2009年8月29日土曜日

今日は渋谷で、ごっじっ ~♪

   今日こそ、吉祥寺バウスシアターで、「色即ぜねれいしょん」を誕生月割引で見ようと準備をしていたら、時間が変わっていて駄目だった。

   意気消沈しつつ、専門学校の体験入学の講師に行く。高校2年の女子二人。少し内容を噛み砕きつつ、本当はまずいのかもしれないが、途中からこちらも座って目線を同じにして話す。それからの方がリアクションが良くなる。座学の講義スタイルより、ゼミ形式の方が少人数の場合は圧倒的にいい。

    渋谷シアターフォーラムシアターで、04年オリヴィエ・アサイヤス監督『クリーン(493)』
    カナダ、ハミルトン港湾地区、製鉄所なのか、蓄炭施設なのか、夜ボケた灯りに浮かび上がっている。翌日昼過ぎこの街のモーテルに、42歳の落ちぶれたロックシンガー、リー・ハウザー(ジェームス・ジョンソン)と、マネージャー気取りの妻のエミリー・ワン(マギー・チャン)が車を着ける。待っていたのは、フリーのプロデューサーのバーノン(ドン・マッケラー)。明日のライブハウスに挨拶に行くぞとバーノン。リーのマネージャーは私だ、勝手にリーに指示するなと叫ぶエミリーを適当にあしらって、リーを連れて行く。オーナーのX線(X-ray)にリーを紹介する。その時、ステージには、デビー・ハリーのような女性ボーカルのいる地元カナダのバンドメトリックが演奏している。テキサスのインディーズレーベルのクラックスが契約したいと言っているとリーに言うバーノン。マネージャーは私たがら私に話せと苛立つエメリー、リーには二つメジャーからのオファーがあるのよ、リーの才能を安売りする気なのと食い下がるエメリーに、今すぐそいつらに電話をしてみろと携帯を渡すバーノン。黙ってしまうエメリー。時間がないと言って、リーをモーテルに連れ帰るエメリー。
    メトリックのメンバーがステージから降りてくる。リーが来ていたわね、話がしたかったわと女性ボーカル。我が儘女房が自分で直接やると連れて行ったとバーノン。あのジャンキー女?あの疫病神のせいで5年を無駄にしたわね、別れなきゃ、駄目だわ、二人に子供はいるの?ああ、ジェイと言う名前の子供が、バンクーバーのリーの両親に育てられているよとバーノン。
    モーテルに帰ってきた二人。リーは、バーノンの言うレーベルの話を考えたいと言うが、エメリーは、ドリームワークスのスーザンはあなたに首ったけなのよと言う。しかし、デモテープを送ってから随分経っているし、スーザンに決定権などないことは何度もやり合ってきたことなのだ。今自分に必要なのは、掛かって来る筈もないメジャーからの電話を待っていることではなくて、CDを作ることだとリー。じゃあ曲は書けたの?と追い詰めてしまうエメリー。今自分に思い付くのはつまらない曲だが、いい曲が書ける気がする、書けなければ終わりだ、出て行ってくれとリー。
     モーテルのフロントの若僧に、ヤクの売人の連絡先を聞いていたエメリーは、待ち合わせ場所に行き、ヘロインを買う。結局、帰る気もせず、港で、ヘロインを注射して、車の中で眠るエメリー。気が付いた時には、明け方だった。モーテルに戻ると、パトカーや警官が騒いでいる。胸騒ぎがして、部屋に向かうと警官に止められる。私は妻だと暴れ、手錠を掛けられるエメリー。目の前をリーの遺体を載せた救急車を涙で見送るエメリー。一方、カナダバンクーバーの、リーの父親アルブレヒト・ハウザー(ニック・ノルティ)の元に、2人の警官が訪れ、息子の死を伝える。孫のジェイ(ジェームズ・デニズ)を連れて妻のローズマリー・ハウザー(マーサ・ヘンリー)が帰宅する。ジェイを2階の自分の部屋に上げ、息子の死を妻に告げる。気持ちを抑えきれず、庭に走り出して、泣き出すローズマリー。ジェイは、部屋から出てきて、二人の話を盗み聞きする。
    留置場から取り調べに呼ばれるエメリー、リーはヘロインのオーバードーズだった。死亡推定時刻の午前4時にどこにいたのか、リーにヘロインを渡したのはお前か、お前も薬物依存症かと問い質される。結局、リーと喧嘩して外出して戻ってこなかったと、モーテルの男が証言したので、エメリーは、ヘロインの所持の6ヵ月の懲役で済んだ。バートンが面会に来て、モジョの表紙を含め、リーの死亡がかなり取り上げられ、昔の原盤を出したいと言うオファーが多数あった。一番高い金を出すところと契約したので、リーとエメリーの借金を返済して、エメリーの弁護士費用も捻出した、その代り、二度と相談に来ないでくれ、自分の前に現れないでくれと言って帰っていく。
   6か月が経って、エメリーが出所する。車を売って現金に換え、近くのモーテルに泊る。アルブレヒトがエメリーに会いにやってきた。ハンバーガーショップで、義父と嫁は再会する。リーとエメリーが暮らしていたアパートの家財道具は整理してここに預けてある、また共同口座はエメリーの名義に替え、クレジットカードも使えるようにした、金額は決して多くはないが、6日?6週間?は、何とか暮らせるだろう。今日裁判所から、ジェイの養育は、祖父母の我々が引き続き行うように、命令が下りた。事務的な話を言いにくそうに話す。「ところで、ロンドンに帰るのかい?」「バリに行こうと思っているわ、リーに出会う前に暮らしていたバリに。ロンドンはリーとの思い出が沢山あって辛すぎる」「そうだ、ミョージシャンのトリッキーはリーの友人だったのかい。」「ええ、スーパースターよ」「彼はリーの友人として、とてもよくしてくれた。あの人はとても信頼が出来そうだね。」帰りがけに、言いにくそうに、アルブレヒトが「ジェイのことなんだが…、あの子は適応力はとてもあるが、繊細な子だ。父親が死んだことを受け止められているか、自信がない。しばらくの間、会うのを控えてくれないか。必ず連絡をするから」頷くしか出来ないエメリー。車を見送って泣く。
     数週間後のバリ、叔父の紹介で中華料理店のウェイトレスとして働くエメリー。体力的にも辛い上に、完全に薬物から切れていない。仕事の合間に、安定剤を飲み、地下駐車場でマリファナで一服していると、同僚から、親父に密告されるぞ、みんな迷惑しているんだと注意される。情緒不安定になり、他の従業員と接触し、床に倒れるエメリー。昔の仲間のジャン・ピエール(レミ・マーティン)に、ヤクのことを頼む。売人の?が家に籠もって連絡が出来なくなっていると言う。?の元彼女が部屋の合い鍵を持っていると言うので、行ってみると、?はオーバードーズで死んでいた。証拠をトイレに流し隠滅してから警察を呼ぶ。ジャン・ピエールに、トリッキーのパリ公演の時に会わせてもらえないかと頼む。
    エメリーのもとに、MDが届く。刑務所内で知り合ったグロリアと作ったデモテープだ。エメリーは、なけなしの金を集めてMDプレイヤーを買う。友人でミュージシャンのエレナ(ベアトリス・ダウ)にに、グロリアと作ったデモテープを聞いて貰う。どこかで聴いたことのあるようで、悪くない曲ねと言う。皮肉のようだが、エレナは応援すると言ってくれた。
    次に、エメリーがケーブルテレビで、音楽番組のパーソナリティをやっていた時の同僚のイレーヌ・パオリーニ(ジャンヌ・バリバール)のオフィスを訪ねる。約束していた筈なのに、すっぽかされる。昔からイレーヌはそう言う女だった。イレーヌのアシスタントのサンドリーヌ(レティシア・スビキギャレリ)は、いつものことですと慰め、高校生の頃、エメリーの番組の大ファンで、髪型も服装も全て真似していたと言う。

エレナ(ベアトリス・ダウ)イレーヌ・パオリーニ(ジャンヌ・バリバール)ジェイ(ジェームス・デニス)ジャン・ピエール(レミ・マーティン)イレーヌのアシスタント、サンドリーヌ(レティシア・スピギャレリ)グロリア(ジョディ・クロフォード)
Arnaud Churin ... Store Manager Man Kit Cheung ... Restaurant Owner Kurtys Kidd ... Detective Shaun Austin-Olsen ... Record Label Owner


    ニットキャップを被った荻野目慶子のようなマギー・チャンと息子2人の暖かさを感じるアートワークのイメージとは反対に、愛する夫を失った喪失感と、自身の薬物依存症から逃れることが出来ずに、神経質に苛立つマギー・チャンのすっぴんの表情と、父親を殺したのは母親だと祖母から言われ続けてきた息子の気持ちが通い合う瞬間は、映画の中には殆ど一瞬しかない。むしろ孫の未来のために、嫁を理解し、愛そうとする義父役のニック・ノルティと、息子のために自分を取り戻そうとするマギー・チャンの内面的な演技に打たれる映画だ。
     オリヴィエ・アサイヤス監督の「夏時間の庭」の前作で、マギー・チャンがカンヌで主演女優賞、エリック・ゴーティエが技術賞を取っているのに、5年掛かった日本公開の初日、不幸にも、コカイン常習の自称サーファーの夫とその妻が送検され、10歳の息子が残されたばかりの何ともいえないタイミングの公開になった。息子を捨てて、逃げ隠れして証拠隠滅を図った日本の母親は、出所後、大切なものを思い出せるのか…。

