スティーブン・ソダーバーグ監督『チェ39歳 別れの手紙(125)』
キューバ革命は画期的な勝利を収め、1965年、工業省大臣に任命されたエルネスト・チェ・ゲバラ(ベニチオ・デル・トロ)は、カストロに一通の別れの手紙を残し姿を消す。1年後、ボリビアのラムスの空港に、完全に変装を施し、OAS(米州機構)の特使に偽装したパスポートを持ったゲバラの姿がある。コパカバーナホテルの304号室で、入れ歯などを注意深く外し、タバコを吸い、新聞を読むゲバラ。荒れ果てた岩だらけの山間部に入っていく車。山あいのボリビア人民解放軍のアジトに辿り着く。中南米では伝説の男チェ・ゲバラの参加は解放軍の兵士たちを勇気づける。次々と結集する男たち。
ボリビアは農地解放を目的に革命が起こされたが、革命政府は腐敗し、軍事独裁政権下で、ボリビア人民は圧政に苦しめられていた。ボリビア共産党の第1書記のモンへに訴えるが、共産党は、軍事革命を否定し、人民解放軍を支持しなかった。ゲバラは、キューバで行ったように、兵士を鍛えるべくジャングルの中で、行軍訓練を行う。しかし過酷な訓練は脱走兵や、内部の諍いを生んだ。更にジャングルの中の秘密基地が仲間のミスにより、政府軍に発見されたため、喘息の薬を携行していなかったゲバラは、その後ずっと喘息の発作に苦しめられることになる。カストロのキューバからの支援もあったが、キューバ革命でカストロがいればこそ発揮された他の反政府組織へのオルグや、地上の支援組織が圧倒的に弱く、ゲリラ軍は次第にジャングルの中に追い詰められていく。更にキューバ革命で煮え湯を飲まされたアメリカの軍事支援によるゲリラ掃討作戦は熾烈を極める。
大部隊に徐々に包囲されるゲバラたち。更に政府軍の脅迫もあり、民衆たちの裏切りもあり、次々に死んでいく兵士たち。遂に324日目、アルトセラ渓谷で、脚を撃たれたゲバラは政府軍の手に落ちた。銃殺命令が降りゲバラの39年の人生の幕が下りた。
ヒューマントラスト・シネマ渋谷で、北川悦吏子監督『ハルフウェイ(126)』
小樽の城東高校3年の近藤ヒロ(北乃きい)が、遅刻しそうになり急いで自転車を漕いでいる。少し前にやはり自転車で急ぐ同じ学年の篠崎シュウ(岡田将生)の姿。体育館でバスケットボールをしている男子学生たち、シュウが見事なシュートを決める。シュウに憧れているヒロと友達のメメ(仲里依紗)と一緒に大騒ぎだ。大騒ぎしすぎて貧血を起こしメメに連れられ保健室に向かうヒロ。保健教諭(白石美帆)は氷を取りに言った。ヒロは保健室のベッドで、メメにシュウに25メートル近づくだけで駄目だと言う。告っちゃえとメメに言われ、練習し始めるヒロ。保健教諭が戻ってくると二人ともベッドで眠っている。女生徒たちが体育館で篠崎が怪我をしたと呼びにきたので出て行く。
そこに鼻血を出したシュウがやってくる。起きていたメメはビックリするが、シュウが保健室に入ってきた時に、濡れタオルを当てていたヒロは、シュウがいるとは知らずに、夢の中でシュウに告白し付き合うことになった。下校の時に告白すると宣言する。下校時間、シュウが自転車で川の土手でヒロが待っている。ヒロに声を掛けられて、シュウが「付き合って下さい」と言う。突然のことに頭が混乱して、「急にそう言われても困るので考えさせて下さい」と答えるヒロ。そして急に自転車を漕ぎ出し、土手を転がり落ちて横転するヒロ。大丈夫と駆け寄るシュウに、正座して、手を出し宜しくお願いしますと言うヒロ。しかし、反対方向に走り出し、一周して、やっぱり一緒に帰ろうと戻ってくる。ウキウキのルンルン(苦笑)。
