2009年9月5日土曜日

66年から81年までの間に、川口小枝に何があったのか。

    ラピュタ阿佐ヶ谷で、昭和の銀幕に輝くヒロイン【第48弾】星由里子
     67年東京映画豊田四郎監督『千曲川絶唱(508)』
    ある夜、新潟運送の定期便のトラックが新潟支社にやってきた。運転手の五所川原肇(北大路欣也)と服部勇次郎(田中邦衛)が降りてきて、水道に走り、気持ちよさそうに頭から水をかぶる。
近くの食堂に駆け込み、肇はレコードを掛け、女たちと騒ぐ。
    翌日、二人は帰路、柏崎の診療所に寄る。服部の妹の美子(いしだ・あゆみ)が脊髄カリエスで入院しているのだ。担当医の岩倉(平幹二朗)に、妹の病状を尋ねる服部。この病気は、本人の生きたい気持ちが大事なのに、美子にはそこが欠けていると岩倉。そういえば、同僚が歯茎から血が出ると言うので、診てやって貰えないかと服部。美人看護婦が気になっていた肇を、呼び無理矢理岩倉に診て貰う服部。口内を診て、胸を打つと痛いと言う箇所があると言う肇に、血液と尿の採取する。
お前も意外に根性ないなと言う服部に、あんな別嬪の前で小便採れと言われてもと肇。
    富山に戻る。新潟と富山との間の日本海に沿った道路は道幅も狭く、整備も遅れていて、神経を消耗する。ようやく富山の支社まで帰ると、今日は給料日だ。前借りばかりで、ほとんど入っていない服部の給料袋。肇は、他人の残業を何でも受けるのはいいが、身体を壊すなよと所長(若宮忠三郎)に注意をされる。
   服部と肇が帰宅する。肇は、服部の家の二階に間借りしているのだ。「勇次郎かい?早かったね。」と服部の母親の久枝(都家かつ江)。料理屋の女中をしている久枝は、今日は早番だから出掛けるよと声を掛ける。美子の見舞いに行って来たけれど、たまには母さんだって、顔見に行ってくれと服部。あいつの病気だって、母さんがどっかの男の所に行って帰らない時に、風邪をこじらせたことが原因じゃないかと怒る服部。煩い子だねえと白粉を顔にはたく久枝。
   岩倉が、所長の所に肇の検査結果を持って行く。「確かに白血病の可能性が高いね、広島にいたのかい」「北海道の礼文島で生まれ育って、広島長崎には行っていないと言うんです」「大変珍しいケースのようだね」所長と岩倉は、少し興奮しているようだ。岩倉は看護婦の浮田奈美(星由里子)を呼び、肇の白血球の顕微鏡写真のスライドを見せ、彼は白血病だ。半年、もって一年かもしれない、この事実は僕と君と所長の三人しか知らない。本人にも言わない方がいいだろう。しかし、直ぐにでも精密検査をしなければならない、幸い彼は君に好意を抱いているようだ、彼をこの病院に連れて来るよう頑張って貰えないかと頭を下げる。看護婦としての職業的な使命感に強く頷く奈美。
  初恋の詩を読む美子と奈美。私はお兄ちゃんが好き、お兄ちゃんに毎日ラブレターを出すのと言う美子に、では、手紙にお兄ちゃんの友達を連れて来てと書いてと頼む奈美。
   服部が、手紙を持って、肇の部屋にやってくる。ちくしょう!美子からの手紙に、あの看護婦が五所川原さんに一目惚れしたので、必ず連れてきて下さいと書いてあるぞと言う。飛び起きて、小躍りして喜ぶ肇。さっそく、新潟行きの定期便を志願する。ヘアドライアーのプレゼントを買った肇。しかし診療所に行くと、待っていたのは、医師の岩倉だ。奈美は実習でいないと言う。採血だけでなく、脊髄液まで採取される。帰りの運転席で、ざまあみろと言う服部に、あいつら、俺をモルモット扱いしやがってと怒りまくる肇。
    数週間が経った。非番で肇は布団で、金を数えている。かなり貯まっている。そこに久枝が上がって来る。慌てて身体で隠す肇。浮田奈美さんって別嬪があんたを訪ねて来たと言う。浮田奈美?と心当たりのない肇に、美子の診療所の人だよと言う。思わず躍り上がる肇。大金を見つけ、少し私におくれと言われ、冗談じゃないと言う肇。
     玄関に降りてきて、上がれよと肇が言うと、話があるので、外で待っていますと頑な奈美。

      武満徹の映画音楽
     64年松竹大船篠田正浩監督『乾いた花(509)』
    上野駅から国電に乗り換え、横浜に向かう情景(池部良Na東京か、三年振りだ…眩暈がするような空気だ…、殺しで三年・・・)横浜橋商店街。霊柩車が橋を渡って来る。(また誰かが死んだのか…。ここは俺のシマだ。躊躇いながらも、ここに戻った…何も変わっちゃいねえ、ここも、あそこも…)
   村木(池部良)が、三年の刑期を終え、帰ってきた。対抗する安岡組の?を殺ったのだ。賭場に顔を出す。弟分の玉木(中原功二)が「兄貴!!…いつ?」「今朝よ…」「親分には」「事務所に寄って来た…」「長い間、ご苦労様でした」盆茣蓙の客に目をやる村木。若い一人の娘(加賀まりこ)が、派手に賭けている。勝ち続けている女。村木も加わる。村木が入ってから、流れが変わる。「だいぶやられましたね、兄貴。あの娘の損をみんな兄貴が被った感じじゃないですか…」「あの女は、長いのか?」「5、6回っていう感じでしょうか。」「誰が連れてきたんだ?」「」それが分からねえんで…。気がついたら座っていたという感じです。いい女でしょう。組の若い連中が気にしています。
    村木は、古田時計店の閉まったドアを叩く。一階の店に寝かされている新子(原知佐子)が誰?と戸を開ける。新子とは3年振りだ。あんた?いつ?いつ?と抱き付いてきた新子の口をキスで塞ぎ、荒々しく押し倒す村木。「変わらねえなあ、このウチも」「抵当に入っているのよ、父さんは倒れて、二階で寝たきり、商売は兄さんがやるようになって少し持ち直したけれど…」「ここで寝させられるようになったのはいつって言っていたか…」「15の時だった。血が繋がっていないとは言え、あの男に無理矢理…。あいつは、父親なんかじゃなくて、ケダモノよ、豚よ!!母さんだって知っていた筈なのに…。あんな男死んじゃえばいいのよ…。」「俺たちが初めて会ったのは、暗い映画館の中だった。」

   京橋フィルムセンターで、特集・逝ける映画人を偲んで2007-2008
   72年日活村川透監督『哀愁のサーキット(510)』
   富士スピードウェイに、レーサーの滝田和郎(峰岸隆之介→徹)がやってくる。テスト走行をする滝田。なかなかいいラップを出している。無人のスタンドに、黒い帽子とマキシコートの女(木山桂)がいる。滝田がピットクルーに、ありゃ誰だい?と尋ねると、男は、今売り出し中の歌手榊ナオミらしいですよ。なんでもグラビアの撮影が入っているって聞いたから。ふーんと関心のなさそうな滝田。マネージャーが榊?を迎えに来る。キャニオンレコードのマークの入った社用車で、サーキットを後にする。
富士山の見える海岸に、車を止め、笑いながら走り回る滝田。コッヘルでコーヒーを入れ飲んでいると、榊ナオミが海に向かい何かを投げている。滝田が近づいて見ると、彼女のピット曲「鳥がにげたわ」のシングル盤だ。

     銀座シネパトスで、
   「日本映画レトロスペクティブ-PART3-」~愛と性、体制と権力 大島渚 闘いの歴史~
   67年創造社/松竹大島渚監督『無理心中日本の夏(511)』
    ネジ子(桜井啓子)が、公衆便所を覗くと、掃除をしている。直ぐ済むから使わせてくれない?と尋ねても反応はない。更に白い上下の男たちが、壁の落書きを白く塗り潰し始める。諦めてネジ子は、橋にパンティを脱いで投げる。泳いでいる男が「落としましたよー」と声を掛ける。いらないから捨てたのとネジ子。次々に子供たちが泳いでくる。日の丸を掲げて泳ぐ子供もいる。もうこのまま小便をしようかとネジ子が思うと、橋の向こうから軍楽隊が行進してくる。その後ろには黒い詰め襟姿の学生たちが、更にその後ろから日の丸を振り、鉢巻きをした老若男女がやって来る。

