼻をかむ先生。
   東京、昭和18年。大きな荷物を一軒家に運び込む男たちがいる。先生のかっての教え子たちだ。高山(井川比佐志)桐山(油井昌由樹)沢村(寺尾聡)多田(平田満)古谷(渡辺哲)北村(頭師孝雄)三井(松井範雄)平野(杉崎昭彦)村山(冷泉公裕)太田(岡本信人)石川(竹之内啓喜)・・・。がやがやと荷物を持ち運ぶが、どうも落ち着かない先生が邪魔になっていると、甘木(所ジョージ)「奥さん!先生が一番邪魔なのでどこかにしまって下さい」爆笑する男たち。窓際に椅子を用意され座る先生。文机を見て「それは、玄関に置いてくれ。来客を断るために、そこで仕事をするのだと言う。
   荷物が片付き、引越し蕎麦を皆で食べていると、先生の奥さんが心配そうな顔で、「どうも、この家は構えの割にお家賃が安くて気になっていたのだけれど、このお蕎麦を頼みに行って、お店の方に聞いたけれど、どうもこの家は、泥棒に入られやすいのですって」「大丈夫だ。盗まれぬような物もない」安心しない奥さんに「泥棒に入られない方法を考えた」と言う先生。その晩、気になった高山と甘木が家の前に立っている。高木「先生はああ言ったが、心配だ」甘木「だからと言って、忍び込むと我々は本当の泥棒になってしまう」「だが、泥棒になった気持ちで忍び込んでみないと、本当にどうかはわからないものだ」「この潜り戸は閂が降りているが」「では、僕が塀を乗り越えて、潜り戸を開けるから入って来い」塀をよじ登り簡単に潜り戸を開ける高木。家の中はシンとしている。庭に廻ると雨戸が開いており「泥棒入口」と貼り紙がしている。忍び笑いをする二人。
    靴を脱いで、家に上がると、「泥棒通路」とあり、その先の部屋は「泥棒休憩所」という貼り紙と煙草と灰皿がある。そして視線を上げると「泥棒出口」だ。二人の忍び笑いは止まらない。これなら大丈夫だ。再び庭に出て、潜り戸から外にでる二人。甘木「どうしても潜り戸が気になるなあ。もう一度、閂を掛けてから塀を乗り越えて来たまえ」向うから巡査が歩いてくるのに気がついて、慌てて離れて歩きはじめる二人。すれ違う巡査(桜金造)に敬礼をして、暫くして離れたところで爆笑する二人。
   しばらくして、十数名の教え子たちは先生に呼ばれて集まった。玄関に「面会日1日、15日。他の日訪問無用」と貼り紙がある。先生は、玄関に文机を置いて、本を読んでいる。「今日お邪魔してよかったんですか」「まあ、上がりなさい」勝手知ったる他人の家で、多人数なので、襖を外し準備を始める男たち。「座布団は5枚しかないので、ワシだけ使うぞ」「今日は?」と先生に尋ねると「実は、私は還暦を迎えたのだ。自分の誕生日を忘れていたのを、親類から鹿の肉がお祝いとして贈られてきたので、思い出した位だ」「それはおめでとうございます」とみんな唱和する。「ということで、鹿肉を皆に振舞おうと思ったのだ」奥さん「何人いらっしゃるかしら」「17人です」「七輪とお鍋足りるかしら?」高山「足りなければ、買って来ますよ」宴会の支度が出来、皆が囲む「みんな足を崩したまえ。私はこの方が楽だから正坐をしているのだ」
    「おめでとうございます」「奥さんもご一緒に」「いや家内は、馬肉は駄目なんだ」「馬?」「そうだ。みんなに沢山食べてもらおうと、ひょっとして鹿肉だけでは足りないではないかと思って、肉屋に買いに行ったのだ。今日び、牛、豚、鶏肉は手に入らん。馬肉と鹿肉で、馬鹿鍋としゃれたわけだ。しかし、肉屋に行って馬肉を買っている時に・・・」肉屋(谷村昌彦)が肉を捌いているのを、先生が待っていると、馬方(都家歌六)に曳かれた馬が通りかかる。馬はふと立ち止まり、振り返って肉屋の前に立つ先生を大きな目で見つめる馬。心なしか哀しげな表情だ。「ということで、よもや陸軍士官学校教員時代の自分の馬に再会するとは・・・。馬の目は大きくて、参った・・・。さあ、そろそろいいだろう。どんどん食ってくれ」「いただきます」「うまい!!」鍋に箸を伸ばす男たち。甘木「しかし、空襲警報が鳴らないでくれるといいなあ。闇鍋になってしまう」「先生は暗闇がお嫌いでしたね」「そうだ。みんなは怖くないか。私は灯りを消すのが嫌で、電気をつけたまま、寝るので空襲警報は嫌いだ。みんなは暗闇は平気か?」「大丈夫ですよ」「平気ですよ」「それは勇気の問題ではなく、想像力の問題だ。暗闇に何かいるのではないか?と想像しだすと、本当に恐ろしい」しばらく経つと空襲警報が鳴り始める。街灯や近所の家庭の灯りが次々に消されていく。
   しかし、その先生の家も空襲で焼けてしまった。瓦礫の山、物置小屋のようなところに先生と奥さんが住んでいる。梅雨の雨の中、リヤカーを押して先生の小屋に家財道具や酒を運んでくる高山、甘木、桐山、沢村の4人。奥さんが頭を下げる。「上がってくれと言いたいが、私と家内で一杯だ」「いや、必要なものがあれば言って下さい。何でも持ってきますから」「とりあえず、傘をくれないか」高山「この傘を差し上げますよ」「うちの洗面所は新築だが、屋根がないので、今日のような日は困ったものなのだ」焼けたトタン板で四方を囲んだだけの便所がある。「空襲で自宅を焼け出されて、この近くまで来て、この小屋で休んでいると、バロンがやってきたのだ」「バロン?」「男爵じゃよ。この焼けた家の持ち主だ」「男爵がここに住んでいたんですか?」「いや、その門番が住んでいたそうだ。一族・・・」「全て焼けてしまった。私のこの好きな方丈記だけを何とか持って逃げた。鴨長明も都の災厄により、日野山に一丈四方の庵を建て暮らして、この日記を書いたのだ。思えば、この小屋も鴨長明の庵じゃよ。まあ、向こうは風流な水音がしたらしいが、ここは酔っ払いの立ち小便の音しか聞こえないが・・。しかし、立ち小便というのは、幾ら注意をしても、同じ場所にするのが人間の心理らしい」高山「鳥居を描いてもご利益はないようですからね」「そこで、私は工夫をしたんじゃよ。あの壁の向こうだ」4人が雨の中、確かめに行くと、「立ち小便無用」という文字の下に鋏の絵が書かれている。「こりゃ愉快だ」「これは縮みあがるというものだ」大笑いをする4人。突然雷鳴が聞こえる。小屋に戻ると先生の姿がない。奥さんは「こんな時でも、雷よけのまじないの線香が必要なんですよ」と線香に火をつけている。先生は、夏掛け布団を頭から被って震えている。甘木「ようやく、梅雨も明けるようだな・・・」
      いつの間にか、季節は夏になっている。MPが乗ったジープが焼け跡を走って行く。日本は敗戦したようだ。汗を拭きながら、高山たち4人が先生を訪ねて来ている。汗を拭きながら、「人間生きていると物が増えるものだねえ。空襲で全てを失った筈が、気がつくと、こんなに手狭になった」ジョニ黒の瓶「これは、近所の薬屋が作ったものだが、薬用アルコールに色々なものを混ぜてあるのだ」甘木「これは効くなあ」「いつまでも、先生をこんなところに住まわせておく訳にはいかない。我々で何とかしますよ」「おいおい君それはいけないよ」「本当にそうですわ」
   しかし、酒を飲むうちに、珍しく先生は弱気になった。「いや、乏しいながら、戦争中は食糧の配給はあったが、今は全く手に入らない・・・それに、こんな1畳足らずのところで暮らして、つくづく嫌になったよ」高山が「先生!!止めて下さい。先生は仰ったではありませんか。ここは鴨長明の庵だと・・・・」「すまん、年寄りの愚痴だ」思いがけず、弱気な先生の姿に顔を見合わせる4人。小屋で暮らす先生夫婦、四季が移って行く。その光景は美しい。
   4人が再び先生のもとを訪ねている。甘木「先生を囲む会を作ります。先生の還暦から1年。そろそろ亡くなるのかと思っているが、もう1年。まあだかい?まあだだよ、まあだかい?まあだだよ?もういいかい?まあだだよ。いつまでも死なない先生に、そろそろかい?と呼び掛けることで、摩阿陀会と名付けました」
   先生が、背広姿で靴を履いている。「では、行ってくるよ」「行ってらっしゃい」
   ビアホール、先生が座る後ろには「第1回摩阿陀会」という看板が下がっている。数十名の教え子たちが先生を温かい眼差しで見つめている。幹事の高山「還暦の誕生日から1年。毎年、この会を開催して、先生にまあだかい?と呼び掛けましょう」高山「物資厳しい中、諸君のお陰で、色々な物があつまった。今日は大いに飲もう。まずは、乾杯の前に、そこにある大コップのビールを先生に一息で飲みほしていただこう」先生うれしそうに「右隣に座っていらっしゃるのは、私の主治医の小林先生(日下武史)。左に座っていらっしゃるのは、私の葬式を上げてくれる坊さんの亀山さんだ。」小林(日下武史)亀山(小林亜星) も、にこにこと先生を見つめている。「準備万端だというところだが、諸君のもういいかいと言う問いかけに、私はまあだだよと応える」ぐびぐびと大ジョッキのビールを飲む先生。ついには飲み干した。高山「では、乾杯!!!」一同唱和「おめでとうございます!!!」
     高山「では、みんな、酔って訳がわからなくなってしまう前に、一言ずつスピーチを頼む。ただし手短に」北村(頭師孝雄)「スピーチは短い方がいいので・・・先生!ばんさーいい!!」ヤジるものも「おいおい!!いくら短いのがいいと言ってもそれだけか!!」「短いから祝辞だ。長いと弔辞になる」一同爆笑。?「私は口下手なので、気の効いたことを喋れないので、稚内から鹿児島までの駅名を全ていいます。稚内、○○・・・・・・」相当な変わり者だが、みな慣れているようで、駅名を読み上げ続ける?を無視して、次々に挨拶に立つ、教え子たち。「先生は太陽だ!みんなを照らしている」「持ち上げ過ぎだ!!」「いや、だったら月だ。月だから、まん丸い時もあれば、半分になったり、細くなったり、時には無くなったりする・・・」一同爆笑。「出~た。出~た。月が。まあるい、まあるい、まん丸い、ぼーんのような月が・・・」大皿を掲げた甘木が出てくる。歌詞に合わせ、高山、桐山、沢村が背広の上着が雲だ。最後に先生の後ろに立ち、後光が差しているようにかざす甘木。勿論、その間にも、駅名は続いている。
   みんな手に手にビール瓶やお銚子を持って先生にお酌をしようと集まって来る。「一人でこんなに相手をするのは無理だ。ここで、もう一度乾杯をして、あとは各自やろうじゃないか」
    甘木「おいちにをやろう!!」「そうだ!そうだ!」沢村が手風琴を持って前に出る。全員が立ち上がって、並び、前の者の方に両手を掛ける。和尚も急いで立ち上がって行列に加わる。おいちにの歌を先生歌う。みな本当に楽しそうだ。
    小林先生が、先生にビールを注ぐ。駅名は、ようやく「南鹿児島、鹿児島!!終わりました!!」拍手する先生。気がつくと3人を残して、ホールには誰もいなくなっている。不審顔の先生。すると、和尚を先頭に、高山たちが担いだ棺桶(テーブルの上に、テーブルクロスを掛けた人間が横たわっているもの)、みなの行列が入って来る「おお、私の葬式か?!」先生の前まで歩いてくると止まって、棺桶を下す。突然、遺体が立ち上がる。甘木だ。「まああだかい!!?」先生「まあだだよ」全員「まああだかい!!!」「まああだだよ~」その繰り返しはどんどん大きくなっていく。何だろうと道行く通行人が店の入口から覗いている。しまいには、サイレンを鳴らしたMPのジープまでやってきた。あまりの騒ぎに誰かが通報したのだろうか。険しい表情のMPたちは、中を覗き、いい年齢をした男たちの大宴会を苦笑して眺め、笑いながら帰って行った。次々に何事だろうと、入って来る通行人、浮浪者、パンパン・・・。
   再び、高山たちがやってきて、土地が見つかったので、先生の家を建てると言う。恐縮する先生に、戦後の未払いの印税を支払うことで出版社の同意も取り付けたと説明する高山。どういう家がいいですか?という甘木に、先生は庭に池が欲しいと言う。池には魚を多数飼いたい、しかし魚は一方向に泳ぐ習性があるので、小さい池ではグルグル廻らざるをえず、背骨が曲がってしまうと可哀想なので、大きな池が欲しいという先生。敷地の関係で、あまり広い池は作れないかもというと、ドーナツ型の池にして、その上に家を建てればよいという。思案顔の男たち。すまなそうな奥さん。
   いよいよ新居が建った。高山たちに、嬉しそうに庭を案内する先生。ドーナツ型の池を造るために、建物は狭くなったが、「1畳で暮らしていた生活を思うと、ここはまさに“金殿玉楼”だよ」


「みんな、自分の本当に好きなことを見つけて下さい。本当に自分にとって大切なものを見つけるといい。見つかったら、その大切なもののために努力しなさい。きっとそれは君たちの心のこもった立派な仕事になるでしょう」

    

    48年東宝黒澤明監督『酔いどれ天使(160)』
    黒く澱んだどぶ。メタンガスの泡が浮かんでいる。ギターを爪弾く男が一人。ドブ池に、石を投げるチンピラが二人。
    おんぼろな診療所がある。そこの医師の真田(志村喬)「どうしたんだ!?」ヤクザの男松永(三船敏郎)苦痛に顔を歪めながら「ドアに手を挟まれたんだ。で、釘が出ていたんで…」「ふーん、釘がね…」腕に巻いたネッカチーフを解いて、消毒をしてやる真田。「少し痛いよ…」「うっ!」ヒンセットで、傷口から弾丸を取り出し「つまり、これが釘ってわけか…」「迷惑はかけねえ!つまらねえ出入りがあって…」いきがる松永「駅前のマーケットで松永って言やあ、誰でも知ってるぜ。若けえ者が、時々世話になってるそうだな…」真田「おーい!婆さん!蚊取り線香持って来てくれねえか!……しょうがねえなあ、寝ちまったか…」暑い診療室に風を入れようと、ドアを開けっ放しにしようとするが、なかなか思い通りにならず苛つく真田。「前もって言っておくが、治療代は高いよ。無駄飯食っている奴らからむしり取ることにしてるんだ」「痛えなあ!麻酔薬ねえのか!?」「おめえたちに使う麻酔薬なんかねえ」乱暴に傷口を縫い合わせる真田。松永空咳をする。「風邪だよ…」「一度ちゃんとレントゲンを撮ってみろ。結核の可能性もある」「診てくんねえのか」「」聴診器当てたり、胸を指でトントンやったりしても分かりゃしない。でも医者がもったい付けるためにやるんだ。でも、一応やってやろう」松永の胸を叩き、聴診器を当て、「うーん」「分かんねーのか」「いや、分かる。胸にこれ位の穴が開いているぞ」

    南新町マーケット

2010年12月23日木曜日

今日も、またまたまた黒澤2本。

      京橋フィルムセンターで、生誕百年 映画監督 黒澤明
      62年黒沢プロ/東宝黒澤明監督『椿三十郎(157)』
     鄙びたお堂がある。そこに井坂伊織(加山雄三)が駆け込んでくる。寺田文治(平田昭彦)「駄目か!?やっぱり」伊織「うん。とにかく叔父貴は話にならん。我々の決意を述べて奸物粛清の意見書を渡すと、ざっと目を通して"これでも城代家老だ。これくらいのことはお前達に言われないでも分かっている」寺田「馬鹿な! じゃ、なぜ今まで・・・」伊織「殿様ご出府中、その留守を預かる城代家老が、次席家老と国許用人の汚職を知りながら、なぜ今日まで見逃していたのか。すると、にやにや笑って"おい。俺がその汚職の黒幕かもしれないぞ。お前達はこの俺を少し薄のろのお人よしだと思って、案山子代わりにかつぎ出すつもりらしいが、人は見かけによらないよ。危ない危ない。第一、一番悪い奴はとんでもない所にいる。危ない危ない" そう言うと、いきなり意見書をびりびりだ」
    寺田「で、大目付菊井さまの所へ行ったのか?」伊織「そうだ。菊井さんはやっぱり話が分かる。初めのうちは困った顔をして、ご城代と相談の上でと逃げを打ってたが、俺が今の伯父の話をするとびっくりしてね。菊井殿は、お主らの忠義はよく分かった、直ぐに同志の者たちを集めよと仰有って下さった」保川邦衛(田中邦衛)「やっぱり大目付さまだ。うすのろのお人好しを、案山子を担ぐのとは訳が違う!」9人の若侍、守島隼人(久保明)守島広之進(波里達彦)河原晋(太刀川寛)関口信伍(江原達怡)広瀬俊平(土屋嘉男)八田覚蔵(松井鍵三)らは口々に熱い思いを語り合っていると、裏から大欠伸が聞こえ、薄汚れた素浪人(三船敏郎)が伸びをしながら現れた。身構え、刀に手をやる若侍たち。「おめえたちの話を聞いていると全く下らねえなあ」「盗み聞いてたのか!?」「ここは旅籠賃取られないからな。おれが眠っていたら、おめえたちが勝手に話しだしたんじゃねえか。しかし、知らねえから、話してる奴よりも話しが分かる。おれはどっちの面(つら)も知らねえが、城代家老はつまらねえ面をしてるだろ、やっぱり話せる、やっぱり本物だなんてところを見ると見かけだけは十分な大目付。危ねえ、危ねえ、城代家老が本物で、大目付が偽物だぜ。城代家老が言う通り、一番悪い奴が、とんでもねえところかもしれねえぞ。大目付の役目は何事も揉め事を起こさねえ筈なのに、おめえたちの義挙を後押しするてえのはおかしいぜ。岡目八目もいいところだ」伊織「確かに!しかし、今晩ここで落ち合うことに!?」
    浪人、御堂の外の様子を見て、「見な、蟻の這い出る隙間もねえや」若侍たちが覗くと、沢山の侍たちが、御堂を取り囲もうと押し寄せて来るところだった。「大目付菊井殿の手の者である。十重二十重に取り囲んでいる。神妙にしろ」若侍たち顔を見合わせ「こうなったら、生きるも死ぬも、我らが九人!」飛び出して斬り込もうとする青大将。浪人「待て!俺も入れて十人だ。おめえたちを見ていると、危なっかしくてしょうがねえ」
    突然御堂の戸が開き、浪人一人が出てくる。「うるせえな!俺がいい気持ちで眠っていたら…、気をつけろ、俺は機嫌が悪いんだ」捕り方たちが、御堂に入ろうとすると「てめえら、俺の寝床に、勝手に土足で上がるんじゃねえ!」



     城代家老睦田弥兵衛(伊藤雄之助)の役宅。広間に睦田と奥方(入江たか子)やって来る。若侍九人が待っている。「あのお方は?」「あなた、命の恩人のお名前をお忘れですか、椿さまですよ」「千鳥お呼びしなさい、今回のことを話しておく。残念ながら、菊井は自害してしまったが、本当はわしは、竹林や黒藤のように、隠居のような穏便な処置をしたかった。わしの不徳とするところじゃ」
    
    椿「こいつは俺と似ている。抜き身だ。でも、あの奥方が言ったように、本当にいい刀は鞘に入っている。お前らは、ちゃんと鞘に入っていろよ!来るな!!叩っ斬るぞ!!あばよ!」手をついて平伏する若侍たちを残して去って行く三十郎。

室戸半兵衛(仲代達矢)見張りの侍木村(小林桂樹)腰元こいそ(樋口年子)千鳥(団令子)次席家老黒藤(志村喬)用人竹林(藤原釜足)大目付菊井六郎兵衛(清水将夫)

     70年四騎の会/東宝黒澤明監督『どですかでん(158)』
    都電が走っている。線路すれすれに建っているボロい店。てんぷらと書いてある。都電を眺めている少年六ちゃん(図師佳孝)。中で仏壇に向かい、必死にお題目を唱える母親おくに(菅井きん)。一間しかない小さな家の中は、六ちゃんが描いた電車の絵で一杯だ。壁、ガラス戸の夥しい数の絵はカラフルだ。おくにの隣に座り、仏壇に深々と頭をさげ「ご僧主さま、毎度のことですが、かあちゃんの頭がよくなるよう、よろしくお願いいたします。ナンミョウレンソ、ナンミョウレンソ」と拝む六ちゃん。悲しい目のおくにを見て「どうして、そんな顔をするのさ、かあちゃん、何か心配なのかい?」「何もないよ」「かあちゃんは、何も心配しなくてもいいよ」おくにの顔を覗き込み、再び深深と頭を下げ、「お僧主さま。毎度毎度で、飽き飽きするかもしれませんが、かあちゃんのことよろしくお願いいたします。柱時計が鳴る。慌てて立ち上がり、柱にかかった都電の操縦棒を手に取り帽子を被るような動作をし、軍手を手にはめ、「それじゃ、行って来ます。今日は8往復して、昼休みしてまた8往復だから、帰りは夕方になるよ」腰に弁当箱を入れた風呂敷を縛り付け、家の外に出て、目の前の瓦礫の山を登って行く六ちゃん。泣きながら立ち上がるおくに。家中に描かれた電車の絵を眺め、再び泣きだし座りこむ。
   六ちゃんは塵の山を歩き、少し開けた石が敷き詰められた場所に出る。ここは六ちゃんの操車場だ。そこに電車が停まっているかのように、一つ一つの箇所を点検する。「しょうがねえな、整備の野郎。何やってやがる。いくら古いからと言ってもなっちゃいねえな」圧力弁やドアの開閉、パンタグラフの操作など一つ一つの動作でほんものの音はするが、勿論電車は、六ちゃんの頭の中にしかない。「さあ!発車進行!・・・ど・で・す・か・で・ん・・・ど・で・す・か・で・ん・・どですかで・ん・・どですかでん・どですかでん・どですかでんどですかでん」瓦礫の中に一本通った道を力強く進む六ちゃん。「どですかでん、どですかでん」と駆ける六ちゃん。
    近所の子供たちが「電車きちがい!!電車きちがい!!」と囃し立て、石を投げるが、六ちゃんの耳には届かない。六ちゃんは突き当たりにある白い家の前で停まる。ここが終点のようだ。六ちゃんは中に入り、たんばさん(渡辺篤)に声を掛ける。「たんばさんおはよう」「かあちゃんは、信心しているか」「うん、朝晩しているよ」「今日の電車の調子はどうだい?」「整備の連中が手を抜きやがって」「そうかい・・。かあちゃんによろしく」「うん、ありがとう」出て行く六ちゃん。たんばさんは、調金職人のようだ。
   このスラム街の真ん中に、水道の蛇口があり、女たち(園佳也子、新村礼子、牧よし子、桜井とし子、小野松枝)が日がな炊事の支度や、洗濯で集まり、噂話をしている。水道を挿んで、黄色いバラック小屋と赤いバラック小屋があり、黄色い家から黄色い作業着を来た益夫(井川比佐志)が出て来て、送って出た妻のたつ(沖山秀子)が「今日こそ、酒飲んでくるんじゃないよ」とドヤしつけている。向かいの赤い家からは、赤い作業ズボンを穿いた初太郎(田中邦衛)が出てくる。同じように見送る良江(吉村実子)。「あにき!!」益男「ようでかけるぜ!今日は天気がよさそうだ」小声になり「今日も終わったら、いっぱいひっかけようぜ」二人とも昨日の酒が残っているのか、千鳥足で出掛けて行く。たつと美江「男ってどうして、あんななんだろうねええ」
   少し先の家からきちんと三つ揃いの背広と中折れ帽を被った島悠吉(伴淳三郎)が出て来て、水道の女たちに挨拶をする「おはようございます」おんなたち「おはようございます」小声になって「あたしゃ、島さんはいい人だけど、あの顔の麻痺と奥さんにだけは馴染めないよ」跛をひき歩く島、くしゃみをしそうになり、ズルズルと鼻を鳴らしたかと思うと、一旦顔を止め、弛緩する。これが島の顔の麻痺らしい。島が去ると、不機嫌な表情の妻(丹下キヨ子)が咥え煙草で、買い物籠を下げ出てくる。おんなたちの前を素通りし、屋台の八百屋の前に立つ。嫌な顔をする八百屋(谷村昌彦)。おもむろにキャベツを手に取り、外側から毟り始め「ここの野菜はひどい品なのに、高い」「そんなことはないよ、中通りのスーパーに比べたら2,3割は安いとみんな言っているよ」「あんた、客を嘘つき呼ばわりするのかい?このキャベツ目方計っておくれ」「きゃべつは目方じゃなくて、一個で売るもんだよ」「こんな萎びた葉っぱまで売りつけるのかい?」やれやれと言う顔でキャベツを量る八百屋。しかし、女は毟って剥がしたキャベツの外葉を買い物籠に押し込んでいる。
   近くのバラックから平さん(芥川比呂志)が出てくる。平さんの顔は青白く、その瞳は宙を睨んでいるが光はない。女たち「平さんは、若い頃は、ずいぶんいい男だったろうね」抱えて来た古着の歯切れをドラム缶に突っ込んでいる平さん。女たちの中の渋皮のむけた女(根岸明美)に「あんた、狙った男は外したことはないと、いつも自慢しているけど、平さんのところに忍んでいったのをあたしはしっているんだよ」「そうさ、私はあの晩忍んで行って、眠っている平さんの布団に入ろうとしたら、恐ろしい声で啜り泣いていて、お蝶と言っているのを聞いてしまったんだ。何かとても恐ろしい体験をしたみたいだね」くまん蜂の吉(ジェリー藤尾)が洗面器を持って出てくる。