シュウの男友達のタスク(溝端淳平)に紹介され、一緒にお好み焼き屋に行き、それから暫く夢のような毎日だった。高3で志望校を聞くと、まだ決めていないとシュウ。しかし、タスクからシュウは早稲田が志望校だと聞いて、東京に行ってしまうのかと思ったヒロは土手にシュウを呼び出し、私に秘密にしていることはないかと尋ねる。思いつかないシュウに、上京するのに自分に告ったのは、裏切りだと責めるのだ。早稲田に、東京に行かないでくれと迫るヒロ。マジギレされて返す言葉が無いシュウ。
それから暫く学校で会っても避けられ、携帯には出ない、メールも返信の無いヒロ。図書館で見かけ、ダッシュで校内を追いかけるシュウ。あの日で別れたんだからと言われ落ち込むシュウ。担任(成宮寛貴)に相談すると、彼女を取るか早稲田を取るかと言う選択は、余りに近過ぎるんじゃないか、よく考えろと言われる。雨の日、タスクに傘に入る?と尋ねるヒロ。人を待っているからと答えるタスク。シュウが早稲田諦めたねと言われて驚くヒロ。ちょっと自分の彼女を紹介するよとタスクに渡された携帯の相手はシュウだった。止めたんだと聞いて嬉しくなるヒロ。さっそく会いに行く。
しかし、受験が気になり始めると、志望校を諦めたシュウは、どうも集中出来ない。受験まで、携帯もメールも含めて距離を置こうかと言い出すシュウ。次第にシュウの悩みに、気がつき始めるヒロ。メメは、家庭の事情で大学を諦めていたが、父親が急に再婚を決め、お前も進学しろと言われて困っていると言う。しかし、困っていると言っても嬉しそうだ。書道教師の平林(大沢たかお)に、何か悩んでいるなと声を掛けられ、私の友人の話として話始める。最初は、東京に行って欲しくなくて引き止めたが、自分のために上京を止めたと思うと何だか引っかかるのだと。平林は、好きなコの為に志望校を変えた彼氏はいい奴だ。そのまま、ずっと一緒にいるのもいい。ただ、人生はずっと長いんだから、東京に行ってもっと大きな人間になったらもっといいよねと言う。お前の気持ちを書いてみろと勧められて、“いけ”“いくな”と思いっ切り書くヒロ。シュウの教室に行って、手を引いて廊下を走り出すヒロ。職員室に行き、シュウの担任に、篠崎くんを早稲田に行かせて下さいと頭を下げるヒロ。驚き、やめたんだと言うシュウと言い争いになる。担任は、篠崎の本当の気持ちはどうなんだ?と尋ねる。暫く黙っていたシュウは、やっぱり早稲田に行きたいと答える。応援すると言う担任に、二人で頭を下げる。
一緒に受験勉強をする二人の姿がある。英単語のHALFWAYをハルフウェイと信じきっていたヒロを笑うシュウ。
いよいよ、早稲田の受験の為に東京に出発する日、ヒロは一生懸命お弁当を作る。家を出て自転車に乗るとシュウがいる。南小樽の駅に向かいながら、色々なことを話す二人。新千歳空港行きの汽車が着いた。乗り込むシュウを見送るヒロ。
全編手持ちカメラは、主観的な視点で、観ている者を、高校生の二人の恋愛の目撃者とする。目撃者の立場が、同級生なのか、先生なのか、全く彼らから見えない透明人間なのかは、それぞれだろう。何だか、今のうちはもっと悩んで成長しろと微笑ましく思ってしまう自分は保護者なのだろう。そうして、高校生の恋愛の目撃者になってしまった時点で、監督たち製作者に嵌められてしまったと思う。正直な話、少女漫画だ。学校のヒーローに憧れる、ドジで普通の女子高生が恋の告白をすると両思いで成就する。あくまでも、彼氏は優しく、自分を見て!見て!、自分をどれだけ解っているの?と勝手に要求するだけの主人公に振り回され、彼女のために、自分の夢を捨てる。しかし、自分が束縛することは彼氏にとって良くないと気付いた主人公は、自分の気持ちを我慢して、彼氏の夢の後押しをする。男子に要求するだけの女子の成長譚。
