2009年7月4日土曜日

生まれた年に生まれた映画

   夕立の可能性も感じつつ、久し振りの太陽に、シーツやら洗濯し干す。
   ここ数日映画館の埃臭い空気を吸っていなかったので、昨夜深夜にやっていた堤幸彦監督の「溺れる魚」朝まで見てしまう。うーん、贅沢なキャスティングだし、アイデアも満載だが、散漫な映画だ。映画館で見た時に、仲間由紀恵がトリックの山田奈緒子に見えなければよしと言う感じなのだろうか。ということで、昼飯用のお握りを腰に下げ、

    京橋のフィルムセンターで、特集・逝ける映画人を偲んで2007ー2008。

     58年松竹大船木下恵介監督『楢山節考(376)』
      黒子が拍子木を打ち口上を述べて始まる。楢山の麓にある村、ある農家の納屋で石臼に葉を打ち付け折ろうかとしている老婆がいる。隣村から飛脚(東野英治郎)が、その老婆、おりん(田中絹代)を訪ねてくる。りんの長男の辰平(高橋貞二)の後妻に妹のおたまをどうかと言うのだ。おたまは三日前に夫を亡くしたと言う。おたま年齢を尋ね、45だと聞いて辰平と同い年だと喜ぶおりん。
辰平は、亡き妻の墓前で三人の子供と手を合わせている。そこに、りんが来て、嫁が決まったと言う。そんな気持ちはないと答える辰平だが、幼い子供たちを考え承知する。しかし、りんが、来年の正月には70になるので、心置きなく楢山さまに行けると言うのを聞いて肯けない。この村では、口減らしのために、70才になると楢山に捨てられると言う姥捨ての掟があるのだ。
    りんが食事の支度をしていると次男の袈裟吉(市川団子→猿之助)が、腹が減ったので、何か食い物はないかと言う。干したカタバミ?があるだろと答えるりんに、あんな硬いものは食えないと言う。かか様みたいに33本歯があれば、別だろと言う。そんなことはないと怒るりんをはやし立てて、歌いながら外に出て行く袈裟吉。♪うちのかか様、食い意地はって、鬼と同じで歯が33本♪
    ある日農作業から辰平が帰ってくると、近くの家から、りんの鬼の歯の歌が流れてくる。怒って中に飛び込む辰平。悪気はなかったが、お前の弟の袈裟吉がいつも歌っているので、つい歌ってしまったと謝られる。袈裟吉が、村のお社で、子供たちと歌っているのを見つけて、殴り掛かる辰平。袈裟吉は身軽に逃げる。親不孝もののお前などに飯なんか食わさないと辰平。
    辰平と子供たちとりんが、キノコ粥?の夕食を食べていると、袈裟吉が帰ってくる。袈裟吉に碗を手渡し、辰平に嫁が来ることが決まった、夫の四十九日が済んだらと言っていたが、それより早く祭りの時に来るんじゃないかと嬉しそうに報告する。辰平ではなく自分が嫁を取ると言う袈裟吉。夏の祭りの白ハギさまが来た。社では、皆が輪になって踊っている。この日は年に一度だけ、白ハギ(米の飯)が食えるのだ。白米が炊けた香りに、隣の老人、又やん(宮口精二)が、餓鬼のようにやって来て、釜の中に手を突っ込んで食べようとする。熱くて悲鳴を上げる又やんに、丼にご飯をよそってあげ、あんたは、ホントは、今年の正月に70才になったのに、楢山さまに行きたくないと駄々をこねて、息子夫婦にろくに食べ物がもらえないのだろう、だから、ベニやんはけちん坊だとはやされるのだと言う。隣のベニやん(伊藤雄之助)が、こんなところにいたのか恥さらしが!!と父親の又やんを引きずって行く。
   りんは、ふと、家の前に一人の女が佇んでいるのに気がつく。嫁のたま(望月優子)だ。りんは、朝から何も食べていないと言うたまを家に引き入れ、山盛りのご飯と自分が採った山女魚の干物などを出し、腹一杯食えと言う。直ぐに辰平を呼んでくると家を出たが、自分が70才目前でも痛んだ歯がないことで、物笑いにされていることを恥じて、前歯を石で叩き折った。血だらけになりながら、これで楢山さまに行けるのだと語るりんに驚きながらも、気持ちを汲むたま。
    社に血だらけで現れたりんに村人は悲鳴を上げた。辰平は、嫁が来たと嬉しそうに言うりんを背負い走って帰宅する。年に一度の白ハギさまかと、腹が立って、腹一杯食おうと、たまの丼に山盛りにし、自分も食べ始める辰平。
    刈り入れの季節だ。袈裟吉は、働きもせず、はらませたマツと遊んでいる。腹が減って腹が減ってしょうがない、もう家から出ていけと言われているので、あんたんちに行っていいかと言うマツ。ババアが早く山に行けばいいんだとうそぶく袈裟吉。鼠っ子になるのはいやだろうと言う。鼠っ子とは、曾祖父母の孫は忌み嫌われ、殺されるのだ。辰平と、タマ、りんが稲刈りをしている。収穫が終わり、冬が来て、年が明ければ、母親を捨てに楢山に行かねばならないと思うと、辰平のたまらない。そんな気持ちを逆なでするように、袈裟吉とマツは、りんに早く山に行けと言う。マツは、大飯喰らいで、家を追い出されたようだ。雪が降り始めては、山を登れないし、あまり早いと中々死ねないのだ。楢山に登ってから雪が降ることが幸せなことだとりんは言う。りんの話を聞いて、辰平は顔に手ぬぐいを当てて仰向けに横になり、タマは、何度も表に出て顔を洗った。

