2009年10月17日土曜日

あと10本で、1000本だ。

   午前中は渋谷で、小さなバイト。今週の映画代が稼げて何気に喜ばしい。青山で、フリーランス見本市を覗いた後、

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、CINEMA★忍法帖
   64年東映京都倉田準二監督『十兵衛暗殺剣(590)』
   寛永十九年、近江国琵琶湖、竹生島。湖族と呼ばれる、水中の特別な戦闘訓練を受け、根城の琵琶湖を縦横無尽に戦う水の忍者たち、堅田党は、徳川の代になり、近在の農民が運ぶ船や漁民たちを襲う盗賊に なり果てていた。
   彦根藩により捕らえられた湖族の頭、六右衛門を含む五人は、生きたまま艀の上に吊され、白鷺の群れに肉を啄まれる残酷な刑に処されていた。助けようと近付いた者も容赦なく発砲され亡くなった。その光景を、竹生島の断崖からじっと見つめるのは、六右衛門の娘、美鶴(宗方奈美)と配下の朝妻の源(高杉玄)と近江之介(雲井三郎)。
   新陰流は、始祖 上泉伊勢守から、二人の高弟、柳生石舟斎と松田織部正に、引き継がれたが、織部正は豊臣の禄を食んだために、越前の山奥に逃れ隠遁生活を送った。織部の遺志を継いだ幕屋大休(大友柳太郎)は、新陰流の正統が、織部正にあることを世に明らかにするために、部下15人とともに、竹生島神社にあった印可状と守り刀を盗み出し、江戸に下った。
   江戸馬喰町に、「新陰流正統幕屋道場」の看板を立てる。これは、勿論、将軍家剣術指南役の柳生新陰流の一門にとって、見過ごすことは出来ないものだった。柳生の道場では蜘蛛の子をつついたような騒ぎになる。そこに、師範代の庄田喜左衛門(内田朝雄)がやってきて、門弟たちを鎮め、大殿のお言葉があると言って、但馬守(香川良介)を呼びこんだ。但馬守は、「幕屋の剣に怯えるほど、自分たちの剣に自信がないのか」と一喝したが、騒ぎを鎮めることはできなかった。但馬守も、小太刀を使えば、石舟斎も敵わなかったという織部正の一番の弟子の幕屋の腕を測りかねていた。
   その夜、幕屋道場では、幕屋と田丸宗十郎(神戸瓢介)が話していた。「幕屋の気持ちは分かっている。柳生1万5千5百石・・・、門弟3千人、この徳川家での柳生の地位を奪おうと思っているんだろう。」「明日は早いので、早く眠ることにしよう。」
   翌朝、家光(林真一郎)が野駆けをしている。勿論、供の者は、柳生十兵衛三巌(近衛十四郎)、松平伊豆守(北竜二)を初めとして多くを従えている。突然、前に幕屋大休が現れ、馬の足を止めさせた。自分は新陰流の正統な後継者であり、十兵衛との果し合いをさせてくれというものだったが、乱心者とされ、せっかくの印可状と守り刀を取りだしながら幕屋は、その場に一人残された。幕屋を残し走る家光は、「天下第一の剣が二派あることは許されない。それは、徳川の名誉の問題だ。」と言った。実は、大休の小太刀が十兵衛の着物を切っていたことは、二人にしか分からない。
   一人残された幕屋は、部下15人を連れ、柳生新陰流の道場を訪ね、看板を真っ二つに斬った。庄田が必至に止めるが、門弟たちの気はすまない。十兵衛が喜左衛門に今晩は不安だと言ったとおり、その夜、柳生新陰流の門弟たち20人は、幕屋道場を襲撃する計画を立てていた。それは、幕屋たちの計画通りだった。幕屋は、一人吉原に向かい、20人の柳生門弟を二つに分断する。吉原近くで待ち伏せした9人は、大休を取り囲むが、全く掠り傷一つ負わせることも出来ずに斬られる。城所早苗(河原崎長一郎)は、刀を抜いた際に手を切った上、大休の剣のあまりの凄さに、影に隠れる始末、一人生き残ったが、柳生新陰流には、臆病者がいると誹られ、道場に泥を塗ったことになった。また、幕屋道場を襲った者たちも、全く歯が立たなかった。真剣を抜いたこともない、道場剣法は一方的な敗北をする。
   公儀の手で幕屋一派を捕まえると言う伊豆守に、自らの手で汚名を雪ぐと言う十兵衛。道場から使いが来て、幕屋道場に向かった十兵衛の前には、見るも無残な殺され方をした10人の門弟と、「印可状とともに、竹生島で待つ」という大休からの置き手紙だった。喜左衛門に、選りすぐりの門弟10名を一ときの間に集めよと告げ、直ぐに、琵琶湖へと向かった。途中、城所が現れ、汚名を雪ぐために、参加させてくれと土下座をするが、十兵衛、喜左衛門ら、誰も顧みなかった。
   竹生島に戻った大休らは、彦根藩によって追い詰められる湖族の姿に、宋十郎は大休が将軍家剣術指南役につくことになり、その阻止のため柳生が竹生島に乗り込んでくると偽り、柳生待ち伏せの手勢として、湖族と手を結んだ。