自分は、そんな素敵な主人公の想われ人ではなく、勝手に片思いした女子の気まぐれな発言に振り回されて、一人相撲でオウンゴールした哀しい少年だったのだが、変わらないんだなあ。というか変わらないと思いたい。ただ、北乃きいがドタドタ走り回る姿は、自分の時代は中学生までだった。高校時代の同級生は、女の子というより、女を意識して、いつまで経っても小学生マインドな同級生な男子よりも、もう少し年上の男性を意識していた気がする。
北川悦吏子、岩井俊二、小林武史というトリオに、かなり陰険な根性で見ていたが、何だか、手持ちカメラにやられてしまった。最も懐疑的だったが、その場で役者に自分たちで考えた言葉を喋らせるということも、成功している。考えてみれば成宮寛貴や大沢たかおが先生役だったからと言って武田鉄矢のような言葉を話したら失笑ものだろう。ひとつだけ文句を言うと、音楽は、ソロピアノなど、JPOP的にかなり通俗だ。しかし、捻くれた50親父ではなく、出演者と同世代や、つい最近の思い出だった世代には、ものすごく抒情的なんだろう。個人的には、音楽が無かったら、よりセンチメンタルな映画になったと思う。
女子高生から、二十歳前後のお嬢さん二人組とカップルしかいない映画館は、いつもの加齢臭が立ち込めた映画館とは違って、開演前のおしゃべりは華やいで感じるなあ。その中に坊主頭巨漢の50親父は、かなり異質だ(苦笑)。
大部隊に徐々に包囲されるゲバラたち。更に政府軍の脅迫もあり、
ヒューマントラスト・シネマ渋谷で、北川悦吏子監督『
小樽の城東高校3年の近藤ヒロ(北乃きい)が、
そこに鼻血を出したシュウがやってくる。
シュウの男友達のタスク(溝端淳平)に紹介され、
それから暫く学校で会っても避けられ、携帯には出ない、
しかし、受験が気になり始めると、
一緒に受験勉強をする二人の姿がある。
いよいよ、早稲田の受験の為に東京に出発する日、
全編手持ちカメラは、主観的な視点で、観ている者を、高校生の二人の恋愛の目撃者とする。目撃者の立場が、同級生なのか、先生なのか、全く彼らから見えない透明人間なのかは、それぞれだろう。何だか、今のうちはもっと悩んで成長しろと微笑ましく思ってしまう自分は保護者なのだろう。そうして、高校生の恋愛の目撃者になってしまった時点で、監督たち製作者に嵌められてしまったと思う。正直な話、少女漫画だ。学校のヒーローに憧れる、ドジで普通の女子高生が恋の告白をすると両思いで成就する。あくまでも、彼氏は優しく、自分を見て!見て!、自分をどれだけ解っているの?と勝手に要求するだけの主人公に振り回され、彼女のために、自分の夢を捨てる。しかし、自分が束縛することは彼氏にとって良くないと気付いた主人公は、自分の気持ちを我慢して、彼氏の夢の後押しをする。男子に要求するだけの女子の成長譚。
自分は、そんな素敵な主人公の想われ人ではなく、勝手に片思いした女子の気まぐれな発言に振り回されて、一人相撲でオウンゴールした哀しい少年だったのだが、変わらないんだなあ。というか変わらないと思いたい。ただ、北乃きいがドタドタ走り回る姿は、自分の時代は中学生までだった。高校時代の同級生は、女の子というより、女を意識して、いつまで経っても小学生マインドな同級生な男子よりも、もう少し年上の男性を意識していた気がする。