   「うばすて」と言う駅を蒸気機関車が通っていく。

   日本の山村の人間たちをこれでもかと描く今村版しか見ていなかった。木下恵介の映画を改めて見直そうと思った。浄瑠璃芝居のような口上から始まり、スタジオセットで繰り広げられる姥捨て物語。大船調どうも苦手だったが、松竹大船撮影所の力を見せつけられる映画だ。

   58年大映東京増村保造監督『巨人と玩具(377)』
   通勤するサラリーマンの群れ、その中に西洋介(川口浩)の姿がある。西はワールド製菓の宣伝部の新入社員だ。始業のサイレンがなる。ワールド製菓の専務の東隆蔵(山茶花究)に、宣伝部長の矢代光平(信欽三)が報告している。矢代は胃を押さえ元気がない。宣伝課長の合田竜次(高松英郎)が薬の時間ですと言うと、胃薬を飲む矢代。
   宣伝部の部員たちが雑談をしている。うちの会社のような係属会社は、役員の娘と結婚でもしないと出世出来ない。最近あまり成果を上げていない矢代部長も社長の娘と、課長の合田も八代の娘と結婚しているからなと言う。そこに合田が戻ってくる。一週間前に入社したばかりの新入社員の西に、君は学生時代ラグビーやっていたんだってな、自分もそうなんだ。ちょっと下の喫茶店に行こうと誘う合田。部員たちは、俺もラグビーやっていれば良かったなと愚痴る。
    喫茶店で、今度のキャンペーンは、ワールド製菓とアポロキャンディ、ジャイアント製菓のキャラメルの大手3社の三つ巴の戦いになるが、早くキャンペーンの景品を決めなければいけないのだが、いいアイデアがないかと尋ねるのだった。なんで拳銃の玩具をつけなければいけないんですかと聞く西に、喫茶店のショーケースを覗き込む若い娘(野添ひとみ)の姿がある。急に合田があの娘は面白いのでここに連れて来いと西に言う。垢抜けない娘のどこがいいのか分からないまま、声を掛けるが断られる。肩を落として、合田の元に戻ると、いない。そこに、娘を連れた合田がやってくる。有名女優の整形話をしながら、映画の試写会の切符を送ってあげるので、住所を書けと手帳を渡す。家に送ると弟たちに取られてしまうので、勤め先のタクシー会社に送ってくれという娘。娘の名前は、島京子といった。
   仕事が終わった西は、中学以来のラグビー仲間の横山忠夫(藤山浩一)と待ち合わせる。横山は、ライバル会社のジャイアント製菓の宣伝部に入っていた。学生時代の溜まり場に行こうと言って、歌声喫茶に行く。社会人1週間だが、二人は物足りなさを感じる。横山は、会社のつけが利く、バーに連れて行ってくれた。そこで、西は横山に、アポロキャンディの宣伝部の倉橋雅美(小野道子)を紹介される。横山は、ジャイアント製菓の懸賞商品がポケットモンキーなどの動物だと教えてくれた。倉橋は、宇宙服がいいわよとアイディアを売ってくれた。

   社会派的な題材は、増村保造に合わないのか、どうもバランス悪い映画だなあ。登場人物やエピソードが多すぎて、未消化な印象だ。

  フィルムセンターは、65才以上300円か。あと15年後も変わっていないといいなあ(笑)善男善女ですごい人だ。

    シネマヴェーラ渋谷で、神代辰巳レトロスペクティブ

    84年にっかつ神代辰巳監督『美加マドカ 指を濡らす女(378)』
    君代(美加マドカ)は未来マユミという名前で人気絶頂のストリッパーだ。大学生たちの間に親衛隊があり、レコードデビューの話もある。しかし昔の 男との赤ん坊がいる。更に半年前から舞台俳優の神西俊一郎(広田行生)と同棲していた。俊一郎の高校時代の同級生の勇人(内藤剛志)は、文具卸のしがない アルバイト。俊一郎の劇団の地方公演の間、ベ ビーシッターのように、君代と赤ん坊の世話をする勇人。君代は、俊一郎のいない寂しさで勇人に抱かれる。それ以来仕事をサボって君代の部屋にいつくように なるが、全てに気が利いて優しい俊との違いにかえって苛立つ。翻弄されながらも、実は憧れていた君代に尽くすことに喜びを覚える勇人。
   マユ ミのオナニーショウはますます大人気だ。ダンスのレッスンに赤ん坊を抱いて付いて行く勇人。低迷するストリップ界の救世主としてプロダクションの社長(白山英雄) は、アイドルストリッパーに子供がいることが分かるとまずいので、外で時間をつぶしてくれと言う。君代のアパートの大家(三戸部スエ)は、数えきれないネ コを飼う怪しい人間だが、君代の代わりに家賃を払いに行って以来、おしめを中庭に干す勇人に、何かと話しかけてくる。君代は、あの大家は気味が悪いと言う 割には、俊と勇人とどっちがいいのかと聞くと50:50、体は俊だったが、気持ちは勇人と言っていたと言うのだ。