   水中を泳ぎまくり、十兵衛たちに襲いかかる湖族たちの戦闘シーンや、幕屋一門と十兵衛の水際の死闘は、流石に息を呑む。近衛十四郎、大友柳太郎の対決は時代劇の醍醐味だ。

    去年の春に会社を辞めてから映画館で見た映画が990本になった。あと10本、だからどうだと言われればそれだけのことだ(苦笑)。

   その後、地元西荻窪で、高校時代の後輩と飲む。

2009年10月16日金曜日

神楽坂で焼き鳥。

  午前中は学校の準備やら、各所にメール。
  昼から2コマ講義。
  その後、飯田橋の出版社の映像部門の役員をしている友人と会い、出版系の企画提案とは名ばかりで、神楽坂の激渋焼き鳥屋に行き、酒奢って貰う、恥ずかしい私(苦笑)

2009年10月15日木曜日

こりゃ酷い。

    午前中赤坂のメンタルクリニック。南北線で溜池山王から旗の台。もろもろ打合せ。

    シネマヴェーラ渋谷で、追悼、長谷部安春
    69年日活長谷部安春監督『あらくれ(588)』
    スカンピンの流れ者鬼頭善吉・通称鬼善(小林旭)は横浜東京の切符の乗り越しで、弟分の結城太郎を当てにして北陸小松まで、やって来た。電報を打ったのに、一向に迎えに来ない。警察に引き渡されそうになって、鬼善は線路に飛び降りて逃げ出す。逃げ込んだ先は、コマツ製作所のブルドーザー置き場。何台ものブルドーザーに取り囲まれて御用となった。小松警察署の留置場に入れられた鬼善は、太郎(藤竜也)に会う。お前が大きな仕事に着いたと言うからやって来たが、捕まっているからにはヤバい仕事だな、一口噛ませろと鬼善が言う。劇場の支配人だと言う太郎は刑法175条公然猥褻罪で捕まったのだと答える。何のことはない、太郎は粟津温泉のストリップ小屋の支配人で、特出しで逮捕されたのだ。
    太郎は妹で温泉の女中をしている美樹(和泉雅子)が身元引受人になって釈放される。太郎はミキから一万円を借り、鬼善の汽車賃を払った。警察署を出た三人の前に、太郎の情婦でストリッパーのローザ夏川(藤江リカ)がタクシーで現れる。ローザから借りた二万円を鬼善に渡し、タクシーに乗せられいなくなる太郎。
    その後、粟津温泉の宿で芸者総揚げで大騒ぎをする鬼善。偶然美樹が働く旅館だった。本当に一文無しなの?と尋ねる美樹に頷いて、「わざわざ北陸まで来た兄貴分に酒の一杯も呑ませない太郎に払いを押し付けて逃げようと思っている」と明かす鬼善。「お兄ちゃんがお金を持っている訳がないので、結局ツケはわたしに回ってくる。自分が飲み代を払うから帰って下さい」と美樹が頼むが、その時は既に金を持った上客だと勘違いした芸者まり子(町田祥子)が、小松にいいバーがあると言って外出する約束をしたところだった。まり子は、最近粟津温泉に進出してきた大阪のヤクザさくら会の張本(玉川伊佐男)の女で、小松のバーは張本の持ち物だと言う。美樹がその話をしても、笑う鬼善。

    70年日活長谷部安春監督『野良猫ロック マシンアニマル(589)』
   横浜港近くの人気のない貨物列車の集積場。「こいつらかい?あんたをコマそうとした奴は?」スケ番というよりズベ公が、白人の船員らしい二人の男を吊し上げる。ズベ公たちは、へらへら笑う男たちのバイクの後ろに乗って走り去る。バイクの男女が、岩国ナンバーのフォードのボロボロのワゴンがオーバーヒートして停まっているのを取り囲む。ワゴンの前で途方に暮れていたノボ(藤竜也)とサブ(岡崎二朗)に絡む。グループのリーダーらしい男、佐倉(宍戸鍈治→郷鍈治)が、「気をつけろ。街に出てきたらな。」と繰り返す。
   ゴーゴーバー、アストロ。ズベ公グループは、店のバーテン清水(氷室政司?)からマリファナを買ってキメている。リーダーのマヤ(梶芽衣子)にジュン(高野沙理)レミ(大橋由香)エマ(黒沢のり子)サリイ(市川魔胡)ユカ(牧まさみ)。
   ノボとサブは、ミキ(青山ミチ)がギターの弾き語りをしているギリシャバーで、マスターに岩国で紹介してもらったという手紙を出す。スウェーデンに密出国できる貨物船を紹介して欲しいという。今入っている船はないし、一人100万掛かると言われる。「二人かい?」「いや3人だ。」マスターにLSDを買ってくれないかと尋ねると、ここはヤクは扱わないと言われる。その話を聞いていたミキは、「アストロというゴーゴーバーのにたむろしているマヤに相談してみな。あたしの昔の仲間さ。」と言う。
   ノボとサブがアストロに現れる。昼間男たちと一緒に絡んできたズベ公たちをみつけ、マヤは?と尋ねる。「ギリシャバーで聞いたんだが、LSDを買いたいんだ。」とノボ。「ミキだね。あのバーテンに聞いてみな。」とマヤ。


