2009年1月31日土曜日

森雅之再評価というより、発見。

    神保町シアターで、男優・森雅之
    68年東宝堀川弘通監督『狙撃(52)』
   有楽町のビルの屋上に1人の男(加山雄三)がいる。朝6時を迎えると、トランシーバーに連絡が入る。今、定刻通り出た下りひかりの一等7号車の最前列に座っている男が帽子をかぶっていたら、最後列の男を狙撃しろと言うものだ。狙撃は成功、ビルを降りた男は車(白のトヨタ2000GT)に乗り込み、八重洲口駅前駐車場に止め、駅のコインロッカーに向かう。鍵を開けると謝礼の札束が入った封筒がある。ホテルの部屋男がいる。目覚めた裸の女が、もう支度をしたのかと尋ねる。女に何枚かの一万円札を投げ部屋を後にする男。女はこのお金はどういう意味かと尋ねるが、勿論振り向きもしない男。
    男の名は松下徹。松下は、ライフルの練習場にいる。一発撃つ度に的を確認している。そこにモデルを数人連れたカメラマンたちがやってくる。小高章子(浅丘ルリ子)がモデルになってくれないかと松下に声をかけるが断られる。モデルにライフルの構え方を教えてくれと近くの人間に声をかけ、撮影が始まる。場違いなモデルたちの嬌声が響く。松下がロッカールームで片付けていると、章子がいる。先程は断ってすまなかった、お詫びに車で送ると言う松下。カメラマンやモデルたちに1人で帰ると告げて松下の車に乗る章子。章子のマンションに行く。彼女の部屋は蝶の標本で埋まっている。特にニューギニアのトリバネ蝶の美しさはひときわだ。唇を重ね抱き合う2人。ベッドに入って愛し合う。一目見た時から、こうなると確信していたと言う章子。しかし、松下は最後まで行き着くことは出来なかった。君のせいではないと言う松下。章子を残し、出ていく松下。
   仕事の依頼主の花田(藤木孝)のもとを尋ねる。金塊の密輸現場で、金塊を横取りしようと、皆殺しにして欲しいと言う依頼だ。米軍基地のある街を訪れる松下。ガンショップを訪ねる。その店のマスター深沢(岸田森)とは永い付き合いだ。ショップの地下室に入る。使ったライフルを返し、暗視用スコープのついたソ連製AK47を借りる。念入りに試射をする松下。
   花田たちの車とともに、小さな漁港に向かう。車を止め夜を待つ。闇に紛れ漁船が入港する。2台の車が現れた。札束の入ったトランクと木箱を交換する男たち。取引が終わり、金塊を積み込んだ車が走り出した。松下たちも静かに車を出す。途中、山道で一台の車が行く手を塞ぐ。すぐに銃撃戦が始まる。林の中から、松下のAK47が火を噴く。暗視スコープの威力はすごく、引き金を引くたびに一人づつ倒れていく。最後に金塊を積んだトラックの荷台からマシンガンを連射する男がいたが、松下は冷静に仕留める。1K金貨5000枚3億の上がりだ。。章子のもとへ戻る。愛し合う二人。雨の中、大手町を、港を、大井競馬場を歩く二人。穏やかな時間が流れている。章子の部屋に戻ると電話が鳴る。ファッションモデルの仕事の依頼だ。富士高原に出かけるという章子。章子を見送り、松下がギャラの受け取りに、花田の事務所に出向くと、花田たちは、金塊で支払おうとする。松下は、約束通りキャッシュで払えと言って事務所を出る。 花田たちは、取引をしていた組織を詳しくは知らないらしい。組織の圧力で、花田たちが金を捌こうとしていた相手が次々に断って来ている。花田たちが考えていた以上に、組織は強大な力を持っているようだ。
    その頃、羽田空港に着いたパンナム機から、降り立つ日本人紳士片倉(森雅之)と金髪の白人女性バレンチナ(サリー・メイ)が降り立つ。ホテルの部屋に入り、トランクの仕掛けを開けると、モーゼルの拳銃が隠されている。
   富士高原のホテルで、毛皮のファッションショーが行われている。ミンクのコートを着て出演している章子の表情が驚きから喜びに変わる。視線の先に松下がいる。ショーとパーティーが終わって章子は、松下と、このホテルでしばらく過ごすことになった。片倉とバレンチナもこのホテルにやってくる。富士スピードウェイで、2000GTを走らす松下。ヘリコプターが現れる。片倉が乗っている。まず、バックミラーを一発で撃ち抜く。空中からの狙撃に、松下はアクセルを踏むことしかできない。最後には、タイヤを撃ち、2000GTは横転した。這い出す松下の元に駆け寄る章子。部屋に戻ると、片倉たちの部屋は斜め向かいだ。花田の子分の今野(笹岡勝次)が、現金を届けにやってくる。結局、売り先を失った花田たちは、明日の8時にエンパイアホテルで組織と取引することになったと言う今野。大金を払っているんだから何とかしてくれと言う今野。一日残って手伝えという松下。
    松下から連絡を受けた深沢がやってくる。片倉の力を見極めようと言うのだ。ホテルの上に望遠レンズ付きの8mmカメラを置き、ホテル内のゴルフ場を一人で回っている片倉に、今野が3匹の猟犬を放つ。不意打ちにも関わらず、片倉は二匹をたちまち射殺、残る一匹に腕を咬みつかれるものの表情を変えずに始末する。
  東京に戻り、フィルムを見ながら、深沢と松下が話し合っている。モーゼルを使う技術は半端ではない。松下は、深沢に軟鉛弾の製作を依頼する。松下は、この仕事が終わったら、二人でニューギニアに行こうと章子に告げる。ビザの手続きや旅行の支度の買い物をする章子。彼女の顔は、喜びに溢れている。
   松下がクレー射撃場にいる。次々に命中させる松下。隣に、バレンチナを連れた片倉がいる。片倉も次々に命中させる。組織から差し向けられた殺し屋として、同業者の松下への挨拶だ。しかし、連射して得意げに片倉が振り返ると松下は消えていた。松下が花田の事務所に行くと、警察や野次馬が集まっている。中では無残に射殺された花田、今野たち、章子の部屋に戻ると、章子は組織によって誘拐されていた。深沢から軟鉛弾を受け取る。ひとつしか受け取らない松下は、一発で仕留めないと自分は死んでいると言う。
   章子を取り戻しに、横浜の旧ヨットハーバーに向かう松下。松下の車の前方に、片倉の車が止まる。章子が松下に向かって走ってくる。伏せるんだと松下は叫ぶが、章子の胸を片倉の銃弾が襲う。松下の腕に倒れる章子。彼女の遺体を車に乗せ車を出す松下。勿論片倉も追ってくる。砂浜に出たころには、夜も明けている。車を降りた松下の腕と足が撃たれ倒れる。止めを刺そうと近寄ってくる片倉。必死の面持ちでピストルを隠し持つ松下。松下の銃弾が片倉を倒す。動く片手、片足で章子ににじり寄っていく松下。距離は遠くなかなか近付けない。
  52年松竹大船黒澤明監督『白痴(53)』
  64年日活西河克己監督『帰郷(54)』
   1959年キューバ革命が成功した。その2年前のハバナのサロン・ド・ハバナ。新聞記者の牛木()が高野左衛子(渡辺美佐子)を連れてやってくる。そこには元日本大使館員で、革命軍のアルバレス大尉に、大使館の金から3万ドルを軍資金で渡して行方不明になっている守屋恭吾(森雅之)がいる。警官たちが撃たれて倒れ店内が騒ぎになったので、守屋は、二人を店の地下室に案内した。左衛子は、ここしばらくダイヤを買いあさっているらしい。そのことを守屋は指摘する。牛木は、キューバ政府や新聞記者よりも革命軍の情報網のほうが正確なのだと言う。そこに、アルバレス大尉の使いがやってくる。守屋が出国する手筈が着いたことを告げる。守屋の逃走資金のカンパのために牛木は左衛子を連れて来たのだ。牛木は用事を済ませ、二人残った守屋と左衛子は、ロウソクの火を消し、ダンスを踊る。夜半に左衛子がホテルに戻ると、部屋には、ハバナ警察のパトロ警部が待っていた。守屋を見送りにくる人間を追っているので、守屋の出国の日時を教えろと迫り、教えなければ、買い集めたダイヤを没収し、出国できなくしてやると脅される。翌日の夜、守屋が乗り込む筈の船が停泊している。そこに、守屋とアルバレス大尉らしき影、ハバナ警察のマシンガンが火を噴き、周囲の人間も含めて倒れていく。現地紙に、アルバレス大尉と守屋の写真があり、射殺されたという記事になっている。
   昭和39年東京、守屋の妻の節子(高峰三枝子)は、中国史の研究者の隠岐達三教授(芦田伸介)と再婚している。娘の供子(吉永小百合)は20歳に成長し、女性誌「トップレディ」の編集部に勤めている。その日の朝、隠岐のかっての教え子で供子の先輩の藤原が来ている。彼は、隠岐の秘かな趣味の絵画の売買をしている。供子は、編集部で、画商の高野左衛子の原稿の受け取りのお使いを頼まれる。左衛子は、供子が守屋という苗字であることを知って、原稿を書きなおしたいので、数日後自宅に来てくれるように頼む。供子は、前を隠岐が歩いているのに気が付き、お父さんと声を掛ける。友人が古書店を出したので、顔を出してみようと思っていると聞いて、供子も同行する。そこで、中国書の書籍の整理のアルバイトをしている岡部雄吉(高橋英樹)に出会う。供子は、率直なものの言い方をする岡部に好感を持つ。
   ある日、隠岐が帰宅すると、門のところで牛木と擦れ違う。玄関に入ると、電気も点けずに節子が呆然としている。隠岐は、今家を出て行ったのは守屋の親友の牛木でなかったかと節子を問い詰める。節子は、守屋が生きており、一時帰国することになったと教えに来たのだと告げる。守屋の帰国は、隠岐、節子の苦悩を産んだ。隠岐は、自分の子供として愛してきた供子を失いたくない。節子は、守屋の思い出と、隠岐と築いてきた穏やかな生活の板挟みに苦しむだけだ。供子には、内緒にしておくことになった。
   一方、供子は左衛子の自宅を訪ねた際に、かってキューバで守屋と会ったことがあると告白される。供子は、全く記憶はなく、隠岐が父親だと思っていると答える。左衛子は大きなダイヤモンドを供子にプレゼントだと渡す。こんな高価なものを受け取れないという供子に、では預かって置いてくれと言う左衛子。
   ある日、岡部は隠岐の家を訪ねる。東都大学の大学院で中国について研究をしている岡部は、日中友好協会のアルバイトをしている。訪中団の団長の候補だった隠岐に、団員の候補のリストを届けて来いと言われたのだ。しかし、メンバーを見て左翼系、労働組合系が中心で、自分の思想信条とは異なり、こうした訪中団の団長になることは、自分のためにならないので断りたいと言う隠岐。協会の人間には伝言をしますと言って、隠岐の家を辞した岡部は、駅で供子に再会する。岡部を喫茶店に誘う供子。岡部は所持金がないのですがと正直に告げるが、供子は奢りますからと言う。
   数日後、隠岐は大学で、藤原に会う。藤原は、左衛子から供子に渡してほしいと預かったコンサートの切符を託していいかと言う。承諾すると、切符と守屋という人の居場所の封筒を渡す。帰宅次第、節子を呼ぶ隠岐。守屋のことを供子に教えたのかと尋ねるが、否定する節子。切符だけを供子に手渡す。
コンサート会場で左衛子と会った供子は、守屋が帰国していることを知る。顔も写真でしか見たことのない実父に会ってみたい気持ちと、そのことが母を苦しめ、家庭の平穏を壊してしまうのではないかと悩んでいる。翌日、岡部の安下宿を訪ねる供子。我慢をしているのは不自然ではないかという岡部。初めて供子は、母節子に秘密を持つことを決意する。
    左衛子は、守屋が泊っていると言う奈良の春日という旅館に連れていく。旅館の前で、供子を降ろし、タクシーで去る左衛子。あいにく、守屋は外出中だった。唐招提寺(?)を、杖をついて眺めている初老の紳士がいる。供子は守屋の横に立つ。守屋は、供子だとは知らずに声を掛ける。こういう場所を一人で訪れる若い娘が意外だったのだ。年齢を尋ね、家庭のことなどを聞いていると、耐えられなくなった供子は、お父さんと声を掛ける。お父さんと呼ばれる資格のない男だと言う守屋。しかし、来てくれてありがとうと言う。旅館で夕食を取る二人。供子は11時の汽車で東京に帰らなければならない。お父さんと一緒に泊まりたいという供子に、駅まで送るからと言う守屋。別れがたい供子の背中を押し、駅で別れた守屋の前に左衛子が立っている。会ってしまいましたわと言う左衛子に、あの何万の命と引き換えになったダイヤモンドは、清らかな娘を汚すものなので、返すように言っておいたという言葉を残し去った。旅館に戻ると隠岐からの手紙が届いている。
   数日後、隠岐の講演会が開かれている。終演後、楽屋に戻ると守屋がいる、名乗られて驚き、会いたいと手紙を書いたが、事前の連絡もなく現れるような非常識な男なのかと言う隠岐。節子にも供子にも会って欲しくないという隠岐。自分は、夫とも父親とも思っていないと言う守屋。ではなぜ、帰国したのだと激する隠岐。しかし、帰宅した隠岐は、節子と供子を呼び、守屋に会ったこと、守屋が今晩11時の飛行機で羽田を発つことを告げる。供子に実父に会いに行きなさい、しかし、この家に帰ってきて、これまで通り3人で暮らしていきたいと言う。自分の部屋に入ったままの供子。落ち着かない隠岐は、ウィスキーを飲む。
   電話が鳴る。節子が電話を取るが、先方は無言のままだ。節子は、「はい、わかりました。供子に変わります」と言う。守屋からの電話だとわかったのだ。守屋は、供子に私と奈良で会ったことは隠岐に伝えていないんだねと確かめると電話を切る。部屋に戻った供子のところに節子が来る。お父さんに会ってきなさいという節子。供子が節子に内緒で会ったことを告白すると、節子は、奈良から帰ってきた時の供子を見て気が付いていたと言う。私は目をつぶれば、守屋の言葉や顔や身体を思い出すことは出来るので、供子は、もう一度守屋に会ってくるようにと言う。泣きながら抱きあう母娘。
   供子は隠岐に出かけてきますと声を掛けて家を出た。しかし、駅につくと電車の事故で復旧の見込みはなく、大騒ぎになっている。タクシーやバスにも人が殺到している。羽田空港では、守屋と岡部が会っている。約束どおり供子には、教えてないだろうねと尋ねる守屋。そう頼んでおきながら、ひょっとして君から話を聞いた娘がここに現れることを期待してしまう自分がいるのだと笑う守屋。供子との話の中に何度も話が出てきた岡部に、供子のことはよろしく頼むと言う。出発の時間が来た。ゆっくりした足取りで、出発ロビーに向かう岡部。左衛子が立っているが、そのまま出国ゲイトに入っていく岡部。
   時計が11時を打った。そろそろ飛行機が飛んだ頃だという隠岐。そこに、供子が帰ってくる。早いじゃないかという隠岐に、駅に着いたら電車が動いてなくて大騒ぎだったので、帰って来たのだと甘栗のお土産を進める。供子は節子に、お母さんのために行かなかったんではない。自分でそれがいいと思ったんだと言う。台所で涙をこらえる節子。機上の人となった守屋。窓の下には夜景が広がっている。
    68年東宝谷口千吉監督『カモとねぎ(55)』
   森雅之という人は、見れば見るほどたくさんの引き出しがあると驚くし、何か共通した日本の湿度を感じさせない凄い役者だなあと思う。狙撃のスナイパーや帰郷のキューバ革命を支えた日本人のような海外生活の長いダンディな男が、本当に嵌っている。日本映画史の中でも稀有な存在じゃないだろうか。「白痴」の亀田も、他の誰が演じても、あのような純粋無垢を絵で描いたような人間にはならなかったんではないだろうか。

