池袋新文芸坐で、世界/戦争/歴史 そして追悼の八月。
83年東映/今村プロダクション今村昌平監督『楢山節考(
信州の雪深い山中に、小さな集落がある。そこに辰平(
春が来て、雪解けの田に水子が捨ててあるのを利助が見つける。隣の嫁が腹ボテだったのを思い出し、欽やん(江藤漢)仁作(常田富士夫)の元に怒鳴り込む。二人は、老母のおかね(清川虹子)が病に伏せっているので、白はぎ様(白米)を炊いている。おかねは、うちの水子は10日前にちゃんと墓に埋めたという。なかやんの家の嫁も腹ボテだったと仁作から聞き、利助が行ってみると奴の常(小林稔侍)が認める。
ある日、塩屋(三木のり平)がりんを訪ねてきて、
おかね(清川虹子)がもう駄目だと言う。おかねは、
祭りの日に、隣の村から竹やん(あき竹城)が一人でやってきた。兄と来る筈だったが、祭りで酔っ払って寝てしまったという。塩屋が根っこの姑はとってもいい人だと言ったと言う。朝から歩いてきた竹やんに、お祭りにしか炊かない白はぎ様を丼に山盛りにし、自分が捕ったヤマメを食べさせ、辰平を呼んで来ると言う。りんは、大きく丈夫そうな身体をして、明るい性格の竹を一目見て気に入った。納屋に入って、石臼に歯を打ちつける。2本しか折れなかった。血だらけの口を濯いでいるところに、出くわした利助に、恐ろしい顔で、このことは誰にも言っては駄目だと言って、抜けた2本の歯を渡し、祭りの場所に辰平を迎えに行く。りんの血だらけの口元を見て、村人たちは、鬼婆だと囃し立てるが、りんの表情は変わらない。
辰平と竹が求めあっている。前よりもいいと言う竹に、おれも前よりもいいと言う辰平。それを覗いて自涜していた利助は堪らなくなって、新屋敷の飼い犬シロに夜這いに走る。その時、新屋敷の親父(ケーシー高峰)が嫁のおえい(倍賞三津子)が今わの際にした遺言を聞いてしまう。新屋敷家は、娘の夜這いに怒った先代が、奴を殴り殺してから呪われていると言う。自分が亡くなった後は、村の奴たちの相手をしてやって、殺された奴の霊を慰めて欲しいと言い残す。その話を聞いて利助は、村の奴たちに、その話をする。
秋が来て、けさ吉が妊娠した松を連れてきた。腹が出てきた松は食欲旺盛だ。更に、夜になって、根っこの保存食のじゃが芋と玉蜀黍を盗んで、実家の雨屋に持って行く。その帰りを待ち伏せた辰平は、松を捕まえ、井戸に落そうとする。しかし、松のお腹には、自分の孫がいる。なんとか思い止まって、二度とやるなと言う辰平。しかし、数日後の夜、村の長の照やん(殿山泰司)の楢山さまに謝るぞという声が響きわたる。雨屋(横山あきお)が、食料を盗んでいたことが露見したのだ。雨屋の女房(志村幸江)をはじめ沢山の家族が集められ、雨屋の家が調べられる。盗まれた沢山の隠匿物が暴かれ、村人に分配される。雨屋は、先代も同じ罪を犯していたので、雨屋の血脈を絶たないと安心して眠れないということになった。りんは、松に、今晩は雨屋は食べるものもないだろうと言って、じゃが芋を持って家に帰るように言う。じゃが芋を焼いた松が弟や妹、父母に配って、食事を始めた時に、村人が襲いかかり、雨屋の一家を網で捕らえ、村の外れに掘った穴に投げ捨て、生き埋めにする。けさ吉は、りんによって、松と自分の子供が殺されたと罵る。
おえいは、毎夜、一人ずつ奴を呼びに行き、一夜を過ごした。利助は、西の老奴の勝造(小沢昭一)から順に呼びに来るおえいに、今夜は自分の番だと思ったが、抜かされてしまう。荒れ狂い、田圃で実った稲を引き抜き暴れる利助。更に、根っこの唯一の財産とも言える農耕馬の春松に、お前まで俺を馬鹿にするのかと八つ当たりする始末だ。
りんは、おえいの元に行って頭を下げるが、おえいは、くされだけは勘弁してくれないかと言う。夫の遺言に反するのではないかと言うりんに、墓参りして、そのことを相談したら巨大な黒い蝶が現れたので、承諾してくれたのだと言うおえいに言葉を失うおりん。
