2009年6月20日土曜日

やっぱり、映画で70年代を過ごした人間には、神代辰巳は特別な監督だ。

    晴天と聞いて、洗濯し、近所で食材を購入。

    川崎市民ミョージアムで、生誕100年松本清張 第3弾
    58年大映田中重雄監督『共犯者(355)』
    福岡市内、10ヶ月払い信用第一、丸掘と看板が掛かっている家具屋。店内の社長室は無人で、3時福岡ホテルとメモがある。婚約披露パーティーらしい。来賓の商工会議所所長の挨拶、内堀彦介(根上淳)と吉沢雅恵(叶順子)さんおめでとうと言って、一介の外交員をしていた内堀が一代で店を興し、僅か4、5年で九州で知らないもののいないデパートにしたと誉めている。
    内堀の回想になる。大きく重いジュラルミンのスーツケースを下げて、温泉町の店に食器を卸している堀内。その日は、温泉宿に泊まりだ。風呂に入ると顔馴染みの同業者の町田武治(高松英郎)に会う。これからのことを考えると憂鬱だと言う内堀に、戦後8年この仕事をし続けてきた自分は、先のことなど考えなくなったと言う。高崎の家を出た途端何もかも忘れることにしているのだ。まだこの仕事を始め4年の自分はとてもそんな心境にはなれない、ボロい儲け話はないもんですかねと内堀が言うと、簡単にあると答える町田。
    その夜、浴衣姿の二人、そろそろバスの時間だ。出掛けようと声を掛ける町田。山陰銀行平野支店、覆面をした町田が宿直の行員に金庫を開けさせている。行員の妻が縛られ気を失っている。金庫が開くなり内堀に袋に詰めさせ、逃げようとした行員を刺し殺す町田。近くの草原で、金を改める。やはり田舎銀行だ、番号が揃っていない、五百万がお前の取り分だ、今日限りお互い顔も名前も知らないことにしよう、3年位は鳴かず飛ばずで静かにしていろよと言って去る町田。金の入った袋を下げ茫然としている内堀。
     博多湾を臨む海岸に雅恵と内堀がいる。何を考えているの?お仕事のことでしょうと雅恵。いやあなたのことを考えていたんですと内堀。先ほどの婚約披露パーティーでの、卓見と誠実、高邁な性格ってホントにそうだわと雅恵。からかわないで下さい、でも私の知る限り、あなたが一番誠実だったので結婚を決意させたの、あなたは僕の性格で決めたのですか、いえ女は愛しているだけではなく、やはり尊敬できる相手でなければ、結婚しないわ。しかし、結婚前に一つだけお願いがある。お互い隠し事のない夫婦になりたい、それだけ約束してくれと雅恵。
     雅恵の実家、父親(宮口精二)は博多人形師だ。男手で育ててきたせいど、とんだ跳ね返り娘になってしまった。しかし、雅恵を幸せにしてやってくれと頭を下げる父親。銀行強盗の過去が頭を占めて、表情が冴えない内堀。政江との結婚式までに、町田が現れ、自分の今を壊されることだけは防ごうと町田の近況を探ることにする。電話局に高崎の町田武治を尋ねると、漆器屋を営んでいることが判る。
     次に群馬の新聞に広告を出す内堀。高崎の農家でスギ(町田博子)が、夫の竹岡良一(船越英二)の失業で実家に帰ってきた娘の悦子(八潮悠子)に声を掛ける。良一さんは今日も釣りかい?悦子は健気にミシンを踏み、洋裁の仕事を受け生計を支えているのだ。良一宛てに福岡から手紙が届いていると言われ、大喜びの悦子、そこに良一が帰ってくる。福岡の商工特報社の高崎通信員として、二万円の月給を貰えることになったのだ。嬉し泣きの悦子。仕事は高崎の数軒の中小企業の経営状態や、経営者の公私を定期的に報告するものだ。
     その中の一軒、町田漆器店を、窺う竹岡。中では、社長の町田と女店員の夏子(若松和子)と番頭の大森(星ひかる)と売上の確かめをしている。町田と夏子は出来ているようだ。その時、店の電話が鳴る。町田の妻からだ。とにかく直ぐ帰宅しろと言う。月末で締めだから忙しいと言っても、大事な子供の学校のことだからと折れない妻。強引に電話を切る町田。上州名物のかかあ天下ですなと大森。
    町田の商売は順調で、家庭もうまく行っていると言う竹岡からの報告は満足出来るものだった。しかし、4回レポートをさせて貰っているが、一度福岡の本社に出張させてもらい、ご挨拶をした上で、今後の取材方針について打合せをしたいと書いて来られて困る内堀。内堀は、竹岡とのやりとりを、郵便局の私書箱を通じて行っている。街にいると、会社の田口(多々良純)が車に同乗させてくれと声を掛けられる。田口は、小倉と熊本にいい物件があるので、どんどん出店しましょうと調子がいい。内堀の自宅には陰気な女中キク(倉田マユミ)がいる。キクは、政江の家で3年働いていたのだ。

    渋谷に戻り散髪。

    シネマヴェーラ渋谷で、神代辰巳レトロスペクティブ
     79年日活神代辰巳監督『赫い髪の女(356)』
     トンネルの向こうから赤い髪の女(宮下順子)が歩いて来る。千葉勝浦の港湾現場に向かうダンプカーとすれ違う。作業現場で、土方の男に大型特殊の運転を教えてやれと孝男(阿藤海)に言う土屋光造(石橋蓮じ)。そこに社長の娘の和子(亜湖)がやってくる。女子高生の和子は光造と孝男にやられたのだ。初めにやった孝男が気に入ったようだ。雨が降り、作業は休みだ。飯を喰おうとダンプを走らせる光造と孝男。休みのドライブインの軒下で雨宿りしながら、カップ麺を食べている赤い髪をした女を孝男が見つける。少し自信がついた孝男は、声を掛けようと言う。女は直ぐに乗り込んで来たが、途中急に降ろしてくれと言う。二人の下心が気付かれたのかと思うと、生理が始まったので、シートを汚してしまうと言うのだ。
    光造のボロアパートに、赤い髪の女と光造がいる。トイレから出て来て、ビニール袋か何かないかと言うが、見当たらないので、サランラップで、生理用品を包む女。