2009年1月30日金曜日

でんきくらげに、いそぎんちゃく、渥美まり軟体動物3部作って、何なんだ(苦笑)

    角川シネマ新宿で、増村保造 性と愛。70年大映『でんきくらげ(49)』。由美(渥美まり)が寝ていると、二間しかないもう一部屋では、母のトミ(根岸明美)が情夫の吉村(玉川良一)に抱いてくれとせがんでいる。吉村は迷惑がっているが、トミはしつこく迫る。由美はなんとか眠ろうと寝返りを打つ。
   翌朝、由美は、母たちの朝ごはんを作り、洋裁学校へと向かう。授業が終わって、クラスメイトから遊びに行こうと誘われるが、断る由美。帰宅すると、酒を飲みながら競馬新聞を見ている吉村。吉村は保険の外交員をしているが、全く働かずトミのヒモである。ミシンを踏む由美の太股にねちっこい視線をやる吉村。ポーカーをやろうと誘われる。賭け事だけは、母親譲りで、強く好きな由美。急に由美に襲いかかる吉村。殴られて気絶した由美にのしかかる吉村。一方、トミは、昔のホステス仲間(中原早苗)がママのバータッチで働いている。年増のトミはいつもお茶を引いているが、若い娘の客にたかっていて、店では鼻つまみもので、ママとの温情で働かせてもらっているようなものだ。同じホステスだったのに、こんなに差がついたと自嘲的なトミに、ママは、惚れっぽくて人がよくて男に弱いからだと言う。今の吉村で8人目らしい。
    今晩も若い娘の客にたかって、鮨屋について行き、お土産を作らせた上に、タクシーで送らせて帰宅するトミ。吉村と明美の様子がおかしい。問い詰めると明美は、吉村に乱暴され、もう私は生娘ではないと言う。吉村を問い詰めると、お前の弛んだ体では満足できるわけないだろうと開き直る。出て行けと言うトミに、由美を連れて出て行こうとする吉村。由美は拒絶するが、トミは逆上して吉村を刺す。警察を呼んでくれと由美に頼むトミ。
    警察を出てくるトミとママ。吉村が娘の由美を暴行したことまで自供したので、保釈されたのだ。弁護士費用や、保釈金などを出してくれたママ。しかし、由美を含めて食事をしている時に、刑務所に入った後は由美の面倒をみると言ったママが、由美を自分の店で働かせようとしていることを聞いて、あんな色キチガイの店で娘を働かせないと言って、ママと喧嘩になるトミ。2年の実刑判決を受けて栃木の刑務所に入った。
    結局、由美は、バー・タッチで働き始める。彼女の元に通い詰める一流企業のサラリーマン風間(木村元)が結婚しようと言う。こんなところで働かせたくないと言うのだ。栃木にいる母の許しを貰わなければという由美に、ドライブを兼ねて栃木まで行こうという風間。しかし、刑務所に案内し、自分の母親は、自分を守るために人を殺して服役中だと聞いて、急に怖気づく風間。風間を残し、刑務所の母親に、面会する由美。自らタッチで働くことを決めたのだと聞いて、毒づくトミ。
    戻ってきた由美に、土廻りのヤクザの田島(青山良彦)が声を掛ける。田島はタッチにみかじめ料を受け取りに来た時に由美に目をつけたのだ。自分の店に連れこんで、乱暴しようとする田島を騙し、警察を呼ぶ由美。身を守ることは出来たが、タッチにやってきて落し前を要求する田島たち。そこに、野沢(川津祐介)が現れ、田島に5万円を渡し帰らせる。ママにも、このまま由美を置いておいても営業が難しいだろうと言う野沢。野沢は、銀座の高級クラブのマネージャーで移籍金を支払うと提案した。その日のうちに、野沢は、由美を連れ出し、クラブ桐のママの衣子(真山知子)の住む高級マンションに連れて行き、銀座の店に相応しいように磨き上げてくれと頼む。衣子と野沢の恋人だった。
    野沢のスカウトの目は確かだった。垢抜け一躍売れっ子になる由美。その日、店のオーナーの加田(西村晃)が店にやってくる。そこに田島が現れる。加田は、どこの組だと聞いて、北江組であれば、組長は親しくさせていただいているので、直接話をしようと言って、田島を帰させる。店を出た由美を野沢が待っていた。野沢の家に連れて行ってくれと頼む由美。野沢は、かって弁護士だった。不祥事を起こし弁護士会を除名されて廃業したのだ。かっての事務所に寝泊まりしている。由美は、トミに面会しに行く。すっかり垢抜けた由美に、自分は22年水商売をしたが、銀座には全く縁がなかったと娘を誇らしげだ。
    桐で月100万以上使う上得意の高崎(永井智雄)が、由美に目をつけた。一晩由美と付き合いたいので、話をつけてくれないかと野沢に頼む高崎。その晩、野沢は、由美をアパートまで送る。抱いてくれと言う由美に、由美のことは好きだが、自分はクラブのマネージャーなので、どんなに好きなでも、大事な商品には手をつけないと言う野沢。由美は、高崎と寝るが、安売りはしないと言う。普通、桐のホステスが客と寝る場合は、一晩3万円が相場だが、由美は、高崎とポーカーの勝負をし、由美が勝ったら3万円貰い、高崎が勝ったら一緒に寝るという提案をする。盛り上がる高崎。結局15万を巻き上げ高崎の相手をする由美。しかし、情の深い由美に、高崎は大満足し、その後、度々ポーカーの相手をする。
    由美のポーカーは直ぐに噂になり、面白がる男たちが次々に手を上げた。馴染客を取られたホステスたちは、ママの衣子に文句を言う。衣子は、野沢に自分が連れて来たのだから何とかポーカーを止めさせてほしいと頼む。ある中小企業の社長(早川雄三)も、ポーカーに挑んだが、4回負けて諦めた。帰りに野沢が待っている。由美は奢るのでゴーゴー喫茶に踊りに行こうと誘う。年寄りばかり相手にしているのでストレスが溜まってキチガイになりそうだと言って踊り狂う。店の隅で、ホステスの1人が2人を見張っている。
   野沢は由美に、ポーカーは店ではもう出来なくなったので、ホテルでやれと言う。さっそくホテルの一室で、野沢を立会人に客とポーカーをする由美。そこに刑事が踏み込み、ポーカー賭博の現行犯として逮捕される。店の女の誰かが密告したのだ。しかし、置いてあった金は売春の代金で、客とポーカーをして遊んでいただけだと、野沢のアドバイス通り言い張る由美。取り調べ中、人殺しの娘だからと言う刑事に母親の悪口は許さないと言う由美。結局証拠不十分で釈放される由美。母親が出所するまで金を沢山稼ぐのだと言う由美に、野沢は社長のもとに連れて行く。とても率直な物言いと、母思いの由美を以前から気に入っていた社長は、月百万で自分の妾にならないかと言う。野沢に相談してから決めると、マンションの屋上に野沢を連れて行く由美。由美の問いに、社長には、弁護士の時に株に狂って、社長の金を横領し、弁護士の資格を失った自分に手をさしのべてくれた社長には恩があり、由美のことをどんなに好きでも、妾になれと言う野沢。私にビルの屋上から飛び降りて死ねということだと野沢に言って、社長の妾となる。着物姿でトミに面会する由美。妾になったと聞いて怒るトミ。
   贅沢をするでもなく、下手なりに炊事、洗濯、掃除をし、昼夜尽くす由美。しかしある日風呂で、社長は死ぬ。由美は桐にいる野沢に電話をする。野沢は由美が社長の妾にして以来考え事をすることが多くなりミスばかりしている。衣子は、そんなに由美が気になるのかと言って、千五百万のパトロンを見つけたので、野沢と別れ、自分の店を出すと言う。葬式の真っ最中にも社長が1人で築いた財産にハイエナのようにたかる親戚たち。妾にはびた一文払う気持ちなどない。野沢は元顧問弁護士として、遺産の計算をし4億5千80万円だと明らかにした。野沢は由美に子供を妊娠していれば、その胎児が全額相続するのだがと話す。金のことしか頭にない親類たちを残して2人はモーテルに行き朝まで回転ベッドの上で愛し合う。数ヶ月後、再び親類が集まり、相続確定の会議が行われた。何故か岩田帯を巻いた和装の由美がいる。遺産内訳などを読み上げた野沢が何か意見があるかと尋ねると、由美が一通の封筒を出す。その中には妊娠証明書が入っている。社長の子供であれば、全額その胎児が相続することになる。親類たちは予期せぬことに大騒ぎだ。裁判に訴えると言う者、狂ったように由美に殴る蹴るの暴行を働く女(村田扶美子)。
    野沢は裁判となれば十年以上かかって、負けた場合は、裁判費用だけ持ち出しになることなどを説明し、自分に任せて由美と和解した方が得策でないかと提案する。今すぐ大金を手に入れるつもりだった親類たちは、結局示談で、2億を今すぐ受け取ることを選んだ。由美と野沢は、栃木のトミを訪ねる。トミは由美が大金を手に入れ、野沢から求婚されていると聞いて感心することしきりだ。もう刑務所暮らしにも飽きたので、うまいことやって出してくれと野沢に相談するトミ。
   産婦人科の手術台に昇る由美。青ざめた顔で、野沢もとに現れる。今中絶してきたと聞いて驚く野沢。自分の子供なのに相談もなくどうしてと詰め寄る。由美は、社長の妾になれと言われた屋上で、野沢を愛していた自分は死んだのだと言う。自分にとって大事なのは自分を育ててくれた母親だけだと言って、呆然と立つ野沢を残し去る。うーむ。
   71年大映『遊び(50)』。中学を卒業し電機の組立工場に、16歳になったばかりの少女(関根恵子)がいる。来る日も来る日もベルトコンベアを流れる部品のネジを締めるだけの仕事。一部屋4人押し込められた独身寮も、酷い食事だ。勤務中に母親が現れ、金を出せと言う。給料の三分の二を仕送りしているのに、あるわけないというと、前借りをしろと言い毒づく母。少女の父親(内田朝雄)は、トラックの運転手をしていたが、酒を飲まなければ何も言えないような小心者で、飲酒運転で人身事故を起こしたことで、更に酒浸りになり借金の山だけ作って死亡した。母親(杉山とく子)も、大した収入にもならない内職仕事を細々と自宅でやっている。更に姉(小峰美栄子)は脊髄カリエスで寝たきりだ。その生活が16の少女の肩に覆いかぶさっているのだ。
   ある日、独身寮に、会社を辞めてキャバレーのホステスをしているヨシ子(甲斐弘子)がやってくる。務めるキャバレー丸玉のマネージャー(仲村隆)を連れてやってくる。月8万から15万稼げると聞いて寮の女子工員たちは穏やかではない。給料日になって、みな遊びに出かけるが、仕送りして小遣いもない少女は一人留守番だ。門限を破って深夜帰宅した同室の寮生たちは、全身キスマークを付けていたり、遊びまくって帰って来ている。帰り道、学生たちに輪姦された少女がぼろぼろになって帰ってきて大騒ぎになる。
   ある休日の日、少女は街に出て、公衆電話の横で、電話帳をめくっていると少年(大門正明)が声を掛けてくる。少女は、ヨシ子に電話をしようとしていたのだが、ヨシ子の電話番号は分からなかった。キャバレー丸玉にいるらしいと聞いて、少年は、営業時間になったら連れて行ってやるので、それまで一緒に付き合わないかと言う。喫茶店に行く二人。仕事を聞かれた少年は兄貴の店を手伝っていると答える。少年は自分が好きだと言うヤクザ映画に連れていく。少女は、男性と映画館に来たのは初めてだといって感動している。ゴーゴー喫茶に行くと、フーテン娘(松坂慶子)が少年に寄ってくる。嫉妬心を感じる少女。
  18歳の少年は、おでんの屋台をやっている、酒飲みで男にだらしない母親(根岸明美)に育てられた。母親が男を連れ込む度に、家の外で過ごす。ぐれて、チンピラの兄貴(蟹江敬三)の子分になっている。兄貴たちは、スケこましをシノギにしている。女を騙し、暴行されている写真を撮って脅して、トルコやキャバレーに売っている。その手伝いをさせられているのだ。いつも兄貴に言われているとおり連れ込みホテルの、ことぶき荘に少女を連れていく。女将(村田扶美子)にラーメンの出前を頼む。
   しかし、初めてひっかけた少女のことを好きになっていた少年は、兄貴たちの毒牙にかけることが苦しくなっていく。ことぶき荘の主人(小山内淳)をビール瓶で殴り、逃げ出す。タクシーに乗り、海が見える景色のいい高級な旅館に連れて行ってくれと頼む少年。花月荘という宿は、二人にとっては夢のような所だった。洋式のトイレにきれいな浴室、豪華な食事。ふかふかの布団。少女は、あなたに会うために今まで生きてきた気がすると言う。その夜、二人は結ばれる。二人とも初めての経験だった。朝起きるとシーツに赤い染みが二つ残っていた。
   朝近くを散歩している二人、二人は全財産を使い果たしていた。湖の船が浮かんでいる。二人とも泳げない。服を脱ぎ、船を出す。つかまりながら泳ぐ。水が浸水し、徐々に船は沈み始めるが、二人は泳ぎ続ける。空にはまぶしい太陽がある。
  野坂昭如「心中弁天島」が原作。関根恵子と大門正明の初々しさが珠玉のような映画だ。
  新宿ピカデリーで、マーク・フォースター監督『007 慰めの報酬(51)』。
  007のシリーズという感覚はあまりない。エンディングになって改めてシリーズの一環だと思いだされる感じ。シリーズ好きな人には違和感あるかもしれないな。

