58年松竹大船大庭秀雄監督『眼の壁(166)』
昭和電業の会計課長の関野がパクリ屋に3000万の手形を奪われ、伊豆山中で、鉄道自殺をする。会社は顧問弁護士の瀬川(西村晃)に相談したが、会社の不名誉でもあり泣き寝入りした。関野の部下の萩崎(佐田啓二)は、経緯を事細かに記した遺書を受け取る。関野は、今月末の支払いに、3000万足らず、取引先の明治銀行に借入も断られ困っていた。かって一度融通してもらったことのある、高利貸しの山杉商事に相談すると、自分の会社では無理だが、東洋相互銀行に強い人間を紹介してくれる。関野は東京駅で待ち合わせ二人の男に連れられ、東洋相互銀行の大山常務に会いに行く、応接室で大山は、手形を受け取り直ぐに部下に処理させると言って部屋を出たが戻らなかった。勿論偽物で、本物の大山は北海道に出張中だ。
世話になった関野の死に釈然としない萩野は、東洋相互銀行に行き、代議士の岩尾輝輔からの紹介状で応接室を貸したと聞き、それを持って行ったという瀬川に尋ねるがはぐらかされる。次に山杉商事を訪ねるが秘書の上崎絵津子(鳳八千代)に社長への取次を頼むが出張中だと言われた。コーヒーでも飲もうと近くの喫茶店に入ると、絵津子が車で外出しようとしている。その車を追跡すると荻窪の大豪邸に入っていく。表札を見ると舟坂とある。
新聞記者の友人の田村満吉(高野真二)を訊ね、舟坂のことを調べて貰う。舟坂英明は、政治家とも繋がっている政界ゴロで政財界の黒幕だった。本人に会ったことのある者は殆どいないらしい。銀座のレッドムーンのママが愛人という噂があると聞いて、言ってみる萩野。バーテンの山本(渡辺文雄)と、隣の客(多々良純)が話しかけてきた。そこで絵津子に会う。絵津子は白髪の男と一緒に、バーのVIPルームから出てきた。店を出た萩崎の後をつける男たちがいる。
萩崎は、真相を田村に伝え、協力を仰ぐ、田村は近々同じ新聞社の広告部の永井章子(朝丘雪路)と結婚することが決まっていた。しかし、田村は全面的に協力することを約束した。レッドムーンで見かけた白髪の男は代議士の岩尾輝輔(山路義人)だったことが分かる。
田村は萩崎を連れて、まず岩尾に会いに行き、岩尾の名刺がパクリ屋に使われたことを追求するが、どれだけ名刺を配ると思っているのだと逃げられる。更に、舟坂の屋敷を訪ねるが、事務局長の山崎(宇佐美淳也)に、舟坂は病気でインタビューには答えないと言われる。
萩崎は、会社に出て専務の加賀(永井智雄)に、危ないことはやめろと言われるが、納得できないので、もう少し休暇を取って調べさせてくれと頼む。会社の入口で、弁護士の瀬川に会う。瀬川からも忠告をされる。会社を出ると、更にレッドムーンで会った客の田丸に声をかけられ、一緒に中山競馬場に行かないかと言われるが断る萩崎。田丸はバーテンの山本と競馬場にいる。山本は大金をあっという間にする。そんな山本を酒に誘う田丸。最後に行った曖昧飲み屋の二階で、田丸は山本に殺された。田丸は元刑事で、瀬川の法律事務所員だった。瀬川も、田丸の通夜の席から姿を消して、行方不明になった。
萩崎は、再びレッドムーンに出掛ける。店の前で店のママと絵津子がタクシーから降りる所を見つけ、運転手に出発地を訊ねると羽田空港からで、名古屋行きの飛行機を見送ってきたんじゃないかと教えられる。その飛行機のスチュワーデスを捕まえ、名古屋からの列車の接続を気にしていた客がいたという情報を得る。その日、田村と章子の結婚式が開かれ、東京駅から熱海への新婚旅行への列車に、萩崎が乗り込んでくる。萩崎は、名古屋へ行ったのが山本だろうと報告し、名古屋からどこへ行ったか追跡しようと思っていると言う。一方、舟坂が伊勢に出向いたという情報が入っていた。章子は、自分は岐阜の叔母のところに行くので、仕事を思いっきりしろと言う。名古屋で途中下車する。空港から名古屋駅行きのバスの車掌、駅員に聞き取りをして、瑞波までの中央本線のどこかの駅で降りたことまでが判明する。to be continued.