北川悦吏子、岩井俊二、小林武史というトリオに、かなり陰険な根性で見ていたが、何だか、手持ちカメラにやられてしまった。最も懐疑的だったが、その場で役者に自分たちで考えた言葉を喋らせるということも、成功している。考えてみれば成宮寛貴や大沢たかおが先生役だったからと言って武田鉄矢のような言葉を話したら失笑ものだろう。ひとつだけ文句を言うと、音楽は、ソロピアノなど、JPOP的にかなり通俗だ。しかし、捻くれた50親父ではなく、出演者と同世代や、つい最近の思い出だった世代には、ものすごく抒情的なんだろう。個人的には、音楽が無かったら、よりセンチメンタルな映画になったと思う。
女子高生から、
イメージフォーラムシアターで、WE ARE THE PINKSCHOOL。
69年国映向井寛監督『色仕掛け女 極道 ブルーフィルムの女(127)』
東証(大証?)や証券会社の外観と裸体に映写されるブルーフィルムが冒頭に続く。
買いの相場師坂田健三(河東智介)は、大損し、金貸しの内山(藤井貢)から借りた二千万を焦げ付かせてしまう。今月末までには返せないと、坂田は首を吊ろうとする。妻と娘の真理子(橋本実紀)は必死で止める。
翌日内山がやってくる。何とか待ってもらえないかという坂田に、それは出来ないと言う内山。
坂田の隣で、何でもしますからという妻を好色そうに眺めた内山は、「奥さん、あんたが自分の身体で払うなら、3か月待ってやってもいい」と言うのだ。坂田はすぐに否定したが、他に当てがある訳でもなく、妻は了解した。更に「この家でいまからや」と言う内山。二階の部屋に上がり人妻に手を掛ける内山。妻のあえぎ声に頭を掻き毟り苦悩する坂田。居た堪れなくなって、ふらふらと外に出ると、すれ違いで、真理子が学校から帰宅してしまう。二階に上がり、襖の隙間から、母と内山のあられもない姿を見て、ショックを受ける真理子。
内山は、「あんたやて、けっこう楽しんどったやないか。そやけど、2000万もの金、半年やそこらで集められるんか?」と坂田の妻に、もし、自分の狂った息子の相手をしてくれたら、3年待ってやってもいいと持ちかける。泣く泣く了解し、内山の家に行き、不憫な内山の息子、ヒロシを幽閉している土蔵に行く。薄暗い土蔵の中には、ネズミや蛇がいて、気を失う坂田の妻。そこに緋襦袢を着たヒロシが、セルロイドの人形とブリキの車を持って現れる。気が付いた坂田の妻に迫るヒロシ。恐怖に歪む坂田の妻にのしかかっていくヒロシ。
心身ともに、襤褸切れのようになった坂田の妻が、フラフラと歩いている。呆然と道路を渡ろうとして車に撥ねられてしまう。警察からの電話で母の死を知った真理子は、坂田が殺したんだと責める。自戒の念で沈痛な面持ちで立ち上がった坂田は倒れる。以降、中風で寝た切りになる坂田。
真理子は、ゴーゴーガールで生計を立てるようになった。金を貯めて内山を見返すことだけを目標に生活する真理子。同僚の女からは、ケチで、あの子は15円のパン二つが晩御飯やと陰口を叩かれている。帰宅し、坂田の世話をする真理子。数日後、内山が店に現れる。借金どうするんや、あんたの身体ででも払うんやなと言う内山。店のマネージャーが、迫ってくる。マネージャーと肉体関係のある女が入ってきて、真理子を殴ったが、純潔の危機は逃れることが出来たが、帰宅した真理子を待っていたのは、睡眠薬自殺した父の姿だった。
真理子は、クラブのホステスをしている。同僚のホステスのアパートに転がり込んで、家事を全てやることで、タダで住まわせてもらっているのだ。更に、造花の内職までして、金を貯めようとしているのだ。同僚ホステスの情夫の次郎は、ベッドであのこはお金が欲しいのよと聞かされて、あの女は金になると言うのだった。次郎は、金持ちの秘密パーティに行けば10万貰えるぞと真理子を誘う。承諾し、更に自分の処女を売ることで30万を受け取った。それ以降、次々と5人の男に抱かれる真理子。ホテルに男たちが、無記名の招待状を受け取って集まる。そこに真理子が現れ、自分と関係しているブルーフイルムを見せ、強請るのだった。激怒しながらも、こんなものを世間に流されたらと金を出す男たち。
