2009年8月29日土曜日

今日は渋谷で、ごっじっ ~♪

   今日こそ、吉祥寺バウスシアターで、「色即ぜねれいしょん」を誕生月割引で見ようと準備をしていたら、時間が変わっていて駄目だった。

   意気消沈しつつ、専門学校の体験入学の講師に行く。高校2年の女子二人。少し内容を噛み砕きつつ、本当はまずいのかもしれないが、途中からこちらも座って目線を同じにして話す。それからの方がリアクションが良くなる。座学の講義スタイルより、ゼミ形式の方が少人数の場合は圧倒的にいい。

    渋谷シアターフォーラムシアターで、04年オリヴィエ・アサイヤス監督『クリーン(493)』
    カナダ、ハミルトン港湾地区、製鉄所なのか、蓄炭施設なのか、夜ボケた灯りに浮かび上がっている。翌日昼過ぎこの街のモーテルに、42歳の落ちぶれたロックシンガー、リー・ハウザー(ジェームス・ジョンソン)と、マネージャー気取りの妻のエミリー・ワン(マギー・チャン)が車を着ける。待っていたのは、フリーのプロデューサーのバーノン(ドン・マッケラー)。明日のライブハウスに挨拶に行くぞとバーノン。リーのマネージャーは私だ、勝手にリーに指示するなと叫ぶエミリーを適当にあしらって、リーを連れて行く。オーナーのX線(X-ray)にリーを紹介する。その時、ステージには、デビー・ハリーのような女性ボーカルのいる地元カナダのバンドメトリックが演奏している。テキサスのインディーズレーベルのクラックスが契約したいと言っているとリーに言うバーノン。マネージャーは私たがら私に話せと苛立つエメリー、リーには二つメジャーからのオファーがあるのよ、リーの才能を安売りする気なのと食い下がるエメリーに、今すぐそいつらに電話をしてみろと携帯を渡すバーノン。黙ってしまうエメリー。時間がないと言って、リーをモーテルに連れ帰るエメリー。
    メトリックのメンバーがステージから降りてくる。リーが来ていたわね、話がしたかったわと女性ボーカル。我が儘女房が自分で直接やると連れて行ったとバーノン。あのジャンキー女?あの疫病神のせいで5年を無駄にしたわね、別れなきゃ、駄目だわ、二人に子供はいるの?ああ、ジェイと言う名前の子供が、バンクーバーのリーの両親に育てられているよとバーノン。
    モーテルに帰ってきた二人。リーは、バーノンの言うレーベルの話を考えたいと言うが、エメリーは、ドリームワークスのスーザンはあなたに首ったけなのよと言う。しかし、デモテープを送ってから随分経っているし、スーザンに決定権などないことは何度もやり合ってきたことなのだ。今自分に必要なのは、掛かって来る筈もないメジャーからの電話を待っていることではなくて、CDを作ることだとリー。じゃあ曲は書けたの?と追い詰めてしまうエメリー。今自分に思い付くのはつまらない曲だが、いい曲が書ける気がする、書けなければ終わりだ、出て行ってくれとリー。
     モーテルのフロントの若僧に、ヤクの売人の連絡先を聞いていたエメリーは、待ち合わせ場所に行き、ヘロインを買う。結局、帰る気もせず、港で、ヘロインを注射して、車の中で眠るエメリー。気が付いた時には、明け方だった。モーテルに戻ると、パトカーや警官が騒いでいる。胸騒ぎがして、部屋に向かうと警官に止められる。私は妻だと暴れ、手錠を掛けられるエメリー。目の前をリーの遺体を載せた救急車を涙で見送るエメリー。一方、カナダバンクーバーの、リーの父親アルブレヒト・ハウザー(ニック・ノルティ)の元に、2人の警官が訪れ、息子の死を伝える。孫のジェイ(ジェームズ・デニズ)を連れて妻のローズマリー・ハウザー(マーサ・ヘンリー)が帰宅する。ジェイを2階の自分の部屋に上げ、息子の死を妻に告げる。気持ちを抑えきれず、庭に走り出して、泣き出すローズマリー。ジェイは、部屋から出てきて、二人の話を盗み聞きする。