     74年日活神代辰巳監督『宵待草(357)』
     遊廓だろうか、突然男(高岡健二)が飛び起きて今何時だと女(あべ聖)に尋ねる。5時5分よと答える女に4時に起こしてくれと言っただろと言って慌てて着替えを始める男。あんたは、始めようとすると激しく頭痛がして出来なくなるし、変な人ねと言う女。男は朝靄の中を駆けていく。アナキスト仲間たちに合流し、憲兵隊の詰所を襲撃して、拳銃を奪おうとしているのだ。二人しかいない筈の詰所には、沢山の憲兵たちがいて、1丁の拳銃を奪うものの追跡されやっとのこと逃走するアナキストたち。男は、谷川国彦といい、東京商工会の会頭の父親(仲谷昇)を持っていたが、浅草六区にある活動小屋の帝都館を根城にするアナキストたちの一員となっていた。首魁は、花形弁士の黒木大次郎(青木義郎)や平田玄二(夏八木勲)、小川

 


   更にユーロスペースで入江悠監督『SRサイタマノラッパー(358)』
    埼玉県福谷市、国道17号線を夜車で流しながらラップを歌っているグループがいる。溜まり場の倉庫で、IKKU(駒木根隆介)がリリックを作っている。TEC(TEC)が、釣竿とクーラーボックスを持ってやって来る。今日はアマゴ、ヤマメなど大漁らしい。SHO-GUNとして初ライブをやろうと話だけ盛り上がるが、明日の釣り大会が早いからとTECが、仕事があるからとKEN(益成竜也)たち先輩たちは帰ってしまう。といいながら、ガスト行こうぜと話している。残ったのは、IKKUとMIGHTY(奥野瑛太)とトム(水澤紳吾)だけだ。よし来月にはライブだと言うが曲など一曲も出来上がっていないのだ。
    翌朝、普通の家庭、IKKUがコタツで眠っている。父親が、郁美こんな所で寝ているんじゃないと叱る。両親はそれぞれ仕事に出掛け、妹が、お兄ちゃん朝ご飯食べるの?鍵ちゃんと締めて行ってねと口うるさく言って学校に出掛けた。IKKUは、まずMIGHTYの所へ出掛ける。彼は農家の息子で畑を手伝っている。中国人研修生のリーさん(杉山彦々)が働いている。ライブの打合せをしたいと言って、方向性を決めたいんだけど、方向性って?西海岸系か東海岸系かってことだと言うと、埼玉には海がないじゃんと返ってくる。最近プロで儲かっている。ブラザーかと思ったら、ブロッコリーのことだ。
     忙しそうなので、おっぱいパブ舞子でバイトしているトムの所に出掛ける。駐車場の掃除をしているトムも忘年会シーズンなので忙しいと言う。公務員や警察やら学校の先生やら連日予約が入っていると言う。とりあえず、竹田先輩(上鈴木伯周)に曲を作って貰おうと言うことになった。福谷市伝説のトラックメーカーの竹田先輩TKDは身体を壊して自宅療養中だ。しかし、緊張しながらIKKUが頼むと作ってくれると言う。殆ど聞き取れないような小さな声で話し、虚ろな表情のTKDが本当に作ってくれるのかが心配だ。
    IKKUが地元のマルシンの書籍売り場で、バイトでも探そうと求人ジャーナルを買おうとレジに行くと、レジの女が、「あれ、加賀谷郁美じゃねえ?西工にいた加賀谷だよね」と声を掛けてきて驚くIKKU。小暮千夏(みひろ)だ。彼女は、中学高校と同級で、高校2年で中退して東京に出て、IKKU達が3年の時にAVデビューしたのだ。あまりの驚きに、求人ジャーナルを持ったまま、走って逃げ出すIKKU。千夏が追い掛けてくる。彼女の捕まえてという声に、駐車場で取り押さえられ、事務所に連れて行かれるIKKU。
    もの凄い上から目線で千夏は、「万引きなんてしてんじゃねえよ、てか、何その格好?西工の加賀谷がダンサーデビュー、デブダンサー」「ダンサーじゃねえよ、ラッパーだよ」「ああ?デブラッパー(笑)」「お前HIPHOP馬鹿にしてんじゃねえよ」「その格好何年やってんだよ、2年?マジ痛いよ、おまえは、何も変わってねえよ」
   とぼとぼと歩くIKKU。

   男子の青春の哀しさ。ワンシーンワンカットの弛緩したようなテンポが、最初少し気になったが、田舎のメリハリのない毎日を送る、駄目で情けない男子の日常を表現のテンポと重なってきた。終演後のトークショーで監督自身が言っていたが、狙いとして成功している。みひろ、美人でもないんだが、よかった。

  帰宅して、夕刊を広げると、長谷部安春監督の死去の報が・・。

2009年6月19日金曜日

ライオンは寝ている

    朝起きて、朝食食べたところまで良かったが、全く調子悪く、午前中の約束を月曜に延期してもらい。病院に行こうと、少し横になったら爆睡。目が覚めたら午後になっている。もう一度寝たら夕方だ。何だか10代の頃のようじゃないか(苦笑)。
   十二分に寝たせいか、復活し今晩が最終日のレイトショーを。