  とりあえず家に帰って。テレビを付けると「不毛地帯」をやっていた。途中までTBSのドラマだと思い込みながら観ていたが、フジだった。この局で一番予算を掛けているのが、これだと思うと哀しい。キャスティングで全部予算使い果しているのか、ポストプロダクションに時間か金が足りなかったのか・・・。



   
   

2009年10月14日水曜日

フリーランス見本市本日より開催。

   午前中は、学校の準備をしながら、「タイガー・アンド・ドラゴン」再放送。午前中ゆっくり出る日は、「ドラゴン桜」から、このTBS再放送枠を見るようになってしまった。
    やっぱり、テレビ向けの映像とスクリーン向けの映像は違うと言う当たり前の感想を持つ。1950年代までの映画の監督やカメラマンは、当然近未来には各家庭にある大きなテレビジョンで自分の作った映画が見られるようになると認識していても、当時作りながらのリアリティなかったろうな。映画の作り方も大幅に変わったと言うことだ。どうも、最近の邦画がテレビモニターで観ることにちょうどいい感じがするのは、地上波とレンタルビデオ屋がほぼ全国画一的に普及している日本ならではのことだろう。
    別にだから日本が駄目だと言うことではなく、国内向けのものや海外輸出でもビデオスルーのものと、海外の映画祭狙いのものは、違う作り方が必要だろう。更にPDAやモバイルで動画を見ることも必須だろう。最近携帯で、ゲームをするサラリーマンやOLが電車の中で当たり前になって来たのを見て、痛感する。3分の暇つぶしのためのショートムービー。音声なしでも成立するとか…。
ウォークマンやラジカセで聴く環境を意識したサウンドデザインがされてJPOPが出来たようにポジティブに考えることも出来る。まあ、袋小路にどんどん入って行くとも言えるのだが…。

   講義用に本を家で探すと見つからない。では紀伊国屋のサザンテラス店にも無いと言われ、ルミネのブック1stまで戻る。寒いのに汗をかく(苦笑)
   午後3コマの日、最初の2年は、新しく試みを、しばらくこのパターンでやってみるか…。一年のイベント企画は、ちょっと巻きを入れた方がいいかもしれない。編集専攻の2年は課外授業として、青山で今日からのフリーランス見本市に。
    ハイブリッドコピーライターT氏と、出版の話で盛り上がり、各作品を見る時間無くなる。その間、教え子Sがちゃんと取材活動が出来たのかどうか…。

    その後、今日の課外授業のメインイベントたる外苑前の粥屋喜々での、エディター&マネジャーとして出版&音楽業界の、酸いも甘いもを味わいつくしながら、まだギリギリ20代と言うT氏との学生直接対決飲み会。最初に会って暫くの間、T氏は、若造を装っているが、あまりな落ち着き振りに、40歳前後かと思い込んでいた。恥ずかしい。 いつものように、一人で酔っ払って、20代同士うまくコミュニケーションが取れたのか皆目見当がつかない。酔っ払って雨の中、信濃町まで独りで歩くのは厳しい。タクシーの赤い空車の灯りや、20代の頃は全く平気だったホープ軒の黄色い看板など誘惑が多い。ただ駅まで歩いただけでも、誘惑に打ち勝った誇らしげな気持ちになって帰宅。

2009年10月13日火曜日

美沙子と美沙子。

   先週からの咳が抜けず、夕方の会食延期してもらう。
神谷町の元会社で、一件打合せ。概ね意見は一致。早く具体的に動き出したいなあ。その後、ウロウロしていると、最近このブログで、博華で餃子とビールが無くて寂しいと指摘される。確かに週イチか十日イチと言う感じかもしれない。毎日でも行きたいのだが…。貧乏>暇なしと言う感じだろうか(苦笑)。