   
   もう仕事をしていた頃の公開なので未見だった。意外に美加マドカが女優していて驚く。こうしたキャリアのない女優の使い方は神代辰巳本当に上手い。当たりだった。

   75年東宝/渡辺企画神代辰巳監督『アフリカの光(379)』
   北海道羅臼の港に、順(萩原健一)と勝弘(田中邦衛)が流れてきた。アフリカ行きの船はありませんかと、手当たり次第に声を掛ける二人は、町の漁師たちといざこざを起こして、彼らだけブタ箱にぶち込まれる。警察署長(河原崎長一郎)は、お前らみたいな余所者はどうせどこからか逃げてきたんだろう。直ぐにここから出ていけと言われる。
    二人は翌日に金も尽きたので、何の船にでも乗せてくれと声を掛け続ける。食堂にいた老人千代松(吉田義夫)が、ウチの船に乗れと言う。老人について行くと、孫娘がトンカチで直しているが、かなりのボロ船で一人二千円だと言う。その晩も夜の街で寂しく飲んでいると、女ふじ子(桃井かおり)が抱かれながら声を掛けてきた。金がないならさっさと帰れと言う。ふじ子の客峯一(峰岸徹)とさっそく揉めて逃げ出す。宿に戻り逃げる準備をしながら殴り合う二人。
   翌朝、刺し網でニシンを引き揚げる二人と千代松老人と孫娘のサヨ子(高橋洋子)の姿がある。数日働いた二人は、女の働く店に行き、迷惑を掛けたと稼いだ金を出した。ふじ子は喜び、奢りだと言う。勝弘とふじ子がベッドの中にいる。隣で横になっている順。次はお前がやれと勝弘が言うが遠慮する順。ふじ子は、もらい湯なので、風呂に行ってくると言う。しばらく待っていると、ふじ子が、ヤクザの組長穴吹(藤竜也)を連れて来る。組長は、自分たちは顔が割れているので、賭場の見張りをしてくれれば、五千円くれると言う。順はその気になったが、勝弘は、ヤバいことになるから止めようと言う。穴吹は、笑いながら明日その気になったら頼むと言う。サヨ子の継母の久美(絵沢萌子)が、夫の徳政の留守に峯一を連れ込んでいる。下の久美の喘ぎ声に、悶々とするサヨ子。
   翌朝順が目を覚ますと、勝弘はいなかった。朝飯かと、自転車に乗り、勝弘がいると思った定食屋に突っ込ませる。しかし、中にいたのは、街の連中だ。サエ子がやってくる。一人だと危ない、みんな別々になったときを狙っているのだと言う。順は、行き倒れの女を見つける。酔って寝てしまい、雪の中で凍死したのだ。悲痛な表情で抱き締めてやる順、しかし、乳房を弄り、荷物を改め財布から金を盗む。千円だけ女の懐に戻してやる。サエ子が見ているので、何枚かの札をやり、春まで黙っていようなと言う。漁具倉庫に入る二人。寒さに震えながら、ズボンと下着を脱ぎ始めるサエ子。しかし、順は何もしないで倉庫を出る。男たちが待ち伏せしている。殴られる順。
     その頃、勝弘は千代松老人と早朝に投げた刺し網の引き揚げをしている。その夜、順は穴吹の賭場の見張りをする。気の荒い漁師たちで賑わっている。客を連れて来るふじ子は、穴吹は余所からやってきたので、ここまで三年掛かったと言う。客の中に峯一がいる。有り金を擦った峯一が大声を出して、組員たちに廊下に出された。組員たちを賭場に戻し、峯一を抱き締めるように何事が耳打ちする穴吹。暴れ熊のような峯一が大人しくなり、小さな声で呟いて帰って行った。漁師たちに痛めつけられている順は、穴吹をかっこいいと思った。翌朝部屋に帰ると、クシャクシャになった千円札を枕元に放ったまま、勝弘は顔中魚の鱗だらけにして爆睡している。順が話をしようと色々ためしてみるが、疲れ果てているのか全く目を覚まさない勝弘。
    マグロ船に乗っていた徳政(小池朝雄)が帰って来た。女房の久美を殴って、俺の留守中何をやっていたか全部知っているぞと責める。逆に燃え上がる久美にのしかかる徳政。そこに大胆にも、締めたばかりの鶏と一升瓶を下げて峯一がやってくる。お前が変な癖つけるからやりにくいと言ってニヤリとする徳政。海岸にサエ子がいるのを見つけて、後ろから抱き付き、股間を弄る峯一。
   翌日も賭場の見張りに出掛ける順。


  役者としてのショーケンの最高傑作だなあ。田中邦衛、藤竜也それぞれとの同性愛的にベタベタした男の友情、真夜中のカウボーイを凌ぐ。数パターンが延々と繰り返される音楽の好き嫌いは別れるかもしれない。、ショーケンが中年になって、こうした輝きは無くなってしまった。ひょっとすると、ショーケンは、自分の演技を受けてくれる相手がいて輝きを増す役者なのかもしれない。

2009年7月3日金曜日

東男に京女、広島つけ麺。

   昨日の酒が少し残っていたので、朝風呂にゆっくり入って読書。レジュメプリントアウトし、学校でコピー。今日は資料多く学務室で、顰蹙買う…。
映画業界についての話一コマと、著作権や法律的トピックスで、レンタルお姉さん」問題と、児童ポルノ改正論議について一コマ。J系のライブDVDも持っていられなくなるかもしれないと言った時だけ、女子全員が注目する(苦笑)。
    レンタルお姉さんに関しては誰も知らなかった。そりゃそうだよな。自分も昨日のスーパーニュースで知ったし(笑)。まあ、小説や映画のタイトルには、著作権がないのだし。NPOが「レ ンタルお姉さん」の商標登録していると言っても、商標法の第五条三項の商品及び役務の区分は、どこで提出しているのかは明らかにされていない。更に商標登録が07年11月、ピンク映画の公開は1年前の06年11月。だから、争 えないので、不正競争防止法に基づく差し止め請求の仮処分申請したんだろう。それにしても、レンタルお姉さんの活動がどれだけ知れ渡っているのだろうな。 流用ちゅうのはなあ。レンタルとお姉さんというありふれた二つの造語、そんなにオリジナリティないと思し、「レンタルお姉さん 欲望家政婦」というタイトル、どう考えても混同しないと思うのだが・・・。
    考え事をしていたら渋谷駅で、蝙蝠傘をホーム下に落とし、駅員に拾って貰う。恥ずかしい。
    虎ノ門で、京都の若い友人の兄妹が、彼らの新しいコンセプトで提案する生活着物の内覧会を開いていると、京美人の妹さんからメール貰っていたので、お邪魔する。コンセプトとかいうと薄っぺらくなってしまうが、自分たちが忘れてしまった、ホンの50年、60年前にはまだ生活の中に存在していた日本人の衣食住の衣だ。懐古趣味でもなく、もう一度歴史を学ぶ必要を感じる。兄妹の父上もいらして、何度もお目にかかっているが、初めてゆっくりと、着物や織物研究についてのお話を伺う。本にしたいと思う。忙しい友人のN氏を無理矢理誘ったが、彼はファッションとかアパレルとかビジネスのアイディアを沢山持っている人なので、面白がってくれたみたいだ。そのあと、彼が案内してくれた、広島風つけ麺の店、美味い!!どうもつけ麺に、あまりいい印象を持っていなかったのだが、ラーメンとは違うジャンルになっているのだな。
   帰宅して、本を読みながら、飲む酒を探していたら、以前友人が持って来てくれて、飲み残しになっていた黒豆マッコリを発見、ちびちび飲みだして空ける。