   66年創造社/松竹大島渚監督『白昼の通り魔(512)』
    高級住宅、女中の篠原シノ(川口小枝)が洗濯をしていると、同郷の小山田英助(佐藤慶)が包丁を持って押し入ってきた。英助は、シノの首を絞めて強姦するだけでなく、家の夫人を強姦殺人して逃げた。今各地で犯行を重ねる白昼の通り魔の犯行だろうと警察は言う。家の主人(観世栄夫)は、取り乱す。シノは刑事(渡辺文雄)に、冷静に状況を説明するが、犯人が同郷の英助であることは明かさなかった。その代わり、英助の妻で郷里の村の神無中学で教師をしている松子(小山明 子)には、真実を記した手紙を出す。    
   かって神無村では、村長の息子の日向源治(戸浦六宏)と中学教師の倉松子が中心になって村の若者たちが共同農場を経営していた。しかしある年台風で、豚や鶏が全滅、 また鶏舎が流されたことで、他の村民の田圃が4町歩駄目になり、共同農場は続けられなくなった。英助は農地がない水呑百姓で、他の村民の農作業を手伝って 生計を立て、共同農場も出資出来ないため豚や鶏の糞尿の始末などを進んでやっていた。共同体の集まりで、松子は、恋愛とは無償の行為だと教えている。かって、英助 やシノは彼女の教え子で、自由、人権、人類愛などを教えていた。
  シノの父親(小松方正)は、田が駄目になってから、働きもせず酒ばかり呑み、 娘に注意されると一家心中すると言いだすが、祖母に毒薬だと頓服を出されると真っ先に逃げ出す情け無い男だ。シノは源治にニジマスの養殖とホップ栽培の元 手の借金30万を申し込む。源治はシノを愛していると言って承諾し、関係を持つ。狭い村で2人の関係はたちまち知れ渡った。源治は村会議員選挙に出馬することに なった。一生が見通せてしまったようで源治は厭世的になる。シノに愛し合っているのだから一緒に死んでくれと言い、裏山で2人は首を吊る。源治は死んだ が、シノは英助によって助けられる。しかし、意識のないシノを、源治の死体の下で、英治は犯すのだ。
   シノは何度も松子に手紙を出す。英助の妻であり共同体の指導者であった松子にどうするか判断してもらおうと思ったのだ。しかし、松子からの返事は来ない。いつの間にやらシノは刑事と一緒に通り魔の被害者に会うよう になっていた。しかしある時、シノ→英助→先生という三角の表を刑事に見咎められる。
     修学旅行の引率で大阪にいる松子の前に現れたシノ。東京に向かう新幹線の中でも現れるシノ。答えを求めるシノのまっすぐな目に、ついに東京駅で、松子は、教師としての立場を捨て、生徒たちを置き去りに走り出す。追いかける シノ。銀座の真中で倒れた松子を介抱するシノ。
    裁判で、30数名を手に掛けた英助は、シノとの出来事がその後の犯行の引き金になったと証言する。英助の 判決の日。二人は汽車に乗っていた。駅弁を勧めるシノだが、松子は手をつけない。松子の分の釜めしをシノは食べる。二人は郷里の村に戻り、英助に死刑判決 が出たことが有線放送で流されているのを聞きながら、源治の心中の現場を訪れ自殺を図る。しかし、しばらくしてシノは、毒を吐いて生き残る。松子は死んで いる。また生き残ってしまったと呟きながら、松子の死体を背負って山を降りるシノ。
   昨年11月に観た際の感想は、「気高く美しい女教師松子は、田舎の村社会に、新しい自由と正義を普及させたが、教え子だったシノと英助の生命力の前には無力だ。この無力さは、自分の無力さでもある。悲しいなあ。」と書いていたが、今回の印象は、村の唯一のエリートの源治と、唯一の知識層である松子の尊大さへの嫌悪だ。それは、勿論自己嫌悪でもある。

   谷崎×エロス×アウ゛ァンギャルド 美の改革者 武智鉄二全集
   81年武智プロ/富士映画武智鉄二監督『白日夢(513)』
   歯科の診察室、男児と老人が診察台に座っている。いくつになっても、虫歯を削る機械の金属音は嫌なものだ。倉橋順吉(勝然武美)が受付に、診察券と保険証を出す。待合室に座っていると和装の美しい女が入ってきた。葉室千枝子(愛染恭子)だ。受付の女(川口小枝)の表情に、気のせいか赤みが差す。倉橋と葉室が次々に中に呼ばれる。ドクトル(佐藤慶)は、葉室の口を乱暴に捏ね回している。更に麻酔ガスを吸わせ、着物の胸を緩めさせる。倉橋には、歯を確かめ抜歯しましょうと言って、麻酔を注射される。徐々に意識が遠くなりながら、倉橋は、隣の診察台に気を取られている。ドクトルは、看護婦二人(川口小枝ともう一人)の胸を揉みしだく。

   歯医者のシーンまでは、最初の脚本と基本的には一緒だ。しかし、本番映画として佐藤慶と愛染の絡みが長い、長い。基本的に、体位も変わらないので、AVを見なれた今の人々には、よく言うと凄くネットリしているというか、悪く言うと、抱き合ってモゾモゾ、クネクネしているだけで変化がない。更に当時の映倫対策に、二人の腰のあたりに、かなり大きめに、ワイプで、別のアングルからの愛染の顔や、二人の絡み、あるいは、二人が能面を被って、舞うというより、扇子を動かすだけなのだが、こんなもの今の人が見たら、芸術的な効果を狙った演出だと思うだろうな。
   全般にエロス大作というよりも、オカルト映画のようだ。1964年版のほうが、まだ映画として成立している感想だ。しかし、こんな映画に平然と出演、熱演する佐藤慶は凄い役者だ。
   

2009年9月4日金曜日

新型インフルエンザか?!お父さんは心配症。

   午前中は、レジュメ作り、学校で大量コピーして、2コマ。どうも、この学校の教室は、講師に冷房の風が当たるような構造になっているらしく、必ず体調が悪化する。あまりに完璧なので、後ろのエアコン調整出来る席に座っている学生が、風向きを調整して、私にダメージを与えようとしていると被害妄想を感じる程だ(苦笑)今日も、一コマ目で、絶不調になり、いよいよ、先頭を切って新型インフルエンザをゲットしたかと暗澹たる気持ちに。早めに切り上げ、休んでいると復活。
   池袋新文芸坐で、マキノ雅弘監督「日本侠客伝 絶縁状」を見ようと、代々木から山手線に乗ったつもりが、総武線、更に本を読んでいたら、阿佐ヶ谷まで来ている。戻ろうか迷ったが、これは今日は帰れと言っているのかと考え直す。まだ、5時前だし、久しぶりにささら亭。ビールの喉越しで、扁桃腺が腫れている感じでもなさそうで、久し振りに燗酒飲み始めると絶好調に。今日は、早めに寝るとするか…。

2009年9月3日木曜日

生まれた時が悪いのか、それとも俺が悪いのか・・・。

   午前中は、友人Nさんと、アメリカで、スポーツなどのチケットビジネスをしているMさんに会う。
やっぱり、スポーツ、音楽、アメリカのエンタメビジネスの話は面白い。エネルギーある人と話していると、二日酔い気味の緩みきった脳味噌が覚醒してくる。いい例えではないが、人間が覚醒剤(笑)。覚醒剤止めますか?人間止めますかと言う標語あったが…。Nさんと昼飯食い、渋谷に出て、