    池袋新文芸坐で、映画に輝く“天下の美女”山本富士子、最終日。
    62年東京映画豊田四郎監督『如何なる星の下に(586)』
   (山本NA)このへんも汚い水になった。20年前には白魚も棲んでいた。この先どうなることやら…。
  「みさちゃん、あんた貧乏籤引いたわね。私が但馬を紹介した手前、このままじゃ顔向け出来ないわ。その後連絡ある」と踊りの師匠花柳三登次(乙羽信子)。「四年経つけど一度も・・・。神戸の方で、女と一緒に二階借りしているのを見かけたと言う話を聞いたけど…。」美沙子(山本富士子)は、洋服仕立て職人の但馬(森繁久弥)と結婚したが、父親で元曲芸師の惣太郎(加東大介)と折り合いが悪く、四年前に女を作って関西に逃げられていた。「あっ、舟がでるわ。あー出ちゃった。で、みさちゃんは倉橋さんという人に会ってみて欲しいというけど、うじうじしていないで、好きなら早く決めちゃわないと・・・。」
   美沙子は、倉橋(池部良)の勤める広告会社エトワール社の事務所を覗いて見る。倉橋は留守だった。その頃、倉橋は、美沙子の下の妹雅子(大空真弓)がダンサーとして踊っているキャバレーの楽屋にいた。踊り子のサアちゃん(北あけみ)に「今日も?雅ちゃん、今踊っているわよ」と声を掛けられる。雅子がステージを降りてくる。倉橋は持っていた大きな箱をプレゼントだと渡す。「倉ちゃん!ありがとう!!!」「倉ちゃんじゃない!先生だよ」と雅子を窘めてから、歌手の大屋五郎(植木等)は「倉ちゃんは、モノ好きだなあ。小児科かい?」と言われていた。「そんなもんじゃないよ、小柳雅子の一ファンなんだ。」「まあ、どっちでもいいけど、愛子が一度会いたがっているの。会ってさっぱりしたがっていたよ。」雅子は、倉橋から貰った衣装を着てみる。ダンサー仲間から羨ましがられている雅子を見て、目を細める倉橋。倉橋は、まだ雅子が美沙子の妹だとは知らない。
   カフェ・ラパン、マダムの鮎子(淡路恵子)と五郎が話している。「あの人が、そんな小児科の趣味があったとは知らなかったわ。」「それが離婚の原因かい?」「いえ、あの人の生活力の問題よ。あの人は小説を書いても、ものにならなかった。結局、私の生活力が、あの人の生活力が上回ったのよ。」そこに倉橋がやってくる。「ということで、私たち一緒になるから。あんたのところのPR雑誌で、五郎ちゃん宣伝してくんない?売れるわよ!!」   
   美沙子の父、惣太郎は、戦傷で芸を披露出来なくなって、自堕落な生活を送っていた。妻のおまき(三益愛子)は、築地の裏町の一角の祖父以来住むこの家をおでんやにして、夫の名、惣太郎を店名にしていた。しかし、しっかりものの美沙子がこの店の切り盛りをしていた。美沙子が店に帰ると、次女の玲子(池内淳子)におまきが生活費を渡しているところだった。玲子はクラブ歌手だったが、仕事がなくなっていた。陰気な玲子と一緒にいては玄が悪いと言って、テレビの仕事が来るようになっていた夫の五郎は、家を出ていた。いつかあの人は私のところに帰ってくると言う玲子に、何でそう思うのかと尋ねる美沙子は、これだけ尽くしたんだものとの答えに、呆れてあんた馬鹿よ!!と言う。
  惣一郎は、売れない役者で、ドサ廻りでの貫一役ということでドサ貫と呼ばれる男(西村晃)と炬燵で酒を飲んでいる。「芝浦で大きな勝負がある。行きてえなあ。こんなおでんやじゃうだつがあがらねえや。」「勝負って麻雀ですか。師匠」玲子は、芸能プロダクションの松原プロの社長の松原(山茶花究)のところに来ている。「玲ちゃん。こういうプロダクションも短いらしいよ。東京にもうちみたいなところが300もあるが、お上は認可制にして、8%の紹介料でやって行けというんだから、1ステージ800円の仕事の8%で、どうやってやって行くんだ。」「私の仕事ないかしら?・・・。」「大屋五郎も、ウチのプロで扱っていたのに、売れた途端に、玲ちゃんを泣かせやがって・・・。」
  カウンターでドサ貫が飲んでいる。そこに倉橋から電話が掛かる。明らかに華やぐ美沙子の声を聞いて切なげな表情のドサ貫。倉橋は、自分のやっているPR誌のモデルになってほしいと言うのだ。翌日の撮影は、美沙子にとって本当に楽しいものだった。モデルになったということよりも、倉橋と半日一緒にいられるということが。渡し船に二人で乗っていると、橋の上から冷やかす口笛が聞こえる。「こうしていると、私たちどう思われるのかしら・・。」「そりゃあ、恋人同士だろ。」「いやだわ・・・」美沙子はデレデレだ。
  惣一郎が店の金を全て持ち出していた。おたかがやけ酒を飲もうとするのを、ドサ貫は「お酒を飲んじゃ駄目だ。酒乱だから。」と言ってコップ酒を取り上げ、自分で仕方なしに飲んでいると、ルンルンな美沙子が帰ってくる。「いらっしゃい、ドサ貫さん。ずいぶん早くからご機嫌ね。」あんたこんな速達が来ていたよとおふさ。美沙子の元夫、但馬からだ。東京に上京するので、会いたいという内容だ。美沙子の表情が曇る。


   はっきり言って、90分位迄は苦痛だった。美しく一人で家族を支えるヒロインに押し寄せる不幸。馬鹿と言うより愚かな女がどんどん堕ちていく不幸のスパイラル。オメー自業自得だろと、心の中で毒づいていると、そこまでの不幸は序の口で、最後の30分で、不幸の二段底が抜ける。加東大介は卒中で倒れ半身不随で寝たきりになり、三益愛子はやけくそになって酒乱で止められていた酒を呷って大暴れ、そんな真っ最中に、松原プロは潰れて解散で馬鹿騒ぎ、救いの池部良が帰ろうとするのを美沙子は引き留め、ようやくシッポリするかと思うと、美沙子を想い続けたドサ寛(ドサ廻りの貫一役)としか呼ばれない西村晃が吐血してもう駄目だとなって一同意気消沈、何の救いも無しに終わってしまう。これは本当にやられた。清く貧しく美しい話でも、忍耐に忍耐を重ねた庶民に、誰かが印籠を出して救ってくれる話でもなかった。
  こんな乱暴なまとめ方ではなく、全編書き起こして、ヒロインの人生をもう一度味わいたい。傑作だ!!!

