2009年3月7日土曜日

50歳記念

 高校の同窓会があり、国立まで出かける。2年と3年の時の担任が出席。こちらも憶えていないようなことを話してくれるのは、なかなか教師というものは凄いものだなあと思う。目が少し不自由だったが、元気そうなお姿が嬉しい。結局、飲み過ぎて25時過ぎに酔っ払って帰宅。

2009年3月6日金曜日

愛のかたち。

     朝から、大門で、睡眠クリニックと歯医者。原宿で、とある立ち上げプロジェクトのミーティング。いきなりビジネスの話だ。ベネフィットシェアなので、早めに糸口をつけないと金にならないなあ。しかし、横浜方面に繋げられそうで少しうれしい。

    シネマヴェーラ渋谷で紀伊國屋書店レーベルを讃える
    58年新東宝中川信夫監督『毒婦高橋お伝(132)』
    明治初年の東京、逃げる女(若杉嘉津子)と追いかける巡査たち。屋敷町の中を走り続け、墓場に逃げ込む。中で追っ手を撒きまんまと出てくる女。ちょうど通りかかった人力車に乗り込み、急いでおくれと車屋をせかし、ほくそ笑む女。どんどん加速し走り続ける車屋。頼んだ方角と違うじゃないかと言っても返事はない。しばらく走り続けた上で停まる。車屋は手拭いを外し、お伝久しぶりじゃねえか、お前は忘れたかもしれねえが前の夫の陣十郎だという車夫(中村彰)。あんた、世が世なら200万石の古賀陣十郎ともあろう男が落ちぶれたもんだ。まあ放蕩三昧で私を泣かせ続けたとんでもない男だから無理もないとお伝。そこに唄を歌いながら子供が通りかかる。お伝覚えてねえか、おみつ。男手一つで育ててきたが、今でも寝ぼけて母ちゃんと夜中に言ったりしている。そのおみつは、今病気で寝込んでいるが医者にかからす金もねえと言う陣十郎に持っていた金を渡すお伝。
    数日後、洋装の貴婦人が、宝石商舶来屋を訪れる。ダイヤモンドやサファイアを見せて貰う。ダイヤを下に落し、日よけ傘の先に嵌めこんで盗む。ダイヤが無くなり、店の番頭たちは、店の奥にお伝を連れていく。サイフの中にも、女中が服を脱がせても見つからない。そこに舶来屋の主人大沢伊兵衛(丹波哲郎)が帰ってくる。葉巻をくゆらせながら何も言わない伊兵衛。そこに、巡査並河和馬(明智順三郎)がやってきて、全裸にまでさせるのは行き過ぎだ、自分が責任を持つと言って引き取った。途中まで送った並河は、しかし、日傘の先にダイアモンドが輝くものを発見する。家がすぐ近くなのでせめて着替えだけでもさせてくれと言われ、認める並河だったが、お伝が借りている部屋に引きずり込まれ、寡婦の暮らし向きの厳しさに初めてやったと泣き落しの上、色仕掛けで垂らし込まれ見逃してしまう。
   お伝は、夫の待つ家に帰る。夫の高橋浪之助(松本朝夫)は肺病を病み伏せっている。外泊ばかりして不貞を罵りながら、一緒にいてくれと懇願する浪之助。あんたの薬代を稼がなければならないのだからと外出するお伝。並河は、東銀座の警察署にいる。先輩の倉田格之助(舟橋元)が妹の梢(山田美奈子)を連れて来て、今晩は妹が腕によりをかけて御馳走を作ると言うのでうちに来てくれと誘うが、今晩はどうしても駄目だと断る並河。いそいそと、お伝が借りている家に入っていく、若い並河はお伝の虜だ。その様子を窺う男がいる。舶来屋の番頭、長虫の市三(芝田新)だ。
   倉田格之助が、古物商の元に宝石泥棒の触れ書きを渡している。見つけたら知らせるようにと言われて肯く主後藤吉蔵(沢井三郎)。しかし、裏に回り、まっとうなことばかりはやっていられないと言う吉蔵は、お伝の持ってきた宝飾品を買い取る。勿論舶来屋から盗んだダイヤモンドも。やはり、店の外には市三が見張っている。
   お伝の前に、市三が現れ、古物商の金蔵はみんな吐いたぜと言い、ちょっと来いと伊兵衛のもとに連れていく。伊兵衛は、お伝の手を取り、万引きまどさせておくには惜しい腕だと言う。札束と拳銃をお伝の前に投げる伊兵衛。屋敷の地下牢を見せる吉蔵。中には拐かしてきた娘たちが泣いている。十分な分け前は頂けるんでしょうねとお伝。帰ろうとするお伝を無理やり、手込めにする伊兵衛。
   口入屋から肩を落としてきた娘に仕事を世話すると声を掛けるお伝。簪を見ている娘に話しかけるお伝。並河が、お伝が借りている部屋を訪れる。しかし、貸し間という札が下がっていて、大家に数日前に引っ越しましたよと言われ、肩を落とす並河。下宿に戻ると、梢が待っている。自分には思う人がいるので諦めてくれと言う並河。
   しばらく後、並河が巡回していると、逃げてくるお伝。追いかけてきた同僚たちに、こっちには来なかったと庇ってしまう。結局、舟宿舟忠に入る二人。もう、お伝から離れられない並河。
   雨の中、お伝が陣十郎と会った神社に現れる。陣十郎は、おみつが重病なので、金を無心する。一度会わせてくれというお伝に、ようやく母親を忘れた娘に会わせるわけにはいかないと言う。去る陣十郎を涙で見送るお伝。お伝からの金で酔っ払って家に帰り、お腹が空いたというおみつに、酒を買いに行かせる陣十郎。市三は、陣十郎の部屋まで尾行している。
   市三に教えられ、おみつの元に行くお伝。隣の老婆が、ほとんど帰らない父親と二人で可哀そうな娘だと言う。お伝は、おみつに人形を渡し、老婆に金を渡し、陣十郎に内緒で、おみつに食べさせてやってくれと頭を下げる。
    久し振りにお伝が、帰宅すると夫の浪之助は荒れ狂う。日本刀を抜き、斬ってやるというが、吐血して倒れる浪之助。困ったお伝に、知り合いの箱根の温泉に連れて行って湯治させるのがいいと言う吉蔵。駕籠に乗せ、箱根に向かう、浪之助と市三。しかし、六郷の渡し場まで来ると湯治用の金を奪った上、刺殺して川に死体を流す。市三は戻ると、お前の望みどおり浪之助を始末してやったぜと言う。怒るお伝と揉み合になる吉蔵。銃声がして吉蔵は倒れる。伊兵衛が拳銃を握っている。
    市三の死体を川に捨てる伊兵衛とお伝。そこに警ら中の並河が通りかかる。逃げ出すお伝を捕まえて驚く並河。お前は人殺しまでしたのかと言い、捕縛して連行する並河。急に座り込み、さしこみなのでどこかで休ませてくれと言うお伝。結局、舟宿みよしに二人の姿がある。浅川の子を身ごもっている。子供がかわいそうなので一緒に逃げてくれと言うお伝。翌朝、並河が目覚めるとお伝はいない。簪と、妊娠しているというんは嘘だと告白し、謝罪する手紙が残されていた。
   倉田格之助と梢が並河の下宿に来ている。講道館の試験もあるし、生活を改めろと迫る倉田に、放って置いてくれと言って部屋を出る並河。梢は、外まで追いかけ、いつまでもお待ちしていますと言う。お伝は、再びおみつの元に行く。しかし三日前亡くなったと言う。陣十郎はもう長いこと帰ってないという。泣き崩れるお伝。
   1年後、横浜に金獅子感という外人向けの高級カジノがある。そこでお伝はマダムになっていた。伊兵衛がやってくる。二人は本拠地を横浜に移していた。お伝の背中には、夜叉の刺青がある。その頃、横浜署に倉田が来ている。行方不明の並河と、並河を追って姿を消した梢を、横浜で見かけたという話を聞き、探したいと署長に言う倉田。このあたりは、治外法権的な場所も多いので気をつけるようにと言う署長。その時署内で大騒ぎが起きる。酒に酔って暴れている男がいる。並河だ。
    また、お伝の元夫の陣十郎も、横浜でお伝が儲けているらしいと聞いて金獅子館にやってくる。陣十郎を唆して、伊兵衛を殺させようとする、揉み合いになった二人を、拳銃で殺す。並河は、お伝を求めて金獅子館にやってくる。地下に降り、何とかお伝に迫るが、伊兵衛の貯めた金にしか興味はないと言って突き飛ばされ、ランプが倒れ炎が上がる。近くに、牢があり、女たちが閉じ込められている。その中には梢の姿もあり、扉を壊し、逃がす並河。金を包んだ風呂敷包みを抱えたお伝は、しかし倉田に取り押さえられる。倉田のサーベルを抜き自殺しようとするところを取り押さえられた。横浜から新橋に向かう陸蒸気の中に、梢と並び座っている虚ろな表情の並河。視線の先に、倉田に捕縛されたお伝の姿がある。
   毒婦・・・。

    70年クロード・シャルブル監督『肉屋(133)』
    フランスの小さな田舎町トレモラ、エレーヌ(ステフィーヌ・オードラン)は、同僚レオンの結婚式で、肉屋の主人をしているポポール(ジャン・ヤンル)と親しくなった。ポポールは、父親が嫌いで、15歳から軍隊に入り10年以上軍隊にいた。アルジェリア、インドシナ・・。父親が亡くなり肉屋を継ぐために故郷に戻ってきていたのだ。若くして美しいエレーヌは10年前にこの小学校に来て、3年前から校長をしている。結婚式の帰りにいい肉が入ったら持って行っていいかと尋ね、その日子羊の足を持って学校に現れるポポール。その日の夕食をエレーヌは誘い、二人は急速に親しくなる。
   しかし、小さな町は、警察の車両が走り回り、騒がしくなる。レオンの結婚式にも列席していた少女が、カンタルベールの森の中で、惨殺死体として発見されたのだ。エレーヌはポポーロを誘って、学校の裏の丘にキノコ採りに出かける。そこで、エレーヌは、10年前に辛い別れがあり、そのためにこの村にやってきた。それから傷つくことが、新しい恋が出来ないのだと言う。誕生日プレゼントとしてポポーロにライターをプレゼントするエレーヌ。
   数日後、エレーヌは生徒たちを連れて洞窟に見学に行く。そのあと、休憩をしようとした山で、結婚したばかりのレオンの新妻が殺されているのを発見する。殺害現場に自分がポポーロに渡したライターが落ちていてショックを受けるエレーヌ。郡警察の刑事が、事情聴取に現れ、エレーヌと生徒たちに、何か気が付いた事はなかったかと尋ねる。全く犯人の検討がつかなく刑事もいらだっている。結局エレーヌは、ライターのことを話さなかった。引出しにライターをしまうエレーヌ。夜ポポールがやってくる。死体を発見したと聞いたが大変だったろうと慰めるが、怯えるエレーヌ。涙を流すエレーヌ。疲れているだろうから僕は帰ると言って、ポポールは煙草を出してライターで火をつける。私のライター?そうだよ、よく火が付くから手放せないんだというポポール。エレーヌの涙はうれし泣きに変わり、もうしばらく一緒にいてくれと言うエレーヌ。
    疑惑は晴れ、再び二人の交際は続いた。殺された新婦の葬儀に雨の中参列する二人。刑事が寄ってきて、折り畳みナイフが兇器だったことが分かっただけで、全く手掛かりがなく迷宮入りしそうだと嘆く。殺人現場を見てしまったエレーヌの気持ちを和らげるためにエレーヌの部屋の天井のペンキを塗り替えをし始めるポポール。ある日、エレーヌの外出の間、苦手な算数を教えて貰っている学級委員の?とふたり留守番で、脚立に乗りペンキ塗りをするポポール。ペンキをこぼしてしまい、ベンジンと布の場所を探すポポール。学級委員から布はそこの引き出しに入っていると教えられ、引き出しの中にライターを見つけるポポール。ポケットの中に入れるポポール。そして、エレーヌが帰ってくると、ペンキを乾かさなければならないからと帰って行った。エレーヌが、煙草を吸おうとライターを探すと、引き出しには無くなっている。誰か引出しを開けた?と聞くと、布を探してポポールさんがという返事に再び寂しい目になるエレーヌ。
    夜、不安になり、学校の全ての扉や窓の鍵を閉めまくるエレーヌ。しかし、ポポールが外から声を掛ける。具合が悪いので帰ってくれというエレーヌに、今晩中に話がしたいんだと言うポポール。断ったが、教室の裏口からポポールが入ってきた。一瞬教室が暗くなる。自分の腹に折り畳みナイフを刺したポポーロの姿がある。2CVの助手席に瀕死のポポールを乗せ、病院へと向かうエレーヌ。
    ステフィーヌ・オードランの美しさ。ロンパリ気味の灰青色の眸と、薄い唇と、ブロンドのショートカット。静かな悲しみを湛えた表情と、10年ぶりの恋心に華やいだ表情との微妙だが、非常に対照的な表情。サスペンスだが、哀しいラブストーリーだ。