くまん蜂の女房(園佳也子)絵描き(加藤和夫)野本(下川辰平)沢上良太郎(三波伸介)小供(石井聖孝、貝塚みほこ)沢上みさお(楠侑子)みさおに纏わりつく男たち(人見明、二瓶正也、江波多寛児、市村昌治、伊吹新)お蝶(奈良岡朋子)乞食の親子(三谷昇、川瀬裕之)綿中京太(松村達雄)姪のかつ子(山崎知子)妻のおたね(辻伊万里酒屋伊勢屋の御用聞き岡部少年(亀谷雅彦)死にたい老人(藤原釜足)屋台のおやじ(三井弘次)小料理屋の女将(荒木道子)レストランの主人(桑山正一)ウェイトレス(塩沢とき)泥棒(小島三児)刑事(江角英明)

どですかでん予告編youtube


   本当は、「どですかでん」と、その次に上映予定の「夢」を黒澤カラー映画2本立てと、美人画家1.5を誘っていたのだが、まあ、1.5状態なのでこれなくなったのだが、よかった。高校時代以来、「どですかでん」を見て、やっぱりどう考えても、0.5には胎教的に悪影響があったのでは(苦笑)と思ったのと、自分自身「どですかでん」で脳味噌掻きまわされて2本観終わって疲労困憊、息も絶え絶えだった。黒澤3本は、やっぱり無理だわ。青山スパイラルで友人がやっているイベントに顔を出し帰宅。

2010年12月22日水曜日

今日も黒澤2本。

    京橋フィルムセンターで、生誕百年 映画監督 黒澤明
    60年黒沢プロ/東宝黒澤明監督『悪い奴ほどよく眠る(155)』
    都内の高級ホテルのバンケットルーム。西家、岩渕家式、披露宴会場と案内が出ている。結婚式の最中のようだ。受付にいた男女がエレベーター前に駆け寄り頭を下げる。出席者が出て来る。再びエレベーターのドアが開くと、満員の乗客は、新聞記者とカメラマンたちだ。受付に駆け寄り、「大竜建設の社長と専務は来てますか」「披露宴前に、ほんの1、2分でいいんだけど」と無遠慮に話しかける。係員(佐田豊)「すみません!道を広げて下さい。今、新郎新婦がいらっしゃいます。」広がった参列者と記者たちの間を通る。新郎西幸一(三船敏郎)と新婦岩淵佳子(香川京子)たち。新婦は足が不自由なようだ。着物の裾から見える草履の高さが左右とても違っている。転びそうになった新婦を支える男は佳子の兄で幸一の親友の岩淵辰夫(三橋達也)だった。
   披露宴の開始早々、係員に呼ばれ出てきた日本未利用土地開発公団の契約課長補佐の和田(藤原釜足)に二人の刑事が警察手帳を見せる。戸惑った表情の和田に近寄る契約課長の白井(西村晃)。「僕は式次第が分からないんだから困るよ」と声を掛けるが、式次第の紙を渡され耳打ちをされると顔色が変わる。慌てて白井が式場に戻ると、和田は連行されていき、無数のフラッシュが焚かれた。
   披露宴は始まり、記者たち((三井弘次、田島義文、近藤準、横森久、小玉清(→児玉清))は式場の最後部にあるテーブルに座りながら高みの見物を決め込んでいる。
    媒酌人は有村総裁夫妻(三津田健、一の宮あつ子)が新郎新婦を紹介する「西幸一君は、わが公団の岩渕副総裁の秘書をしております。戦災孤児で身寄りはありませんが、優秀な男です。岩渕くんは父親として認めたくはなかったようですが、新婦佳子さんの気持ちには逆らえなかったようです(笑)新婦よし子さんは京浜女子出身の才媛で…」
    和田の逮捕を白井から耳打ちされて以来、落ち着かない管理部長の守山(志村喬)


   55年東宝黒澤明監督『いきものの記録(156)』
    都心の交差点。横断歩道を渡る群集。行き交うバス、都電。都電が走る通りの二階に歯科がある。
    マスクをして診察台に座る男の子に向かう原田(志村喬)。隣りの診察台には息子の進(加藤和夫)がいる。嫁の澄子(大久保豊子)が赤ん坊を背負って診察室に入ってくる。「お父さん。電話です」「どこから?」「裁判所からです」「坊や、ちょっと待ってね」隣りの診察台の患者「裁判所?何かあったんですか」「いや、かの間から、家庭裁判所の調停委員を引き受けちまったんですよ。道楽みたいなもんですな」原田戻ってきて「やれやれ、今日は1時から呼び出しだ。これで午後は丸潰れだ」しかし、表情はどこか嬉しそうだ。
東京家庭裁判所家事審判部。ある審判室の前では、ごった返し騒然としている。中島二郎(千秋實)に栗林(上田吉二郎)が「この子たちにも大旦那の血が流れているんですから…。良一さんも、妙子さんも一緒ですよ。」「僕はいいんだけど」須山良一(立刀川洋一)不満そうな妾の里子(水の也清美)とその娘妙子(米村佐保子)に、仕切りと話しかける栗林。原田が調停室に入ろうとすると二郎、「とにかく、親父の問題ですから、他人の口出すことではないので」「いや、私は調停委員ですから」間違いに気がつき平身低頭の二郎。
   調停室内も騒然としている。70才になる中島家の家長の喜一(三船敏郎)を準禁治産者として欲しいと言う申立だ。申立人は妻のとよ(三好榮子)と長男の一郎(佐田豊)、二郎、長女のよし(東郷晴子)。よしの夫の山崎隆雄(清水将夫)は、栗林たちと廊下に出された。
  審判側は、判事の荒木(三津田健)と原田と同じ調停委員の弁護士会の堀(小川虎之助)家裁書記の田宮(宮田芳子)

2010年12月19日日曜日

黒澤2本。

    京橋フィルムセンターで、生誕百年 映画監督黒澤明

   49年新東宝/映画芸術協会黒澤明監督『野良犬(153)』
   荒い息をする野良犬の顔のアップ。その日は恐ろしく暑かった。「何!?ビストルを摺られた?」「すみません!」「コルトだったな」「弾は7発入っています」係長中島主任警部(清水元)を前に固まっている村上(三船敏郎)。
   警視庁殺人課の新人刑事の村上は、徹夜明けでとても疲れていた。ピストルの射撃訓練が終わり、同僚たちから「早く帰って今日はよく眠れよ」と声を掛けられながら、一人帰宅する。超満員のバス車中、ぴったりくっ付いた中年女の安物の香水の強烈な匂いに辟易する村上。停留所に停まり、多数の乗客が降りる。ふと背広のポケットに入れたビストルが無いことに気づき、慌てて下車する村上。一人の男が村上に気づき、走りだしたのを、追跡する。炎天下の中、走る二人の男。間は縮まってきたものの、未舗装の道路に足を取られ転倒する村上。直ぐに立ち上がったものの男を見失い肩を落とす村上。
   殺人課の場面に戻る。「自分は、どんな処分も受けます。自分は…」「自分はばっかり繰り返しやがって、ここは軍隊じゃねえ」「取り敢えず、餅は餅屋だ。掏摸担当の刑事に聞きに行け」捜査三課の市川(河村黎吉)を訪ねる村上。「顔を覚えたって言ったな。鑑識に行ってハコ師のリスト見せてもらいな」「ハコ師!?」「乗り物の中でやる奴をそう言うんだ」
   
   61年黒沢プロ/東宝黒澤明監督『用心棒(154)』
   山脈(赤城山らしい)を眺める懐手の素浪人(三船敏郎)。荒野の街道を歩いている。道が分かれている。思案顔の末、路傍の枝を投げ、向いた方向に再び歩き始める。男の前に、百姓親子が喧嘩をしながら転がり出る。宿場の博打打ちたちの出入りに加わり名を挙げるんだと言う若者(夏木陽介)は、親(寄山弘)の話しに聞く耳を持たない。男「とっつあん!一杯水を貰うぞ」結局息子を止められなかった父親は、「おっかあ!何でおめえは止めねえだ」機を織りながら母親(本間文子)「今の若いもんたちは、気が違っちまっただ。」………
  「造り酒屋が糸を買い始めたらしい」「だども、絹市が立たなきゃ糸も売れやしないだぞ」「血の臭いに、腹を空かせた野良犬たちが集まってきやがった」男を冷たい目で睨む親父。
   宿場に入る男。人気のない辻。宿場女郎たちの視線。手首を加えた野良犬が通り過ぎる。番屋の番太郎の半助(沢村いき雄)が声を掛ける「金が欲しいなら、女郎屋の馬目の清兵衛か、新田の丑寅のどっちかの用心棒になるがいいぜ。必ず番太郎の半助の紹介だと言っておくんな!紹介料は一朱だ。半助の紹介だって忘れるなよ」
   男は宿場の両端を眺め、番屋の向かいにある飯屋に入る。飯屋の親父権爺(東野英治郎)「酒か?」「いや飯だ」「金は持っているのかい」「いや、これから稼ぐ」「止めとくれ。」この馬目の宿は、女郎屋の馬目の清兵衛(河津清三郎)と、その一の子分の博徒、新田の丑寅(山茶花究)が纏めていた。しかし、駄目な息子が可愛い清兵衛は、その倅与一郎(太刀川寛)に跡目を譲ろうとしたから、我慢の出来ない丑寅は反目、兇状持ちを集めて一色即発なのだ。金目当てで、食い詰めもののチンピラや浪人が野良犬のように集まってくる。更に絹問屋を営む名主多左衛門(藤原釜足)に対し、造酒屋徳右衛門(志村喬)が名主の座を狙って丑寅についた為、代理戦争でもあるのだ。どちらかの用心棒になって金を払うという男に、出て行ってくれと言う権爺。
   隣から桶を打つ音がする。死人が続出するこの宿では、隣の桶屋(渡辺篤)が棺桶作りで儲かってしょうが無いのだ。儲かるのは桶屋だけだと罵る権爺。そこに新しい助っ人を二人連れた丑寅の弟の亥之吉(加東大介)が戻って来た。少し頭は足りないが猪のように暴れたら手が付けられないと説明する権爺。亥之吉が桶屋に声を掛ける「もうかっているか」「へえ、お宅から二つ注文もらいやした」「えっ?!」声を荒げる亥之吉に「でも、清兵衛からは三つ」手の指で比べていたが、どうやら、向こうが多く死人が出ているらしいと分かって喜ぶ亥之吉。飯を食いながら、考えていた男は飯屋を出て行った。
   新田の丑寅の所に行くと、破落戸たちがぞろぞろ出て来た。大男のかんぬき(羅生門綱五郎)亀(谷晃)賽の目の六(ジェリー藤尾)熊(西村晃)瘤八(加藤武)子分(広瀬正一、西条竜介)。凄む破落戸たち。男はあっという間に賽の目の六の腕を斬り落とし、更に二人の凶状持(中谷一郎、大橋史典)を斬った。「いてえ!!!」転げまわる六。
   男は、その足で、宿場の反対側の清兵衛の女郎屋に行き、自分を雇わないかと言う。清兵衛は二階に上げ、「一両でどうだ?」と言う。首を振らない男に、結局50両を出すことになる。半金25両を差しだし、子分を紹介する清兵衛。子分四天王の孫太郎(清水元)孫吉(佐田豊)弥八(天本英世)助十(大木正司)に、馬の雲助(大友伸)、子分たち(桐野洋雄、草川直也、津田光男)。
   しかし、清兵衛の女房おりん(山田五十鈴)は、清兵衛を連れて別の部屋に行ってしまった。男が、女郎たちに静かにしているよう、口に人差し指をあて、盗み聞きしていると、おりんは、50両なんてもったいないので、丑寅一家をやったら、倅の与一郎に「男をやってしまえ」と言う。「殺すのかい?」とびびる与一郎に、「一人も百人も、獄門に上がるのは一緒だ。その位しないと、子分たちになめられる」と言い聞かすのだ。
   そしらぬ顔で、部屋に戻った男に、酒を勧める清兵衛、おりん夫婦。おりん「先生のお名前は?」「うーん、そうだな」窓の外の風景を眺め「桑畑・・・三十郎だ。いや、間もなく四十郎だがな」男はアラ40だった(笑)。そこに、もう一人の用心棒の浪人本間(藤田進)が呼ばれてくるが、屈託ありげに横を向いて座る。清兵衛「本間先生も、ご一緒に」「いや五十両のご仁と、一両二分の拙者では格が違い過ぎるでな」苦笑する桑畑(笑)。「じゃあ、今直ぐに丑寅一家に出入りしましょう」清兵衛が言いだし、子分は皆ためらうが、二人の用心棒で急襲すれば、先ほど3人斬られ怖気づいている丑寅一家は一網打尽だと言う清兵衛。
  へっぴり腰で列び、長ドスを手に手に気勢を上げる清兵衛の子分たち。おりんは、女郎たちを棒で叩きながら蔵に連れて行き、外から鍵を掛け閉じ込める。二階から外を男が眺めていると、先ほどの本間が、塀を乗り越え、逃げ出そうというところだった。男が見ていることに気がつき、笑顔で手を上げる本間。男が笑顔で応えると、走りだした。一両二分では安い命だ。男が清兵衛の子分に呼ばれ、外に出る。男の姿を見て、怖気づく丑寅一家と気勢が上がる清兵衛一家。清兵衛がふと気がついて「あれ本間先生はどうした?呼んで来い」と子分に命じると、男は「あの浪人は逃げた。昼逃げだ」悔しがる清兵衛に「俺も気が変わった。丑寅をやっつけたところで、殺されちゃかなわねえからな。ほら金は返すぜ」25両をおりんに渡し、スタスタと飯屋に入って高見の見物だ。
   
 
   
  卯之助『三ピン、いるか…。地獄の入り口で待ってるぜ』『最期まで向こう見ずのままで死んで逝きやがったぜ。オヤジ、これでここも静かになったぜ』
二人に背を向け去って行く男。

   桑畑三十郎(三船敏郎)新田の卯之助(仲代達矢)小平の女房ぬい(司葉子)用百姓小平(土屋嘉男)八州廻りの足軽(堺左千夫、千葉一郎)八州廻りの小者(大村千吉)

  やっぱり、黒澤の映画は何度見ても新鮮な発見がある。それどころか、50過ぎて、記憶が曖昧な部分がどんどん出て来て、これからは同じことでも“何度でも”発見できるから益々お得だ。老人力バンザイ!!。
   今回は、卯之助の着流しの着物の裾から見える裏地がいい。マフラーとピストルは皆指摘することだが、走る時に裾をまくると見える柄、お洒落だ。表裏どういう色の生地なのか、どこかに記録残っていないのだろうか。

2010年12月5日日曜日

アートの日曜日

    昨日体験入学の講師を終えた頃、寒気あり、不義理をして帰宅。身体を温めて就寝。日曜日も昼までゆっくり眠る。エコツミさんごめんね。

    吉祥寺で、美人画家と待合わせ、ギャラリー吉祥寺東京倉庫で開催されている「緑の地球からの贈りもの」 を見る。アマゾンの森林を守れをテーマに画家、ミュージシャン、俳優色々な人が絵画を提供。文化放送にいらしたIさんの企画。
    荻窪に移動、ギャラリー六次元。暮らしの手帖の元副編集長の二井さんの「書き文字ミニミニ映画祭」。二井さんと今の日本映画についての話し盛り上がる。Iさん二井さん先輩たちの話し、大いに刺激受ける。もっと頑張らんとなあ。
    吉祥寺に戻り、12月1日にオープンしたばかりの美少女インド料理シタルの吉祥寺店へ。

2010年11月30日火曜日

蒼井優の時代劇的森ガール、山ガールファッション。

大門の睡眠クリニック。月末は混んでいるなあ。

新宿ピカデリーで、廣木隆一監督『雷桜(150)』
  
  山菜採りに向かう二人の村の若者、友蔵(高良健吾)茂次(柄本佑)山に住む天狗の噂をしていると・・・。白馬に乗って炭焼き小屋に戻って来る雷(蒼井優)「親父さま!!」田中理右衛門(時任三郎)「どうした?また村人をからかったのか?」「ああ、山を乱されるのは嫌だ」「また、村人に姿を見られたんだな」
   魘され目覚める清水家当主斉道(岡田将生)「榊原!!・・・榊原!!」刀を手に取り、縁側に出ると、小姓榊原秀之助(若葉竜也)は座り込んで眠っている。斉道刀を抜き「榊原!!夜伽のくくせに、居眠りか!!」驚き逃げ出す榊原。庭で榊原を斬ろうとする斉道。小者の助次郎「殿!!畏れながら、人をあやめることは、一大事でございます」と立ちはだかる。斉道の剣をかわし、あくまでも止めようとする助次郎。止めようとする家臣を押しとどめる側用人榎戸角之進(柄本明)。上段に構えた斉道、突然気絶する。「殿!!殿!!」助次郎「これは・・・」
  醫の手当てを受ける斉道「戸を開けてくれ」助次郎を従え榎戸「殿は迫観という病なのだ」「心の病でいらっしゃいますか。ご無礼いたしました」「お主は、瀬田の庄屋の倅だったな。これより、正式に清水家の家臣に取り立てる。殿のお側には、お前のような家来がよいかもしれぬ」
  庭で、愛鷹力王丸に餌をやる斉道の前に、助次郎を連れた榎戸が現れる。「瀬田助次郎を、殿の夜伽にいたしまする」
  幼い日の斉道が毬で遊んでいる。「笑いなさい!笑いなさい!!何で笑わないの!!この小憎らしい子め!!」斉道の母(河井青葉)唾を吐きかけ罵る、その姿は常軌を逸している。魘され目覚める斉道。「殿!!どうなさいました!!?」助次郎が駆け付ける。「何か面白い話しをしろ」「私は田舎の出ですので・・・」「では、その話しをしろ」「瀬田村は、山に囲まれた小さな村でございます。村の外れには草原が広がり見事な狩り場でございます。」「
つまらぬ!!」「村の奥には、瀬田山がございます」「そこでも狩りが出来るのか?」「いえ、瀬田山には天狗がおりまする」「誰がお伽草紙の話しをしろと言った!!」「本当に、天狗はいるのです。いてもらわないと困るのです」
  公孫樹と桜が合わさった古木が桜の花を咲かせている。「そんなに好きか?へんてこな木」理右衛門「公孫樹に雷が落ちた日にお前が産まれた。雷が落ちてもお前は笑っていた。その公孫樹に、いつか桜の木が生えたのだ」
  江戸城、幕府大老高山仙之介(大杉漣)老中早坂門之助(ベンガル)らの前には、清水家側用人榎戸角之進の姿。「お前の忠義公方様もお認めだ。引き続き斉道公に尽くすのだ。ただ、ご三卿清水家の当主は、いくら公方様の御子とはいえ、うつけの気がこれ以上酷くなるようであれば、将軍家のご威光を傷つけ、片付けざるおえまい。その時は榎戸、お主が切れ。これは、公方様のご意向でもある」「ははっ」沈痛な表情で頭を下げる榎戸。
  戻って来た榎戸に斉道が声をかける「老中たちは何を言っていた」「殿のご健康を気遣っておられました」「嘘を申すな。予の病は治るのか。母上と同じように狂ってしまうのか。隠さずともよい。予は恐ろしいのだ。幼い頃から魘され続ける悪夢、これは血か?母上からの血筋のせいなのか?」醫「殿!ご静養なされ。江戸を離れてみてはいかがでしょうか」
   榎戸に呼ばれ駆け付ける助次郎「何か御用でしょうか」「この度、殿のご静養にお前の故郷が選ばれた。瀬田村に行くのじゃ。瀬田村の庄屋は、お主の兄者だったな」
   騎上の斉道を含め行列が街道を行く。愛鷹力王丸が突然逃げ出す。鷹を追って馬を走らす直道。「殿!!」「殿!!」「お待ち下され!!」口々に呼びながら駆け出す家臣たち。しかし、馬に駆け足、しばらくすると追いかけているのは助次郎一人だ。「殿!!瀬田山に入ってはいけません」
  「百姓上がりめ。根性だけはある」一面のレンゲ原に馬から下り、伸びをして横になる斉道。目をつぶって風を感じていると、自分の上を馬が飛び越え、飛び起きる。「無礼者!!」刀を抜き、馬に乗っていた小柄な男と組み合う。男は小斧を手に挑みかかって来る。しかし、刀と斧を落とし、組み合うと体格に優る斉道は男を組伏した。仮面を剥ぐと「女!!」腕にかみつく雷。刀を構えるが気絶する斉道。斧を構え直して近付く雷。「おい!!おい!!」動かない侍に息を確かめ、竹筒の水を飲ませようする。気絶しているので、水を口に含み、口移しに飲ませると、突然抱き締められる。「やめろー」もがく雷に「身体がきもちよい。このままでいてくれ」しばらくじっとしていたが、鷹が空を舞う姿に、白馬に飛び乗り「二度と森に入るな」と去る雷。

   十条の帽子職人T氏の工房で、I会長と三人で、フリーランス見本市、事務局反省会。十条の渋く枯れた商店街。痺れる(笑)。西荻の次に住むのは十条か。

2010年11月29日月曜日

飯田蝶子の母性愛と“こんな筈じゃなかった”不肖の息子。

  午後大手町で糖尿病経過観察。2食抜いていると、目が回るなあ。

  神保町に出て遅昼飯を、いもやで天丼食べ、10代からだと思うと35年以上か・・・。天麩羅、天婦羅というより天ぷら、キッチン南海と双璧の膨満メシ。食べログ見たら、どっちも沢山のグルメコメント出ていてびっくり、絶賛するも貶すもそういう店じゃないだろ(笑)。とっても貴重な食い物屋なことは間違いないんだが、若松孝二を巨匠監督というくらいのチンさむだ。

  神保町シアターで、小津安二郎の世界

  47年松竹大船小津安二郎監督『長屋紳士録(148)』

   戦後間もない東京、長屋に街頭が灯っている。為吉(河村黎吉)が話している。「だから、月を見な。時には雲も懸かるだろ。先は先、今は今だ…。」「ただいま」下宿人の辻占いの田代(笠智衆)が帰って来る。「誰かいたのか?」「いいや」「話していたじゃないか」「いや、何でもない」田代後ろを振り返り「おいで」薄汚れた男の子が現れる。「何でい?」「この子供拾ってきてしまったと言うか、九段から付いて来てしまって、離れないんだ。茅ヶ崎から親と出て来たんだが、はぐれちまったようなんだ。泊めてやって貰えんかねえ」「やだよ。俺は子供は好きじゃないんだよ」「一晩でいいんだよ」「かあやんの所に押し付けちまいなよ」「うぅん、困ったなあ」
   向かいのおたね(飯田蝶子)の金物屋に顔を出す田代。「今晩は。ねえおたねさん。子供いらんかね?これを拾ってきてしまったんだ」「えぇ?あたしゃ嫌だよ。子供嫌いなんだよ。田代さん冗談は止めとくれ!!」「一晩だけ頼むよ」とさっさと子供を置いて姿を消す田代。ポケットに手を入れたままの幸平(青木放屁)。「シッ!シッ!」猫を追い払うように手を振り、睨むたね。「めっ!」ペソをかく幸平。翌朝、敷き布団が干してある。俯く幸平を前に睨むたね「こらっ!」団扇を手渡し「扇いでよく乾かすんだよ」敷き布団には寝小便の後がある。為吉に文句を言うたね。「困っちゃったよ。とんでもないモンを押し付けられちゃったよ」「何だい?」「寝小便ですよ。大事な布団が台無しだよ。馬みたいに小便垂れ流し…どうしてくれるんだい!」「文句を言う相手が違うよ。しょうがねえもん拾ってきたもんだ、天眼鏡!」外では幸平が団扇を扇ぎ続けている。
    為吉とおたね、染め屋の喜八【かいはちと皆呼んでいる】(坂本武)のところに行き、「困っちまったよ。子供預かってくれないかい」「うちも困ったもんだ。ガキはいるし、この家も狭いし。」「いや、狭いも何も、立派なお屋敷じゃないか。ニ人育てるのも三人育てるのも大して変わらないだろ」「茅ヶ崎から父親と出て来たと言うから、連れて行けば預けられるんじゃねえのか」「誰が連れて行くんだい?」為吉「くじで行こう?なあ、かい八さん。当たったら恨みっこなしだ。×をつけた紙縒を引いた人間が茅ヶ崎だぜ」為吉筆を取り紙縒を作る。引いた紙縒を開いたおたね「あたしが当たったよ。しょうがないね」おたねが出て行くと自分の紙縒を開いた喜八「あれ、俺のにも×がある」「俺のにもあるよ。慌てた奴が損をするんだ。かあやんには内緒だぜ」「勿論だ」

父親(小沢栄太郎)きく(吉川満子)ゆき子(三村秀子)とめ(高松栄子)しげ子(長船フジヨ)平ちゃん(河野祐一)おかみさん(谷よしの)写真師(殿山泰司)柏屋(西村青司)