2009年1月29日木曜日

かって、映画館の床はゴミ箱を兼ねていた。

   朝一番で大門の歯医者。来週インプラントを入れるためのレントゲン撮影。
   神保町シアターで男優・森雅之。凄い人だ。たぶん70歳±5歳というところではないか。特に「こころ」は満席。不景気もなんのそののシルバーパワー。少し前のシネフィル中高年中心の客席が、かって映画が青春だった人たちの、何か若やいだ熱気で溢れている。ひとつだけ、文句を言わせてもらえば、終演後の座席周りのゴミの山だ。確かに、かって映画館の床はゴミ箱を兼ねていた。そんな時代でなくなって、もう何十年たっているんだから、お願いしますよ(苦笑)。
   55年日活市川崑監督 『こころ(47)』。
   野淵(森雅之)の妻のしづ(新珠三千代)が針仕事をしている。野淵がやってきて、君は自分を誤解していると言う、一緒に墓参りに行くかどうかで揉めているのだ。結局野淵は、一人で、友人の梶の墓を訪ねた。そこに、日置(安井昌二)と言う学生が訪ねてくる。どうして知ったのだと聞くと、しづがここにいると教えてくれたと答える日置。しづの様子を聞きながら、ビールを飲もうと誘う野淵。
   日置は、野淵家をたびたび訪れるようになる。野淵は、教養も学問も高いものを持っているが、親の遺産を食いつぶすだけのような生活を送っている。また、何か野淵としづずの間に気持ちのずれのようなものがある。しづに尋ねると結婚して13年、書生の時代から知っているという。かっては、あそこまで鬱々としていた訳ではなく、働くように何度も頼んだこともあるのだがと答えた。また、ある日日置が野淵家を訪れている際に、外では号外を叫ぶ声がある。野淵は女中のお粂(奈良岡朋子)を買いにやらせる。そこには、明治天皇の崩御の報せだった。野淵は、日置に渡すが、日置はあまり関心なさそうに、野淵に返すので、野淵は、その号外に見入る。
   日置の父親が身体を崩し、日置は実家に帰る。卒業証書を母親(北林谷栄)は、仏壇の前に立てようとするが、何度立てても滑り落ちる。
    野淵が帝大の哲学科の学生だったころ、友人に梶(三橋達也)という男がいた。仏教について学ぶ梶は、親から仕送りを止められて大変困窮している。野淵は、自分の下宿につれてきた。下宿先は、未亡人(田村秋子)と女学生の娘しづの親子の家だ。梶は、鬱々として、何か自分を恥じているかのような男だ。野淵が気晴らしに旅に行こうと海に誘った時も、旅の僧(久松晃)に日蓮について、尋ねておきながら、坊主は何も日蓮の教えなど分かっていないと罵っている。野淵と梶は、多くの時間を過ごしているが、会話はすれ違ってばかりである。
    無邪気にころころ笑うしづは、若い娘らしく気まぐれで、まじめな梶に興味を持ち、出先で会った折、当惑する梶に、無理矢理同行したこともある。しづに興味のある野淵は気が気でない。ある時、梶が、しづが気になって学問が出来ないと告白する。野淵は、煩悩に取りつかれている梶を非難するが、野淵もまた煩悩を持つ一人の若い男だ。
   翌日、野淵は仮病を使い、学校を休む。梶が出かけたのを確認して、未亡人に、娘さんを私に下さいと頼む。簡単に承諾する未亡人。梶が帰宅すると、未亡人はうれしそうに、野淵と娘の結婚の話をする。梶は驚くが、野淵には何も言わず、風邪薬を買ってきたといって枕元において部屋を出る。寝床の中で、野淵の肩は震えている。翌日の早朝、野淵は目を覚まし、梶の部屋に行くと、梶が自殺している。机には野淵にあてた遺書がある。自分はもっと早く死ぬべきだったと言う言葉と、今までの野淵に対する感謝が書かれている。うつ伏せに横たわっている梶を仰向けにしようとした野淵の手に、ヌルヌルとした梶の血の感触だけが残る。1階に降り、井戸の水で手を洗ってから、未亡人に声を掛ける。小さな葬儀が行われる。梶の父親は現れず、親類の者に、梶がよく散歩をしていた雑司ヶ谷の墓地に埋葬したいと言う野淵。しばらく後、野淵としづは結婚することになった。
   日置の父の容体が悪化し、実家にいる日置に野淵からの封書が届く。そこには、梶との友情と、しづへの思いの板挟みに苦悩し、梶を追い詰めた経緯と、自殺をすると暗示するような内容が書かれている。日置は、医者のもとに走り、2、3日の間、なんとか父親を生かしておいてほしいと頭を下げ、東京行きの汽車に飛び乗る。野淵家を訪ねると、忌中の張り紙がある。日置はしづに声を掛ける。門のくぐり戸を音を立てて閉めたしづは、日置を家に招き入れた。
帝大の哲学科の森雅之が、あまりに老けているという声も多いようだが、今の大学生とは違う。人生50年の時代だと思えば、22,3歳、更に隠居のような生活をしている先生、野淵は屈折して50歳位の顔をしていてもおかしくないうような気もするのだが。
   夏目漱石、高校3年の時、選択授業があり、漱石を読み続けるというものを受けていた。まあ、選択をした理由には、他のクラスの好きだった女の子がその授業を選んだことを偶然知ってしまったからだが、吾輩は猫であるとぼっちゃんのイメージしかなかった漱石の、鬱屈とした精神の闇のようなものに嵌った覚えがある。小説として読んだ時の印象と、市川崑監督作品の印象は30年の間で比較するのは無理があるだろう。漱石をもう一度読み返す。もう少し年をとったときの楽しみをひとつ見つけた。
  63年日活中平康監督 『光る海(47)』。城南大学の卒業式、英文科は、女子33人に対して、男子7人。男子たちは、七人の侍と呼ばれている。学生服姿の彼らは、教室の前で、クラスメイトの女子たちを出迎えている。クラス一の成績の葉山和子(十朱幸代)は艶やかな振袖姿で、対照的に、二番目で小説家志望の石田美枝子(吉永小百合)は、黒いスーツに愛犬のコッカスパニエルのベベを連れている。式の最中、卒業証書を受けた取った美枝子が転ぶ、そこをクラスメイトの野坂孝雄(浜田光夫)が受け止める。
  式が終わり、足を挫いた美枝子に、肩を貸す野坂。そこに、美枝子の母、雪子(高峰秀子)が声を掛ける。若く美しい雪子が着ている上質な着物や帯などを説明するが、今日は自分の頼みで化粧をしていないのだと野坂には言い、母には、これから茶話会があるので、ベベを連れて帰ってと頼む美枝子。雪子は、5歳の時に離婚、銀座でバーをやりながら、美枝子を育ててきた。美枝子は、自分の母親が水商売をしていることを恥じてはいないが、何か屈折があり、母を困らせるために化粧をしないでと言ったのだと告白する。
  教室での茶話会は、担任で心理学の渡部教授(浜村純)を中心に盛り上がる。教室を片付けている和子と孝雄。美枝子がハンドバックを忘れている。野坂が届けることになる。また会いましょうと握手をする二人。美枝子の家に、野坂がいる。卒業式では、黒いスーツ姿だった美枝子が振袖に着替えていて、野坂を驚かす。小説家志望で人間観察が趣味の美枝子にかかっては、親切に忘れ物を届けた野坂も感謝されているというよりも貶されにやってきたようだ。ホテルオークラで、父親と会うので車を運転して送ってくれと頼む美枝子。
   ホテルのレストランで会食をする。美枝子の父、田島清二(宮口精二)は、美しく成長した娘の姿に目を細める。何で離婚したのだと、野坂から率直に問われた田島は、幼い時に夫を亡くした母親(原泉)が息子である自分の成長に全てを掛けたため、あまりに母との関係が深すぎ、結婚した後も、雪子に干渉しすぎて、諍いが絶えず、自分が母親にも妻に対しても何もできなかったからだと言う。すると、美枝子は、直接的な原因は自分だったと言いだす。幼稚園のころ、自分は祖母にも母にもいい顔をしていたが、ある日帰宅すると二人が激しく言い争いをしており、それを止めようと物差しで祖母を叩き「ママを苛めないで」と自分が言うと、祖母も、母も自分のせいだと謝罪をし、そのことは、二人は一緒に暮らさない方がいいと思わせてしまったのだ。幼いときの自分のせいだという美枝子の話に、田島も野坂も、美枝子が5歳から背負ってしまったものを思って涙ぐむ。
   帰り車を運転し、美枝子の家に向かいながら、聖者の行進を歌う二人。玄関の前での別れ際、美枝子を抱きしめたくなる衝動を抑える野坂。美枝子は、恋愛とか結婚という気持ちと別に若者は口づけをすることはあるという。口づけをする二人。
   三か月がたつ。葉山和子は、ある大企業の庶務課に勤めるBGとなっている。実は、この会社の社長は、叔父の矢崎庄二郎(森雅之)だが、社内でその関係を知る者はほとんどいない。秘書課でもなんでも推薦してやると言ったのに、何で庶務課なのだと尋ねる矢崎に、とても働き甲斐のある職場だと言う和子。実は、和子の推薦で、浅沼一郎(和田浩治)が入社しているが、英語力を矢崎は認めており、秋にはアメリカ出張させることが内定していると言う。浅沼とすれ違った時におめでとうと囁く和子。ちょっと相談があるという浅沼に、野坂を誘い三人で会おうと言う和子。浅沼は、実は大学時代から1年下の木村栄子(松尾嘉代)という同棲相手がいて、妊娠した栄子は産みたいといっているが、会社には独身として入社したので、どうしようという衝撃的な話だった。野坂は自分の実家の医院で出産し、費用は出世払いにしてもらうように親に頼んでやるといい、和子も、会社のほうへの根回しは自分がやってあげると言う。二人は、浅沼のアパートを訪ねる。和子は、浅沼と野坂を部屋の外に出し、栄子の腹を触らせてもらう。胎動に感激する和子。