2009年7月2日木曜日

近所を千鳥足で。

   出版社で映像部門の役員をしている友人が、西荻のハウススタジオでの撮影に顔を出すので、飲まないかというありがたい誘い。京橋フィルムセンターに行こうと思っていたが、あっさり断念して、西荻で飲み歩く。いや酔っ払った、酔っ払った。

2009年7月1日水曜日

ヤッホー!!!

    今日は3コマの日、午前中忘れていた資料を作り、早めに学校に行き、レジュメコピー。
    最後のコマで、映画の話になり、シネマファーストデイであることを思い出し、慌てて渋谷に出て、
   
    渋谷TOEI①で、やっと木村大作監督『劔岳 点の記(375)』
    明治39年秋、陸軍参謀本部陸地測量部に、一人の男(浅野忠信)が入っていく。建物の中で一人の男(仲村トオル)と擦れ違う。参謀長室に入る。男は陸地測量部の測量手柴崎芳太郎である。陸軍中佐矢口誠一郎(國村隼)が口を開く「日露戦争に勝利したが、本土防衛のためには、地図上の空白点を直ちに埋めることが必要である。遊びで山登りをしている日本山岳会と言う輩に、帝国陸軍が剣岳初登頂を譲る訳にはいかない」と言うのだ。参謀本部大久保徳昭(笹野高史)も、前人未到の剣岳踏破に執着する。玉井要人(小澤征悦)は、かって古田盛作(役所広司)さえ果たせなかったことでもあり、陸軍には柴崎しかいないが、現実に成功するかどうかは確信はないと言って、矢口たちに一喝される。
    柴崎は、下見に出掛けることにし、まずは古田のもとを訪ねる。古田は立山などに測量点を設置し、ただ剣岳の登頂のみ果たせないまま3年前に陸地測量部を辞したのだった。やってきた柴崎を励まし、様々な助言をする。案内人として、いつも測量部が頼る芦峅村の者たちは立山信仰に篤いので、向こう村の大山村の案内人の宇治長次郎を推薦した。
   22日掛かるので、23日したら帰ってくると、柴崎は、新妻の葉津よ(宮崎あおい)に伝えて、立山に向かった。富山駅に柴崎が下車すると、長次郎(香川照之)が声を掛けてきた。既に駅留めで送った荷物も自宅に運んであると言う。柴崎は長次郎の誠実な性格に打たれる。また案内された家では、自筆での剣岳のスケッチなどを快く提供された。また長次郎の家内佐和(鈴木砂羽)も、夫の登山案内人としての情熱を暖かく見守っていた。人夫は、芦峅村の世話役で、芦峅寺総代の佐伯永丸(井川比佐志)に頼むが、うちの村の人間を長次郎の下で働かせることはできないと断られる。しかし、明治になって40年も過ぎて、昔のままでは自分たちにも損になるだろうと、資材の提供など剱岳登頂への支援は約束してくれる。佐伯は、立山信仰に訪れる人々に、慈光上人によって開山された歴史や、立山曼荼羅に描かれているような地獄を覗くことのできる場所として、剱岳は、地獄の針の山と説明をしている。
    柴崎と長次郎は、立山連峰に入る。しかし晩秋の剱岳は、登頂ルートのヒントも与えてはくれなかった。現地で、日本山岳会の小島鳥水(仲村トオル)と岡野金次郎(小市慢太郎)の二人に出会う。彼らは、ヨーロッパから輸入した最新式の登山道具を持っている。お互いライバル心を感じる。柴崎と長次郎は、厳しい冬への変化を示す激しい氷雨に打たれ下山を決意する。途中、長次郎が行者さま(夏八木勲)にお声を掛けないとこの氷雨は根雪に変わるので下山できなくなると言う。気を失った行者を背負い下山する二人。行者は、二人に、修験者たちの間の言い伝えとして、雪を背負って登り、雪を背負って下れば剱岳は神にも仏にもなる、自分たちが登れるということを信じることだと語る。
   柴崎の剱岳制覇の可能性が見えないというレポートに、陸軍参謀本部の幹部たちは激怒する。国防うんぬんよりも、結局民間団体の日本山岳会に初登頂されたらという、面子だけの問題なのだ。古田は、君は、陸軍参謀本部陸地測量部に雇われている測量士なのだから、辞める自由もあると言ってくれたが、地図の空白を埋めることこそが自分の誇りだと思う柴崎は、翌40年4月に剱岳への測量を決意する。ベテラン測量士の木山竹吉(モロ師岡)と若手の生田信(松田龍平)の三人に、長次郎が雇った大山村の宮本金作(蛍雪次郎)、岩本鶴次郎(仁科貴)、山口久右衛門(蟹江一平)三人の人夫だ。長次郎は、立山信仰の信者たちのガイドをしている息子に剱岳に登るのは止めてくれと言われる。長次郎は、息子の頬を打って、自分は山に登りたい人に登らせてあげることに誇りを持っていると言う。
  