辰平は、利助に一晩だけだぞと約束をさせ、竹に相手をさせようと考える。春松より、妻の貞操のほうが、明らかに安いのだ。竹は納得できないままに承諾する。りんは、おえいにその話に乗っては駄目だぞと言って、おかねのもとに出かけて、何とか利助を男にしてやってくれないかと頭を下げるのだった。おかねは、私は鼻が効かないのでクサレは気にならないが、随分と長い間使っていないので、使えるもんだろうかと心配するのだった。
冬が近づいてきた。りんは、竹に、明日お山に行くので、辰平に行って、お山に行った人たちを呼んでくれと言う。辰平の父親の利平の姿を見たと言われ、りんは走る。そこにいたのは辰平だった。辰平は、かって、山に猟に行った時に、祖母を楢山さまに連れて行きたくないと言う利助と親子喧嘩をし、この場所で射殺して、このあたりに埋めたのだと告白する。お前のせいではない、楢山さまが全てやったことだ、今日以降誰にも言うのではないと言うりん。部屋を掃除し、準備をする根っこの家族。銭屋の又やん(辰巳柳太郎)が逃げてくる。息子の忠やん(深水三章)が縛っておいた縄を切って逃げて来たのだ。80歳を超えてまだ死にたくないと駄々をこねる又を諭すりん。根っこの家に照やん(殿山泰司)たちがやってきた。楢山さまに登る時の心得を順番に語るのだ。「楢山さまに行くときは、口を聞いてはいけない。」「家を出る時に人に見られて行けない。」・・・・・「帰る時には、絶対振り返ってはいけない。帰りがけに、照やんは、お山に登るのがつらければ、途中で捨ててきてもいいことになっていると言う。
いよいよ、辰平はりんを背負って家を出る。竹は、家の前で、黙って見送る。一方、利平の部屋
を合図するものがいる。おえい婆さんだ。楢山への道は、道なき道だ。途中、急な崖で辰平は、足の親指を割ってしまう。りんは黙って布を裂いて辰平に渡すのだ。急な山を登り続ける辰平。いつしか、岩場に大量の人骨が散乱する一角に到着する。白い人骨と黒いカラスの群れが対照的な恐ろしい光景だ。りんは、辰平に降ろすように合図をし、握り飯を持って帰るように示した。
辰平は降りはじめる。途中、忠やんが網で身動きできないようにした又やんを崖に突き落とす光景を目撃する。カラスの大群が飛び立ち、その鳴き声が谷底にこだまする。雪が降ってきた。お山に登った時に、雪が降ってくるのは、おりんの行いが良かったせいだ。辰平は、村に伝わる歌の通り雪が降り出したことで嬉しくなり、再び山に駆け登り、おりんに「おっかあ、歌の通り雪が降ってきたなあ」と声を掛ける。おりんは、肯いてもう帰れと合図をした。
雪の中、辰平は家路を急ぐ。寒い中帰ってきた辰平を、竹は優しく迎える。けさ吉は、早くも新しく妊娠させた娘を今日から住まわせると言う。その娘が来ているドテラはりんのものだ。また竹が締めている帯もりんがしていたものだ。
木下恵介版を見てからの印象は、今までとは少し異なる。映画館で一回、テレビ、レンタルビデオで数回見ている今村版。カンヌ・パルムドールで、今村昌平の代表作と思っていたが、少し物足りなさを感じてしまう。田中絹代VS坂本スミ子、高橋貞二VS緒形拳、木下恵介VS今村昌平ということでもない。今村昌平の最高傑作とは言えないんではないかという気持ちが、どこかから浮かんできてしまう。少し考えたい。改めて書きたい。
79年松竹/今村プロダクション今村昌平監督『
昭和39年1月4日、雪の山道を下って行くパトカーと警察車両。
昭和38年11月福岡県築橋市、
刑事たちは、
戦後、巌は、
別府に戻ったある日、
出所した巌は、父親と妻の間にある微妙な空気に感づき、
犯行後、巌の姿は、岡山で目撃され、
吉武順一郎(火野正平)出池茂美(北村和夫)ステッキ嬢岡啓子(
うぅっ、ずっと今村昌平の作品の中で、ベストではないと思っていたが、やっぱり凄い。1960年代に入って、日本映画がどんどん厳しくなり、映画業界人の泥縄が全て失敗していた頃だが、全てが駄目だったわけではない。ずっと、この映画は倍賞美津子だと思っていたが、今の自分には小川真由美だ。彼女の哀れが全てだ。
渋谷O-EASTで はむつんサーブ。元会社の同僚、後輩ばかり。ライブは楽しめたが、先週の後輩の不幸を思い出すと、切なくなり、本編終わりで帰宅。
0 件のコメント:
コメントを投稿