2008年10月11日土曜日

フツーの仕事がしたい?したいなあ。仕事が欲しいなあ。

  ポレポレ東中野で、08年ドキュメンタリー『フツーの仕事がしたい(186)』土屋トカチ監督が、セメント輸送ドライバーの組合から依頼され撮影を始めた、あるドライバーの組合闘争の記録。アメリカ式グローバリズムと資本家からの要請でしかない規制緩和という題目と、大企業や官公庁の組合貴族への嫉妬と反発という日本人の土着的感情の挟み撃ちに、気がつくと日本の貧乏人は全てを失ってしまったが、アメリカの押し付けと反発する人たちのいる憲法が、基本的人権の実現のために、労働者の実力行使を労働基本権として与えてくれていたことを思い出させてくれる映画だ。マスメディアがジャーナリズムを放棄している日本の現実の前に、映画が、不正の告発の手段としての力を持つということも。そうした意味で評価されるべき作品。
  阿佐ヶ谷ラピュタで71年松竹斎藤耕一監督『内海の輪(187)』。松本清張原作のサスペンス。松山の呉服屋の老主人(三國連太郎)は性的に不能であるが妻を夜毎弄んでいる。若妻(岩下志麻)は、前夫の弟(中尾彬)との、3ヶ月に一度の上京時の不倫関係を続けて三年が過ぎていた。男は助教授への出世のためにも後ろ盾になる父を持つ妻との離婚は考えていなかったが、女が妊娠をし、偽りの夫婦生活を捨てる決意で、夫に偽り旅行に出たことで、二人の人生は狂い始めた。岩下、中尾の濡れ場と、二人の愛憎の心理サスペンスが売りだろうが、正直、斎藤耕一監督の演出は、よく言えば、情感たっぷりだが、思わせぶりで冗長だ。松竹としては、松本清張作品として大作扱いだったようだが、中編の連作心理サスペンス。ロケ地増やしてみても、屋内のシーンとあまり変わり映えのしない曇天ばかりで、重苦しくジメッとした悪しき日本映画のトーンだ。終盤の岩下の狐が憑いたような顔が怖ろしい。ある意味そこが一番の見せ場かも(苦笑)
  60年東宝川島雄三監督『接吻泥棒(188)』石原慎太郎原作松山善三脚本。職人川島雄三!素晴らしい!!日本ウェルター級チャンピオン高田明(宝田明(笑))は、プレイボーイ。彼の世界チャンピオン戦(チャンピオンのぶよぶよの腹は明かに減量の失敗か(笑))と、彼を取り巻くバーのマダム(新珠三千代)ファッションデザイナー(草笛光子)ダンサー(北あけみ)の三人に女子高生(団令子)を加えた4人の女性の恋のバトルのボクシングコメディ。テンポ良し、セット良し、原作者石原慎太郎の出演のさせ方!ウェルメイドなコメディを作れる日本では数少ない職人川島雄三、面目躍如。劇中で「アンパンの臍」と言われる位のボチャポチャの団令子、可愛いと言えるかは趣味の問題だが、後にあんなに垢抜けて美人になるなんてというのが個人的な感想。やっぱり新珠三千代ダントツにいいなあ。石原慎太郎、萩原 聖人似の好青年。ハニカミ気味の笑顔悪くないが、今じゃ都庁伏魔殿の主、あんな恥も知らない悪人顔になってしまった。切ない。 いい映画観ると、余韻に浸りたくなり、博華で餃子とビール。