   36年松竹大船小津安二郎監督『一人息子(149)』

「人生の悲劇の第一幕は、親子になったことからはじまっている」侏儒の言葉
   1923年信州。ランプ、柱時計が鳴る。街道を歩く、行商の娘(お茶売り?)。貼り紙「春繭 一貫目拾三円 (山に七の屋号)仁田」生糸工場 湯につけた繭から生糸を採る野々宮つね(飯田蝶子)の姿。
   つねの家。釜にひよこが2羽いる。石臼をひくつね。息子の良助(葉山正雄)「ねえ、かあやん。今年、組から4人中学に行くんだ。先生がオラにもどうする?と聞いたんだ」「おめ何言っただ?」「言わんかった。銭ねえに決まってんだもん」「中学なんか行かなねえでいい。明日草餅こさえてやる」
   「今晩は」おとないを告げる声がする。大久保先生(笠智衆)だ。「いつも良助がごヤッケエになっておりまして」頭を深く下げるつね。「良助くんはよく出来るので、僕は大変嬉しいです。今日学校で聞きましたが、良助くんを中学に行かせてくれるそうで、本当に喜んでいるんです。おっかさんも決心がつきましたか。これからは何をするにも学問無しではやっていけないです。やっぱり学問をするには、何でも東京です。こんな田舎ではどうしようもない。私も東京に行こうと思っているのです」呆然と聞くつね。大久保が帰ると我に返り、「良助!良助!」2Fの蚕棚からゆっくり降りてくる良助。つね、頬を打つ。「何で、嘘つくだ!!中学なんか行ける身分か!!生きて行くので精いっぱいでねえか」夫を亡くし、女親一人で良助を育てているのだ。
   女工仲間のしげ(高松栄子)「大久保先生、辞めるんだってな。あの先生はゼッテー東京に行くと思っていただ。いつ行くだ?」「明日の上りだ」大久保先生バンザイという手作りの旗が家にある。意気消沈の良助。「おめえやっぱり中学校に行くだ。かあやんもユンベ一晩考えただ。他の子が中学校に行くのに、級長のおめえが行かねえなんて、かあやんも面白くねえだ」涙を流しながら息子の手をとるつね。「かあやんはどんなに苦労してもいい。東京に行って、偉い人になるだぞ」つねの決意を聞いて涙する良助「ねえ、かあやん。おら偉い人になる」
   1935年信州。生糸場。つね、しげと話している「良助も東京で仕事すると言って来ただ。」「あんたも苦労のしがいもあったというもんだ」「春になったら東京に行ってこねばと思ってるだ。27にもなるし、そろそろ嫁のシンペエもせねばなられえから・・・」嬉しそうに話すつね。
   1936年東京。蒸気機関車C51が駅に入って来る。都内を走る円タク。成人し背広姿の良助(日守新一)。「夜行じゃ大変だったでしょう。疲れたでしょう」「いや、親切な人が隣に座っていて、弁当を買ってくれたり、随分とありがたかっただ」「これが、隅田川永代橋ですよ。随分大きいでしょう」「でっけえ橋だなあ。」「本当によく出掛けて来ましたね」円タクが止まり、母を下し、風呂敷包みを手に、料金を払う良助。「ねえ、うちはこの原の向うなんです。ぶらぶら歩いて行きましょう。大変な家ですよ・・・。ねえ、かあさん。驚いちゃいけませんよ」「何がさ」「実は、女房をもらっちゃったんです」驚いて良助の後を歩くつね。ゴミゴミとした一角。洗われた糸の束が干してある。メリヤス工場だろうか、絶え間なく音が響いている。一件の平屋の戸に手をかけ「おっかさん。ここです。さあどうぞ」杉子(坪内良子)が出て来て小さな玄関に手をつく。「はじめまして」良助「杉子です」「よくいらっしゃいました」「お初めて。せがれがいろいろごやっけえ様になって」良助、つねを中に案内して「随分汚いでしょう。ねえ、おっかさん、ちょいと・・・」赤ん坊がスヤスヤと眠っている。「去年の暮れに産まれちゃったんですよ。おとっつぁんの名前から一字貰って義一とつけたんですよ」良助、杉子に「お金あるか?鳥を買って来いよ」杉子が出掛けると「洋食屋の娘なんですよ。学校行っていた時分に、下宿してたでしょ。近くの娘なんですよ」「市役所で働いていると聞いたけ」「市役所の方は、半年ばかり前に辞めちゃったんですよ」つねは驚くばかりだ。
   夜学の教室。黒板には図形が書かれている。良助は夜学の教師をしているのだ。学生が手を上げる「先生。Fと?が同じという意味が分かりません」「この内円の三角形・・・・。分ったか?これがシルスンゼンの定理(正弦定理?)だ」頭を掻き着席する学生。教室を抜け職員室に行く良助「なごい!すまないけど10円貸してくれないか?」「10円持っていると思うか?」「じゃあ、5円でいいや。すまんなあ、すまん」年配の教員の松村(青野清)に向いて「ねえ、松村さん。済みませんが、5円貸して貰えませんか?」松村黙っている。「給料日には返します。利子を1割つけますので」松村財布から金を出す。結構持っているようだ。「急に、おふくろが出て来てしまったので・・」と言い訳をして、教室に戻る。
  良助の家。つね「で、学校の方ではいくら貰っているんだい」杉子「ほんの僅かですの。でも何とかやっていけますわ」
  帰宅した良助。「教師は勝手に休めないものですから・・・。おいお茶入れろよ」「大久保先生はどうしているかの」「明日訪ねてみましょう。先生も喜ぶと思いますよ」
  翌日、とんかつという旗が風に揺れている。無精ひげで割烹着姿の大久保。良助とつねの姿を認めて「やあ、ご無沙汰しております。信州はどうですか・・・」・・・・・・・良助「今では戸隠山のほととぎすの声か聞けるんですから・・・」小学生の息子(爆弾小僧)が帰って来るなり泣きだす。「こいつが次男です」良助「二郎くん、二郎くん」小遣いを貰うなり泣きやんで出て行ってしまう。つね「おいくつ?」「六つです。なりばかり大きくていかんです」良助「先生、お忙しいんじゃありませんか?」大久保「東京に来てこんなことになろうとは思いませんでした。まあ、なるようにしかならんもんです」そこに、大久保の細君(浪花友子)が帰って来る。「愚妻です。こいつが四男です。結構なものをいただいたよ」「それは、ありがとうございます」「ああ、こないだ話した夜泣きのおまじないだがね」「これですか?」「そう、これを逆さまに貼るんじゃよ」
   映画館に良助とつねの姿がある。「これがトーキーというものですよ」スクリーンでは、「未完成交響楽」(33年独・墺)が上映されている。居眠りし、小さな鼾をかくつね。その姿を見て微笑む良助。
  良助と杉子の会話「お隣が騒がしくて、お母さん休めるかしら」「しょうがないよ。これで3円安いんだから。明日からどうしよう。借りたお金もあらかた使ってしまったし・・・」そこに銭湯からつねが戻って来る。「どうでした?混んでいましたか?」「いえ、いい湯だったよ」良助「肩をお揉みしましょう」お茶を運んできた杉子「お疲れじゃありませんか」「いや、楽しかった。浅草から上野に廻って、九段でお参りも出来て」「お袋は、雷門の提灯が大木のでびっくりしたんだ」「そりゃあ大きいもんで驚いただ」チャルメラの音がする。「おかあさん。支那そばを食べませんか。珍しいもんですよ」良助ゲタを履いて外に出る。代りにつねの肩を揉む杉子。良助、屋台の若者に「ラーメン3つ。チャーシュー沢山入れろよ!」そのまま、窓の開いた隣家を覗く。「富坊勉強してるか」おたか(吉川満子)が女手一つで富坊(突貫小僧)君子(小島和子)を育てている。「お母さんいらしているんでしょ」「ええ、急に出て来てしまって・・・」その時屋台の男から声がかかり「じゃあまた!」ラーメン鉢を三つ持って家に入る良助。つね、杉子とラーメンを食べる。「どうです。なかなかのものでしょう。つゆがまたいけるんですよ」
  翌日、近所の原っぱで、つねが孫をあやしている。そこに富坊が来る「おばあちゃん、信州から来たって本当?」「ホントだ」「信州の県庁所在地は長野。僕は全部言えるんだ」得意に関東の県名と県庁所在地を言い始めるが、直ぐにわからなくなる。「信州の名産は生糸」頷いて微笑むつね。「富ちゃん!富ちゃん!!」おたかが呼んでいる。鍋を手にしているのを見て「また、豆腐買いに行かされるんだ」家の中、「ねえ、お母さんをどこかに連れて行って差し上げて下さいまし。孫の子守りでは申し訳ないわ」といって金はない。原っぱを歩く良助とつね。何本も煙突が建っている。「あれが東京一のゴミ焼却場ですよ。東京はゴミの量だって半端じゃない。」近くに腰を下ろす2人。「ねえ、おっかさん。僕何になっていると思いましたか?がっかりしてるんじゃありませんか。僕も時々、東京に出てこなければよかったと思うことがあるんです」少し置いて「おめえはこれからだと、ワシは思っているだ」「僕もそう思っていますよ。でも、小さい双六の上がりなんじゃないかと思う時もあるんです」「おめえ、そんなのんきなこと言っちゃ困るじゃないか」「僕は、おっかさんと田舎で暮らしていたかった。そりゃあ、僕も立派な人になろうとしたんです。でも夜学の先生にしかなれなかった」「東京は人が多すぎるんです。「かあちゃんにしてみりゃ、お前にそうあっさり諦めてもらいたくねえだよ」余りに情けない息子の言葉にショックを受けるつね。
  夜、眠れずにつねは火鉢の火種を掘り起こし手を当てていると、良助が目を覚ます。「おっかさん、どうしたんだい」「ん、ちょっと寝付かれないだ」「大層遅いよ。もう寝よう」「ひょっとして、おっかさんは、僕のことで眠れなくなってしまったのかい」「おめえの立身出世を楽しみに、苦労してきたが、そんなことは何の苦労ではねえ。もうお父っつあんが残してくれた家屋敷も桑畑も売って、生糸工場の長屋に住まわしてもらって掃除婦をしているだ。おめはまだ若い」

  近所の子供(加藤清一)
  うーむ。我が身を重ねキツい映画だなあ(苦笑)。

2010年11月28日日曜日

昨夜は自宅居酒屋。

    昨夜は、久しぶりに自宅居酒屋土曜開催。沢山お越しいただきありがとうございました。女性ゲスト多く誠に嬉しい…ヾ(^▽^)ノ。←ブログ初絵文字。お陰で、新聞代と電気代払えました(苦笑)
     自家製ピクルスと、牡蛎のニンニクオリーブオイル漬け、冷蔵庫に入れっぱなしで、出すのを忘れていた。あー。更に美人画家に料理を手伝ってもらいながら、部屋の掃除はともかく、キッチンと冷蔵庫庫内の汚れ半端なく、女子に見られて恥ずかしい。電力ストップ以来手付かずの冷凍庫含め、早急にキッチン大掃除だ。23時過ぎにダウンし、気がつくと4時、友人のカメラマンO氏とデザイナーN氏が残ってくれていたので、水を飲みながら話す。2人を見送ると時事放談だ。

   洗濯機だけ回して二度寝。酒は残っていないが、だるい。午後になってもボーっとしたまま、何とか外出だ。顔を出すと安請け合いしていた3件のうち、2件は不義理をする。

    昨晩、高校時代の友人のご尊父の訃報が届いていた。。月曜の告別式に参列させて貰うつもりだったがスケジュール微妙で、急遽高幡不動まで通夜に行くことに。全身ほぼ黒だが、普段通りの平服。いい年して少し恥ずかしい(苦笑)。親の世代の訃報は珍しくない50代、親不孝総領息子を来年こそ脱出しないとなあ、我が身の情けなさが身にしみる。さあ、直ぐに12月だ!!

   貴田庄著「原節子 あるがままに生きて」読了。小津安二郎「麦秋」と「秋日和」の中でのビール飲み干す原節子と言う記述を読み、そのシズル感にインド料理のつもりがビールで頭いっぱいに。西荻でビールと言うと何故か、生ビールの無い博華で餃子とサッポロ黒ビール大瓶なんだなあ。
   博華で龍馬伝最終回の音声を聞きながら、赤瀬川原平著「老人力」話題になった1998年は今読むものじゃないと思っていたが、52歳の今は噛締めて読める、読める。

2010年11月25日木曜日

小津安二郎のヒロインは目が離れている美人だった。

    朝一番で中央線に乗ると、トロトロ走った上、高円寺で停止。通勤時間にはやはり相変わらず遅延多いのだなあ。
    大手町で、糖尿病経過観察で眼底検査。赤坂に出てメンタルクリニック。どうも瞳孔開く目薬のせいで、世の中が眩しい。神保町で人に会い、

    神保町シアターで小津安二郎の世界
    33年松竹蒲田小津安二郎監督『出来ごころ(146)』
    夏の寄席、浪曲師浪花亭松若の高座。団扇で扇ぐ男女の中に、ビール工場の職工、喜八(坂本武)がいる。せっかくの真打ちなのに、息子の富夫(突貫小僧)は眠っている。ある男が足元にがま口が落ちているのに気付く。足で手繰り寄せ中を覗くが空だ。後ろに投げ捨てると、後ろの男も同じことを繰り返す。次は喜八の番だ。喜八は自分のがま口より、そのがま口の方が大きいので、中身の小銭を入れ替え、自分のがま口を放り投げる。先ほどとは逆の順にがま口は、最初の男の元に戻る。男が投げ捨てると、最前列に座っていた床屋の親方(谷麗光)が、自分の袂に戻した。しかし、暫くすると、体を書き始める。蚤か虱が付いていたのだろうか、周りの人間も立ち上がって、体を掻きながら調べる。もう浪花節どころではない。しかし最後には満場の大拍手。床屋の親方の拍手が、どうやら剃刀を革で研ぐ手つきなのに大受けな喜八たち。
     高座が捌けて、富夫を背負った喜八が、職工仲間の次郎(大日方伝)と寄席を出ようとすると、入り口に若い娘(伏見信子)がバスケットを下げ佇んでいる。不安そうに立つ娘が気になって声を掛ける喜八。親切心でもあるが、勿論娘は美しい。係わり合いにならない方がよいと次郎は言うが、気のいい喜八は、千住の製糸工場を首になり、今晩泊まるところもないと聞いて、自分の家に来いと誘う。幸い馴染みの居酒屋の女将とめ(飯田蝶子)が、住み込みで働けと言ってくれた。

     35年松竹蒲田小津安二郎監督『東京の宿(147)』
    トボトボと歩く親子の姿がある。喜八(坂本武)、善公(突貫小僧)正公(末松孝行)砂埃にまみれ薄汚れた父親の後を歩く善公は風呂敷包みを背負い、正公は五号瓶を紐でぶら下げている。「じゃあお前たちここで待ってろ」五号瓶の水を交互に飲み、空腹を誤魔化す子供たち。喜八、工場の門に行き門番に「仕事ありませんか?旋盤では熟練工なんですか…」「無いな…」「はるばるやって来たんですが…」「気の毒だが…」
     とぼとぼ子供たちのもとに戻る。善公「どうだったい?」俯いた父親の姿を見て正公「ちゃんは、どうして駄目なんだらう。工場は沢山あるんだけどね」その場に座り込む三人。善公がふと目を上げると、授業中の遠足だろうか同じ年頃の小学生の男児が教師に連れられ行進している。喜八「お前たち腹減らないか?」健気に首を横に振る兄弟。しかし、正公はお腹をさすりながらペソをかき始める。「どうした?腹痛いのか?」「ほんとは腹減った。」善公が顔を上げ「ちゃん!40銭!」野良犬が通り過ぎるのを見て追い掛ける。喜八も正公を背負い走り出す。近くの電信柱に警察の「犬を捕まえて下さい。子犬10銭、成犬40銭」という貼り紙がある。
     木賃宿、勿論大部屋に沢山の人間がいる。チンチロリンをする男たち。不抜けたように壁に寄りかかり座る喜八を気遣う息子たち。善公の前に、制帽が転がって来る。手に取ろうとすると、同じ年頃の男児が駆け寄ってきて奪い取る。ベーっと舌を出されてやり返す善公と正公。正公「兄ちゃん、いい帽子だね。あした犬を見つけたら買おうか?」善公「犬は飯だよ」喜八「お前らいくら持ってる?」善公「六銭」正公「一銭…」善公「明日はどっちの方に行くんだい?砂町の方に行ってみたらどうだい」


  酒と美人に滅法弱い喜八。何だか他人に思えないなあ。

2010年11月24日水曜日

哀しい女に惹かれてしまう男。馬鹿だと分かってはいるんだが・・・。

テアトル新宿で
  冨永昌敬監督『乱暴と待機(144)』
    幌付きのトラックの荷台、男女の足が出ている。寝転がった女が紙パックの飲み物をストローで飲み、隣の男に差し出す。振り払う男。
    1日目。平屋の古びた公営住宅が何軒か建っている。トラックが走り去るのを見送る男。
男(山田孝之)家の中に入り「近所に挨拶しといた方がいいんじゃないか?」化粧をしながら女(小池栄子)甘えた声で「もうあたし店だから、番上くん行っておいて~」「お前もそんな大きなお腹で、スナックで働くのはよした方がいいんじゃないか?」「番上くんの仕事がみつかるまで」「働けるよ」番上の見ていた就職情報誌を見て「月給20万円…。ここから近いじゃないの」
    紙袋を下げ、近所の挨拶に廻る男。一軒のチャイムを押すが反応はない。諦めて帰ろうとすると家の中から読経が聞こえ、目をやるとガラス戸が開いている。近寄ると、仏壇に向かい、上下グレーのスエット姿の女(美波)が一心不乱に経をあげている。「ごめんください」声をかけると女はひどく驚いて「新聞ですか?私字が読めないんです…」「だって、さっきお経を上げていたじゃないですか」「すみません。とりあえず、お上がり下さい。実際のところ、ひと月おいくらですか?」お湯を沸かそうとする女。「俺、勧誘じゃないから…お一人ですか?」「いえ、兄が一人いますが、今マラソンに行っていて…」「奥の方に引っ越してきたんで、挨拶をしているんです。番上と言います」と四角い紙包みを袋から取り出す。「ごめんなさい。ごめんなさい。お金お支払いします。」「えっ?」「こんな大層なものを頂いてしまって」財布からお金を取り出して押し付けようとする奈々瀬。「大層なものって、ただの羊羹だから・・」「いらついて無いですか?」「いらついてないですよ」「良かったぁ」へたへたと座り込む。何だか尻をモジモジさせている。「お名前は?」「奈々瀬です」自分を見つめる番上の視線に気がついて「何ですか?」「いやスウェットが似合っているなあと思って…」「これは・・・あの・・・汚れも目立たないし・・・洗っても直ぐ乾くし・・・こうやって男の方と二人きりになった時に、誤解されないように」「誤解された時はどうするの?」奈々瀬のモジモジは更に激しくなり「ああっ」悲鳴を上げる。スウェットの股間が濡れている。失禁したのだ(何だか、文章にすると団鬼六みたいだが、映画はそんなに淫靡ではない(笑))。驚いた番上は、札を財布に戻してやり、立ち尽くしている奈々瀬を残して、あたふたと家を出る。
   3日目。あずさが大きな腹を抱えて家の外に出てくると、奈々瀬が洗濯をしているのを見掛けて近付く。声を掛けても奈々瀬は気付かない。「あの、番上の妻です」振返った奈々瀬の顔を見て、

  山根英則(浅野忠信)と小川奈々瀬(美波)5年前軟禁。番上貴男(山田孝之)あずさ(小池栄子)

  渋谷シアターNで、カン・ウソク監督『黒く濁る村(145)』

   1978年サムドク祈祷院ヨ・モッキョン
チョン・ヨンドク刑事/村長(チョン・ジェヨン)、ユ・ヘグク(パク・ヘイル)、パク・ミヌク検事(ユ・ジュンサン)、キム・ドクチョン(ユ・ヘジン)、ヨンジ(ユ・ソン)、チョン・ソンマン(キム・サンホ)、ハ・ソンギュ(キム・ジュンベ)、ユ・モッキョン(ホ・ジュノ)

2010年11月23日火曜日

連日というか、毎日飲んでいる。

昨夜は、元会社の後輩達と、新宿で飲む。締めた時間は早かったが、出来上がりも早かった。

朝起きると結構降っている。昼には上がると聞いて洗濯。勤労感謝の日。プー太郎オヤジには悪い冗談だ。午後雨上がり、地元でランチビール。ちょっと一杯のつもりで飲んで、いつの間にやらただの一人飲みに(苦笑)。

代々木の学校が学祭なので、初めて顔を出す。休日の酔っ払いオヤジのままでは教育的見地からどうなのかと思いながら、足を踏み入れると、玉蒟蒻の味噌おでんとホットココア。どう考えてもセットで飲食するものじゃないだろう。このミスマッチ、ある意味今のエンタメ1年の個性、それなりに感心する。

新宿高島屋のJR線路側野外渡り廊下(?)で12月に開催予定の『アーティスティック“ラブ”クリスマス』の事前展示。どう考えても出店者のポートフォリオ、全員が美女過ぎる。クラシックだけでなく、アートの世界も日本では容姿が重要なのか(苦笑)。

   夜は、ハリウッドのDスタジオで、CGのプログラマーをやっている高校時代の友人が一足早いクリスマスホリデーで帰郷しているというので、元文芸部のメンバーで4年振りに新宿で飲む。

2010年11月21日日曜日

断捨離2(笑)

 昨日のブックオフに味をしめ、再び時代小説の文庫をブックオフに。7870円だ。まあ、182冊だから(苦笑)

2010年11月20日土曜日

断捨離(笑)

   時代小説の文庫が溜まっていたので、ブックオフに持って行くと、5000円を超える。バンザーイと言う気分で、代々木の学校で体験入学の講師。90分喋り続ける。帰り、地元で、野菜類買い、とん八で晩飯。

2010年11月19日金曜日

50代の花木、花金。

    昨夜は、学生企画のイベントのアートワーク作りのために、友人のデザイナーN氏に来て貰って、代々木デニーズでデザイン講座。
    終わると22時半だ。無理やり三軒茶屋のオブサンズでまで、付き合って貰い、ライブ終了直後のKOZOさんの所に行き、26歳美人画家を拉致り西荻で遅飯。車で飲めないN君と、懐妊中で飲まない美人画家を尻目にビール飲んで絶好調。美人画家は中央線終電で帰り、更に飲んで喋って、帰宅したら3時だった。

    翌朝ちゃんと起きて、今日の講義用にレジュメ打ち、ちょっと眠って学校へ。二コマ目は、ちょっとガス欠。パートナーN氏との打合せで渋谷へ。
    サイゼで自分だけ軽く飲みながら話す。最後は情けない自慢に。しかし、サイゼとファミレスの居酒屋使いばかりだなあ。
    
   帰宅して、テレビ欄を見ると、タモリ倶楽部そんなネタのようだが、昨夜の飲み疲れで眠ってしまう。最近ほんとテレビ見ないな。羽田美智子の旅館の嫁ものの昼ドラ気に入っているが、ほとんど見られないし…。

2010年11月16日火曜日

六本木

なかなか切羽詰まってこない学生に実感させるために、シネマート六本木まで会場下見の筈が、どうも連絡ミスで、参加者5人。うち3人は、前回下見に行った学生。更に悲しいのは、下見終わって、5人にラーメン餃子も奢れない今月の自分(苦笑)

2010年11月12日金曜日

膨満感は幸せだ。

    代々木で講師。
    夜N氏と話もあり渋谷で待ち合わせるが、風邪を引いているとのことで、戦々恐々として待っていると思いのほか元気。居酒屋飲み放題~シメラーメンと言う久しぶりの体育会系コース。我々のプロジェクトは最強ながら低燃費だが、千鳥足&膨満感で、幸せいっぱいで帰宅。

2010年11月11日木曜日

今更だが、キャタピラー。

    ポレポレ東中野で、若松孝二監督『キャタピラー(143)』

     1940年日中戦争…ニュース映像~燃える民家、逃げる中国の娘たち(安部魔凛碧、寺田万里子、柴やすよ)。追い掛ける日本兵(椋田涼)。家の中に追い詰め強姦する兵士(大西信満)。殺された女たちの瞳に、燃える炎が映っている。
    田んぼが広がる田舎の村、日の丸を振る割烹着姿の大日本国防婦人会の女たち。村の出征兵士を送る行進。後ろから赤い女物の着物を着た坊主頭の男(篠原勝之)が着いて来ている。道の向こうから乗用車が走って来る。軍用だと気がついた行列が真ん中を開けて、車を通す。再び行進を始める村人たち。 
     軍人二名(地曳豪、ARATA)が「黒川少尉を無事お送り出来て安心いたしました」「有り難うございました」と這い蹲る父親健蔵(吉澤健)、妹の千代(増田恵美)。嫁のシゲ子(寺島しのぶ)が「悲鳴を上げて走り出す。追い掛ける弟の忠(粕谷圭吾)。「いやー、」「義姉さん!義姉さん!」「いやー、嘘よ。久藏さんの筈がない!」まだ苗も植わっていない泥田で泣くシゲ子を励ます忠。
    四肢を失い顔にも大きなケロイドで横たわる久藏(大西信満)を前に、父健蔵と妹千代が話している。「いくら金鵄勲章と言ったって、こんな身体で帰って来たってしょうかないべ」「恩給たんまり出るんだべ」「泰蔵は骨になって、久藏は、こんな化け物みてえな姿になって…。」「いや、聞こえてるんじゃないの」聞こえやしねえよ。「耳もいかれているって言ってただろ。頭もやられてるんじゃねえのか」「薬で眠っているって言ってたね」「途中暴れ出したからと…」「しかし、義姉さん里に帰さんでよかったね。」
   久藏と向き合うシゲ子。 何かを訴えようと必死な久藏。「何?ああ、おしっこ」慌てて尿瓶を取ってくるシゲ子。大きな音をさせて放尿する久藏。落ち着いた表情に戻る久蔵を見て、ほっとするシゲ子。
   地元の神社で、命を顧みず勇猛果敢な活躍をして、生ける軍神となった黒川久蔵が、金鵄勲章功四等を得たという新聞記事を村長(河原さぶ)が読み上げ、村にとっての名誉だと、集まった村人の前で発表し、万歳三唱をする。勲章をつけた軍服を着て置物のように置かれている久蔵。しかし、その顔を誇らしげである。村長婦人(石川まき)や村の女たち弥生(種子)登志子(折笠尚子)らは口ぐちに「銃後の妻の鑑となれ」「お国の為に戦った久蔵さんにご奉公することがあなたの使命だ」「帝国軍人の妻として貞節を尽くせ」と励ます。

村の男(小林三四郎、金子貴明)司令部軍人(飯島大介)

   やはり、かなりやられる。凄いぜ、若松孝二、寺島しのぶ、それと久しぶりに元ちとせ。

    夜は、外苑前の粥屋喜々の店主と、高校時代の友人たちを中心とする仲間たちの誕生会。まあ、圧倒的に最年長だし、もっかのマドンナOさんからのお誘いなので顔を出し、アウェイ感を払拭しようと飲みまくる。知り合いが新宿で飲んでいるので顔出さないかとメールが来たのをしおに、抜けるが、原宿まで歩き、山手線に乗るなり、新宿駅ホームで向かい側の総武線各駅停車が三鷹行きなのを見て、酒の神様は帰れと囁いていると思い乗ってしまう。しかし、中野で目の前の席が空いて座ってしまえば、気がつくと三鷹駅終点だ。酒の神様は、酔いを醒ませと言っているのか(苦笑)

2010年11月10日水曜日

三歩歩いて二歩下がる。

   
    昼から代々木の学校。1月のイベントは近付いて来る。学生の意識にはあまりに温度差がある。ちょっと鬱になり凹んでいると、女子学生に慰められる(苦笑)。幸い一歩前進な出来事が幾つかあり、二歩下がって三歩歩くのだと自分に言い聞かせる(笑)。