    ユーロスペースで、園子温監督『愛のむきだし(134)』
    本田ユウ(西島隆弘)は小学生時代に母親(中村麻美)を亡くす。クリスチャンだった母は、マリア様のような結婚相手を見つけて紹介してと言っていた。父親のテツ(渡部篤郎)は、妻の死後、聖書の勉強をしてクリスチャンから神父になった。父は、ユウに毎日厳しくその日犯した罪を告白し、懺悔を強いた。次第に懺悔し、主と父から許されるために、悪い事をするようになるユウ。
    不良達の仲間になり、万引きや喧嘩をするようになるユウ。ある時不良仲間から姦淫こそが、一番神父を怒らせるだろうから、パンチラマスターに弟子入りし、パンチラの腕を磨く。しかし、そんなユウの行動をチェックし、教会や家庭を盗聴する怪しげな女コイケ(安藤サクラ)たちがいる。
    ある日教会に現れた派手な身なりの女カオル(渡辺真起子)が、教会に通いつめた末、テツに激しく迫り、一線を越えてしまってからテツは変わっていく。しかしカオルは一向に結婚しない(神父を辞めない)テツに愛想を尽かす。ユウのパンチラは神業になり、不良仲間が弟子入りし、チームとして活動するように。週に一度各自がベストショットを競っていたが、ある時、初めてユウは負け、女装して街で、好みの女の子に声を掛けてキスをするという罰ゲームとなった。女囚さそり風のファッションが、割と似合ってその気になったユウ。目の前で、女子高生が沢山の不良たちに囲まれている場面に遭遇。助けに出ようとするが、娘もとても強い、ユウと二人で、大勢の不良たちをバッタバッタとなぎ倒す。お互いに非常に魅かれあう二人。
   不良グループをやっつけ、ヨーコ(満島ヒカリ)に名を聞かれ、さそりと答えてしまうユウ。かわいいわねと言ってヨーコにキスをするユウ。今まで、ユウは宗教的な抑圧から男性器が勃起したことはなかったが、その日からヨーコの事を考えると勃起が治まらなくなってしまう。一方ヨーコも、女たらしで、何度も母親を変える父親のもとで育ち、近親相姦さえ、されそうになったこともあり、男性に対して激しい憎悪を抱いて育った。最後に父親が連れてきたのがカオルで、まるだしの愛に生きるカオルとは何故か馬があい、昔の男を忘れられないと言うカオルに付いて父親を捨てて出て来たのだ。カオルからはレスビアンは変態だと言われるが、さそりのことを想うと胸が熱くなり眠れないヨーコ。
   翌日転校生としてヨーコがユウのクラスにやってくる。ユウはヨーコが気になってしょうがないが、ヨーコにはユウがさそりだとわからない。ジロジロ自分を見るユウに虫唾が走る。しかたなしに、ユウは再び女装し、さそりとしてヨーコの前に現れる。さそりに会えたことでヨーコは大喜びだ。別れ際に携帯番号を渡すユウ。その夜、テツは会って欲しいと言ってユウを夕食に誘っていた。ユウの悪い予感の通りカオルが現れる。しかし、カオルの娘としてヨーコが来たのには驚く。ヨーコもカオルが結婚することは認めたが、まさか同じクラスの気持ち悪い男が家族になるのは耐えられない。席を外し、トイレでさそりの携帯に電話をするヨーコ。慌てて自分も男子トイレに行って、たぶんその男は、あなたが家族になることを知っていて、学校でも気になっていたんじゃないか、兄と認める努力をしたらどうかと諭すユウ。それから、ヨーコは毛嫌いする気持ちを押し隠してユウを兄として接するようになる。
    隣の部屋で、ヨーコのことを考えると勃起してしまうが、電話では、さそりとしてヨーコの相談相手になるユウ。しかし、ユウの周囲を徘徊するコイケの陰謀は徐々に姿を現す。コイケは、ゼロ教会という新興宗教の地区責任者をしている。ゼロ教会は、洗脳で狂信的な信者を作り、集金マシンとして社会問題になっている。コイケは、父親(板尾創路)から家庭内暴力を受けて育ち、クラスメイトの男子を刺殺し少年院に入り、その後父親が脳溢血で倒れた際も、父親の男性器を切除している。コイケがユウとヨーコのクラスに転校してくる。そこに、ヨーコの指示で、さそりに復讐すると不良学生が現れる。コイケは彼らを叩きのめし、ヨーコに自分はさそりだと告白する。初めての出会いや、さそりとヨーコしか知らないことを知っているコイケをさそりだと信じるヨーコ。次第に、コイケはユウの家族に入り込んでくる。まずは、ヨーコの家庭教師として、次に、テツとカオリたちとも親しくなり、カオリとの結婚が教会によって認められずに悩んでいたテツもコイケを信奉し始める。
  ある日、コイケはヨーコやテツ、カオリに、ユウの盗撮とヨーコの下着を盗んだことをばらし、一気に家庭内で孤立させる。また学校でも教室内にユウが撮ったパンチラ写真をばら撒くことで退学に追い込んだ。ヨーコへの思いに苦悩するユウは、さそりの姿でヨーコの前に現れ、自分がさそりだったと告白するが、ヨーコは激しく否定し走り去った。居場所の無くなったユウを不良仲間は支えてくれた。しかし暫くして家に戻ると、家族は失踪している。コイケたちゼロ教会からヨーコに会いたいなら、あるAVメーカーのオーディションを受け、活動するように指示され、従うユウ。変態は、性欲ではなく原罪だと言うユウは、そこに来ていた変態やAVメーカーの人間を感動させる。それから盗撮ビデオを撮り続けることになるユウ。
   変態さん集合というイベントに変態神父として出演し、参加者の懺悔を聞くユウ。そこに、仲間たちが今、ニュースでゼロ教会が報道されていてヨーコが映っているという。確かに報道陣に囲まれて、ゼロ教会には何のやましいところはないと言う信者たちの中にヨーコの姿がある。コイケのアシスタントの女二人がイベント会場に、ポータブルの受像機を持ってきてヨーコと会話をさせる。しかし、ユウと不良仲間は、ヨーコを拉致し、海辺に放置されたマイクロバスの中にヨーコを監禁する。食事も取らず、ヨーコと二人きりで数日過ごす。しかし、ゼロ教会に発見され、袋叩きにされながらも、ヨーコの股間を見ると勃起してしまうユウに、コイケはヨーコにこの汚らわしいものを切り取れとナイフを渡す。怯えるヨーコ、。結局、ユウは、ゼロ教会の研修に参加することを承諾する。
   模範的な信者を演じ続けるユウ。ヨーコの股間を見ても勃起するかしないかが、何故か信仰心の基準だ(苦笑)。富士の合宿に参加することを認められる。そこで、ヨーコが本部の6Fにいることを知る。いよいよユウは、コイケたち、ゼロ教会との戦いを決意する。変態さんの一人で爆弾を作ったと懺悔した男から爆弾を受け取り、不良仲間に刀やナイフを集めて貰い、ゼロ教会本部に単身乗り込むユウ。教祖を刺殺し、本部内を探し回った末、テツ、カオル、ヨーコと、コイケが炬燵を囲んで、幸せそうに鍋を食べているところを見つける。襲いかかってきたボディーガードを斬るユウ。テツたちが取り押さえようとする。コイケが、ボディガードを下げさせる。コイケはユウに最後のとどめをさそうとしたのかもしれないが、ユウは、爆弾のスイッチを押す。ゼロ教会本部のビルは激しく揺れる。大混乱の中、コイケはユウが持ってきた日本刀で自殺する。
    精神病院のレクリエーションルームに、さそりの扮装をしたユウの姿がある。ユウは、自分がさそりだと思い込んでいる。テツとカオルはゼロ教会被害者の会のリハビリ合宿に参加、ヨーコは親類の家に預けられている。そこの娘の交流の中で、心の安らぎを取り戻していくヨーコ。ヨーコはユウのいる病院に行く。ヨーコのことが分からないユウ。あなたはさそりではなくユウだ。私はレスビアンではなかった。さそりを愛していたんではなく、ユウを愛していたことを気が付いたのだと言う。ユウはとても動揺し、ヨーコは病院の警備員に捕まり、警官に引き渡される。パトカーで連行されるヨーコ。しかし、ユウはヨーコのこと、ヨーコを愛している自分のことを思い出す。病院の人間たちに追いかけられながらも、パトカーを追って走り続けるユウ。ヨーコは追ってくるユウに気が付き、警官の首を絞め停止させる。パトカーの窓ガラスをユウは割って(苦笑)、手を差し出すユウ、その手を握るヨーコ。

   4時間弱の尺。うーん評価は分かれるところかもしれないな。ずっと手持ちのカメラで、主観的に被写体の役者を追っているので、登場人物の気持ちとかに入り込める時は凄くいいが、ちょっと説明的な構図になると途端に、テレビの再現ドラマか、深夜ドラマのテンションに落ちてしまう。決して上手くない若手や異常に多いカメオ出演の素人のところは、少しキツい。逆にそうした緩いシーンも相当あるので、観る側も、長丁場を乗り切れるのかもしれない。ただ、自分は、その波の大きさを楽しめたとは言えない。正直なところ、そうしたシーンをカットした方が遥かにスピード感あって爽快だった気もする。しかし、音楽やテロップでチャンネルを変えさせないようにしないと耐えられない現テレビ世代には、この緩さがちょうどいいかもしれない。
   ただ、洋子役の満島ひかりの、痛いくらいの捨て身の熱演は、よかった。NHKの朝の連続テレビ小説での榮倉奈々のダンス仲間と言う意識しかなかったが、日本版ジャクソン5のFOLDER5のメンバーだったのか。浦山桐郎のような星一徹タイプのドS監督にもっといたぶって欲しい。安藤さくらと渡辺真起子は、演じている方の気持ちよさに、そのまま付いていく演出が、自分はあまり楽しめなかった。渡部篤郎は、自然体の演技過ぎて何かカメラとの微妙なズレが気になり続けた。ユウ役西島隆弘は、アイドル映画の主人公だな。