   シネマヴェーラ渋谷で、妄執、異形の人々 Ⅳ

   69年大映東京弓削太郎監督『いそぎんちゃく(505)』
    下町にある川合クリーニング店、女店員の石田浜子(渥美マリ)は、無愛想で、やる気もない。店の主人の健三(高原駿雄)は、弱り顔だ。あんたここに来るまでどうしていたの?と妻の房代(目黒幸子)が問い詰めると、浜子は、田舎から汽車に乗って上野に着いた。ブラブラ歩いていると、この店の前に女店員募集と紙が貼ってあったと言う。呆れる妻。銀座のクラブのホステスが洗濯物を受け取りに来たが、外国製のパンティが無いと言う。探しても見つからない。浜子に二階の物干し場を見ておいでと言う房代。物干し場に上がり、外の景色を眺めている浜子。
    今日は定休日だ。房代は寄り合いがあって留守だ。健三と浜子がラーメンを食べている。どこか遊びに行ってきたらと主人は言うが、別に見たい所も行きたい所もないと浜子。お前は若いのに、変わっているなあと健三。二階の自分の部屋で、給金を嬉しそうに何度も数え、天井裏に隠す浜子。健三が物干し場で、シーツなどを干している。浜子は服を脱ぎ、外国製のパンティに履き替え、姿見を見ている。健三が覗いて、それは昨日探していたお客さんの物だろと怒る。パンティを脱いで健三の前に放る浜子。別に脱げと言った訳じゃない。黙っておいてやるから二度とするんじゃないぞと言ってから、脱いだ服で前を隠す浜子を改めて見て、若い娘の裸に生唾を飲む健三。たまらなくなり、浜子!!優しくしてやるからと抱き付く。抵抗をしていたが、力を抜き、感情のない目で天井を見上げる浜子。
   その夜、主人夫婦の寝室。暑くて眠れないので、眠れるようにしておくれと甘える房代。主人は眠っているのか鼾をかく。起きておくれようと房代は揺するが目覚めない。しばらくして、健三が房代に、おい寝たか?と声を掛ける。もう一度確認してから寝室の襖を開け出て行く健三。案の定、二階の浜子の部屋に上がり、浜子いいかとのしかかっていく健三。夢中でいると、二階の襖が開く。妻が鬼の形相で立っている。横にいないので、気になって来たらこんなことにと言って、泥棒!!人の夫を盗みやがって!!と、浜子を叩く妻。平然と、私からじゃないと無表情のまま答える浜子。妻の怒りに更に火を点ける。あなた!!こんな女叩き出して!!さもないと私が出て行きますと房代が言う。すまなかった出て行ってくれと房代に言う健三。健三を殴り続ける房代。
   健三と浜子しかいない店に近所の主婦が来た。あら奥さんは?と尋ねると、奥さんは病気で休みですと答える。重いのかい?と興味津々な客に、この前のシャツ2枚分のお代まだ頂いていませんと無愛想な浜子。奧ではふて寝なのか房代が布団で横になっている。
   昼飯なのか健三と浜子が卓袱台で食事をしている。そこに疲れ切った顔の房代が入ってくる。封筒を出して、これをあげますから出て行って下さい。お願いだから夫を返して下さい、10万円用意しましたと頭を下げる。浜子は中身を改めて、色々お世話になりました、明日出て行きますと答える。惜しそうな表情の健三。
    風呂敷包やバッグを下げて、商店街を宛てもなく気怠そうにブラブラ歩く浜子。関西割烹福助と言う店に女中募集と貼り紙がある。皿洗いをしている浜子。店に老人(加藤嘉)が入って来る。女将の福子(関千恵子)と夫の板前が「会長、いらっしゃいませ」と声を掛けると、もう引退したんだからご隠居でいいよ、もう女と金勘定は御免だよと言う。しかし、奧で洗い物をしている浜子を目に留めて、「見つかったらしいね女中」「浜ちゃん、ご挨拶なさい」「こんにちは」「すみません、田舎の子なので挨拶もちゃんと出来なくて…」「どこの出身だい?」「どこだったかしら…、浜ちゃん田舎は?」「山形…」「雪国育ちか…」。
    浜子と福子が銭湯で湯船に入っている。「いいわね浜ちゃんは若いから」隣の男湯から長唄が聞こえてくる。「あらあ、柏木さんだわ。いい喉。柏木さんってさっきお店にいらしたご隠居さんよ。駅前スーパーの社長さんで、何人もお妾さんがいらして駅前に大きなお屋敷に住んでいらしたの、ご商売は息子さんに譲られて、のんびりしていらっしゃるの」と話好きな福子。銭湯から柏木が出てくると、福子が待っている。「お隣でいい喉が聞こえたのでお待ちしていましたわ。」「声を掛けてくれれば良かったのに」「そんな恥ずかしい…」福子の後ろに浜子の姿を見つけて、「女将、湯上がりの散歩に、この子を少し借りていいかい」「散歩いいわねえ、あたしも…、お邪魔のようね、じゃあ浜ちゃんをよろしくお願いします。」
    浜子にワンピースを買ってやり、高級料亭に連れて行く柏木。手を付けずに料理を眺めている浜子。「どうした食べないのか?」「こんなご馳走生まれてから一度も見たことがないんです。」「そうか…でらよく眺めてから食べなさい。」
    浜子は母との貧しい生活を思い出している。寝込んでいる母親(村井扶美子)。「どっか行くのかい?」「こんな貧乏生活は嫌だ。」「うちだってお父ちゃんが生きていれば」「変わっていないよ。結局、お父ちゃんもお母ちゃんも、本気で貧乏な暮らしから逃げ出そうって考えなかったんだよ…」
旺盛な食欲で、美味しそうに食べ始めた浜子を見ながら酒を飲む柏木。自分の料理を、これも食べなさいと渡すと、嬉しそうに微笑む浜子。
    隣の部屋に布団が敷いてある。それを見ても、浜子の表情は変わらない。「何も怖がることはない、私が服を脱がしてやる。私が嫌いかい?」「いえ、銭湯の時も急いで上がって、待っていました。」
    福助に、柏木が戻って来る。長いお散歩でしたねと福子。何しろ年寄りは、足が悪くってねと言う柏木の後から、買って貰ったワンピースを着た浜子が入って来て、恥ずかしそうに二階に上がって行く。「ご隠居さん、まさか?やっぱり…。よりによって酔狂が過ぎますよ。いかもの食いがご趣味だったんですか。」「イカモノどころか、掘り出し物だ。私はこの年まで、あんな絶品に会ったことはない。長生きはするもんだ。」
    新築の高級アパートで福子と浜子が片付けをしている。柏木がやってきた。福子が「浜ちゃん、ご隠居さんが何から何まで用意してくれて、本当にあんたは幸せね」と言う。福助で、働く浜子。とても垢抜けて綺麗になり 、客あしらいも明るく、客たちの人気ものだ。福子が、浜ちゃん本当に綺麗になって…と、カウンターで飲む柏木に声を掛ける。
    浜子のアパート、浴室で、浜子の身体を洗う柏木。寝室で、浜子を愛する柏木。「浜子に会えて、本当に良かった…」しかし、体を動かし始めると、突然気を失う柏木。悲鳴を上げる浜子。
浜子の部屋で、鼾をかきながら寝かされている柏木。医者と看護婦が帰って行き、枕許に福子と浜子が座っている。柏木の息子の貞吉(大辻志郎)と嫁の静江(田中三津子)がやって来る。「外聞も悪いし、病院に運んだ方が」と静江。「心筋梗塞で、絶対安静です」と浜子。「で、親父はどうしていたんです?」と尋ねる貞吉に、「一緒にお風呂に入りました」「血圧が高いから医者に止められていたのに」「それから、一緒に布団に」露骨に嫌悪する表情の静江。「僕は附いているから、君は帰っていいよ」と妻に言う貞吉。福子も帰って行った。
    しばらく僕は起きているから、少し寝たらと貞吉が浜子に言う。ありがとうございます、座布団を借りますと浜子。布団は、柏木が寝かされている一組しかないのだ。別室で、浜子が眠っている。襖を開け、貞吉が入ってくる。浜子を好色そうに眺めていると、目を覚ます浜子。トイレはどこ?と言うので、トイレなんておかしいわと浜子。親父と何をしていたんだと言って襲い掛かる貞吉。別室の柏木の様子が変だ。
   柏木の屋敷で通夜が行われている。浜子が入ってきて、遺影の前に座り、大きな声で泣き出す。静江が貞吉に、ほんとにお義父さんいい年齢して恥ずかしいわ、あの人のこと、お金払ってもキチンとして下さいねと言う。年配の参列者に混ざって、浜子が寿司をバクバク食べている。貞吉が別室に呼び、君も大変だろうけど、何でも相談にのるよと未練がましい。二百万の小切手を渡し、あの部屋も君に上げるよと言う。
   福子が、浜子のアパートに行くと、古道具屋が家財道具一切を運ぼうとしている。買取金額の交渉で、テレビだけで、二万になると電気屋さん言っていたわと吊り上げる浜子。福子は、引っ越しちゃうの?と言う。こんな立派な部屋私にはもったいなさすぎるので、部屋も売ってしまったらしい。色々とお世話になりましたと頭を下げる浜子に、あんた目当てのお客さんも沢山いるので、それだけは考え直してと懇願する福子。
    ネグリジェサロンのようなところで働く浜子。テレビ局の営業担当の田村(早川雄三)と、スポンサー宣伝部員の岡崎(牟田悌三)と盛り上がっている。田村が岡崎さんが君のこと気に入ったみたいだから頼むぜと言って?万円を浜子に渡す。連れ込み旅館で、風呂から出て来た沢田が、明日会社早いから先に帰るな、宿代払ったから君は泊まっていけばいいと言って、車代をくれる岡崎。岡崎が帰るなり、フロントに電話をして、今から帰るから、泊まりの宿代を返してと言う浜子。
   浜子が夜道を歩いていると目の前に車が停まる、運転席には、ネグリジェサロンでトランペットを吹いているバンドマンの室井(平泉征→成)がいる。君が心配で待っていた。君を愛しているから他の男と関係して欲しくないと言う室井。直ぐに二人は同棲する。
   ある時、アパートに柏木の息子貞吉がやって来る。心配していたんだ、大丈夫?相談にのるよと言った所に、室井が帰ってくる。私結婚したの、芸術家なのと貞吉には言い、室井には以前とってもお世話になった方なの、今日も私を心配して、お店の商品をこんなに持って来てくれたわと言う。