     渋谷パルコ劇場で、前川知大作・演出『狭き門より入れ
   久し振りの芝居、この前は何だったかなあと思うと、毛皮族の本多劇場以来だと思うと、少し恥ずかしい。

   どこぞの駅のホーム、電車に飛び込もうとしていた男を引き止める男がいる。自殺する気はなかったが、精神的に疲れていて、呆然としている男。引き止めてくれた男は、数年前に亡くなった友人にとても似ている。男と、男の仲間に駅前で手渡されたチラシには、世界があと三日で終わる。更新されると書かれている。宗教団体のよくある終末論のビラだと思う男。
    感染すると昏々と眠り続ける奇病が世界に蔓延し、全人類の3分の2に広がろうとしている。就職を斡旋してくれた父親の友人の不正を、正義のために会社に告発し、会社の将来のために、社員のリストラをし続けた男、天野道彦(佐々木蔵之介)が、本人としては会社を辞め、会社的にはリストラされ(切ない表現だ(笑))、3000万の退職金を詰めたジュラルミン・アタッシュケースを持ち、弟の雄二(有川マコト)が店長を務めるコンビニに帰ってくる。二人の父親は脳卒中で倒れて、意識が戻らないままだ。コンビニには、かって佐々木が横領を告発したために、失業した中年男の時枝(浅野和之)が期限切れの弁当を貰って住み着いている。今日は更に、万引きをした若者(中尾明憲)までいるのだ・・・・。
   利己的で、腐り切った世界が修正される。その新しく更新される世界に行けるのは、3人に2人。正に「汝ら狭き門より入れ、けだし亡びに至る門は大きく、その路も広くして、これより入る人多し。ああ生命に至る門狭く、その路も細くして、これを見出す人少なきかな」(マタイ伝7章13〜14節)なのだ。更新される少しましな世界に行くことができる資格は、どうしたら得られるのか?
  
    非常によく構成され、テンポもあって、楽しめる。主人公が不本意ながら一緒に過ごすことになった時枝と魚住に狭き門を選ばせるように必死になる後半、瘤取り爺さんの話など論理的には少し弱く、妙に理屈っぽい部分が弱い。佐々木蔵之介の熱演で、ぎりぎり集中を引き止めているようで、叫びまくる佐々木は声を嗄らしている。もう少し、違うアプローチをしたほうがと思ってしまうのが惜しい。
    実は、今日のチケットは、面白いので一緒に行こうと誘われていたのに、直前に行けなくなったと言われて、声を掛けたら、京の着物美人と同行することになったのだ。その後、近くのインド料理屋に、少し緊張して、結構酔う。51になっても、好きな女の子の前ではボロボロなのは、中学2年から全く進歩せず、哀しいなあ(苦笑)。

2009年8月28日金曜日

俺はお前のフーチークーチーマン。

  テアトルタイムズスクエアの閉館特別上映で、「2001年宇宙の旅」を観るつもりで気合いを入れて出掛けたのに、明日だった。明日は体験入学の講師なので駄目だ。日本一デカいスクリーンで見たかったなあ(泣)。
 
   気を取り直し、新宿ピカデリーで、ダーネル・マーティン監督『キャデラック・レコード(492)』
    ポーランド移民2世のレン・チェス(エイドリアン・ブリュ)が、彼女のレベッタ(エマニュエル・シュリューキー)と抱き合っていた。いつ結婚してくれるの?と言うレベッタに、金を稼いでからだ、親父のようにはなりたくないと答えるレン。そこにレベッタの父親がやって来る。レンは、今の金属回収業を辞めて、黒人向けのクラブを開こうと思っていますと言うと、おれの娘を黒人向けのバーで働かせるつもりか、お前の親父とは同郷だが、大事な娘を貧乏人のポーランド人にやるつもりなどないと言い放ち、娘を連れ帰る父親。
    ミシシッピの小作人のマディ・ウォーターズ(ジェフリー・ライト)が畑を耕しながら、歌を歌っている。ある日、大学の教授アラン・ローマックスが、君の歌うフォークを録音させてくれとやってくる。簡易型のアセテート盤に録音された自分の歌を初めて聞いたマディは、音楽に賭けてシカゴに出た。
    ミシシッピ-の広大な畑の中で歌うのと違い、シカゴの路上でギターを弾いても、雑踏や騒音にかき消され、小金を持った黒人からは、田舎の小作人の音楽なんざ誰も聞きたくないと吐き捨てられる始末だ。しかし、マディは、生涯の妻となる看護婦のジェニーヴァ・ライド(ガブリエル・ユニオン)と知り合う。ジェニーヴァはあなたの歌を聞くと哀しくなると言って、マディの歌を認めてくれた。ジェニーヴァの二人の子供の継父になるマディ。ジェニーヴァの部屋から電源を取ってアンプに通して演奏をすると、たちまち人だかりがする。ある日、街でブルースハープを吹いている少年を見掛ける。リトル・ウォルター(コロンバス・ショート)と言う少年のハモニカの音が、自分の演奏にとても合うと直感し、強引にセッションし、自宅に連れてきた。
     その頃、黒人向けのバーを開店させたレンは、大きなキャデラックに乗った白人女が、黒人向けのレコードレーベルのプロデューサーだと言って名刺を渡していった。儲かっているらしい。
マディ・ウォーターとリトル・ウォルターたちは、バンドとして活動を始める。まずは、他のバンドを食うことからだ。ヘッドハンターズと名付け、レンの店にやってきて、演奏しているバンドに挑戦する。当然揉めて、リトル・ウォルターは拳銃をぶっ放す。呆れ顔のレン。マディはリトル・ウォルターを外に出し、取り敢えず頭を下げる。マディが氷屋で働いていると、レンが随分捜したぜと言って現れる。店を壊したことを因縁付けてきたのかと思うと、直ぐにレコーディングをしようと以外な話しだった。
    ラジオ局のDJの前に、レンとマディがいる。各レーベルからレコードを流してくれとスコッチが届いているが、俺は7$キャッシュを払うよとレン。DJは紙幣を手にして、マディのレコードを掛ける。黒人向けレーベルの女プロデューサーは、これは買収だから付き合いきれないので、後は勝手にやれと出て行った。
    南部の黒人向けラジオ局を、レンとマディは、宣伝して回る。当時、南部では、白人と黒人が、一緒に車に乗ることは、黒人が運転手の場合以外は有り得なかった。レンとマディの二人の宣伝旅行は奇異な目で見られた。とあるラジオ局に出演した後に、地元のモーテルの二人の部屋のドアが叩かれる。モーテルの黒人従業員の女が3人立ち、ラジオで曲を聞いたと言う。マディの部屋ど、ギターを弾き、歌い、盛り上がる。夜も更け、部屋を出るレンに、マディが3人は相手に出来ないので、一人どうだと声を掛けると、人種差別ではなく、自分は結婚しているので妻以外の女は抱かないと答えるレン。
    レンとマディのチェスレコードは全て上手く行っていた。レコードはヒットの兆しが見えていた。マディは、お前と俺は信頼しあっている、何で契約書にサインをする必要があるんだと言う。結婚と同じで契約することが大事なんだと言う。マディがサインをすると、キャデラックのキーを投げるレン。今日は運転する番かと普通に思うマディに、キャデラックは君の物だと言うレン。満面の笑みがこぼれるマディ。
    マディのレコーディングに、リトル・ウォルターが参加する。ウォルターは、ハモニカをマイクで拾いアンプリファする。レコーディングエンジニアは、音が割れてしまうので、ハモニカをカットしようと慌てるが、そのままで行こうとレンが言う。ウォルターのハモニカとマディ・ウォーターのギターと声は溶け合って、強いパッションを生み出し、レコードはヒットする。
   ある時、マディはウォルターに演奏させてやってくれと言う。ウォルターのハモニカが歌いまくる?は、No.1ヒットとなった。新しいキャデラックがスタジオに横付けされる。ボスかっこいい新車だねと、ジュニアが声を掛けると、鍵を投げ、お前の車だぜとレンが言う。涙を流し、白人の父さんだとレンに言うウォルター。
   ある時、作曲家兼ベーシストのウィリー・ディクソンが、ウォルターだけでなく、マディにも曲を書いてきたと言う。マディは自分で曲を掛けるぜと言うレンに、最近マンネリになって来ている、マディを理想の男とするために書いてきたと言う、アイ・アム・ユア・フーチー・クーチー・マン(俺は絶倫男だぜ)。大ヒットとなり、マディは一躍黒人女性たちのセックスシンボルとなった。
   ある日、ウォルターのレコーディングの日、レンが沈痛な面持ちでやってきた。ウォルターの母親が亡くなったので、レコーディングを中止して、今すぎ郷里に帰って葬儀に参列しろと言う。スタジオの外で、ウォルターとマディが話している。せっかく掴んだ自分の椅子をみんな狙っている。自分を産んで、直ぐに里子に出した女は自分の母じゃない、自分の母親は、ハモニカだ、しかし、レコーディングに集中出来ないと嘆くウォルターに、酒を飲ませるマディ。


  チェスレコード。後ろ暗い部分を抑えて、ブルース、R&Bを愛する男たちの美しい話しに作って、成功している。登場してくるアーティストと名曲の数々をリスペクトしているスタッフ、キャストに依って作られた素晴らしい音楽映画だ。泣ける、泣ける。ビヨンセ歌上手かったんだな。さて、マディ・ウォーター、リトル・ウォルター、ハウリン・ウルフ、エタ・ジェームス、みんなアナログしか持っていないので、聴こうと思っても聴くまで大変だな。
    中学時代、どういうきっかけだったが、ブルース好きだった。トリオレコードが、突然ブルースのアルバムを出しまくり、日比谷野音の第1回ブルース・カーニバルは何年だったか。