    留置場から取り調べに呼ばれるエメリー、リーはヘロインのオーバードーズだった。死亡推定時刻の午前4時にどこにいたのか、リーにヘロインを渡したのはお前か、お前も薬物依存症かと問い質される。結局、リーと喧嘩して外出して戻ってこなかったと、モーテルの男が証言したので、エメリーは、ヘロインの所持の6ヵ月の懲役で済んだ。バートンが面会に来て、モジョの表紙を含め、リーの死亡がかなり取り上げられ、昔の原盤を出したいと言うオファーが多数あった。一番高い金を出すところと契約したので、リーとエメリーの借金を返済して、エメリーの弁護士費用も捻出した、その代り、二度と相談に来ないでくれ、自分の前に現れないでくれと言って帰っていく。
   6か月が経って、エメリーが出所する。車を売って現金に換え、近くのモーテルに泊る。アルブレヒトがエメリーに会いにやってきた。ハンバーガーショップで、義父と嫁は再会する。リーとエメリーが暮らしていたアパートの家財道具は整理してここに預けてある、また共同口座はエメリーの名義に替え、クレジットカードも使えるようにした、金額は決して多くはないが、6日?6週間?は、何とか暮らせるだろう。今日裁判所から、ジェイの養育は、祖父母の我々が引き続き行うように、命令が下りた。事務的な話を言いにくそうに話す。「ところで、ロンドンに帰るのかい?」「バリに行こうと思っているわ、リーに出会う前に暮らしていたバリに。ロンドンはリーとの思い出が沢山あって辛すぎる」「そうだ、ミョージシャンのトリッキーはリーの友人だったのかい。」「ええ、スーパースターよ」「彼はリーの友人として、とてもよくしてくれた。あの人はとても信頼が出来そうだね。」帰りがけに、言いにくそうに、アルブレヒトが「ジェイのことなんだが…、あの子は適応力はとてもあるが、繊細な子だ。父親が死んだことを受け止められているか、自信がない。しばらくの間、会うのを控えてくれないか。必ず連絡をするから」頷くしか出来ないエメリー。車を見送って泣く。
     数週間後のバリ、叔父の紹介で中華料理店のウェイトレスとして働くエメリー。体力的にも辛い上に、完全に薬物から切れていない。仕事の合間に、安定剤を飲み、地下駐車場でマリファナで一服していると、同僚から、親父に密告されるぞ、みんな迷惑しているんだと注意される。情緒不安定になり、他の従業員と接触し、床に倒れるエメリー。昔の仲間のジャン・ピエール(レミ・マーティン)に、ヤクのことを頼む。売人の?が家に籠もって連絡が出来なくなっていると言う。?の元彼女が部屋の合い鍵を持っていると言うので、行ってみると、?はオーバードーズで死んでいた。証拠をトイレに流し隠滅してから警察を呼ぶ。ジャン・ピエールに、トリッキーのパリ公演の時に会わせてもらえないかと頼む。
    エメリーのもとに、MDが届く。刑務所内で知り合ったグロリアと作ったデモテープだ。エメリーは、なけなしの金を集めてMDプレイヤーを買う。友人でミュージシャンのエレナ(ベアトリス・ダウ)にに、グロリアと作ったデモテープを聞いて貰う。どこかで聴いたことのあるようで、悪くない曲ねと言う。皮肉のようだが、エレナは応援すると言ってくれた。
    次に、エメリーがケーブルテレビで、音楽番組のパーソナリティをやっていた時の同僚のイレーヌ・パオリーニ(ジャンヌ・バリバール)のオフィスを訪ねる。約束していた筈なのに、すっぽかされる。昔からイレーヌはそう言う女だった。イレーヌのアシスタントのサンドリーヌ(レティシア・スビキギャレリ)は、いつものことですと慰め、高校生の頃、エメリーの番組の大ファンで、髪型も服装も全て真似していたと言う。