授業が終わり、渋谷シアターNのサービスデーだったと思い出し、

   中川翔子監督『七瀬ふたたび~プロローグ~(141)』
   どこかのカジノ、七瀬(芦名星)は白人の老紳士の心を読み、勝つ。「私はテレパス、人の心の中を読む。この力が自分に備わっていることを知ったのは、幾つの時だったろう…」夏の日、幼い七瀬(庵原涼香)が母(多岐川裕美)に手を引かれ歩いている。神社の手水舎に若い肉体労働者(佐々木崇雄)が柄杓に水を汲み体を洗っている(井戸ならいいが、身を清める手水舎じゃあんまりだろう。誰も気がつかないのか!?教えてやれ!!)。日に焼けた肌と鍛えられた筋肉を持つ若い男の肉体。七瀬は、 母と男の視線が交錯したことに気がついている。
   母親が化粧台に向かい、唇にルージュを引いている。その姿を見て七瀬は、母の頭の中に先ほどの男の姿があり、母親の手が体を這っている光景が浮かんでいる。「お母さんは、あの男の人が好きなの?」と声を掛けた途端、母親の憎悪が蛇の姿になって自分に襲いかかる光景が浮かぶ。七瀬は、ルージュを引く母の姿をそっと眺めるだけだ。七瀬の視線を感じた母はティッシュでルージュを拭う。
    中学生に成長し、夏のセーラー服姿でバスに乗っている七瀬(高橋胡桃)。吊革につかまる七瀬の身体を見つめ、そのセーラー服の下を想像する前の男、また横に立つ男の妄想が頭の中に入って来て身を竦ませる七瀬。
中学生の七瀬が口紅を引く姿と、現在の七瀬がカジノの洗面所で口紅を直す姿「口紅を引くと、私は戦闘モードになる」

    小中和哉監督『七瀬ふたたび(142)
    エレベーターの中に長い髪の女が写った防犯カメラの映像がモニターに映されている。刑事の山本義男(平泉成)が、署長の?(大杉漣)と狩谷(吉田栄作)に事件の説明をしている。


    頭の中に、「指令」「殺す」と言うイメージが入り込んで、眠っていた七瀬(芦名星)は目が覚めた。マカオから羽田行きの航空機のビジネスクラス。七瀬は周りの意識を伺うが、この近くにはない。隣の席にいるマカオで知り合った真弓瑠璃(前田愛)が「どうしたの?」と声を掛けてきた。マカオでお金を使い果たした瑠璃の頭の中は「東京に戻れば、またつまらない生活に戻らなければならない」ことで、憂鬱さでいっぱいだ。羽田空港の到着ロビーに、警備員姿の男がトランシーバーで「到着したぞ」とスナイパーに伝える。「二人の女の内どちらだ?」とスナイパー、「ちょっと待て」と警備員。エスカレーターを降りる二人を見つめている男、景浦(河原雅彦)。再び、「殺せ」「指令」と言うイメージに気づいた七瀬は、自分の能力を閉ざした。

   景浦(河原雅彦)岩淵了(田中圭)ヘンリー・フリーマン(ダンテ・ガーヴァー)山沢ノリオ(今井悠貴)漁藤子(佐藤江梨子)

2010年11月9日火曜日

上から読んでも下から読んでもこちまちこ。うーん。

    シネマート新宿で、ようやく
  
石井隆監督『ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う(140)』
田中桃(井上晴美)に馬乗りになり、殴り首を絞める白髪の男。騒ぎに、桃の異父妹の加藤れん(佐藤寛子)が部屋に入ってくる。男は、れんに襲いかかる。「ぶっ殺してやる」桃は台所に走り、文化庖丁を手にして戻り、れんにのし掛かろうとする男の背中に突き立てる。「このやろう!!」振り返り、桃に向かう男の腹に庖丁を何度も突き立てる。ついに倒れる男。その時、2人の母親の加藤あゆみ(大竹しのぶ)の叫び声「何やってんのよ!!あんたたち!!」
夜、バーあゆみの看板。今日は都合により休業しますと貼り紙。血まみれの浴室、男の死体を細かく切り分ける桃とれん。「何?わー」浴室に入って来たあゆみ。「臭い!!臭い!!」窓を開けようとする母親に「町中が臭くなるよ!!」と止める桃。「れん、勉強になったかい?」と母親。「あんたが変なことを言うから、一年も私はこいつの臭いチンポを加えていなきゃならなかったんだから…。」桃がれんに言う。「すみません…」「ああ早く片付けないと」「だから熟成させりゃよかったんだよ」「前田拓次…もうちょっとで、ドゥオーモ行きだったのにな」
その時、階下で呼ぶ声がする。「あれ、貼り紙しておいたのに!!」「ロリコンギラギラだよ!!」「あいつ合い鍵持っていたんだ」「風呂!!風呂に入っているって足止めしてよ!ママ!!シャワー!!シャワー!!」あゆみにシャワーを掛け、バスタオルを渡す桃。バスタオルを体に巻き「はーい!!お風呂に入っているのよ、ちょっと待って!!」とあゆみが出ると、桃がシャワーを浴びて、れんからタオルを受け取る。「れん!!あんたも早く片付けておいで!!」一人浴室で、残った臓物を寸胴鍋に入れているれん。
酔った山神直人(宍戸錠)が、愛人の若い女サキと来ている。「れんはいないのか?」「パパ直ぐに来るわよ」桃が答えると「俺はお前のパパじゃねえ」と山神。ピンク色のウィッグを被ったれんが現れ、ボールダンスをする。
富士の樹海に向かう車。桃が運転をし、あゆみが助手席に、後部座席に、寸胴鍋を抱えたれんが座っている。樹海で、雪平鍋などで撒き始める三人。桃「あんたが、場所分からなくなるからいけないのよ!」あゆみ「下見して写真撮ってたんじゃないの!?」れん「カメラ忘れちゃって」桃「こんな場所じゃ、直ぐバレるんじゃないの」あゆみ「大丈夫だよ。どうせ直ぐ動物やミミズが食べるから…成仏してよ」れん「鬼は外!!福は内!!」「ガハハ、そりゃいいね。鬼は外!!」
翌朝、桃「100万もするんだよ!!」土下座するれん。「必ず探し出します」「あんた、運転出来ないくせにどうやってあそこまで行くっていうのさ。あいつが死んでやっと私のものになったんだよ。もし、誰かが見つけて、製造番号から足がついたらどうすんのよ」「私が必ず見つけます。」
総武線各駅停車が走る。荒れ果てたアパートの2階。紅次郎[くれないじろう](竹中直人)が部屋に入る。独白「電気止まっている…」しかし蛍光灯が少し間を置いて付く。「大丈夫か…、しかし臭えなあ。これじゃ1トン車じゃ積みきれねえなあ。臭え!!」布団を傘で開くと、突然、女が飛び込んで来て、殴りかかる。「このまま手を挙げてゆっくりこっちを向け!!」「おい!止めろ!!」訳の分からないまま、女に数発殴られる紅次郎。覆面パトカーの中、「こちらスジどうぞ!!?が窃盗をゲロった!?」男の刑事(津田寛治)。後部座席に紅次郎と、女刑事安斉ちひろ(東風万智子)。男の刑事「ちょっと顔殴り過ぎだろ」紅「痛い…」
所轄に戻った刑事2人、「ちひろちゃん、またかよ。旦那が殉死してから気が立っているんじゃねえか」
紅の事務所、荒れ果てた倉庫の2階。ちひろ「すみませんでした。告訴とかしないで欲しいんです。」「わかりました。何もしません」「そうして貰わないと私まずいんです」追い返す紅。ちひろが残して行った封筒を手にとると、まとまった一万円札が入っている。「賄賂じゃねえか?」事務所のドアが再び叩かれる。「しつこいなあ!わかっているって言ってるじゃねえか!!」しかし、ドアを開けて入って来たのは、先ほどの女刑事ではなく、ワンピース姿の若い娘(佐藤寛子)だ。
娘が帰った後、「ロマンチックじゃないの…。ヘリコプターで散骨?お父さんのローレックスを見つけて欲しい…。山田幸子?偽名だろうな」

代々木の学校まで歩いて、学生をピックアップ。男子学生3人を引率して、シネマート六本木。打合せはテキパキと終わり、教え子と珉珉に。餃子とモヤシ炒めを食べさせておけばと思ったが、自分だけビール飲んでいると、結局酔っ払いオヤジで。お金を払う段になって、有り金全部払うことになるのであった(苦笑)。

2010年11月7日日曜日

寂しい日曜日。

   洗濯をして、干した時は曇天だったが、午後になり陽が出る。体験入学の講師をしに代々木。しかし、今日は受講生ゼロ。まあ講師料は支払われるとは言え、ダウナーなメンタルはより下がる。よしっ!!こういう時は餃子とビールだ。高田馬場の王将だ。ほろ酔いのまま、大久保まで歩き、中古楽器屋で、ギター見て帰る。よし、これから日本シリーズだ。

2010年11月4日木曜日

活動再開が・・・。

午前中は赤坂のメンタルクリニック。歩いてシネマート六本木。

ロバート・ログバル監督『神の子どもたちはみな踊る(139)』
プールサイドに少年がいる。ビーチサンダルを履いたまま、少年はプールに足を浸ける。そのまま水に入り、もがく少年。ベッドの中で眠るケンゴ(ジェイソン・リュウ)。ガラスのカップのティーバッグにお湯を注ぐ中年のアジア人グレン・スン(ツィ・マー)の姿。ケンゴは、まだ夢の中だ。8才のケンゴに老人が近づいて来る。「坊や、5ドルあげるから、ポケットの中にオシッコをさせてくれないか?」「イヤだ。僕のお父さんを知ってる?」…。煙草を吸いながら、お茶を飲むグレン。家を出るグレン。時計は、7:32を指している。ケンゴの部屋の時計は9:55を指している。ケンゴ薄目を開け「もう二度と嫌だ」と呟く。ケンゴの母イヴリン(ジュアン・チェン)がケンゴのベッドに入ってくる。ケンゴの寝顔を見て微笑むイヴリンは、今も美しい。
昨夜の記憶、ケンゴが、恋人のサンドラ(ソニア・キンスキー)と、コリアンタウンのバーで会っている。人気のない通りで、壁を背に立ったまま、サンドラを抱くケンゴ。サンドラの車の中でも、抱き合う二人。ケンゴを車で送る黒人の友人(あるいはタクシーか?)が、後部座席のケンゴに「一緒にいたのは彼女かい?美人だね。きっといい匂いがするんだろうな」
ベッドの脇の電話が鳴る。ケンゴが目を覚まし「ヤバい!!今日も遅刻だ」電話のメッセージ「ケンゴとイヴリンは留守にしています。メッセージをどうぞ」「グレン・スンです。ケンゴはいませんか?1時間の遅刻です。聞いたら早く来るように…。イヴリンさん。今日の調子はいかがですか?」ケンゴ「いつも敬語だよね」イヴリン「スンさんは紳士なのよ。シャワーを浴びて!!臭いわよ」着替えをしながら、暗室でサンドラのヌードの紙焼きを見ているケンゴ。知らず知らずに股間を机の角にこすりつけている。「早くしなさい」イヴリンの声がして、慌ててジッパーを引き上げるケンゴ。
ロスのコリアンタウンを歩くケンゴ。カフェに入り、カウンターの女の子と会話をする。「飼い猫帰って来た?」「一度戻ってきたけど、満月の夜にまたいなくなっちゃったわ」「満月が嫌いなのかい」「調子どう?」「僕は今日も遅刻だよ」「私は、女の子の日なの。憂鬱…」「うちの母さんは、何だかお茶を飲むな?」「苦くない?」「僕は飲んだことないよ(笑)」サンドイッチとコーヒーを手に取り、椅子に座るケンゴ。近くの席に、白人の中年男が座っている。彼が手にしているのは、産婦人科の学会誌だ。
    ケンゴが極楽鳥アパートの管理オフィスのドアを開けて入ると、既にグレンは仕事をしている。「1時間50分も遅刻してしまいました」特に責めるわけでもなく、「あとで取りに来るから」とコピーしてくれと書類を渡すグレン。コピー機の前で、作業するケンゴの携帯がなる。恋人のサンドラからのメールだ。彼女のお尻や胸の写真に、思わず股間をコピー機に押し付けるケンゴ。
    「?さんから、水道漏れをしていると、修理を頼まれていたんです」と嘘をついて、空き部屋に行くケンゴ。そこにはサンドラが待っていた。事が済み、裸の二人。「私の夢はあなたと一緒に暮らして、あなたの子どもを産むことだけ」「ぼくみたいに、あそこの大きな?」「ふふっ。ねえ、わたしと結婚して!!」「…結婚は駄目だよ。僕は神の子だから…」「あなた、またそんなこと言って!!私帰るわ」僕は、大きなチンコなんて望んでいなかった…。外野フライが取れればよかったんだ。少年野球でセンターかライトを守るケンゴ。ちょうど、外野フライが飛ぶ。「あーあ、ケンゴの所に飛んじまった」チームメイトが嘆く通り、バンザイをして後ろに倒れるケンゴ。ボールは、ケンゴの遙か後ろに転がって行く。
若き日のイヴリンがケンゴを連れ、布教のため訪問する。「再生者教会から来ました」話しを聞く、白人と黒人の主婦。ケンゴがドアを叩き、出て来た白人の男は、「異教徒だな!!地獄へ堕ちろ!!」と吐き捨てる。ケンゴを庇い車に戻るイヴリンにグレンが優しく近寄る。車の後部座席に座ったケンゴ「ねえ?僕のお父さんはどこにいるの?」「私たちが行けない場所にいて、私たちを見守ってくれているの。」「子どもがどこから来るかぐらい僕だって知っているよ」「止めて!!ケンゴ」凍りついたようなイヴリンとグレン。
  成長したケンゴ。「僕のお父さんは誰なの?」何度も執拗に問い詰めるケンゴに、イヴリンは重い口を開く。「私は高校生の時に初めて“交わった”まぐわうってわかるわね」「勿論だよ」「その結果妊娠して堕胎をしたわ。若い女の子の身体にとって、堕胎ということはとっても危険を伴うわ。でも、私は二度目の恋でも妊娠してしまった。その時、相談に乗ってくれたお医者さんがいたわ。彼は、避妊を知らないのか?といってコンドームの正しい使い方を教えてくれたわ。彼とは、とっても年齢が離れていたけど、話をすることが楽しかったわ。そして、何故か私たちは交わった。とても厳格な避妊をしたけど、私は妊娠したの。その時、私は、あなたを神の子だと思って、産むことを決意して、彼のもとを去ったわ。」「ボクが産まれたことを彼は知っているの?」「知らないわ。」「だからあなたは、神の意志で産まれた子なの」「でも、私は絶望して、金門橋から飛び降り自殺をしようとした。その時、グレンさんは、声を掛け、教会に連れていってくれたの。そしてわたしは救われた。」「その人はどういう人だった?」「左耳がちぎれていてね。みんな、戦争にいってそうなったと言っていた。でも本当は、子どもの時に、そうなったの」

しまった。原作村上春樹だった。村上龍かと思っていた。SPOに勤める友人にロビーで会って、「今日は?」と聞かれ「村上龍原作の…」とドヤ顔で答えたのだ(苦笑)。「ああ、神…ですね」と恥をかかせないように言ってくれた、何ていい奴だ。ナターシャ・キンスキーの娘でソニア・キンスキーが若い頃のナターシャを思わせたり、映画自体は悪くはなかったが、「半次郎」か「ちょんまけプリン」見れば良かった。

   夜は会食で打合せ。

   ご機嫌で帰宅。家に入ると真っ暗だ。うーむ。東京電力、電力供給ストップか、忘れていた。取り敢えず、暗い中ででも、風呂に入ろうかと思ったが、今は、ガス湯沸かし器も、電気制御だったのか・・・。PCも携帯の充電も・・・。とりあえず寝る。どうなるオレ。

2010年11月3日水曜日

宴会は好きだが、パーティは苦手だ。

 元会社のボスが理事長を務めるNPOのオープニングパーティが日仏会館。

2010年11月1日月曜日

11月になった。

 2週間に亘った第13回フリーランス見本市も終了。今日は撤収日。サラリーマンはイベントが終わっても、次の仕事が既に始まっているが、フリー(フリーランス?フリーター?)は、毎回区切りがあるんだな。寂しい(苦笑)。

2010年10月5日火曜日

角野恵津子さんのご冥福をお祈りいたします。

  10月に入り、ブログ復活といいながら、生来の怠け者。全く更新していなかったが、友人の音楽ライターのtwitterで知って、目が覚める。検索すると、とても沢山のミュージシャンが追悼コメントをアップしている。
  私が初めてお会いしたのは、山下久美子さんを担当していた時の、アリーナ37℃のインタビューだったろうか。それから、随分沢山のコンサートに来ていただき、インタビューをしていただいた。お世話になったアーティストは数え切れない。多分最後にお目にかかったのは、一昨年の青山マンダラで偶然お会いした時だったか。代官山のライブハウスのブッキングマネージャーをされていて、自分が信じるアーティストへの愛情に溢れていて、角野さんを起用した方は何て人を見る目があるんだと思った。
  同世代の訃報は、応えるなあ。夜、一人で献杯させていただきます。
  

2010年10月1日金曜日

都民の日。

元会社の100周年コンベンションに、呼ばれてもいないが、顔を出し赤面。元同僚Kと会えたので、OK。終わってから、N氏とK氏と恵比寿で飲み、ベロンベロン。
1ヶ月振りに、ブログ復活。
昨日は自宅居酒屋。お馴染み少なかったが、初参戦の方々から、料理誉められ、自己満足(苦笑)。

2010年9月3日金曜日

夏休み明けるも、暑さ呆け明けず。

    夏休み明け、初講義。しかし、残暑と言うより、この酷暑真っ盛りに、夏休み明けの感覚なく、学生以上に、自分が全くシャキッとしせず、情けない(苦笑)。2年生は、ずっと就活中。大変だなあ。

    夜は、N氏を無理矢理誘って、横浜サムズアップで、山口岩男の20周年記念ライブ。ギター好きの少年の笑顔のまま、渋い中年男になっていた。ウクレレ・ヴァーチュオーゾとして活躍しているのは知っていたが、本当に久しぶりに歌うのを聞く。元々枯れた塩っぱい声は、更に渋くなっていた。いいなあ。

2010年9月2日木曜日

上方と神楽坂。

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、孤高の名優 佐藤慶。
    64年東映京都長谷川安人監督『集団奉行所破り(137)』

    堂島の米蔵。米の俵が積み上げられて、賑わっている。(NA)江戸はおさむらいの都ちゅうたら、大阪は商人(あきんど)の都っちゅうことでっしゃろ。ここ堂島は大阪の口の米市場ちゅうたら、胃袋は天満のやっちゃ場だっせ、で、頭どこやって聞かれたら、大坂城と言うかもしれんけど、徳川八代の世にもなれば、そんな大層なことを考えるもんも出てきませんので、ほんまはここや、東町奉行所と聞けば、悪い奴らはみんな、震え上がる始末だっせ。
まあ、大坂の商人の神信心好きっちゅうことでっしゃろ……。
    天満宮で、一心に祈る男の懐から財布を擦る掏摺のエテキチこと捨吉(神戸瓢介)。気がつかれて逃げ出す。ダマシチこと為七(市川小金吾)の懐に財布を押し込んで、捕まってから、さあ探せ!!と下帯ひとつで、地面に転がる捨吉。
    為七は、懐の財布を調べ、下町までやってくる。少し誤魔化そうとするが、為七は、財布が軽くなったと言われ、銭を返す。溜まり場の飯屋萬兵衛に入り、捨吉に酒をたかろうとした時に、三人の浪人者(島田秀雄、大城泰、有島竜司?)が店に入ってくる。水丁亭と言う法被を着た女郎屋の親父が金を払ってくれと付いてきている。どうやら踏み倒そうとしているのだ。騒がしさに、奥の小上がりで寝ていた悪源太こと田村源太(大友柳太朗)が、五月蝿いと文句を言い、表に出ろと言うことになった。  
    為七は、捨吉にニセ町医者の法眼の道伯(内田良平)の下に走らせ、自分は浪人者たちに、もし亡くなった場合には、懐中の銭を自分にくれるよう約束をして断られる。勝負は一瞬にして決まり、三人の浪人者は鼻を切られていた。もんどり打って転がる三人を為七は堂白のもとに連れて行く。道伯は、痔の薬を鼻に塗り、為七は、1両2分の有り金全てを治療費だと言って巻上げる。文句を言いかけた3人に、源太が追い掛けてきたと脅すと、大慌てで逃げて行く浪人者たち。  
     すけこましの業平こと丹次郎(里見浩太朗)が、商家の若旦那風の格好で、天神さんの人混みで娘に声を掛けながら歩いている。ふと一人の娘(嘉手納清美)に目を止める。「君みたいなお嬢さんは、こんな処を独りで歩いていると危ないよ。」と声を掛けると、お糸という名の娘は、「本当にそうみたいね。」地廻りの三人組(島田秀雄、大城泰、有島竜司?)が、取り囲み、付き合ってくれねえかと声を掛けてくる。丹次郎は、色男金と力はなかりけりを地で行くので、なかなか割って入れない。調子に乗った男たちは、お糸を攫おうとする。そこに、東町奉行所の同心で、蝮の金次郎こと竹内金次郎(佐藤慶)がやってきて、男たちをボコボコにする。「お父さん止めて!!死んじゃうわ。」お糸は、同心の娘だったのだ。お糸は「行きましょう!」と丹次郎を誘って、竹内を置いて行く。「腕の振るいどころをなくしちゃったわね。」お糸は、どうも父親に屈託があるらしい。
    そこに、すぼけの吉蔵(田中春男)が、「兄貴、勘助の親方が呼んでいまっせ。」と声を掛ける。「お前、若旦那と言え」「若旦那って、おまえさん業平やろ・・。」「ちょっと、店に戻らなけばならなくなったみたいだ。」
東町奉行所、財布を摺られた浪花屋の番頭に蝮の金次郎が、、掏摺を裸にしても、既に財布は仲間に渡っているのでどうしようもないのだと、殿から浪花屋への賂の礼の手紙を盗まれたのは、大問題だと言う。
    公事宿碇屋(看板は商人やどと書いてある)の主人勘助(金子信雄)は、7年前まで海賊の頭領だった。天龍丸と言う海賊船が奉行に追われ沈んだ時、大坂一の廻船問屋の河内屋善右衛門に助けられたのだ。しかし、善右衛門は、その莫大な資産を狙った奉行の松平右近将鑑(原田甲子郎)に、海賊の黒幕と罪を着せられ、?橋で、晒し首にされ、河内屋の奉公人も投獄されてしまったのだ。“軍師”勘助の碇屋に、道伯、捨吉、源太、為七、吉蔵、丹次郎が集まった。「あと一人足りねえぜ」と為七が言ったところで、小又の切れ上がったいい女(桜町弘子)が現れ、「私が佐吉の妹のお駒よ」と言って、呼び出し状を出した。佐吉は、佐渡送りの途中死んだと言う。道伯は怪しんだが、吉蔵以外の全員の渾名を次々に言うお駒を仲間に入れることにする。
    釣り舟の客に化けて、湖上で、軍師勘助は話し始めた。河内屋善右衛門が、自分たちの身代わりになって晒し首にされて今年は七回忌。資財を投げ打って大阪の堀を整備し、大阪中の庶民に今も慕われて善右衛門の追善法要を盛大に執り行いたいのだと言う勘助。その為に東町奉行所から、二千両盗み出すと聞いてたまげる。
    まず、悪源太が役人を斬れるなら手伝うと、最後までぶつぶつ言って捨吉も、通りかかった上役人の舟に、恐れながら、奉行所を襲おうと言う密談をと告白したが、役人は冗談を言うなと取り合わず、結局他の連中から舟から突き落とされ、仲間になると言う。晴れていたのに、捨吉が予測した通り、嵐になり、ズブ寝れになった一同は、碇屋に駆け込んだ。


お光(御影京子)長坂又右衛門(戸上城太郎)逸見軍十郎(楠本健二)、宇部甚八(佐藤洋)、大沢小太夫(藤木錦之助)万兵衛(市川祐二)、彦助(佐々木松之丞)お松(牧淳子)おしげ(園千雅子)万作(鶴田淳一)甚兵衛(源八郎)久兵衛(中村錦司)浪速屋庄右衛門(水野浩)堺屋五兵衛(有馬宏治)和泉屋安次郎(熊谷武)茨木屋藤四郎(矢奈木邦二郎)

    神楽坂毘沙門天で、林家たい平師匠の落語会。元会社主催で呼んで貰ったので、20代美人作曲家と神楽坂駅で待ち合わせて出掛ける。いつものCDショップとのタイアップイベントだが、良かった。30分位の筈が、明烏と、薮入りで、1時間近く。こりゃ独演会だ。時折感じる生真面目さが勝ってしまう話しではなく、力の入った噺は、強引な運びだったが、ビンビン伝わって来た。