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、西山洋市Presents役に立つ山中貞雄
    37年PCL山中貞雄監督『人情紙風船(354)』
    雨の夜が明け、長屋の朝が来た。三日ぶりの晴れで仕事に出ようとした磨師の卯之公(沢村比呂志)や金魚売りの源公(中村鶴蔵)を岡っ引きが、調べが済むまで、長屋から出るなと止める。貧しい年老いた浪人が首を括ったのだ。大家の長兵衛(助高屋助蔵)は、身寄りの確かでない者を住まわせていたことで、同心に怒られている。浪人の向かいに住む髪結いの新三(中村翫右衛門)の戸が閉まっている。新三は、自殺騒ぎに全く気がつかずに眠り込んでいた。新浪人の隣は按摩の藪市(坂東調右衛門)が住んでいたが、目は見えなくとも音とか聞かなかったのかと大家に文句を言われる。大家と新三は番所に連れて行かれた。長屋の住人たちは、侍なら首を括るのではなく、腹を切るもんだろう。腰に下げていたのは竹光だからしょうがないと噂をしている。
    自身番から、長兵衛と新三が出てくる。お前ももっときっぱり言うかと思ったら、黙ったままだったね。大家さんが喋り続けだったから口の挟みようがありませんでしたぜと言い合っていると、金魚売りの源公が流している。売れているかい?と新三が声を掛けるとまだ5匹売れただけだと源公。酒でも飲みたいという源公の話を聞いて、新三は、長兵衛に、あの部屋の首吊りも3人目だ。通夜弔いをやりましょうと言う。ご酒5升出してくれれば、肴は自分が都合するので何とかしてくれと頼む。通夜弔いって言って、お前らは酒が飲みたいだけだろうと言う強欲な長兵衛だが、下駄の鼻緒が相次いで切れ、新三に直してもらいながら、承知する。
    その晩、棺桶の前で、長屋の住人たちは、飲めや歌えやの大騒ぎ。タダ酒が飲めるように計らってくれた新三に感謝する。夜泣きそば屋の甚七 (中村進五郎)が得意な踊りを披露している。あまりの賑やかさに魅かれて、新三の隣に住む浪人の海野又十郎(河原崎長十郎)が覗く。酒を勧められ、自分は不調法だからと言って部屋に戻る。妻のおたき(山岸しづ江)が黙々と内職の紙風船を作っている。一方、通夜の宴会は盛り上がる一方だ。藪市は、源公が隣で自分の肴を食べていることを注意する。みな藪市は、目が見えているんじゃないかと言う。そこに、大家の長兵衛がやってくる。お前らは、タダ酒だと思って調子に乗ってと怒るが、新三に勧められた刺身を見て、薄っぺらい刺身だなあと文句を言ったことを逆手にとった新三は、長兵衛の支払いで、お酒を更に2升とまる徳にもっと厚く切った刺身を10人前頼みに行けと与七(中村公三郎)に頼む。
   翌朝、甚七が二日酔いで唸っている。藪市は、自分の銀の煙管が無くなったが、隣に座っていた源公に心当たりはないかと尋ねる。手にしていながら、知らないと答える源公。珍しく新三が朝早く部屋を出てきたがこの辺りを縄張りにするやくざの弥太五郎源七の乾分猪助 (市川莚司→加東大介)たちがやってくるのを見て隠れる。猪助たちは、新三の部屋の表と裏を固めて飛び込む。しかし、新三は間一髪で、隣の又十郎の部屋に匿ってもらっていた。留守だと思った猪助たちは帰っていく。
   海野又十郎は外出し、旧藩で江戸詰の毛利三左衛門(橘小三郎→藤川八蔵)に出会う。毛利は又十郎の亡くなった父又兵衛のお陰で、ここまで出世したのだ。又兵衛から毛利宛の文を渡せば仕官が叶うと信じている又十郎は、幾度となく旧藩の江戸屋敷を訪ねたが、門番に毛利は不在だと言って門前払いされていた。ようやく直接会えた又十郎は、毛利に時間を貰えないかと頼む。しかし、毛利は、今御用の途中なので無理だと言う。これを逃すと、次の機会はないと思う又十郎は、毛利に付いて行く。この店に用があるので、明日江戸屋敷に来いという毛利に、この店の前でお待ちしますと言う又十郎。
    毛利が入った店は、質屋の白子屋だった。番頭に声を掛け、隠居の久兵衛 (御橋公)に会う毛利。毛利は、白子屋の箱入り娘お駒(霧立のぼる)と、15万石の家老の息子との縁談を進めており、お駒を自分の養女としたうえで嫁がせることにしていた。又十郎は、声を掛けられ、店の中で待つことにしたが、久兵衛 と妻のおなつ(岩田富貴子)に、又十郎のことを尋ねられた毛利は、浪人者に付きまとわれ迷惑しているのだと説明する。久兵衛は手代の忠七(瀬川菊之丞)にいつものように、源七のところに使いを出せと言う。忠七は丁稚の長松(市川扇升)に、通りの薬屋にいって、いつもの薬を頼んでこいと言う。これは、源七の若い衆に、強請り集りを追っ払いに来てくれと言う符丁だった。さっそくやってきた猪助たちに、取り囲まれ、店の外に連れ出されて殴る蹴るの暴行を受ける又十郎。そこに通りかかった新三は止めに入るが、逆に弥太五郎の所に連れて行かれる。
   弥太五郎源七(市川笑太郎)に、今日はお世話になりましたと頭を下げ金の包みを出す白戸屋の番頭の姿がある。ご隠居に宜しくと言って帰す。そして、隣の部屋には、新三と乾分たちがいる。お前がどうしてここに連れてこられたか分かっているかという。俺たちの縄張りの中で、盆茣蓙を広げられたんじゃ俺の面子がある。生身で帰れると思うなよと脅す。しかし乾分たちから殺りますかと言われて、昨日今日のチンピラにマジになるのは大人げないと答える源七。二度とやらねえというなら今日のところは返してやると言う。