10月10日

  阿佐ヶ谷ラピュタで64年松竹京都さむらいプロ五社英雄監督『三匹の侍(183)』丹波哲郎、平幹二朗、長門勇テレビ時代劇の映画化。三人とも若いから動きもよくていいなあ。アウトロー達が悪い侍をバッタバッタと成敗する。正に痛快娯楽時代劇。でもちゃんと映画になっている。
  65年大映増村保造監督『清作の妻(184)』吉田絃二郎原作新藤兼人脚本で、日露戦争当時の農村を舞台に極貧ゆえ呉服屋の隠居の愛人となりその遺産で故郷の村に戻ってきた娘(若尾文子)と村の模範青年(田村高広)との愛は、それを取り巻く閉鎖的な村人たちには受け入れられるものではなかった。人生に絶望し他者との関係を絶っている娘若尾文子の超然とした色気。虚無感に溢れ何も見ていないような目は、深い海の底のようだ。凄い話だな。増村若尾コンビと言われるようだが、この作品は新藤兼人の脚本も評価したい。日本の嫌らしい土着性を、本当に醜く描き出している。
  先日神保町シアターで観た小林正樹監督岸恵子主演『からみあい(185)』再見。やはり、モノクロのスクリーン美しい。傑作だ。
  有楽町で『おくりびと』観るつもりが、日にち間違えていた(苦笑)。帰ろうかとも思ったが、赤坂ままやで、元会社の後輩Kと飲む。Kが来るまでガラガラだった店が、直前に混雑率120%に。まあその前からご機嫌に酔っ払い、更に絶好調に。帰宅のエネルギーがかなりヘビーな状況に。

10月9日

  結局、おとといの洗濯は雨に降られてしまったので、午前中洗濯し直して、午後から、神保町シアター野村芳太郎監督のコメディ二本『観賞用男性』『恋の画集』。
 60年松竹大船『観賞用男性(181)』は、有馬稲子がパリから帰国したばかりのファッションデザイナー役。画一的な日本のサラリーマンのファッションを皮肉っているようないないようなストーリー。コメディエンヌとしての有馬は秀逸だが、映画としては、当時の風物資料的な魅力しか感じなかった。
  一転して61年松竹大船『恋の画集(182)』は、入り組んだストーリー展開が非常に面白かった。桑野みゆきと結婚を望む貧乏化粧品セールスマン(川津祐介)が、結婚資金稼ぎに、不倫の役人(佐野周二)を強請ろうとするが、実はその役人は恋人の上司で、ちょっとずつの誤解が大変な事件になり、役人の同級生のかなり胡散臭い弁護士の加藤嘉がいい味を出していた。桑野カワイイ!野村芳太郎と助監督で入っていた山田洋次2人の脚本良かったなあ。
  夜は、元会社の後輩で外資系映画会社マネジャーと元広報嬢と三人で荻窪モツ焼き、景気悪い話ばかりだなあ(苦笑)

10月8日

 渋谷シネマヴェーラで、62年日活蔵原惟繕監督『銀座の恋の物語(179)』学生時代、何度もテレビで放送していたので見ていた気になっていたが、スクリーンで観直して、印象は一変。まあ、歌謡メロドラマだが、テレビ用に編集されトリミングされ、カットされて部分にあっただろう映画的な文法。当時の銀座という街、音楽と絵画という芸術。ジェリー藤尾よかったな。
 神保町シネマで53年松竹大船、川島雄三監督『東京マダムと大阪夫人(180)』。川島雄三の松竹時代の傑作という呼び声と、SKD時代の芦川いずみのスクリーンデビュー作と、郊外の隣り合わせの社宅に住む2夫人のコメディというどこか、昨日の「しとやかな獣」を思わせる設定に、かなり期待に胸ふくらませて行ったが、まあ、ちょっと期待が大きすぎて、少しがっかり。夫のNY赴任という昇進でライバル意識を高める2夫人と、大阪夫人の弟のパイロットと、老舗の店の番頭との縁談に悩む東京マダムの妹(これが、芦川いずみ。かわいー!!)と、昇進に影響を持つ会社専務の娘との三角の恋愛が絡まって、展開するストーリーはテンポもあって、とてもよく出来ているし、社宅という閉じた世界での婦人達の会社的なヒエラルキーを反映しつつ噂話に終始する日常をアヒルのガアガア啼くさまに喩えたところなど面白いのだが、サラリーマン的な悲哀や滑稽は、まだ、一流の会社の社員はエリートで牧歌的な時代。麻のスーツに蝶ネクタイとパナマ帽。笑いのつぼは、やはり今昔を感じるなあ。