63年東京映画豊田四郎監督『憂愁平野(587)』。
   青山の屋敷で、美しい主婦納所亜紀(山本富士子)が、趣味の刺繍をしながら廊下を歩いている。ふと戸を開けると、真っ赤な色の葉(?)が一面に色付いている。その時突然、亜紀は心に不安を覚える。軽井沢で仲間とゴルフをしている筈の夫、納所賢行【かたゆき】(森繁久弥)が、自分の知らない女性と一緒にいるのではないかと言う不安を。
    亜紀は自家用車を運転して軽井沢に向かう。翌朝、フロントに声を掛け、いつもの部屋に賢行が泊まっていることを確認して入る。灰皿の吸い殻を調べ、カーテンを開ける。賢行は、ダブルのベッドに独りで眠っていた。もう8時半よと声を掛ける。随分早く来たなと賢行、実は夜の内に着いたけれど、他の宿に泊まっていたのと亜紀。あなたは今日何時に帰るのと尋ねる亜紀に、5時か6時には帰るつもりだと言う。安心した亜紀は、早々に帰ることにする。途中、事故を起こした車が停まっている。運転していた乙枝虎夫(長門裕之)が、下の派出所に声を掛けてくれないかと頼む。亜紀がお一人?と尋ねると、連れがいるのですが、運転が下手だと言って怒ってしまってと言う。そこに江能信子(大空真弓)が戻って来て、「おば様、私を高崎まで乗せて行って」と頼む。「いいの?」と亜紀が言うと「お願いします。言い出したら聞かないもんで…」と乙枝。
   その日、納所がラウンドしていると、激しい夕立だ。雷が苦手な納所は、キャディの娘(樫山文枝)と木の下に逃げ込む(こりゃ危ない!!)。娘が「お客さん、本当に雷が苦手なんですね。先日女性だけのパーティーが名古屋からいらした時も夕立で…。そういえば、あの方達が今晩いらして、明日ラウンドされると伺いました」「えっ、あの名古屋のご婦人たちが…」
   翌朝、朝霧の中、納所が白樺林を歩いていると、時津美沙子(新珠三千代)がいる。「あなたに会えると思って、軽井沢で会えた。」と不思議ちゃんぽい。こっちの美沙子は、納所の親友の妹で、恵那の没落した旧家の娘だった。納所は、美沙子と夕食の約束をするが、すっぽかされる。

節子(浪花千栄子)巽魚次郎(仲代達矢)大黒さん(乙羽信子)女中朋子(久里千春)ホテルボーイ(若宮忠三郎)会社の女事務員(桜井浩子)木次茂夫(中谷一郎)

ある人に、ノンアルコールビールで焼酎を割って飲むと悪くないと聞いて、試してみたらこれは“んまいっ!!”ホッピーよりも好きかもしれない。

2009年10月12日月曜日

トリオ・ザ・巨匠・・・五所 VS 衣笠 + 市川

     神保町シアターで、川本三郎編 鉄道映画紀行 思い出は列車に乗って
     57年歌舞伎座五所平之助監督『挽歌(583)』
     さいはての國、北海道…。兵藤玲子(久我美子)歩いて来る。
     …(NA)もう春だと言うのに、冷たい風が吹く。私の左肘が痛む。私は幼い時にひどい関節炎を患って、左手が不自由になった。左手と一緒に私は心もかたわになってしまったのかもしれない…。兵藤家の表札。窓の外を見ながら煙草をくゆらす玲子。…私はさっき丘の上で出会った男のことを思い出していた…。
    男(森雅之)が、娘と犬を連れて散歩している。すれ違った玲子が犬を撫でようとすると咬み付いてしまう。「ネリは、人を咬むような犬じゃないんですが…」「私も犬は好きですが、咬まれたのは初めてです。」男は誤りながら、ハンカチで傷跡を結わえる。男の名前は桂木節雄、娘は久美子と言った。
   桂木を思い出していると婆や(浦辺粂子)が、あらあらそんな汚い布で結わえておくとよくありませんと言って包帯を巻く。「お腹がすいちゃった何かない?」「戸棚に牡丹餅があります」「お母さんのお墓参りに行ったの?」「このうちで、お墓参りに行く人は誰もいないので、私がお参りして、ご先祖様に、お坊ちゃまの大学合格と、お嬢さまの左手がよくなるようにとお祈りして参りました」「婆やの口癖ね」

左手が不自由なことで甘やかされて育った屈折した美少女役を久我美子が好演。彼女の行動に振り回され困った顔をしながら誠実な大人の男であろうとする森雅之も渋くかっこいい。若い娘に持てることも含めてああいう中年でありたいが、全く正反対な自分、哀しいなあ自分。