    美人作曲家と神楽坂で飲み、ベロンベロンでちょっと絡んで帰宅。

2010年8月30日月曜日

羨ましいぜ!小栗旬。

  赤坂でメンタルクリニック。元会社まで、独身美人OLに惣菜差し入れ。保冷剤含め重い。

   六本木シネマートで、小栗旬監督『シュアリー・サムデイ(136)』
    松竹のマークに「よっ!松竹!!」次の角川映画のマークに「さすが!角川映画!!」と声が被さる。三番目のトライストーンのマークには無言。
    学校のチャイムの音。喜多川高校の校舎、4階のある教室、「欲しがりません、勝つまでは」と言う垂れ幕、窓ガラスには「文化祭復活」と書かれている。廊下側のドアには、机でバリケードが造られている。
    ハンドマイクを持った真鍋京平(勝地涼)が「校長!!あんたは何も分かっちゃいない!確かに、今の若者は無気力かもしれないが……俺たちは燃えている。ギターを死ぬ気で練習してきたんだ!……」教室の中の喜志巧(小出恵介)「あいつは、文化祭でバンドやれば、コクられまくり、ヤリまくりだからじゃなかったか?」バリケードの中には、他に後藤和生(鈴木亮平)北村雄喜(ムロツヨシ) 岩崎秀人(綾野剛)
   校庭には、校長、教頭(笹野高史)、体育教師(高橋努)、生徒たちも集まって、立てこもった教室を見上げている。「既に爆破した倉庫の何倍もの火薬が仕込まれている!」校庭の後ろには、体育倉庫の残骸がある。それを見て、校庭にいた生徒たち、校舎から遠くに逃げ出す。
   「57年に及ぶ伝統ある、この校舎を爆破してもいいのか?」爆弾を作った雄喜「あと5分!!」その声はマイクを通じて全校に流れる。周り中で悲鳴があがる。
   マイクを持った教頭、校長と相談をして「分かった!君たちの要求を受け入れる。文化祭の開催を認める!」
    立てこもっていた生徒たち歓声を上げる。「よし、タイマーを止めろ」「どうせ、爆薬は入ってないんだから」京平「いや、入れた」「何で?」「雰囲気あると思って」「えー!?」「タイマーのコードを切れ!!」「これか!?いや違う!!」焦り出す生徒たち。巧「こうなったら作戦Xだ!」「Xって何だよ?!」「逃げるんだ」皆、バリケードの机を投げ、戸を倒し、廊下に転び、走りだす。階段を駆け下り、閉った裏門を乗り越えたところで、巧「雄基はどうした!?」雄基は、教室内で自分が作った爆破装置を必死で解除しようとしている。しかし、タイマーはゼロを表示し、黒髭危機一髪の人形が飛ぶ。裏門では「雄基!!!」と巧が叫んでいるが、教室は轟音と共に、爆発した。
   3年後、食材の入った袋を提げた巧に京平が絡んでいる。「雄基は死ななかったが、片腕を失って、俺たちに会いたくないと言ったじゃないか」「巧は、まだあの事件を引きずっているんだな。お前は、結局、あの事件のせいで、高校を退学。彼女とも別れ、息子の起こした事件の責任を取って刑事を退職した父親の、ちんけな店を手伝っているじゃねえか。」巧「そんなお前だって、あの事件のせいで退学。しかし奮起して大検に合格、必死に勉強して、三流の望応大学に合格。大学生になれば、コクられまくり、ヤリまくりと思いながら、相変わらずの童貞じゃねえか」「どこかに、女転がってねえかなあ」「いた!・・・」
   二人が歩いている陸橋の下の道、金髪、黒いコート、赤いハイヒールの女がフラフラと道に出て来て、黒塗りのベンツに跳ねられ、ボンネットを転がって、道に倒れる。走りだす巧と京平。ベンツを運転していたサングラスと黒スーツ姿の男が降りて来て、「大丈夫か?!今直ぐ、救急車を呼ぶから」と声を掛けると、女は、男の足に隠してあった拳銃を抜き取り、男に突き付ける。呆然とする男を残して、女は車を出し、走り去った。車を追い掛け走る男を見送り、二人は、何が起きたか分からない。
   男が、掛け戻って来て、二人に声を掛ける。ビビる京平。「お前ら、巧と京平だよな」「??」「和生??」「とにかく、あの女を追いかける。じゃあな」
   和生を見送り、その夜、巧の父親喜志建夫(竹中直人)が、警察を辞めた後、開いたバー、バッドマンで話す2人。その頃、夜の街では、和生が組織の人間十数名に追いかけられていた。
   巧「結局、和生は、ヤクザになったということか?」「あの事件のせいで、3年で中退した和生は、格闘家を目指し道場で修行をするが、病気の妹の医療費のために、ヤクザになった」「その通りさ!!とにかく俺を匿ってくれ!!」バーの事務所に駆け込む和生。突然、店の硝子が派手に割れ、杖を突いた怪しい男(吉田鋼太郎)が入って来る。「今、この店に後藤和生が入って来たよな。隠すとためにならないぜ」言葉も出ない二人に男は、店中を探し「あいつとは、どういう知り合いだ」巧「高校時代のダチです」京平「おいっ」「そうか、俺の名前は、亀に頭と書いて亀頭だ。明日中に、あいつと、あいつが持ち逃げした三億円を返しに来い!逃げると、お前らと家族をバラす。じゃあな。なんだ、入口があったのか?」水差しの水を飲み、グラスごと床に投げ捨てると、帰りはドアから帰って行く亀頭。
    
    出て来た和生「3億取り返さねえと」「それには、あの女だ」「俺、女に覚えがある。昔、巧の母ちゃんじゃないかと歌舞伎町に会いに行った女だ」「!?」「はっぴーナイトの?」
     10年前の回想。団地の散らかった一部屋。ダイニングキッチンの食卓で巧の父健夫が、新聞を読んでいる。少年時代の巧が雑誌を持ってやって来る。「お父さん、この人、お母さんじゃないの?」「人の部屋に勝手に入ってくるんじゃねえ!!お前の母ちゃんは、お前を産んで直ぐ亡くなったんだ。」巧がだしたのは、風俗雑誌「おとなの遊艶地」、はっぴーナイトのソープ嬢のヒメノ(小西真奈美)が載っている。結局、巧は友達の4人を誘って自転車で、新宿歌舞伎町に向かう。雄基が発明したターボ自転車は、凄い力を発揮したが、タイヤがパワーに耐えきれず爆発した。歌舞伎町のはっぴーナイトは見つかった。横には、小さな水子地蔵がある。客引きの坂口(須賀貴匡)に「ヒメノさんを呼んで下さい」「ガキがどういう知り合いだ」「僕のお母さんかもしれないんです」「!?」
    ソープ嬢の控え室で待たされる巧。暫くすると「君があたしの子?言われて見れば、目許とか似ているわね」「えっ!?」「嘘に決まっているでしょ」「君だって、お姉さんがお母さんじゃないって知ってたんじゃないの?」「お父さんに、お母さん以外に好きな人が出来たんじゃないかと思って。こんな雑誌、お父さんが持って帰ることなかったから…」


   正直、見るまで、山本又一朗だし、小栗旬を役者として感心したことはないので、昨日の「東京島」に続いて、今年のダメ邦画と全く期待していなかった。事実、突っ込み所も少なくはない。しかし、途中から、何だか1本映画撮った小栗旬が羨ましくなってきたのも事実だ。皮肉でなく、映画ファンの高校生が、友達誘って、『作ってやったぜ!俺の映画』みたいな感じだ。確かに、商業映画だからバジェットも少なくないので、スタッフもプロだし、好きな役者に出て貰って、カメオ出演もこれでもか、やりたい放題(笑)。
   ただのアイドル役者風情が監督しやがってと、映画評論家や映画ブロガーの評価は決して高くはないが、田中絹代だって、佐分利信だって、山村聰だって、宇野重吉だって、若き日に、やっぱり監督しているじゃないか(笑)。最近の日本映画界の製作委員会によるプロデューサーシステムの弊害よりも、よっぽどマシだ。
   新人監督が、苦労して自分の力で撮った作品が海外で評価された途端、自分たちのチンケな作品の監督に抜擢した挙句、寄って多寡ってぶっ潰す。そんな日本映画があまりに多い。少なくとも、最近の山本又一朗のプロデュース作品の中ではマシな方だ。試写会見て文句言っている連中は嫉むなら、自分で撮るか、金集めて、好きな監督に映画撮らせろ!!

  小栗旬!!と呼び掛けても、本人には届かないと思うが(苦笑)、これに懲りず、どんどん撮れ!!!次はもっと頑張れ!!

  ただ2つだけケチをつけると、「映画監督は、僕の長年の夢でした」と言う小栗旬のコメント、まだ20代なのに、そんなコメントは、日本人の3分の2、映画業界人の3分の3は敵に回すので、そこは言葉だけでも謙虚に言え!!。もうひとつは、小西真奈美が風俗嬢となっていたが、ワシのイメージでは、風俗嬢は、ノーパン喫茶やファッションマッサージ、ヘルスなど風俗店が出来てからの、本番無しの女の子の仕事、ソープ嬢は・・・違うと思う・・・。別に差別ではなく・・・。
   

   さすが、韓流映画の聖地六本木シネマート。20人ほどの女性がロビーで終日談笑中。モニターに映る予告編やポスターなどをデジカメ撮影。自分と同世代か少し下だろうか。子供は成長し手が離れた専業主婦だろうか。月曜の昼間から羨ましいなあ。映画撮らせるどころか、自分の口ひとつ養うのが厳しい、甲斐性のない自分(苦笑)。

2010年8月29日日曜日

BBと多江。

   25才美人画家と、新宿武蔵野館のモーニングショーで、ブリジット・バルドー生誕祭。 
   56年ロジェ・ヴァディム監督『素直な悪女(134)』
   
   中年の紳士エリック(クルト・ユルゲンス)が、南仏の港町サン・トロペーズの高台にある一軒 家にやって来る。海側の庭には、大きなシーツなど洗濯物が干してある。その向こう側に、若く伸びやかな女の肢体が寝そべっているようだ、男は「君に頼まれていた車を持ってきたよ」「えっ!どんな車?」「赤いオープンカーだよ」
    そこにその家の主婦モラン夫人(ジャーヌ・マルカン)が帰って来る。「このあばずれ女!仕事もしないで、男と乳繰り合っているのかい!孤児院の院長に手紙を出して世の中に出られないようにしてやるよ!」「ちゃんと仕事はしているわ」と娘が家の中に入って行く。男は「お金で解決出来ないものですか?」「とんでもない!あんな娘は、孤児院に戻した方が世のため…」と主婦は相手にしない。二階の部屋の窓から、若い娘の肢体を覗いていた老人は、妻が帰って来たのを知って、慌てて窓を閉めるが、スカーフを窓に挟んでしまった。娘とモラン夫人は激しい口喧嘩をしながら、老人の部屋に上がって来た。窓に挟まったスカーフを目ざとく見つけ「あんたも、だらしなく若い女を覗いていたんだね」と罵る。
   娘の名はジュリエット(ブリジット・バルドー)。孤児院で育ち、18才になり、この街でモラン夫妻の書店の店番兼家政婦となったのだ。


  25歳の美人画家と、映画の感想を語りながら、王ろぢで昼食を取る。買い物をしてからバイトに行くと言う彼女と別れ、恵比寿の東京写真美術館に行く。専門学校の講師の先輩の写真家の方から招待券を貰っていたの『立ち止まらない女性たち1945ー2010 おんな』の最終日。写真展のメインアートに使われていた木村伊兵衛さんを始め、錚々たる顔ぶれだが。今ネットで話題の丸田祥三の少女写真も・・・。全て女の人は強く、フォトジェニックだった。フォトジェニックと言うのは、カメラマンの多くが男性であるからかもしれないが、原爆投下後の広島の若い母親、玉音放送を聞き呆然自失する女子挺身隊員も、水俣病に苦しむ患者も、21才の新妻の、激しい農作業で老女のもののような手のひらも、100才近くになっても働き続ける老婆のしわくちゃな顔も、写真として美しく、また、一人一人の女の一生の一瞬だ。 切ないなあ。
ついでに、3階で展示されていた『Look at me!私を見て! ヌードのポートレイト』も見る。

   吉祥寺バウスシアターで、篠崎誠監督『東京島(135)』
    スーツケーツに入れる荷物を出したり入れたりしながら悩む清子(木村多江)。「私は旅行中に使うものを悩んでいた。しかし結局、殆どの物は必要がなかった。清子は、夫の隆(鶴見辰吾)とクルーザーでの旅に出る。しかし、難破し、無人島に辿り着く。清子は島内を歩き、極彩色の蛇を見つけ、石で蛇の頭を叩き潰す。蛇の皮を剥ぐ清子。住み家(海風を直撃する場所に、美術スタッフが気合を入れて作ったようなかなり堅古ものだ)に帰り、隆に「食料採ったわよ」と声を掛ける。隆は、プリンなど食べ物の絵を地図の裏に一心不乱に書いている。「蛋白質を採らないと持たないわよ」と清子。数日後、与那国島の厳しいバイドから逃亡した16人のフリーターが島に漂着した。

    こりゃ本当に酷い(爆笑)。日本一の不幸女優木村多江初主演作。女の愚かさが生む薄幸じゃなくて、これではただの馬鹿な女。GAGAというか、ユーズフィルム何をやりたかったんだろう。ビデオストレートのようなストーリーで、女性客の共感を呼ぶシナリオってあるんだろうか。今の邦画界の新人、中堅監督潰しの典型のようなプロデュースだな。

2010年8月21日土曜日

渋谷HMV閉店に思うこと(上)

    HMV渋谷の閉店を感傷的に語る人は多いようだが、渋谷系と言う言葉を生んだHMV渋谷店は、センター街をもっと奥に入った、今のマルハンパチンコのところのONE-O-NINEビルだったし・・・。(西武セゾン系WAVE渋谷に対抗して、東急系も、CDショップかと当時は思った。セゾンも、WAVEも、PARCOも、西武系じゃなくなってしまったんだよな・・・)

そんな昔話をしたかった訳ではなく、メガショップとCDセールスについて、纏めておきたかったのだ。

    レコード店のメガショップ化は、CDという新しいパッケージが浸透した80年代中盤からだったと思う。1983の年六本木WAVEの開店から始まるのだ。レコード、カセットテープという2種のパッケージに加えて、82年にCDが発売された。最初は、何だか小さくて頼りなかったCD(当時は、レコードの商品ケースに小さすぎるということで、縦長の紙のパッケージの中にCDサイズのプラスチックケースが入っていたのだ。)は、次第に、新譜だけではなく、旧譜カタログ商品も、次々とCD化、復刻されることにより、それまで、バカ高かった60年代や70年代初頭の名盤やマニアックな作品が簡単に手に入れることが出来るようになった。それにより、膨大な数のカタログ作品を売る入れ物としてのメガストアが必要になった。その広い売り場を埋めるために、更に沢山のカタログ商品がCD化されたのだ。
   店内のセレクションは、それぞれの売り場の担当者に委ねられ、彼らは自分たちなりのリコメンドをコメントカードによって表し、アメリカから入って来た試聴機に入れるCDをチョイスした。売り場の担当者は、バイヤーと呼ばれ、六本木WAVEの各売り場にカリスマバイヤーが産まれた。その人たちが、ヘッドハントされて、HMV やタワーレコードに移って行ったのだ。(皆さん、今、どうしていらっしゃるんだろうか・・・。)
  そんな流れで、渋谷HMVが開店し、国内盤の売り場担当のO氏が、JPOPと洋楽を同じ文脈で、陳列していったのが、渋谷系の始まりと囁かれていた筈だ。

    CDとメガストアの登場以前というか、70年代初頭までは、カタログ商品と言うのは、アーティストのベスト20とか、珠玉のイージーリスニングとか、日本の各レコードメーカーが適当にコンパイルした2枚組の廉価盤だった。新譜として発売されるレコード以外は、数少ない輸入盤屋や中古レコード店のエサ箱を漁るしかなかったのだ。
    そして、日本ではヒットしないと判断して、日本の各レコード会社が発売しない、注目すべきレコードをレコメンドして教えてくれる人は、輸入盤屋をやっている偏屈なヒッビーオヤジや、加藤和彦さんのように海外経験のある大人しかいなかった。
   インターネットもなく、海外が遠かった60年代、音楽情報は、欧米のものでさえ、一番早く無い入るのはレーベル契約のあるレコード会社だった。海外の生の情報は極めて少なかった。音楽専門誌の編集者や、ラジオ局のDJの多くは、海外で直接音楽シーンに触れた経験のある人は、たいそう少なかった筈だ。

  メガストアの話しに戻る。カタログ作品を集めた、本来はロングテイル・リアル店は、90年代中盤から変質する。95年タワレーコードの旗艦店として現在のビルに移った時に、自分は、不思議な気がしたのだ。そこのビルに架かった巨大看板は、当時ミリオンセラーを連発しているビーイングが年間契約していた。それまで、ロングテール・リアル店だったメガストアは、ミリオンセラーを全国一売る店になったのだ。事前予約者だけ参加できるイベントやグッズのお陰で、発売日には長蛇の列が、宮下公園まで続いた。

   1988年に開局したJ-WAVEに奪われていたJPOPへの巻き返しに、1993年、TOKYOFMがパルコに作ったスペイン坂スタジオは、連日、ミリオンセラーのJPOPアーティストをゲストに呼び、それぞれのファンが凄い行列を作っていた。それに対抗して、JWAVEは、1998年の現HMV渋谷の中にサテライトスタジオを作ったんだったな。まあ、そんな渋谷の90年代。確かに、アナログ盤や輸入盤のセレクトショップは無数にあったが、90年代後半の渋谷を語るのに、そんな文化系でなく、深夜に徘徊していたチーマーたち肉食系若者の方が、相応しい気がするのだが・・(笑)。

   音楽業界(レコード会社と、そこから多額のアドバンスを貰えるプロダクション)は、この世の春を謳歌していた。TVスポットとビルボードは、数千万単位で売り買いされ、1年後まで予約が入っていた。億の宣伝費を、広告代理店に発注するのが宣伝担当の仕事、CDショップの販売促進費も、それまでは、何万円単位だったのが、何百万、タワーやHMVのメインスペースを押さえるためには、それ以上が必要だったのだ。気がつくと、メガストアは、ロングテールではなく、ヘッドの商品をより多く売る装置になっていたのだ。
(続く)

不眠の中高年は、海岸で半日過ごすだけでも厳しい

    鵠沼海岸で、外苑前粥屋店主企画の地曳網。前夜デザイナーN氏と飲んだが、5時前に起き、風呂に入り、貰ったばかりの名前入り甚平に着替えたまでは絶好調だったが、あと1時間大丈夫だと、ウトウトしたら、9時前だ…。慌てて駅まで自転車を飛ばしたものの…。現地に着いたのは11時近く、しかし、地曳網は、その頃ようやく引き揚げられ、佳境となっているのだった。
2時半位に帰ろうと、鵠沼海岸駅まで歩きはじめると、往きは10分ほどで着いたのに、ヘロヘロで歩けない。途中とあるプール付きマンションのロビーで休んだりしながら、30分以上掛ってようやく駅に。

   本当は、東銀座で約束もあったのだが、やっとの思いで帰宅し、ダウン。

   熱中症一歩手前と言う感じ。不眠の中高年は、海岸で半日過ごすだけでも厳しいのであった。

2010年8月20日金曜日

スタッフ・ベンダ・ビリリ!

    日仏会館で試写会、
    ルノー・バレ&フローランド・ドラテュライ監督『ベンダ・ビリリ! ~もう一つのキンシャサの奇跡(132)』

    2004年12月、コンゴ民主共和国の首都キンシャサ。深夜の町には沢山のストリートチルドレンがいる。彼らは、かっぱらいやタカリなどて、生きている。人から盗んで生きていくのが、ジャングルの掟だと、一人の少年は言う。
    2005年5月、同じ場所に、自転車やバイクを改造した車椅子に乗った男たちが、集まって来る。リーダーの男はリッキー。パパリッキーと呼ばれる障害者の自分達が生きていくために、バンド、スタッフ・ベンダ・ビリリを作っているのだ。彼らは、幼い頃ポリオに感染して障害者となった。身体障害者シェルターで暮らしている。そこには彼らの家族も暮らしているが、皆路上生活とほとんど変わらない生活だ。キンシャサの子供たちは、子供同士博打をし、その日暮らしだ。そんな子供たちに、音楽で生計を立てる術を教えるリッキー。彼らの歌のテーマは、日常の生活から生まれた力強いメッセージだ。トンカラ(ダンボールのこと)の上で、寝起きする生活を歌った“トンカラ”、自分たちのようなことが起きないように、母親に幼児にポリオのワクチンを飲ませてくれと言う“ポリオ”、ギタリストのココが歌うコンゴの大河プールマレボ(?)の両岸で別れ別れに暮らす妹を歌った歌“マルガリータ”
    ある夜、ドキュメンタリー映画のクルーは、空き缶と一本の木と針金で出来た自作の楽器を演奏すことで、生きて行こうとしている13歳の少年ロジェに出会い、リッキーに紹介する。リッキーは、俺が時間を掛けて仕込めば、ロジェが将来優秀なリード・ギタリストになるだろうと言って、メンバーに加えた。彼らのリハーサルは、キンシャサ動物園だ。
     レコーディングが始まった。馴れないスタジオでの演奏は、メンバーを緊張させ、失敗を繰り返す。更に、シェルターが火事になり、リッキーたちは焼け出され、路上生活に逆戻りだ。日々の生活もままならず、レコーディングスタッフは、残りの予算をリッキーに預け、フランスに一時帰国する。ロジェも、故郷の村に帰った。
     1年後、レコード会社からの支援をこぎつけ、キンシャサに戻ると、リッキーたちは、煙草や菓子を売る屋台で生計を立てていた。その年は、ジョセフ・カビラの大統領選挙が行われている。
     再び、メンバーを集め出すリッキー。ロジェを探しに出るが、車でも辿り着けないような場所だ。しかし、成長したロジェが、小舟に乗ってリッキーの前に現れた。

レコーディングは再開された。今回は、いつもリハーサルをするキンシャサ動物園でスタートした。
夜、蚊の大群に悩まされながらも、素晴らしい演奏が録れた。一年のブランクを感じさせない集中力で、彼らの1stアルバム「屈強のコンゴ魂」が完成した。
アルバム完成記念コンサートが、キンシャサのフランス系会場で開かれ、大成功を治め、800ドルのギャラも入った。リッキーは、メンバーにギャラを分配する。ロジェには、主要メンバーと同じ80ドルを渡し、入院中の母親の治療費を払って退院させてやれと言う。次は、いよいよ、海外ツアーだ。2009年7月、フランスで行われたユーロックフェスだ。パスポートも、飛行機も、勿論海外も初めての経験だ。口々に自分たちの音楽への自信を語りながらも、緊張した表情のベンダ・ビリリのメンバー。
   コンサートは素晴らしいものだった。

トンカラ(段ボール)の上から世界へ。
友よ忘れるな。昨日は道で食べ、今日は皿で食べる。今日は皿で食べ、明日は道で食べる。
リッキー、ロジェ、ココ
「屈強のコンゴ魂」
2010年7月、ユーロック
トンカラ(段ボール)の上から世界へ。
友よ忘れるな。昨日は道で食べ、今日は皿で食べる。今日は皿で食べ、明日は道で食べる。

2010年8月18日水曜日

喜劇と悲劇。

     久しぶりに午前中から行動。暑い。昨夜の暴飲に、腹も冴えず、水やらビタミンウォーター飲みながら、旗の台で、打合せ。心配していた通りの状況。大丈夫なのか?昼、旗の台で蕎麦と蕎麦湯で、少し腹も落ち着いたので、渋谷で下車。

    ヒューマントラストシネマ渋谷で、
    ルーベン・フライシャー監督『ゾンビランド(130)』
    ホワイトハウスから煙が上がっている。見るとカメラは上下逆だ。ゾンビが襲って来る。ホワイトハウス前の通りには、何台もの横転し、乗り捨てられた車が転がっている。数ヶ月前、新型の牛ウイルスが、ハンバーガーを食べた者たちにパンデミックを起こし、感染者はゾンビになり、次々に人を襲い、今ではゾンビだらけになった。ここは、ゾンビランド合衆国だ。
   ゾンビ達から逃れる方法のルールNo.1は、有酸素運動だ。逃げ足の速さが肝心だ。だから、まずゾンビの犠牲になったのは、のろまなデブたちだった。
   更に、ゾンビを退治するために、射撃をしても、二度撃ちをしないと、襲ってくる。これがルールNo.2。更に、どんな時でも気を抜いてはいけない。人間が一番油断する場所、それはトイレだ。ルールNo.3はトイレにご用心だ。
   この30を超えるルールを作ったテキサス州ガーランドの大学生(ジェシー・アイゼンバーグ)は、引き籠りの臆病者だった。彼は、自室でPCに向かっていたので、ゾンビに出会わずに済んでいたのだ。当然、童貞でキスをしたことも、ガールフレンドの髪をかきあげた経験もない。
   ある日、彼は、部屋のドアを激しく叩き助けを求める女学生の声を聞く。彼女は406号室の女(アンバー・ハード)だった。セクシーで美人の彼女を部屋に入れ話を聞くと、街を歩いていたら、浮浪者が襲ってきたのだと言う。更に咬み付こうとしたので、必死に逃げて来たのだと言う。飲み物(何だったか忘れてしまったが・・・微妙な味のヤツ)を出し、疲れたので眠らせてという406号室の女に寄りかかられ、彼女をオハイオ州コロンバスの両親に紹介してもいいなと思いながら、自分も眠ってしまうと、数時間後、彼女がゾンビになって唸っているのに気がついて目が覚める。部屋の中を逃げ回り、ドアに足を挿んで骨を折っても、平気で追いかけてくる女。トイレの貯水タンクの蓋で、二度、女の頭を殴り、やっと逃れることが出来た。
   やっと、両親を訪ねて、安否を確かめようと外に出る。車が動かなくなって困った時に、3と手書きの数字が書かれた重装備の車がやって来る。果たして、運転しているのは味方なのか。車が停まり、ショットガンを抱えた、マッチョなテンガロンハット男(ウディ・ハレルソン)が降りてくる。ライフルを構えた主人公と暫く向かい合っていたが、取り敢えず、親指を立て、ヒッチハイクさせてもらうことにする。車に乗せて貰ったものの、フロリダ州タラハシーに行くと言う男に、同じ東に行くのだから途中まで乗せてくれと言うが、どうも馬が合わないと言う男。結局名前は名乗らず、お互いの目的地、コロンバスとタラハシーと呼び合うことになった。
  タラハシーは、ゾンビハンターとしては優秀だった。しかし、何故か安物のスポンジケーキ、トゥインキーズを探して旅をしているのだ。
  笑った。笑った。
   
  シアターN渋谷で、

  74年ジャパン・ムービー・ピクチュアー村山三男監督『樺太1945年夏 氷雪の門(131)』

   日本最北の稚内の、樺太を望める稚内公園の北端に、氷雪の門というモニュメントがある。樺太で亡くなった全ての人々の慰霊塔である。その隣に、真岡郵便局電話交換師の乙女9人の悲劇を後世に伝える碑が建てられている。

   正に65年前のこの数日を描いた作品。日本映画冬の時代に、こんな映画あったんだな。

   夜、若手クリエーターが集まる飲み会に誘われていたが、都合出来、キャンセル。52歳の肉体には、連日の飲酒はきつかったので、助かったともいえるか・・・。

2010年8月17日火曜日

52歳。


   神保町シアターで観たい映画あったものの、午前中からの酷暑で断念。結局、夕方、浴衣、雪駄、麦わら帽子のバカボン姿で、外苑前の粥屋喜々に。私の52回目の誕生日を祝う会。お盆枯れの喜々の売上に貢献したかったが、あまり反応無く、朝のやじうまワイド、目覚ましの占いもかなり低調で、凹んでいたが、8人位かなと思っていたら、沢山来てくれて、ご機嫌にベロンベロンに…。楽しいなあ。皆さん、本当にありがとうございます。

2010年8月16日月曜日

昼夜逆転

  酷暑鬱を気取って、デパス飲んだら20時間眠り、それから完全に昼夜逆転して二日目。午前中、闘病中の友人のツィット気になるが、何だか普通に返信すればいいのか、DMした方がいいのか悩んでいるうちに眠ってしまうし。夕飯を25歳美人画家と、地元ささら亭で食べて、かなり幸福感が高まったが、帰宅して本を読んでいると、全く眠れなくなってしまう。困った。17日には、52歳になるのになあ。

2010年8月13日金曜日

夢か現か。

    昨日の地元飲み、調子に乗ってベロンベロンになった上、締めに麺まで食ってしまい、午前中はダウン。

   ゆっくり風呂に浸かり、渋谷に。美大生とHMVで待ち合わせて、

   渋谷ヒューマックスシアターで、
     クリストファー・ノーラン監督『インセプション(129)』

    海岸に打ち寄せられた男(レオナルド・ディカプリオ)。武装した日本人(ちょっと日本語は怪しい)が「不審な男を見つけました」男の上着を剥ぐと、ピストルが隠されている。

   夢だから、夢の世界のアクションは、思い切り遊んでいる。360°回転式ホテルセットと、007張りの雪山アクション。幾つかの映画のリスペクトネタ含め深読み出来る部分もあるが、びっくり映像の連続で楽しめるからいいんじゃないかというシンプルさ。「恋しさと せつなさと 心強さと」by t.komuro みたいな映画。けっこう楽しんだけど・・・。

沖縄料理屋、彼女は飲まないので、一人オリオン生&泡盛で、出来上がって帰宅・・・。

2010年8月12日木曜日

耳が痛い。

  退職した大手全国紙元新聞記者にありがちなこと

  6.「新聞社を退職した・見限った自分」を語りだすと長い、
 話の合間にそういう内容をうっかり振ると、組織の問題点から上司の欠点からあれこれずっと喋る。あまり出身母体を褒めることはない。世話になってたはずだがなあ。
とか(苦笑)。

  あまりに身につまされて、大笑いしてしまった。

  そろそろ脱皮しなければ。

  今週末は、部屋の大片付けでもして、そろそろ引き籠りを脱しよう。

2010年8月10日火曜日

シネマヴェーラでかかっていた昇り竜の歌、よかったなあ。

    午前中は、赤坂のメンタルクリニック。 


   シネマヴェーラ渋谷で、石井輝男 怒涛の30本勝負!!
      