  渥美マリの初主演作だったのか、大映の末期の延命を貢献した女優の一人。生まれた時が悪いのか、それとも俺が悪いのか。でも、この時代の大映、好きなんだよな。

    69年東映京都中島貞夫監督『日本暗殺秘録(506)』

   京橋フィルムセンターで、特集・逝ける映画人を偲んで 2007-2008
   63年東映京都工藤栄一監督『十三人の刺客(507)』
     弘化元年九月五日早く、筆頭老中土井大炊頭利位の屋敷前で、明石藩江戸家老間宮図書(高松錦之助)が切腹した。訴状は、主君である藩主松平斉韶の生来の粗暴な性格と淫蕩三昧の日常と、悪政により藩民が困窮し、一揆が多発していることを訴え出るものであった。しかし、斉韶は将軍家慶の寵愛された弟であり、家慶は、斉韶を翌年老中に抜擢するよう命じていた。斉韶が老中となっては、御政道は乱れ、幕府に禍根を残すと悩んだ土井大炊頭(丹波哲郎)は決意し、直参旗本で、大目付の 島田新左衛門(片岡千恵蔵)を呼ぶ。
    間宮図書の書状を見せた上、極秘に呼び寄せた尾張領木曽上松陣屋詰総支配の牧野靭負(月形龍之介)と面会をさせる。昨年の参勤交代、中仙道を江戸に向かう明石藩一行が、木曽上松陣屋に泊った折りの出来事を語る牧野。将軍の弟でもある松平左兵衛督斉韶(菅貫太郎)が泊るということで、牧野と息子の牧野妥女(河原崎長一郎)は、細心の気遣いを心掛けた。采女が二か月前に娶った妻の千世(三島ゆり子)は、美しく気配りの細やかな嫁であったが、その美しさを見染めた斉韶は、千世を手籠にする。妻を探しに来た采女を、無礼者と脇差で刺し殺す斉韶。翌日千世も自害した。あまりの侮辱に牧野靭負は腹を召そうと思ったが、主君尾張大納言の名誉を守るため、証言をしようと思い止まったと言う。
   聞いていた新左衛門も、その斉韶が老中になると言う話に侍としての死に場所を得たと言った。
土井大炊頭の屋敷に置かれていた間宮図書の遺体は、三日後錯乱による死としてお咎めなしとして明石藩に返された。
    明石藩筆頭家老鬼頭半兵衛(内田良平)が、江戸表屋敷に戻ってくる。斉韶が、間宮家の者全て、藩の目付を捕らえさせ、処罰すると聞いて、慌てて止めに来たのだ。斉韶に、せっかくお上が、間宮の件は不問にし、間宮家の一族郎党の罪も問うなと言って来たのだから、明石藩として断罪するのは如何なものかと進言したのだ。しかし、お上と言っても、土井の決めたこと、一老中ごときの判断に従ったとあらば、松平直系の面子が潰れるわと言って、自ら老婆から子供に至るまで切り捨てた。
    家老の浅川十太夫(原田甲子郎)は、お咎めもなく、来年に殿が老中になれば、お家も安泰ですなと言うが、半兵衛は、三日間掛かって、何もないのが心配なのだと言って、家臣に土井大炊頭の屋敷に、この三日間出入りしたものを全て調べろと命じた。
    一方、新左衛門が帰宅すると、食客としてしていた浪人平山九十郎(西村晃)に命を預けてくれと頭を下げ、更に片腕として信頼している与力の倉永左平次(嵐寛寿郎)に、配下の使い手で、信頼出来るものを集めさせた。倉永配下の三橋軍太夫(阿部九州男)、三橋配下の樋口源内(加賀邦男) 、堀井弥八(汐路章)、日置八十吉(春日俊二)、大竹茂助(片岡栄二郎)、石塚利平(和崎俊哉)。彼らを前にも、新左衛門は自分に命をくれと言う。
   新左衛門の甥で部屋住みの島田新六郎(里見浩太朗)は、深川芸者おえん(丘さとみ)に養われていた。ある日、叔父の新左衛門を深川の茶屋で見かけたとおえんに聞いた新六郎は、叔父御が珍しいものだと言う。
   その時、新左衛門と倉永左平次、三橋軍太夫の三人は、深川の茶屋の二階座敷で、平山九十郎が連れてきた弟子の小倉庄次郎(沢村精四郎)と武州浪人の佐原平蔵(水島道太郎)と会っていた。若い小倉庄次郎を惜しんだ平山は、師弟の縁を切ろうとしたが、どうしても一緒に死なせてほしいと懇願し、着いて来たのだ。倉永が親御さんはと尋ねると二親とも既に亡くしていると答える。佐原平蔵は、200両貰えないかと言う。その金で、借財を返し、妻子と自分の入る墓を建て、恩義のある人間たちに酒を振舞い、今までの借りを返すのだと言う。十一人の刺客が集まった。皆を屋敷に呼び、近々国表に帰参する参勤交代の途中で、松平斉韶を暗殺するのだと告げる新左衛門。徳川の世になって、200余年、侍といえども、実際に切り結んだ経験のあるものは少ない。多勢無勢の戦いなので、ここだという最善の機会を選んで、確実に任務を遂行しなければならないのだ。
   島田家の屋敷を辞した倉永、三橋、樋口、堀井、日置、大竹、石塚を、明石藩の浅川は、藩内の使い手二人に、一人を生けどりにし、何をしようとしているのか吐かせろと命ずる。仲間と別れた?を二人は取り囲む。?も必死に刀を抜くが、道場での稽古では優秀でも実践経験の少ない哀しさ、剣を簡単に弾かれてしまう。絶体絶命の?を、平山九十郎が救った、それぞれ一太刀で斬り捨てる平山。凄い腕だ。
   明石藩上屋敷で、鬼頭半兵衛は、浅川に、軽挙を慎めと言っていると、浅川が放った二人の死体が仙台掘に浮かんだという知らせが届く。死体の刀傷を見て、凄い腕だ、しかし、これで島田の狙いが我が藩であることが分かったと呟く鬼頭半兵衛。
 新六郎の元に、樋口源内と堀井弥八が訪ねて来て、俺は芸者のヒモでいい。やっとうよりもこっちを極めたいと三味線を取る。樋口、堀井は見損なったぞと吐き捨て帰ってゆく。おえんが新左衛門様がお見えですと言う。何だか迷惑を掛けたな、ワシもお前くらいの年齢の頃は放蕩の限り、三味線で身を立てようとしたのだが、上手くはいかず、結局、これで生きるより、侍として死ぬ方が楽だと思いなおしたのだと、新六郎から受取り、弾き始めた。玄人はだしというよりも、かなりの腕で、激しく絃をかき鳴らす新左衛門の姿を見て、驚く新六郎。叔父が帰ったあと、少し真剣に生きてみたくなったと言う。おえんが小さな声で「やめてください・・・・・・いつお帰りですか?」「早ければ一か月余り・・・、長ければ、来年のお盆には帰ってくるので、迎え火を焚いて待っていてくれ。」といって、大小を腰に差して、新左衛門の屋敷に戻っていく。涙で見送るおえん。
   十月二十七日早朝、明石藩江戸上屋敷を参勤交代の行列が出ていく。それを見送った半兵衛は、馬を飛ばし、島田の屋敷を訪れる。半兵衛と新左衛門は旧知の仲だった。直参旗本で大目付の新左衛門に対し、半兵衛は知力で、何とか、明石藩の千石取りの筆頭家老にまで登り詰めたのだ。他の者を部屋から出して、お主ワシを切りに来たなと丸腰で語る新左衛門。緊迫感のある光景が進む。全力を挙げて阻止すると言って新左衛門の屋敷を辞す半兵衛。
    参勤交代の一行が江戸を出て、中仙道の戸田の渡し付近での決行を決める新左衛門。待ち伏せする彼らを待っていたのは、水も漏れない完璧な陣容での防御体制と、松平斉韶の乗っている筈の駕籠が二つ登場。まったくどちらと判断できないまま、新左衛門たちは、川を渡っていくのを歯ぎしりして、見送るしかなかった。



* 丹羽隼人=北龍二
* 小泉頼母=明石潮
* 出口源四郎=有川正治
* 仙田角馬=小田部通麿
* 間宮織部=神木真寿雄
* 間宮小浪=高橋漣
* 大野多仲=堀正夫
木曽落合宿総代、三州屋徳兵衛(水野浩)
徳兵衛の娘加代(藤純子→富司純子)
木曽落合宿郷士木賀小弥太(山城新伍)