   確かに素晴らしい映像だ。山登りなんて殆ど縁のない自分が見ても、山岳映画として絵の美しさは群を抜いていると思う。1000円だからか、お客さんも入っていたし、ヒットしているという話も本当だ。しかし、ちょっと気になるのは、ノーCG、撮影というより行のような過酷な撮影、褒められ方だ。褒められ方というより、木村大作が自画自賛するので、その通りだなあと言う感想になるんだろうな。しかし・・・・。まあ、いろいろ考えずに、役者も映像の一要素と割り切って、スクリーン見ていろということなのか。

2009年6月30日火曜日

終日、読書と惰眠。

  講義のレジュメ作りで資料の本を読もうと本棚を整理していると、結局関係のない本を読みふける。試験勉強中の高校生みたいで恥ずかしい。

2009年6月29日月曜日

女は女なのか?女の映画4本立て

   シネマヴェーラ渋谷で、神代辰巳レトロスペクティブ
    74年日活神代辰巳監督『濡れた欲情 特出し21人(371)』
   釜ヶ崎の立ち呑み屋で、一杯の酎をあおって酔っ払おうと、あたりを走り回る芳介(古川義範)。酔いつぶれて、歩道で寝てしまう。翌朝目が覚めると目の前に財布が落ちている。看板の陰に隠れて中を確かめると6万円入っている。狂喜乱舞する芳介。(駅前は何故か吉祥寺だ(笑))
   海辺の町のドライブインに、芳介の姿がある。向かいに座った客の外波山文明(本人)に、全国を渡り歩いてすけこましをしているが、今まで5人ほどこましたが、最近やれる女かどうか、一目で分かるようになってきたと自慢している。外波山は、はみだし劇場という旅廻りの役者をやっているので、どこかでまた会うだろうと芳介に言うと、女の客(芹明香)に何事かささやいて仲間(内田栄一)とトラックに乗り込んだ。女が波止場をブラブラするのを芳介は追い回す。女は、さっきのお客はあんたがスケコマシだから気をつけろと言っとったで、あんたお金持ってる?少しならと言うと、芳介を連れ込みに案内する女。最初にお金をくれと言う。女の名前はメイ子、抱きながら、一緒に旅しようとしきりと口説く芳介。行く~とメイ子が叫ぶが、どっちの意味だかは分からない(苦笑)
   浅草ロック座の旗がかかったマイクロバス、宝とも子ストリップ一座の面々が乗って全国を回っているのだ。横をはみだし劇場のトラックが抜いて行く。外波山が「夕子はーん!!!」と声をかける。とある街に入る。夕子(片桐夕子)がそとを見るとかっての自分の男芳介が女連れで歩いているのを見かける。バスを止めさせ、追いかけるが見失う。
   信州の上山田温泉、ストリップ小屋信州シャドーに宝由加里ショウと看板が掛かっている。金髪のウィッグをつけた夕子が踊っている。客席には外波山の姿も。舶来の金髪やでと陰毛を外波山にあげる夕子。ストリップ小屋の夜は、楽屋に雑魚寝だ。ヒモの修(粟津號)が女とやっていると、隣に寝ている英吉(高橋明)も始めた。まゆ(絵沢萌子)の夫の久作(庄司三郎)は、女房が寝ているのをいいことに、夕子に手を伸ばし、前からすきやったんや、お前かて芳介に操たててもしょうもないでといいながら迫っている。抗う夕子。その最中まゆが目を覚まし、男が逃げたからって、人の旦那取るような真似するんやないと怒って、夕子の頬を打つ。久作は、まゆとの赤ん坊を抱えて、おかあちゃん怖いなあと言って他人事だ。翌朝、信州シャドウを出ていく夕子の姿がある。社長の前に、久作が出て、大金をお借りしていながら、こんなことを起こしてしまって、お詫びのしようもございませんと言って、皆が止める間もなく、指を詰めた。痛て~といいながら血だらけの手で、医者を探して走り回る久作。
    青森のストリップ小屋、芳介は、メイ子に、浅草ロック座の女社長は、30歳を超えてからストリッパーになったが、今では何軒もの小屋の社長になった。浅草ロック座といえば、日本中の人が知っているストリップと軽演劇の殿堂だ。トルコ嬢はお湯に一日中入っているので肌が荒れる、パンパンは最後は病気になる、ストリッパーは裸を見せるだけだと口説いている。テープレコーダーのスイッチを入れると、流れて来たのはスパイダースの「弘前のお婆ちゃん」だ。音楽に合わせて踊り始めるメイ子。そこに、衣装の入ったスーツケースを持った夕子が現れる。芳介にあんた探したんよと言う夕子。三人で喫茶店で話し始める。わしは、どっちも愛しているので一方を選ぶことはできないので、二人であんじょう話して決めてくれと芳介。夕子とメイ子は、そんなこと言われてもと困惑顔だ。それなら3人で旅しようか、レズショーは金にもなるし・・・と芳介。雪の中、三人は歩いている。急におしっこがしたいと言って、豪快に雪に小便をする夕子。
     どこかの地方都市の商店街の真ん中、果物屋の前で、軒下劇場、混乱出血鬼という幟を立てた外波山文明、内田栄一が渡世人姿で、芝居を始めた。果物屋の店員にいきなり仁義を切り始める外波山、最後には内田に斬られ、赤い血糊をバケツで掛けられ、塩を撒かれる。通行人は当惑顔で、離れたところで見ている。
    ストリップ小屋の舞台に、夕子とメイ子が上がる。二人のレズショウは大人気だ。客席には外波山文明の姿もある。大歓声の中、荒い息で舞台を降りてきた二人。メイ子は、こんなショウを1日4回もやったら、体が持たないので、やめさせてもらえないかと言い出す。10日間の契約があるんやでという芳介。三人で喫茶店に行く。お前、いちいち本気で感じているからだと芳介。メイ子は、すっかり夕子にくっついたままで、私も引っ張られやすい性格だから本物のレズになってしまいそうだしと言う。メイ子をなでながら、そうやな契約もあるから、こんどから私が責められる側になろうかと言っている。夕子がおしっこをしたいとトイレに走り出すのを追いかけて、布団部屋で夕子にのしかかる芳介。
   夜、安居酒屋で、芳介が呑んでいる。隣には外波山がいる。気の強い女がいい、気の強い女は案外優しいもんだ、優しそうな女は、誰にでも優しいと愚痴を言う芳介。近くでひとりで飲んでいた女(吉野あい)をつける二人。家に帰ってしまったらあと付けても無駄なんじゃないかという外波山に、あの女は地元ではないという。外波山は、女に後ろから来る男はスケコマシであんたを狙っているので気をつけろと言う。しかし、女は、歩いてきた警官に、この男は痴漢ですと突き付け、外波山はブタ箱に入れられる。芳介はそのまま、列車まで付いて行く。女がトイレにいった時に後をつけ、女を殴り強姦する。性懲りもなく、一緒に旅に出ないかと誘っている芳介。女は小さく「行く」と叫んだ。外波山が入っているブタ箱に入れられる芳介。あのスケ感じていたくせに駅についたら公安に突き出しやがってと芳介。二人で、春歌を歌う。
    久作が突然小屋に現れ、ヤクザになったと言う。兄貴と遠くまで旅をしなければならなくなったので、社長の車を貸してくれと頼む。大金を借りたまま姿をくらましていた久作は、勿論断れらる。子供をおぶったまゆが、戻って来てくれと哀願しても出ていく久作。
   なぜか、芳介が列車内で強姦した女とメイ子が二人風呂に入っている。女の名は、さゆり。さゆりに、浅草ロック座の社長は、30歳を過ぎてから裸になるだけで、何軒もの小屋を持つまでになったことと、浅草ロック座は、30年、40年も続くストリップと軽演劇の殿堂で、全国に知れ渡っていると話している。夜ロック座の女社長が寝ていると、長ドスを持った久作が現れる。目をさました社長が、久作金を貸してほしいのかと言うと、突然、長ドスを突き出す。騒ぎに気が付いた男衆も駆け付け大騒ぎになっている。今日も、浅草ロック座では、沢山の踊り子が踊っている。メイ子とさゆりのレズショウが始まった。 