2009年6月18日木曜日

映画三昧。

   シネマヴェーラ渋谷で、神代辰巳レトロスペクティブ
   73年日活神代辰巳監督『恋人たちは濡れた(349)』
   千葉県勝浦のはずれにある港町、ひとりの男(大江徹)が自転車を漕いでいる。荷台には映画のフィルム缶が積んである。黒スーツ姿の男を避けようとして、フィルム缶は転がり落ちた。転がったフィルムを巻く男。映画館に着き、映写技師に遅かったじゃねえか、間に合わねえかと思ったと怒られる。フィルムを拭く男。代わりのフィルムを積んで自転車で戻る途中。ダンプを運転している男(清水国雄)に中川の克じゃねえかと声を掛けられる。否定しても、三浦と名乗る運転手は、いや、この街を五年前に出て東京に行った克だろう。何か事情があるにしても、いつも連んでいた親友で、麻雀仲間だった俺には本当のことを言ってくれと言われる。
    映画館に戻る。この幸楽館で働き始めたのだ。料金窓口にいる社長の妻のよしえ(絵沢萌子)は一緒に館内の掃除をしながら、あなたは何者なの?警察に追われていたりする過激派の学生?と尋ねる。そんなインテリじゃないですよ。詮索されるのは好きではないと答えるが、私は雇い主だから、身元の怪しい人は不安なのと言う。社長の帰りは遅いですねと男が言うと、使用人のくせに生意気ねとよしえが言う。
   翌朝、映画館の舞台で男が、三波春男でございますと挨拶し、世界の国からこんにちわを歌い出す。よしえは、あんたは役者だったの?と聞くが、否定する男。今日もフィルム缶を隣町の映画館まで運ばなければならないが、雨が降っている。雨の中、ビニール合羽と傘で自転車を漕ぐ。ついついない、更にパンクだ。自転車を押していると、社長の庄三(高橋明)が車で現れ、何やっているんだ。フィルムは俺が車で運ぶから、お前は自転車のパンクを直して帰ろと言う。自転車を屋根に積んで、自分も車に乗せてくれと頼むが、さっさと走り去る社長。今日も三浦が声を掛けてくる。何度否定しても執拗に俺だけには本当のことを言ってくれと迫る三浦。結局殴り合いななり、雨の中、道路に延びる男。
    ずぶ濡れ、泥だらけで幸楽館に戻ると社長がパンク直しておけよと言う。直しましたと答えると、社長は今日もどこかに出掛けてしまう。どうやら愛人がいるらしい。よしえは、泥だらけの男を見て驚き、着替えを持ってきてくれた。その夜も、社長は帰宅しない。妻が相談があると言って、港に碇泊中の船に連れて行く。辞めないで、ずっとここにいて欲しいと言い、キスをしてくれと迫って来る。抱き合う二人。よしえの声が大きく夜の海に響く。
    翌日、男か海岸を散歩していると、全裸で抱き合っているカップルがいる。近づいて、見続ける男。カップルの光夫(堀弘一)洋子(中川梨絵)は、終わってから男に蹴りを入れる。這いつくばって歩いていると、二人は車を止め、乗せてやると言う。そんなに女が欲しいのなら、紹介してやるという光夫。幸子(薊千露)というその女も、男を中川の克でしょうと言う。腹が立った男は、無理矢理幸子を強姦する。しかし、抵抗する幸子に果たせなかった。

    72年日活神代辰巳監督『濡れた唇(350)
    金男(谷本一)は、田舎から出て来て働いている材木工場の社長の娘幸子(嵯峨雅子→山科ゆり)と交際中だが、身持ちの堅い幸子は、最後まで許してくれない。どうも辛抱出来ない金男は、デートクラブのチラシに電話してみる。クラブの男は入会金が千円、二時間のデート代が千五百円だと言う。女は洋子(絵沢萌子)と言い、喫茶店で話しをして、金男が直ぐにホテルに行こうと言うと、そんなに安い女じゃないと言って焦らした挙げ句、トイレに行くと言ってトンズラする。喫茶店の店員の男が、あの子は気に入らない客だと逃げると言うので、初めて自分が騙されたことに気がつく。金男が歩いていると、ラーメン屋で悠々と食事をしている洋子の姿が。怒って中に入ると、お腹がすいたが、客に奢らせるのは嫌いなので、食事をして戻るつもりだったと言う洋子。二度と騙されまいと頑なな表情の金男に、二時間延長料払ってくれれば、ホテルに一緒に行ってもいいと言う。喜びいさんでホテルに行く金男だが、初体験の悲しさ。あっという間に終わってしまう。洋子は、子供の頃、家で飼っていた鶏は、雄鶏が雌鶏に乗っかるが、一瞬で終わり、その後は雄鶏も雌鶏も何事も無かったかのような素振りなのが、子ども心にもおかしかったと言う話をする。傷ついた金男。
     しかし、金男は翌日も洋子を指名する。二回目は入会金はいらないが、指名料がかかるので、結局二千五百円取られる。金男は、愛しているんだと、恋人気取りで、洋子に馬鹿にされる。