     64年東映東京石井輝男監督『いれずみ突撃隊(127)』
      
     馬に乗った日本兵(高倉健)が、中国の原野を一人やってくる。「歩兵衆木(もろき)武男一等兵、南支派遣軍杉野三中隊機関銃小隊に転属してまいりました。」阿川准尉(安部徹)山本軍曹(大東良)に報告している。衆木は、山本小隊への配属を命じられた。
     その頃、山本小隊の兵舎では、加賀上等兵(山本麟一)ら古参兵(蓑和田良太、関山耕司、久保一、日尾孝司、潮健児)による初年兵たちの虐めが行われていた。宮田二等兵(津川雅彦)は、盥を笠替わりに仁義を切らされている。仁義の切り方が悪いと、竹刀で打ち据えられている宮田を庇って立つ衆木。「テメエ、何だ?!」星の数を見て、「1等兵じぇねえか?逆らうのか」殴りかかる古参兵たち。衆木の軍服が破け、肩の刺青が見える。
   衆木は一歩下がり「ご丁寧なご挨拶。ありがとござんす。どちらさんも、お控えなすって。お控え下さって、ありがとうござんす。手前、生国は関東でござんす。関東、関東といってもいささか広うござんす。関東は、華のお江戸、今では大東京でござんす。大東京、大東京といってもいささか広うござんす。隅田川のほとり浅草でござんす。浅草は柴崎3丁目に・・・(中略)姓は、衆木、名は武男。駆け出し者でござんす。一銭五厘の赤紙で、日露の戦いでその名も高い麻布三連隊第一中隊に召集されやした。そして転属に転属を重ね、ここ南支派遣軍杉野三中隊山本小隊に参りました。以後お見知りおきの程宜しくお頼もうします」見事な啖呵と刺青で、兵舎内は静まり返ったが、上官侮辱で、営倉3日の処分となった。
   阿川准尉と山本軍曹が、安川中尉(杉浦直樹)の前で、衆木の処分について報告している。「示しがつかないので、軍法会議に掛けろ」と息巻く阿川に、「それでいいじゃないか。彼も営倉で反省するところがあるだろう」「しかし、このような兵隊は軍法会議にかけまして」「兵隊を罪に落とすことよりも、そういう兵隊が出ないように教育することがお前たちの務めだ。私的制裁はやめろ」「それは伝統でありまして」「悪い習慣や伝統は改めたほうがいい」とやり取りする安川。
   衆木の営倉を訪ねる安川。「何でえ、星の数は一緒じゃねえか!金筋の数が多いだけじゃねえか」と取り合わない衆木に、「じゃあ、勝負するか」泥まみれで、殴り合う二人。安川は強い。「おめえ、なかなかやるじゃねえか。将校にしておくのは、もったいねえよ・・・。娑婆に出たら、俺と兄弟の盃交わさねえか・・・。いや、五分の兄弟分でいい。」笑う安川「おまえ、浅草なんだってな。どこの組だ」「いや組には入ってねえ。俺は親分なし、子分なし一匹狼よ。」「浅草は、武蔵一家のシマじゃないか」「詳しいな。そうよあの武蔵一家の出入りの時に、親分に頭を下げられて、手助けしたのよ」「あの時、親分は中風で寝たきりだったんじゃねえのか」「そうだった・・・。実子に頭下げられて」「そうか、実子に。しかし会ったことはねえな」「えっ?」「関東武蔵一家の実子、三代目の安川とは俺のことだ」「えっ?兄貴!!兄貴!!」「おめえ、浅草のシマはどこだ?」「六区で・・・」「六区の?木馬館の脇で・・」「木馬館の脇で、何を捌いていたんだ」「とうもろこしに・・・。夏は氷水・・・。」「なあ、衆木。この軍隊にも改革せにゃならんことはいっぱいある。しかし急にはできんのだ。なんせ今は非常時だ。日頃、カタギの皆さんにご迷惑をかけてる俺たちだ。力いっぱい頑張ろうじゃないか」「へえ!兄貴!!いや、中尉!!」「お前、立派な絵が入っているんだってな。今度の相撲大会で見せてくれよ」泥だらけで土下座しながら、安川との出会いに感激している衆木。
  部隊対抗相撲大会。衆木が、おでんの屋台にいると、慰安婦のみどり(朝丘雪路)とみつ子(殿岡ハツエ)が声を掛けてくる。「あんたってえ、浅草なんだってえ?」三河弁のきついみつ子が「みどり姉さんも、浅草の出身なんだあ」安川が転属してしまい、拗ねている衆木は、けんもほろろだ。みどりは気分を害す。「あんだあ、みどり姉さんは、この慰安所のNO.1だのに、もったいないなあ」相撲大会の賞品の前で踏ん反り返っている阿川准尉が、みどりの姿を認め、しきりと目線を送るが、みどりはつれない。
  相撲大会では、初年兵は次々に土俵に叩き付けられていた。宮田も顔から投げられた。行司役の兵士が「もう一人で10人抜きだ!!もういないか?」そこに、衆木が軍服姿でやって来る。次々に古参兵を投げる衆木。気がつくと皆転がっていた。

押元上等兵(砂塚秀夫)石渡上等兵(大前均)今井一等兵(春風亭柳朝)茂木初年兵(小川守)杉野中隊長(植田貞光)岩山分哨長(高城裕二)


     68年東映京都石井輝男監督『温泉あんま芸者(128)』
     珍妙でいい加減な主題歌・・・♪バラバラバラバラ、やあ!・・・・
富丸(三原葉子)「さあ!みんな張り切って稼ぎましょう!!」
  ♪バンバラバンバン、バンバラバン
   個室で身体を揉んでもらいながら、ムラムラして、マッサージ嬢に迫る男たち(清水正二郎、田中小実昌、大泉洸・・・)
   ここ石川県粟津温泉の旅館、鶴亀荘に、芸者姿の、富丸、蔦子(賀川雪絵)梅子(應蘭芳)雛奴(三島ゆり子)千代(橘ますみ)玉栄(英美枝)すみ(小島恵子)らがやってきた。芸者の金太郎(南風夕子)とんぼ(辰巳典子)君蝶(三乃瀬愛)歌江(渚マリ)桃子(工藤奈美)と同じお座敷だ。富丸たちは、お座敷では芸者の格好をしているが、客室でマッサージもすれば、身体も売る、あんま芸者、いわゆる“パンマ”だ。お座敷で芸を見せる芸者たちと、寝床で芸を売るあんま芸者たちは勿論仲が悪く、いがみ合ってばかりいる。しかし、大広間に一杯の男客たちは、そんなものはどうでもいい。舞を見せる金太郎の邪魔をして、富丸たちがゴーゴーを踊り始めると、やんやの喝采だ。金太郎を妾にしている野毛親分(上田吉二郎)が「野球拳をやれ!!」と叫ぶと、温泉芸者対あんま芸者の壮絶な野球拳が始まった。
   汚物処理業者の黒島(芦屋雁之助)の部屋で、富丸が黒島のマッサージをしている。もっと力を入れろと黒島が言うと、富丸はオナラをしてしまう。露骨に嫌な顔をする黒島に「あたし、緊張すると出てしまうんよ。これで嫁にもいけなくなったのよ」と弁解する富丸。宿の番頭が、「あいにく、その日は宴会が重なっていまして」と言いに来る。「どうしても、何とかして貰わんと困るんだ」と黒島。
   宴会、市の清掃部の品川部長(金子信雄)、保健課長(人見きよし)衛生課長(茶川一郎)係長(小島慶四郎) を接待する黒島。黒島は、バキュームカー1と1/3台につき5円の値上げを、品川に認めさせたいのだ。宴会に富丸たちあんま芸者たちが入って来る。鼻の下を伸ばして喜ぶ小役人たち。玉栄の太股には蟹の鋏の刺青がある。蔦子は何度も再生した処女膜が売り物だ。品川は、千代に目を付け、黒島は番頭に交渉するが、千代は頑なに貞操を守っていて駄目だと言われる。黒島は、何とか富丸を相手にさせることを納得させるが、緊張した富丸は、やはりオナラをしてしまい、翌朝、あの女は、お前の仕事と一緒だなと嫌みを言う品川。
  粟津共済診療所の、産婦人科の椅子に蔦子が座っている。医師の吉岡伸二(吉田輝男)は、保険は効かないぞと言って、処女膜の再生手術をしぶしぶ行う。蔦子が終わると、千代が椅子に座る。「蔦ちゃんは診れて、何で私を診てくれないの?」と足を開く千代に「見なくても分かっているよ」と吉岡。「先生!!あたしの初めての人になって!!水揚げをして!!タダだっていいのよ!!」涙を溜めて必死に訴える千代は、吉岡に相手にされず、診療所を飛びだし、橋の上で泣いている。
  品川や黒島たちが、船で帰って行くのを送るあんま芸者たち。千代は、二人にお土産を渡す。着いた連絡船から降りて来た中年男を見て、駆け寄る富丸。男は恩師の横谷(南都雄二)だった。「富田くん!!」「先生!!ちょっと、桟橋で待っていて!!」横谷は、妻とも上手く行かなくなり、仕事でも失敗して逃げ出して来たと言う。この温泉で下足番でも何でもやって静かに生きて行くんだと言う横谷を励ます富丸。

横谷の妻(稲村理恵)横谷の娘(美波節子)浜中の女将お徳(沢淑子)武(南道郎)雪子(高倉みゆき)花紀京里井蕗
武者小路実篤の「この道より 我を生かす道なし この道を歩く」

2010年8月8日日曜日

浴衣で銭湯。

  浴衣姿で、近くの銭湯秀の湯に。烏の行水なので、出てからダラダラし、汗が引いたら博華で餃子とビール。勿論、下はステテコ。

2010年8月7日土曜日

酷暑鬱。

   昨日から阿佐ヶ谷ラピュタで、モーニングショー和泉雅子の『私は泣かない』最終日を見るつもりだったが駄目だ。結局だらだら二度寝してしまった。鬱歴10年、夏はメンタル好調な筈だったが、今年は酷暑鬱。エアコンタイマー切れる度に目が醒めるのがいけないのかとも思っていたが、点けっぱなしでも変わらない。8時間以上寝ないと駄目な身体になった。10代のようだな…。あの頃、正直20時間でも眠れた気がする。このまま、寝たきりに繋がっていくのだろうか(苦笑)

  100歳超の行方不明者続出だが、90代はもっといるだろう。年金を詐取しようと言う意識がなくても、親と仲違いして、交流が無くなった老親子多いだろうな。幼児虐待などでも、社会構造の変化を言われるが、仕事の無い田舎を捨て、大都市(と言うより東京・大阪)への超人口集中によって、大都市では個人は匿名の存在になり、田舎では、そもそも社会自体が成立しなくなって行く。どちらにしても、地域社会など存在しない。

  体験入学の講師の筈だったが、キャンセルだった。まあ講師料は変わらず貰えるので問題はないのだが、1時間半は、帯に短し襷に長し。しばし、講師室で、平岩弓枝「御宿かわせみ」
   新宿で、JFCの伊藤会長、ケンジタマオ副会長と3人で、フリーランス見本市の打合せ。途中から、ただの吞み会というか、ブレストというか。楽しいなあ。

2010年8月6日金曜日

ヤマハ渋谷。

    渋谷ヤマハが閉店と言う言葉が、ツイッターに踊っている。中学まで府中在住だったが、高校で井の頭線浜田山に引っ越したので、自転車→電車となり、自分の行動エリアは一気に広がった。
    中学時代は、それこそ、自転車で国立、立川、福生と言う感じが、国分寺、吉祥寺、渋谷、新宿…。新宿蠍座、渋谷百軒店…。制服のない都立高校だったので、ATGだけでなく、18禁の映画館やストリップまで(苦笑)。
    ヤマハ渋谷は、週末は必ずインストアイベントをやっていた。ただで見られた。しかし、レコードは正直高い。ただ、船便のカット盤のみ、手が届いた。年に何回かあるバーゲンは小躍りして喜ぶ、隠れた掘り出し物があった。気がつくと、売り場はどんどん減り、LM楽器屋になっていた。ムルギ-は憧れだったが、カレーのコスパとして高杉。カット盤買うか、映画見るよりも高いカレーは当時のガキには有り得ない。
    しかし、当時、近所の小さなレコード屋は、充分音楽を発信していて、金の無い高校生に、沢山試聴させてくれていた。3か月に一遍買うかどうかの自分の趣味を覚えていてくれて
いいのが入ったわよと言われると、買うつもりだったものではなく、マハビシュヌやら、リターン・トゥ・フォーエバーやら、ラリー・コリエルやら買ってしまったのだ。

   現在お世話になっている専門学校の非常勤講師の先生方の集まりで、横浜に。中華街で、自分が一番の若造で7人。久しぶりな若造モードで酔っ払う。

2010年8月5日木曜日

昨日のきたろうさんは3チョップ。ワシは2000ベロ。

   昨日の反動か、午前中はダウン。

   午後、白金のデザイン会社で打合せ。ビジネスパートナー(マネタライズ出来ていない・・・)N氏と、打合せ終わりで渋谷にバスで出て、渋谷立飲みの老舗、富士屋本店で、1000ベロのつもりだったが駄目だ。私一人で、2000ベロだ。

2010年8月4日水曜日

音楽映画3本と。

    前夜遅かったが、最近珍しく朝目が覚めたので、水曜日だし映画館入り浸ろうと思い、おむすびをこさえ、外出。途中案の定猛烈な睡魔襲うが、渋谷アップリンク・ファクトリーで、

    ジェフリー・レヴィ=ヒント監督『ソウル・パワー(119)』

 ジェイムス・ブラウン&JBsのソウルバワー

   スティーヴン・キジャック監督『ストーンズ・イン・エグザイル~「メイン・ストリートのならず者」の真実(120
  リアルタイムでストーンズを聞いた記憶があるのは71年の「スティッキー・フィンガーズ」と73年の「山羊の頭のスープ』で、72年の「メイン・ストリートのならず者」の印象は薄いのは何故だろう?曲は聞いていたんだが・・・。東京の郊外の中学生には、2枚組アルバムというのは、ハードルが高すぎて、友達含めてこれ買うなら他のということだったのか?「スティッキー・フィンガーズ」のジッパージャケットのインパクトが強かっただけに、こっちの何だか古い写真を貼り付けただけのジャケットが地味過ぎたのか?

   角川シネマ新宿で、
   ラデュ・ミヘイレアニュ監督『オーケストラ!(121)』


   素晴らしい!!


   伊藤俊也監督『ロストクライム-閃光-(122)』
   ピアノを弾く女のシルエット。新宿中央公園、一人のホームレスが火を焚いた缶を振り回し、皆を集める。「そこの爺さんも、温まれ!」と声を掛ける。声を掛けられた男(夏八木勲)寄って来る。
   隅田川に警視庁の船が急行する。船上に勝鬨署の刑事片桐慎次郎(渡辺大)の姿がある。水死体、引き揚げる。絞殺されている。殺人事件だ。被害者は、中華料理屋“蓬莱”を営む葛木勝(針原滋)。事件の館内放送を耳にした、警視庁捜査一課強行班3係の滝田政利(奥田)は、一課管理官の藤原孝彦(矢島健一)に電話をし、定年退職前の最後の御奉公に、捜査本部に加えてくれと依頼する。
    強行班捜査三係係長穴倉文平(菅田俊)三浦辰男(春田純一)杉田聡(伊藤明賢)津村多恵子(川村ゆきえ)高村英治(原田芳雄)宮本翔大(武田真治)緒方純(奥村知史)捜査第四課飯島甲子雄警部(斎藤歩)金子彰(ダイヤモンド勝田)滝口俊江(中田喜子)結城稔(飯田裕久)おたふく旅館女将(烏丸せつこ)緒方晴子(熊谷真実)真山恭子(中村映里子,かたせ梨乃)吉岡健一(宅麻伸)緒方耕三(夏八木勲)

  さそりのというか、「誘拐報道」「白蛇抄」の伊藤俊也監督、久方振りの本編。力入っている。唸る部分も多い。しかし、ラブシーンとかスタジオ撮影のシーンと、かたせ梨乃の出演シーンは、90年頃の邦画暗黒時代の空気発散しまくりだ。それと、何人かのキャスティング、他の人だった方がよかったんじゃないかと、痛切に感じる。

   テアトル新宿で、シティボーイズのFilm noir

   沖田修一監督『俺の切腹(123)』
    一人の侍が台所に向かって正坐をしている。柿生宗三郎(夙川アトム)である。台所で、妻の?(古谷充子)が大根を切り、飯を炊いている。(おいおい、飯を炊くのに、釜の蓋を何度も開けて確かめちゃあかんだろ!)
   その時、勝手口の閉められた戸の向う側から「先生!」と声が掛る。「又吉か?どうだった?」「失敗です。このへんの志はみな連れて行かれました。」「吉田は?」「捕まりました。先生逃げて下さい」「馬鹿な!」
     中村有志 斉木しげる きたろう、、黒田大輔、
   福田雄一監督『ヒューマンドキュメンタリー 遠き少年の日々(124)』
      多摩川の河原に、テレビのクルーが来ているらしい。河原で、黙々と川に向かい石を投げる中年男(きたろう)がいる。

 大竹まこと 斉木しげる ムロツヨシ 佐藤仁美
   大竹まこと監督『Dark on Dark(125)』
       大竹まこと 風子 きたろう 斉木しげる 中村有志
   きたろう監督『ドキュメント 中村有志(126)』


   西荻に戻り、ささら亭で、ユルユル呑んでいると、時計は、てっぺんを廻っているのだ。

渋谷の夜。

   午後イチ、元会社の営業部HとIとで打合せ。最近のマーケット状況について話しを聞く。

   酷暑の中、渋谷まで出て遅昼を食べ、クラブduoに。頼まれて浅草の歌姫辻香織に出て貰ったイベント。女性アーティスト4組。知り合い、友人を招待。皆さん、本当にありがとうございます(と、ここでお礼を言ってもしょうがないだろうが)

   ライブ後、来てくれた若者たちと飲む。自分の子供でもおかしくない20代に混ざって飲んでいるのが一番楽しいのは、どこか自分の人間的欠陥だろう(苦笑)

2010年8月2日月曜日

今野雄二さんの小さな記憶。

    美人画家と、連日の映画&レストランデートの予定であったが、お互いの拠ん所ない事情で延期になり、凹む。

    とりあえず1週間前から切れていたプリンタのインクを買わなければならず、新宿のヤマダ電機に。ちょうどポイントで購入出来て、しし座めざまし占い1位を実感するが、まあそれだけだ(苦笑)。

   何だか餃子とビールの気分になり、高田馬場の王将。ここは瓶ビール大瓶なのだ。本読みながら出来上がって、まだ明るいウチに東西線。いきなり三鷹駅行きが来ると言うラッキーだが、めざまし占いの久しぶりの1位が、極小のスケール。
   
   帰宅して、少し眠って目を覚ますと、twitterに今野雄二さん自殺の文字が踊っている。リブヤング~水曜11PMと、かっこいい音楽を教えてくれ。前の会社で、映像部門にいた時に、自分で映像資料などを送っていたら、「○○で、取り上げたので、編集部の○○さん宛てにジャケット写真を送っておいて下さい」と、何度か指名で電話を下さって、感激した思いがある。誰もがツイットする通り、加藤和彦さんに続いての訃報は堪えるなあ。本物を知っている大人には生き難い時代なのか。

2010年8月1日日曜日

8月。阿佐ヶ谷でバリダンス。

    8月1日。そうか誕生月だ。吉祥寺バウスシアター以外に、誕生月割引のある映画館あったかなあ。まあ、とりあえず映画ファーストデイだし、午前中一本見ようと思っていたが、二度寝すると昼だ。

   支度をして、代々木で体験入学の講師。

   夕方、阿佐ヶ谷で25歳の美人画家と待ち合わせ、JFCのデザイナーM氏の細君が参加している第9回阿佐ヶ谷バリ舞踏祭「天翔る光」の奉納舞踊を見る。お恥ずかしいことにベリーダンスとバリダンスを混同していた位だが、バリダンス人口がこんなにあるなんて。ガムラン音楽の生演奏は、夏の夕方に何とも心地よい。JFCのNさん御夫婦に声を掛けられる。M氏には結局会えない上に、9人踊っているうちのどの女性がM氏の細君なのか分からなかった(苦笑)。
  
   インド・ネパール料理屋クマリで、カレーとタンドリ料理。美味いなあ。好きな女の子と食べると3割増しだ。

2010年7月31日土曜日

川崎ぎょうざ祭り。

   午後一本映画を見ようと思っていたが、雷鳴轟き、スコール的雨降り、東京23区西部は、大雨警報。事実、杉並区の警報サイレンまで鳴りだす。5年前床上30cmの浸水被害を受けた我が家を放置して外出するのもなあ、と思っていると夕方止む。 

   ラゾーナ川崎のラゾーナソルで、劇団2.1流の旗揚げ公演『裁かれ刃~僕を裁く~』外苑前粥屋喜々の店主の姪佐々木心音が客演しているのだ。脚本・演出・出演の意欲は買うが、ちょっと本が弱いかな。

   喜々店主と、昔川崎のイベント終わりで入った中華料理屋に行こうと探すが、ない。一番近く昭和40年に開店とある太陽軒。かわさき餃子祭り開催中と知り、梯子しようと、近くの三鶴。こりゃ美味い上に、良心的な価格設定。店の女の子が美人で、二人大層盛り上がるが、店の二代目シェフの奥さんで、六歳の娘と四歳の息子の母親であるらしいことが分かりがっかり。しかし、川崎で知る限り最高だと、締めに、炒飯まで頼んでしまい。膨満感溢れる胃袋を抱えながら帰宅。あと二週間ちょっとで、52才の誕生日なのに…。

2010年7月30日金曜日

革命初期のソ連邦アバンギャルド映画を美大生と。

    2日間の引き籠もりを克服し、自転車屋から自転車を引き取り渋谷に。
    渋谷で美大生(先日、美人大学生か美術系大学生か問合わせがあったので、美人美術系大学生とする)と待ち合わせて、

    シネマライズで、スティーブン・ソダーバーグ監督『ガールフレンド・エクスペリエンス(117)』最終日。
   「どうだった?」「面白かったわ」「そうだね」「結末は意外だったわ」「また観たい?」「ええ」タクシーの中で、デヴィッド(デヴィッド・レヴィーン)と今見てきた映画の感想を語り合うチェルシー(サーシャ・グレイ)。深夜のレストランPUBLICに入り、赤ワインを頼み、語り合う。ホテルに戻り、服を脱ぎながら、友人が度々金を貸してくれと連絡してくるんだとデヴィッド。口づけを交わす。翌朝、「朝食を頼むけど、何がいい?」「あなたと同じでいいわ」ホテルのバルコニーでガウン姿で朝食を共にする二人。デヴィッドの仕事は、リーマンショックの影響を受けながらも、順調なようだ。
   ホテルを出て来たチェルシーは、待たせてあったハイヤーに乗りこむ。座席で、デヴィッドから貰ったホテルの封筒を確認する。かなりの金額の紙幣が入っている。
   チェルシーの本名はクリスティーナ、マンハッタンで働く高級コールガールだ。組織に属せず、自分でサイトを出して、客を選んでいる。ランチを取りながら、ノートパソコンに、デヴィッドのことを記録している。「映画を見て、食事をし、ホテルで話をしたあと、1時間ほどSEXをし、その後15分ほどで眠ってしまった。普通の客は、翌日、キスをしたり、ハグしたり余韻を楽しみたがるが、デヴィッドは別だ。全く関心を示さない。このチェルシーの呟きは、今継続してインタビューを受けている初老のライター(マーク・ジェイコブスン)とのやり取りかもしれない。
   チェルシーは、マンハッタンの高給アパートメエントで、恋人のクリス(クリス・サントス)と暮らしている。クリスは、エグゼクティブ相手のジムでパーソナル・インストラクターをしている。ジムのマネージャーに、自分をマネージャーに昇格させて時給125$を上げてくれないかと頼むが、お前は自分の実力を全く分かっていないと相手にされない。