   80年にっかつ神代辰巳監督『少女娼婦 けものみち(372)』
   暗い蔵の中で、茶箱の中から古い人形などを出している少女がいる。古い本と幼児の博多人形を取り出し、セーラー服を脱ぎ自分を慰め始める。海辺の街を、サキ(吉村彩子)と外男(夢双紋)が自転車を漕いでいる。海岸にいる二人。カモメの大群が騒がしい。外男は、昨日カモメに石を投げて殺したと言う。悲しい鳴き声をしながら海に落ちて行った姿を忘れられないと言う外男に、止めてと叫ぶサキ。スカートのまま逆立ちをするサキ。サキの体を抱きしめて股間に顔をうずめる外男。浜辺の小屋にサキを連れて行き、繋がろうと言う外男。繋がると言う言葉にサキの心は動いたが、初体験は苦痛だけだった。濡れることも気にせず、波打ち際で横たわるサキ。外男は自転車で走り去った。
    雨が降り出し、ずぶ濡れで自転車を押すサキ。目の前にダンプカーが止まる。運転していたのは、アタル(内田裕也)だった。アタルは、サキの母親に言わせれば、女をやることしか考えていない男だ。先ほどまで助手席に乗っていた遊子(水島美奈子)が、仕事を休んで、買い物に付き合ってくれと甘えるのを面倒くさくなって、無理矢理降ろしたばかりだ。乗らないかと声を掛け、自転車を荷台に放り上げ、サキの身体を助手席に押し上げた。
    アタルはお前の母ちゃんは、男が出来る度に屋台を作ると聞いたが本当か?と尋ねる。5台、5人だとサキ。お前を抱きたいが男を知らないなと言うアタルに、馬鹿にするなと答えるサキ。ラブホテルに入る二人。シャワーを浴びているアタルの所に行って、さっき経験してきたのできれいにしてと言うサキ。アタルを受け入れるが、苦痛しかないサキ。
   サキの母親(珠瑠美)が電話をしながら、新しい男(高橋明)と抱き合っている。あんたあたしと屋台を曳いてと言う母親。夜の海辺の屋台、サキと母親がいる。ぐっと酒をあおったサキが、お父さんはどういう人だった?と尋ねる。母親は、アル中でどうしようもい男だったから忘れたと答える。お父さんとやった時は感じた?と尋ねるサキ、女はいつでも感じる、強姦されても感じると母親。感じない時はどうしたらいい?とサキ、感じるまでやるのさと母親。酔っ払って屋台を引く母子。足がもつれて砂浜に転げ落ちる。転がる母親に母ちゃん大好きと言って、乳房を吸うサキ。