    シネマート六本木で、
    ピーター・チャン監督『ウォーロードー男たちの誓いー(351)』
    兵士たちの死体で埋め尽くされた戦場。文字通りの死屍累々、死体の中から立ち上がる男の姿がある。清軍の将軍パン・チンユン(ジェット・りー)だ。19世紀末清朝末期、太平天国との鶴川での戦いで、後詰めのホー・クイ将軍(シー・チャオチー)率いる塊軍が兵を止めると言う裏切りに合い、山軍の部下1600名は全滅し、一人奇跡的に生き残ったのだ。パンは、よろよろと歩き続けたが、一人の女の前で倒れ気を失う。気がつくと、女はパンを廃屋に寝かせ、看病していた。粥を与え、パンの横に添い寝をする女。翌朝パンが目を覚ますと、女の姿は無かった。
    近くの村まで歩き、刀と甲冑を売り、僅かな銭に替え、どこかで食べ物はないかと尋ねると、裏の空き地で待っていればいいと言う。そこに、盗賊のチェン・ウーヤン(金城武)が仲間と現れ、辺りの人々に食料を配り始めた。ウーヤンは、パンの足元を見て、履いている靴が、清軍の将校のものだと気がつき、刀を向けてきた。難なく受け流すパンの武術に感心したチェンは、兄貴に紹介するので、一緒に来いと言う。
    ウーヤンとパンたちが村に戻ると、偶然にもウーヤンの兄貴分で盗賊の首領のツァオ・アルフ(アンディ・ラウ)が帰って来た所だった。パンは昨晩介抱してくれた女を村人たちの中に見つける。女もパンに気がついたようだったが、何故か頭に被っていたスカーフで顔を隠した。女は、アルフの妻リィエン(シュー・ジンレイ)だったのだ。アルフは旅の間に、死んだ仲間に食事と酒を用意し、追 悼の気持ちを表した。アルフは、パンにあなたは官吏だが、自分は盗賊だ。仲間になることはできないと言う。その夜、パンは、リィエンの姿をみつけ追いかけ てきた。あの夜、リィエンは、家から逃げてきたのだと言った。楊州の貧しい娘は、芸や教養を仕込まれて高い値段で売り飛ばされるのだ。15歳になり売られ るリィエンを幼馴染のアルフは助けて、村を逃げだした。そして山に入って盗賊になったのだ。リィエンは、アルフに恩を感じ妻となった。しかし、自分の売値 を吊りあげるために教え込まれた貴族的な教養は、荒くれ者で無教養なアルフに満たされないものがあり、アルフが盗賊の旅に出ると、逃げようとした。しか し、今回も自分を救ってくれたアルフへの感謝が、村に戻らせたのだ。
    何で戻ってきたんだ?とパンが問いかけた時に、騒ぎが起こる。ホー・クイ将軍の塊軍が村にやってきて、略奪し、抵抗する老婆を射殺したのだ。止め ようとしたアルフは、魁軍に囲まれ、ホー将軍に馬鞭で顔を打たれる。武器を持たない悔しさに歯ぎしりする村の男たち。パンは、清軍に入隊して、武器と軍服 を貰おうと提案する。給金も貰えるのだ。アルフは同意し、ウーヤン、パンと三人で義兄弟となる投名状の誓いをする。しかし、盗賊の仲間でも、清に仕えること を嫌ったシーたちのグループは、別れて行った。
    清に仕える手土産に、太平軍の大隊を待ち伏せし襲う。パンの指揮の下、奇襲攻撃は成功する。しかし、敵の将軍と闘い劣勢になったウーヤンを身を挺してパンは救 う。その時に、チェンは、戦闘では、敵の大将を倒すことが勝利への近道であることを教えられた。パンの軍略と武術と勇気に感服したアルフとチェンは、パン を信じて付いて行こうと思った。清軍の軍法会議では、1600名の部下を全滅させたこと責められたが、権謀術数で覇権を競う三大臣の中で、ホー・クイ将軍 を部下に持つことで、発言力を増すジアン大臣(クゥ・パオミン)への対抗い迫られた、チェン大臣の後押しで、チェンの部下ルー将軍(チョウ・ポー)の緑軍と共同 で、太平軍討伐を行うことを認められた。
    舒城を攻めるパン。しかし、ルー将軍は、多勢に無勢で死人を出すだけの無益な戦闘はしないと言う。そこで、パンはたった800人で、5000人の太平軍と戦うことを決意する、圧倒的に兵力も弱いので、相手の銃器に対して肉弾で突撃をして、銃の射程距離300Mの内側を自分たちの弓矢が届く200mまで迫って、戦うという戦法だ。怯む兵士たち、しかし、ウーヤンが俺は突っ込むと叫び、アルフは、死んだ者には2倍の報酬、生き残った者には3倍の報酬を渡すと宣言し、皆勇気を奮う。戦いの火蓋は落とされ、予想通り、太平軍の銃器の前に、倒れていく歩兵たち。圧倒的な兵力の差だ。敵の将軍は、ルーの緑隊が動かないのを見て、賢明な選択だと呟く。パンの胸を槍が貫通する。しかし、パン、アルフ、ウーヤンの義兄弟3人の獅子奮迅の働きは、最後にルーの重たい腰を上げさせた。一気に攻め込み、相手の大将の首を挙げるウーヤン。戦いは勝利に終わった。舒城の街に入る。戦利品を確認していると、兵が女を強姦ンしたとして引き立てられてきた。盗賊だけでなく、当時戦の結末は、殺戮と収奪と女だ。パンは、貧しい自分の理想は、誰もが他人を賤しめない国家の建設だと説明し、殺戮と収奪と強姦を行った兵士を斬首刑に処すると宣言した。その意味に心を打たれたウーヤンは自ら同郷の仲間の首2つを刎ねる。その後、ルーはパンの指揮下に入る。更にディー大臣(ワン・フィワン)は、5大隊をパンに与える。
   続いて、蘇州城を攻める。3か月で戦いを終わらせ、故郷の村に戻すと言っていたパンだが、堅牢な蘇州城の守りは固く、1年経っても平行線だった。山軍の武器と食糧は尽き、兵士たちは先行きの見えない消耗戦に疲弊していた。やはり今回も、はるか後方でホー・クイ将軍の塊軍は、監視しているだけだ。三大臣の本音は、パンが蘇州を落とし、その勢いで南京まで解放し、太平軍との戦いを終わらせ、パンの力がこれ以上強くなることが嫌なのだ。そこで、何度も武器と食糧の追加要請を認めなかった。リィエンが戦場に現れた。パンとウーヤンが三大臣に交渉しにいった時に、アルフは、英雄になりたいのだとリィエンに言葉を伝え、単身城内に潜行した。城内でも、食料も尽きこれからは人肉を食べるしかないと言う声が漏れているほどの酷いありさまだ。アルフは太平軍蘇州城主ホアン(グオ・シャンドン)にアヘンを届ける運び屋に変装していたのだが、ホアンは、目の前にやってきたアルフは、私は11年前に商売を全て処分し、太平軍に加わった自分は、城内の人間の顔は全て知っている。君はアルフだろうと言う。実は、盗賊の仲間だったシンたちは、ホアンの部下になっていたのだ。刀を向けるシンたちに、刀を捨てろというホアン。アルフに刀を渡し、一対一で決闘をするが、元より自分の命に代えて、城内の民衆と兵士の命乞いをしたのだ。
   三大臣への、武器食糧の要請を断られたパンは、ホー将軍に食糧を頼む。いつまでも老人の下にいるつもりはないだろう。南京を解放する名誉を分けようというパン。10日分の食糧を持ち、部隊に戻るパンとウーヤン。パンは、リィエンと再会する。二人の微妙な表情に何かを感じるウーヤン。アルフが単身城内に潜行した話を聞き、アルフが作戦に成功した場合に翌朝兎の刻に城内から烽火を上げると言うその時間に総攻撃をすると伝える。ようやく食事を得て、盛り上がる兵士たち。兎の刻になった。烽火の代わりに、門があき、城内から疲労困憊した民衆が出てきた。その中にアルフの姿を見つけて喜ぶ兵士たち。しかし、城内にいる4000人の兵士たちを、武装解除して自軍に入れると言うアルフとホアンの約束を、パンは認めない。南京陥落まで10日分しかない食糧は、4000人軍隊が膨れ上がることは想定外のことだ。饅頭を与え、城内に閉じ込められた4000人の兵士に矢を放つよう命ずる。男を賭けて開城させたアルフは、鎖で門外の柱に繋がれた。4000人の兵の死体の前で、涙を流し、郷里に帰ることを決意するアルフ。