2009年3月5日木曜日

タンドリーチキンでビール。

     シネマート新宿で新東宝大全集。52年新東宝成瀬巳喜男監督『おかあさん(129)』
     18歳の年子(香川京子)は、父ちゃん、母ちゃん、兄の宏、妹の久子、母ちゃんの知り合いの紀子おばさん(中北千枝子)の息子鉄男を預かっているので、6人暮らし。父ちゃん(三島雅夫)は、元は、腕のいい洗濯屋の職人だったが、今は工場の門番をしている。アイロンを持って鍛えた腕っぷしでポパイ父ちゃんと子供たちは呼んでいる。兄の進(片山明彦)は、羅紗屋に奉公に上がっていたが、羅紗の埃に胸を患い家で伏せっている。妹の久子(榎並啓子)は、見かけの割にお洒落で少し生意気だ。鉄男(伊東隆)は、今日もおねしょをして、一緒に寝ている年子は、布団を乾かさなければならないし、臭くて堪らない。母ちゃん(田中絹代)は朝から晩までよく働き、子供たちから慕われている。
父ちゃんが自転車で出勤すると、母ちゃんは、手押し車で街に出かけ、菓子を売っている。年子は、今川焼きの露天を出している。友達が洋裁学校に行っているのを羨ましいと思っている年子。平井ベーカリーの息子、信二郎(岡田英次)は、配達をサボって、いつも敏子の今川焼きの屋台に来る。
    今川焼きの屋台は夏にはアイスキャンデー売りに変わる。信二郎は、フランスの恋愛小説を読んでくれた。転地療養に行っている筈の進兄ちゃんがいなくなったと、療養所から電報が来た。せっかく高い金出したのにと怒る父ちゃん。しかし、母ちゃんは帰ってきた進兄ちゃんに優しくしてやり、好物の夏蜜柑を食べさせてやるのだった。しかし、進兄ちゃんは亡くなった。
    父ちゃんは一念発起し借金までして、クリーニング屋を開店する。夜遅くまで、準備をしている父ちゃん。父ちゃんは、醤油をかけた炒り豆さえあればご機嫌だ。父ちゃんの弟弟子の木村庄吉(加藤大介)が手伝いに来ることになった。木村はハバロフスクで捕虜として抑留されていたので捕虜のおじさんと呼ぶことになった。しかし父ちゃんは開店直前に眩暈がして倒れる。医者からは無理のし過ぎで、いつになれば完治するか判らないと言われてしまう。しかし、母ちゃんがどんなに言っても、入院するのは嫌だと言う父ちゃん。捕虜のおじちゃんは、義理堅く安い給料で働いてくれたが、10月のある日、父ちゃんは突然発作を起こして亡くなった。
    紀子おばちゃんは美容院に住み込みで働いている。美容師試験のために、久子は練習台になって、自慢の髪を切られておかっぱ頭にされてしまった。ある日しんちゃんがピクニックに行こうと敏子を誘う。迎えに行くと久子と鉄男の瘤付きだ。しかし、ジャムやクリーム、カレーなど色々な具の入った風変りなピカソパンを作って持ってきてくれた。しかし、近所の人たちが、捕虜のおじちゃんと母ちゃんが再婚すると話していると聞いて、子供たちの母ちゃんであって欲しいと、思い悩む。洗濯屋の借金を心配するばあちゃん(三好栄子)は、自分の着物を持って来た。また叔父さん夫婦(鳥羽陽之助、一の宮あつ子)はかって父ちゃんに話して内諾をもらっていた、息子が戦死したので久子を養女にと言う話を再び、母ちゃんにする。年子は猛反対する。
   敏子は、今まで以上に洗濯屋を手伝う決意をするが、その意欲は空回りして、中折れ帽子を染め直してくれと言う注文と、マフラーの洗濯で大失敗してしまう。帽子は捕虜のおじちゃんがうまいこと取り繕えたが、マフラーの客には弁償しなければならなくなった。母ちゃんは自分の着物を質入れしようとするのを、自分の着物のほうが派手だから少しはいいお金になるので、持って行ってくれと言う年子。その話を黙って聞いている久子。
  その夜、久子は、年子におじさんの家に行こうと思っていると言いだす。久子に怒りながら、どうしていいのか分からない年子。久子が叔父さんの家に養女に行くことが決まり、母ちゃんは、年子、久子、鉄男でどこかに行こうと言いだした。向ヶ丘遊園地に行き、色々な乗り物に乗る。乗物に弱い母ちゃんは途中具合が悪くなる。しかし、沢山の思い出を作ることができた。翌日、叔父さんが久子を迎えにきた。鉄男は、大事にしていた空き箱を餞別に渡す。
   その少し後に、典子おばちゃんがやってくる。いよいよ美容師のコンテストがあるので、年子にモデルになって欲しいと言う。テーマは、和装の花嫁姿。高島田に結い、花嫁衣装を着せてもらう年子。とても初々しくて、美しい年子の姿に母ちゃんの目は潤んでいる。その時、信二郎が現れ、敏子の花嫁姿を見て、ショックを受ける。慌てて店に帰り、父親(中村是好)と母親(本間文子)に、としちゃんが嫁に行ってしまうと伝えて落ち込んでいる。とりあえず、母親がお祝いを言いに出向くと、コンテストのモデルになっただけだと分かりひと安心する。嫁に行くなら、ウチに来てもらわなければと言って帰る信二郎の母。その言葉に、年子は赤面した。
   おせい(沢村貞子)の世話で、山本邦彦という16歳の小僧さんがやってきた。母ちゃんと小僧で店をやっていくことになり、木村は出ていく。今回のことで、少しだけ年子は成長する。
18歳にしては、年子は少し幼いが、その分、香川京子の可愛さは爆発だ。特に花嫁衣装を着て岡田英次に、いたずらっぽく、舌をペロッと出したり、ウィングしたりするところは、当時の青少年を大いに、萌えさせただろうな。里子を預かったり、養女に出したり、大変な時代だったんだろうな。名もなく貧しく美しく(?)な世界。酔って暴れたり、殴ったりする父ちゃんや、ヒステリー起こす鬼ババのような母ちゃんや、狡くてかっこ悪い兄ちゃんや姉ちゃんを持った多くの子供はこの映画で癒されたんだろうか。
    神保町シアターで、東宝文芸映画の世界
    55年東宝筧正典、鈴木英夫、成瀬巳喜男監督『くちづけ(130)』満席だ。
   第1話「くちづけ」筧正典監督。大学の教室。長谷川教授(笠智衆)の国文学の試験中、夏目くみ子(青山京子)は、後ろの席の河原健二(太刀川洋一)から2問目の答えを教えてくれと頼まれる。くみ子の答えを見て6問目も直して提出する。試験が終わってキャンパスを歩く二人。2問目も6問目も間違えていたことが分かる。腹が空いたのでラーメンでも奢れと健二は言う。健二はいつも腹を空かせている。しかし、今日は伯父に会わなければならないので駄目だと言う。
    ビフテキをがつがつ食べているくみ子。伯父は、頼みがあると言う。未亡人の恋愛と結婚についてどう思うかと尋ねられる。亡くなった夫に貞節を守る必要はないので、大いに結構だと答えると、くみ子の義姉の倫子(杉葉子)の縁談のことだと言う伯父。くみ子の兄の雄一が亡くなって3年、若く美しい倫子に、このまま夏目家にいてもらうことがいいことなのかと伯父と母は心配しているのだと言う。自分たちから言うと、追い出そうとしていると思われるかもしれないので、くみ子からそれとなく倫子の意志を聞いてほしいのだと言う。
    帰宅すると甥の宏が遊んでいる。倫子は外出しているという。夕方になって帰宅した倫子は銀座の美容院で長い髪を切ってきたのだ。マニュキアまで塗ってきたと言う。翌日ある宏のPTAに出席するためだったのだが、華やかで美しい倫子の姿を見て、急に女を感じて、縁談の話を不潔なものに感じてしまうくみ子。結局、縁談の話を切り出せなかった。翌日、健二に、未亡人の再婚は、賛成だと思っていたが、現実に倫子のこととなると納得できない自分がいると話す。兄とは恋愛結婚で、永遠の誓いをした訳だから、一方が亡くなったからといって割り切れるものだろうかと言うのだった。男の再婚が許されるなら、女にも当然だろうと言う健二。二人は、議論をし続け、気が付くと銀座まで出てきていたことに気が付き笑い合う二人。
    帰宅すると、伯父の車が停まっている。縁談の話だと聞いて、宏を連れて散歩に出かけるくみ子。宏が凧が欲しいというので、買ってやる。既に伯父は帰っていた。くみ子の部屋に倫子がやってくる。再婚にまだ割り切れないものがあるので、縁談話は断ったという倫子。宏のために再婚をしない訳ではなく、まだ雄一のことが好きなのだと聞いて、くみ子はなにかほっとするものを感じる。倫子は、不道徳に思うかもしれないが、結婚前に凧が沢山上がっている土手で、雄一と接吻したと話す。
    翌日、キャンパスで健二に、倫子の話をするくみ子。すると、旧友が、長谷川教授から出頭するようにという二人宛の手紙を渡す。カンニングがばれたと思い、健二のアイディアで、手を上げて教授室に入る二人。その手は何のおまじないだ。胸糞が悪いので手を下せという教授。かなり不機嫌そうだ。先日のテストでカンニングしたのは、自分がくみ子に無理に頼んだので自分の責任だと言う健二。健二を庇うくみ子。しかし、テストの採点は済ませたが、気が付かなかった、改めて確認するという教授。私も経験はあるが、ばれたことはなかった、まあ自首したことは考慮に入れてやろうと言う教授。実は、二人が、京橋にある温泉旅館から出てくるところを見たという匿名の投書があったので、それを聞こうと思ったのだと話す教授。温泉旅館は事実だが、先日議論をしていたら夢中になって、銀座まで行ってしまった。健二が空腹を訴えたので、お金がなく、以前自分の家の女中が嫁いだ先がその旅館で、タダで食事を御馳走してもらったのだと言うくみ子。教授は、その話を信じ、もし自分が若い女性と交際することになったら、その温泉旅館を紹介してくれという教授。教授室を出て、カンニングの件も、正直に話してよかったと話し合う二人。振り向くと、窓から笑顔の教授が手を振っている。振り返すくみ子。
   その後、二人はくみ子の家の近くの河原を歩いている。草の上で、横になり、空を見ている二人。目をつぶっているくみ子の姿を愛おしいものに感じて、接吻する健二。くみ子は、急に立ち上がり、プロポーズもしていないのに、接吻をする健二を汚らわしいと言い泣き出す。君と話したり、ラーメンを食べたりしていた今までの行動全てが、プロポーズだったと言う健二。しかし、気持ちの高ぶったくみ子は、自分の混乱する気持ちに走り出す。土手を歩くくみ子。倫子と宏が凧を上げている。笑顔になり二人に駆け寄るくみ子。
  青山京子、ポスト吉永小百合だったのだろうか。印象が少し重なる。笠智衆の長谷川教授がなかなかの好演。
第2話「霧の中の少女」鈴木英夫監督。
  会津の農村にある雑貨屋で店番をしている少女妙子(中原ひとみ)。郵便屋が速達の葉書を持ってくる。姉の由子宛だ。中身を一読して大変 だと店の外に走り出す妙子。置いて行かれた郵便屋は、無人の店で困っている。
    農作業をしている妙子の父半造(藤原釜足)、母テツ子(清川虹子)、祖母八十子(飯田蝶子)のもとに行き、手紙を読む妙子。由子の大学の同級生の上村英吉(小泉博)が夏休みを利用して友人のもとを貧乏旅行していて、旭川の友人の所から由子の家にもやって来て、2,3日泊めて貰えないか、29日の午後4時半に駅に迎えに来てくれ、ご家族が反対であれば、そのまま帰ると書いてあった。
   29日であれば今日のことだ。嫁入り前の娘のもとに若い男が泊めてくれと言うのだから、半造とテツ子は言い争いになるが、八十子の言葉もあり泊めることになる。川にいる由子の元に走る妙子。由子(司葉子)は、弟の信次(伊東隆)と魚とりをしている。妙子は、手紙を読み、歓迎してくれると伝える。
   駅で上村を待つ、由子、妙子、信次。やってきた上村に親の了解が出たと話すと、金は無いし、腹が減って東京まで持たないので、助かったと言う。着たきり雀の上村に妙子は汗臭い!!と叫ぶ。私は16歳の思春期だから、時々奇妙なことを言い出すかもしれないわと妙子が言うと、信治は思春期って何?と聞いて怒られる。バスに乗り由子の村に行く。シャツを脱いで、ランニング姿の上村。風呂に入っている上村のリュックサックを片付けている由子と妙子。「どれもこれも男臭い。でもお風呂長いわね」と言う妙子に、「そんなに臭くは無いわよ。妙ちゃんが、あんまり臭い臭い言うから気にしてるんじゃない」と答える由子。荷物の中に洋書を見つけ、上村さんアカなの?コミュニストって書いてあると尋ねる妙子。フランスの小説よと由子。リル…リルケ?と妙子、あんたよく読めたわね、上村くんは、ドイツ語読めるし、詩も書くのよと由子。妙子は詩集の中に、上村と男女が写った写真を見つける。これは旭川の?くん、女性は妹さんじゃないの?と由子が答える。
    夕食になり、何もないですがどうぞと言う半造に、悪気なく、こういう田舎では何を食べても美味しいですと答える上村。微妙な表情の半造とてつ子。微笑む由子。北海道はどうですかと半造。雄大でとてもいいところですと上村。地元を自慢したくて半造は、ここも冬はいいです。雪が偉大に降って山までずっと真っ白ですと言う。妙子が、ご飯お代わり、偉大に大盛でと笑いながら言う。ニコニコみていた婆ちゃんが、私もビール貰うもんかねと言い出す。お飲みになりますかとコップを渡す上村に、これでも若い頃は村の男と飲み比べで、1升呑んだもんだ。半造ビール持ってこいと言う婆ちゃん。土間に立った半造にやっぱり泊めるんじゃなかったとてつ子。再び言い争いになる。会津磐梯山を歌って盛り上がる婆ちゃん、上村、子供たちの声を聞いて、口喧嘩疲れで、座り込む半造とてつ子。
    翌日、信次と川で魚を捕る上村。西瓜を持って来る由子と妙子。美味しそうに食べる上村。妙子に作文を読ませる由子。出来がよく、先生に誉められたのだ。両親をテーマに、高等小学校しか出ていない二人が、喧嘩をしながらも夫婦仲がよく、暖かい家庭を築いてきたことが分かる作文だ。作文だけでなく、両親を褒められ笑顔の妙子。店で片付けながら、自分たちは出会ってすぐくっついてしまったので、やはり由子の純潔を心配する半造とてつ子。やはり口喧嘩になり、売り言葉に買い言葉で、子供たちで近くの温泉に行かせればいいでないかとてつ子。それを耳にした婆ちゃんは、子供たちの所に行き、母ちゃんが明日温泉に行けと言っているからお礼を行ってこいと言う。喜ぶ子供たち。
   バスで山あいの温泉に出掛ける上村たち。上村と由子が過ちを犯さないように見張らなければならない妙子は責任重大だ。一方半造とてつ子は気が気でない。まだ若いと思っても、自分たちが結ばれたのは、もっと早い。いくら高等教育を受けているとはいえ、所詮若い男だ。言い争いというより、二人で話せば話すほど不安は増す。婆ちゃんが今から最終バスに間に合うなと言って立ち上がる。助かったという顔で、婆ちゃんも心配だべと言うてつ子に、こういう時でもないと温泉に入れないからなと言う婆ちゃん。
    夜ふと妙子が目を覚ますと隣に寝ている筈の由子がいない。隣の部屋の上村の寝床も空だ。不安になり、夜霧の深い外を姉を呼びながら走り回る妙子。泣きべそを書き始めた妙子は、下から登ってきた婆ちゃんを見つける。姉ちゃんたちがいなくなったと言う妙子。しかし、「菩提樹」の歌を歌いながら近付いてくる若い男女の声がある。やってきた由子に、何で私を残して外出したの?心配したんだから、と怒る妙子。あんたが寝ていたからよと笑いながら答える由子。みんなで笑った。実は由子は、上村から東京に帰ったら自分の両親に君の事を話そうと思っているが、いいかいとプロポーズを受けていた。
婆ちゃん、由子、妙子が女湯に、上村は男湯に入っている。仕切りは薄い一枚板なので、4人で入っているようなものだ。一緒に民謡を歌う。
   翌日いよいよ上村が帰る。送り出した後で、冬も来て下さいとお前は言ったが、冬はまずい。コタツの中でいくら手を握りあっても、回りからは分からないからとてつ子に文句を言う半造。お前たちは随分ワシの知らない所で色々やってたんだなあとニコニコして言う婆ちゃん。駅では、由子が夏休みが終わって東京に戻るまでの暫しの別れの挨拶をしている。冬に必ず来てねと言う妙子。北海道土産の小さな木彫りの熊を友達になった記念にと、妙子に手渡す上村。汽車が出る。妙子は由子に婆ちゃんから聞いたけど、大学を出たら上村さんと結婚するの?と尋ねる妙子。頷く由子を見て、去っていく汽車に向けて大きな声で「上村さん、おめでとう~」と手を降る妙子。
   目がくりくり動いて中原ひとみが本当にかわいい。
   第3話「女同士」成瀬巳喜男監督
   金田医院金田有三(上原謙)の妻秋子(高峰秀子)が電話を受けている。田辺さんのところのおじいちゃんが具合悪くなったので往診してほしいと伝える。看護婦のキヨ子(中村メイ子)はてきぱきと、往診の支度をしている。姑(長岡輝子)が、天気がいいので布団を干している。キヨちゃんの布団も干そうかなと言って、押入れを開け布団を引っ張り出すと、郵便貯金の通帳と日記帳が転がり落ちる。日記帳を読みだす秋子。キヨ子が夫のことが好きだと書いてある。最初は笑いながら読んでいたが、終いには腹を立てて、結局布団も干すのを止める。
   外出する秋子。兄(伊豆肇)と喫茶店で会う。キヨ子の恋愛を相談する秋子。農家の生まれで、看護婦養成所を出てすぐ、金田医院にやってきて22歳になること。月給3000円のうち2300円ずつ、きっちり貯金していることなどを話していると、お前んちは喧嘩しているんだろ、喧嘩しているうちは夫婦は大丈夫、若い女の子にとって恋愛なんて風邪みたいなものだと言われる。考え込む秋子。
   秋子は、よくキヨ子と口げんかをしている八百屋の息子の清吉(小林桂樹)に目をつける。翌日さっそく八百屋に行き、じゃが芋を1貫注文し、キヨ子をどう思うか聞き、キヨ子が清吉のことを想っていると吹き込む。まんざらでもない清吉。一方、キヨ子にも、八百屋に行くと清吉がキヨ子のことばかり、話していると告げる。どう思う?と聞くと、実は好きな人がいるんですというキヨ子。嫉妬心を感じて、意地になる秋子。秋子の工作は成功し、清吉とキヨ子は互いを意識し始める。
   お祭りの夜、病院を抜け出したキヨ子は、清吉とどういう家庭を築きたいか話している。ふと気が付くと病院の前に、救急車が停まっている。妊婦が倒れ、応急処置をした末、大病院の産科に搬送するところだった。外出するなとは言わないが、行き先ぐらい告げて行けと怒る金田。泣きながら謝罪するキヨ子。清吉の父親の許しも出て、結婚することになる。秋子は、全てを金田に告白する。苦笑する金田。出雲から電話があり、後任の看護婦の手配がついたとのことで、キヨ子の結婚式も決まった。部屋を片付けているキヨ子に、日記帳を記念に貰えないかという秋子。実は、ある時偶然読んでしまったのと言い、これを婚家に持っていくと清吉たちにあらぬ疑惑を受けることになると思うのでと秋子。最近読み返して恥ずかしくなったと言うキヨ子。
   兄に一件の報告をして帰宅すると、金田の元に、新しい看護婦の松田(八千草薫)が来ている。キヨ子と同じ22歳。とても美しい娘だ。秋子に松田を紹介し、お茶を入れてくれないか、そうだ紅茶がいいと言う金田。また、新たな悩みの種が生まれて複雑な表情の秋子。
  