    お茶ノ水に出て、アテネフランセ文化センターで、ジガ・ヴェルトフとロシア・アヴァンギャルド映画
    22年ジガ・ヴェルトフ監督『キノプラウダNo.1ー9(118)』
     1920年代、エイゼンシュタインと並び称されるソ連映画界の父、ジガ・ヴェルトフが、モスクワ映画?時代に、キネプラウダ(ソ連共産党機関紙プラウダのニュース映画)として撮っていた作品群。ジガ・ヴェルトフと言っても、70年頃の『ジガ・ヴェルトフ集団って何?ゴダールじゃないの?』位の認識しかない…。無声のニュース映画、フリップにはちゃんと日本語字幕は入っているものの、無音で90分、なかなか唸る演出もあるが、全く無言のホール満員の客。乏しいソ連革命史を記憶の底から掘り出しながら、オールド共産主義者の父親を思う。たまには顔を見せなければ…。

    外苑前粥屋喜々に行く。美味しいと料理パクつく美大生を肴にビール飲む。

2010年7月28日水曜日

怠惰な水曜日。

  とりあえず、自転車を取りに行こうと昼前に外出、電気代とガス代をコンビニで払って、自転車屋に行くと、水曜定休だったのか・・・。水曜だし、何本か映画観ようと思っていたが、昨日買った本を読んでいるうちに断念。

2010年7月27日火曜日

酷暑は、51才の脳にはダメージがある。らしい(涙)。

    大門の睡眠クリニック。神谷町の元会社の独身美人OLに、惣菜差し入れ。こんな日に30分も歩く馬鹿。涼しいビルに入ると里心付くので、美人受付S嬢に預け、直ぐに神谷町駅に戻る。神保町に出て、
    神保町シアターで、夏休み特別企画 昭和の子どもたち
    62年日活滝沢英輔監督『しろばんば(116)』
    その頃といっても、大正4、5年のことだから、今から四十何年も前のことだった。子どもたちは、浮遊する白い物を追い掛けて遊んでいる。それがしろばんばだ。「イチ坊~ご飯よ~」「みつる~かめ~帰ってこんと飯抜きだで~」「みつもごはんだの~」「みっちゃん帰ろう!!」次々に母親に呼ばれ、子どもたちが帰宅する。
    一人残った伊上洪作(島村徹)が駆け出す。上の家に行くと大祖母のおしな(細川ちか子)、祖父(清水将夫)祖母(高野由美)、その子供大吾(大場健二)光子(小田島久美子)が夕餉を取っている。洪作が「ゴッチャン!ミッチャン!」と呼ぶと、大祖母のおしなが「洪作!ここ上の家では、ちゃんと、大吾叔父さん、光子叔母さんとお呼びなさい」と注意をする。同じ尋常高等小学校に通っているので、「何だかおかしいやい」と口答えをすると「あの女のせいでひねくれた子になってしまって…」とグチを言い始める。勿論大吾も光子も、そんな呼び方は嫌だ。
    洪作は、上の家の裏にある佐藤医院の門をくぐる。その奥にある蔵で、おぬい婆(北林谷栄)と暮らしているのだ。「ただいま!お腹空いたよ」「ボン!上の家に、今日は何回行った?」「二回だよ」「あんまり行くもんでね。あの家の人間は、性根の曲がった人間ばかりだ」「ボク、婆ちゃんは大好きだけど、大婆ちゃんは嫌いだ」「おおおぅ、そうだとも、そうだとも。ああ、ボン、母ちゃんから手紙が来てる。今度の休みには沼津に来いってさ。良かったね。」

   洪作は、沼津の連隊の軍医である父(芦田伸介)と母(渡辺美佐子)と離れて、母親の実家の分家で曾祖父の妾であったおぬい(北林谷栄)と2人で暮らしている。直ぐ近くに本家があり、そこの曾祖母(細川ちか子)が本妻であったが、播州の家老の娘で誇り高く、おぬいを嫌っていた。沼津の女学校を卒業して叔母のさき子(芦川いずみ)が戻ってくる。洪作は、美しい叔母が大好きだった。2学期から彼女は、洪作たちの通う湯ヶ島尋常高等小学校の先生に。2学期の終業式、常に1番だった洪作が、 2番に落ち、溺愛するおぬいは、さき子に文句を言う。おぬい、さき子ともに大好きな洪作は困惑する。
  2年の夏休みに沼津の両親の家に行くことになるが、内弁慶な洪作は、行きたがらずおぬいを困らす。行った後も、なんとか躾をしようとする母が怖くて、ことあるごとに湯ヶ島に帰ろうと言い出して皆を困らせる。学校では、さき子と同僚教師の中川モトイ(山田吾一)の恋愛が生徒、村人の間で噂になり初めていた。その頃運動会があり、徒競走で洪作は頑張って5位になる。オープンに交際しようとしたさき子だったが、田舎の村では通用しない。更に、正式な披露もないまま妊娠したことが発覚、中川は他の学校に異動になる。見送りには、さき子と教え子以外はさき子の母のみだった。
   ある夜、曾祖母が亡くなった。生きている時は悪口を言ったが、死んだ今はいい人だとおぬいは言う。葬儀に来た母とさき子は言い争いに。さき子に無事子供は産まれたが、労咳に。洪作は、本家に見舞いに行くが、さき子は部屋に入れない。洪作は、さき子と歌を歌う。ある夜さき子は、夫の赴任地に向かう。残り少ない人生を夫婦で過ごさせようという親心だった。別れ際、彼女は洪作に、あなたは他の人よは違って大学に行くのだから勉強をしなさいと言った。結局さき子は暫くして亡くなる。信じたくない洪作だが、おぬいがさき子をあんなに優しい人はいなかったと誉めるのを聞いて、自分はおぬいが好きだが、それ以上にさき子が好きだったと告白し、おぬいがそれを認めたことで、何かつかえていたもやもやが無くなった気がする。
    さき子の言葉を胸に今迄以上に勉強をする洪作。ある日村の子供たちが天城のトンネルを見に行こうと誘いに来る。子供の足ではかなり遠いが、洪作たちは、ずんずんと進んで行く。途中から裸になって山道を歩き続けるのだった。

   新宿ジュンク堂で、津田大介と高橋健太郎のトークショー。うーん、二人ともなかなか分かった上での発言。でも、元業界人としては、違う視点を指摘したかったんや。でも思わず手を挙げて、喋ったことは全くポイント呆け。あ~ぁ。こんなこと書くと、恥の上塗りだが、いいトシして実力不足は隠しようもない(涙)。 トークイベントに出掛けて、発言して恥かきながら鍛え直すか(苦笑)
    
    どうやら喉の炎症も引いて来たようなので、鼻は詰まるが、ビール解禁。新宿石の家で、餃子ビールで個人反省会。

2010年7月26日月曜日

夏風邪続くよ、どこまでも。

   夏風邪治らず。ダルい、喉痛い、鼻詰まる。昼過ぎに、骨董通りでN氏と待ち合わせて、ランチMtgをしてから、南青山にある会社にプレゼン。汗みどろでヨレヨレで酷暑の中歩き回り、西荻に戻る。自転車を朝届けたのが、間に合わなかった。このへばりを解消しようと、インド料理屋。更に体力を使いダウン。

2010年7月25日日曜日

土用前夜。

    朝起きて、片付けをして二度寝すると昼だ。代々木の学校から留守電が入っていて、今日の体験入学、1時間早く始めてくれとのことだ。女子3人、うち1人は友達の付き添い。夏風邪治らず、鼻と喉やられ超ダルいが、ちゃんと聞いてくれているので、ご機嫌。早く始めながら、終了を告げる学生スタッフが来ないので、多めに話してしまう。
    外苑前の粥屋喜々で、目下のマドンナの誕生会をやっているのを思い出し、差し入れとプレゼントを持って行く。だるさのピークで、挨拶だけして帰る。ビール美味しく飲めない人生は最低だ。ハチ公バスで代々木と往復だ。
   西荻に戻り、壊れた部品を取り寄せて貰ったままになっている自転車屋に。もう遅いので明日また来いと言われてがっかり。近くにある鰻屋福富に。店内最後の1名で間に合う。棄てる神あれば、拾う神あり。ここは、注文をしてから活鰻を割く。関東風だったか、関西式だったか忘れたが(苦笑)、背開きは関東、腹開きは関西、関東は武士の町だから・・・、違う!!蒸してから焼くのではなく、割いて、焼き、たれに何度も潜らせながら、じっくり焼くやり方。柔らかさよりも、炭で焼いた香りが匂い立つ感じ。勿論、ビールを飲みながら、文庫本を読み、焼き上がるのをじっくり待つ。ビール美味くない。日本酒に代えて30分ほど。西荻には、田川や源内など、個人的に大好きな鰻屋多い。年に一回位、贅沢に美味い鰻食いたいなあ。重箱とお椀の蓋を開けた時の至福のひと時。

2010年7月24日土曜日

美女だらけの自宅居酒屋。

   秋田にUターンする友人S氏の美女限定送別会を拙宅で。自宅居酒屋は何度もやっているが、美しい女子ばっかり20人近く、こんなに沢山自分の家に集まって、自分の料理を食べているのは壮観だ。夏風邪はなかなか治らないが、こりゃ幸せだ。自分が料理を作るのは、酔っ払ってクドイオッサン達に酒飲ますためではなく、こういうことなんだと再認識(苦笑)。しかし、S氏の人徳というか、女性に対してのマメさの結実というか、改めて思い知る。
   0時頃眠り、1時過ぎに目を覚ますと、誰もいない。トイレに行くと、S氏がいた。出て来たS氏が「気がついたら、誰もいないんだよ。ソファで眠っていたらみんな帰っちゃったよ。何だか、最後まで、俺らしいなあ」と苦笑している。女の子に囲まれて幸せそうに眠っているS氏を起こすのを、みんな躊躇したんだろう。
   中央線の沢山の女子に愛されているS氏。上京する際には、いつでもウチに泊まってくれ。

2010年7月23日金曜日

自宅送別会前夜。

   体験入学の講師。数日振りに、ゴミ捨て以外で外出したがツラい。スペリオールを買って、表4の広告で、怪盗ロワイヤルのCMに出ているのが、戸田恵梨香だと確認。いや、急に華が無くなった。同じ誕生日なだけに悲しい。
   受講生は、高校2年の女子1名。マンツーマン。賢くていい娘だなあ。
   四谷のハナマサで明日の仕込みをして帰宅。更に野菜を地元で買い回り、博華で餃子とビール。風邪で、ビール美味くない・・・。人生の唯一の楽しみが・・・。
   
  

2010年7月22日木曜日

この内容を無断借用という報道はどうなんだ。

『龍馬切手販売中止…お龍やあの寺田屋の写真』(2010年7月21日23時11分 読売新聞)

 郵便局会社近畿支社(大阪市)は21日、京都市内の109郵便局で扱っていたオリジナルフレーム切手「龍馬が駆け抜けた町 京都・伏見」の販売を中止した。

 切手に使われた坂本龍馬の妻、お龍(りょう)とみられる写真について「無断使用では」との指摘を受けたためで、同支社は「調査して対応を検討したい」としている。

 この商品は龍馬やお龍、ゆかりの寺田屋などの写真を用いた80円切手10枚セット(1200円)。8日に発売されたが、お龍の写真は古写真研究家の井桜(いざくら)直美さん(45)(東京都)所有のものと似ており、13日以降、「無断で使ったのでは」との複数の指摘が同支社に寄せられたという。

 商品は同支社と神戸市内の印刷会社で製作し、お龍の写真は印刷会社側が用意した。印刷会社は取材に対し、「二十数年前に提供を受けた印刷物から使用した。版権について注釈はなく、問題はない」と説明。同支社は「発行に問題ないと考えているが、井桜さんとも連絡を取り、きちんと調査したい」としている。

 井桜さんは「切手の写真は、私が所有する写真と同じに見える。もし私の写真の複写物などを無断で使用しているのなら、やめてほしい」と話している。

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写真の著作権は、カメラマンのもの。所有者には、何の権利もない。無断使用、版権・・・(苦笑)。著作権について、何の解説もしないで、こんな記事書くな!読売新聞。新聞社の著作権への無知、馬脚を露す。

今日もまたまた昨日の朝日。

  ザ・コラム(外岡秀俊)『スピードと便利さのわな』

  あれほど日本代表の活躍にわいたサッカーW杯も、固唾をのんで見守った参院選開票も、なぜか遠い日々のように思える。
  同僚と話していて、ふと、そんな話題になった。以前は遠い昔のことを「つい昨日」のように思い起こすことが多かった。記憶の保持力や喚起力が衰え、昨日のことをつい忘れるほど忘却のスピードが加速している。
  私たちはパソコン文書を上書きするように記憶をあっさり更新し、体験の集積としての過去をやせ細らせていないか。どうもその傾向は、私たちの暮らしがデジタル化されたことと無縁ではなさそうだ。
  そんなことを考えたのは、11日まで開かれた東京国際ブックフェアに足を運んだからだった。「電子書籍元年」といわれる今年、大会場には、デジタル化の激流が渦を巻いていた。
  書籍や雑誌を、携帯やiPadなどの端末に編集し、変換するソフト。携帯コミックに、効果音や音楽を入れる技術。出版も印刷も雪崩を打って競争に参入し、「スピード」と「便利さ」を求めるデジタル化が本流になりつつある。
   だが「日本では普及まで、あと2、3年はかかる」と日本文芸家協会副理事長の作家、三田誠広氏はいう。奔流をせき止める堤防がいくつかあるからだ。
   第一は日本語特有の問題だ。「今の読み取り技術では、カタカナの『カ』と漢字『力』の判別は難しい。端末によって異体字を反映できないなどの問題もあり、校正がかかせない」  
   さらに、電子化にあたって新たな契約が必要だ。そのルールづくりもできていない。紙の本の印税率は10%が多いが、三田氏は「電子本では売り上げに応じて段階的に印税率をあげ、最高で約50%」にする案を模索している。
   奔流は避けられそうにない。「下手をすると出版社も書店も倒れかねない。限られたパイを分けるのではなく、パイを大きくする発想への転換が必要だ」

  「デジタル化によって、仮想の裏社会が、現実の表社会になっていくように」
   そういうんは「近代書史」などの著作で知られる書家の石川九場氏だ。「いま起きていることの本質は通信の異様な発達。文化を創造するという生産行為には、何のかかわりもない」
  書物は、書き手が無意識の領域から、必死で新しい言葉を汲み上げてきた歴史の累積だ、と石川氏はいう。過去に公にされた意見や論を一つ一つ全部つぶし、ではその上で何をいうか。抜き身で向き合う勝負の気迫が、かっての書物にはあった。
  「チャットはおしゃべり。ツイッターはつぶやき。言葉を生む行為を軽視し、通信だけが異常に特化した結果だ。電子書籍は個人でも出版できるが、編集や校正という自制もなく、私的な言葉を垂れ流すだけだ」
  石川氏はさらにいう。「言葉は本の手触りや質感に根差し、色やにおいを引き連れて立ち上がる。ツルツルの触感しかない端末では、情報は伝わっても、言葉は立ち上がるまい」
 だが、紙の本の将来については決して悲観していない。
 「消える本は要らない。たまたま書物の携帯をとっただけの本が多すぎた。出版や新聞は、バブル期と比べて売れ行きが落ちたと嘆く。貧しいながら、苦しいなりに、前向きで生きたバブル以前の原点に戻るべきだ」
  紙の本は残るのか。本物なら残る。それが石川氏の確信だ。

  便利で無料。個人が多様な意見を発信すれば、「衆知」が瞬時に形成され、ウェブ上に民主主義が実現する。デジタル化は、そんな「夢」をもたらした。
  「ネットには、無料で人々にサービスを提供し、衆知を結集して社会に役立たせるという理想主義もあった。だが、現実にはそうなっていない」
   東大の西垣通教授はいう。たとえば米検索大手グーグルの場合は、「キーワード連動型」や「内容連動型」広告で、巨額収入をあげている。たとえれば「ネット民放」に近い。グーグルは、無料で検索する個人の情報を大量に集め、広告に結びつけるが、個人情報をどこまでどう使うかは企業秘密だ。
   もう一つは「ウェブ民主主義」の内実だ。グーグルでは、人気サイトからより多くリンクされているサイトほど検索上位にあがる。人気のあるサイトは検索上位に現れるので、より多くの人の目にふれ、影響力も増していく。「強者はますます強く、弱者はますます弱くなる」仕組みだという。これでは少数意見を排除し、むしろ同調を強いることにもなりかねない。
   「ネットの民意といっても、それは刻々と変わる最大瞬間風速にすぎない。人々はいつも主体的に選択しているわけではなく、流れに巻き込まれる。それを『民主主義』と標榜するのは、危うい」
   このところ、内閣支持率などの世論調査によって政治の評価が定まり、影響を与える傾向が強まっている。「人気投票」で政治が動くなら「ポピュリズム」に限りなく近づく」
   私たちは、「スピード」と「便利さ」のわなに落ち、何かを失ってはいないか。デジタル化の巨大なうねりにのみ込まれる前に、たまにはパソコンの電源を切って、しばし考えてみたい。

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   うーん。いくつかのブログに引用されていたが、中略が多く、ある意味揚げ足とりになるかもしれないので、古新聞袋を探して、打ってしまった暇人(苦笑)。

  本は残るのか?本、新聞というものをモノと考えれば、そりゃ残るだろう。しかし、出版、新聞と言った場合は、仕組みだ。作家と編集者、記者がいるだけではない。
   出版社であれば、取次業者との間で、出版部数を決め、見積もりを取って、印刷会社に発注し、検品して、取次の倉庫に納品する。大手書店には販促プラン含め、場所取りの提案をする。出版社だけでなく、日販、トーハンなどの取次会社、1万数千店の書店を含めた『本』なのだ。「下手をすると出版社も書店も倒れかねない。」のではなく、どこが生き残るかなのか。

   新聞社は、113社50,042人(情報メディア白書2009(苦笑))だけではなく、20,424店424,778人が働く新聞販売店までが、『新聞』なのだ。
   多分、川上のこの3人と記者には、その認識はないだろう。感傷的になっている場合ではない。小田光雄さんの出版状況クロニクルで書かれている現実との失笑するしかない御目出度さ。

   『本』『新聞』本当に必要なのか?その前に、押し紙、官房機密費・・・自浄することが出来るのか。書籍、CDの再販制度と新聞の特殊指定は、いつまで説得力を保てるのか。

   しかし、大手新聞社は、関連会社のTV局が、放送通信法の改正で地方局の救済を図ったように、自分たちもJAL並みに巨額の資金で、国に救済させるよう大衆を誘導していくんだろう。

     もう一つだけ付け加えると、何かと、旧メディアの人間は、政治のポピュリズムを、ネットのせいにするが、新聞とテレビこそがポピュリズムの元凶だと思っていないのだろうか。マイノリティの意見を吸い上げることこそが、ジャーナリズムの使命だと思うが、ジャーナリスト面したマスメディアの高給サラリーマンたちには、そんな矜持は一切ない。新聞でもテレビでも、ポピュリズムな意見しか書かれていない。むしろ、マイノリティ、弱者の意見を吸い上げているのはネットジャーナリズムだ。政治ポピュリズムの原因をウェブ民主主義と本当に思っているのなら、余りに見えている社会が偏狭だし、分かっていて責任転嫁しているなら卑怯者だ。
   
  

プチ熱中症から夏バテで、夏風邪(失笑)

  遊び過ぎたのか、ダウン。

2010年7月20日火曜日

夏休み映画2本立て。

    赤坂のメンタルクリニック。

   新宿ピカデリーで、夏休み映画2本立て。

   米林宏昌監督『借りぐらしのアリエッティ(115)』
   翔(神木隆之介)は、おばあさんの妹貞子(竹下景子)の運転する車に乗って郊外の洋館にやってきた。翔は12才、生まれついて心臓が弱く、近々大手術を受けることになっていた。両親は離婚し、親権を取った母親は仕事が忙しく海外に行っている。
   車を降りた翔は、大きく太ったネコが、赤紫蘇の株にしきりと挑みかかっているのを見掛ける。大きなカラスが飛んできて猫に舞い降りて突いたので、猫は植え込みに逃げて行った。その時、赤紫蘇の株から小人の少女が根元に滑り落ちたのを見た。
  翔が貞子に呼ばれて屋敷に入って行くのを確かめて、小人の少女は屋敷の軒下に入って行った。少女はもうすぐ14歳になるアリエッティ(志田未来)。床下の通風孔の鉄柵に、先ほどの猫が来て、思い切り前足を振り回したが、届かなかった。
  アリエティが自分の部屋に窓から入ると、母親のホミリー(大竹しのぶ)が入って来た。「あなた、また外に出たの?危ないじゃないの」「大丈夫よ。部屋に飾るために採ってきたのよ」「何だか私には散らかっているようにしか見えないけれど」「はい!!これ、誕生日プレゼントのつもりだったけど、ばれちゃったからあげるわ」とミントの葉をホミリーに手渡した。
  屋敷には、女中のハル(樹木希林)が一人で守っている。貞子は、体力が落ちている翔を、手術までこの静かな場所で過ごさせようと考えたのだ。

  夜になり、父親のポッド(三浦友和)が帰って来た。「屋敷に子供が増えたようだな」「ええ、見掛けたわ。勿論、見られていないわ」その話を聞いたホミリーは心配のあまり気絶しそうになる。「しばらく様子を見よう」というポッドに、「今日は借りに連れて行ってくれるんでしょう」とアリエッティ。「不安だから、延ばした方が・・・」と心配するホミリーに、「我々に何かあったら、アリエティは一人で生きて行かなければならないんだから」と説得するポッド。心配しながらも、大きな赤紫蘇の葉一枚で、お砂糖があれば、紫蘇ジュースを作れるので、角砂糖と、ティッシュペーパーを借りてきてというホミリー。
  豆電球で足許を照らすポッドと、洋館の壁の裏側に梯子のように張り巡らされた釘を登り、ウインチで引き揚げられ、台所まで辿り着く。途中、恐ろしい鼠の目が光り、アリエッティが初めて借った待ち針で戦うわと言うと、ポッドは戦わずに済めばその方がいいと自重を説いた。人間の台所は巨大で、初めて見るアリエッティには途方もないものだった。角砂糖を一つアリエッティは鞄に納めた。
  次は、ティッシュペーパーだ。2階の寝室には、精巧に出来たドールハウスがあった。家具、食器、素晴らしいものばかりだったが、「ここの物を借りると、直ぐにばれてしまうので、絶対やってはいけない」と注意をするポッド。二人で、ベッドサイドにあるティッシュボックスから1枚抜きだそうとしていた時に、アリエティは眠っている筈の少年の目が明いていて自分たちを見ていることに気がつく。慌てた拍子に角砂糖を落としてしまった。落ち込むアリエッティに、自分の調査不足だ、暫く様子を見よう、お母さんは心配するから黙っていようと言うポッド。

   94分。最近の冗長な邦画に比べて、すっきりしていていい。



   本広克行監督『踊る大走査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!(116)』× ⇒ 『踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!(116)』○

   本部長がいらっしゃいますという予告があり、青島俊作(織田裕二)が入って来る。「本部長お願いいたします」「


  しまった。今(7月22日)気がついたが、大走査線だった。まあいいか(苦笑)。


   午前中の炎天下と、午後の映画館の冷房により、何だか絶不調に。二日間で疲れ果てたということか。twitterで新宿吞み会のお誘いあるも駄目だ。2時間ほど寝たら、少し復活して、夏野菜とシーフードカレー作る。夏はカレーだなあ。

2010年7月19日月曜日

連日の真夏デート

   25歳美人画家と渋谷で待ち合わせ、連日の真夏デート。

   浅草に出て、浅草寺にお詣りをして、アミューズミュージアムで行われる地元浅草の歌姫辻香織の新ユニットARUYOの初ワンマン。流石地元だけあって、満員の上、彼女がとても楽しそうなのを見て、こちらも楽しい。

   都営大江戸線の蔵前まで歩き東新宿、職安通りのネイキッド・ロフトに、萩原健太さん、能地裕子、レココレ寺田さんたちのCRTと言うイベントに、我らがジャズ番長KOZO渡辺氏が特別出演するのだ。30分程遅れて到着、満員の会場の隅に案内される。ジャズと言う無謀なテーマ、2時間やそこらで、音楽を流し語るのは厳し過ぎる。ただ、極私的ジャズ論は、これはこれで全く問題なく、久し振りにJAZZを楽しんだのだ。終わって、そのまま打上げに参加していると、24時近くになり、慌てて新宿駅に。

2010年7月18日日曜日

夏フェス参戦(?)