    その後、品川のエキナカで、友人N氏と京都の西村きもの兄妹と打合せ。その後渋谷へ。元の会社の辞め同期四人で飲む。

2009年8月27日木曜日

びっくり続きの一日だ。

   阿佐ヶ谷ラピュタで、昭和の銀幕に輝くヒロイン【第48弾】星由里子
   67年東宝須川栄三監督『颱風とざくろ(490)』
    桑田英子(星由里子)が、更衣室で着替えていると、坂本一雄(中山仁)が入ってくる。坂本くん!!と言ってラケットで一雄の頭をぶつ英子。とある大学のテニスサークルの女子部員5名は、コーチに卒業生で製薬会社に勤める一夫に依頼していた。1メートル80センチの身長の精悍な肉体と整った顔立ちに、皆魅力を感じていたからだ。練習後、女子部員たちがシャワー室を占拠しているので、一雄は離れたシャワーを使いに行こうとする。女子たちは、やましい気持ちがないなら一緒に浴びないかと声を掛けからかった
  意外にも僕の父親は産婦人科医だから女性に対して免疫はあるのだと言って、シャワー室に入ってくる。女子部員永瀬やす子(菱見百合子)島村秋子(桜井浩子)柴山和子(藤あきみ)野口弘子(佐川亜梨)に英子は、悲鳴を上げる。みな、一雄の裸身を見なかったと言うが、英子が、ギリシャの彫像と同じで、男性の印は、案外無邪気で可愛らしいと思ったと感想を述べると、結局みんな見ていたことが分かる。
  秋になって、英子は、坂本家に招かれた。一雄の父で産科医の坂本信太郎(清水将夫)母房子(高峰三枝子)弟の二郎(黒沢年男)けい子(いしだあゆみ)のとても仲のいい家族だ。二郎が、兄貴はもてていますか?と尋ねる。英子は、二郎さんは割と鈍いのね、テニス部の女子部員たちは、一雄さんにコーチを頼む時点で、分かるでしょうと答える。ちくしょう、工学部にいるので、女子はいないから、さっぱりもてないと愚痴を言う二郎。房子が、英子さんのご実家はどういうご商売をしていらっしゃるの?と聞くと、葬儀屋ですと答える。城西葬儀社という会社をやっていますというと、産婦人科と葬儀屋という取り合わせは面白いなとみな笑う。英子さんの弟さんがお迎えに見えていますと女中が言う。あら夕方に迎えに来てと言っておいたのに随分早いわと英子。家族みな玄関に出てみると、英子の弟の貞三(田村亮)が霊柩車に乗って待っていた。びっくりする一雄たち。貞三を紹介する英子。けい子と貞三は、お互い気に入ったようだ。

   恋人を亡くし、肉体関係を持たなかったことを後悔する主人公、今の恋愛観とは、掛け離れているが、その頃には既に建前ではなく本音として女性にもSEXが受け身なものではない。まあ、平安時代の源氏物語でさえ、女にも恋愛をする権利がある(笑)があったし、もっと後にも男主導だったにしても夜這いなど庶民の間では日常的だったのだから、男女7歳にして席を同じゅうせずという明治時代の官製の道徳教育によるものだろう。しかし、この頃の星由里子は本当に美しい。ショートなボブが似合ってため息が出る。しかし、いきなりトップバストを出したのはびっくりして、得した気分に(苦笑)

   武満徹の映画音楽
   63年岩波映画製作所羽仁進監督『彼女と彼(491)』
   百合ヶ丘の近くに大きな団地が出来た。石川直子(左幸子)は、役所(農林水産省)に勤める夫の栄一(岡田英次)とそこで暮らしている。画一的なコンクリート造りの2DKでの生活だが、子供のない二人の生活は、Wベッドが象徴する甘いものだった。ある日の夜中、直子は、団地に隣接するバタヤ部落のバラックが燃えていることに気がつく。激しく燃え盛り逃げ惑うバタヤ部落の住人たちの姿が見える。
   栄一を起こすが、ここは耐火構造だし、風向きが反対なので、大丈夫だろうと言う。見に行くという直子に、危ないから止めなさいと止める栄一。尚もサイレンが鳴らないので、110番に電話をしに行くと言う直子に、僕が行くよ、それに消防は119番だよと言って服を着はじめる栄一。そこにサイレンが聞こえ、ほらと言って、興奮する直子をなだめ、ベッドに戻る栄一。
   翌日、火事の後に行ってみる直子。廃材やトタンで出来ているバラックは跡形もなく焼け落ちていた。直子は、焼け跡で物を拾っている盲目の少女花子(五十嵐まりこ)に出会う。バタヤ部落の子供なのだろうか、空き地に落ちている玩具を拾って、思い当たる中村と言う団地の家に持っていく。ブザーを押そうとすると、子供が眠っているので、ブザーは押さないでくださいという札に気が付き、ドアをノックする。玩具を渡すと、子供がズック靴を履いていたのに、焼け跡で遊んでいて、釘を踏み抜いて怪我をしたのだと聞かされる。団地内で、森永乳業の宣伝カーが来て子供たちに風船を配っている。直子は、宣伝員(蜷川幸雄)に、今子供が病気で寝ているので、離れた所に行ってくれと言う。動きはじめた宣伝カーに、私にも風船をくださいと声を掛ける。風船を貰った直子は嬉しそうだ。
   団地の住人たちには、バタヤ部落は目障りだ。団地にあるゴミ捨て場に勝手に入り、空き缶などの金に換わる屑鉄や、段ボールなどを、勝手に持って行って生活をしているのだ。美しい日常に入り込んでくる、汚く貧乏な闖入者だ。間にある広い空き地では、部落の子供たちと団地の子供たちが、大人数で戦争ごっこをやっている。土だらけになっているだけではなく、ぶったり殴ったりしているので、直子は間に入って、危ないわよ、ルール通りにやりましょうと叫ぶ。じゃあおばさん審判やってよと頼まれるが、直子自身ももみくちゃだ。
   直子は、満州から苦労をして引揚げてきた記憶がある。団地の主婦たちの噂話でも、直子は大陸からの引揚げ者で、苦労をしてきただけに、挨拶がしっかりして、腰も低いと好感をもたれているが、特に親しい人がいるわけではない。インテリで将来を嘱望される夫の、快適な家庭の番人だけの日常、夫を愛する故、もっと夫と生活を共有して、もっと話をしたいが忙しい夫が出勤すると、代わり映えのせず、独りの日常が待っているだけだ。ある時、バタ屋の男に見覚えがあることに気が付く。その男は、かって夫の栄一が学生時代の社会活動をしていた時の、大学の同級生の伊古奈(山下菊二)だった。
   熱意に溢れた活動家だった伊古奈が、どういう経緯で社会から落ちこぼれて、バタヤとなり、盲人の少女にお父ちゃんと呼ばれ、大きな黒い犬のクマと暮すようになったのかは、直子にも栄一にもわからない。しかし、直子は澄んだ目をした伊古奈が気になってしょうがない。夫の旧友として、団地の部屋に上げる。しかし、伊古奈は、夫が役所のゴルフ大会で貰った優勝カップを盗み、売ってしまう。激怒する栄一と、当惑する直子。しかし、伊古奈は、盗んでいないとあくまで言い張るのだ。道端でも、団地の部屋の中にある物は全て落ちている物だという認識なのかもしれない。
   直子は、栄一に、旧友なら、伊古奈の就職を世話してやってくれないかと頼む。新妻の気まぐれだと思った栄一は、生返事ながらも、水道協会の仕事を見つけてくる。休日に、二人でバタヤ部落を訪ねて、伊古奈に話すが、頑なに拒絶し、自分の今の仕事を取り上げないでくれと逃げていく。
   栄一は、もう伊古奈に係わるのは止めようと言い、直子も頷くが、何もない昼間に、窓から、外を見ていて、クマを連れた伊古奈の姿を見つけると、手を振り、部屋に上げてしまうのだ。バタヤ部落は、不法占拠なので、団地の管理組合や行政は、取り壊そうと考えている。手始めに、その敷地に塀を作り、出入りを出来ないようにする。しかし、子供たちは、塀の下をくぐって出入りをしていたが、徐々に両者の生活は分断されていく。いつしか、団地で、彼らに声を掛けるのは直子一人になる。


  クリーニング屋の店員白石浩二(長谷川明男)盲目の少女花子佐々木さんの奥さん(木村俊恵)
 
  この時代、まさに自分は武蔵野市にある団地に住む5歳児だった。当時の公団住宅の住人は、庶民の中でも、給与生活をしている、その後の中流家庭になっていく核家族だった。既に、団地内の各家庭には、白黒だがテレビがあり、冷蔵庫と、洗濯機と、ステレオと扇風機があった。徐々にマイカーを持つ家が出始め、家族で旅行に出掛けたりするような生活だ。しかし、高度成長の中で、取り残されていく人々や彼らが住む住居も、そこここに存在していた。大人たちは、眉を顰めるが、子供たちは意外に何の違和感もなく一緒に遊んでいた。
  しかし、どこかの親が、あそこの子達とは出来るだけ遊ばないようにしなさいと言い、映画のように実際の塀ではないが、その一角との間に社会の塀のようなものを作り始めると、野球のグローブや、ローラースケートや、子供用自転車など買ってもらえる子と買ってもらえない子を区別というより、差別する遊びが流行り始め、みんなあれを持っている、買って貰っていると所有物の量が、幸不幸を決める一つの秤になってしまった。そうして育てられた自分たちの世代は、子供たちに、塾やスイミングスクール漬けの毎日を与えて、遊び場も家の中で服が汚れもしなくなった。お父さんは外で家族のために働き、お母さんは、家で家事をして、少ない子供を育てる近代家父長制が、全てを壊し始めた時代の記録となる映画だ。