58年日活鈴木清順監督『影なき声(167)』
毎朝新聞社の電話交換手を高橋朝子(南田洋子)は、ある日、社会部の石川(二谷英明)の電話の取次で、間違えて世田谷の質屋に繋いでしまう。電話に出た男は、東大の先生の家なんかじゃなくて、火葬場だ、と笑った。その質屋は強盗殺人に襲われている最中で、新聞社の交換手が偶然犯人の声を聞いたとして話題になった。それから3年が過ぎた。ある日石川は、偶然、街で所帯やつれした朝子の姿を見かけ、あまりの変貌ぶりに驚き、後をつけ、朝子が夫の小谷と暮らすアパートを見つける。
to be continued.
渋谷シネマヴェーラで、昭和文豪愛欲大決戦!
56年松竹中村登監督『白い魔魚(168)』。
結城竜子(有馬稲子)は銀座を歩いていて、走って来る車に接触する。弾き飛ばされたハンドバッグを拾ってくれた親子連れは、車のナンバーを覚えていた。竜子は大したことはないと思っていたが、歩き始めて直ぐに倒れる。重村家の電話が鳴り、妹が兄の種雄を呼ぶ。病院からで、竜子が交通事故に遭った連絡だった。驚いて種夫が病室に行くと、10日の入院だが、元気な竜子。下着も含めた着替えを下宿から取ってきてくれと言われ、恥ずかしいと答えても強引な竜子。下宿に行き、下宿の内儀(沢村貞子)に要件を伝えると、竜子さんらしいが、私が持って行きますと断られ、立場がない種夫。
その頃、銀座の洋品店篠宮に警察から電話がある。店の車が事故を起こしたので出頭しろと言う。女主人の篠宮紫乃(高峰三枝子)が運転手に言うが、全く記憶がないと言う。とりあえず、直ぐに、吉見(川喜多雄二)と警察に行って来なさいと命ずる。数日後、紫乃が竜子の病室を訪ねる。紫乃は竜子が車のナンバーを警察に通報したのかと思っていたが、違っていた。若くきれいで快活な竜子をとても気に入る紫乃。見舞いの花束を持たせていた吉見は、竜子の大学の先輩だった。竜子に店でのアルバイトを勧め、吉見には竜子を誘惑しないようにと言明する。紫乃が店に戻ると、義弟の蔵三郎(加東大介)が来ている。死んだ夫の妾だった元芸者の雪弥の子供を引き取って欲しいとの話だ。紫乃と夫との間には子供がいなかったため、義母が妾腹でもいいので、孫が欲しいのだ。納得できないと言う紫乃に、最近不良になって、雪弥も引き取って欲しがっているのだと説明する。
種夫が竜子の病室に来ている。片手だけマニキュアを塗る竜子に、今必要ないんじゃないかと言うと、女子のたしなみだと答える竜子。大学の掲示板に、女子学生のイヤリング、マニキュア襟のない服を禁止するとの学生課からの貼り紙がある。それを見ていた種夫を劇研のメンバーが脚本の読み合わせだと誘いにくる。部室で主演の風間三三子(杉田弘子)の妹役をどうするか相談している。竜子が適任だと推薦する三三子。
竜子が大学に出てきた。種夫が退院するのなら教えてくれればと言うと、本当は明日だったが、退屈なので出てきてしまったと言う竜子。竜子は、学生課の富樫(十朱久雄)と山際(水上令子)に呼び出されている。イヤリングとマニキュアについて追及されるが、納得しない竜子。その日、竜子は、紫乃に誘われ、吉見のアイスホッケーの試合に出かける。応援席の三三子たちが騒いで眉を顰めるが、紫乃と竜子は試合を楽しむ。食事のあと、紫乃と吉見に車で送ってもらった竜子は、下宿に帰ると、母親からの速達が来ており、岐阜の家の商売が先行かなくなっており、破産したら、学費や生活費を送ることが出来なくなるだろうとあった。直ぐに、岐阜行きの夜行に乗る竜子。