   浅沼の家を出た和子は、野坂を自宅に誘う。葉山家を訪れると両親は外出しており、高校生の妹久美子(和泉雅子)が出迎える。和子が着替える間、久美子が相手をするが、少し前、内気で暗かった印象の久美子は、一変しており、野坂を驚かす。姉の和子と今結婚しても、安月給では、生活が苦しい、その分、今の自分と交際をして自分の大学卒業の時に結婚すれば、給料も上がっているだろうから、幸福な新婚生活を送れるだろう。だから姉ではなく自分と交際しないかと言うのだ。かって自分が陰気だったのは、下半身に発毛が無く悩んでいたからだと言う。そしてその悩みが解消され、母親や姉とも一緒に入浴できるようになり、姉の和子と入浴した際には、自分より姉の方がそこは豊かだと言って、姉に叩かれたことがあるとまで話す。和子が現れ、何の話をしていたのかと尋ねられ、経済学や生理学やら・・・と野坂はごまかすが、最近浴室で久美子を叩いたことがあるかいと尋ねる。何の話だか思い出した和子は赤面する。そこに、親類の建て前の祝に出かけていた和子の両親(下條正巳、小夜福子)が帰宅する。父親は大変ご機嫌に酔っている。家の前まで、野坂を見送る和子。
  出版社に就職した向井達夫(山内賢)が美枝子を訪ねてくる。今度新人文芸コンクールがあり、若手編集者に一人ずつ作家を発掘するよう指示があったので、美枝子を推薦しようと言うのだ。原稿を取りに、自宅に戻ると婆や(飯田蝶子)が雪子が実印を忘れたので店に届けてほしいという伝言を伝える。美枝子は向井を連れて、銀座の雪子の店きこりを訪ねる。美枝子は雪子に交際する男性がいるかと尋ねる。姑との確執で家を出た自分は、水商売をしているだけに、美枝子のためにも自分を律してきてしまったと言う。逆に雪子があなたはどう思っていたかと美枝子に尋ねる。そうしたそぶりも見せない母親を疑い、耐えられなかったが、いてもおかしくないし、居る筈だろうと思って、母親が幸せならどちらでもいいと思っていると言う。母娘の会話に感動する向井。雪子は、信頼するボーイフレンドと新橋で食事をするので、あなたたちもいらっしゃいと言う。
   料理屋に現れたのは、和子の叔父の矢崎だった。店の客で、妻も何度か店を同行させ、雪子に好感を持っていると言う。何か、複雑な思いを抱かせないように、雪子は美枝子に、矢崎は和子に、自分たちが友人だと告げてこなかったと言う。紳士的でダンディな矢崎に好感を持つ美枝子。若い二人を帰したのち、矢崎は、妻のことで相談があると言う。胃潰瘍の手術を受けた妻の信子(田中絹代)は、痩せてきており、医者は問題ないというが気鬱で身体を壊さないか心配しているのだ。雪子は、信子から夫の矢崎には内緒で一度、出来れば美枝子も伴ってもらって、会いたいと言う手紙を貰っていると告白する。信子が二人の仲を邪推するような女性でないことは、二人とも分かっているが真意は不明だ。女同士の会話で信子の気も晴れるだろうから、会ってやってくれないかと言う。
    教会で、普段着のまま、牧師の前に並ぶ浅沼と栄子の姿がある。栄子は臨月を迎え苦しそうである。しかし、牧師は何故か登里子(ミヤコ蝶々)で、牧師の弟の代理である。誓いが終わり、エンゲージリングを栄子の指に嵌めたところで、栄子は倒れる。救急車で野坂の実家の医院に運ばれる。野坂の父親(清水将夫)も長い産婦人科医生活でこんな大きな声をだす妊婦は初めてだというくらいの悲鳴が、院内に響き渡っている。居間に集まっている野坂や、母(高野由美)、弟の次郎(太田博之)、浅沼、和子、久美子、美枝子たち。疲れた顔で父親が現れ、あまりの悲鳴の大きさで入院患者も何事かと大騒ぎになったが、無事に男の子が生まれたと浅沼に伝える。浅沼が病室に駆けつけると新生児を抱いた看護婦(奈良岡朋子)が、小声で、自分の看護婦生活であんな大きな悲鳴を上げた妊婦は初めてだと言い、さぞや閨での声も大きいのでしょうねと囁く。赤面する浅沼。
   美枝子、和子、野坂たちは、浅沼抜きで出産祝いを兼ねて、やはり同級生だった木下雅弘(倉橋守)が、ステージで歌う銀座のクラブに出かけた。
数日後、雪子は、美枝子を伴い軽井沢の矢崎の別荘に信子を訪ねる。美枝子が馬に乗って出かけている間に、雪子は、自分が胃癌であり、みんなが自分のために悲嘆しながらその日まで迎えることを嫌い、夫や子供たちには内緒にするよう医師に口止めしていることを告白する。その上で、自分が心残りなのは、夫の矢崎のことだけであり、世間に大々的な披露をしないことと、遺産の相続を受けないことを条件に、自分の死後のことを雪子に託したいと言う。
   気持ちは判るが、雪子も矢崎も独立した人格なので、、一緒になれと言われても困ると言う雪子に、極めて冷静に信子は、この願いを雪子に伝えることで自分は救われるのだと言う。カレンダーを指す信子。8月のカレンダーには1日毎に赤鉛筆で×が付けられている。これが自分の生きている証なのだ。来月の風景の写真を自分は大変気に入っており、何日その写真を見ることが出来るだろうかと言い、今日は大事な用事も済んだので、印を付けてほしいと雪子に頼む。泣きながら赤鉛筆を取る雪子。
    馬に乗った美枝子がやってくる。明るい美枝子に会い喜ぶ信子。疲れている信子を気遣いハラハラしている雪子だが、元気な若い佐知子と話すことが何よりも嬉しいと言う信子の夕食の誘いを受ける。美枝子宛ての電話が掛かってくる。美枝子の書いたものが評判なので、コンクールの選考に残ることになったという知らせだ。ラジオをつけてツイストを踊り出す美枝子。戸惑う雪子と嬉しそうに手拍子を打つ信子。
    9月中旬になり、東京の矢崎の家に、和子と美枝子が呼ばれる。美枝子の母と矢崎が親しかったと聞いて驚いたと言う和子。今に信子に呼び出された息子と娘2人もいる。信子が、自分が胃癌で後数週間の命であること、家族には知らせないよう医師に口止めしていたことを告白する。驚き疑う家族たちに、自分は皆に悲嘆に暮れながらその日を迎えたくなかったのだという。美枝子は、ある哲学者の言葉を思い出した。自分がうまく伝えられない気持ちを代弁してくれた美枝子に感謝する信子。しかし、自分の死後、遺産相続を受けずに夫の矢崎と生活を共にしてくれる女性を求めているのだと言い出したことに矢崎も子供たちもそれはあんまりだと言うのだ。そのとき美枝子は、私が呼ばれた訳は、信子が思い抱いているのが自分の母の雪子だからではないのかと言う。信子にどう思うかと尋ねられて、多分母親を取られて悲しい思いをすると思うが、反対はしないと言った。数週間後、信子は静かにこの世を去った。
   和子の家で両親が相談ごとをしている。久美子が現れて、二人は話を止める。久美子は、日本の家庭では、親は子供に内緒ごとをできないので、教えてほしいと言う。戸惑う両親に、クラスで、いつ両親の秘め事を知ったかとアンケートをとるとほとんど幼いときから両親が閨を共にしていることを知っていたと言う。久美子も、本当に小さかった時、夜中に目が覚めると母親が布団におらず、父親の布団に入っていることに気がついて、母親はお化けが出て怖いので、父親と一緒に寝ているのだと思ったという話を披露する両親の困惑は一層高まり、和子の縁談のことだと打ち明ける。久美子は、姉の和子は野坂に好意を持っており、野坂もそうであるが、それ以上は進展していないと言う。野坂であれば、人柄も家柄も文句なしだが、猫に鈴を誰がつけようかという話になり、久美子は、野坂の弟の次郎と二人で実行すると言う。
  翌日、学校帰りに次郎と会って、その話を持ちかける。美しい和子が義姉になることは次郎も賛成だ。翌日、野坂を勤め先の放送局に訪ね、姉が最近恋わずらいして、寝言で野坂の名を呼んでいると嘘をつく。次郎も、和子を会社に訪ね、兄のことを話す。
  羽田空港に、矢崎家の人々と和子、雪子、美枝子が集まっている。結局、矢崎と雪子は、信子の希望通り、入籍はしないが、同居することになり、神社で内輪だけの式を挙げ、今日から5日ほど北海道への新婚旅行にでかけることになったのだ。美枝子は雪子に、自分は小説家の卵として、矢崎と愛し合った日には○をそうでない日は×を書いた絵葉書を出してほしいと頼む。雪子は呆れながらも仕方なしに、承諾する。
   見送りのあと、和子はボーリング場で、野坂と待ち合わせている。お互いがやつれていないことで、弟と妹に騙されたことに気がつく。しかし、和子は、野坂に二人に乗せられたことにしましょうと言い、結婚しようということになった。野坂は、美枝子に電話をする。感のいい美枝子は、野坂が和子と結婚の約束をし、報告の電話でないかと言って、野坂を驚かす。しかし、祝福の言葉を言って電話を切ってから、美枝子は泣いた。彼女も、野坂に対して憎からず思っていたからだ。さらに、新婚旅行先の雪子から電話がある。とてもいいホテルで。寝室にはとても大きなダブルベッドと、赤い薔薇の花で埋め尽くされていると言う言葉に、電話を切り、激しく泣き出す美枝子。急に孤独を強く感じたのだ。婆やが、美枝子を慰め、涙を拭いてあげる。
    ホテルの一室で、美枝子の新人女流文学賞の受賞パーティが行われている。恩師の渡部を始め、赤ん坊を抱いた浅沼と栄子も含め、大学時代の友人たちもみんな顔を合わせている。スピーチを終えた美枝子は、突然、婚約を決めた友人を祝福したいと思うと言って、野坂と和子を呼ぶ。驚く二人。美枝子は結婚行進曲を原語で歌い始める。友人たちも歌い始め、会場中が歌声にあふれていく・・・。
   石坂洋次郎原作。やはり、新しい日本で男女平等になり、対等に、また理路整然と話をする女性が眩しかった時代なんだろう。もっと前の日本では、女のくせに理屈をこねるな!! と一喝されていたことが、敗戦による女性解放が、新しいヒロインを求めたのだろう。まあ、正直、21世紀の感覚では、弁はたつが、屁理屈を引き回しているようで、愚かしく見えてしまうことも否めない。しかし、ちょっと、女性が張り切って力が入りすぎていた時代かもしれないが、いいなあみんな楽しそうで、楽しいのだからつべこべ言うのは野暮というものだろう。こんな明るい青春時代を送ってみたかったなあ(苦笑)。
      