  その後、新宿ジュンク堂で本を買い、神谷町の元の会社へ、映画作品の提案。かなり面白いし、別に高い訳でもないので早く決めて欲しいなあ。

   本当は、それから銀座シネパトスで、小林正樹の「東京裁判」を観に行く筈だったが、4時間半の長さにメゲて、虎ノ門で酒飲もうと無理矢理後輩Mを誘い出し、一昨日のM畏兄から聞いていた生ビール一杯百円の店に行く。社用で使っても別に恥ずかしくなさげな中華料理屋で、本当に百円だった。厳しい世の中だと痛感する。後輩Kが途中参加したので、二軒目に、神谷町の立ち飲み屋に。いい感じで酔っ払っていたら、一服した後輩Kが、急に具合が悪くなる。水を飲ませ、少し休ませたら、顔色にも赤みが戻って、落ち着いたので帰宅したが、心配した。かなり酔っていたので、心配して声を掛けているというより、体調の悪い後輩に絡んでいるようだったなと反省する。帰宅して、携帯に電話をしたら、無事帰宅したようなので、安心する。

2009年8月26日水曜日

両極端の映画2本。

  午後イチに、新宿で一件人に相談ごと。

    神保町シアターで、男優・佐田啓二
    57年松竹大船木下恵介監督『喜びも悲しみも幾年月(488)』
     昭和7年、観音崎灯台に続く道を有沢四郎(佐田啓二)ときよ子(高峰秀子)が登っている。下に見える国民学校で、子供たちが万歳を叫ぶ声が聞こえる。何があったんだろうか?日の丸が出ていないから祝日でもないしと二人は話す。灯台の手前で恥ずかしいから先に行ってと言うきよ子を残し、有沢は、中に入ると灯台員たちがラジオを聞いている。いよいよ上海で戦争が始まったらしい。台長の手塚(小林十九二)が有沢君と寄って来て、有沢の父親の不幸を慰める言葉を掛ける。有沢は実は女房を連れてきましたと告げる。葬式やら、開戦やら、結婚やら何でもある日だなと言う。灯台員の子供たちが万歳を叫ぶ。その夜、式を挙げ直ぐ夜行で信州を出て来たという二人のお祝いだ。しかし、有沢は今晩は当番だ。
    夜、灯台の上で、親や親類たちに手紙を書いている有沢に、きよ子がお茶を持って上がって来た。葬式の翌日に見合いをして直ぐに結婚したのだ。初めての新婚気分を味わう二人。しかし、灯台の狭い階段をカンテラを持ったきよ子が降りると、突然狂女(桜むつ子)が襲って来た。悲鳴を上げるきよ子。女は金牧次席(三井弘次)の妻だった。灯台員の過酷な生活の中、子供と二人で生活している時に、孤島で単身赴任する夫の浮気を妄想し、更に息子を事故で失ったため、発狂してしまったのだ。きよ子はショックだったが、どんなに過酷な赴任地でも、二人離れずに乗り越えて行こうて誓いあった。ひと月が過ぎ、手塚台長がきよ子に、ひと月前初めて見た時は、女学生のようだったが、もう随分と奥さんらしくなったねと声を掛ける。

   銀座シネパトスで、谷崎×エロス×アウ゛ァンギャルド 美の改革者 武智鉄二全集
   66年日活/源氏映画社武智鉄二監督『源氏物語(489)』
   光源氏(花ノ本寿)は、一度臣籍降下をして、源氏姓を名乗りながら自分の子冷泉帝の擁立により太政天皇に登りつめた。朱雀院の第三皇女の三の宮(柏美紗)を側室に迎え、その権勢は盤石かと思われた。しかし、三の宮は、柏木衛門督(中村孝雄)と密通をしていた。紫の上(浅丘ルリ子)に、三の宮が病で伏せっていて、女官たちの噂では、悪阻だと言われた。光源氏は、初めての宵以降、全く渡っていないと言うが、そんなあからさまな偽りを言うとはと、紫の上に責められる。嫉妬の余り、扇を引きちぎる紫の上。
   その時晩も、三の宮のもとに、柏木の中将が訪れていた。光源氏が現れたと聞いて慌てて逃げ出すが、光源氏は、柏木が三の宮に宛てた恋文を見つけてしまう。若い頃に犯した罪は自分に降りかかってくるのだと思う光源氏。
   少年時代の光源氏が、乳母の王命婦(月まち子)と宮中で遊んでいると、父桐壺帝(花川蝶十郎)の正室として上がる藤壺女御(芦川いずみ)を見掛ける。王命婦に寄れば、光源氏の亡き母桐壺更衣に瓜二つだと言う。幼心に、美しい藤壺女御に継母と言うより恋心を抱く光源氏。
   光源氏は、年上の熟女六条御息所(川口秀子)の下に通っていた。六条御息所は、年の離れた光源氏との関係に悩み続けながらも、別れられないと言う。その後紀伊の守を訪ねた時に、紀伊の守の父親の後妻の空蝉(松井康子)の寝所を覗く。中将(川口牡丹)を呼んでいるのをいいことに忍び込み、思いを遂げる。それだけでは済まず、再び忍び込んで、空蝉の継娘の軒端萩(紅千登世)とも一夜を共にする。その後、三条を訪れる際に通りかかった遊女夕顔(北条きく子)のところに身分を明かさず3ヶ月通い続けた。不景気という言葉や、生きるために働いている市井の人々の生活を知り、とても新鮮に感ずる光源氏。
  しかし、夕顔を荒れ果てた別荘に連れて行く光源氏。しかし、物の怪が現れ、夕顔は絶命する。光源氏は、空蝉により女も恋愛をすることを、夕顔により、女も生きる上で、恋愛をする権利を持つことを教えられる。夕顔の亡骸が運ばれて行くのを見た時に、光源氏の心に、藤壺女御への激しい想いが浮かび、抑えられなくなった。王命婦の下を訪ね、無理矢理藤壺女御に忍ぶ繋ぎを頼む。藤壺が宿下がりをした夜、王命婦の手引きで、寝所に忍び込む光源氏。藤壺女御は驚き、母として見て貰えぬかと言うが、聞く耳を 持たず、一途に想いを伝える光源氏に、一夜だけ受け入れる。
   その頃、加持の礼を高野の聖にお礼に出かけた際に、藤壺の姪にあたる紫の上という童女を見つける。紫の上を、自分好みの女に育て上げようと考える。
   たった一夜の逢瀬で、藤壺女御は懐妊し、男児を出産。喜んだ桐壺帝は、東宮を呼び出し、自分は直ぐに退位し、東宮に帝を禅譲するので、我が子を東宮にするよう求めた。ひょっとして、父の桐壺帝は、藤壺女御が産んだ男児が、自分の不義によるものだと知っているのではないかと思いショックを受けた光源氏は、藤壺女御の姿を求めて中宮を彷徨い歩き、東宮の許嫁である朧月夜(八代真矢子)と関係を持ってしまう。
   葵祭りの折、光源氏は晴れの役を得る。その姿を、正妻の葵の上(香月美奈子)は物見の車中から眺めていた。しかし、その陰で、葵の上を憎しみを持って見ているものがいたことを誰も知らなかった。葵の上の出産の日が来た。ひどい難産で、高僧や巫女たちが祈祷をするが、葵の上は苦しんでいる。高僧が物の怪を退散させ、やっと男児(本当は夕霧を産んだのだから女児な筈だが・・・)産んだが、亡くなってしまう。不審に思った光源氏が六条御息所を訪ねると、護摩の焚いた匂いがしている。六条御息所は夢を見ていたというが、その嫉妬の思いが、夕顔と葵の上を呪い殺したのだった。葵の上が亡くなったことで、紫の上が事実上の正妻となった。
   それから、父桐壺帝が崩御、更に六条御息所は、娘を連れて伊勢に下ると言う。光源氏から去っていったのは、それだけでは無かった。藤壷女御が剃髪して出家すると言う。何とか引き留めようとするが藤壷女御の決意は固かった。失意の余り、光源氏は、朧月夜との愛欲に溺れた。しかし、ある時朱雀帝(志賀山章)が朧月夜のもとに現れ、二人の不義は露呈する。
  結局、光源氏は、須磨に流されることになった。紫の上のもとに、財産の全ての目録を渡し、許されて戻る時まで、預かってほしいと頼む。牛車で下るのを見送ったのは、頭の中将(和田浩治)一人だった。互いの扇を交換し、必ず迎えに行くと声を掛ける頭の中将。
   須磨の暮らしに慣れた頃、地元の大名、明石の入道が、娘を連れてやってきた。明石の入道は、労働者を使って富を生みだし財産は持っているが、品性の卑しい下品な男だ。明石の入道が、京の教養を身に着けさせようとしているという娘の明石の上(川口小夜)も、作法どころか、琴も満足に弾けない無教養な女だ。しかし、そうした民の生きる力というものは、光源氏の心を慰める。しかし、ある時、雷鳴がなり、嵐の中、父桐壺帝の霊が現れた、自分の罪深さにこの海に身を投げたいほどだと言う光源氏に、桐壺帝の霊は、この没落した息子の姿を哀しみ、朱雀帝のもとを訪れて、約束したことと違うではないか、すぐに光源氏の謹慎を解けと迫った。あまりの怒りに、朱雀帝は恐れ、謹慎を解き、自分は仏門に入ったのだ。
   三の宮の出産を祝う宴会が開かれている。自ら過去に犯した罪が、自分の身に降りかかった人生の皮肉を感じながら、光源氏は柏木衛門督に、自分の杯を受けよと言う。男児の顔を見せ、お互いに目出度いわこの誕生ではありませんか、さあ御覧なさい、わこです。可愛いでしょう、私によく似ている、おや、あなたにも少し似ているかな、そんな筈はない、これが、年寄りの悪いくせです、すぐ酔い泣きをしてしまって、といい笑いだす光源氏。柏木衛門督と三の宮と、女官たちの顔面は蒼白だ。柏木衛門督は、宴席からよろよろと去っていく。苦悩し、心労が祟った柏木衛門督は、にわかに身罷った。三の宮も、臥せってしまった。父親に会いたいと言って、朱雀帝を呼び、私を尼にしてくださいと言う。お前は、あるお方が亡くなってからずっと、臥せってしまったねと言う光源氏に、私は、自分の意見で生き抜きたいのだ、そのために出家するのだと言う三の宮。
  紫の上も臥せっている。明石の上の娘の明石女御(山本陽子)を養女にして、今上天皇の中宮に上げたが、養母紫の上の身体を心配して宿下がりをしていたのだ。あなたを養女にしたのは、働く者のたくましい血を入れなければいけないと思ったからだと告白する紫の上。そこに光源氏が見舞いに現れる。気分が悪いので、下がってもらえまいかと光源氏に頼み、養女明石女御の手を取り、ああ、秋の風がすがすがしいことと言って、明石女御の腕の中で、紫の上は息絶えた。馬上の光源氏に、供の者たちが、煙が立ち上っていると声を掛ける。紫の上が大空に登っていくのだと言い、涙を流す光源氏。