真理子は、貯めた金で、株を買い、ミナミのヤクザにあのフィルムを500万で売った。内山に金を叩き返し、父母の墓前に報告している真理子の姿がある。内山は、ヒロシに食事を運ぶ。ヒロシは、何を勘違いしたか、父親の内山にのしかかり、後ろから犯す。逃げようとしても、力の強いヒロシに抑えつけられる内山。
その頃、海岸に停まる車の中で、抱き合う次郎と真理子。ようやく幸せをつかんだ真理子。しかし、車が近付いてきて、サングラスを掛けたヤクザ風の男たちが降りてくる。次郎は、かんにんやと言いながら、真理子の首を絞める。株式市況がラジオから流れている。離れたところから、車を見ると、苦しんでいる真理子の右手は、株の立ち場での合図を出しているように見える。
坂田夫妻、内山など、ちゃんとした芝居が続き、濡れ場も品のいいものなので、前半は、やはり名作と呼ばれるだけのことはある。しかし、終盤は、十分な伏線や説明的なシーンや台詞が一切ない。尺の関係で切らなければならなかったのかもしれないが、いきなり殺されちゃって、おしまいかと少々残念。
72年新東宝山本晋也監督『特殊三角関係(128)』
林田良治(野上正義)は、サラリーマン。恋人の瀬能涼子(谷ナオミ)と肉体関係にあったが、課長の娘の和子(篠原千恵?)と結婚することに。課長は「万年課長の自分の娘を貰ってくれて、もう思い残すはない。戦争で亡くなった、君のお父さんもどんなに喜んでいるか」と涙を流し、今日は結婚前日最後の夜だから、夜明けのコーヒーを飲んできなさい(?)と言う。
港を歩く二人、酒を飲み、ホテルの部屋で、実は交際していた女性がいたんだと告白する良治。あなたの正直さに惚れ直しました、今日はもう帰らない(?)という和子。
郊外の一戸建てが、二人の新居だ。披露宴の集合写真を見ている和子は、この方はどなたでしたっけ?と無邪気に聞く。だから、涼子に来るなと言ったのにと呟き、とぼける良治。
涼子と別れたものの、忘れられない良治は、涼子の部屋を訪ねる。もう別れたから駄目、とドアを開けなかった涼子だが、良治の遠ざかる足音に、ドアを開け声を掛けてしまう涼子。
涼子から贈られたライターを見つけてしまう和子。しかし、和子は、涼子に連絡し会う。ウマが合い、とても仲良くなる二人。自宅と涼子の部屋を往復し、双方で男としての勤めを果たす良治。和子と涼子はお互いの家を行き来するようになり、最後には良治、和子、涼子3人の奇妙な生活が始まる。二人の女からの要求はどんどん過酷なものになり、良治はどんどんやつれ、終いには会社で意識を失う。
山本晋也監督の映画は未亡人下宿シリーズのような、かなりベタでオヤジっぽい馬鹿馬鹿しさ満載のギャク映画のイメージが強かったが(一応、褒め言葉)、この映画は、フランス艶笑小咄のような作りだ。まあ、その印象は、今となっては、ヤバすぎる古今東西の名曲の無断借用のせいではないかと思う。一応、国内の曲は、印象的なイントロとサビだけオリジナルをパクって、珍妙な曲にしているが、当時はよかったにしても、現在なら完全にアウトだったり。「ハルフウエイ」では音楽を貶しておいてなんだが、映画って、本当に音楽が重要だなあ(苦笑)。