2009年1月28日水曜日

仙道敦子、夏目雅子、原田美枝子。女優誕生、しかし女優生命は余りに短く切ない。

   池袋新文芸坐で、仲代達矢・役者魂。66年松竹五社英雄監督『五匹の紳士(44)』。
公衆電話から警察に元町の電車庫に死体があると通報する男がいる。しかし、電車庫で行われていたのは、香港ルートの麻薬取引だ。4人組の男たちが、香港マフィアから三千万の金を奪う。そこにパトカーのサイレンが鳴り響き男たちは逃げおおせ、二年後の再会を期して別れる。
    府中刑務所での運動の時間、ある囚人が持っていた妻の写真を奪われ、からかわれた末破かれる。男は逆上し、ナイフを取り出しからかった男に切りかかる。1人の男が囚人服を切られても動じず、ナイフの男を取り押さえ、看守たちに引き渡した。それを見ていた松葉杖をついた男千石(平幹二郎)が男に「あと3、4日で、出所するのに、死んだら元も子もないだろう」と言う。雑居房に戻ってからも千石は笈田に話しかけてくるのを止めなかった。出所したら何をやるのか?と聞かれ、笈田は、自分が刑務所に入った経緯を話し始めた。
   笈田は、しがない車のセールスマンだったが、専務の娘の紀子との縁談が進み将来の希望が見えてきた。そこでバーの女と別れ話をしようと車を走らせていた。女はあなたには行きずりの女かもしれないが、随分と貢いで来た私は納得がいかないので、慰謝料をよこせと言い出し、運転する笈田と言い争いになる。不幸なことに一瞬よそ見をした時に、 向こうから父子二人乗りの自転車がやってきて、はねてしまう。父子は即死だ。轢き逃げとなり、実刑判決を受けた。会社からは、現在多額の宣伝広告をしている新車で、自社のセールスマンが人身事故を起こしたことで、スキャンダルを恐れ、事故の一週間前に退社したことにされる。退職金などは、会社に怒鳴り込んできたバーの女が治療代や慰謝料としてすべて持っていった。もちろん専務の娘との縁談もなくなった。死んだ父子の妻奈津子(桑野みゆき)は、警官にくってかかっている。奈津子の怒りの眼差しを忘れられない笈田は、出所してもやれることはないだろうと千石に語る。千石は、自分と組まないかと言う。何の仕事かは一切明かさない千石。もし、その気になったら、秋葉町の追分という店の歌子(川口敦子)という女を訪ねろと言う。
   追分では、他人の客を盗ったと文句をつけてきた女と、歌子は取っ組み合いの喧嘩をしている。女将にたしなめられ、外で不貞腐れてタバコうを吸っている歌子。そこに 笈田がやってくる。千石と刑務所で知り合ったという証拠を見せると、歌子は自分の部屋に連れて行き、20万を取り出し、笈田に渡して、リストにある三人を殺してくれと言う。一人殺すごとに100万払うと言うのだ。
    まず、笈田は、港湾労働者の元木を尋ねる。元木は、千石があと7日で出所してくることを知っており、まずは、これからのことを話そうと言って、笈田をおでんの屋台に誘った。飲みながら、元木は問わず語りに、自分の身の上を話す。彼はかって刑事だった。しかし、逮捕し刑務所に入れたホシの妻と関係を持ってしまい、ホシが出所したら分かれる約束を果たせずに、警察をクビになり転落の人生を辿ったのだと告白した。しかし、千田とどういう関係で、何をしたのかは一切喋らない。屋台を出てしばらくして、酔った元木が弁当箱と大事なものを忘れたというので、笈田が屋台に取りに戻ることにする。しかし、その間に、元木は、香港マフィアの宋(天本英世)と金(辰巳八郎)によって殺されてしまう。その際に、仲間の梅ヶ谷(田中邦衛)の名を出してしまう。笈田が戻ると、元木は今わの際に、娘の巴(上原ゆかり)に土産の手袋を渡すことと、ストリップ小屋のモナコにいる梅が谷への伝言を託すのだ。
元木が亡くなったことで巴は、身寄りが全くいなくなった。巴は、父から弁当箱と手袋を預かった笈田の後を付いてくる。一度は欺いて撒こうとした笈田だったが、巴の姿に、連れて行くことにする。
  梅ヶ谷は、ストリッパーの明美(葵千代)のヒモをしながら、ストリップ小屋の照明係りをしている。香港マフィアの二人がやってくる。間一髪逃げ出した梅ヶ谷だが、巴に明美への伝言を頼む。笈田は、明美を見張っているので危険だろうと言って、巴を連れて梅ヶ谷の指定した遊園地に行く。笈田を信用はしたが、やはり千田とのことは明かさない梅ヶ谷。しかし、明美と落ち合うクラブメコンに一緒に来いと言う。しかし、明美は、マフィアたちの手に落ちる。10分以内に東堀川の浄水場に来ないと明美を殺すという電話に、笈田への伝言を残し単身向かう梅ヶ谷。その頃、笈田は、クラブメコンで奈津子と再会していた。俺を気の済むようにしてくれと言う笈田に、奈津子は死んだ二人が帰ってくるなら、強盗でも殺人でもするが、決して戻らないと憎悪の眼差しで笈田を睨む。笈田は、比べられないかもしれないが、自分もこのことですべてを失ったのだと言う。少しはわかると表情を和らげる奈津子。
   梅ヶ谷の伝言を聞いて、笈田は、巴を店に残して、浄水場に駆けつける。しかし、一足違いで、梅ヶ谷と明美は殺されていた。梅ヶ谷も今際の際に、野村拳というボクシングジムにいる冬島に知らせてくれと言って息絶える。クラブメコンに笈田が戻ると、雪の中外で待ち続ける巴に、自分のマフラーとコートを指し掛けている奈津子の姿がある。
   笈田が巴をつれて冬島(中谷一郎)のいるジムに行き、説明しようとすると、二人組のマフィアが現れた。間一髪のところで逃げ出す。冬島は、ミドル級の元ボクサーだった。ヤクザに八百長を持ちかけられ、断ったことで右腕を折られ、再起不能になったのだ。そして、職業紹介所で元木、梅ヶ谷と知り合い飲んでいるところを、戦時中の空襲で足をやられた千石から香港マフィアの麻薬取引の上がりの強奪を持ちかけられたというのだ。千石が一人で金を隠し、2年の間、千石は、共栄証券の手形詐欺で、刑務所にはいるので、持ち逃げはできないので、ほとぼりを冷まし、出所次第山分けしようという話だった。しかし、マフィアたちは、確実に一人ずつ消しているのだ。笈田は、殺し屋は実はもう一人いて、千石に依頼された自分だと告白した。手を組もうと持ちかけるが、やはり殺される。しかし、金とは相打ちで倒していた。ふと気が付くと巴が消えている。宋によって誘拐されたのだ。
   千石の出所を出迎える笈田。三人とも死んだということに満足そうに頷く千石。3000万の隠し場所は、3万ボルトの高圧変電所の敷地内だった。金属ケースが出てくる。千田は笈田に何を考えていると尋ねる。お前にはわからないだろう、ゆきずりの子供のために馬鹿をやろうと思っていると答える笈田。笈田の勝ちに見えたが、トランクを開けた千石は、ピストルを出す。こうしたこともあるかと思って1発だけ弾を残してあったのだという千石。笈田は腹に弾丸を食らって倒れる。しかし、トランクを持って変電所を出ようとした千石に、切れて垂れ下がった高圧電線が触れて感電死する。
    注意深く、金を取り上げ、笈田は、変電所を後にする。宋に電話をして、巴と交換に、3000万を返すので、帝国ホテルの前まで来いと告げた。腹部からの出血を抑えながら、笈田が待っていると、宋の運転する車がやってくる。しかし、皮肉なことに、笈田を認めた宋は、ダンプカーにぶつかってしまう。ダンプカーの運転手につかまれていると、近くの警官たちもやってきて、宋は逮捕されてしまう。宋の車から巴が降りて、笈田に駆け寄る。笈田は、タクシーを止め、巴に、マフラーをくれた親切なおばちゃんのところにトランクを持って行け、自分は用事を済ませてから行くからと言う。泣いて一緒にいると言う巴を無理やり乗せ、運転手に楓町のキャバレーに行ってくれと告げる。タクシーが走り出すのを見届けてから、歩き出す笈田。足はもつれ意識は遠くなっていく。
   子役の上原ゆかりがいい。アニメの鉄腕アトムの時に流れていた、明治製菓のマーブルチョコレートのマーブルちゃんとして、一世を風靡し、お茶の間を席巻。逆にそれでCMタレントになっちゃった感があるなあ。
   82年東映五社英雄監督『鬼龍院花子の生涯(45)』。昭和15年夏、京都、島原の遊郭。日傘姿の松恵(夏目雅子)が、場末の女郎屋の近くまで来ると、人だかりがして、中に警官たちがいる。知り合いだと言って中に入ると、花子(高杉かほり)が死んでいる。流産の痕跡もあると警官たちは話をしていて、お前は誰だと聞かれた松恵は、私は鬼龍院松恵、亡くなっているのは私の妹の花子ですと答える。
  大正10年夏、高知九反田の子沢山で貧しい看板屋の娘だった松恵(仙道敦子)は、弟の拓とともに、九反田の鬼龍院一家、侠客、鬼龍院政五郎(仲代達矢)の養女となる。政五郎は母屋に妻の歌(岩下志麻)、向かいの離れに、妾の笑若(新藤恵美)と牡丹(中村晃子)が囲われていた。二人の隣の部屋が、松江たちの部屋となった。しかし、その晩拓は、親恋しさに実家に逃げ帰る。翌日、松恵が学校に行きたいと言うと、政五郎は女に学問はいらん、いいところに連れて連れて行っちょると言って、女たちや子分を引き連れて闘犬に出かける。赤岡の顔役の末長平蔵(内田良平)の横綱土佐嵐号と、漁師の兼松の前頭海神号の一番となり、兼松の海神号が勝つが、末長と情婦秋尾(夏木マリ)たちは、兼松と弟の六蔵(佐藤金造)がイカサマをやったと騒ぎ立てる。政五郎は兼松の肩をもち、一触即発となるが、末長は、荒れ狂う秋尾を連れて帰っていく。
   しかし、その晩海神号は殺された。泣きながら政五郎に訴える兼松と六蔵。政五郎は、末長のところに乗り込むと言う。歌は、政五郎の喧嘩支度を手伝いながら、これからは、お父さんの支度は松恵がやれと言う。松恵はお父さんと言えずに、歌に叩かれる。政五郎は秋尾の料亭に行くが留守である。秋尾は自分が代わりに相手になると言い、自ら帯を解くが、政五郎は相手にせず、帰り際に料亭の女中つる(佳那晃子)をさらっていく。屈辱に秋尾は怒りに燃えた。末長の子分三日月次郎(綿引洪)に、兼松は足をやられ、漁師が出来なくなった兼松は、弟の六蔵とともに、鬼龍院一家に入る。この抗争は、土佐の殿様と言われる須田宇市(丹波哲郎)が仲裁に入り決着はついた。
    鬼龍院の女たちを、政五郎の夜伽に声をかけるのは、松恵の役目だ。真面目に働く松恵を牡丹は妹のように可愛がる。尋常小学校に通い、鉛筆を買うお金がない時に、小遣いをくれたのも、初潮を迎えた松恵を労わったのも牡丹だ。ある日、政五郎が閨に行くと、牡丹が、こんな山出しと一緒に伽をさせられては、自分の沽券にかかるので暇を乞うた。その晩、笑若ではなくつるがいる。つるは、攫われてきた晩に乱暴に政五郎に処女を奪われて以来、全く声もかからず、歌に弄られたりしていた。つるは、松恵に声をかけられたと言う。松恵は、そんなことはないと答える。政五郎は、自分は嘘をついていないと言うなら相手を殴れと命ずる。頬を張り合い、次第に強くなっていく。牡丹は松恵に加勢するが、政五郎に叩き飛ばされる。松恵は、涙ながらに私が嘘をついたと政五郎に頭を下げるのだ。その晩、つるは、政五郎と二人になることができると、自分は政五郎の子を妊娠しているかもしれないと言う。自分の子供ができたと聞いて政五郎は喜ぶ。
   つるの生んだ子は、花子と名づけられ、政五郎に甘やかし放題に育てられる。ある日、小学校から松恵が戻ると、政五郎に呼ばれ、お前は花子の子守りをサボってばかりいるそうじゃないかと怒られる。自分で告げ口をしておきながら、つるは、お前なんかが子守りをすると、大事な花子が危なくてしょうがないと言う。松恵は思いつめた表情で、県立第一女学校に行かせてくれ、受験をして合格したのだと政五郎に告白する。激怒して認めないと言う政五郎と、一生のお願いだと頭を下げ続ける松恵のやりとりを、歌は静かに聞いている。  
   松江(夏目雅子)は女学校を卒業して小学校の教員になっている。ある日、政五郎は、須田の御大から。土佐電鉄でストが起き、交通の不便に皆が困っているので、なんとかしてくれと頼まれる。政五郎は、ストをしている組合の委員長近藤(役所広司)の元に出向く、そこに、高知商業高校の教師田辺恭介(山本圭)がいる。何度殴っても、主張を変えず、真の侠客ならば、弱きを助け、強きをくじくものだろう。生活が出来ずに、身売り一家心中が止まない世間をどう思うのだと主張する田辺を政五郎は大いに気に入った。