  とても、不思議な作品だ。力作、それなりの大作だが、出来は決してよくはない(苦笑)。奇作、怪作と言う感じかもしれない。武智ピンク映画の女優陣と、浅丘ルリ子、芦川いずみという当時の日活の看板女優。昔のピンク映画的な小さな濡れ場と、大がかりなセット。中途半端なカメラアングル。スタジオシーンとロケシーンの明らかな質感な違い。時代がかった雅な台詞と、権利が・・とか、労働者が・・とか言った、どう考えても20世紀の話し言葉が混在する。役者たちの演技力もピンキリ、しかし、観れば観るほど、武智鉄二という人が何者なのか、何を撮りたかった映画監督なのか、監督への興味が増していくところが、何とも言えないなあ。何者なんだ!?

2009年8月25日火曜日

先輩たちにお世話になった一日だ。

   大門の睡眠クリニック。

   神保町シアターで、男優・佐田啓二

   57年松竹大船中村登監督『集金旅行(486)』
    旗良介(佐田啓二)が、アパートの大家の山本仙造(中村是好)と競輪場に来ている。旗は擦ってしまうが、仙造は大穴を当てる。帰り道露天商から、妻への土産にシミーズとブラジャーを買う仙造。しかし、帰宅してみると、仙造の妻の浜子は置き手紙と息子の勇太(五月女殊久)を残して、三号室の若い男三番と駆け落ちしていた。暴れまわる仙造。その夜、妻に買って来た筈のシミーズを来て酎を呷る仙造。アパート望岳荘の住人の五番さん(桂小金治)や八番さん(関千恵子)が慰めていたが、もっと若く、グラマーな女と再婚して見返してやる!!と叫んだ仙造は心臓麻痺で亡くなった。アパートの住人たちが通夜に出席する。一人寂しく花火をする勇太に、妾だと噂の小松千代(岡田茉莉子)は、相手をしてやる。翌日、高利貸しの香蘭堂(十朱久雄)が、仙造に貸していた金のカタに家財道具一式を持って行こうとする。勇太の今後のこともあり、アパートの住人が額を寄せ合って相談した結果、仙造は、何人かに金を又貸ししており、証文をみる限りそれを集めれば40万以上になることが分かり、潰れそうな内外実話と言う雑誌の編集者の旗と、勇太の境遇に同情して、自分のかっての男たちから慰謝料を巻き上げながら勇太を浜子のもとに届けたいと言う千代が出掛けることになる。千代は神戸か博多のバーで働いていたらしい。
   駅で出征兵士のように派手に日の丸を振って集金旅行への旅立ちを見送られる旗。客室に入ると、千代と勇太が並んで座っている。離れたところに座ろうとしたが、勇太に強引に呼ばれ一緒に座る旗。
    まずは岩国の街に行く。錦帯橋を臨む旅館に入り、旗は、アパートのかっての住人で大学の先輩の松平公夫(大泉晄)を訪ねる。松平は、料亭に誘い、芸者を二人呼ぶ、東京の大学の後輩で雑誌記者だと紹介すると旗だけモテて不満顔だ。時間が無いのでと言って証文を旗が出すと、ごまかして受け取り、料亭の女将(桜むつ子)に、東京から親父のスキャンダルを強請に雑誌記者が来たので、三万円貸してくれと頼む。宴会代か何かで請求してくれと言うと、あまりに簡単に女将が出してくれるので、五万に吊り上げ、その内、三万だけ旗に渡し、芸者たちの前で、困った時には、いつでも相談してくれたまえと言う。宿屋に戻ると、千代に来客があると言う。地元では人格者で通っている松尾六造(伊藤雄之助)が来ている。千代は、松尾と別れた時に妊娠しており、流産してしまったとでまかせを言う。それ以来、堕ちるところまで堕ちてしまったが、来年売春防止法が施行されてからどうしていいのか分からないと言う。松尾は、言われた通り、10万円を持って来たが、岩国を案内してやると、何とか千代をモノにしようとす る。困った千代は、外に旗と勇太がいることに気がつき、旗に部屋に電話をするようジェスチャーをして、雑誌記者の男が同行していると言う一芝居を打つ。地元での人格者という看板に傷をつけると脅され、すごすごと帰って行く松尾。
    次に山口に行き、千代は市会議員の藤沢車庫(市村俊幸)に電話をする。藤沢は今日は日曜なので教会に行くと答える。藤沢と妻の歌子(沢村貞子)と長女(佐谷ひろ子)と次女が教会から戻るところを、勇太を連れて待伏せする千代。


    萩に行き、東京から鶴屋雄三を訪ねて来たと言うと案内されたのは寺だ。本人の葬式の最中で、保険金が500万程下りてようやく鶴屋は再建出来そうだと聞いて、千代は泣き、旗は証文に金を包んで仏前に供える。


    中四国の観光要素を混ぜながらの軽喜劇とも言うのだろうか、笑っているうちに、ちょっと切ないエンディング、中村登の演出冴え渡る。岡田茉莉子やっぱり最高だ。三白眼気味の白眼に萌え。徳島でアチャコと踊る阿波踊りのステップの見事さは見ものだ。軽薄だが実は誠実な役の佐田啓二もはまり役だ。