    63年東宝筧正典監督『妻という名の女たち(131)』。
    披露宴に列席している魚住浩三(小泉博)と雪子(司葉子)。新婚夫婦を見ながら、冷めた目で、自分たち夫婦にも、そういう日があった。愛情と親しみに溢れて祝福された日々が、2日前のあの日まではと心の中で呟く雪子。
   代々木上原の一戸建て、寝ている浩三を起こす雪子。雪子の頭は寝起きのままだ。時間がないと今日も、牛乳を飲んだだけで出勤していく。息子の一郎の食事の面倒をみながら、毎晩深夜の帰宅について一言言うと、仕事だからしょうがないじゃないかと答える夫の言葉を思い出しながら、夫が倒した花瓶とお色気記事が満載の夕刊紙を片付ける雪子。洗濯ものを干していると、義妹の千花(八代美紀)が、やってくる。雪子の女学生時代の友人柿崎靖子(団令子)の洋品店で働いている。雪子が頼まれている刺繍を取りに来たのだ。千花を待たせて最後の仕上げをしていると、玄関のチャイムが鳴る。雪子が出てみると、見たことのない女(左幸子)が立っている。八杉夏代と名乗り、いつも店の帰りに浩三を送っていると言う。北海道漁業の株式を200株譲ると浩三から聞いていると思うがという夏代。全く聞いていない雪子は、隣家で電話を借り、会社の浩三に尋ねる。会社に電話するなと言っているだろうと叱りつけ、夏代は知っているが、株券のことは知らないと言う。浩三は、証券会社のセールスマンだ。
   夜、夏代のBAR BLACKに行く浩三。近くの店で食事をしながら、今日俺の家に来たんだって?と尋ねる浩三。まずかった?と答える夏代に、女房とは別れるつもりだから、感づかれてもかまわないが・・・と浩三。今、借りが溜っていていて、現金じゃないと酒も売ってくれないのよと言う夏代。浩三と夏代は、交際して1年半、女房を別れて結婚すると、そのうち、そのうちという浩三の返事に文句を言う夏代。
   靖子のマンションの前で一郎が遊んでいる。靖子の夫洋介(児玉清)が出張から帰って来て、ママと来ているのかいと尋ねる。夏代が来たことで、雪子は一郎を連れて仙台に帰ると書置きを残して靖子の家に泊ったのだ。靖子は、洋一の手取りは自分の5分の1だし、浮気も出来ないくらい尻に敷いていると思っている。洋一に紅茶を入れさせる靖子。洋一を引き取って働くという雪子に、止める靖子。
   靖子に説得されて帰宅する雪子。自宅の灯りが付いている。今日は早く帰って来たのだと、ドアを開けると、玄関に女物の草履がある。仙台に帰ったんじゃなかったのか、株券のことでちょっと夏代が寄ったんだと慌てる浩三。憮然とする雪子。とりあえず今は帰ってくれと夏代を帰す浩三。私は別れないと言う雪子に、一郎のこともあるし、別れるなんて言ってやしないと答える浩三。あの女と手を切って下さる?と言われて約束する浩三。別れてくると言って出かけるが戻ってこなかった。
   靖子が経営する銀座の洋装店マドレーヌ。靖子の弟の邦彦(当銀長太郎)がやってくる。邦彦は、千花と結婚しようとしていたが、ジャズミュージシャンという職業のせいで、千花の父文吾(藤原釜足)、長兄の健一(北村和夫)に反対されていた。今日も再び、結婚を許して欲しいと頼む千花と邦彦。世間体を気にして、魚住家の娘の夫には相応しくないと頭ごなしに反対する健一に、靖子から口止めされていたにも関わらず、浩三兄さんなんてバーのマダムと同棲して家に帰らないのよと言ってしまう。
   1週間ぶりに浩三が帰宅する。嬉しくて涙ぐむ雪子。帰りに一郎をうさぎ屋に連れて行ってショートケーキでも食べさせてやるよとと言う。帰りに?と尋ねると、あの女と手を切れるかどうか自信が無くなった。このままだとお互い苦しいから、仙台の義父さんを呼んでくれ、今後のことを相談するからと言い、身の回りのものを取りに来ただけだと言う浩三。雪子のスーツケースを貸してくれと頼む浩三。雪子は、牛乳をコップに注いであげると、ありがとうと言う浩三。そのスーツケースは、新婚旅行の時に持って行ったものだわ、その時あなたは私に荷物を持たせようとせずに、ずっと持って行ってくれたと涙ぐみ、私の知らないネクタイねと言う雪子に、少ないけど2万円、離婚が決まるまで毎月送ると言う浩三。その時ブザーが鳴り、長兄の健一がやってくる。浩三は帰っていないのかというので、今はいますがと答える雪子。魚住家のいい恥さらしだという健一に、夫婦のことは放っておいてくれと言って家を後にする浩三。雪子は、隣家の息子の勇(坂下文夫)に遊んでもらっていた一郎を連れて戻ると、既に浩三はいなかった。パパは?と尋ねる一郎に、駅に行ったわと答えると、一生懸命追いかける一郎。電車に乗った浩三は、駅の外から、自分を呼ぶ一郎の姿を見つける。窓を開け、身を乗り出して手を振り続ける浩三。
   夜になり、夏代が帰ってくる。家から持ってきたパジャマを着ている浩三が、家に戻って身の回りの物を持って来たんだと言う。自分が買ってきたパジャマに着替えさせ、こんなものまで持って来たの?と電気スタンドを手に取る夏代。まだ使えるんだからと言う浩三に、奥さんの家庭の匂いのするものは、持ちこんで欲しくないと涙ぐむ夏代。
   一郎を幼稚園に送りだす雪子。浩三が家を出てから既に一か月が過ぎた。隣家の田代ふみ(中村美代子)が野菜を持って勝手口に現れ、息子の勇が、別れた夫のもとに行ってしまったという。後妻に子供が出来ない夫は、度々勇を呼び出して小遣いをやり、甘やかして自分の家に引き込んでしまったのだと言う。家裁に相談に行っても、息子の意志だからしょうがないと言われた。女で一つで苦労して育てたのに、報われないと泣くふみを見て他人ごとではない雪子。
   浩三は、会社で霜川部長(小栗一也)に声を掛けられる。君の書類柿崎専務が褒めていたよ。目を掛けているんで更に頑張ってくれ、しかし奥さんと別居しているという噂を聞いたがと言われ、そんなことはありませんと否定する浩三。こういう会社は身上にうるさいので気を付けてくれと釘をさされる。
   靖子、洋一、千花たちとフグ鍋を囲む雪子。帰り送っていく洋一は、靖子は自分を尻に敷いていると思っているが、敷かれているふりをすれば、勝手なことをしていられる生活は、もう嫌になったと告白する。もし、雪子さんとだったら誠実な結婚生活ができるだろうと真顔になる洋一を、振り切って帰る雪子。帰宅すると、浩三がいる。うれし泣きをする。霜川部長の娘の披露宴の招待状を出しておいた、勿論一緒に出席してくれるよねと言うので肯くと、じゃあ、当日いつもの喫茶店で待ち合わせしよう、モーニングは今日持って行くからと家を出ていく浩三。悲しく泣く雪子。
   本屋でパートをしている雪子。千花がやってきて、結婚パーティをやることになったのでどうしても参加してほしい。霜川部長の娘の披露宴と同じ日だ。靖子から、霜川家の披露宴に行けば、旦那の心を取り戻せるのと言われ、千花のパーティに向かう雪子。待ち合わせの喫茶店で待っていても雪子が現れないので、一人披露宴に行き、雪子が風邪でと言い訳をする浩三。部長は、浩三を呼び課長に推薦はしたが、素行の問題は重大なので、別居しているという噂は本当なのかと尋ねられる。しかし、雪子が現れ、霜川に風邪じゃなかったのかと聞かれて、熱も下がりましたしと話を合わせてくれて、ピンチを脱したかと思った浩三に、家に戻らなければこのまま帰ると脅す雪子。仕方なしに了解する浩三。
   しかし、結局夏代を説得できず、家裁に離婚調停を頼むと夏代に言う浩三。家を雪子に渡そうと思うがと言うと、雪子は、浩三と結婚したら店をやめようと思うので、30万ほど必要なので、家を売ってその中から30万引いた金を慰謝料としてもらえないかと言う。家裁の調停室で、離婚原因を言う浩三。夏代との交際は2年ほど前からだが、実は子供が生まれた後、雪子が潔癖症で夫婦生活がうまくいかなくなったためだという浩三。しかし、入れ替わりで雪子が調停室に入り、実は、雪子の妊娠中に浩三は浮気をして性病に罹ったというのだ。浩三も呼ばれて、離婚の慰謝料に家を売って、30万引いた金を渡すと言うのはあんまりではないか、家をそのまま雪子に渡しなさいという調停委員。雪子は、家なんかいりません。主人が欲しいんですと言って泣いた。
   浩三の父文吾が亡くなった。通夜を手伝う雪子。霜川部長も弔問に訪れたことで、浩三の別居はばれてしまう。雪子の元に帰れば、不問に付すが、バーのマダムとの再婚は会社での浩三の立場は悪くなると強く言う霜川。ようやく、夏代と別れて家に戻ると約束する浩三。しばらくの間、定時に帰宅し、一郎を含めた3人の生活が続く。雪子も、ちゃんと家でも化粧をするようになった。
   しかし、ある雨の晩、夏代の店に行く浩三。朝起きると夏代の部屋にいる。酔っ払って、家に帰ると言いながら泊った説明される。ほとぼりが冷めるまでこのままでいようと言い、無神経に晴れた空を見て、一郎を連れて動物園にでも行こうかと言って、客との接待マージャンで徹夜したと雪子に説明すると、帰っていく浩三。浩三が家のドアを開けると、夏代の草履がある。居間に、雪子と夏代がいる。全て雪子に話しました、自分がみじめになった、仕事が大事なことはわかるが、二人の女を泣かせている浩三はひどい、私はあなたとは2度と会いませんと言って、泣きながら帰っていく夏代。夏代を追おうとする浩三に、あなたから逃げていく人を追いかけるのはみっともないと言いながら結婚指輪をはずす雪子。靖子の話を聞いていて、私の心は冷え切った。愛のない夫婦が暮していくことはできない。一郎を連れて仙台に帰りますと言う雪子。いつものように、ぼくが悪かった、やり直そうと言う浩三を相手にせず荷物をまとめる雪子。一郎を幼稚園に迎えに行き、駅に行く。追ってホームに浩三がやってきた。一郎の名を呼び、近づいてくるが、電車は出発する。サヨナラと呟き、開いた窓から入ってくる風が気持ちよく、笑顔をみせる雪子。