    池袋新文芸坐で、映画に輝く“天下の美女”山本富士子
    61年大映東京市川崑監督『黒い十人の女(584)』
    夜、坂道を風の妻の双葉が登っている。停められた車の運転席に女優の石ノ下市子(岸恵子)。しばらくすると、双葉の後ろを、風が勤めるテレビ局VTVの、CMガールの四村塩(中村玉緒)演出部の後藤五夜子(岸田今日子)風邪を引きやすいので受付から事務に変わった虫子(宇野良子)受付嬢の七重(村井千恵子)エレベーター嬢八代(有明マスミ)衣裳係の櫛子(紺野ユカ)広報課の十糸子(倉田マユミ)が後をつける。双葉も気が付いて走って逃げるが、空地で取り囲まれる。そこに、市子の車がやってきて、ヘッドライトで照らし出す。
   私たちを騙したのねと詰め寄る7人に、「あたくしのものを、あたくしが取り戻しただけよ」と答える双葉の頬を打つ市子。涙を浮かべて「風さんは、この女と芝居をうったのよ。私は女優よ、女優があんな芝居に騙されるなんて・・・。悔しいわ。一番いい役をあなたが持って行って・・・。」「本妻の特権よ・・・。」「結局あなたが、風さんを一人占めしたのね。」廃屋に残っていたシャワーの栓を捻ると水が降り注ぐ、市子と双葉の髪が濡れる。8人の女たちを見下ろすアート社三輪子(宮城まり子)。誰にもその姿は見えず、声も聞こえないようだ。「騙されて、殺されたのは私です。私は10番目の女です・・・。」

   市子の部屋、ベッドに風松吉(船越英二)が眠っている。起きるなり、ああ打合せだと身支度を始める。「あなたは、いつも忙しいのね。」「いや君が大事な話があるというから遅い時間でも来たじゃないか。」「私、女優を辞めようと思って・・・。」「そういう大事な話は別の時にしよう・・。僕の顔を見て。君は孫劇じゃベテランじゃないか。演技派女優じゃ一番だという声も多い。勿体ないじゃないか。」身支度を終え、そそくさで出て行こうとして、「八幡さんの流れる星の本番今日だったよね。あっ、君はビデオだったか・・・。じゃあ、また。」市子取り残される。溜息をついて、ウォークインクローゼットの戸を開け、「出ていらっしゃい。疲れたから直ぐに帰ってね」と声を掛ける。三輪子と五夜子が疲れた顔で出てくる。「何時かしら、9時。4時に隠れたから5時間もいたのね。」と五夜子。「すみません、御不浄を貸して下さい。」と三輪
   局の廊下で、風に四村塩(中村玉緒)が話している。「私、会社を辞めてもいいんです。日陰の女でもいいんです。風さんには家庭が大事だと思うんです。安らぐことが出来る家庭が・・・。」
  そんな君を束縛するようなことを僕は望んでいないよと言って風は去る。四村塩はモヤモヤした気持ちのまま、局の食堂でカレーライスを頼む。食堂は時代劇の格好をした役者や局員たちでいっぱいだ。そこに三輪子と五夜子がやってくる。三輪子は納品する台本を持って、担当の局員の前に積み上げて、「お席に置こうかと思ったのですが、前みたいに無くなったりすると困るので」と声を掛ける。塩は、三輪子の足を引っ掛ける。躓いた三輪子は、腕を怪我している五夜子に思いっ切り飛びついてしまった。
   鬼の形相で、塩の前に立ち、ここでは人目があるから、ちょっと来て頂戴と言う三輪子。裏の空き地で、三輪子と五夜子が待っていると、塩は、虫子、七重、八代、櫛子、十糸子を連れてきた。三輪子が、「卑怯ね、助っ人を連れてくるなんて」と言うと「違うわよ!!風さんの関係者に集まって貰った方がいいと思って」と塩。こんなにいたのかと呆れ顔の三輪子。
風さんと別れなさいよと言う三輪子に飛びかかり、上になり下になり取っ組み合いの喧嘩をしていると、「人が来たわ。」と五夜子。他の女たちは地面に転がる二人を隠す。「こんなところ人に見られたら、またどんな噂されるかわからないわ」と言う声に、三輪子と塩も喧嘩を止め、「風さんがみんなに優しいからいけないんだわ」「みんなが一斉に手を引けば、平気なのに、誰かに優しくするから、気になってしょうがないんだわ」「あなたの髪ぐちゃぐちゃにしちゃったわね」「結髪さんに行って、何とかしてもらうわ」
   髪を直して貰った塩がアナウンサー控え室に行くと、若手男性アナウンサーの花巻(伊丹十三)が原稿を読んでいた。

演出部の後藤五夜子(岸田今日子)風邪を引きやすいので受付から事務に変わった虫子(宇野良子)受付嬢の七重(村井千恵子)エレベーター嬢八代(有明マスミ)衣裳係の櫛子(紺野ユカ)広報課の十糸子(倉田マユミ)アート社三輪子(宮城まり子)。