    61年松竹大船木下恵介監督『永遠の人(487)』
     阿蘇、朝靄の中を蒸気機関車が走る。デッキに二人の若い男女が立って外を見ている。新しい生活を二人で築く決意を確認し合うように肩を寄せ合う二人。大きな屋敷の前に立つさだ子(高峰秀子)。汽笛を耳にして決意したような険しい表情の後、笑顔になる。
     第一章。昭和七年。この一帯の大地主の小清水平左衛門(永田靖)の跡取り息子の平兵衛(仲代達矢)が海軍から凱旋帰国し屋敷まで、楽隊付きでパレードをしている。脚を怪我し名誉の負傷だ。馬車の御者は、小作人の草二郎(加藤嘉)だ。 屋敷に着き盛大な宴会が行われた。草二郎の娘のさだ子は番茶も出花で、色気付いたと周りからからかわれている。さだ子は、やはり小作人の力造(野々村潔)の弟で陸軍で出征している隆(佐田啓二)と相思相愛だと村の誰もが知っていた。脚の戦傷に加え、子供の頃から優等生であった隆への反感から、平兵衛は、さだ子を呼び、酌をするように命じ、上海で隆に会ったが、その後戦闘が激化し、死んだかもしれないと言う。さだ子は、顔色を変え、外に出て泣いた。
    数日後、下女として小清水家で働くさだ子は、平兵衛の脚を揉まされているうちに乱暴をされそうになる。必死に抵抗し逃げるさだ子。残った平兵衛に、平左衛門は、小作人の娘の一人も手込めに出来ないようではお前もまだまだだなと笑う。
    草二郎は、さだ子を平左衛門から息子の嫁にと言われ困っていた。隆の兄の力造は平左衛門に喚ばれて、貸している田圃を半分返せと言われる。平兵衛は隆を憎いのだ。力造は草二郎に、小清水家は千両箱が沢山埋められている千両塚だと呼ばれているが、実は千人の人間が殺され埋められた千人塚だと話し合う。
     その夜、草二郎が平左衛門に喚ばれ留守の家に平兵衛がやってくる。危険を感じたさだ子は雨戸を閉めようとするが、かえって逃げ場を失い、平兵衛に強姦されてしまう。その時、平左衛門の前で酒を勧められていた草二郎は、親子の魂胆は分かっていたが、拒絶することは出来ない。そこに平兵衛が戻った。草二郎に、杯を寄越せ、親子の杯だと言い放つ。さすがの草二郎も、杯を置き、帰らせてくれと下がった。帰宅するとさだ子の姿が見えない。草二郎は慌てて力造のもとに走り、共に捜してくれるよう頼む。力造は近くの川に身を投げた、さだ子を見つけ、自ら飛び込んで助ける。
     暫くの後、隆が復員してきた。村で凱旋の宴会をすると言うが、迎えに現れないさた子を心配して、会いに行こうとする。力造は、必死に止め、さだ子は平兵衛に手込めにされた上、嫁になることが決まったと告げる。お前が今更何をしても村の物笑いになるだけだという力造に、どうしても軍服姿で、無事に帰ったことをさだ子に報告したいのだと言う。泣いて床に臥せていたさだ子に、君も辛い思いをしていたんだねと優しく声を掛け、翌朝日の出前に駆け落ちをしようと言った。
     翌日待ち合わせの場所に現れたのは、馬に乗った父親の草二郎だった。力造にさだ子宛ての手紙を残して、隆は一人消えたと言う。自分と一緒に駆け落ちしても多分君を幸せに出来ない。小清水家に嫁に行って幸せになってくれと言う手紙を読んでさだ子は失神する。
   第二章、 昭和19年、力造に赤紙が来たと言う。その話を聞いた草二郎は、村長の平兵衛の足の悪い馬でさえ供出させられる位だから、いよいよこの戦争も厳しいなと呟く。力造の挨拶を、小清水家の嫁になっていたさだ子は聞き、平兵衛にまとまったお祝い金を出さないと駄目だと言う。嫌な顔をした平兵衛だったが、力造の家には、隆の嫁と息子が疎開をして来たと聞いて、隆の嫁に、小清水家の手伝いに寄越すよう言う。何か平兵衛の魂胆を感じたさだ子は、私が責任を持って面倒を看るので安心して寄越してくれと付け加える。
    舅の平左衛門は、脳卒中で半身不随になっていた。鈴を鳴らしてさだ子を呼ぶのだが、体が思うように動かないため癇癪を起こしがちだ。平兵衛とさだ子の間には、長男の栄一と次男守人、長女直子の三人があった。平兵衛に強姦されて出来た栄一に、さだ子はわだかまった感情を消すことが出来ない。栄一も、その空気を感じて屈折し乱暴者になった。
    隆の嫁の友子(乙羽信子)が、翌日から働きに来た。栄一や守人のお下がりの服や靴を、隆の息子の豊に上げるが、ある日から突然友子の態度が変わる。平兵衛は、さだ子と隆の過去と、自分がしたことを友子に全て話したのだ。隆と自分との結婚生活に感じていたことの原因がさだ子にあったと知り、さだ子を激しく憎悪する友子。
   あの日以来、平兵衛の足のマッサージをしなくなっていたさだ子への面当てのように甲斐甲斐しく平兵衛の世話をする友子。極力平静を保とうとするさた子だったが、平兵衛が友子に襲いかかり、未遂に終わったことを知ったさだ子は、平兵衛を罵り、友子に暇を出した。その時、隆は胸を患い呉の陸軍病院に入っていたが、友子は、隆のもとへ行かず、里に帰って行った。
    栄一は中学に入り更に問題を起こした。時計やカメラを平兵衛にねだり、跡継ぎと思う平兵衛も溺愛していたが、学校では頻繁に暴力事件を起こし、その度にさだ子は学校に呼び出されるのだった。戦後のある日、隆が村に戻って来た。力造に、薬代などいくらでも援助するので、気を使わずに相談に来いと言った。そのことで、平兵衛と言い争いになるが、その最中に平左衛門は亡くなった。しかし小清水家が農地解放に寄って、山林以外の田畑を手放さざるを得なくなるのを見ずに死んだ平左衛門は幸せだったのかもしれない。
   その後、小清水家には大きな不幸が続いて襲いかかる。自分の生を受けた話を聞いた栄一(田村正和)は、自分は生まれない方が良かったのだと遺書を残して阿蘇山の火口に飛び降り自殺をする。次男の守人(戸塚雅哉)は、東京の大学に進むが、アカになり全学連の活動家として指名手配を受けて逃走中だ。
   そして冒頭のシーンに戻る。長女の直子(藤由紀子)が、隆の一人息子の豊(石浜朗)と大阪に駆け落ちしていくのを見送ったさだ子は、平兵衛を起こし、自分が独断で二人の駆け落ちを認めた。平兵衛は怒り狂い、草二郎に今すぐ隆を呼んで来いと言い、さだ子に向かい、栄一は自殺し、守人はアカになりお尋ね者だ。さだ子は俺に復讐したと思って愉快だろうが、俺の面倒を看てくれることを直子に期待していた、お前は俺に人生を台無しにされたと憎んでいるだろうが、俺の人生もまた、お前に台無しにされたのだ。駐在に言って、娘を誘拐したと言って逮捕させると叫ぶが、さだ子は鼻で笑う。
     そこに駐在(東野栄治郎)が現れる。元村長という名家の小清水家をおもんばかって、遠慮勝ちに切り出し、守人が逃走中に実家に立ち寄る可能性があるが、出来るだけの配慮をするので、届けてほしいと頭を下げる。そこに、電話が鳴り、さだ子が取る。今、駐在さんがお見えなので、あとで伺いますと返事をする。
  草二郎に案内され、隆が小清水家に向かっていると、年老いてやつれた友子が現れる。自分の命はもう長くないと思うので、豊に一目会いたいと出て来たのだと言う。隆は、病気の私に、隆を押しつけて、一人出て行ったのに、今さら勝手なことを言うなと激高する。しかし、その瞬間、回復していたと思っていた隆が吐血をして倒れる。
  先程の電話は、実は、守人からだった。どこにいる?という平兵衛に、金を届けに私一人で出かけますと言う、これは私が一存でしたことほうが、後後のことを考えるといいでしょうと言うさだ子。お前は、隆の治療代やら何でも一存で、このうちの身上に手をつけやがってと言う平兵衛に、私は意地でも小清水家の身上に手をつけていません。隆さんのために一銭でも汚い金を使うもんですかと言うと、隆が吐血してこれないと伝えに戻ってきた草二郎は、私が旦那さまに頂戴した田圃を売ったお金ですと言った。更に、旦那様が私を呼んで酒を勧めた時に、全てのことを理解していたが、何も言えなかった。そして、娘のさだ子を不幸にさせてしまった。悔やんでも悔やみきれない、今日こそ言わせてもらうと、怒りに震えた目で、吐き捨てた。
   守人の元に向かおうと家を出たさだ子は、友子に会う。もう長くないと思うので、ひと目息子の豊に会いに来たが、隆さんは私を許そうとしません。それは最もだが、どうしても息子に会いたいのだという友子に、今日、豊と娘の直子は、結婚して大阪に今朝発ったことを伝え、豊が置いて行った大阪の住所と、交通費を渡すさだ子。
   阿蘇山へ向かうバスにさだ子の姿がある。草千里というバス停で一人下車すると、成長した守人(戸塚雅哉)が待っている。5万円の金を渡すさだ子。怪我をした仲間の治療費や逮捕されたものへの差し入れに必要なのだと言い、かって小清水家が、千両塚でなく、千人塚と呼ばれていたのは本当らしいという。かって、大がかりな百姓一揆が計画された時に、小清水家の先祖が裏切ったためために、沢山の人々が殺された。その千人の亡骸を谷に埋め、その上に、小清水家は、今の礎えを築いたのだ。その呪いで、兄さんも死んだのだ。自分はその償いのために、戦っているんだ。お父さんがお母さんを許さない限り、僕もお母さんを許さないと言って、去る守人。
   第五章、子供を連れた豊と直子の姿がある。バス停に出迎えるさだ子。いよいよ隆が危ないくなり呼んだのだ。2人が隆に面会し、子供の顔を見せる。孫に会いたさに、持ちこたえていたのだ。隆が、外で待っていたさだ子を呼びに来る。隆は、こうやってみんなに会えてよかった。家内も1月に死んだそうですね。あれが、私の前に現れた時に、私は怒り許さなかった。しかし、あなたは、隆の行き先を教え、旅費までくださったそうですね。隆たちにみとられて、最期は穏やかになくなったと聞きました。今私が後悔しているのは、あいつをとうとう許すと言ってやらなかったことです。あなたを置いて去って以来、私は平兵衛さんを恨んでいた。しかし、平兵衛さんを苦しめていたのは私ではないかと思うのです。最期に許してほしいと伝えてほしいと言う。さだ子は、豊さんと直子が結婚して、30年振りに、私たち二人の子供が産まれたような気がしているのです、元気を出して下さいと涙を流す。それから、急に思いついて、小清水家に走り出す。必死に走り続けて、家に入ると、平兵衛がお茶を飲んでいる。さだ子は、夫に頭を下げ、隆さんが死にそうです、隆さんはあなたを苦しめたのは自分だったのではないかと謝ってくれと言いました。私を許して下さい。30年も俺を苦しめて、今わの際に、頭を下げられて、はいそうですかと簡単に許せるものか、勝手に死ぬがいい、お前が俺を許さないように、おれもお前を許しはしないのだと言う平兵衛。守人に、「お父さんがお母さんを許さない限り、僕もお母さんを許さない」と言われたのですと泣くさだ子。
  とぼとぼと、隆の最期を看取ろうと戻り始めたさだ子に、後ろから声が掛かる。平兵衛が松葉杖をつき必死に歩いて来る。もう自分とお前しかいないのだ、隆に直接、許すと言いに行くと言う。嬉し涙を流すさだ子。財産も子供たちもみな無くなった、たまには自分の足を擦ってくれと言う平兵衛に、うなずくさだ子。間に合わないといけない、お前は先に行きなさいと言って、走り出すさだ子を松葉杖で追う平兵衛の姿がある。