  地元の友人と、美少女インド料理屋で、貯まったポイントで夕食。

2009年3月4日水曜日

女子高生の恋愛を目撃する。

    ヒューマントラスト・シネマ渋谷文化村通りで、
    スティーブン・ソダーバーグ監督『チェ39歳 別れの手紙(125)』
   キューバ革命は画期的な勝利を収め、1965年、工業省大臣に任命されたエルネスト・チェ・ゲバラ(ベニチオ・デル・トロ)は、カストロに一通の別れの手紙を残し姿を消す。1年後、ボリビアのラムスの空港に、完全に変装を施し、OAS(米州機構)の特使に偽装したパスポートを持ったゲバラの姿がある。コパカバーナホテルの304号室で、入れ歯などを注意深く外し、タバコを吸い、新聞を読むゲバラ。荒れ果てた岩だらけの山間部に入っていく車。山あいのボリビア人民解放軍のアジトに辿り着く。中南米では伝説の男チェ・ゲバラの参加は解放軍の兵士たちを勇気づける。次々と結集する男たち。
   ボリビアは農地解放を目的に革命が起こされたが、革命政府は腐敗し、軍事独裁政権下で、ボリビア人民は圧政に苦しめられていた。ボリビア共産党の第1書記のモンへに訴えるが、共産党は、軍事革命を否定し、人民解放軍を支持しなかった。ゲバラは、キューバで行ったように、兵士を鍛えるべくジャングルの中で、行軍訓練を行う。しかし過酷な訓練は脱走兵や、内部の諍いを生んだ。更にジャングルの中の秘密基地が仲間のミスにより、政府軍に発見されたため、喘息の薬を携行していなかったゲバラは、その後ずっと喘息の発作に苦しめられることになる。カストロのキューバからの支援もあったが、キューバ革命でカストロがいればこそ発揮された他の反政府組織へのオルグや、地上の支援組織が圧倒的に弱く、ゲリラ軍は次第にジャングルの中に追い詰められていく。更にキューバ革命で煮え湯を飲まされたアメリカの軍事支援によるゲリラ掃討作戦は熾烈を極める。
  大部隊に徐々に包囲されるゲバラたち。更に政府軍の脅迫もあり、民衆たちの裏切りもあり、次々に死んでいく兵士たち。遂に324日目、アルトセラ渓谷で、脚を撃たれたゲバラは政府軍の手に落ちた。銃殺命令が降りゲバラの39年の人生の幕が下りた。