10月7日

  やっと、熱が下がる。丸3日寝ていたので、熱は下がってもフラフラだ。汗をかく度に着替えていたTシャツの山を一気に洗濯し、干してから、赤坂メンクリに。フラフラはしているものの気分もいいので、軽く昼食べ、
   渋谷シネマヴェーラで69年大映東京、増村保造監督『女体(176)』ルリ子かっこいい!あんな原色のファッション似合った日本人は当時いなかったんじゃないか。ダイアナ・ロスかパム・グリアか。褐色に日焼けさせたのか、全身ドーランなのか判らないが、60年代のブラックビューティ!!ファッションとしては完璧だ。ただ人間としては滅茶苦茶。目の前にあるものを全て欲しがっては、全てぶち壊す。増村監督がルリ子に当てて書いたということは、狂気の女を演じさせたかったということなのだろうか。そうだとしたら監督は満足したのだろうか。なにせ、ボブのカツラとミニのワンピースで何だか堅い会議室のようなところで机を相手に踊っているというのか悶えているルリ子出てきて?!と思っていると大学の理事長の息子に強姦されたので二百万寄越せと強請りに、大学まで一人でやってくる女だ。自分の個人的な感想だが、非常に奔放で自分の欲望に忠実な役、似合うし、凄く格好いいのだが、ルリ子はセックス・シンボルたるかということだ。だったのかでもいいのだが。エロス、あるいはエロいかというと、そんな匂いがしないんだなあ。今後のルリ子研究の課題としておこう(笑)。 何だか透明で無臭な女。
  というテーマには、微妙に関わりのありそうな69年日活製作浦山桐郎監督の『私が棄てた女(177)』30年振りに観て、改めて、やっぱり奇妙な肌触りの映画だと感じる。遠藤周作の原作は、大学生と、雑誌の文通欄で知り合って、セックスの相手として同衾しただけのミツという女に出した年賀状への修道女からの返事の手紙でなりたっているような作品の記憶だが(読み直した方がいいな・・・(苦笑))、主人公吉岡(河原崎長一郎)の屈折、60年安保への政治的敗北や人生への屈折など、浦山監督自身の投影なのか、徹底的に描かれている。ある意味、吉岡のあまりにひどい屈折が、周囲のありとあらゆる人間の不幸の原因でさえある。ただの、自意識過剰で、悪人にも善人にもなれない、しょうもない奴。10代の自分は、もう少し吉岡の苦悩に同情的だった気がするが、この年になってずいぶんと印象もかわるものだ(苦笑)。
 阿佐ヶ谷ラピュタで、62年大映東京川島雄三監督『しとやかな獣(178)』新藤兼人オリジナル脚本。ブラックコメディだが、狭い2DKの団地をとても効果的に映像化した川島演出で、猛烈な拝金主義の元軍人一家と彼らを取り巻く人々との虚々実々な駆け引きが、鮮やかなスピード感で展開する傑作。こりゃすごい。ファム・ファタル若尾文子の匂い立つような色気、怖い。ルリ子と文子、凄い女優だ。

10月4日~10月6日ダウン

金曜からダルかったが、土曜の朝更に脱力。体温計を探して計ると、37度2分。微熱あるなあと思い、風邪薬飲み二度寝して起きると8度7分に上昇。結局土日寝て風邪薬飲んでも全く回復の兆しなく、体力の衰えを感じる。近くまでミネラルウォーターと果物を買いに出た以外はずっと寝ていたのであった。月曜午後、流石に医者にやっとの思いで出掛け、薬を貰う。