打って変わってシネフィル度満点なお客さんがそれなりにいっぱい。結構女性客も多い。本当は、もう2本見る気まんまんだったのだが、フィルムトラブルで中断があり、相当押してしまった。まあクレームというより、ピンク映画上映館では、しばしばあったことなので、何だか懐かしい感じだなあ。観客も文句も言わず、客電がつくと、気まずそうにもじもじするところも一緒だ。結局時間が合わなくなり、ここで止めて、帰ることに。ということで博華で餃子とビール。
69年国映向井寛監督『色仕掛け女 極道 ブルーフィルムの女(127)』
東証(大証?)や証券会社の外観と裸体に映写されるブルーフィルムが冒頭に続く。
買いの相場師坂田健三(河東智介)は、大損し、金貸しの内山(藤井貢)
翌日内山がやってくる。何とか待ってもらえないかという坂田に、それは出来ないと言う内山。
坂田の隣で、何でもしますからという妻を好色そうに眺めた内山は、「奥さん、あんたが自分の身体で払うなら、3か月待ってやってもいい」と言うのだ。坂田はすぐに否定したが、他に当てがある訳でもなく、妻は了解した。更に「この家でいまからや」と言う内山。二階の部屋に上がり人妻に手を掛ける内山。妻のあえぎ声に頭を掻き毟り苦悩する坂田。居た堪れなくなって、ふらふらと外に出ると、すれ違いで、真理子が学校から帰宅してしまう。二階に上がり、襖の隙間から、母と内山のあられもない姿を見て、ショックを受ける真理子。
内山は、「あんたやて、けっこう楽しんどったやないか。そやけど、2000万もの金、半年やそこらで集められるんか?」と坂田の妻に、もし、自分の狂った息子の相手をしてくれたら、3年待ってやってもいいと持ちかける。泣く泣く了解し、内山の家に行き、不憫な内山の息子、ヒロシを幽閉している土蔵に行く。薄暗い土蔵の中には、ネズミや蛇がいて、気を失う坂田の妻。そこに緋襦袢を着たヒロシが、セルロイドの人形とブリキの車を持って現れる。気が付いた坂田の妻に迫るヒロシ。恐怖に歪む坂田の妻にのしかかっていくヒロシ。
心身ともに、襤褸切れのようになった坂田の妻が、フラフラと歩いている。呆然と道路を渡ろうとして車に撥ねられてしまう。警察からの電話で母の死を知った真理子は、坂田が殺したんだと責める。自戒の念で沈痛な面持ちで立ち上がった坂田は倒れる。以降、中風で寝た切りになる坂田。
真理子は、ゴーゴーガールで生計を立てるようになった。金を貯めて内山を見返すことだけを目標に生活する真理子。同僚の女からは、ケチで、あの子は15円のパン二つが晩御飯やと陰口を叩かれている。帰宅し、坂田の世話をする真理子。数日後、内山が店に現れる。借金どうするんや、あんたの身体ででも払うんやなと言う内山。店のマネージャーが、迫ってくる。マネージャーと肉体関係のある女が入ってきて、真理子を殴ったが、純潔の危機は逃れることが出来たが、帰宅した真理子を待っていたのは、睡眠薬自殺した父の姿だった。
真理子は、クラブのホステスをしている。同僚のホステスのアパートに転がり込んで、家事を全てやることで、タダで住まわせてもらっているのだ。更に、造花の内職までして、金を貯めようとしているのだ。同僚ホステスの情夫の次郎は、ベッドであのこはお金が欲しいのよと聞かされて、あの女は金になると言うのだった。次郎は、金持ちの秘密パーティに行けば10万貰えるぞと真理子を誘う。承諾し、更に自分の処女を売ることで30万を受け取った。それ以降、次々と5人の男に抱かれる真理子。ホテルに男たちが、無記名の招待状を受け取って集まる。そこに真理子が現れ、自分と関係しているブルーフイルムを見せ、強請るのだった。激怒しながらも、こんなものを世間に流されたらと金を出す男たち。