     ヒューマントラスト・シネマ渋谷で、北川悦吏子監督『ハルフウェイ(126)』
     小樽の城東高校3年の近藤ヒロ(北乃きい)が、遅刻しそうになり急いで自転車を漕いでいる。少し前にやはり自転車で急ぐ同じ学年の篠崎シュウ(岡田将生)の姿。体育館でバスケットボールをしている男子学生たち、シュウが見事なシュートを決める。シュウに憧れているヒロと友達のメメ(仲里依紗)と一緒に大騒ぎだ。大騒ぎしすぎて貧血を起こしメメに連れられ保健室に向かうヒロ。保健教諭(白石美帆)は氷を取りに言った。ヒロは保健室のベッドで、メメにシュウに25メートル近づくだけで駄目だと言う。告っちゃえとメメに言われ、練習し始めるヒロ。保健教諭が戻ってくると二人ともベッドで眠っている。女生徒たちが体育館で篠崎が怪我をしたと呼びにきたので出て行く
   そこに鼻血を出したシュウがやってくる。起きていたメメはビックリするが、シュウが保健室に入ってきた時に、濡れタオルを当てていたヒロは、シュウがいるとは知らずに、夢の中でシュウに告白し付き合うことになった。下校の時に告白すると宣言する。下校時間、シュウが自転車で川の土手でヒロが待っている。ヒロに声を掛けられて、シュウが「付き合って下さい」と言う。突然のことに頭が混乱して、「急にそう言われても困るので考えさせて下さい」と答えるヒロ。そして急に自転車を漕ぎ出し、土手を転がり落ちて横転するヒロ。大丈夫と駆け寄るシュウに、正座して、手を出し宜しくお願いしますと言うヒロ。しかし、反対方向に走り出し、一周して、やっぱり一緒に帰ろうと戻ってくる。ウキウキのルンルン(苦笑)。    
  シュウの男友達のタスク(溝端淳平)に紹介され、一緒にお好み焼き屋に行き、それから暫く夢のような毎日だった。高3で志望校を聞くと、まだ決めていないとシュウ。しかし、タスクからシュウは早稲田が志望校だと聞いて、東京に行ってしまうのかと思ったヒロは土手にシュウを呼び出し、私に秘密にしていることはないかと尋ねる。思いつかないシュウに、上京するのに自分に告ったのは、裏切りだと責めるのだ。早稲田に、東京に行かないでくれと迫るヒロ。マジギレされて返す言葉が無いシュウ。
   それから暫く学校で会っても避けられ、携帯には出ない、メールも返信の無いヒロ。図書館で見かけ、ダッシュで校内を追いかけるシュウ。あの日で別れたんだからと言われ落ち込むシュウ。担任(成宮寛貴)に相談すると、彼女を取るか早稲田を取るかと言う選択は、余りに近過ぎるんじゃないか、よく考えろと言われる。雨の日、タスクに傘に入る?と尋ねるヒロ。人を待っているからと答えるタスク。シュウが早稲田諦めたねと言われて驚くヒロ。ちょっと自分の彼女を紹介するよとタスクに渡された携帯の相手はシュウだった。止めたんだと聞いて嬉しくなるヒロ。さっそく会いに行く。
   しかし、受験が気になり始めると、志望校を諦めたシュウは、どうも集中出来ない。受験まで、携帯もメールも含めて距離を置こうかと言い出すシュウ。次第にシュウの悩みに、気がつき始めるヒロ。メメは、家庭の事情で大学を諦めていたが、父親が急に再婚を決め、お前も進学しろと言われて困っていると言う。しかし、困っていると言っても嬉しそうだ。書道教師の平林(大沢たかお)に、何か悩んでいるなと声を掛けられ、私の友人の話として話始める。最初は、東京に行って欲しくなくて引き止めたが、自分のために上京を止めたと思うと何だか引っかかるのだと。平林は、好きなコの為に志望校を変えた彼氏はいい奴だ。そのまま、ずっと一緒にいるのもいい。ただ、人生はずっと長いんだから、東京に行ってもっと大きな人間になったらもっといいよねと言う。お前の気持ちを書いてみろと勧められて、“いけ”“いくな”と思いっ切り書くヒロ。シュウの教室に行って、手を引いて廊下を走り出すヒロ。職員室に行き、シュウの担任に、篠崎くんを早稲田に行かせて下さいと頭を下げるヒロ。驚き、やめたんだと言うシュウと言い争いになる。担任は、篠崎の本当の気持ちはどうなんだ?と尋ねる。暫く黙っていたシュウは、やっぱり早稲田に行きたいと答える。応援すると言う担任に、二人で頭を下げる。
   一緒に受験勉強をする二人の姿がある。英単語のHALFWAYをハルフウェイと信じきっていたヒロを笑うシュウ。
   いよいよ、早稲田の受験の為に東京に出発する日、ヒロは一生懸命お弁当を作る。家を出て自転車に乗るとシュウがいる。南小樽の駅に向かいながら、色々なことを話す二人。新千歳空港行きの汽車が着いた。乗り込むシュウを見送るヒロ。
   全編手持ちカメラは、主観的な視点で、観ている者を、高校生の二人の恋愛の目撃者とする。目撃者の立場が、同級生なのか、先生なのか、全く彼らから見えない透明人間なのかは、それぞれだろう。何だか、今のうちはもっと悩んで成長しろと微笑ましく思ってしまう自分は保護者なのだろう。そうして、高校生の恋愛の目撃者になってしまった時点で、監督たち製作者に嵌められてしまったと思う。正直な話、少女漫画だ。学校のヒーローに憧れる、ドジで普通の女子高生が恋の告白をすると両思いで成就する。あくまでも、彼氏は優しく、自分を見て!見て!、自分をどれだけ解っているの?と勝手に要求するだけの主人公に振り回され、彼女のために、自分の夢を捨てる。しかし、自分が束縛することは彼氏にとって良くないと気付いた主人公は、自分の気持ちを我慢して、彼氏の夢の後押しをする。男子に要求するだけの女子の成長譚。
   自分は、そんな素敵な主人公の想われ人ではなく、勝手に片思いした女子の気まぐれな発言に振り回されて、一人相撲でオウンゴールした哀しい少年だったのだが、変わらないんだなあ。というか変わらないと思いたい。ただ、北乃きいがドタドタ走り回る姿は、自分の時代は中学生までだった。高校時代の同級生は、女の子というより、女を意識して、いつまで経っても小学生マインドな同級生な男子よりも、もう少し年上の男性を意識していた気がする。
   北川悦吏子、岩井俊二、小林武史というトリオに、かなり陰険な根性で見ていたが、何だか、手持ちカメラにやられてしまった。最も懐疑的だったが、その場で役者に自分たちで考えた言葉を喋らせるということも、成功している。考えてみれば成宮寛貴や大沢たかおが先生役だったからと言って武田鉄矢のような言葉を話したら失笑ものだろう。ひとつだけ文句を言うと、音楽は、ソロピアノなど、JPOP的にかなり通俗だ。しかし、捻くれた50親父ではなく、出演者と同世代や、つい最近の思い出だった世代には、ものすごく抒情的なんだろう。個人的には、音楽が無かったら、よりセンチメンタルな映画になったと思う。
   女子高生から、二十歳前後のお嬢さん二人組とカップルしかいない映画館は、いつもの加齢臭が立ち込めた映画館とは違って、開演前のおしゃべりは華やいで感じるなあ。その中に坊主頭巨漢の50親父は、かなり異質だ(苦笑)。
   イメージフォーラムシアターで、WE ARE THE PINKSCHOOL
   69年国映向井寛監督『色仕掛け女 極道 ブルーフィルムの女(127)』
   東証(大証?)や証券会社の外観と裸体に映写されるブルーフィルムが冒頭に続く。
   買いの相場師坂田健三(河東智介)は、大損し、金貸しの内山(藤井貢)から借りた二千万を焦げ付かせてしまう。今月末までには返せないと、坂田は首を吊ろうとする。妻と娘の真理子(橋本実紀)は必死で止める。
翌日内山がやってくる。何とか待ってもらえないかという坂田に、それは出来ないと言う内山。
   坂田の隣で、何でもしますからという妻を好色そうに眺めた内山は、「奥さん、あんたが自分の身体で払うなら、3か月待ってやってもいい」と言うのだ。坂田はすぐに否定したが、他に当てがある訳でもなく、妻は了解した。更に「この家でいまからや」と言う内山。二階の部屋に上がり人妻に手を掛ける内山。妻のあえぎ声に頭を掻き毟り苦悩する坂田。居た堪れなくなって、ふらふらと外に出ると、すれ違いで、真理子が学校から帰宅してしまう。二階に上がり、襖の隙間から、母と内山のあられもない姿を見て、ショックを受ける真理子。
   内山は、「あんたやて、けっこう楽しんどったやないか。そやけど、2000万もの金、半年やそこらで集められるんか?」と坂田の妻に、もし、自分の狂った息子の相手をしてくれたら、3年待ってやってもいいと持ちかける。泣く泣く了解し、内山の家に行き、不憫な内山の息子、ヒロシを幽閉している土蔵に行く。薄暗い土蔵の中には、ネズミや蛇がいて、気を失う坂田の妻。そこに緋襦袢を着たヒロシが、セルロイドの人形とブリキの車を持って現れる。気が付いた坂田の妻に迫るヒロシ。恐怖に歪む坂田の妻にのしかかっていくヒロシ。
   心身ともに、襤褸切れのようになった坂田の妻が、フラフラと歩いている。呆然と道路を渡ろうとして車に撥ねられてしまう。警察からの電話で母の死を知った真理子は、坂田が殺したんだと責める。自戒の念で沈痛な面持ちで立ち上がった坂田は倒れる。以降、中風で寝た切りになる坂田。
   真理子は、ゴーゴーガールで生計を立てるようになった。金を貯めて内山を見返すことだけを目標に生活する真理子。同僚の女からは、ケチで、あの子は15円のパン二つが晩御飯やと陰口を叩かれている。帰宅し、坂田の世話をする真理子。数日後、内山が店に現れる。借金どうするんや、あんたの身体ででも払うんやなと言う内山。店のマネージャーが、迫ってくる。マネージャーと肉体関係のある女が入ってきて、真理子を殴ったが、純潔の危機は逃れることが出来たが、帰宅した真理子を待っていたのは、睡眠薬自殺した父の姿だった。
   真理子は、クラブのホステスをしている。同僚のホステスのアパートに転がり込んで、家事を全てやることで、タダで住まわせてもらっているのだ。更に、造花の内職までして、金を貯めようとしているのだ。同僚ホステスの情夫の次郎は、ベッドであのこはお金が欲しいのよと聞かされて、あの女は金になると言うのだった。次郎は、金持ちの秘密パーティに行けば10万貰えるぞと真理子を誘う。承諾し、更に自分の処女を売ることで30万を受け取った。それ以降、次々と5人の男に抱かれる真理子。ホテルに男たちが、無記名の招待状を受け取って集まる。そこに真理子が現れ、自分と関係しているブルーフイルムを見せ、強請るのだった。激怒しながらも、こんなものを世間に流されたらと金を出す男たち。
   真理子は、貯めた金で、株を買い、ミナミのヤクザにあのフィルムを500万で売った。内山に金を叩き返し、父母の墓前に報告している真理子の姿がある。内山は、ヒロシに食事を運ぶ。ヒロシは、何を勘違いしたか、父親の内山にのしかかり、後ろから犯す。逃げようとしても、力の強いヒロシに抑えつけられる内山。
   その頃、海岸に停まる車の中で、抱き合う次郎と真理子。ようやく幸せをつかんだ真理子。しかし、車が近付いてきて、サングラスを掛けたヤクザ風の男たちが降りてくる。次郎は、かんにんやと言いながら、真理子の首を絞める。株式市況がラジオから流れている。離れたところから、車を見ると、苦しんでいる真理子の右手は、株の立ち場での合図を出しているように見える。
   坂田夫妻、内山など、ちゃんとした芝居が続き、濡れ場も品のいいものなので、前半は、やはり名作と呼ばれるだけのことはある。しかし、終盤は、十分な伏線や説明的なシーンや台詞が一切ない。尺の関係で切らなければならなかったのかもしれないが、いきなり殺されちゃって、おしまいかと少々残念。

   72年新東宝山本晋也監督『特殊三角関係(128)』
   林田良治(野上正義)は、サラリーマン。恋人の瀬能涼子(谷ナオミ)と肉体関係にあったが、課長の娘の和子(篠原千恵?)と結婚することに。課長は「万年課長の自分の娘を貰ってくれて、もう思い残すはない。戦争で亡くなった、君のお父さんもどんなに喜んでいるか」と涙を流し、今日は結婚前日最後の夜だから、夜明けのコーヒーを飲んできなさい(?)と言う。
   港を歩く二人、酒を飲み、ホテルの部屋で、実は交際していた女性がいたんだと告白する良治。あなたの正直さに惚れ直しました、今日はもう帰らない(?)という和子。
   郊外の一戸建てが、二人の新居だ。披露宴の集合写真を見ている和子は、この方はどなたでしたっけ?と無邪気に聞く。だから、涼子に来るなと言ったのにと呟き、とぼける良治。
   涼子と別れたものの、忘れられない良治は、涼子の部屋を訪ねる。もう別れたから駄目、とドアを開けなかった涼子だが、良治の遠ざかる足音に、ドアを開け声を掛けてしまう涼子。
   涼子から贈られたライターを見つけてしまう和子。しかし、和子は、涼子に連絡し会う。ウマが合い、とても仲良くなる二人。自宅と涼子の部屋を往復し、双方で男としての勤めを果たす良治。和子と涼子はお互いの家を行き来するようになり、最後には良治、和子、涼子3人の奇妙な生活が始まる。二人の女からの要求はどんどん過酷なものになり、良治はどんどんやつれ、終いには会社で意識を失う。
   山本晋也監督の映画は未亡人下宿シリーズのような、かなりベタでオヤジっぽい馬鹿馬鹿しさ満載のギャク映画のイメージが強かったが(一応、褒め言葉)、この映画は、フランス艶笑小咄のような作りだ。まあ、その印象は、今となっては、ヤバすぎる古今東西の名曲の無断借用のせいではないかと思う。一応、国内の曲は、印象的なイントロとサビだけオリジナルをパクって、珍妙な曲にしているが、当時はよかったにしても、現在なら完全にアウトだったり。「ハルフウエイ」では音楽を貶しておいてなんだが、映画って、本当に音楽が重要だなあ(苦笑)。
    打って変わってシネフィル度満点なお客さんがそれなりにいっぱい。結構女性客も多い。本当は、もう2本見る気まんまんだったのだが、フィルムトラブルで中断があり、相当押してしまった。まあクレームというより、ピンク映画上映館では、しばしばあったことなので、何だか懐かしい感じだなあ。観客も文句も言わず、客電がつくと、気まずそうにもじもじするところも一緒だ。結局時間が合わなくなり、ここで止めて、帰ることに。ということで博華で餃子とビール。