     池袋新文芸坐で、「グランプリ女優」と呼ばれた、大映の大輪 京マチ子のすべて
     61年大映東京吉村公三郎監督『婚期(373)』
     静(若尾文子)は、唐沢卓夫(船越栄二)のもとに嫁いだ。唐沢は、春山荘の社長で金持ちだが、姉の冴子(高峰三枝子)は一度結婚したが離婚後デザイナーとして自活しているが、妹の次女波子(若尾文子)三女鳩子(野添ひとみ)という小姑と、弟の大学生典二郎(六本木真)らが同居している。波子と鳩子は、家庭のために犠牲になっていると貞淑妻顔をした静がどうも気にくわない。ある日、静に、卓夫が外に妾を囲っていて子供までいるという手紙が来る。

     61年大映東京吉村公三郎監督『女の勲章(374)』
     建築現場、既に内装工事となっている。そこに大庭式子(若尾文子)の姿がある。日輪のステンドグラスをどうしても入れたかった式子は、うっとりと眺めている。そこに、八代銀四郎(田宮二郎)がやってくる。先生来てはったんですか、双葉洋裁学院の園長の安田兼子(村田知英子)と交渉してなんとか洋裁学校認可証は、開校日まで出してくれることにはなったが、あの婆さん食わせ者だっせ、工務店の方も、建築費を値切っていたら、どうも見積書とタイルの使用枚数が違っていることが分かった、ちゃんとした工事をやり直させまっせと言う。今から山形組の事務所に行くと言う銀四郎に、よかったら、心斎橋の鶴の津で食事でも取りましょうと声を掛ける式子。
   そこに、式子の弟子の三人、津川倫子(若尾文子)、坪田かつ美(叶順子)、大木富枝(中村玉緒)がやってくる。ようやく開校ですねと言う娘たち。彼女たちは、式子が4年前に神戸の魚崎にある自宅で開いた洋裁教室の生え抜きだった。立体的な生地取りの上手い倫子、型紙の正確さにすぐれたかつ美、丁寧な縫製の富枝は、船場のいとはんだった式子が、両親を亡くし見よう見まねで洋裁教室を開き、関西ファッションデザイナーとして注目され始めた陰の戦力でもあったのだ。食事をしましょうと言う式子に、嬌声を上げる娘たちだが、銀四郎も一緒だと聞いて、顔を曇らせる。
   夕食が終わり、コーヒーを飲んでいると、銀四郎は、まだ仕事があると言って去る。いいところのボンボンなのに、家業を継がないで、なぜか式子の学校新設に奔走している銀四郎には、どうも気味悪いものを感じると言う倫子。商売のこととか分からないことをみんなやってくれる銀四郎に頼りきりの式子。その夜、倫子の部屋に、三ッ輪織物の販売宣伝部の野本敬太(内藤武敏)が訪れる。二人は深い関係だ。式子は大庭洋裁室と看板が掛かっている洋館に帰宅する。先代から仕えている女中のきよ(滝花久子)がコーヒーを持ってくる。この家の玄関の脇で始めた学校が4年で、洋裁学校を開校するところまで来た。両親に見せたかったと式子が言うと、涙を拭うきよ。
    聖和服飾学院の開校式だ。関西デザイナー連盟長の大原泰造(三津田健)と妻でデザイナーの大原京子(細川ちか子)がやってくる。万事如才なく立ち回る銀四郎。学院長としてあいさつをする式子。入学生、来賓、教師たち満場の拍手に包まれる。数日後。服飾デザイナー協会の会合が開かれている。合同ファッションショーを開催するので、、運営委員の選挙が行われ、双葉服飾学院の安田兼子(村田千栄子)が運営委員長に選ばれる。安田は、繊維メーカーからプリント生地3反の無償提供と10万円の協賛金を集めましょう、みなさんお付き合いありますよねと言う。開校したばかりの式子にそんなコネはない。どちらかご紹介いただけないでしょうかと式子が発言すると、ご紋章の方ねと、船場のいとはん上がりだから、ご実家のご紋を飾られた方ねと式子を辱める安田兼子。参加していた伊東歌子(日高澄子)が、新人への小姑いじめみたいなことをお止めになったらと安田に食ってかかり大騒ぎに。
    
   
   

2009年6月28日日曜日

昭和の映画4本

    神保町シアターで、川本三郎編 昭和映画紀行 観光バスの行かない町
    56年新東宝清水宏監督『何故彼女等はそうなったか(367)』
    愛媛県丸亀市の丸亀城に、終戦後の混乱の中で生まれた非行少女たちの更生施設がある。午前中は、勉強、午後は手内職をしている。今日も逃亡癖のある畑弘子(中村雅子)がやって来た。園長(高橋豊子)と小田先生(香川京子)は、ウチの子たちは、片親か両親ともにいない家庭がほとんどだけど、あなたはご両親がいて、家計も豊かなようなのに、何で家が嫌なの?と聞くが弘子は何も答えない。小田は教室に連れて行き、皆に紹介する。長谷川米子(三重明子)たちと同室だと言って、荷物を運んで上げてと頼む。それ運んでと女中扱いに米子はムッとする。部屋の押入に荷物を入れ、小田が目を離した隙に、弘子と米子は取っ組み合いの喧嘩だ。小田や他の生徒たちが駆け付けて引き離す。
   その夜、寝静まった廊下を忍び足で進む米子の姿がある。米子は小田の部屋に入ってくる。驚いて起きた小田に、先生のことが好きになったので布団に入っていいかと尋ねる。実は私は妾の子で、実母が生きているかどうかさえ教えて貰えないのだと告白した。小田は優しく抱き締めてやり、自分の部屋に帰りなさいと諭す。頷いて小田の部屋を出て行く弘子。弘子のパジャマのポケットから落ちたらしい煙草(光)を見つける小田。翌日城址の外れまで、弘子を連れて行く君子(三ツ矢歌子?)。昨晩部屋を抜け出したことを黙っていて欲しければ、煙草を寄越せと言う。持っていないと言うとあんたの手のヤニ焼けを見ればすぐ分かると言い、服の縫い目や折り返しを改める君子。パジャマのポケットに入っているから上げると言う弘子。