   素晴らしい、時代劇の傑作の一つだと再認識した。ビデオでしか見たことがなかったが、モノクロでシネスコの映画は、やはりスクリーンで見ないと全然駄目だ。特に時代劇。映っている情報量が、全く違うと思う。
   片岡千恵蔵、嵐寛寿郎の存在感は、断トツだ。剣の達人の浪人役の西村晃も、キレと渋さにシビレる。こんな凄い映画を三池崇史をリメイクするという企画が恐ろしい(笑)。個人的には、工藤栄一版の公開前後の劇場上映を希望。

2009年9月2日水曜日

深夜ドラマのTBS(苦笑)

   三学期制ではないので、新学期と言う訳ではないが、夏休み明けの初講義。学生たちもそうだが、こちらも夏休みボケと言うか噛み合わないなあ。
   夜は外苑前の粥屋喜々で、友人N氏と、元会社で一時期一緒だったT氏と3人で飲む。T氏は、広告業界から元会社に来て、また広告業界で働く、DJ、オーガナイザー。

    帰宅して、TVをつけると、ドラマをやっている。酷い!ドラマのTBS終わったとずっと思っていたが、とどめの帝王。

2009年9月1日火曜日

九月の風

    台風一過、一気に洗濯をして干してから、新宿でプレゼン一件。その後N氏とランチミーティング。

    シネマート新宿で、トム・リン監督『九月に降る風(502)』
    竹東高校の制服のシャツが掛かっている。胸には、卒業生と書かれた赤いリボンが付いている。近くに、日新スポーツ用品店と印刷された段ボールが置かれている。
    96年9月、新竹市立球場、時報イーグルスと俊国ベアーズ(?)の試合を応援する新竹高校の男子生徒7人の姿がある。イーグルスのリャオ・ミンシュンは、ヒットを打つが、3塁ランナーは、本塁でタッチアウト。審判の判定に、イーグルスファンの観客は大ブーイング。客席から色々な物が投げ入れられる。チョンハン(リー・ユエチェン)の靴を誰かが投げた。グランドに取りに行こうとするチョンハンを大笑いしながら、必死に止める仲間たち。
    翌日、校内放送で、3年のタン、イェン、チンチャオ、2年のヤオシン、ポーチュ-、1年のチョンハン、チーション、7人の名前が次々に呼ばれ、大至急教官室に出頭するよう告げられる。女性教官は、キチンと立てと言って、いつも問題を起こすのは、あなたたち、もう1回警告を受けたら退学処分よと脅かす。
   全くコタえていない彼らが、煙草を吸いながら校庭の隅で、タムロしていると、リーダー格のイェン(リディアン・ヴォーン)に、ガールフレンドのユン(ジェニファー・チュウ)が、ブラスバンド部の後輩のペイシン(チー・ベイホイ)を連れてやって来て、「わたし、帰るわ」と声を掛ける。しかし、冷たいイェン。
    一緒にバスに乗りながら、先輩は何であんな不良のイェンさんを彼氏にしているんですかと尋ねるペイシン。クラスメートのチーション(チウ・イーチェン)とチョンハンを不良グループから抜けさせるために、ブラスバンド部に入部させたいと相談をする。ペイシンは、チーションが好きなのだ。
   ユンと言う彼女がいながら、可愛い女の子を見ると直ぐにナンパをするイェンと気持ちが優しく成績優秀なタンとは、なぜか気が合う。今日も、女子高の生徒に声を掛け、ポケベルの番号を聞き出す。しかし、イェンはポケベルを持たないので、女の子たちからの連絡を受けるのは、タンのポケベルだ。ユンの部屋で、数学の家庭教師をするタン。間近で見るユンの美しさに、胸がときめくタンだが、イェンの浮気性に悩みながらも、イェンしか見えないユンにとって、タンはあくまでも親切で優等生な、彼氏の親友でしかない…。
    当時の高校生の恋人たちは、MTVと呼ばれる個室ビデオで、いちゃつくのだ、イェンとユンも、ディープキスをしている。それ以上求めるイェンの手を払って、ダメと言うユン。

    90年代の台湾の男子高校生たちの青春。卒業式までの1年の物語で、野球・・・と考えると「ROOKIES-卒業」を思い出す。同じように国民的大ヒットになったことを考えると、日本人はみんな、とても幼くて、簡単な物語しか理解出来なくなったんだろう。でなければ、不良高校生(残念ながら凶悪犯罪を犯すような大物ではなく、いきがっているだけの自分たちのような連中だ)が煙草を吸う場面があるのを、未成年の喫煙は、法律で禁止されていますなんて、テロップ入れないだろう(苦笑)。殺人だって、強盗だって、賭博だって、強姦だって法律で禁止されていることを忘れているのかTBS。大宅壮一が警鐘を鳴らした所の、テレビによる日本人一億総白痴化は、完了(涙)。
   高校時代の青春には、夏が似合う。イェンが亡くなって、学校の屋上のユンの後姿。夏服の紺のスカートが風に揺れるのが、彼女の悲しみを写している。

    ラピュタ阿佐ヶ谷で、武満徹の映画音楽

    68年勝プロダクション勅使河原宏監督『燃えつきた地図(503)』
    逆回しで燃える地図。粟津潔による、等高線をピーコックカラーに塗リ分けられた地図によるオープニング。
   (東京の空撮に乗せて市原悦子によるNA)調査依頼書、失踪人根室洋34歳大燃商事販売拡張課長、依頼人根室ハル、昭和43年2月20日、日ノ出興信所人事調査部長殿
    喫茶椿の主人(信欣三)がコーヒーを入れ、愛想のないウエイトレス(吉田日出子)に渡す。ウエイトレスが男の客(勝新太郎)に、やる気のなさそうに出す。男がマッチをくれないかと言う。煙草に火を付けてたじゃないのと答えので、ケチケチしなくていいじゃねえかと男。仕方なしにマッチ箱を渡す。男は、懐からハンカチに包んだマッチ箱と見比べ仕舞う。ウエイトレスに、仕事終わったらメシでも食わないかと声を掛ける。お客さんとの私語は禁止されているのと女。音楽でも掛けないのかと言う男。耳にしていたイヤホンを男に差し出す女。
    男は、店を出て、駐車場の管理人(小笠原章二郎)に金を払い、車(スバル360)に乗り込もうとすると一人の男(大川修)が声を掛けてくる。「何だ。尾けていたのか」「偶然ですよ。興信所の人でしょ」「偶然ということはないだろう。俺は降りてもいいんだ。」男は、ジャケットの襟についたZと書いたバッジを見せる組織の人間らしい。「僕は根室の義弟ですよ。」「もう一度、そこのコーヒー屋に戻ろうか。着手金は返してもいいんだ。」「やはり直ぐにここを突き止めるとは、優秀な探偵のようですね。」義弟と名乗る男は、駐車場の車を見ながら、「奴さんは、2級整備士の資格を持っていたから、自動車修理にはそれなりの腕前だった。それで内職して、小遣いには不自由していなかったんだ。」探偵は不愉快になり、「俺は降りるぜ」「お手伝いしようと思っているんですよ。彼の日記がありますよ。お渡ししようと思っていました。」
    探偵は、車を出す。急な坂道を上がっていくと、上から猛スピードで自転車が下って来る。避け切れず転ぶ自転車。気をつけろ!と探偵は叫び、再び車を出す。坂の上にある団地の一角に車を止める。団地の一室のブザーを押す。依頼人の根室ハル(市原悦子)がドアを開ける。探偵を上にあげる。女は黄色いカーテンを閉め、「また、おビールでよかったかしら、お茶とか買うのを忘れていて」「いや、車なので結構です。」自分だけビールをおいしそうに飲む女。「あんたは、こっちに話していないことが沢山あるようだ。探してほしいのなら、ちゃんと話して貰わないと困るんだ。降りさせてもらってもいいんだ。」「いえ、隠していることなんて・・。」「あんた弟がいるだろう。それに、夫が自動車整備士の資格を持っていることも・・。」「いえ、弟は住所不定だから、めったに会わないからいいと思ったの・・。資格のことも、あの人は資格マニアなのよ。免状を9つも持っていたわ。免状は人生における碇だというのが口癖だったわ。2種免許に、大型2種、無線技師・・・・中学教員もあったわ・・・あと二つは何だったかしら・・・。」男は、煙草を吸おうとして、灰皿を探し、最近使ったものなのか、光に当て、臭いを嗅ぐ。「着手金の3万円というのは、不首尾になっても却って来ないんですよ。分かっていますね。」部屋を出る男。
    再び、喫茶椿の近くに車を止める男。既に日は暮れ、店も閉店時間だ。ウエイトレスが外に出て来る。マスターが出てきて、女に何か声を掛ける。女は、タクシーを待っていたようだったが、歩き始める。後をつける男。近くのアパートの階段を上がっていくのを確認してところで、喫茶店のマスターはお前はどこの者だ!!と言う。「根室って男を探しているだけだ。」「根室?運転手の奴か?」といって、しまったという顔をして「知らないな」と言う。
   翌日、失踪人が働いていた大燃商事に出かける。専務(小松方正)と根室の部下だったという田代(渥美清)に失踪の時の話を聞く。「あれから、もう半年になりますか・・。部下の田代くんと待合せしていたが、それっきり現れなかったんですよ。」田代は失踪前日に、ある書類を翌日渡するので、きてほしいと連絡を貰ったが、結局根室は、そこに現れなかったという。収穫がなく、車を出そうとすると、田代という男が追いかけてきた。車の助手席に乗せ話を聞く。「ちょっと、気が咎めて・・。あの書類の届け先知っているんです。前日、根室課長が、前田燃料店という炭屋です。確か鳥尾町の町会議員をしている筈です。それと・・・、根室課長の知られざる一面を知っているんです。ヌード写真を自分で撮ることなんです。その写真は僕が預かっています・・。」「じゃあ、それを明日の晩見せてくれ。酒でも飲もう」 
   探偵は、鳥尾町の前田燃料店に行ってみる。外で、プロバンガスのボンベを運んでいる2人の従業員(梅津栄、三夏伸)に、タバコを勧め、取引先の大燃商事の根室と言う男を知らないかと言って写真を見せる。「電話だけだからなあ。」「社長と会う約束をしていたらしいんだ。社長はいるかい?」「今日はいないよ。何だか怪しい男が社長が帰るまで居ると言って居座って、ウチの女事務員を泣かしているよ。お宅も同業者かい?」事務所に行ってみると、ヤクザは根室の義弟だった。「今日は本業の方ですよ」と言って女事務員(西条美奈子)にお客さんだからお茶ぐらい出せと言う。女事務員は膨れっ面で、お茶を運んで来た。社長は戻らないことが分かったので、探偵が帰ることにすると、義弟が俺も引き上げるので車に乗せてくれないかと言う。
   途中、シノギの