1870両江提督。
  シュー・ジンレイきれいだなあ。新宿インシデント見逃していることが痛恨だ。

   木村祐一監督『ニセ札(352)』

   三池崇史監督『クローズZEROⅡ(353)』
   ジャニーズ以外の若手男優全員集合のような映画だな。テレビドラマやCMのつまらなさで、かっこいい役をやりたい若者のストレスの解消の場のようだ。そうした彼らの欲求不満を三池監督は、エレルギーとしてうまく映画にしていると思う。しかし、煙草吸う不良高校生たちが、みな20歳以上で、最後に未成年に煙草と飲酒は禁止されていますというテロップが入るのはどうなんだろうか(笑)。煙草吸う高校生は20代の役者だから問題ないですよと小狡るく言い訳する製作委員会の大人たちの本音と建前が見え隠れする(苦笑)。普段、10代のタレントの喫煙・飲酒を鬼の首取ったように追及するメディアサイドは、よもやお金を出していないだろうなあ(笑)
   まあ、かっこいい映画を作ろうと意気がっている若手男優にケチをつけるつもりはないが、テッペン取るなら、日本じゃなくて、海外に行こうよ海外に。

2009年6月17日水曜日

ベロンベロンな夜

     朝から、洗濯をしながら、講義のレジュメをまとめ、早めに学校に行き、コピーを大量にする。90分3コマの日なので、気が重かったが、北陸の後輩Kから携帯に電話がある。ちょっと面白そうな話なので、ご機嫌に。我ながら、簡単な性格だなあ(笑)。
    講義は、いつでもどこでも眠たい若者たちとの闘いだが、自分も眠れる獅子という異名を持っていたほど、学校でも家庭でも眠り続けた10代を過ごしたので、起こすに忍びない。今日はエンタメ業界、闇の企業研究その四。面白い筈なんだけどなあ。眠気には勝てない(苦笑)。更に、あそこの社員は最低の人間だから嫌いだという超個人的な意見が聞こえて来て哀しい。まあ、最後は、地デジと某カードにまつわる謀略話を唾を飛ばして語り続けると時間となる。
    今日は、自分が、このブログであまりに博華で餃子とビールと書くものだから読者の方々のツアーが来てしまった。遠路はるばるな大先輩までいるので、講義が終わり次第、急いで場所取りだ。一昨日は定休日、昨日は大雨だったので心配で、心配で。予想通り、今日は賑わっていたが、上手い具合にみんな待つことなく座れてラッキー。楽しいなあ。絶好調で酔っ払って、もう少し飲みましょうと、拙宅に案内したのは覚えているのだが・・・。また、くだらないこと喋繰りまくったんだろうなあ。勿論ほとんど記憶はない(苦笑)