岐阜の紙問屋の結城屋の暖簾をくぐる竜子。店は商品もなく閑散としている。兄の富夫(須賀不二男)が、母さんが手紙を出したのか、もうどうにもならないんだと言う。脳溢血で倒れた父親(北竜次)に食事をさせていた母(夏川静江)から言われ、顔を洗っていると、母がやってきて、義姉の若子が子供を連れて実家に帰ったことを告げる。翌日、故郷の景色を眺めていると、富夫がやってきて、破産するときにはみんな離れていくと自嘲気味に言う。そうはいいながらも、富夫は芸者に入れあげ、若子を苦しめてきたんじゃないのと言う竜子。大口の債権者の青木という人が竜子を気に入っているので、一度会って欲しいという富夫。
その夜、債権者会議がある。しかし、竜子は、紫乃、蔵三郎、吉見が東京からやってきていた。長良川で鵜飼いを楽しむ。紫乃たちを旅館に送っていくと、竜子を訪ねて青木という客があるという。青木(上原謙)は、ちゃんと話したかったのだと言い、結城屋を、まず支援したい、そのことと竜子のことは別だと言う。父親を顧問、兄を相談役として結城屋を残し、全面的に再建のバックアップをするので3年やってみましょうと熱く語る。紳士的な語り口は竜子を安心させる。その夜、竜子は紫乃の旅館に泊まることになった。夜中、紫乃にを呼び、外への散歩に連れ出す吉野。眠っていた筈の竜子は、やりとりを聞き、肩を寄せ合い歩く二人の姿を目撃する。
翌朝、岐阜駅に紫乃たちを見送りに行く竜子。特急つばめの少し後ろの席に座っていた青木が、ホームの竜子に声を掛ける。憂鬱な顔の竜子。店に帰ると、何も商品がない店の中で、従業員たちは暗い表情で座っている。何か月も給料が払われていないことで、皆が絶望していた。そんな中で、種夫からの手紙は竜子を勇気づけた。青木が動いてくれたことで、店に荷が付いた。ようやく従業員たちの顔に笑顔が戻る。しかし、そんな中、兄の富夫は、名古屋の妾のところに出かけたまま帰ってこない。青木から店に電話がある。美森製紙の殿村社長が会ってくれると言うので、直ぐに富夫に上京して欲しいというのだ。竜子は、代わりに自分が出かけることにする。
東京の料亭で、殿村(中村伸郎)と青木と三人で会食をする。殿村は、経営は経理ではなく人事が大事だと考えているので、支援するかどうか会ってみたかったのだと言う。しかし、若く美しい竜子と飲んでご機嫌な殿村は、竜子を怒らせようと、老獪だと言い続ける。竜子は耐えられなくなり、杯を投げつけ座敷を出る。必死に竜子を留め、とりあえず、ここは納めてくれと言う青木。座敷に戻ると殿村は帰っていた。ホテルのバーで酒を勧め、慰める青木。疲れたと言う竜子を部屋の前まで送った青木は急に竜子の肩を抱く。竜子は激しく拒絶し、野蛮ですと言って部屋に入る。頭が混乱した竜子は、熱海に行っていると言う紫乃に電話をする。横には吉見がいたが、紫乃は、翌朝早く、こちらに来いと言う。
to be continued.