    63年東宝恩地日出夫監督『素晴らしい悪女(504)』
    大庭葉介(久保明)は大学4年。コツコツ勉強し優を30個も取り、学生運動にも参加せず、1流企業に就職し、恋人の伊東晴子(田村奈己)と、綺麗な社宅に住み、ステレオと沢山のレコード、電気冷蔵庫と中に冷えたビールが入っているような生活することを夢見ている。一流企業の専務の息子で、自家用車を乗って遊び回る山下(内田裕也)にノートを見せてアルバイトをしている。
   ある時、晴子から横浜の高級アパートの夜の管理人のアルバイトを紹介される。晴子と横浜に行った帰りに、川崎の兄の栄一(神山繁)のもとに行こうと考えていると、助手席で車のセールスマンに説明を受けていた義姉明子(木村俊恵)に声を掛けられる。大庭の兄は、一流企業に勤め、正に社宅に住み、ステレオと電気冷蔵庫に囲まれた暮らしをしている。更に自家用車を買って義姉は自動車教習所に通おうと思っているのだ。兄から、少なくない小遣いを貰い、夕食をご馳走になる。
   ある夜の横浜、アメリカの水兵二人が、飲み屋の支払いを拒み店の男を殴って歩いている。とある中華料理店に、マスターのミスター・崔(宮口精二)が閉店だと静止するのに入ってきた。更にカウンターにいた男ラブリオ(鹿内タケシ)に黒い豚の臭いがすると絡む。殴りかかって来たので受け流し、ナイフを出すラブリオ。
深夜、葉介が、管理人室で勉強をしていると43号室の嶋中ミカ(団令子)が入ってくるなり、男を一人匿えと有無を言わせない態度で言う。結局、葉介は、ラブリオを管理人室に匿う。刑事とMPがやってきて、ミカの部屋はどこだ?と聞いて、階段を上がっていく。勿論、ミカの部屋にラブリオがいる訳はなく、帰って行く。ラブリオと握手をする葉介。彼の手に何かのマークのような入れ墨に気がつく。ベッドを使うかい?と勧めると、布を床に敷いて寝ようとするラブリオ。自分の掛け布団を貸してやる葉介。小さな声で歌を歌うラブリオ。翌朝、葉介が目覚めると、布団がきちんと畳まれ、ラブリオは姿を消していた。
    葉介が、大学の就職課に行く。自信のあった2社とも不合格の通知が来ていた。成績も試験も自信があったのに、納得出来ない葉介に、就職課長は、君が一流企業への就職にこだわる気持ちは判らないでもないが、こうなったら、高千穂鉄鋼のような会社に入って業績を君の力で上げるのもいいじゃないか、確かに高千穂鉄鋼は君にとっては、二流企業かもしれないが、君みたいに優秀な学生が入社したら、大事にしてくれると思うがね、と言う。
    納得が行かない葉介が学生街を歩いていると、二階のビリヤード場の窓から山下が声を掛ける。約束通りノートを写させてくれと言う山下に、いいけど相談があると店に上がる葉介。「就職試験どうだった?その顔じゃ駄目だったんだな」「俺は優を30も取っている。何とか一流企業に入りたいんだ。」「ガリ勉して、結局駄目なんてイカかさねーよ」「君のお父さんは、キョクサン電機の専務だったね。何とか僕が入れるよう君から頼んで貰えないか。ノートをただで見せてやるよ」

2009年8月31日月曜日

愛と希望の街

     吉祥寺バウスシアターで、田口トモロヲ監督『色即ぜねれえしょん(497)』
     病室で、白血病の少女足立恭子(石橋杏奈)を見守る医師(大杉漣)と看護婦、父親(宮藤官九郎)と母親、心電図が停止する。両親が恭子!!と名を呼ぶと、また動き出す。医師が、娘さんは白血病ですが、これだけ持っているのは奇跡です。母親、恭子は恋人が来るのを待っているんです。そこにギターを抱えた若者が現れる。恭子の目が開いて、「純くん…。私の歌を聞かせて…あなたの歌を…」枕元で歌い始める純。歌い終わると、愛する恭子は亡くなっていた。恭子にキスをしようとする純。しかし、目の前に、なぜか僧侶の像がある。全て妄想だった。
      1974年京都、仏教系私立男子高の講堂で、詰襟姿の全校生徒が集められている。彼らは、ほうねん!!ほうねん!!とシュピレヒコールを叫んでいる。講堂の舞台後部の幕が厳かに開き、巨大な法然像が姿を表し、生徒たちが歓声を上げる。ここ法然高校では、ひと月に1回聖日と定め、全生徒が仏歌を歌う行事が行われている。ヤンキーの生徒が多く、歌の意味など殆ど理解していない。今日も校長の説話を、てめえの話はなげーんだよと野次って、教室から連れ出される須藤(古川雄弥)は、同じクラスの札付きのワルだ。朝鮮高校の生徒をボコボコにしたらしい。
   主人公の乾純いぬいじゅん(渡辺大和)は、不良にもなれない典型的な文科系男子だ。純の友達の伊部(森田直幸)と池山(森岡龍)。男子校の3人の頭の中は、セックスへの妄想でいっぱいだ。今日も伊部が言うには、口は外に露出している唯一の性器だと言う。唇の形を見るとその女の好きもの度が分ると言う。向こうから、マリア女子の制服を着た二人の女子が来る。伊部は、マリア女子にあんな可愛い子がいたのかと言い、ぽっちゃりした唇は、かなりのものだと断言する。実は、その女子は、純の初恋の相手の足立恭子だった。小学校は一緒だったが、純が中高一貫校に受験したので、それっきりだった。伊部に、そんな下品なことはないと怒りだす純。
   帰宅した純は、小学校の卒業アルバムの恭子の写真を見ながら、曲を歌っている。そこにおかん(堀ちえみ)がやってくる。「純くん、どうしたんそのアルバム。この頃から純くんが一番かわいいとおもっててん。いつになったら、私に、純くんの作った曲を聞かせてくれるの?」「うるさいなあ、早く出て行ってくれよ」いくつになっても、おかんは、純を子供扱いだ・・・。

  隠岐の島のユースホステル

    シネマート六本木で、中川信夫没後25周年レトロスペクティブ生きてゐる中川信夫
    39年東宝東京中川信夫監督小國英雄脚本『エノケンの頑張り戦術(498)』
     防弾チョッキ株式会社の稲田(榎本健一)と三田(如月寛多)は、自宅も隣同士で、家族構成も、妻と息子の3人暮らし。しかし、この上なく意地っ張りで、仲がとても悪い。昼食に行けば、トマトかトメトかで言い争いから、喧嘩になる。ある夜、稲田は妻からクラスで、夏休みに海や山に家族旅行に行かないのは息子だけたと聞かされる。息子は榎本の仕事が忙しいので、我慢しているのだと言う。営業成績が悪くボーナスが出なかったので、仕方ないと言おうと思ったが、隣の三田家が、海に出掛けると聞いて、うちも出掛けると言う稲田。