2009年6月16日火曜日

予想通りの作品に出会うのも映画館の楽しみだ(苦笑)。

   大門の歯医者。インプラントの経過チェック。その後、
  六本木一丁目まで歩き、独身美人OLに惣菜差し入れ、元同僚と昼飯。外苑前の粥屋喜々で打合せ。

    シネマート新宿で、兼重淳監督『腐女子彼女(348)』
   お祭りの夜、浴衣姿の女性と若者が縁日の金魚を下げて歩いている。若者が手を繋いでいいですかと尋ねる。川岸で夜景を見ながら、若者は頼子さん付き合って下さいと言う。頼子(松本若菜)は、私も須賀くんが好きだけど、最初に断っておかないことがあると答える。私は腐女子なの、オタクなの、それでも良ければと頼子。須賀日向(大東俊介)は、頼子さんが好きなんで、そんなことは問題じゃないと断言する。しかし…。
    目の前に黒いスーツの男たちが行列して待ち受ける。お帰りなさい、お嬢様。と口々に言う。執事喫茶だ。悠然と対応する頼子。後ろにいる日向は、おぼっちゃまと声を掛けられ、目を白黒させる。案内された籍には、既に頼子の腐女子仲間の、カスミ(EMI)と、子連れ主婦のミルク(秦みずほ)がいる。腐女子たちの妄想と専門用語には全く付いていけない日向。しかし、そんな当惑する日向に、カスミは身悶えして萌え、頼子も満足そうに頷くのだった。大学の校門で、頼子とのことを考えデレデレしている日向。頼子は、日向が短期アルバイトで行った洋食器の輸入会社の社員だった。会社で城崎頼子と紹介された日向は、大人の女の美しさと仕事の有能さに一目惚れしたのだ。そこに、クラスメートの瀬野晃司(古川雄大)が、週末一緒にレポートをやらないかと声を掛けてくる。約束があるんだと断る日向。
    しかし頼子とのデートは、池袋のアニメイトだ。少女漫画のフロアで、コミックや同人誌を買いまくる頼子。売り場には、カスミやミルクもいる。山のように買い漁った袋を下げて店を出たところで、映画を見に行く晃司と彼女に出くわす。頼子を紹介することに躊躇してしまう日向。頼子から腐女子だから友達に紹介しなかったんじゃないのと尋ねられ、否定はするが、少し動揺する日向。
    ある日の夕方、日向の下宿の鍵を開けて中に入る頼子の姿がある。しばらくすると、日向宛ての宅配便が届く。何故か嬉しそうに受け取る頼子。一方、日向は教室で、晃司とレポート作りをしている。そこに頼子からの携帯が鳴る。今どこにいると聞かれたので、晃司と大学の教室でレポートをやっていると答えたが、勝手にボーイズラブ系の妄想をしているらしい。頼子は、日向の部屋にいると言うが、携帯から漏れてくるアニメ声の悶え声に、エロゲー?と恐る恐る尋ねると、普通のエロゲーでなくて世界最強のエロゲーだと威張る頼子。日向の名前で発注していたのだ。思わず大きな声で、僕のアカウントでエロゲーと叫んでしまい、教室中の注目を集めてしまう日向。心配になり、晃司のスクーターに載せて貰いアパートに帰る日向。何だか晃司との普通の会話にも頼子のBL妄想が移ってしまう日向
to be continued.

   酷いなあ(笑)。何だかどうしたかったのか分からない脚本と、俳優ごっこしている出演者と、どうしていいのか分からない監督の3拍子揃った駄目映画だ。まあ、誰か知らないが、プロデューサーの能力だな。脚本読んで、どうなるか分からないんだろうな。製作委員会はちょっと手垢がついた感じなので、フィルムパートナーズ(苦笑)。どうしたかったんだろうな。この映画を作るモチベーションがあった人間に、何を作りたかったのか聞いてみたい気がする。金と時間を返せ!!!
   まあ、そんな大きな話ではなくても、主演(?)の松本若菜のメイク。何でこんなに毎回違うんだろうな。まあ、頼子は、腐女子なので、化粧が異様にヘタだったという役作りだったのかもしれないが・・・。

2009年6月15日月曜日

北九州市戸畑が舞台の映画を2本。

    久しぶりに惣菜を2品作る。ヒジキ煮とキンピラ。生保の転換の話を聞き、外出。

    神保町シアターで、川本三郎編昭和映画紀行 観光バスの行かない町
    50年日本映画演劇労働組合山本薩夫監督『ペン偽らず 暴力の街(344)』
    埼玉県北部の東條町、国定忠治以来の上州侠客の流れを汲むバクチ打ちの親分が、戦後民主主義国家が建設されてもいまだ町を支配する。二十年前と町の様子も変わらないようなところである。町境では、闇で食べ物を手に入れた母子が摘発されている。しかし、大型のトラックは顔バスで通っていく。東條駅前の派出所で、行李四つを運んで来た男(谷晃)に、送り状を見せろと言う巡査(世良明)。銘仙だと答えたが、中を改められ、半分は闇じゃないかと摘発された。
    数日後の夜、町内の料亭に、東條町公安委員会で連絡会会場と立て看が掛かっているが、ただの宴席だ。警察署長の泉山(奈良真養)と副署長(山口勇)検事な戸上(滝沢修)らを銘仙組合理事長の鈴鹿(清水元)らが、接待しているだけだ。東朝新聞の東條通信部に新任でやって来たばかりの若い記者の北(原保美)が、隣の記者クラブ代表の大東新聞の松野記者(伊達信)と自由新報の島脇記者(嵯峨善兵)に、今日の趣旨は公安委員会の連絡会ですよねと年を押す。前任の夏目くんとは違って君は若いからなと自由新報の記者。呑む時は呑む、書く時は書けばいいのだと言う。私は帰りますと言う北に、記者クラブの代表記者は、今晩のことは書くな、書く時は連絡しろと言う。
    翌日、町の大ボスで、町会副議長、警察後援会長の大西(三島雅夫)が東條署に現れ、泉山くんはいるかと言って署長室に入っていく。そこには、署長、副署長、記者クラブ代表の大東新聞の記者と自由新報の記者がいる。どうなっているんだと叩きつける東朝新聞の地方版には、東條町の警察と業者の癒着の記事が出ている。俺の顔に泥塗りやがって、署長をクビにしてやると脅しつける大西。記者クラブから貰ったらしい二本の一升瓶を足で机の下に隠す松野は東朝が協定破りをしたのだと弁解する。署長室から東朝新聞の北に電話をする大西。最初は脅しつけるが、通じなかったようで、一度ゆっくり話をしようと言う。
    東條町簡易裁判所新庁舎の落成パーティーが庁舎前で開かれている。戸山検事は、町会副議長で、警察後援会長の大西のお蔭だと持ち上げる。大西も得意気だ。大西が北の姿を見つけ、鈴鹿に耳打ちする。鈴鹿は迷惑を掛けたと一言詫びて貰えばいいと言うが、北は謝る気はないし、町の不正とは断固追及するという。北を殴る大西。検事の戸山は、見ないふりをして消える。誰も止めようとする人間はおらず、大西は、総理大臣の前だろうが、県会議長の前だろうが、殴ってやると吠える。