    決して美人と言う訳ではないが、魅力溢れる娘時代から、夫への恨みにのみ生きている主人公までの幅の広さは、高峰秀子ならではだ。かって俗にしか思えなかった木下恵介作品。何故今の自分を捉えて離さないのだろうか。

    横浜に元の会社の先輩の新オフィスに相談事。
    都内に戻り、やはり元の会社のM先輩が、とある大組織内の異動に凹むMさんを励ます飲み会を開くと言うので、合流。両M氏最高だな。結局、その後、先輩M氏と立ち飲み屋に流れ、言いたい放題。仕事を通じて知り合った先輩朋輩後輩全てに恵まれていると痛感する。それだけに、先週の後輩Oのことが切ない。

2009年8月24日月曜日

復讐するは我にありとは、神の仕打ちを受けるということなのか。

   午前中は、赤坂のメンタルクリニック。

   池袋新文芸坐で、世界/戦争/歴史 そして追悼の八月

   83年東映/今村プロダクション今村昌平監督『楢山節考(484)』
   信州の雪深い山中に、小さな集落がある。そこに辰平(緒形拳)と70近いの老母おりん(坂本スミ子)、弟の利助(左とん平)、息子のけさ吉(倉崎青児)、とめ吉(嶋守薫)と娘のユキで暮らしている。辰平の妻タケやんは、ユキを産んですぐ、栗を拾いに出かけて崖から落ちて死んでしまった。庭に大きな切り株があるので、根っこと呼ばれている一家だ。狭い田と畑しかない貧しいこの集落では、余所に売ることの出来ない男の子が生まれると水子として間引き、年老いた者は、裏の楢山さまに姥捨てすることが日常であった。辰平の父親の利平は、母親を捨てることが出来ずに、村を遁走した。けさ吉は、働きもせず、歌って遊んでばかりいる。集落一番の子沢山の 雨屋の一家の長女の松やん(高田順子)を抱く。利助は、ほんとは間引かれるところだったが、生き残ってしまった。村では、次男、三男は穀潰しで、奴と呼ばれ、結婚することも女を抱くことも出来ない。せいぜい後家がいれば夜這いを掛けるが、利助は臭いと皆から嫌われてクサレと呼ばれ、新屋敷の飼い犬のシロに夜這いを掛けて紛らわせている。 おりんは今でも畑仕事も家事をこなし健康で、歯も丈夫だ。辰平は、村の者が、りんの歯は33本もあり鬼の歯だと歌っているのを聞いて怒鳴り込むが、息子のけさ吉が歌って広めていることを知って憤る。
   春が来て、雪解けの田に水子が捨ててあるのを利助が見つける。隣の嫁が腹ボテだったのを思い出し、欽やん(江藤漢)仁作(常田富士夫)の元に怒鳴り込む。二人は、老母のおかね(清川虹子)が病に伏せっているので、白はぎ様(白米)を炊いている。おかねは、うちの水子は10日前にちゃんと墓に埋めたという。なかやんの家の嫁も腹ボテだったと仁作から聞き、利助が行ってみると奴の常(小林稔侍)が認める。
   ある日、塩屋(三木のり平)がりんを訪ねてきて、隣村で昨日夫を亡くした玉と言う後家がおり、百日を過ぎたら辰平の後妻にどうか と言って来た。辰平は今更嫁はいらないと言い、けさ吉はそんだら自分が嫁を貰いてえと言うが、りんはこれで思い残すことはないと大乗り気だ。ただ、裏の山で、利平を見たという。
   おかね(清川虹子)がもう駄目だと言う。おかねは、りんに病気で死ぬのは恥ずかしい、楢山様に登って死にたいと言った。欽やんが、次棺桶を作る順番は根っこのところだと言う。辰平と利助、けさ吉が棺桶を担いでいくと、おかねが現れて腰を抜かす。白はぎ様を食ったら、元気になったと言う。
  祭りの日に、隣の村から竹やん(あき竹城)が一人でやってきた。兄と来る筈だったが、祭りで酔っ払って寝てしまったという。塩屋が根っこの姑はとってもいい人だと言ったと言う。朝から歩いてきた竹やんに、お祭りにしか炊かない白はぎ様を丼に山盛りにし、自分が捕ったヤマメを食べさせ、辰平を呼んで来ると言う。りんは、大きく丈夫そうな身体をして、明るい性格の竹を一目見て気に入った。納屋に入って、石臼に歯を打ちつける。2本しか折れなかった。血だらけの口を濯いでいるところに、出くわした利助に、恐ろしい顔で、このことは誰にも言っては駄目だと言って、抜けた2本の歯を渡し、祭りの場所に辰平を迎えに行く。りんの血だらけの口元を見て、村人たちは、鬼婆だと囃し立てるが、りんの表情は変わらない。
  辰平と竹が求めあっている。前よりもいいと言う竹に、おれも前よりもいいと言う辰平。それを覗いて自涜していた利助は堪らなくなって、新屋敷の飼い犬シロに夜這いに走る。その時、新屋敷の親父(ケーシー高峰)が嫁のおえい(倍賞三津子)が今わの際にした遺言を聞いてしまう。新屋敷家は、娘の夜這いに怒った先代が、奴を殴り殺してから呪われていると言う。自分が亡くなった後は、村の奴たちの相手をしてやって、殺された奴の霊を慰めて欲しいと言い残す。その話を聞いて利助は、村の奴たちに、その話をする。
  秋が来て、けさ吉が妊娠した松を連れてきた。腹が出てきた松は食欲旺盛だ。更に、夜になって、根っこの保存食のじゃが芋と玉蜀黍を盗んで、実家の雨屋に持って行く。その帰りを待ち伏せた辰平は、松を捕まえ、井戸に落そうとする。しかし、松のお腹には、自分の孫がいる。なんとか思い止まって、二度とやるなと言う辰平。しかし、数日後の夜、村の長の照やん(殿山泰司)の楢山さまに謝るぞという声が響きわたる。雨屋(横山あきお)が、食料を盗んでいたことが露見したのだ。雨屋の女房(志村幸江)をはじめ沢山の家族が集められ、雨屋の家が調べられる。盗まれた沢山の隠匿物が暴かれ、村人に分配される。雨屋は、先代も同じ罪を犯していたので、雨屋の血脈を絶たないと安心して眠れないということになった。りんは、松に、今晩は雨屋は食べるものもないだろうと言って、じゃが芋を持って家に帰るように言う。じゃが芋を焼いた松が弟や妹、父母に配って、食事を始めた時に、村人が襲いかかり、雨屋の一家を網で捕らえ、村の外れに掘った穴に投げ捨て、生き埋めにする。けさ吉は、りんによって、松と自分の子供が殺されたと罵る。
  おえいは、毎夜、一人ずつ奴を呼びに行き、一夜を過ごした。利助は、西の老奴の勝造(小沢昭一)から順に呼びに来るおえいに、今夜は自分の番だと思ったが、抜かされてしまう。荒れ狂い、田圃で実った稲を引き抜き暴れる利助。更に、根っこの唯一の財産とも言える農耕馬の春松に、お前まで俺を馬鹿にするのかと八つ当たりする始末だ。
  りんは、おえいの元に行って頭を下げるが、おえいは、くされだけは勘弁してくれないかと言う。夫の遺言に反するのではないかと言うりんに、墓参りして、そのことを相談したら巨大な黒い蝶が現れたので、承諾してくれたのだと言うおえいに言葉を失うおりん。
  辰平は、利助に一晩だけだぞと約束をさせ、竹に相手をさせようと考える。春松より、妻の貞操のほうが、明らかに安いのだ。竹は納得できないままに承諾する。りんは、おえいにその話に乗っては駄目だぞと言って、おかねのもとに出かけて、何とか利助を男にしてやってくれないかと頭を下げるのだった。おかねは、私は鼻が効かないのでクサレは気にならないが、随分と長い間使っていないので、使えるもんだろうかと心配するのだった。
  冬が近づいてきた。りんは、竹に、明日お山に行くので、辰平に行って、お山に行った人たちを呼んでくれと言う。辰平の父親の利平の姿を見たと言われ、りんは走る。そこにいたのは辰平だった。辰平は、かって、山に猟に行った時に、祖母を楢山さまに連れて行きたくないと言う利助と親子喧嘩をし、この場所で射殺して、このあたりに埋めたのだと告白する。お前のせいではない、楢山さまが全てやったことだ、今日以降誰にも言うのではないと言うりん。部屋を掃除し、準備をする根っこの家族。銭屋の又やん(辰巳柳太郎)が逃げてくる。息子の忠やん(深水三章)が縛っておいた縄を切って逃げて来たのだ。80歳を超えてまだ死にたくないと駄々をこねる又を諭すりん。根っこの家に照やん(殿山泰司)たちがやってきた。楢山さまに登る時の心得を順番に語るのだ。「楢山さまに行くときは、口を聞いてはいけない。」「家を出る時に人に見られて行けない。」・・・・・「帰る時には、絶対振り返ってはいけない。帰りがけに、照やんは、お山に登るのがつらければ、途中で捨ててきてもいいことになっていると言う。
  いよいよ、辰平はりんを背負って家を出る。竹は、家の前で、黙って見送る。一方、利平の部屋
を合図するものがいる。おえい婆さんだ。楢山への道は、道なき道だ。途中、急な崖で辰平は、足の親指を割ってしまう。りんは黙って布を裂いて辰平に渡すのだ。急な山を登り続ける辰平。いつしか、岩場に大量の人骨が散乱する一角に到着する。白い人骨と黒いカラスの群れが対照的な恐ろしい光景だ。りんは、辰平に降ろすように合図をし、握り飯を持って帰るように示した。
   辰平は降りはじめる。途中、忠やんが網で身動きできないようにした又やんを崖に突き落とす光景を目撃する。カラスの大群が飛び立ち、その鳴き声が谷底にこだまする。雪が降ってきた。お山に登った時に、雪が降ってくるのは、おりんの行いが良かったせいだ。辰平は、村に伝わる歌の通り雪が降り出したことで嬉しくなり、再び山に駆け登り、おりんに「おっかあ、歌の通り雪が降ってきたなあ」と声を掛ける。おりんは、肯いてもう帰れと合図をした。
   雪の中、辰平は家路を急ぐ。寒い中帰ってきた辰平を、竹は優しく迎える。けさ吉は、早くも新しく妊娠させた娘を今日から住まわせると言う。その娘が来ているドテラはりんのものだ。また竹が締めている帯もりんがしていたものだ。