2009年3月3日火曜日

卵売りの少女

  
   神保町シアターで東宝文芸映画の世界
   52年東宝成瀬巳喜男監督『お国と五平(119)』
   峠道を、武家の嫁と若党の二人連れが歩いている。擦れ違う男たちが皆(坊さんさえ)振り返るほど女は美しい。しかし女は足を傷めている。宿屋に着き、寛ぎ、床に入っても寝付かれない。雨が降り出し、どこからか虚無僧の吹く尺八の音が聴こえてくる。尺八には思い出があった。
   女の名はお国(木暮実千代)。お国は、夫婦となる約束をしていた池田友之丞(山村聡)が、武士として武芸にあまりに不熱心だったので婿として門田の家名を継がすには物足りないと思い、父親の勧めもあり、藩内で武名も高い伊織(田崎潤)と見合いをし、婿に迎えた。かって友之丞は尺八を吹いて自分が来ていることの合図にしていたのだ。伊織が婿として家に入り、父は直ぐに他界し半年が過ぎた。伊織は、非番の日でも、藩内の友人の家に碁を打ちに出掛け、お国は寂しさを感じている。ある日、伊織は、友之丞に寄って闇討ちに遭う。
    お国は、若党の五平(大谷友右衛門)を伴って仇討ちの旅に出る。友之丞の叔父や乳母など、立ち回りそうな場所を訪ね歩くが徒労に終わる。ある時、お国は高熱を出し倒れた。宿屋で誠に頼りない医師を呼んで貰うが、数日回復せず、五平は不眠不休で看病をし続ける。ようやく熱が下がり意識の戻ったお国の前に忠義ものの五平の姿がある。その瞬間、主従の一線を越えてしまう二人。
   しかし、このまま友之丞に会わずに、二人で暮らす穏やかな生活を思い浮かべるお国に対して、忠義者の五平は主人の仇を討ち、郷里に帰り、殿様に武士にしてもらい晴れて慕うお国の夫に相応しい身分になることを夢見るのだ。実は二人の隣室に虚無僧となった友之丞が逗留し、二人のやり取りを全て聞いていた。再び友之丞を討つ旅に出ようと準備をしに五平が外出した際に、友之丞はお国の前に現れる。驚き、小太刀を取るお国に、友之丞は、ずっと二人の後をつけ、自分のことに気づいて貰おうと尺八を吹いていたのだと言う。また、自分は死にたくない、仇討ちを諦めて二人で平和に暮らせばいいではないかと言う。その言葉はお国の頭を捉え、友之丞を討つことも、友之丞と会ったことを五平に告げることも出来ない。
    再び仇討ちの旅に出る二人。しきりと友之丞の尺八の音が聞こえる。悩み続けるお国だったが、五平に手柄を立てさせようと決意し、尺八を吹く虚無僧を捕まえてくれと命ずるお国。お国が自分を見逃す決意をしたかと思った友之丞に対し、お国は五平に斬れと命じた。命が惜しい友之丞は、お国と五平が不義を犯した事で強請ろうとするが討たれる。しかし、今和の際に、お国と自分は婚約中に契りを交わしたことがあったと告白する。お国は否定するが、五平の頭の中をお国への疑惑が渦を巻く。
   見事仇を討ち故郷に凱旋する筈の二人だが、五平の耳には、死んだ筈の友之丞の尺八の音が消えることはなかった。

   40年東宝成瀬巳喜男監督『旅役者(120)』
   田舎町に芝居がやって来る。六代目中村菊五郎一座。尾上菊五郎とは似ても似つかないドサ廻りの旅芸人の一座だ。そこで馬の役をやるのは、前脚が市川俵六(藤原鶏太(釜足))、後ろ脚は中村仙太(柳谷寛)。俵六は、後ろ脚5年前脚10年のベテランで、実物の馬を観察して研究している。
   次の公演地は塩原だ。一座を呼ぶに当たって、勧進元の若狭屋(御橋公)と小屋主の北辰館(深見泰三)は、床甚、床屋の甚さん(中村是好)に一口乗らないかと声をかける。たった300円で菊五郎一座を呼べると聞いて張り切って金を出し宣伝した。
    しかし、駅に降り立った一座は、菊五郎一座でも、中村菊五郎一座、騙されて面子を潰されたと思った床甚は、歓迎の宴会で酔っ払って、若狭屋に文句を言うと芝居小屋に出向く。しかし、酔っ払っていた床甚は、置いてあった馬の頭を壊してしまう。親方や北辰館の小屋主に言われて、提灯屋に修繕を頼みに行く床甚。そんなこととはつゆ知らず、俵六は仙太と宿屋の女(清川虹子、伊勢杉子)を相手に酒を飲み、芝居の馬についてご機嫌で講釈を垂れている。
    翌日小屋に行くと親方が2人を呼び、馬の頭を壊してしまったが、悪気はないので、勘弁してやってくれと言う。修繕した馬を見ると狐の顔のようだ。頭を下げずに憮然としている床甚と売り言葉に買い言葉、こんな馬と狐の区別のつかない田舎ものが直した馬を被れるかいと言ってしまう。結局、馬無しでは幕も開かず、その日は座長急病につきと休演に。しかし、勧進元は親方にねじ込み、近くに太平洋曲馬団にいた竜巻号がいるので、それで舞台をやれと言う。俵六と仙太は座長に呼ばれ、意地をはるからお前たちを舞台から外さなければならなくなった。金も持っていないお前たちの為に何とか小屋の楽屋に泊まらせて貰うよう頼んでやったと言われる。
     昨日派手に飲みすぎたせいで金も無い。本物の馬に舞台なんか務められるかと毒づいていた俵六だが、思いのほか竜巻号は立派に務め、舞台上で小便をして笑いを取るなど、大評判になる。親方は、このまま竜巻号を使って芝居を続けたいので、俵六には、今後は馬の世話をしてくれ、仙太にも何か役を考えると言う。落ち込み、仙太に濁酒を買いに行かせる俵六。飲んでくだを巻いていると、宿屋の酌婦が現れる。せっかく昨日芝居を見に来たのに、本物の馬が出ていたじゃないかと言われ、俺たちの芸を見せてやると言う俵六。止める仙太を押し切って、狐顔をした馬を被る二人。歩いているうちに、竜巻号の馬小屋に行き、本物の馬を威嚇し、馬小屋を壊し、馬を逃がす。逃げる馬をどこまでも追いかけて行く俵六。
   70分ほどの長さだが、メリハリが効いて、素晴らしい。珍しく老若男女揃った場内は大爆笑だった。

   49年藤本プロダクション/東宝今井正監督『青い山脈(121)』
   49年藤本プロダクション/東宝今井正監督『続青い山脈(122)』
   海辺の街。船を降りた女学生の寺沢新子(杉葉子)が、目の前にある金物屋に入る。店番の若者(池部良)に産みたての卵20個を買って貰えないかと尋ねる。若者はその卵で何か料理を作ってくれないかと頼む。両親は外出し、米は炊いたが、何も無いと言う。新子は、オムレツと味噌汁を作ってやった。若者は金谷六助、旧制高校の学生で大学に落ちて留年しているという。新子は、父と性格が合わずに離婚した実母に会いに来たのだ。新子は、隣の占い師に姓名判断をしてもらうと、家庭に恵まれないと当てるものの、“ん”がある女の名前は、“ワンワン”“ニャンニャン”などと同じで、動物的な勢いが強く悪妻になるので、改名した方がいいと言われた。フランクに話す二人は、お互いに好感を持つ。
   数日後、女学校でバスケットボールをしている女学生と女教師がいる。生徒とぶつかって倒れる教師の島崎雪子(原節子)。医務室で、島崎の手当をしているのは、校医の沼田玉雄(龍崎一郎)。職員室に戻った島崎のもとに、新子が相談に来た。男名でラブレターが届いたが、休日に新子が六助と一緒にいたとの話を聞いた同級生の女子からで、男子高校生を名乗り、逢い引きを誘うものであった。話を聞いた島崎は沼田に相談する。沼田は島崎に自転車の後ろに乗らないかと誘うが断られた上、自分の将来について余りに俗物的なことを自嘲気味に話し、頬を平手打ちされてしまう。
   懇意にしている芸者の梅太郎(木暮実千代)に会い、妹の駒子(立花満枝)の往診に行かなければならないことを思い出す。自転車の後ろに梅太郎を乗せて走る沼田。やはり芸者の駒子は、町の有力者で女学校の理事長を務める赤ベコこと井口甚蔵(三島雅夫)に妊娠させられ、それがわかった途端知らんぷりをされて自殺未遂を計ったのだ。幸い母子ともに無事だった。梅太郎の三女の和子(若山セツコ)は女学校の4年生で、島崎の大ファンだ。
    島崎は翌日の英語の授業を早く終わらせ、恋愛について話し始める。男女の恋愛は決して猥褻とか不純なものではなく、そうしたことで級友を貶めようとすることは卑劣だと言う。偽ラブレターを書いたのは松山浅子(山本和子)たちのグループで、自分たちは、下級生から話を聞いて、学校の伝統を汚す行為を糺そうとしたのだと言うが、島崎に、封建的で正さなければいけない悪習だと切り捨てられ、泣き出す。女生徒たちは、集団ヒステリーのように感染し、次々に泣き出した。島崎は、新子を丘の上に連れて行き、あなたは正しいと伝え、勇気づけた。しかし、和子がいきり立った生徒達が、校長に抗議しに行ったと報告しに来る。
    教師たちは、若い女教師の世間知らずの理想主義が原因だと決めつけ、理事会や父兄に問題が広がることを気にするばかりだ。校長(田中栄三)も教頭(島田敬一)も保身ばかりで、理想と現実は違うと島崎に頭を下げさせようとばかりだ。校長室に生徒が来て島崎に教室に来て欲しいと告げる。黒板には、生徒たちの3項目の抗議文が書かれている。自分たちを正当化し、島崎に謝罪を要求するものだった。島崎は沢山ある誤字を指摘し、毅然とした態度で、賛同できないと言った。そこに俗物な体育教師の田中(生方功)が現れ、そんな我を張ると、結婚が遅れるぞと宥め始める。あまりの低レベルな発言に教室を後にする島崎。
   職員会議の席では、余計な面倒を起こさないでくれという本音と、現実と理想というものは違うものだという建前の話ばかりだ。島崎を弁護した沼田は、田中たちから、美人の島崎が好きだから味方するのだろうと揶揄されるばかりだ。教師たちが出て行ったあと、島崎に声を掛ける沼田。自分もこの街の因習と闘うことにしたので、うちに来て対策会議をしようと言う。こういう時期だから慎んだほうがいいのではと島崎は言うが、それこそ、因習に囚われていると言う沼田、年配で、物静かな女性教師が、私は島崎を支持するので、思い切ってやりなさいと伝えに来た。表情が明るくなった島崎。
   新子は、高等学校に六助を訪ね、先日の話が原因で困ったことになったと伝える。この学校のOBでもある沼田は、六助に新子を学友たちとの軟式テニスに誘えと勧めた。運動神経の良い新子に、男たちは、叶わない。六助の親友ガンちゃん(伊豆肇)を初め、バンカラで汚いが、気のいい青年たちばかりだ。六助とガンちゃんが新子を送ると、浅子たち女学生が現れ、学校の美しい伝統を汚した新子は、責任を取って退学しろと言う。思わず、朝子の頬を打つ新子。ガンちゃんが雄たけびを上げて女学生たちを追い払った。
   料理屋弥生の帳場で、女将(浜地良子)、仲居(出雲八重子)が、梅太郎に頭を下げている。赤ベコたちが座敷で飲んでいて、梅太郎を呼べと言うのをうっかり受けてしまったのだ。妹の駒子を酷い目にあわせた赤ベコたちの酌なぞしたくないと言う。しかし、同席しているのが、教頭や田中たち、女学校の教員だと聞いて、沼田を陥れる作戦会議だと聞いてお座敷に上がる。
   一方沼田医院に、島崎、新子、六助、ガンちゃんが集まっている。そこに和子が明日の新聞の早刷りを持ってくる。女学生の民主的な自主的な活動に対して、ある女教師が横やりを入れ、問題になっているという記事だ。新聞社は赤ベコの息がかかっており、田中が揺さぶりを掛けて来たのだ。理事会と父兄会を有利に進めようと知略を巡らす沼田。そこに、東村の百姓(花沢徳衛)が、急患なので往診しに来てくれと言いに来る。居留守を使って断れと住み込みの看護婦(上野洋子)に言う沼田だったが、島崎は、すぐに沼田先生が往診に行きますよと答えてしまう。沼田がもっと近い所に医者はいるだろうと尋ねると、百姓は、巫女を呼んできて占ってもらったら、この方角に名医がいると出たのでと答える。
   沼田は、渋々自転車で東村に向かう。途中、トンネルの中で待ち伏せしていたゴロツキたちが、沼田に殴りかかる。そんなことは露知らず、吠えまくる沼田家の番犬を見ながら帰宅する島崎と和子とガンちゃん。途中、ガンちゃんは和子をおんぶさせられる。すると、酔客に絡まれている女がいる。女は、梅太郎で、男は田中だ。弥生からの帰り、ずっと田中に巻きつかれて、難儀していたのだ。和子に挨拶をされ、夜道は危険だから注意して帰りなさいと言って、帰っていく田中。
   いよいよ、理事会が開かれた。理事長の赤ベコが開会を宣言し、校長に議事進行を依頼する。冒頭の挨拶で、こうした事件でお騒がせしたことは、自分の不徳とするところで、汗顔の極みだと言う。沼田は、誰も校長が、サボっているとは思わないので、フランクに話し合いましょうと言う。まず、問題のきっかけになったラブレターを岡本先生(藤原釜足)が朗読する。「変しい、変しい、新子さま。・・・」という冒頭に参加者一同狐につままれたような表情だ。岡本が真面目な顔で、変、恋と板書し、英語でも何でもなく、学力の低下のための誤字だと説明する。更に、悩ましいを、脳ましいとの間違えもあり、校長は本校の学力の低下は、お恥ずかしいと小さくなる。父兄に化けたガンちゃんは、サクラで発言するが、緊張のあまり、格言を言うだけだ。
   出席を遠慮しろと言われていた島崎も、どんな厳しい言葉も甘んじて受けるといって途中出席する。沼田が島崎のことを好いていて、外で接吻していたと噂になっていると言う宝屋のお内儀(岡村文子)。接吻ではなく、頬を打たれたのですと答える田村に、女のくせに男を殴ったり、こんな教師に自分の孫を教えてほしくないと、激高した老人(高堂国典)に、ガンちゃんは、格言を語る。何か納得して表情を和らげる老人。女が頬を打つ場合はよくありますよと梅太郎が発言する。梅太郎さんと呼ぶ沼田に、今日は和子の姉として笹井トラとして出席しているのだと答える梅太郎。
    強引に無記名投票で、民主的に、島崎か生徒のどちらが正しいか決着つけようと言う赤ベコ。投票の結果、島崎12票、生徒6票となった。しかし、予想外の結果に、赤ベコは、理事の出席者は全理事の3分の2に満たないので、今日はあくまでも参考にするが、改めて決することにすると言う。梅太郎は、私も次回は忙しいので、代わりに駒子を出させよう、もう母子ともに身体も良くなってきているからと言う。そこに、ガンちゃんが父兄を名乗った生徒はそんな叔父は知らないと証言したという情報が田中に伝わる。得意満面でガンちゃんを責める田中。若いのになかなか立派なことを言うと感心しとったが、恥を知れと再び激昂する老人。梅太郎は、田中がかって大陸で性病に罹って産婦人科に通っていたことを婉曲に指摘する。急に腰砕けになり、生徒のせいにしてガンちゃんを認める田中。
   島崎は勝利した。土曜日の晩の宿直は、岡本だ。岡本の妻(馬野都留子)が弁当を届けに来た。彼女は、かって小学校の教諭をしていたので、学校のオルガンで唱歌を弾くのが楽しみだ。校長室で物音がして、岡本は、そこに松山浅子を発見する。翌日、島崎に報告する岡本。あのラブレターを取り戻そうと思いつめるあまり、忍び込んだのだ。不問にし、浅子と新子の前でラブレターを燃やす島崎と岡本。謝る浅子に、仲直りするために一つ要求があるという新子。グランドに連れて行き、バスケットのポールを、目をつぶって、力いっぱい叩けと言う新子。言われた通りにすると、ポールの前に自分の顔を差し出す新子。殴った浅子も殴られた新子も痛かった。
   ある休日、サイクリングを楽しむ、沼田、島崎、六助、ガンちゃん、新子、和子。海岸に行く。急に沼田は、島崎にプロポーズする。肯く島崎。学生たちは、祝福した。海に向かって、新子に愛を告白する六助。
   教条的で、理屈っぽい台詞が多用され、鼻につくところもあるが、あれだけ一世風靡したということは、やはり新しい日本、新しい日本人ということを、みな考えずには居られなかった時代だったからだろうな。
  