    シネマート六本木で、羽住英一郎監督『おっぱいバレー(345)』
     海沿いの町、中学生の5人のグループが、自転車を漕ぎながら片手を広げている。平田育夫(木村遼希)、楠木靖男(高橋賢人)、杉浦健吾(本庄正季)、江口拓(恵隆一郎)、岩崎耕平(吉原拓弥)。どうも風に寄っておっぱいの触感を疑似体験しようとしているようだが、杉浦が時速80キロでないと駄目だと言う。平田と、楠木が、改装した自転車で急坂を下る。かなりのスピードが出て、こんな感じかと言ってブレーキを懸けるが全く効かず、絶叫しながら、断崖絶壁を飛び出す二人。
     北九州市戸畑第三中学校の朝礼。例のグループが絆創膏だらけで、60キロだとAカップ、80キロだとBカップ、100キロだと…と全く下らない会話に夢中だ。校長が、新任の教師を紹介する。寺嶋美香子(綾瀬はるか)が登壇する。国語の教師だと自己紹介し、この学校の図書室に行ったら、一番好きな本があったと言って、立原道造の「道程」の話をし始める。馬鹿男子たちは、美香子の道程が好きだと言う言葉に異常に反応する。興奮し過ぎた江口が鼻血を出し、周りの女子は悲鳴を上げて飛び退き、朝礼は大混乱になった。
   職員室に戻りながら、美香子が教頭(光石研)に謝っている。教頭が美香子に、先生!部活の顧問もお願いしたいのですが、男子バレーボール部の顧問がいないのでお願いしますと言う。深く考えずに頑張りますと答える美香子。周囲の若い男子教諭の堀内(青木崇高)たちが、えっ、という表情になっているので、何か事情がありそうだ。

   シネマヴェーラ渋谷で、神代辰巳レトロスペクティブ
    75年東京映画神代辰巳監督『櫛の火(346)』

    79年東宝神代辰巳監督『遠い明日(347)』
    多川明(三浦友和)が、ピンク電話で友達と話している。母親が再婚することになって初めて、交通事故で死んだと教えられていた実父が、殺人犯として生きていると教えられた。だから、どんな親父なのか、今から北九州に行ってみようと思っていると思っていると告げたところで切れた。隣で電話していた娘に、医者の息子と殺人犯の息子どっちがいい?と尋ねる。殺人犯の息子と答える娘。
    函館を発ち、青函連絡船から国鉄に乗り換え、北九州に着く。市立図書館に行き、昭和35年頃の古い新聞で、出来るだけこのあたり地元の事件が載っている新聞を見たいと尋ねると、係員は、市民以外には貸し出ししていないと言うが、自分が見ていればいいと付け加えた。その小林(森川正太)のネチっこい視線に気持ちが悪く、図書館を飛び出すと、当時の北九州新聞のファイルを持って追い掛けてくる。戸畑という街で殺人事件があり、多川蓮三が犯人として逮捕されたと言う記事を見つけ、これでないかと言う。何かと明の身体に触りたがる小林は、献身的に、事件の目撃者を探し出しては教えてくれる。
    まずは、殺人現場のアパートの一階で時計の修理屋をやっている沼田万造(殿山泰司)を尋ねる。蓮三の息子だと言うと、多川蓮三は、地元の戸畑造船から大阪造船に引き抜かれて、大阪に向かおうとしたのを、逃げようとしたと思われ、駅前で逮捕されたのだ。事件が起きた時は、自転車で逃げる男の後ろ姿は見たが、顔など暗くて見えなかったと言っても、その後に原田良枝(宮下順子)と黒田が擦れ違って、逃げる蓮三を見たと証言してからは、全く自分の話が採用されなくなり疑問に思っていると語ってくれた。また、当時、蓮三の弁護士だった河原崎と、凶器などに疑問を持って色々調べていた警察官の斎藤なら、詳しい話を聞けるだろうと教えてくれた。斉藤は、この事件に深入りしたために警察をクビになったと、飲み屋でいつも飲んだくれていたと言う。
    小林がシュークリームを持って、明が泊まる宿にやってきた。

   凄いなあ。北九州市、戸畑を舞台にした映画を偶然に2本。「おっぱいバレー」が1979年の設定、「遠い明日」が公開当時の設定だとすると、公開1979年。まあ、殺人事件は、19年前の1960年の設定だが、三浦友和と綾瀬はるかが同じ時代に擦れ違っていたかもしれない設定だ(笑)。その時、友和が美香子先生に会って恋に落ちていたら、百恵と結婚していなかったのだろうか。まあ、綾瀬はるかも山口百恵も同じホリプロだから、事務所的には行って来いだ。

2009年6月14日日曜日

親不孝者のにちようび

     午前中は部屋の片付けというか掃除。何だか未読の時代小説が多数発見され得した気分に。
     午後は日野の実家に、父親がかなり復調していて、近くの床屋に一人で出掛けたと聞いて驚く。塩分と水分の制限には困っているみたいだが、少量であれば飲酒も許されているようで、更に驚く。妹は外出していたので、両親と夕食を取って帰宅。何だか、どうも照れくささに、今まで親不孝をしてきたが、51が近付いて、ようやく素直に話が出来るようになった気がする。まあ親不孝なことは変わらないままだが…。