  実籾の歌姫おがさわらあいの地元を一度見ておこうと、関東3大ロックフェスの一つ『習志野きらっと』のステージを見に、25歳美人画家と京成津田沼まで。(他の二つは、茨城ひたちなかのロックインジャパンと千葉幕張のサマソニらしい。自分も音楽業界から離れて2年も経つので、知らなかった)
   夏祭りデートだと誘ったので、安物の紺の浴衣と西村兄妹キモノ店のストレッチ素材の兵児帯と雪駄で出掛ける。風呂敷が見つからず、京都繋がりというだけで一澤帆布のピンクのトートバックだ(失笑)。炎天下、飲んだ生ビールで瞬時に汗まみれになりながらも、久し振りの夏祭り楽しい。焼きそば、胡瓜一本漬け、焼き鳥・・・、気がつくと3曲の小笠原のライブは、身内の大盛り上がりのうちに終了。
  
   

2010年7月17日土曜日

再び朝日新聞の記事を引用して、酷評。

    7月15日の夕刊の「ツイッターに異論 続々『閲覧数へのこだわり なぜ?』」という藤生京子という記者の記事が掲載されている。

  『140字のミニブログ「ツイッター」がもてはやされる一方で、批判意見も表に出るようになってきた。「いま沸き上がる『ツイッター亡国論』」(週刊ポスト5月7、14日号)、「ツイッターに疲れた・・・なう」(SPA!6月22日号)など雑誌の特集が続いたほか、疑問を投げかける識者も現れた。 
  ツイッターは「情報量ゼロ」のコミュニケーションであり、「日本人の未熟化」の表れだと週刊ポストでコメントしたのは、精神科医の斎藤環さん。同じく精神科医の香山リカさんは雑誌「創」7月号の連載コラムで、フォロワー(読者)の数に一喜一憂する世間の風潮が「わからない」と書いた。
  斎藤さんと香山さんに話を聞いてみた。二人が揃って首をかしげるのは、ツイッター利用者がフォロワー数にこだわり、それが多いほど価値があるとみなす風潮だった。
 「ブログは市井の人の潜在的な才能を知らせる効果があったけれど、ツイッターで注目されるのは著名人。内容のよしあしでなく名前優先で読む人が多いのは、反動的ですらある」(斎藤さん)
 「数が多い人が勝っているという思い込みに基づく競争は、まさに市場原理。こんなところまで新自由主義的な論理がまかり通っているかと思うと、うんざりです。有名人にとててゃ宣伝の道具なのに、普通の人たちに、有名人とコミュニケーションできたかのような幻想や錯覚を抱かせているだけ」(香山さん)
 ツイッターが話題を集めて約1年、積極的な効用を指摘する声が目立つ。政治家のツイッター利用を、政治と有権者の距離を縮め、政治参加のしくみに変化を促す機会と期待する声も少なくない。しかし、香山さんは「刹那的な高揚感にすぎないのでは」と懐疑的だ。本物の政治参加になりうるかは疑問だという。
 議論の場をブログからツイッターに移しつつある論客が増えている点も、斎藤さんは危ぶむ。「少ない字数での瞬間的な応答が増えれば、ますます、まともな論壇の議論が少なくなる。対立があっても単なる感情的なぶつかりあいばかりで、論争に発展しない。限りなく一方向に向かう内輪メディアだと思う」
  クリエーティブな表現が現れてくる可能性に期待すればいいのでは?そう尋ねると、香山さんは「飯食ったとか、新幹線乗ったとか、書かれているのは、あくまでもリアル。80年代の『ビックリハウス』のように、別の自分になれるという願望もないし、意外にクリエイティブでない気がする」。
  確かに雑誌のツイッター特集などには、うさん臭いもうけ話やマーケティング利用の進めも多い。どんな力学が働いているのか。さらなる議論を歓迎したい。』(藤生京子)

  いやー、自分の発言では説得力がないので、論客(笑)、識者、有名人のコメントを繋ぎ合せて、あたかも中立的な立場で書いているような新聞記者の偽善の見本のような文章だ。

   「さらなる議論を歓迎したい』(!?)。おいおいメディアやコミュニケーションツールの今後について、積極的に発言しなければいけないのは、精神科医じゃなくて、ジャーナリストだと思っているメディア人だろう。

  「数が多い人が勝っているという思い込みに基づく競争は、まさに市場原理。こんなところまで新自由主義的な論理がまかりとおっていると思うと、うんざりです」「限りなく一方向に向かう内輪メディア」おいおい、自分たちのことじゃないのか。ひょっとして、斎藤&香山両氏は、朝日新聞に強烈な皮肉を言ったのに、気がつかなかったとか・・・。

   藤生京子googleで検索するとツイッターがトップ。まったく中身のない、小学生のようなツイット。フォローしている8人。フォローされている7人。フォロワー(読者)の数に一喜一憂する世間の風潮が気に食わないのは、発信力弱者のご自分のことではないのか。(https://twitter.com/kfju )

   更に、この取材での斎藤&香山コメント、朝日新聞ギャランティ払っているのだろうか?原稿依頼の場合は、勿論支払うだろう。記事を書いた記者のみにギャラが支払われているのだとすると、毎月販売店の兄ちゃんがこつこつ回収し、自分が支払う購読料もったいない。新聞取るのやめようかと本当に思う。まあ、あと2、3年の辛抱か。

2010年7月16日金曜日

夏野菜手当たり次第カレー。


     梅雨が明けたかのような快晴。洗濯は1日延ばしにし、洗い物をして冷蔵庫をチェックしていたら、自宅居酒屋の残りの食材の処分を。夏野菜の揚げ浸しをしようと思っていたので、夏野菜手当たり次第カレー作る。豚肉をしばし赤ワインで漬けたら、なかなか絶品に。まあ、カレールーは、随分前に酒屋に貰った“こくまろ中辛”なので、チョー簡単だ。鍋一つ作ったので、暫くご飯炊くだけだ。カレーは良いのだが、米食い過ぎるからなあ。

    午後渋谷でN氏と打合せ。なかなか売上が上がらなず、金欠の二人だが、いい話しが進んでいるんだがなあ(苦笑)

     神保町シアターで、映画少年の夢 川本三郎編
     64年日活中平康監督『おんなの渦と淵と流れ(114)』
   昭和23年初夏金沢。沼波敬吉(仲谷昇)に女中の三重(雨宮節子)が声を掛ける。「お目ざめですか」「ああ。今日は宴会か?奥さんお目ざめか?」「ええ、居間にいらっしゃいます」化粧台に向かう妻の須賀子(稲野和子)。敬吉がやってきたので「お出かけ?図書館だったら、三重にお弁当を届けさせますから」「2、3日、湯涌温泉(?)に行ってこようと思っているんだが」「行ってらっしゃい。いいわね、私も後から行こうかしら・・・・。でも駄目だわ、御座敷が入っているもの」須賀子は、料亭青栁を経営していた。三重に送られ家を出る沼波。近くの河に懸かった橋は途中から崩れている。渦巻く川面を睨む沼波。須賀子が外出するのを確認して、三重の目を隠れて書斎に戻り、押入れに潜む。壁の穴をナイフで広げる沼波。
    須賀子は、土建屋の大谷浩平(北村和夫)の事務所に出かけ、北海道に役人と出張に出かけるというのを取り止めさせ、夫が出かけるなんてめったにないことなんだから、店に来て、ゆっくりしようと誘う。事務員の松川(二階堂郁夫)がニヤニヤしていると、須賀子に、下品な社員は首にしろと咎められる。
   昭和14年初夏の大連、縁があって満鉄の大学で英文学の教鞭を取っていた沼波は、ある人の勧めで、23歳の須賀子と見合い結婚をした。見合いというよりも、美しい須賀子の写真を見て一目で気に入った沼波は、写真結婚をしたのだ。須賀子は母を早く亡くし、役人を退官し満鉄の嘱託になっていた父と二人暮らしをしていた。純潔というよりも、男女関係は面倒くさいものだと言う感覚のあった沼波は童貞であった。初夜のこと、自分を迎え入れる動きをした須賀子の処女に疑惑を感じた沼波であったが、新婚生活は充実したものだった。しかし、沼波は、自分好みの女に育てようと、海外の文学書を薦め、文学について得意げに滔々と語る。しかし、高尚な議論に付いて行けない須賀子は、家庭でも学校の先生のような沼波に苦痛を感じ、東京に帰ってしまっていた父に沼波との結婚が失敗だったという手紙を出していた。
   19年秋、大学の同級の小説家の田所(神山繁)が大連に講演にやってきて、沼波の家庭を訪ねた。戦況は芳しくなく、敗戦濃厚だなと話す。満鉄という新しい実験は目を見張るものがあり、新しい国家とコンツエルンとしては素晴らしいが、結局、植民地という実態のないものの上に築かれたものであるし、根なし草だと言う。翌日、急に帰国するという田所を駅まで送って行った沼波。須賀子が誘惑してきたのだと言いにくそうに告白する田所の言葉に沼波の表情は固まる。
   戦況は更に悪化し、久し振りに妻を誘って街の喫茶店に入る沼波。「素敵なお店。わたしはこういうお店を持ちたいわ」美しい妻を眺め悦に入る沼波。非情にも空襲警報が響き渡る。20年夏、日本は全面降伏をし、在留邦人たちは、苦力のような中国人たちに、衣類などを売って糊口をしのいでいた。また夫が出征したままの近所の若妻(谷川玲子)が、露軍の将校を相手に春をひさいでいた。
    須賀子は、日本酒が手に入るという的場(小池朝雄)の勧めもあって、社宅で小料理屋を始めた。須賀子目当ての怪しい男たちで店は流行った。的場たち、ブローカーたちが逮捕されると、次に特徴的な長靴が玄関に並ぶようになった。長靴の主、関東軍軍属であった瀬川(加藤武)も、酔って好色な目で須賀子を舐めまわした。2階の書斎で沼波は、下で上がる須賀子の嬌声を不快に思いながらも、何も言わなかった。長らく続けていたシェークスピアの翻訳に没頭し、時に耐えられなくなると、数冊の本を持って外出した。ある日、沼波が帰宅すると、酔ってうつぶせの須賀子と瀬川の二人を見て、情交を確信したが、何も言わない沼波。しかし、その日以降、須賀子との同衾を拒絶する。
   2年後、夫婦は帰国する。須賀子は金沢にある実家を料亭青栁に改築して、営業を始めた。大谷は、県の局長(雪丘恵介)県庁の役人(八代康二)の接待に店を使う時に、自分でも店を持っている君子(楠侑子)がやってきた。君子は、尋常小学校の頃は勉強が好きで級長まで務め、女学校に行きたがったが、家が貧しく色街に売られたのだと言い、いつも黙々と本を読む沼波のことを尊敬していると言う。全く文学を理解しない須賀子と違い、かって学生の客に借りて「カラマーゾフの兄弟」を読んだという君子に、色事なしで付き合って欲しいと言われる。
  冒頭のシーンに戻る。押し入れの穴から須賀子と大谷の情事を眺める沼波。同衾を拒絶しておいて、妻の情交を覗き見る自分の高揚感に、恍惚とする須賀子の表情を美しいと思う沼波。翌日、用事を済ませた須賀子が帰宅すると、三重が「旦那さまがお戻りになっています」と告げる。家で一緒に食事をしようと言う沼波の言葉に喜び、自ら買い物に出掛ける須賀子。しかし、須賀子の留守中、沼波は、自分の部屋に鍵を取り付ける。更に、食事はいらない、眠るので起こさないでくれと須賀子に言ってくれと三重に告げる。奥様はお食事の買い物にいらっしゃったのにと当惑する三重。
   部屋に入り、鍵を掛け、睡眠薬を飲む沼波。帰宅した須賀子は困惑して、戸を叩き、どうして私を拒絶するの?と泣く。翌日、須賀子に、自分は大谷との情交を覗いていたのだと告白する。私は貴方だけを愛していると言う須賀子。君子から電話があり、大谷が贈収賄で逮捕されたと告げられる沼波。久し振りに須賀子を抱きしめ唇を交わし、何もぜず、学問に逃避していた自分が悪いのだ、東京に出てやり直そうと言う沼波。
   沼波が東京に出て、プラトン出版社で働くようになって1年が経った。須賀子の伯父で中国学者の片瀬直彦(巌金四郎)の家で、須賀子との穏やかな生活を送っていた。家の庭には、巨大な中国の石像が飾られている。隣家には、寡婦の関口富子(沢村貞子)が息子の研一(川地民夫)娘の陽子(標滋賀子)と暮らしている。
   沼波は、会社での昼食時同僚の影山昌三(下絛正巳)から女事務員の志村広子(谷口香)は貧しい暮らしの中、働きながら大学に通っているので、いつも昼食抜きだと聞き、自分は腹の調子が悪いので、悪いが自分の弁当を食べてくれないかと押しつける。昼休み、ビルの屋上で佇む沼波のところに、広子がやってくる。「私は人に同情されるのが最も嫌いなのだ」と複雑な心中を明かす広子。英米文学を学んでいるという広子の、須賀子とは正反対の知的さに好感を覚えた沼波は、自宅に広子を誘う。英米文学の話をする夫と若い娘の会話を嬉しそうに眺め、食事を用意する須賀子。広子が帰った後にも、自分の研究の助手にしてやりたいと熱っぽく語る沼波。
   須賀子は、女学生時代のことを思い出していた。父の妹である伯母の身体が弱かったため、度々、この家に手伝いに訪れていた。ある日、伯母の入院中に、書斎にお茶を持ってきた須賀子を呼び止め、片瀬は「気がついていないだろうが、お前には魅力があるのだ」といい、部屋に横にならせて、目をつぶらせた。その日から、須賀子は性の喜びを覚えて行ったのだ。
  
  
   2度目。前回も「第3部流れ」でうとうとしてしまい、判らなくなったが、今回も駄目だ。中平として珍しく、込み入った人間関係を台詞で説明しようとしているのが鬱陶しいからなのかと自分を棚に上げて、決め付けることに(苦笑)。「第1部渦」は、相当好きなのだが…。

  恵比寿にある天窓switchで、和をモチーフにした女性シンガーソングライターエコツミのライブ。CMヒーローS氏と、昨日に続いてデザイナーN氏。他にも、カメラマンMさん、Uさん・・・。感想は改めて。車で来ていたN氏に今日も甘えて、外苑前粥屋喜々経由で、家まで送って貰う。

2010年7月15日木曜日

あぁ上野駅

     田町のアニメ制作会社のT氏を訪ねる。
      池袋新文芸坐に行くつもりで、山手線に乗る。五反田で前の座席が空き座ってしまうと、渋谷過ぎた辺りで、意識なくなり、気がつくと上野だ。そのまま、もう一眠りし、新宿に。
     楽器屋覗こうと炎天下歩いていると、声を掛けられる。振り返ると、失速バンドの御大にして、タワー・オブ・パワーのファンクラブ会長のチェリさんだっ。今日失速の打ち上げなのに行けないかもしれないと言い出せない。すみません皆さん。
    
    美人画家と一緒に、高田馬場四谷天窓で、実籾の歌姫小笠原愛のライブ。ライブ終わりで、失速打ち上げに行くつもりだったが、色々巻き込んで迷惑かけてしまったデザイナーN氏が、TV番組のプロデューサーを連れてきてくれたので、ライブ終了後、小笠原を連れて一杯。皆さん、本当に申し訳ありません。

2010年7月13日火曜日

千駄ヶ谷で新メニュー。

    外苑前粥屋喜々の店主Sの紹介で、N氏と千駄ヶ谷のTさんの事務所に。車から自転車を極めようとする趣味人。趣味どころか生活に貧する自分が情けない。N氏と別れ、Sと近くに出来たばかりのカフェで、ビール一杯のつもりが…。しかし、つまみ旨い!!ペゴロスのキャラメルオニオンマリネと鰯のポケロネス。これは自分で作りたい。

2010年7月12日月曜日

惣菜デリバリ。

    自宅居酒屋の残りの惣菜を持って、独身美人OLに差し入れに、一応タッパーに入れ冷蔵庫で保管、保冷剤を付けて持って行ったが、こんな気候なので少しだけ気になる。
  
   外苑前の粥屋喜々で、冷やし胡麻タレ付け麺。うまいっ。

   代々木駅行きのハチ公バス。座って考え事をしていると何だか気分がとことんダウナーな気分に。調子悪いなあ。
   独身美人OLからメール。美女軍団に惣菜好評だったらしい。鶏レバの粒マスタードマリネのレシピを知りたいとの声が!!しかしいつものように適当な塩梅なので、次回どうなるのか(苦笑)。褒められて、少し持ち直す。

2010年7月11日日曜日

にちようびはとうひょうび。

   2日連続の深酒に、昼から参加予定のセミナーをキャンセル。

   午後、後期用のカリキュラムのPPをブラッシュアップし、投票所に行くと凄い行列が。杉並は、区長選と区議補選も同時なので、手間は掛かるのは事実だが、それにしても前回の衆院選よりも人手多いようだ。それに投票所前の選挙ポスターを見比べている人も多数。政権交代と言う二者択一と違って、どれがマシかと言う消去法。票が割れると面白いのだが…。とはいえ、結果が分かってしまうのは数時間後。

    府中駅前のグリーンホールで、高校の後輩たちの定期演奏会。ビッグバンドスタイルの軽音楽部だった。高校を卒業したのは34年前か (苦笑)。父兄と変わらない、あるいはそれより上の年齢になり、同期の部長だったSと、2年後輩のYと怪しいオヤジ3人組。タワー・オブ・パワーの「ワット・イズ・ヒップ(お尻はどーれ)」(苦笑)など、当時の自分たちがやりたくても出来なかった曲を何とかこなしている女子高生たちを眺めていると、五十オヤジの目に涙。
   自分が金持ちか秋元康だったら、10代の女の子だけのKON48(K-ON = 軽音)と言うプラスファンクグループ組んで、世界三大ジャズフェスティバル&ニューオリンズ・ジャズフェスティバルと普門館とスウィンギング・バッパーズに闘いを挑むんだが…。
  
   後輩Yと、府中駅前の250円均一居酒屋で飲み帰宅。

   既に大勢は判明。しかし、つくづく大都市の1票は軽い。小選挙区制の死に票の問題より、選挙権の1票を平等にしてくれ。出来ないなら道州制か?

   しかし、昨晩、選挙戦最終日0時前、西荻駅前で、運動員と何十回と、「杉並に初の女性区長を!宜しくお願いします!」とだけ復唱し、全員でお辞儀を繰り返す異様な光景を目撃してしまった自分としては、荻窪駅前の女性眼科医だけは勘弁してとだけ祈る。

2010年7月10日土曜日

日本フリーランス倶楽部第12回フリーランス見本市プロデューサーのまつもとでございます。

自宅居酒屋明けで、晴天の渋谷に出て、打合せ2件。暑さきつい。日本フリーランス倶楽部の総会が荻窪のT女子の豪華事務所で。1時間遅刻し、大顰蹙。10月に開催のフリーランス見本市のプロデューサーなのに。その後阿佐ヶ谷に出て、「えん会」という名の吞み会。クーラーが無い。しかし、少し前まで、夏に呑むのはこうだったと思う。扇子とビール、楽しい会話。今日もベロンベロン。

2010年7月9日金曜日

自宅居酒屋

  今年6回目の自宅居酒屋。沢山の来客ありがとうございました。何だか女子率どんどん高くなり、楽しかったなあ(笑)。12時過ぎるまで起きていられるように。始発までいて、最後に片付けて下さった皆さん、どなたか分かりませんがありがとうございます。
  男子だけど、この春卒業した教え子のO君が大変な新入社員時期にも関わらず来てくれた。ありがとう。

【お品書き】筑前煮、ポテトサラダ、鶏牛蒡、安野モヨコくいいじ風蓮根梅肉合え、ポテトサラダ、卯の花、秋刀魚の梅煮、豆とマカロニのサラダ、茗荷と蛸のサラダ、大根と白滝と合鴨挽肉煮、ひじき煮、人参と牛蒡と蓮根のきんぴら、ラタトゥーユ、緑&赤ピーマンのチャプチェ、もやしナムル、ゴーヤチャンプル、豆蒟蒻のピリ辛炒め、牡蠣のオリーブオイル漬け、甘唐辛子とジャコの炒め煮、鶏レバの粒マスタードマリネ、生ハムメロン、自家製ピクルス。

2010年7月7日水曜日

駄目駄目な水曜日。

   自宅居酒屋の食材が溜まり、野菜庫溢れ出したので、洗ったり切ったり、下拵え途中までする。
    昼から学校2コマ。暑さと夏休み直前で、ピシッとしないのは、学生だけでなく、教える側のこちらも、ダメダメだ(苦笑)。
   四谷のハナマサで仕込み。地元で買い忘れた物を買い、今晩から作り始めるかと思ったが、ちょこちょこと買ってしまったつまみで呑み始めると駄目だなあ。

  ということで、早めに眠り、WCとともに目覚め(尿意ではなく)、作り始めると止まらない。やっぱり料理は楽しいなあ。

2010年7月6日火曜日

朝日新聞

  朝日新聞夕刊に「メディア激変」という連載がある。昨日、今日は逆境に立ち向かう新聞という記事だ。先週、ツイッターが出て、既成メディアの速度の遅さが気になると書いてあったのだが、気がつくのが超遅すぎる(苦笑)。
  それ以前の問題として、今の日本の大手新聞の致命的な欠点は、自らのタブーを自浄できないことだ。一つは押し紙の問題。(広告メディアとして、上場企業としてコンプライアンスの問題だ)もう一つは、官房機密費の問題だ。両方を頬被りして、日本相撲協会のコンプライアンスと、民主党の政治とカネの問題を責め立てるのは茶番だ。
  更に、新聞社が系列のテレビ局の株を持つ限り、新聞に、ジャーナリズムは無縁だ。全国に何人いるのか分からない新聞記者、その二つについて明らかにする人間は一人も出てこないと断言する(苦笑)。

2010年7月5日月曜日

美しく哀しいヴァンパイア映画。

  新宿ピカデリーで、阪本順治監督『座頭市 THE LAST(112)』

 竹林を転げながら走る 座頭市(香取慎吾)の姿。安宿に市が戻って来る。まんじりともせず待っていたタネ(石原さとみ)が迎える。近くで寝ていた中年女が起きてしまったらしく、「くたばれ」と吐き捨て寝る。市はタネを抱き締め「一緒になってくんねえか」抱き返すタネ…。
   タネ「本当に今度が最後なんだね」頷く市…。赤い毛のマフラーを市の首に捲き、抱きしめるタネ。
   竹林の中で、石?と言う法被を着た男たちに取り囲まれる市。次々に斬られ倒れてゆく男たち…。
   (回想)桜が咲く土手を穏やかな表情で歩く市とタネ。「いつか、あんたの里に行きたい。市海が近いんでしょう?」「そこで、一緒に百姓をやろう」・・・・。
   抱き合う市とタネ。「先にいっているよ」と旅支度で歩きはじめるが、心配そうな表情のタネ・・・。
   次々と石?一家を斬り捨てる市。その戦いを渡世人の二人が見ている。「あの座頭市を斬れば親分さんも喜びなさる」と十蔵(ARATA)。不安げに見つめる虎治(高岡蒼甫)。
   斬り合いの音が山あいに響く。心配になったタネは、市の元に戻ってきてしまう。市の無事を確かめ、喜びの表情で駆け寄るタネ。その瞬間、市を狙った虎治の刀が、タネの身体を串刺しにする。「すまねえ」と呟き逃げる虎治。市に抱きしめられたままタネは死んだ。最愛の人を失った市は、激しい雨の中彷徨う。

  大山村。大店の山木屋の屋敷に、この村を束ねる島地(岩城滉一)と代貸の達治(寺島進)たちがやってくる。屋敷の庭では煮炊きをする下男や下女。天道(仲代達矢)と用心棒の千(豊原功補)が現れる。一斉に頭を下げる男たち。不安げな表情で「大木屋さんはどうしたんだろう」と囁く島地。

柳司(反町隆史)柳司の母ミツ(倍賞千恵子)息子五郎(加藤清史郎)壷振りの政吉(中村勘三郎)
達治の女房トヨ(工藤夕貴)玄吉(原田芳雄)役人梶原(宇梶剛士)弥介(ZEEBRA)松(でんでん)代官北川(柴俊夫)

   石原さとみ髷似合う。10代のうちに、伊豆の踊子やっておいて欲しかった。西河克己監督で(笑)。

   みんな、勝新座頭市とのギャップを言うが、勝新座頭市は、一言で片付けられないものだ。勝新太郎自身の中で、座頭市が自己目的化し、勝新神話と同化して行った。しかし、勝新は、テレビシリーズの座頭市と警視Kという文脈だけで語られてしまうのも、何か釈然としない。すごくよく出来ている場面とそうでない場面の落差が大きい。阪本順治も、香取慎吾も、勝新伝説に潰れてしまったのではないかと言う気がする。それ以前に、脚本が浅いのが一番の敗因なんだと思うが。


    トーマス・アルフレッドソン監督『ぼくのエリ 200歳の少女(113)』試写会
    
    ストックホルム郊外の集合住宅。ブリーフ一枚の少年、窓に向かい呟く「豚の真似しろよ。鳴け」
   タクシーの運転手。車を止め眼鏡を外し、鼻歌を歌う。少年の部屋の窓、下にタクシーが止まる。助手席から少女が降りる。少年は、革のケースに入ったナイフを取り出す。タクシーから大きな荷物を運ぶ男。少年はナイフを仕舞い、ベッドのマットに下に隠す。中年男が外で立ち小便している。見上げると、一室の窓をポスターなどで中から塞いでいる男の姿。
   翌日、学校の授業。殺人の後放火し、火事を装った事件は、警察によって暴かれたが、どうしてだか分かる人?と聞かれ、昨夜の少年が手を挙げる「肺がきれいだから」「よくわかったね」「本で読みました」。少年は、オスカー12才(カーレ・ヘーデブラント)。
   授業が終わる。同級生のコンニ「おお、オスカー、何を見ている?俺のことか?生意気だ。賢い豚のくせに。意地悪じゃないぞ」気が弱くコンニの子分になっている二人を従えて去って行くコンニ・・・。
   夜、集合団地の中庭に出るオスカー。ナイフを木に突き立てながら、コンニに言われた言葉を繰り返す。気がつくと、ジャングルジムの上に同じ年頃の少女立っている。それが、エリ(リーナ・レアンデション)との出会いだった・・・。

   両親の別居により、母と暮らすオスカーは孤独だ。学校でもクラスメイトたちに執拗にいじめられている。
   隣室に越してきたエリに恋をする。しかし彼女は12才の姿のまま200年生き延びてきたヴァンパイアだった。彼女は人の血のみしか受け付けないのだ。共に街に現れた中年男は、多分数十年エリを助けながら暮らしてきた。エリに生贄を捧げることに失敗し、最期に自ら首を差し出し絶命する。多分、オスカーを、自分の役割を継ぐ者と認めたからだろう。
   日照時間の短い北欧はの冬は、太陽光に当たることが死を意味するヴァンパイアには相応しい。静かに雪が降る景色の中、哀しいラブストーリーだ。

   処女の泉、ひとりぼっちの天使、サクリファイス、マイ・ライフ・イズ・ア・ドッグ、ソフィーの世界、リリア 4-ever。北欧映画の子供たちは、なぜこんなに哀しくて、大人に刺さる眼差しをしているのだろう。

    秘宝ファンだけでなく、普通の恋愛映画ファンにも見て欲しい。