エレナ(ベアトリス・ダウ)イレーヌ・パオリーニ(ジャンヌ・バリバール)ジェイ(ジェームス・デニス)ジャン・ピエール(レミ・マーティン)イレーヌのアシスタント、サンドリーヌ(レティシア・スピギャレリ)グロリア(ジョディ・クロフォード)
Arnaud Churin ... Store Manager Man Kit Cheung ... Restaurant Owner Kurtys Kidd ... Detective Shaun Austin-Olsen ... Record Label Owner


    ニットキャップを被った荻野目慶子のようなマギー・チャンと息子2人の暖かさを感じるアートワークのイメージとは反対に、愛する夫を失った喪失感と、自身の薬物依存症から逃れることが出来ずに、神経質に苛立つマギー・チャンのすっぴんの表情と、父親を殺したのは母親だと祖母から言われ続けてきた息子の気持ちが通い合う瞬間は、映画の中には殆ど一瞬しかない。むしろ孫の未来のために、嫁を理解し、愛そうとする義父役のニック・ノルティと、息子のために自分を取り戻そうとするマギー・チャンの内面的な演技に打たれる映画だ。
     オリヴィエ・アサイヤス監督の「夏時間の庭」の前作で、マギー・チャンがカンヌで主演女優賞、エリック・ゴーティエが技術賞を取っているのに、5年掛かった日本公開の初日、不幸にも、コカイン常習の自称サーファーの夫とその妻が送検され、10歳の息子が残されたばかりの何ともいえないタイミングの公開になった。息子を捨てて、逃げ隠れして証拠隠滅を図った日本の母親は、出所後、大切なものを思い出せるのか…。

     渋谷パルコ劇場で、前川知大作・演出『狭き門より入れ
   久し振りの芝居、この前は何だったかなあと思うと、毛皮族の本多劇場以来だと思うと、少し恥ずかしい。

   どこぞの駅のホーム、電車に飛び込もうとしていた男を引き止める男がいる。自殺する気はなかったが、精神的に疲れていて、呆然としている男。引き止めてくれた男は、数年前に亡くなった友人にとても似ている。男と、男の仲間に駅前で手渡されたチラシには、世界があと三日で終わる。更新されると書かれている。宗教団体のよくある終末論のビラだと思う男。
    感染すると昏々と眠り続ける奇病が世界に蔓延し、全人類の3分の2に広がろうとしている。就職を斡旋してくれた父親の友人の不正を、正義のために会社に告発し、会社の将来のために、社員のリストラをし続けた男、天野道彦(佐々木蔵之介)が、本人としては会社を辞め、会社的にはリストラされ(切ない表現だ(笑))、3000万の退職金を詰めたジュラルミン・アタッシュケースを持ち、弟の雄二(有川マコト)が店長を務めるコンビニに帰ってくる。二人の父親は脳卒中で倒れて、意識が戻らないままだ。コンビニには、かって佐々木が横領を告発したために、失業した中年男の時枝(浅野和之)が期限切れの弁当を貰って住み着いている。今日は更に、万引きをした若者(中尾明憲)までいるのだ・・・・。
   利己的で、腐り切った世界が修正される。その新しく更新される世界に行けるのは、3人に2人。正に「汝ら狭き門より入れ、けだし亡びに至る門は大きく、その路も広くして、これより入る人多し。ああ生命に至る門狭く、その路も細くして、これを見出す人少なきかな」(マタイ伝7章13〜14節)なのだ。更新される少しましな世界に行くことができる資格は、どうしたら得られるのか?
  
    非常によく構成され、テンポもあって、楽しめる。主人公が不本意ながら一緒に過ごすことになった時枝と魚住に狭き門を選ばせるように必死になる後半、瘤取り爺さんの話など論理的には少し弱く、妙に理屈っぽい部分が弱い。佐々木蔵之介の熱演で、ぎりぎり集中を引き止めているようで、叫びまくる佐々木は声を嗄らしている。もう少し、違うアプローチをしたほうがと思ってしまうのが惜しい。
    実は、今日のチケットは、面白いので一緒に行こうと誘われていたのに、直前に行けなくなったと言われて、声を掛けたら、京の着物美人と同行することになったのだ。その後、近くのインド料理屋に、少し緊張して、結構酔う。51になっても、好きな女の子の前ではボロボロなのは、中学2年から全く進歩せず、哀しいなあ(苦笑)。

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