   その日、一家に戻ってきた政五郎は、松恵を呼びに行かせ、土佐労働者同盟結成準備室という看板を書けと言う。侠客は、弱い者見方なので、女の売り買いを廃業すると言いだして、女衒をしている兼松も、組の連中も大弱りだ。ラジオで浪曲森の石松を聞きながら侠客きどりの政五郎。そこに、須田の使いが来て、土佐電鉄で組合の味方をしている政五郎の出入り禁止を告げている。政五郎は正装し、須田の屋敷に走る。末長が献上した横綱の土佐犬を連れながら、犬畜生でも、育てて貰った末長への忠誠心で自分から貰った餌を食べないが、目を掛けてやった癖に、自分の頼みを聞かない政五郎は犬以下だと言う。政五郎は、これまでのご恩は感謝していますが、御前の飼い犬を今日限りやめますと言って帰っていく。
    田辺恭一を大いに気に入った政五郎は、花子の婿に迎えようと決意する。松恵を呼び、留置場に入っている田辺に差し入れを持って行けと言う。しかし、政五郎の思いとは裏腹に、田辺は、政五郎の娘とは思えない知的で、美しい松恵に惹かれていく。しばらくして出獄した田辺が、松恵を通じての差し入れなどの礼を言いに一家を訪れている。田辺を、歌、つる、花子と囲んでご機嫌な政五郎は、何でもかなえてやるので欲しいものを言えと言う。その時、松恵は小学校での勤めから戻ってきたところだ。田辺は、松恵を欲しいと言う。予想外のことに絶句した挙句、激怒する政五郎。政五郎は、自分の知らないところで、田辺と松恵は乳クリあっていたのだろと邪推する。冷静に考えれば、田辺と松恵は獄中の面会でしか会っていないのだが、俺の松恵を傷物にしやがってと罵った。松恵は飛びだそうとするが、養女に来て以来松恵を可愛がってきた良(室田日出男)らに止められる。田辺は、松恵の純潔の証に、手でも足でも切れと言い、小指を詰める。政五郎の部屋から出てきた田辺に、松恵が駆け寄ると、こんな最低の人間しかいない家から一刻も早く出ていけと言って去る田辺。花子は、自分の婿を横取りしたと松恵を罵る。
     数日後、歌が松恵を呼び、陽暉楼にいる政五郎が二人で話したいと言っていると告げて、着替えを持たせる。しかし、1人酒を飲んでいた政五郎は、酌をしろと命じて近付いた松恵に襲いかかった。お前はワシのもんじゃと言う政五郎に、抵抗し、最後には割れたガラスを首に当てるのを見て、そんなにワシが嫌いがとつぶやいて荒い息をする政五郎。花子の縁談が決まった。辻原龍平(成田三樹夫)の仲立ちで、関西の代紋、山根組の若頭の権藤哲夫(城直也)との見合いがまとまり、山根勝(梅宮辰夫)も参加しての結納の宴会が行われる。宴会の最中に歌は腹痛で倒れる。
    歌には癪の持病があった。しかし、今回はちがった。当時は感染した者の3人が1人が死ぬと言われた腸チフスだ。政五郎は、つると花子を兼松の家に移し、松恵を呼び寄せた。心配する良たちにも関わらず、松恵は学校を休み、歌の看病を続ける。終いには松恵も感染するが、今和の際に、歌は、化粧をし、松恵に髪を梳かせ、太ももに彫った龍と牡丹の刺青を愛おしそうに撫でながら、芸者だった歌が政五郎に出会い愛された頃を回想する。苦しい息の下で、松恵に、お前に厳しくして来たが、自分のような人生を送らせたくなかったんだといい、自分に尽くしてくれた松恵に感謝をしながら息絶えた。
    歌の死は政五郎にとっても深い悲しみとなった。暫くの後、夜遅く電報が届く。花子の許婚の権藤が上野で刺されたのだ。眠っている花子を政五郎が起こして、権藤の死を告げると半狂乱になって政五郎を責める花子。打たれるままの政五郎。
    昭和12年冬大阪の街で、田辺と大地の叫びと言う雑誌を売る松恵の姿がある。妊婦である松恵をいたわって早めに帰ろうと声を掛ける田辺を警察が囲む。アカではないかと言う容疑で2人して拘束された。その夜遅く2人は帰された。元教師のアカで極道の娘のお前はたちが悪いと言われたと明るく笑う松恵だが、自分の無力を自嘲する田辺。現在たとえ人数は少なくとも、応援してくれている人はいるじゃないのと松恵ははげますが、かって政五郎のあまりの怒りに、松恵との仲を疑っていたと告白した田辺に傷ついて涙を流す松恵。産まれてくる子供のために、徳島の田辺の実家に行って親の承諾を貰おうと徳島行きの船に乗る2人。しかし揺れる船の中で流産してしまう松恵。傷付いた松恵と田辺は九反田の鬼龍院一家を頼る。暖かく迎え入れる良たち一家の者たち。かって笑若や牡丹が住んでいた離れをきれいにしてくれている。久し振りに親子水入らずで話しなさいと言って、松恵を母屋に向かわせる田辺。政五郎は老いが目立つ。夫婦2人が信じ合っているのが一番だと一人頷く政五郎。田辺がお父さんのことを好きだと言ってくれたと聞いて涙を流す。その日はお祭りで、花火が打ち上がる。男は花火のように派手にバッと咲いて散る人生じゃという政五郎。
    田辺が2階の自分たちの部屋から外を見ていると、花子が人目を忍ぶように母屋を抜け出す。気になった田辺は祭りの人混みを追うと、花子が怪しい目つきの極道ものと待ち合わせるのを見つける。しかし、田辺は末長の一家のものに暗がりに連れ込まれドスを突き立てられ絶命する。花子を攫われ、田辺を殺され、兼松たちは殴り込みに向かった。政五郎と良は、田辺の病室に行くが、松恵は、あんたたちが殺したんだと叫ぶ。病室を追い出されるが、ドアの外に沈痛な表情で立ち尽くす政五郎と良たち。殴り込みに向かった兼松たちが乗ったトラックは、橋を渡り始めたところで、橋諸とも爆破される。やっとの思いで転覆したトラックから出てきた鬼龍院一家を末長組が襲う。トラックの周辺に政五郎の死体がないか探し回る末長たち。病院に回った政五郎たちわずかの人間を除いて全滅した。
   徳島の寺に喪服姿の松恵の姿がある。田辺の父源一郎(小沢栄太郎)は、極道の娘を嫁とは認めないと、仏前からも追い出そうとしている。分骨させてほしいと懇願してもけんもほろろな源一郎に、松恵の表情が変わる。強引に骨壺を開け、田辺の骨を取り始める。源一郎の叫び声に親戚の男たちが取り囲むが、松恵は、「なめたらあかんぜよ。わいは土佐九反田の侠客鬼龍院政五郎の娘じゃきに」と一喝する。後退りする男たちを後にする松恵。九反田に戻り荒廃した鬼龍院の家を眺めている松恵。そこにリヤカーに積んだ釈迦如来の坐像を運んでくる良たち。台座には、政五郎、歌、花子、松恵たちの名前がある。おやっさんが彫ったんだと良が言う。得意げな表情で田辺の家には仁義を通してきたかと松恵に尋ねる。笑顔で頷き、遺骨を入れた缶を振る。カラカラと音がする。さあ花子を迎えに行ってくるかと、軒下から大事そうに箱を取り出す政五郎。中には長ドス、背中に般若が描かれた着物など喧嘩支度が入っている。着替えを手伝う松恵。お前には苦労ばかりかけてきたなと頭を下げる政五郎に、私はお父ちゃんの子になってずっと幸せだったと言う松恵。涙を流す2人。
   たった4人。鬼龍院一家最後の殴り込みだ。兼松たちがやられた崩れかかった橋の手前で、人力車を降りる政五郎。三日月次郎たちが待ち受ける。壮絶な斬り合いの中次々に末長一家を倒していく。三日月次郎を斬り、末長の事務所に突っ込んでいく。良は秋尾にトドメを差すが、政五郎を庇って末長の銃弾に絶命する。腹に数発受けながらも、政五郎は末長を斬り、奥の部屋に?と花子を見つける。花子に「迎えに来た。お父ちゃんと一緒に帰ろう」と話し掛けるが、?を庇うように立ちはだかり政五郎を睨む花子。よろめきながら、背中を見せ去る政五郎。背中の般若の目から血が流れている。政五郎は、そのまま自首し、網走刑務所に送られ、2年後に獄死した。九反田で1人暮らす松恵の下に、政五郎宛ての花子からの手紙が届く。中には拙い花子の字で「おとうさんおねがいたすけて」と書いてある。松恵が、消印を頼りに、京都の島原遊廓に出掛けるが亡くなっていた。
  実は、スクリーンで見た記憶がなかった。やはりテレビでは大人のシーンなどカットされていたと思う。やられた。やっぱり映画はいいなあと、つくづく思う映画。仙道敦子と、勿論夏目雅子が素晴らしい。
   角川シネマ新宿で増村保造 性と愛。76年『大地の子守歌(46)』。
   遍路姿の少女が歩いている。かわいいお遍路さんと娘を呼び止め、おにぎりと鈴を渡す女性(田中絹代)。お遍路は、礼をいい再び歩き始める。
   昭和7年四国伊予の石鎚山の奥に、ウサギを下げ山道を獣のように走る娘がいる。少女の名は、おりん(原田美枝子)。粗末な家に帰り、「ばば!ウサギが穫れたで、汁を作る」と声を掛けるが、老婆(賀原夏子)は亡くなっている。老婆とたった2人で生きてきたりんは、里人も信用していない。4、5日は、祖母の死を隠していたが、ある日家に来た里人は異臭に気が付き、祖母は葬られた。そのまま、一人で山で暮らそうとしたりんだったが、佐吉(木村元)に騙され、瀬戸内海の御手洗島の富田屋という女郎屋に13歳にして、売り飛ばされる。初めて見る海に驚くりん。
   山出しのりんは、頑固で乱暴もののため周りの人間を驚かせ、富田屋の主人の茂太郎(灰地順)さだ(堀井永子)夫婦を困らせる。最初は何も働こうとしなかったりんだが、足の不自由なアサ(中山三穂子)という娘に借金を返して早くここから逃れるためには稼ぐことだと言われ、洗濯など雑用を熱心にやるようになった。御手洗島の遊郭は、店での商売以外に、女郎を乗せた「お女郎船」で沖合に停泊する船相手に商売していた。茂太郎が船を漕いでいたが、心臓に持病があり困っていたところ、りんが漕ぎ手を志願する。女は無理だとみなは言ったが、浜辺の漁師の少年正平(佐藤祐介)に漕ぎ方を習い猛練習をして漕ぎ手となる。
   ある日、りんは仕事をさぼり始めた。りんの気まぐれには慣れっこになっていた富田屋の者たちも、何が理由か分からない。りんは、山に登り泣いていると、親切な農婦が声を掛けてくる。着物が血で汚れているのを見て、自分の家に案内する。初潮を迎え女になったので、母親に知らせれば教えてくれると言われるが、自分には誰もいないというりん。やさしく、着換えを貸してくれ、面倒を見てくれる女。
   数日後、富田屋の主人たちが、嬉しそうに声を掛けてくる。あの女性が、汚した着物を届けてくれたのだ。これから座敷に出てがんがん稼げと言う主人たちと女郎たち。しかし、りんは、女にはなりたくない。女郎にもなりたくないので、お女郎船の漕ぎ手を続けると言う。しかし、売られてきたりんには、客をとることを拒否することはできない。かなり厳しい仕置きをされる。ボロボロになってりんは、帰される。りんは海岸に行き、正平に身を任せる。
   変わり者だが、若く美しいりんは、売れっ子になる。他人の倍も三倍も客を取る。それでも、お女郎船の漕ぎ手は続けている。ある日、御手洗島に佐吉がやってきた。佐吉に騙されて売られてきた女郎たちは仕返しをしようと言うが、りんは自分の客として座敷に上げるのだと言う。しかし、りんは、佐吉に馬乗りになり首を絞める。船の漕ぎ手でもあるりんの握力は強く、佐吉は死にかける。私を抱くかいというりんだが、約束があると言って、そそくさと逃げ出す佐吉。その夜、佐吉が海に落ちて死んだらしい、ヤクザに殺されたのではと言うアサに、いや、生きていくのが嫌になって自殺したんだと言うりん。
   ある日、浜辺に出たりんは、不思議な男(岡田英次)に出会う。この島から逃げたいので、船に乗せてくれと頼むりん。船で逃げるために船の漕ぎ方を覚えたのだと言う。牧師だと告白した男は、今このまま逃げて、海を渡ってもすぐに追っ手をかけられ捕まってしまう。伊予に渡ってからの逃走資金が必要なのだと言う。嘘をついているのだと言うりんに、必ず、お前を迎えに来るので、どんなことがあっても死ぬなと言う。
   ある時から、りんは身体がだるいと言って、数人の馴染しか取らなくなった。いろいろ勝手もやったので、借金が増え、年季は更に伸びてしまった。女将のサダが早く起きろと声を掛けるとまだ、真っ暗だろうと言う。身体を酷使しすぎて、失明寸前になっている。心配して声をかける女郎たちに、自分には見えていると言って殴ろうと近づくが、物が見えないため、まっすぐにも歩けない。心配したアサが医者に連れていくと片目は完全に失明し、反対側もほとんど視力がないと言う。
   ある日、りんは自分の名を呼ぶような声を聞いて、フラフラと浜辺に出る。男の声が、お前を迎えにきたと言う。私をだまして、他のどこかに売り飛ばそうとしているのかとりんは信用しない。しかし、安心しろ、伊予に逃がしてやるという声に、以前自分を迎えにきた牧師のことを思い出すりん。りんを乗せ、船を漕ぎだす男。沖に出たところで、りんは、男の声のする方向に手を合わせ、感謝していると言う。お礼に返せるものを何も持っていない自分は、女郎として自分の体でお礼をすることしかできないのだと帯を解き始めるりん。
   りんは、失明しながら四国八十八か所の巡礼を続けている。山の中で野宿をするりん。りんの脳裏に、今までの出来事が走馬灯のように駆け巡る。燃え盛る炎に取り囲まれているようなりん。しかし、地面からは、りんの名を呼ぶ声が聞こえてくる。