  山本富士子VS岸恵子の女優対決も切れ味最高だが、「女の勲章」で上品だが計算高い京女とは対照的にも見える、女を武器にマスコミを泳いでゆく東京のコマーシャルガール(生コマーシャル出演者と言うか番組アシスタントと言うようなもんだろうか)で、可愛いがしたたかな娘役は東京弁でも京都弁でも真骨頂な中村玉緒と、テキパキした男勝りのTVプロデューサー役の岸田今日子は、我々が思い込んでちる現在の女優イメージというものが、全く当てにならないことを思い知られる。
   しかし1から十までみな、男に一杯食わせる女たちの役を、とても楽しんでいるような大人の女子高な雰囲気は小気味良い。

百瀬桃子(森山加代子)本町芸能局長(永井智雄)野上(大辻司郎)花巻(伊丹一三)若山(佐山俊二)メーキャップ係(中山弘子)局員(志保京助、夏木章)



   58年大映衣笠貞之助監督『白鷺(585)』
   明治40年代、浜町河岸の料亭辰巳屋が破産した。債権者たちが集まっている。辰巳屋の娘お篠(山本富士子)は、奥座敷で身の回りの物に、去年亡くなった伊達白鷺画伯が、お篠の為に描いてくれた「春近し」と言う掛け軸だけは持って家を出た。辰巳の主人の所に、両国で相撲茶屋杉之戸を営む兄の巽弥平(上田吉二郎)と息子の予吉(高松英雄)が、お篠を嫁に欲しいと言いに来ている。その話はなかったことにしてくれと言う巽喜平(見明凡太郎)に鼻白む良吉。喜平の後妻おさい(小夜福子)まだ小さい弟の芳雄(武内聖二)妹お年(小泉朋子)がいる。
    おしのは、かって辰巳屋の女中だったおとり(賀原夏子)の茶屋“砂子”に行き、女中として使って貰うことになった。乳母日傘で育ち、何も知らなかったが、必死で働くお篠。
    ある日、伊達白鷺画伯の追善法要の作品展に津川作造(信欣三)から声を掛けられ出席したお篠は、従兄の予吉にしつこく絡まれているところを、伊達白鷺の弟子の稲木順一(川崎敬三)に助けられる。
    順一は弟の孝(入江洋佑)と、追善法要展の成功を白鷺の未亡人の伊達類子(三宅邦子)と一人娘の七重(野添ひとみ)に報告に行く。七重は病身で寝付いていたが、順一を慕っており、白鷺も今和の際に、七重を宜しくと言い残していた。

船大尽五坂熊次郎(佐野周二)秀子(清川玉枝)
沖田巡査(小沢栄太郎)
和歌吉(角梨枝子)
禅坊主(高村英一)
水月
日本三大悲恋泉鏡花
文展

2009年10月11日日曜日

まだまだ美貌は罪

    池袋新文芸坐で、日本映画に輝く“天下の美女”山本富士子
     59年大映京都島耕二監督『細雪(579)』
     阪急電鉄芦屋川駅、船場の旧家蒔岡家の三女雪子(山本富士子)が出てくる。次女幸子の家に向かって歩いていると、フラフープをしている女児3人のうちの一人が「あー!おねえさーん」と声を掛ける。「お母さんは?」「家にいてる。」幸子の一人娘の悦子(志摩多佳子)だ。悦子は、雪子にとても懐いていた。途中、外車のオープンカーの前でラジオから流れるジャズに合わせて体を揺する軽薄そうな男が雪子の姿を見て、こそこそ隠れる。
   家では、幸子(京マチ子)が、四女の妙子(叶順子)に手伝わせて、夫の貞之助(山茶花究)と出掛ける演奏会の支度に大わらわだった。雪子は幸子が結ぼうとしている帯を見て、「中あんちゃん、その帯はあかんわ。以前一緒に演奏会に行った時、その帯はキュッキュッ音がして、とっても恥ずかしかったわ」幸子がお腹に力を入れると、確かにキュッキュッと音がする。「これはあかんわ」何本か確かめてみるが、どれも音が出る。妙子が「そうか分かった。新しい帯だと音がするんやわ。これやったら古くて、糸もよれてるさかい、大丈夫やと思うわ。」妙子は時計を見て人形教室の生徒を待たせていると言って慌てて帰って行った。外で車で待つ敬やんに人形教室まで送って貰う。雪子は幸子に、とうはん、また敬やんと付き合い始めたんかと尋ねる。かって、二人は駆け落ちをし、新聞タネになったことがあったのだ。もし、そんな事になったら本家に申し訳ないわと幸子。貞之助から連絡があり、音楽会には行けなくなったと言う。そんなんやったら、本家の姉さんのとこ行ってくるわと幸子。本家の門をくぐると、亡父が集めていた骨董やら、雪子の花嫁衣装だった着物で、すごいことになっている。鶴子(轟夕起子)は銀行員の辰雄(信欣三)を婿に取り蒔岡の家を継いでいたが、父親の残した多額な借金を返すために、辰雄の東京転勤を期にこの屋敷を売ることにしたのだ。「お姉さん、もっと落ち込んでいると思ったら元気やね。」