真理子は、貯めた金で、株を買い、ミナミのヤクザにあのフィルムを500万で売った。内山に金を叩き返し、父母の墓前に報告している真理子の姿がある。内山は、ヒロシに食事を運ぶ。ヒロシは、何を勘違いしたか、父親の内山にのしかかり、後ろから犯す。逃げようとしても、力の強いヒロシに抑えつけられる内山。
その頃、海岸に停まる車の中で、抱き合う次郎と真理子。ようやく幸せをつかんだ真理子。しかし、車が近付いてきて、サングラスを掛けたヤクザ風の男たちが降りてくる。次郎は、かんにんやと言いながら、真理子の首を絞める。株式市況がラジオから流れている。離れたところから、車を見ると、苦しんでいる真理子の右手は、株の立ち場での合図を出しているように見える。
坂田夫妻、内山など、ちゃんとした芝居が続き、濡れ場も品のいいものなので、前半は、やはり名作と呼ばれるだけのことはある。しかし、終盤は、十分な伏線や説明的なシーンや台詞が一切ない。尺の関係で切らなければならなかったのかもしれないが、いきなり殺されちゃって、おしまいかと少々残念。
72年新東宝山本晋也監督『特殊三角関係(128)』
林田良治(野上正義)は、サラリーマン。恋人の瀬能涼子(谷ナオミ)と肉体関係にあったが、課長の娘の和子(篠原千恵?)と結婚することに。課長は「万年課長の自分の娘を貰ってくれて、もう思い残すはない。戦争で亡くなった、君のお父さんもどんなに喜んでいるか」と涙を流し、今日は結婚前日最後の夜だから、夜明けのコーヒーを飲んできなさい(?)と言う。
港を歩く二人、酒を飲み、ホテルの部屋で、実は交際していた女性がいたんだと告白する良治。あなたの正直さに惚れ直しました、今日はもう帰らない(?)という和子。
郊外の一戸建てが、二人の新居だ。披露宴の集合写真を見ている和子は、この方はどなたでしたっけ?と無邪気に聞く。だから、涼子に来るなと言ったのにと呟き、とぼける良治。
涼子と別れたものの、忘れられない良治は、涼子の部屋を訪ねる。もう別れたから駄目、とドアを開けなかった涼子だが、良治の遠ざかる足音に、ドアを開け声を掛けてしまう涼子。
涼子から贈られたライターを見つけてしまう和子。しかし、和子は、涼子に連絡し会う。ウマが合い、とても仲良くなる二人。自宅と涼子の部屋を往復し、双方で男としての勤めを果たす良治。和子と涼子はお互いの家を行き来するようになり、最後には良治、和子、涼子3人の奇妙な生活が始まる。二人の女からの要求はどんどん過酷なものになり、良治はどんどんやつれ、終いには会社で意識を失う。
山本晋也監督の映画は未亡人下宿シリーズのような、かなりベタでオヤジっぽい馬鹿馬鹿しさ満載のギャク映画のイメージが強かったが(一応、褒め言葉)、この映画は、フランス艶笑小咄のような作りだ。まあ、その印象は、今となっては、ヤバすぎる古今東西の名曲の無断借用のせいではないかと思う。一応、国内の曲は、印象的なイントロとサビだけオリジナルをパクって、珍妙な曲にしているが、当時はよかったにしても、現在なら完全にアウトだったり。「ハルフウエイ」では音楽を貶しておいてなんだが、映画って、本当に音楽が重要だなあ(苦笑)。
打って変わってシネフィル度満点なお客さんがそれなりにいっぱい。結構女性客も多い。本当は、もう2本見る気まんまんだったのだが、フィルムトラブルで中断があり、相当押してしまった。まあクレームというより、ピンク映画上映館では、しばしばあったことなので、何だか懐かしい感じだなあ。観客も文句も言わず、客電がつくと、気まずそうにもじもじするところも一緒だ。結局時間が合わなくなり、ここで止めて、帰ることに。ということで博華で餃子とビール。
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