     82年磯田事務所=ATG 中川信夫監督『怪異談 生きてゐる小平次(499)』
     逆さ吊りで、平清盛の?を演じている小平次(藤間文彦)と囃子方の太九郎(石橋正次)が太鼓を叩きながら合いの手を入れている。太九郎の背に立ち、小平次の目を見つめながら、簪を太九郎の首に刺そうとするおちか(宮下順子)。
    家の庭で、おちかが行水をしている。外から、小平次が、観音様を拝ませておくれでないかいと声を掛ける。おちかは高くつくよと返事をする。太九郎は、戯作者をめざしているが、芝居小屋の太夫は、けんもほろろだ。三人は幼馴染みだ。おちかは大家の娘として、太九郎は寺子屋の師匠の息子として、小平次は旅役者の子として出会い、ずっと一緒だった。太九郎は、おちかを女房にしていたが、ある日、小平次は、おちかに太九郎と別れて自分の女房になってくれと言い出した。その話を聞いてしまった太九郎は、小平次とおちかとの関係を疑い出す。おちかは、そんなに信じらんないのなら、三行半を書いておくれと言う。

      銀座シネパトスで、「日本映画レトロスペクティブ-PART3-
      ~愛と性、体制と権力 大島渚 闘いの歴史~

      59年松竹大船大島渚監督『愛と希望の街(500)』
    川崎(?)の駅前で、靴磨きの女たちの隣で、鳩を売っている少年(藤川弘志)がいる。そこに女子高生たちが通り掛かる。その中の一人京子(富永ユキ)が、「何を売っているの?」「鳩です。」「何で売っているの?」靴磨きの女の一人が、この子の母親は同業者だけど、今病気をしているのだと説明する。「いくら?」「700円です。」「でも、デパートでは1000円です。」「分かったわ。頂戴」と千円札を出す京子。少年は、お釣りが…と言うと、「いいわ」と京子。そう言う訳にはと少年は言い、宝くじ売りに走り、崩して300円の釣りを渡そうとする。受け取ろうとしたい京子に、鳩の籠に無理矢理小銭を押し込む少年。靴磨きの女たちは、貰っておけばいいのに、と口では言うが、少年の真面目さを好ましく思って笑顔だ。少年は売上の一部を場所代として女たちに渡した。
     京子は、病気の弟泰三(坂下登)の所に見舞いに行き、鳩を渡す、あまり嬉しそうでない弟に、お母さんが病気でこの鳩を売っている男の子は、やっちゃんの年と同じ位だったわ、偉いわと言う。
     少年は、文房具屋で、クレパスと画用紙を買い、八百屋で野菜などを買い、帰宅する。家の近所の空き地で、ネズミの死骸を見つめている少女がいる。少女の名前は保江(伊藤道子)、すこし知能の発育が遅れ、内気で無口な娘だ。少年は保江の兄で正夫、中学3年だ。「鳩は?」「お母さんの所に飛んで行った、明後日には帰ってくるよ」。
   家では、母親のくに子(望月優子)が臥せっている。ちょうど民生委員の?さんが来ていて、話をしている。「ちゃんと体を休めないと」「でも、正夫が高校に入学したら、生活保護止められちゃうんだろ、でも正夫を絶対高校に進学させるんだ。」「無理はいけないよ」民生委員が帰ると、母親が、鳩は売れたかい?と聞いてきた。正夫が食事の支度を始めると、母親が起きてきて、自分がやるよと言う。僕がやるよと言う正夫に、男が、あんまり家事が巧くなるのはよくないと言う。
     久しぶりのご馳走だ。食事が済み、母親は内職を始める。保江を連れて風呂に行っておいでと言う母に、お金は?と正夫が尋ねると、ようやく内職の賃料を半分払ってくれた、こんな1日100円の仕事の支払い溜められても、本当に困ると愚痴を言う。銭湯の前で、正夫が待っている。?が出て来たので、兄ちゃんは体が冷え切ったよと声を掛けると、近所に住むいさ子(瓜生登代子)が一緒だった。「体を洗って貰っていたのか、保江、垢だらけだったろう」と正夫が言うと、そんなことないわ失礼でしょうといさ子。すると、近所の不良たちが、おっ、暑い、暑い、知恵遅れの妹を出しにデートかと囃し立てる。怒ってかかっていく正夫。家に帰ると、鳩が帰ってきていた。喜ぶ保江。
    学校で、秋山先生(千乃赫子)が、正夫に、進路のこと決めたの?と声を掛ける。首を降る正夫に、お母さんと話をしに家庭訪問をするわと言う。秋山が正夫の家に来ている。とく子は、片親で靴磨きの息子が生意気かと思われるかもしれませんが、この街にいたのでは、中学を卒業して、このあたりの町工場で働き、ここから出ていくことは絶対できない。正夫には、なんとしても高校を出してやりたいんですと、頭を下げる。駅まで、秋山を送る正夫。しかし、正夫は、自分の気持ちは、就職して夜間高校に通おうと思っていると言う。
   駅の近くで、京子が、秋山と正夫に声を掛けてきた。買った鳩の2羽の内1羽が逃げ出したが、帰ってきていないかと尋ねる。いいえ帰っていませんと言う正夫に、この子は嘘を言うような子ではありませんと秋山。家に帰らなきゃと走り去る正夫。秋山は、京子に少し話さないかと声を掛ける。
   喫茶店に二人の姿がある。秋山に正夫の境遇を聞いて、涙を流す京子。何か私に出来ることはないかしらと言う京子の父親が、光洋電機の重役だと聞いて、うちの学校から採用してくれない大企業ねと溜息をつく秋山に、父に採用のこと頼んでみますと京子。
   光洋電機の川崎工場を訪ねる秋山の姿がある。京子の兄の勇次(渡辺文雄)が、会議室に案内し、父親で重役で父親久原(須賀不二夫)と、労務課長(土紀洋児)を紹介する。挨拶をして、労務課長と話してくれと久原が去る。うちの工場では、工員は地方から採用して、独身寮に入れることに決まっているという。

    「鳩を売る少年」を、松竹が「愛と希望の街」とタイトルを勝手に変えて公開して、大島渚を怒らせたと言うデビュー作。素晴らしい作品だが、愛と希望の街と言うタイトルは、現実に対する強烈な皮肉としては最高だが、貧困と絶望の街を描いた内容を正反対のタイトルに、デビュー作を台無しにされたと絶望する大島の気持ちには、同情する。

   60年松竹大船大島渚監督『太陽の墓場(501)』
   何度観ても、炎加代子の目の力は素晴らしい。2本立て、結局観てしまう。

   下北沢440で、浅草の歌姫、辻香織のライブ。4人の女性アーティストイベントのトリでの、出演。 やはり、彼女の声は素晴らしい。先日の自分の誕生日の時に来ていた3人と客席で一緒に酔いしれる