   木下恵介版を見てからの印象は、今までとは少し異なる。映画館で一回、テレビ、レンタルビデオで数回見ている今村版。カンヌ・パルムドールで、今村昌平の代表作と思っていたが、少し物足りなさを感じてしまう。田中絹代VS坂本スミ子、高橋貞二VS緒形拳、木下恵介VS今村昌平ということでもない。今村昌平の最高傑作とは言えないんではないかという気持ちが、どこかから浮かんできてしまう。少し考えたい。改めて書きたい。
  
   79年松竹/今村プロダクション今村昌平監督『復讐するは我にあり(485)
   昭和39年1月4日、雪の山道を下って行くパトカーと警察車両。78日間に渡る逃亡生活の末逮捕された連続強盗殺人犯の榎津巌(緒形拳)を挟んで河井警部(フランキー堺)と吉野警視(浜田寅彦)が後部座席に座っている。榎津は何か歌を歌っている。榎津が吉野に年を尋ね、55歳だと聞くと、私は死刑判決だろうから、刑務所で3年ほど暮らして40歳前に死ぬのだろうと言う。留置場は冷えてるじゃろな、どかーんと冷えてるじゃろなと呟く榎津。浜松警察署に車が着くと、マスコミと野次馬で大混乱している。
   昭和38年11月福岡県築橋市、日豊本線の築橋駅近くの大根畑で、専売公社のタバコの集金人の柴田種次郎(殿山泰司)の惨殺死体が見つかり、また近くの山中で、同運転手の馬場大八(垂水悟郎)の刺殺死体が見つかった。前日作業着姿の榎津が自転車で急いでいる。自転車を止めると、向かうから来る専売公社の黄色いトラックに手を挙げて停める。助手席に乗っていた柴田が、おお榎津じゃないかと言って、運転手を本当の名前は馬場だが、みんな西部大八と呼ぶんじゃと紹介する。
   残りのタバコ屋二軒の集金が終わったところで、近くに濁酒を飲ませてくれる友人がいると騙して案内し、頭を金鎚で殴打、更に心臓を千枚通しで突き刺して殺し、集金の金を奪う。駅の近くの金物屋で出刃包丁を買ってから、トラックに戻り、馬場に柴田が酔っ払ってしまったので迎えに行くと言って、山の方に向かわせる。そして、馬場が不信に思ったところで、命乞いをする馬場を無慈悲に刺殺したのだ。血の付いた作業着から着替えて、逃走用に奪った金で、ラジオを買った。公衆電話から、バーマリに電話をして ママの畑千代子(絵沢萌子)を呼ぶが、留守だった。家に戻り、奪った金を数える榎津。翌日、日豊本線に乗り、築橋駅近くの線路脇の犯行現場を警官たちが現場検証をしているのを窺う榎津。
    刑事たちは、直ぐにかって専売公社のタバコ配達の運転手をしており柴田と顔見知りであった榎津巌を氏名手配をする。柴田殺人の凶器の千枚通しは、バーのマダムをしていた畑千代子(絵沢萌子)が別れ話をした際に出した物だと断定した。榎津の足取りは呉から別府行きの呉別連絡船に乗り、瀬戸内海で偽装自殺をして消えた。その際に残した遺書は、ストリッパーの吉里幸子(白川和子)に宛てたものだった。別府には、巌の両親の鎮雄(三國連太郎)かよ(ミヤコ蝶々)夫妻と、巌の嫁の加津子(倍賞美津子)と娘二人が、五島荘と言う温泉宿を営んでいた。榎津家はかって五島列島で網元を営む敬虔なクリスチャンだった。しかし、戦時中に、船舶の供出命令が、クリスチャンだけ不公平に厳しく、主計中尉(小野進也)に鎮雄が異議を申し立てたところ、島民たちの面前で殴られ服従を強いられた。その時、少年であった巌は、父親の姿に不信感を抱き、グレ始め、何度か少年院に入れられることになる。海軍からの補償金で、鎮雄たちは別府で旅館業を始めた。
   戦後、巌は、不良米国人たちと、進駐軍の ジープを盗み放蕩三昧。福岡の農村部に買い出しに来ていた大村加津子を強姦したのだ。妊娠3ヵ月になり、結婚を約束していた巌を尋ねて別府を訪ねた加津子に巌は、今日は鎮雄が五島から連れてきたクリスチャンの娘との見合いだと言う。認めないと言った鎮雄だったが、加津子が妊娠していると聞いて承諾する。しかし、結婚して直ぐに巌は詐欺を働いて福岡刑務所に収監された。加津子は離婚し、二人の幼い娘を連れ、愛媛の赤川温泉で働いていた。そこに鎮雄が現れ、二人の孫と嫁が可哀想だから、別府に戻ってくれと土下座をする。相当な決意で、榎津家を出た加津子だったが、舅の為に戻ることを決意する。その夜露天風呂に鎮雄が入っていると、加津子が現れ背中を流すと言う。お互いをいたわりあいながら舅と嫁は、一線を越えそうになるが、鎮雄は何とか信仰の力で欲望を抑える。
   別府に戻ったある日、寡婦同然の嫁を憐れんだ鎮雄は、駅の助役の安田(金内喜久夫)に相談する。安田は、強引に加津子を押し倒す。激しく抵抗する加津子だったが、鎮雄も了解している話だと言われ、「お義父さん…」と呟いて、安田を受け入れる。
    出所した巌は、父親と妻の間にある微妙な空気に感づき、加津子が鎮雄と関係したのではないかと疑い、責め立てた。加津子は、安田との一度だけの関係を告白する。安田から5万円を強請りとった巌は、安田から鎮雄が了解していた節があることと、加津子がお義父さんと呟いて安田を受け入れたことを知る。鎮雄は、否定し、鉈を持ち出して罪深い自分を殺せと言うが、加津子が必死に止める。二人に悪態をつきながら、姿を消したのだ。
    犯行後、巌の姿は、岡山で目撃され、広島で8万円の詐欺を働いた。そして、浜松に現れ、タクシーの運転手に静かで目立たず、女の子を呼べる宿を紹介してくれと言って、あさのと言う旅館に宿泊する。あさのは、女将の浅野ハル(小川真由美)が、出池茂美(北村和夫)と言う繊維業の社長に出して貰った宿だった。そこに、榎津は、京大の教授で、静岡大学に出張してきていると言って上がった。ハルの母親のひさ乃(清川虹子)は、風邪を引いていると言うが、どうやら客の閨を覗く趣味があるらしい。そんな話を聞きながら、ステッキ嬢(売春婦)の岡啓子(根岸とし江)と、その夜幾度となく関係をする。

吉武順一郎(火野正平)出池茂美(北村和夫)ステッキ嬢岡啓子(根岸とし江)被告人の母(菅井きん)相川保護司(阿部寿美子)保釈金10万円弁護士川島共平(加藤嘉)助役安田(金内喜久夫)

  うぅっ、ずっと今村昌平の作品の中で、ベストではないと思っていたが、やっぱり凄い。1960年代に入って、日本映画がどんどん厳しくなり、映画業界人の泥縄が全て失敗していた頃だが、全てが駄目だったわけではない。ずっと、この映画は倍賞美津子だと思っていたが、今の自分には小川真由美だ。彼女の哀れが全てだ。 

  
渋谷O-EASTで はむつんサーブ。元会社の同僚、後輩ばかり。ライブは楽しめたが、先週の後輩の不幸を思い出すと、切なくなり、本編終わりで帰宅。

2009年8月23日日曜日

原稿読み

   安請け合いしていた、とある文学賞の応募作品の下読み。400字詰め原稿用紙、350枚から500枚ほどの作品を読んで、あらすじをまとめ、いくつかのポイントを整理。中々気が重かったが読み始めると、最近小説読んでいなかったので新鮮だ。特にミステリー作品とか・・・。読み易いものから3作は一気に読めたが、2作は苦戦。進まないまま、近所の博華へ。先日亡くなった後輩と最後に電話で話した時の言葉が、ここに連れて来て下さいというものだった。献杯。