   渋谷シアターTSUTAYAで、千葉誠治監督『戦国 伊賀の乱(123)』。
   天正9年のこと。伊賀者たちに一度痛い目にあわされた信長は、甲賀と手を組み、伊賀を殲滅しようと考え、四万の大軍を差し向けた。更に、伊賀の中に内通者を忍び込ませているらしい。上忍の甲斐(樋浦勉)から、凄腕の下忍、突破(合田雅吏)は選ばれ、信長からの伝言を聞くためにある洞窟に結集するという内通者たちを、火薬を使って爆死させるように命じられる。弟の物見(高野八誠)は、しきりと任務を変わってくれと迫り、妻の楓風(宝積有香)は、突破の子供を産みたいと言って、もし突破が死んだら物見の子供を産むか、甲斐の妾になって生き残ると告白される。
    突破の護衛に、二人の下忍、三者(柏原収史)と楡組(島津健太郎)が付いた。伊賀者か甲賀者か不明な忍びたちが次々に襲いかかる。果たして、突破は任務を完遂できるのか・・・。
    予告編上映中に劇場に入ると誰もいない。学生時代には、場末の映画館で経験はあるが、去年の4月以来、映画館で523本見ているが、流石に入場者自分だけは初めてだ。何故か中盤に差し掛かって関係者らしい男が入って来たのだが、1800円の入場料は高いが、自分が一人入った為に、上映しなければならないコストを考えると、申し訳ない気が・・・。
    伊賀対信長、伊賀の乱、随分と大きいテーマを掲げたなあと思っていた。ちゃんとみんな台詞喋っているし、アクションも、殺陣ではないが頑張っていると思う。でも、ちょっと短いなあ。これからというところで終わってしまった。起承で終わった今回、予算10倍くらい出資者を募って、転結作って欲しいなあ。

2009年3月2日月曜日

パンデミック(笑)

   
    赤坂メンタルクリニックに行き、シネマート六本木でメンズデー。
   是枝裕和監督『大丈夫であるようにーCocco 終らない旅ー(117)』
   2007年11月21日Zepp NAGOYAからスタートしたコンサートツアー“きらきら”を追いかけつつ、沖縄、神戸(阪神淡路大震災)青森六ヶ所村、広島と、生きることのテーマに迫っていく彼女の生き方、考え方を描くドキュメンタリー。幾つか印象に残った発言、①小学校6年生の時の夢(1)アジアからの留学生向けの下宿を作る(2)排気ガスの出ない車を発明する(3)バレエでジゼルを踊る。②六ヶ所村の存在を知らせる手紙をくれたファンを、女の子でもファンの子でもなく、青森の女と呼ぶ。ファンレターの殆どは、助けて下さいと言うメッセージばかりだが、彼女は違った。③沖縄と六ヶ所村について、世の中には飴と鞭がある。それを受け入れないと生活出来ないから、受け入れると諦めると言う気持ちだ。沖縄の新聞の主語は沖縄は、だったので、沖縄の現実を何とかして欲しいばかりだったけど、デビューして色んなところに行くと、沖縄が日本中の基地を押し付けられているように、日本中の核燃料のゴミを押し付けられている六ヶ所村があることを知った。④是枝監督が、彼女が物を食べるのを見たのは、黒砂糖のかけらだけだ。最後に彼女が拒食症の治療を受けるために入院すると言うテロップが入る。
     最後に、彼女が砂浜に穴を掘り、ファンから貰った手紙を全て燃やす場面がある。自分の髪もどんどん切って火にくべていく。「髪の毛って、死んだ人の臭いがする」。燃える火に照らされている彼女の横顔は、本当に美しい。
     音声もう少しクオリティ高かったらと思ってしまうが、ドキュメンタリーとして、素晴らしい。

     瀬々敬久監督『感染列島(118)』。
    東京都いずみの市市営病院のER部門の医師、松岡剛(妻夫木聡)は、風邪の患者真鍋秀俊を診る。インフルエンザの検査は陰性だったので、数日安静にしていれば大丈夫だと帰宅させる。しかし、翌日搬送されてきた真鍋は、高熱を発し、致命的な症状で、吐血し、その血を、安藤医師(佐藤浩一)は顔面に浴びることになる。真鍋の妻、麻美(池脇千鶴)も、発熱しているが、夫が亡くなったことで、松岡の診断を責める。徐々に重篤な患者が運び込まれる。市内の神倉養鶏場に鶏インフルエンザが発症する。市内で発症した患者の原因が判明しないため、鶏インフルエンザではないかとの憶測が生まれ神倉(光石研)は悪戯電話を受けるようになった。神倉の娘の中学生、茜(夏緒)は、学校でいじめられる。ボーイフレンドの本橋研一(太賀)が唯一の味方だ。
   最初に病気が判明したいずみの市営病院は、WHOのメディカル・オフィサー小林栄子(壇れい)をリーダーとする医療チームが派遣され、隔離病院となる。病院の院内感染主任の高山(金田明夫)らは、その高圧的な態度で反発する。栄子は、実はかって松岡が医学生時代に大学助手で、交際していたが、栄子が海外に留学し別れた過去があった・・・・。
   うーん、CGで廃墟になった日本の各都市と、いずみの市営病院との温度差がある。一時、病人が殺到し、病院の周囲は大混乱になるが、一瞬のことで、その後ストーリーに関係のあるキャストが訪れるだけだ。病院内も戦場だと言う割には、隔離病棟だけのことで、そこから出ると、大混乱していたこともあったが、すぐに平穏を取り戻している。銀座や渋谷、大阪、広島、各都市は、暴動が起きた後、あっというまに、廃墟になり、無人になる。まるで日本に人間が、出演者以外いなくなってしまったように(苦笑)。その割には、いずみの市営病院は、院内だけでなく、外の看板までちゃんと灯りが付いているし、政府機関の人間は、ちゃんと機能してスーツ、ネクタイ姿だ。
   ストーリーも、一病院の医師である妻夫木と、WHOのメディカルオフィサーの壇れいのラブストーリーにしてしまっているので、日本を救うのは二人しかいないのかという感じだ。軍人が完全防備で感染者を収容している横で、二人は、マスクもつけず、普通の姿で歩いている。飛沫感染なのに、大丈夫かよと心配するまでもない。大混乱の中、妻夫木はウィルス感染源を特定しに、海外渡航してしまう。それも、国交のない国に。
   妻夫木、壇れいのラブストーリーでなく、群像劇にしなければいけなかっただろう。しかし、群像劇は、脚本と演出によほど力量がないと、構成できないだろう。話題作りに、テレビお茶の間キャスティングで、脇役に芸人とかを出演させてしまうので、更に薄っぺらくなってしまう。テレビ特番でもおかしくない作り方だな。ウィルス感染の啓蒙だったら、テレビドラマを最初に作ればよかっただろうに・・・。海外セールスでは、去年のカンヌで、映像も何もない段階で、オファーが何十社もあったというが、パニック映画だからな。買ってしまった担当者は出来上がったものを見て、ウィルスパニック映画かゾンビ映画といったベタなジャケットを作ってビデオストレートな感じ(苦笑)。カンニング竹山や爆笑問題の田中は、日本では人気のコメディアンのカメオ出演(苦笑)。ソフトバンクのホワイト家族のお兄ちゃんに至っては、誰にもわからないだろうな(更に苦笑)。
   おくりびとで邦画この世の春に浮かれるマスコミと、この映画が表すあまりに悲しい現実に、疲れて、国立劇場の落語研究会に振られた元同僚と飲むことに。劇映画が駄目で、ドキュメンタリーはいいということは、ストーリーを作ることと、ストーリーを理解することに関して、邦画界にあまりに人材がいないと言うことなんだろう。自棄酒、自棄喰いだっ。

2009年3月1日日曜日

餃子とビール

  随分前に、友人から勧められ買ったままになっていた内藤旬子さんの「世界屠畜紀行」初め、溜まっていた本を読み始める。読んでは居眠りを繰り返し終日。気が付くと夕方に。買い物に出ようとすると、家のドアにホワイト餃子がぶら下げっている。独身美人OLが、惣菜のタッパーを返しに来てくれたようだ。博華で餃子とビール。