   54年エイトプロ五所平之助監督『大阪の宿(368)』
   大阪キタのおでんや蛸政に、三田喬一(佐野周二)と住友(十朱久雄)がやってくる。三田は東京で重役を殴って大阪支社に左遷されてきた。まだ、下宿が決まらず、会社の宿直室に寝泊まりしているのだ。保証金など高いし、なかなか手頃な下宿と言ってもと蛸政の主人(中村是好)が言う。酔いつぶれていた年寄り(藤原釜足)が、いいところがあると言う。土佐濠にある旅館酔月に行けと言う。
    さっそく翌日、三田は酔月に下宿する。沢山の本を持って転がり込んだ三田を、女中たちは学校の先生だと思っていたらしい。失業中のコックの夫を持つおりか(水戸光子)、夫が戦死、息子と別れ働くおつぎ(川崎弘子)、会社の重役をしている長逗留の客野呂(多々良純)と関係しているらしいアプレガールのお米(左)、死んだ夫から残された旅館の格式を守るといいながら、欲深で、人使いの荒い女将(三好栄子)、昨夜、酔月を勧めた酔っ払いは、女将の兄だが、小遣いを貰う代わりに雑用すべてやらされているおっさんだった。
   三田が出勤する。途中ポストに病身の母親に手紙を出そうとするととても美人な娘と出会い見とれる三田。会社に出ると支店長(田中春男)が寄ってくる。支店長はどうも東京から社員が来るのは好きではないらしい。

   61年東宝橋本忍監督『南の風と波(369)』
   高知県足摺岬の先端に近い漁村、バスがやってくる。ここから折り返して戻って行くのだ。バスから孫娘を背負った井上たつ(賀原夏子)が降りてくる。歯がいたくなって、町まで出たが痛くなくなったと話している。バス停前の雑貨屋の圭吉(浜村純)は、たつの兄だ。そこにやってきた組合長の川島(松本染升)と、今日戻ってくる筈の太平丸の話をしている。浜では、地曳網を曳いている。老人の駒治(藤原釜足)が、夕飯の菜にするくらいのカマスを分けてくれと寄ってくる。網元は、昔と違って捕れる魚の量も少ないので駄目だと言う。網を曳いていた美しい娘加代(星由里子)が、私が働いて貰った分から分けてあげると申し出た。
   沖に、太平丸が現れたと話す。機関長をしている井上峰男(小池朝雄)の妻道子(富士栄喜代子)が埠頭まで走ってやってくる。顔は日焼けして真っ黒だ。船長の竹内栄吉(西村晃)、甲板員の原順平(夏木陽介)と?の若者二人は大阪から運んできた荷を降ろす。炭の荷捌きの指示は、峰男の弟の英次(田中邦衛)が

   池袋新文芸坐で、「グランプリ女優」と呼ばれた、大映の大輪 京マチ子のすべて
   53年大映成瀬巳喜男監督『あにいもうと(370)』
   多摩川の河原で川砂利をダンプに積む作業をする男たちの中に老人夫喜三(宮嶋健一)の姿がある。そこにかっては七艘の川船と70人の人夫を束ねる川師の親分だった赤座(山本礼三郎)が現れ、声を掛ける。喜三!上がったら酒を飲もうと誘う赤座。ふらふらと歩く赤座が、アイスキャンデー屋の前を通り過ぎる。中からりき(浦辺粂子)が出て来て、お父さんと声を掛けるが、気がつかない。
バスが辻屋前と言う停留所に止まり、赤座の娘の‘さん'(久我美子)が降りてくる。バス停前にある辻屋製麺所の鯛一(堀雄二)に声を掛けると、さんの姉のもんが4,5日前に帰って来たと言う。しかし、鯛一の養母とき子(本間文子)は、鯛一とさんが話をするのを快く思っていないようだ。男をからかって姉さんの二の舞になると酷いことを言うとき子。
    さんが歩いていると石屋の親方が、さんちゃん休みか?伊之吉に彫らせたい石があるが、金を貰うと仕事サボってしまうので、用があると伊之に伝えてくれと頼まれる。さんは、河原の店に顔を出し、もんのことを聞く。突然、奉公先のお寺から暇を取って帰って来たと言う。さんは竹張りの下駄を買ってきていた。喜ぶりき。
    その頃家では気怠そうに裏庭の井戸水で体を拭くもん(京マチ子)の姿がある。浴衣に着替え、横になるもん。そこに伊之吉(森雅之)が帰ってくる。もんが寝ていることに気がつき、こんなふしだらな妹が家にいると迷惑だ。どこの相手か判らないガキを孕んで帰ってきて、犬だか猫だかが出てくる前に早く始末しやがれと毒づく。子供の時から可愛がっていた妹が妊娠して帰って来たことを、どう受け入れればよいのか分からず乱暴な罵りを吐いてしまう伊之吉なのだ。もんが涙を流し、荷物をまとめていると、りきとさんが戻ってくる。引き止めようとするが、お袋が甘いからこんな自堕落な女になったんだと言う伊之吉。
    赤座は、今でもツケが唯一きく安居酒屋で、喜三を相手に呑んでくだを巻いている。堤防がコンクリートで固められるまで、赤座の組の天下だった。県の進める近代土木の前にすっかり出る幕はなくなってしまったのだ。



もん(京マチ子)伊之吉(森雅之)さん(久我美子)鯛一(堀雄二)小畑(船越英二)赤座(山本礼三郎)りき(浦辺粂子)貫一(潮万太郎)喜三(宮嶋健一)坊さん(河原侃二)豊五郎(山田禅二)とき子婆さん(本間文子)