2009年8月30日日曜日

占領時代

  返送する原稿と些少の謝礼の請求書を梱包し受取人払いの宅急便を送り、衆議院選挙の投票。

  京橋フィルムセンターで、特集・逝ける映画人を偲んで2007-2008。
  53年東宝谷口千吉監督『赤線基地(494)』
  富士山がバスの車窓から見えている。満州から引き揚げて来た河那辺浩一(三國連太郎)が懐かしそうに富士を眺めている。乗ってきた美しい女(根岸明美)、高額紙幣を出し、お釣りがと言う車掌に、回数券を頂戴、二冊でもいいわよと答える女。バスが揺れ、女は浩一の上に倒れ掛かる。大きな荷物をどかし、女を座らせる。「満州から?」「10年ぶりに帰れました」「ご苦労様です。復員した兄は、浴衣で畳に寝転がりたかったと言っていました」「僕はお袋の作った海苔巻きを腹一杯食べたいですね。山中湖までいらっしゃるのですか。」「違いますけど、どうして?」「学生時分、テニスの練習に行くと、あなたのようなお嬢さんが別荘に来ているのを随分見掛けましたから…」女は笑い出し、他の乗客は冷笑する。
   浩一は、?のバス停で降りる。変わらない原っぱや雑木林を歩いて行くと、大きな欅の木が見えてきた。あそこに我が家があるのだ。ようやく帰ってきた実感に涙を浮かべる浩一の目の前に、鉄条網が張り巡らされた進駐軍のさくらキャンプがある。ケヤキは塀の中側だ。街に出ると、米兵相手の土産物屋と飲食店と、パンパンで溢れ返っている。米軍キャンプになっている辺りに5軒ほどあった農家の中の川辺という一家がどこに行ったか知らないかて尋ね歩くが、キャンプが出来てから越して来た人間ばかりだ。一軒の店に入って出て来た、黒人の赤ん坊を抱いた男は、前からある建物は、一軒しかない、役場だと言う。
    平泉村役場を訪ねる浩一。中は、とても混み合っている。混血児の赤ん坊をおぶった初老の男に、役場の男(金子信雄)が、「つまり、あんたの娘が産んだその子の父親が誰だか判らないので、あんたの5女として届けたいと言うことだね。何とかしてやるが、もう少し早く来てくれれば良かったのに」と話している。ようやく孝一の番だ。「米軍のキャンプになってしまったケヤキの木の辺りにあった農家のの行き先?判るかもしれない。で、あんたの名前は?」「河那辺浩一」「えっ?」「河那辺…」「浩一兄さん!!僕だよ、弟の杉男だよ。」「杉男」「電報打ってくれれば良かったのに」「みんなを驚かそうと思ったんだ。で親父は元気か?」「最後の手紙は届かなかったんだね。」
杉男が、下新田の池内時子と結婚したんだと言う。浩一と相思相愛だった池内ハルエと従姉妹じゃないかと尋ねると、よくは知らないんだとお茶を濁す杉男。
    そこに、男が慌てて入って来て、子供たちに何度注意しても米軍の演習場に入って屑鉄を拾って来るが、今日拾って来て、ガンガン叩いていたら、米軍の不発弾らしいので、リヤカーで運んで来たのだと言う。役所に貼ってある不発弾の見分け方で、砲弾だと指を指すので、みんなパニックだ。外に出てみると、男の子供が、まだガンガン叩いているので、大混乱だ。浩一が冷静に、これはガスボンベだよと言って、みなあの親父は慌て者だからなと胸を撫で下ろすと、またリヤカーが着く、売春宿の女将(賀原夏子)が、ヒロポンで廃人になった娼婦を連れて来たのだ。民生委員として、早く病院に入れてくれと厄介払いをしに来たのだ。金儲けのために、こき使って、死にかけたら役所に連れてくるなんて駄目だと言う?。ヒロポンを配っているのは、じゃあ誰なんだいと笑う女将に、口ごもる杉男。
    浩一は、杉男に簡単な地図を書いて貰って、家に帰る。場所は移っていたが、建物は昔のまんまだ。母親のお徳(英百合子)は、前の家が接収されてかなり補償金を貰ったが、お祖父さんが移築するのだと聞かなくて、新築よりお金が掛かったと言う。浩一が、自分の部屋だった離れに荷物を運ぼうとすると、孝一が帰るまでと言う約束で、人に貸していると言う母。母親にも、ハナエのことを尋ねる。お父さんを亡くして苦労して、直ぐに横浜の方に引っ越して音信不通だと答える。浩一が帰ってくるのを影から見ていた三男の健吉(日恵野晃)が、隠れて部屋の仏間に入り、天井裏に隠していたヒロポンの箱を取り出し、スクーターで逃走する。
   浩一は、家族に会いに出掛ける。まずは、弟杉男の嫁で、米兵相手の土産物屋で働いてい時子(広瀬嘉子)を訪ねる。酔っ払った米兵が女店員に、朝鮮戦争が休戦になったので、みんな帰国が決まったと言う。女たちが慌てて、店長に伝えると、他の日本人には言うなと口止めし、店内の商品をいち早く処分すると言う。商品を片付け始めると、米兵は酔っ払っての冗談だと言って出て行く。
義妹の時子に声を掛ける浩一。従姉妹のハナエについて、横須賀にいるらしいと言ってから、急に言葉を濁す時子。
   次に、平泉小学校に行く。かってハナエはここの教諭だったのだ。小使いの老人は、調べてみたが分からないし、先生方も2交代制なので知っている方はいませんでしたと言う。浩一は、幼馴染で同級生の大西(小林桂樹)に声を掛けられる。大西は、ここで教員をしていた。ハナエからは連絡はないと言う。教室を見ていかないかと声を掛ける。小学校の前は、歓楽街で、米兵とパンパンが愛を語り合っている。校庭では、子供たちが沢山遊んでいるにも関わらず・・・。学校のまん前にこんなものを作るなんてと嘆く浩一に、大西は、そんなことは誰も考えていなかったさ、結局、小学校が引っ越すことになったよと言う。ハナエさんを探しているのか・・。全く消息は知れないが、美しいものは思い出にしておけと大西。
   教室を覗いて行かないかと言って、教室に入る。演習が始まり、迫撃砲の音で、話はできない。大西は、算数の予定だったが、演習が始まったので図画に変更すると言う。適応力のある子供たちは、平然とスケッチブックと開くのだ。みな、花瓶の花や自分の好きなものを描いている。一人、教室の窓に座って鼻くそをほじりながら絵を描いている男の子(伊東隆)がいる。大西が「敏男!何を描いているんだ?」と尋ねると、指を指す先は、米兵とパンパンが愛を語り合っている姿だ。好きなものを描けばいいが、花瓶でも描こうと言う大西。「敏男は覚えているか?お前の兄ちゃんの浩一だよ」「知っている!!」浩一が出征してから敏男は生まれたのだ。「写真で見ている」と言って嬉しそうな敏男。大西は、鼻くそをいつも穿っていて、お前の子供の頃にそっくりだと言う。
    浩一と敏男は、爺さんの重作(高堂国典)が畑を耕しているところに出かける。嬉し泣きをする重作の畑は、米軍のブルトーザーが走り回る真ん中にある。浩一が「すべて変わってしまったな」というと、この裾野は、昔は、日本軍の演習地だった、今はアメリカだが、次はどこの兵隊がくるやら・・・、何も変わっていないのだと言って笑う。
    急に敏男は、走ってきた米軍のバスを止める。乗り込むと米軍キャンプで働いている日本人が乗っている。そこに妹の靜子(河合玉枝)が乗っている。男の労働者が、女は体一つで儲かって羨ましいと絡みはじめ、女たちと激しい言い合いになったので、浩一、静子、敏男はバスを降りる。歩いていると、後ろから米兵が日本人の娘を乗せて追い越していく。次女の文子(青山京子)だ。大丈夫なのかと浩一が心配すると、あの米兵はボブさんと言って、とても紳士的な人なので心配ないと言う。スクーターが戻ってきて、文子を降ろす。ボブは朝鮮戦争の休戦でようやく国に帰れると喜んでいる。兄弟4人で、歌を歌って帰る。
   帰宅し、浩一が杉男を連れて、裏の井戸で足を洗おうとすると、離れに、日本人の女のところに米兵が来ている。日本人の女はオンリーのジュリーだ。女の顔を見て浩一は驚く、先程バスで乗り合わせた女だったのだ。男とベタベタしているジュリーを憎悪の眼差しで睨む浩一。

由岐子(根岸明美)

   神保町シアターで、男優・佐田啓二
   61年松竹京都五所平之助監督『雲がちぎれる時(495)』
   高知県足摺岬国定公園を清水から中村迄走るバスに、運転手の三崎(佐田啓二)と車掌の加江子が乗務している。伊豆田峠は、狭く断崖を蛇行して走る難所だ。もう直ぐ伊豆田トンネルが開通すれば、楽になるのだ。途中、窪津(伊藤雄之助)が運転するバスと擦れ違う。5時20分に、中村に到着する。顔を洗っていた三崎に手拭いを差し出す加江子。濡れた両手で加江子の顔を挟む。驚く加江子に冷たいだろうと笑う三崎。今度お母さんに会ってねと言う加江子に、大きく頷く三崎。バスに冷却用の水をバケツから注ぐのは車掌の仕事だ。5時40分に、土佐清水に向けてバスは発車する。

   59年松竹大船井上和男監督『ハイ・ティーン(496)』
   朝のプール、スラリと伸びた足をした娘(桑野みゆき)が、飛び込み台からダイブする。係員二人、お前また勝手に潜り込んで、どこから入りやがったと怒っている。娘はセーラー服に着替え、学校に向かう。
    南ヶ丘高校に、若手教師の寺崎伸一(佐田啓二)が赴任してきた。前の学校では、熱意のあまり一度だけ、生徒に手を上げたことがあるらしい。校長の立石(東野英治郎)は、暴力は弱い人間のすることだ、二度と生徒に手を上げないことを約束させ、3年?組の担任を命ずる。教頭の渋川(下元勉)は、丘田早苗やラグビー部員たち、あんな問題児ばかりのクラスは若い先生には荷が重いのではと心配するが、寺崎は承諾する。校庭では、ラグビー部のメンバーが練習をしている。メンバーの一人が誰かの弁当を食べている。今日は二つ盗んでやったぜ、ともう一つを投げるっ、ラグビーボールのように奪い合う部員たち。サイレンが鳴る。そういえば、新任の教師が4時限目からやって来るらしいな、ちょっと揉んでやろうかと、教室に戻る部員たち。


   高田馬場にあるライブハウス四谷天窓で、実籾の歌姫小笠原愛のライブを久しぶりに。何だか、いい具合に力が抜けて、お客さんと一緒に楽しもうという感じでよかった。