2009年1月27日火曜日

ばっかな、ばっかな、馬鹿なおんなの、うらああみいいぶううしいい。

   エンタメ系専門学校の講師の採用面接を受ける。面接そのものは全く問題なかったが、生計は立たない(苦笑)。他の収入源は引き続き募集中だ。奇特な方、何でもやるので、仕事下さい(笑)。
新宿長野屋で鯖塩定食にビール一本。ほろ酔い加減でジュンク堂に行くという一番最悪な選択をしてしまう(苦笑)。山のように本を買ってしまって、家に送って貰う。
   銀座シネパトスで、燃やせ!俺たちの70'sジャパニーズ・グラインドハウス魂!
   73年東映東京伊藤俊也監督『女囚さそり けもの部屋(43)』。地下鉄の車内に松島ナミ(梶芽衣子)の姿がある。突然2人の刑事が飛びかかる。ナミはナイフを出して抵抗するが、権藤(成田三樹夫)に手錠を掛けられる。しかし、閉まりかけたドアから飛び降り、ドアから出ている権藤の右腕を切断して逃走する。激痛にホームで苦しむ権藤。ナミは手錠で権藤の右腕をぶら下げたまま、人混みを駆けていく。驚いて道を空ける通行人たち。
    工場の廃屋で、男に無表情で抱かれている女。男が果てるとあんちゃんもういいでしょうと言う。工場の事故で、食欲と性欲のみになってしまった兄正夫(奥田英二?)を養うために街で体を売っている娘の名はユキ(渡辺やよい)。商売をしている墓場で、墓石で腕が繋がった手錠を切断しようとしているナミを目撃する。彼女はナミをヤサに連れて行く。翌朝ナミが眠っていると、閂が偶然開いて正夫が出てくる。正夫はナミの髪を嗅ぎ、襲いかかった。ナミは近くの包丁で身を守った。ユキが駆けつけ、もししたければ私が相手をするでしょうと言い、ナミに兄がこうなった訳を説明した。
   街中に殺人脱獄犯としてナミの指名手配のポスターが貼りまくられている。その中を権藤が歩いている。権藤のいる交差点の反対側に洋品店がある。その2階にはミシンを踏む女たち。ナミの姿がある。ナミが仕事を終えて店を出るユキが待っている。ユキはナミの部屋まで付いて来た。ユキは兄の子を妊娠していた。ユキを追おうとしたナミを鮫島興行の谷田という男(藤木孝)が絡んでくる。男の情婦安江(真山知子)が、ドアの隙間からそのやりとりを盗み見していた。
   ショ場荒らしをしていると言って鮫島興行は、ユキを締め、上がりを支払うよう命ずる。喪服姿のナミがアパートを出ようとすると、谷田が行く手を塞ぎ、お前は指名手配されている女だなと言い今晩俺と寝なければサツに売るぞと脅す。安江に電話が入り「ボヤボヤしていると男を取られるぞ」と高笑いする。店を飛び出し、雷雨の中をアパートに駆け戻る安江。ヤカンにお湯を沸かす。安江は、ナミの部屋に行き、ドアを叩いて中に熱湯を浴びせかけた。出て来たのはナミではなく、裸で待っていた谷田だ。全身大やけどを負う。何故か首からトランジスタラジオを下げており、山本リンダの「狂わせたいの」が鳴り響いている。
   谷田は死に、鮫島興行にナミは連れてこられた。鮫島会長(南郷宏治)の妻カツ(李礼仙)は、かって刑務所でナミと同室で恨みを持っている。水槽に浸け、シャブを打ち、飼っているカラスの小屋に叩き込んだ。ユキは、妊娠のことを相談しようとナミを探し続けるが見つからない。結局、ユキは一人で、産婦人科の門をくぐり中絶する。鮫島興行の店で働かされている娘しのぶ(森みのり)が父親の分からない子供を妊娠して6か月になった。嫌がるしのぶを無理矢理、闇医者に連れて行き堕胎をさせる。ナミの前で、出血多量で死んだ。しのぶが固く結んだ手の中にメスがある。メスを手に涙を流すナミ。鮫島の地下牢からナミが消えた。
  権藤が鮫島の事務所にやってくる。カツに、女囚701、サソリと呼ばれる松島ナミの恐ろしさはお前が一番知っているだろうと言う。鮫島の子分達は次々に殺されていく。ガード下の指名手配のポスターの前で、満員の映画館の中で、洗車機の車の中で、怯えるカツは、売春強要で自首し、監獄に入るみちを選ぶ。一人残った鮫島は、ナミに襲われビルの窓から落ちて死んだ。権藤の指揮のもと、ビルは蟻の這い出る隙間もないほど取り囲まれている。ビルの屋上を逃げるナミを追うサーチライト。追い詰められたナミは、マンホールから下水道に逃げ込む。下水道の中を走るナミ。しかし、出口はすべて警官隊が張っている。
   ユキが現れ、マンホールから火の着いたマッチを投げ込み呼びかける。ユキは、ナミに食糧を届け続けた。ナミが下水道に消えてから1週間が経つ。権藤は、ユキが怪しいと感づいて、警察の地下で痛めつける。抵抗するユキだったが、閉じ込めている兄が餓死するまで監禁するぞと権藤に脅されて、遂に誘き出す役目を承諾する。マンホールから火の着いたマッチを落として、ナミの名を呼ぶユキ。ユキは涙を流しているユキを見て、頷いて、走り出す。権藤は、タンクローリーから下水道にガソリンを流し込み火を点けた。火の海となる下水道を走るナミ。しまいには、炎に囲まれてしまう。泣きながら兄の正夫に抱かれているユキ。
   カツが入っている監獄に新入りがあった。放火で三か月だと言う。しかし、その女囚を見てカツは凍りつく。さそりだ。さそりの視線に常にさらされてカツは日に日にやつれていく。ある夜、子供恋しさに気が触れた女囚がいる。枕の綿を抜いて作った人形を抱いて子守唄を歌い続けている。人形を取り上げられ、狂ったように子供の名を呼びながら、看守たちの姿は、自らが殺したしのぶの姿に重なり、いよいよカツは耐えられなくなった。刑務所に権藤がやってくる。所長にさそりを極度に恐れて精神に異常をきたし独房に入れているという話を聞いて、さそりはもうこの世にはいない、カツと二人きりで話をさせてくれと言って鍵を借りる権藤。しかし、権藤が自分の房に近寄る足音は、カツにとって、自分を殺しに来たさそりの足音にしか聞こえなかった。近づいた権藤の首を針金で絞めるカツ。権藤は非常ベルをと声にならない声で、近くで床の掃除をしている一人の女囚を呼び続ける。意識が薄れていく権藤に振り返った女囚は、さそりだ。目を見開きながら権藤は絶命する。独房の中で、さそりを殺したと繰り返すカツは、既に正気ではなかった。10日後、満期となりさそりは出所。その後の行方は杳として知れず。
  伊藤俊也&梶芽衣子コンビの女囚さそり三部作の三作目。しかし、その後も長谷部安春&梶芽衣子で一本、梶芽衣子の後に、多岐川裕美や夏樹陽子がさそりに。映像美のためには、これでもかと女優を苛めまくる伊藤俊也。ただ、好きなのは、どうもこのシリーズだけなんだよなあ。
   梶芽衣子やっぱり最高だなあ。ガキの頃からツンデレ好きだったのかワシ。いやデレに進展しないので、キッツイ女の子が好きだったんだな(苦笑)。小学校3年の時の授業中に、弥生ちゃんというおかっぱ頭の女の子に泣かされていたからトラウマになっているんだな。