鶴子(轟夕起子)幸子(京マチ子)雪子(山本富士子)妙子(叶順子)辰雄(信欣三)貞之助(山茶花究)悦子(志摩多佳子)奥畑(川崎敬三)板倉(根上淳)お春(藤田佳子)橋寺(菅原謙二)奥畑のばあや(浦辺粂子)野村(船越英二)陣場(春本富士夫)夫人(村田知英子)光子(川上康子)メリー(リンダ・ビーチ)アパートの女主人(村田扶美子)チァイカのマダム(穂高のり子)看護婦(八潮悠子)おさく(滝花久子)玉置校長(三宅邦子)三好(北原義郎)丹生夫人(竹里光子)

   58年松竹大船小津安二郎監督『彼岸花(580)』
   東京駅、伊東、沼津行きの湘南電車のホーム、新婚旅行に出掛けるカップルと見送りでごった返している。2人の駅員が「今日は日がいいのかな」「大安かね、新婚が多いな」「しかし、案外綺麗な花嫁はいないもんだな」「ありゃ痩せすぎて酷いな」勝手なことを話している。
近くのホテルでは、やはり何件も挙式が行われている。大和商事常務取締役の平山渉(佐分利信)と妻の清子(田中絹代)も、平山の中学時代の同級生の河合利彦(中村伸郎)の娘の披露宴に出席している。祝辞を求められ「ともちゃん、おめでとう」と話を始める。話を終え、そういえば、三上が来ていないなと旧友たちの間で話題になる。案内は出したが、来なかったと河合。披露宴の後、いつもの若松で飲む友人たち、男が強いと女が生まれ、女が強いと男が生まれると誰かが言い出した。河合の家と、平山の家は娘が二人、堀江平之助(北竜二)の家は男ばかりだ。俺は見かけ倒しなんだと堀江。店の女将(高橋とよ)が挨拶に来たので、女将の所の子供は?と尋ねると、息子が三人だと答えた。やっぱりと皆が
笑ったので、女将は気分を害する。みな、息子や娘が年頃になり、気になっている。たしか三上の娘は、うちの2つ上だと言う河合に、今日の花嫁か?と尋ねる平山に、上の娘だと答える河合。
    平山の家では、妻の清子が着物を片付けていると、平山が帰宅した。「あれからどうしたんです?」「いつもの若松だ」「河合さんも一緒?」「ああそうだ」「今日くらい帰ってあげたほうが…。奥様寂しいでしょうに」「娘たちは?」「二人ともまだです。」時計を見て、平山は不機嫌そうだ。そこに次女の久子(桑野みゆき)が帰ってくる。久子と、長女の節子(有馬稲子)にボーイフレンド位いないのが、却って心配だと平山が言っていると、節子が帰宅する。
     翌日平山が会社で仕事をしていると、三上周吉(笠智衆)が訪ねてきた。三上は、元海軍士官らしく寡黙で折り目正しい男だが、少し疲れているようだ。男手一つで育ててきた娘の文子が、男と恋愛をして家を出てしまったと言う。杉並区のアパートで同棲し、銀座のバーのルナと言う店で働いているらしいと言う。君なら銀座のバーとか詳しいかと思って…自分はとても会いに行けないと言う三上に、今度訪ねてみると答える平山。そこに秘書が、京都の佐々木さんと言うお客様がと言いにきた。祇園の宿の女将の佐々木初(浪花千栄子)は、馴染みだが話が長い。お中元に筍を贈ったが、安い物と高い物を客によって区別して贈っているが、今回間違えて平山に安い方を贈ってしまったと言う。気がついた時には、もう筍の季節は終わり竹になってしまったので、贈らなかったと初。竹はいらないと平山。旅館の上客で、東京の医師がいて、娘の幸子との縁談にどうかと思っていると言う。高い方の客だね、その医者を幸子ちゃんの旦那に?いや、そんなことあるまっかいな、そのお人は60いくつのおじいちゃんだっせ、その人のお弟子さんで、20代で博士の人がいてると言う初。まだまだ話が続きそうなので、トイレに行くと言って、応接間を出て、自分の部屋に戻り、仕事の続きを始める平山。
    



   固辞する三上に、皆が無理矢理、呉で歌った「芳山楠木帯刀の歌」の詩吟を詠えと言う。仕方なしに詠ずる三上だが途中でこのあたりでいいだろと言う。中西(江川宇礼雄)が「青葉茂れる桜井の~」で始まる唱歌「桜井の訣別」を唄い出すと皆で歌う。

谷口正彦(佐田啓二)佐々木初(浪花千栄子)幸子(山本富士子)河合利彦(中村伸郎)伴子(清川晶子)堀江平之助(北竜二)元海軍士官三上周吉(笠智衆)文子(久我美子)近藤庄太郎(高橋貞二)銀座のバールナのマダムあけみ(桜むつ子)長沼一郎(渡辺文雄)若松の女将(高橋とよ)曽我良造(十朱久雄)派出婦富沢(長岡輝子)同窓生菅井(菅原通済)同、中西(江川宇礼雄)ボーイ(須賀不二夫)女中お松(橘一枝)

   神保町シアターで、川本三郎編 鉄道映画紀行 思ひ出は列車に乗って。

    65年日活柳瀬観監督『北国の街(581)』

    55年松竹大船木下恵介監督『遠い雲(582)』
    蒸気機関車が走ってくる。高山の駅に着く。ホームには、