2009年1月26日月曜日

森田健作、松坂慶子、再評価。

  午前中は大門の歯医者。渋谷シネマヴェーラで森崎東の現在
   70年松竹大船『高校さすらい派(41)』。荒木勉(森田健作)は、六里浜特別少年院を出所する。友人のトミー(ケン・サンダース)のことで人を刺し、1年半入っていたのだ。荒木に剣道を教えてくれた武山教官(笠智衆)は、餞別に外套をくれ、あと1年だから高校は卒業しろと言って鳥取にある私立の誠光学園高校なら、校長が中学からの友人で、2流だから3年での編入も煩くないだろうと紹介状を書いてくれた。少年院の門を出ると、トミーが待っていた。自分の為に荒木が罪を犯したと感謝しているトミーは、仕事をサボって鳥取までジープで送ってくれた。
  鳥取砂丘で漁師の若者に学校の場所を尋ねていると、バイクに乗った不良学生がジープを奪った。誠光学園の不良たちだ。学校まで追い掛けて行って不良たちを叩きのめす。漁師の若者はドカベンこと井上勇介(山本紀彦)と言う同級生だった。校庭では、委員長の進藤秀男(島津元)と松原和子(武原英子)が授業料値上げ反対の自治会結成を呼び掛けているが、生徒たちの反応も薄い上、教師たちから認められないと言われ、教頭と結託しているらしい不良たちにも蹴散らかされる。誠光学園は、儲け主義で、生徒たちは黒木校長(内田朝雄)を社長、杉山教頭(佐野浅夫)を専務と陰では呼んでいる。
  授業が始まると、英語教師の犬山(三谷昇)が英語のLL機材に関する寄付の申込書を配布する。和子は強制なのかと聞く。強制ではないが、原則的に全員だという詭弁に、井上は授業料も2ヶ月未納なのに、払えないなら学校を辞めろと言われる。汚い字の退学届を出し、学校を出ようとすると、荒木が着いて来た。校門に立ち小便をする2人。荒木は泊まるところも食事代もないと言うので、井上は自分の家に連れて行く。彼の家は、飲み屋をやっていて、母親(三崎千恵子)は客と嬌声を上げている。部屋に上がると和子がいる。退学届を返して貰ってきたという和子。井上は和子のことをずっと思っているが、とても気持ちを伝えることは出来ない。しかし、荒木に焚き付けられて、夜這いに行くことになる。
   和子の父親(神田隆)は誠光学園の理事長だ。純粋で正義感の強い和子は、そのことに複雑な思いを持っている。自分が退学になってもいいかと言うと、東京のちゃんとした高校に転校しろと言う父親。部屋で和子が泣いていると、荒木が忍び込んでくる。井上を焚き付けておきながら、コインの表裏で賭け、いかさまで自分が勝ったのだ。部屋にあったギターを弾き「漕げよマイケル」を歌っていると和子の妹の元子(吉沢京子)が入って来て三人で歌う。父親が部屋に入って来て、帰るときは玄関から帰りなさいと言われるが、入った場所から帰りますと言う荒木。外を見ると、井上がまだ待っているので、1度意味深に明かりを消す。井上の怒る声を聞いて2人で笑い合う。帰って行く荒木を見つめる和子。
    翌日登校すると、和子たちが井上の退学撤回のビラを撒いている。喜ぶ井上に、本気で一緒に闘って退学になってもいいと思っている奴なんかいないと言う荒木と井上は大喧嘩になる。最後には、巻き添えになったネズミ(佐藤蛾次郎)ともども、和子にプールに叩き落とされる。
   その夜、担任の山崎(佐藤友美)の下宿に杉山教頭が来ている。教頭は、10万円の小切手を渡そうとしている。山崎は、出入り業者のリベートを、LL教材の寄付に対する口止め料として渡そうとするのかと言う。私立の学校経営にとってリベートも、正当な商業行為だと言う教頭。小切手の受け取りを拒否し、風呂に入ると言って脱衣場で服を脱ぎ始める山崎。そこに井上が酒を持ってやってくる。井上は山崎と酒を飲みながら話がしたかったようだが、教頭と出歯亀をしているのかと争いになり、二人とも池に嵌ってしまう。
   井上の退学と寄付金の撤回運動は、進藤と和子が訴えても反応は鈍かったが、荒木が行動しようと言って、校庭で教材を燃やしたことで、一気に盛り上がった。学校の講堂にバリケードを築き、受験生ブルースを歌いながら、立て籠もる。井上だけでなく荒木の退学処分が張り出された。そこにバイク不良学生と彼らの仲間のヤクザがスト破りにやってくる。彼らの暴力に荒木と井上が闘っていると、警官が現れる。杉山教頭が井上を婦女暴行で告訴したと言う。連行される2人。
  進藤と和子は、校長室に行き、処分の撤回と寄付金の強要などを止めるようにしろ。さもなくば、首謀者は自分たちなのだから、自分たちにも同じ処分にしろと要求した。しかし、処分は変えないと言う教頭。委員長は唯一の東大合格の可能性大な生徒で、和子は理事長の娘だからだ。校長は、進藤に君は優秀だから、内申書が少しくらい悪くても問題がないかもしれないが、他の生徒は学校の不名誉で、進学や就職に不利になるのだと脅すのだ。委員長は敗北感に打ちのめされて、リーダーから降りると言い出す。
   荒木と井上は、警察から帰されると、再び学校に戻ると、放送室を占拠し、教頭が井上を告訴したのは、山崎に対する収賄の証拠を井上に見られたせいだと放送する。和子は山崎を放送室に連れて行き、証言をしてくれと頼むが、結局山崎は拒んだ。暴力教師の万年伍長(山本麟一)が、ガラスを割って放送室に乱入してくる。荒木、井上、和子の三人は学校から逃走し、砂丘にある廃船に立てこもることにする。井上は、和子の家に夜這いした荒木が和子と関係したと思い込んでいた。そのことで言い争っている二人に、和子は、私をモノにしたとか言うが、私はモノではなく、人間で、二人を愛していると言う。三人は、珍妙な結婚の誓いをする。しかし、理事長は、警察署長に、二人が和子を誘拐したのだと訴え出たので、廃船は機動隊によって囲まれる。放水と催涙弾の攻撃を受け、井上がまず逮捕される。荒木と和子は抵抗するが、廃船は混乱の中、ランプが倒れて燃え始めた。それでも、荒木と和子を捕らえようとする機動隊との揉み合いの中で、和子は頭を強打する。父親に向かって、お父さんには分からないだろうが、今までの人生で一番充実している実感があると言ってこと切れた。号泣する荒木と井上。
  学校の講堂で、和子の学校葬が行われている。理事長は、娘の死は、この学校を愛してのことだが、私もこの学校を愛していると言う。嘘だと言って、井上が講堂を出ていく。私が、この学校を愛していることを信じられないものは、この講堂から出て行けと言う理事長。和子の妹、元子が立ち上がり、講堂を出ていく。一人、また一人と講堂を後にする生徒たち。半分以上の生徒たちが、講堂を後にした。焼けてしまった廃船を見つめている荒木。
   テレビドラマ「おれは男だ」は、91年の放送だったんだな。とにかく剣道のさわやか一筋の高校生役で、一躍お茶の間の人気者になる前の森田健作が、こんな苦み走った不良少年をやっていたなんて。生涯青春バカだと思っていた不明を恥じる。少し森田健作を見直したと言うか・・・(笑)70年安保の時代の高校の空気を取り入れながら、バンカラ青春ものという不思議な手触りの映画だ。自分には、お母さん役のイメージしかない武原英子がデビューで、ちょっと奥行きのある優等生で、女子学級委員萌えする。
   73年松竹大船『藍より青く(42)』。太平洋戦争も敗色濃くなった昭和19年1月、天草の漁村遠見ヶ浦、冬の海に浜島に向けて泳ぎだす6人の若者があった。江田島の海軍兵学校から一時帰宅した?が、村一番の娘、郵便局で働く18歳の田宮真紀(松坂慶子)を嫁にしようと思っていると聞いた若衆宿の仲間たちが、彼女と相思相愛の網本の長男の村上周一(大和田伸也)のために、酔ってからんだことから遠泳競争することになったのだ。漁労長の鯵河(田中邦衛)と真紀たちは、船を出し、若者たちを引き上げたが、周一は最後まで泳いでいた。
   真紀の父親の国民学校の校長田宮行義(三國連太郎)は、厳格で娘が村の男たちと話すことも許さない。しかし、若い二人は、周一は朝漁から帰って一休みをし、真紀は郵便局の昼休みを利用して、海を見下ろす丘の上で、語り合うのだった。周一を含め村の若者は、徴兵検査を受け、結核の明を除いて甲種合格になった。純粋な周一は、半年後に入隊することが決まっているのに真紀と結婚することは不誠実だと頑なに思っていた。しかし、真紀のまっすぐな気持ちに徐々に、応えたいと思い始める。
  周一の両親、周造(佐野浅夫)とキク(赤木春江)は、漁労長の鯵河を仲立ちに立て行義に、真紀を周一の嫁に欲しいと申し入れる。しかし、行義はけんもほろろで鯵河を追い返す。自分に断りもなしに、行動したことを周一は怒るが、周造は自分もキクの嫁取りは周囲の反対を押し切ったのだと言い、男は時に、自分の意思を貫くことも必要だと諭した。周一は、真紀を誘拐して若衆宿に立て籠ると決意し、仲間たちも手伝うことになったが、真紀は戦死の公報を配達する途中で、周一たちは意気消沈して計画は流れる。葬式が行われている。焼香した行義は、長男を亡くしたお悔やみを両親に告げる。しかし父親(浜村純)は、出征する時に校長が「国のため、己のため、自分を捨てることが男子の本懐だ。立派に死んでこい」と送辞した通りのことをしたので、悲しくはないと言う。祖母は、これは騙しだ。大和魂に騙されて孫は討ち死にしたのだと呟く。周囲の冷たい視線に、行義は言葉を失い、泥酔して帰宅した。
  翌日、キクが行義のもとを訪れる。頭を下げるキクに、結婚を認めるが、田宮家は娘二人なので長女の真紀と結婚するには入り婿しろと条件をつける。周一は、弟の幸治(尾藤イサオ)が家を継げばいいではないかと言うが、周造とキクは網元の長男が他家に婿入りすることは絶対認められないと言うのだった。
  翌朝、真紀は行義を起こし、自分は周一の子を妊娠していると言って家出をした。妹の嘉恵(千景みつる)は、行義に姉の居場所は知っているが、結婚を認めなければ教えないと言う。行義は、娘の妊娠に取り乱すが、住職(殿山泰司)が真紀に入れ知恵したことを知り、遂には全てを許すと言う。若衆宿に駆け込んだ嘉恵に行義の承諾を伝えられた周一は真紀を迎えに行く。真紀は隣町の旅館を手伝っていた。その町には、海軍がいる。行進している兵士たち。船員たちが、輸送船に乗って外海に出た途端沈没させられ皆戦死だと言っている。憲兵も彼らの話を止めさせることもできなくなったいる。思いつめた表情の周一。
  田宮家で結納が執り行われた。酔った行義は、周一に絶対真紀を不幸にしないと誓えと迫る。周一は、数ヶ月後の出征を考えると誓うことはできない。何も言わない周一に行義も周造も激怒する。周一は結納の席から逃走した。その夜、海は大きく荒れた。沖の刺し網が心配だと周一は、大時化の中伝間船を一人で漕ぎだした。話を聞いて、船を出そうとする仲間たちに、周造は、この嵐の中、船を出すことは死を意味することだ、そんなことも分からないのかと一喝する。夜村上家を訪ねる行義。周造は、漕ぎ手たちに周囲の港を見に行ってもらっていると言う。彼らが帰ってくるが何の話もない。もう一度出ようとする彼らに、もういいので寝てくれと言う。キクは、真紀にこんなことで死ぬような息子には育ててはいないと言う。行義は、真紀に、お前はもう村上家の嫁のようなものだからここで周一を待てと言って、嵐の中自宅に帰っていった。
   村上家は一睡もせずに朝を迎える。嵐は止んでいる。真紀が周一の船の音がする、帰ってきたと言って港に走り出す。周造は、周一は伝間船を漕いでいったのだからエンジンの音では違うと冷静に言うが、村のみなが港に走り出した。漁労長の鯵河が、若い衆が船を出すと聞かなかったんだと、網元の周造に頭を下げた。周一は、刺し網を担いで下りてきた。真紀は、周一にどんなことがあっても、私は不幸にはならないと言う。強くうなずく周一。父親に祝言の日は決まったなと言う。キクは、こんな時節でも、天草中の芸者を上げて、盛大に祝言を挙げると言う。若い衆は歓声を上げた。天草の海は静けさを取り戻している。
   NHK朝の連続テレビ小説の映画化だ。キャスティングは、大和田伸也がドラマと一緒なものの、真紀を、真木洋子から松坂慶子に変わっている。それだけが原因ではないと思うが、興行的には失敗だったという話は、周一と真紀の結婚が決まるまでのエンディングを見れば、続編を作るつもりだったろうと推察できる。しかし、いい出来だと思う。森崎東が人情譚だけでないことを証明した映画だ。しかし、松坂慶子のイメージが役者として、71年頃の大映時代の「夜の診察室」のナース姿や岡崎友紀主演ドラマの「奥さまは18歳」のヒール役から、79年のドラマ主題歌「愛の水中花」でのバニーガール姿で歌っているところまで飛ぶので、こんな可憐で可愛い女優だったという認識はなかった。不明を恥じるというか、もったいないことをしたという感じ(苦笑)。Wikiのプロフィールからも落ちているんだなあ。本当にもったいない。もったいない。


2009年1月25日日曜日

狭いながらも楽しい我が家。

  昼過ぎまで洗濯をしながら、読書と惰眠。気がつくと正午を大分に回っていて、昼食をどうしようか迷う。何処からか、以前韓国土産に頂戴した、ハングルしか書いていないチゲのレトルトみたいなものが出てきたので、ご飯と豆腐を入れ、煮込みつつ、熱したごま油を入れ、クッパのようなものを作って見る。美味い。辛い。ビール飲みたくなってしまう(苦笑)。
  午後は、ずっとサボっていた企画書をパワーポイントにしようと思っていたら、どうも調子が悪い。半年以上も触っていないと全て忘れている。困ったなあ。
  夕方、近所で買い物をして、博華で餃子とビール。いつもお世話になっている魚やの魚庄のおじさんに会う。西荻から離れられない理由のうちの二つは、博華と魚庄と言っても過言ではない。しかし、大分閉めてしまった店も多く油断はできない。