新聞記者の友人の田村満吉(高野真二)を訊ね、舟坂のことを調べて貰う。舟坂英明は、
萩崎は、真相を田村に伝え、協力を仰ぐ、
田村は萩崎を連れて、まず岩尾に会いに行き、岩尾の名刺がパクリ屋に使われたことを追求するが、どれだけ名刺を配ると思っているのだと逃げられる。更に、舟坂の屋敷を訪ねるが、事務局長の山崎(宇佐美淳也)に、舟坂は病気でインタビューには答えないと言われる。
萩崎は、会社に出て専務の加賀(永井智雄)に、危ないことはやめろと言われるが、納得できないので、もう少し休暇を取って調べさせてくれと頼む。会社の入口で、弁護士の瀬川に会う。瀬川からも忠告をされる。会社を出ると、更にレッドムーンで会った客の田丸に声をかけられ、一緒に中山競馬場に行かないかと言われるが断る萩崎。田丸はバーテンの山本と競馬場にいる。山本は大金をあっという間にする。そんな山本を酒に誘う田丸。最後に行った曖昧飲み屋の二階で、田丸は山本に殺された。田丸は元刑事で、瀬川の法律事務所員だった。瀬川も、田丸の通夜の席から姿を消して、行方不明になった。
萩崎は、再びレッドムーンに出掛ける。
58年日活鈴木清順監督『影なき声(167)』
毎朝新聞社の電話交換手を高橋朝子(南田洋子)は、ある日、
to be continued.
渋谷シネマヴェーラで、昭和文豪愛欲大決戦!
56年松竹中村登監督『白い魔魚(168)』。
結城竜子(
その頃、銀座の洋品店篠宮に警察から電話がある。
種夫が竜子の病室に来ている。片手だけマニキュアを塗る竜子に、
竜子が大学に出てきた。種夫が退院するのなら教えてくれればと言うと、本当は明日だったが、退屈なので出てきてしまったと言う竜子。竜子は、学生課の富樫(十朱久雄)と山際(水上令子)に呼び出されている。イヤリングとマニキュアについて追及されるが、納得しない竜子。その日、竜子は、紫乃に誘われ、吉見のアイスホッケーの試合に出かける。応援席の三三子たちが騒いで眉を顰めるが、紫乃と竜子は試合を楽しむ。食事のあと、紫乃と吉見に車で送ってもらった竜子は、下宿に帰ると、母親からの速達が来ており、岐阜の家の商売が先行かなくなっており、破産したら、学費や生活費を送ることが出来なくなるだろうとあった。直ぐに、岐阜行きの夜行に乗る竜子。
岐阜の紙問屋の結城屋の暖簾をくぐる竜子。店は商品もなく閑散としている。兄の富夫(須賀不二男)が、母さんが手紙を出したのか、もうどうにもならないんだと言う。脳溢血で倒れた父親(北竜次)に食事をさせていた母(夏川静江)から言われ、顔を洗っていると、母がやってきて、義姉の若子が子供を連れて実家に帰ったことを告げる。翌日、故郷の景色を眺めていると、富夫がやってきて、破産するときにはみんな離れていくと自嘲気味に言う。そうはいいながらも、富夫は芸者に入れあげ、若子を苦しめてきたんじゃないのと言う竜子。大口の債権者の青木という人が竜子を気に入っているので、一度会って欲しいという富夫。
その夜、債権者会議がある。しかし、竜子は、紫乃、蔵三郎、吉見が東京からやってきていた。長良川で鵜飼いを楽しむ。紫乃たちを旅館に送っていくと、竜子を訪ねて青木という客があるという。青木(上原謙)は、ちゃんと話したかったのだと言い、結城屋を、まず支援したい、そのことと竜子のことは別だと言う。父親を顧問、兄を相談役として結城屋を残し、全面的に再建のバックアップをするので3年やってみましょうと熱く語る。紳士的な語り口は竜子を安心させる。その夜、竜子は紫乃の旅館に泊まることになった。夜中、紫乃にを呼び、外への散歩に連れ出す吉野。眠っていた筈の竜子は、やりとりを聞き、肩を寄せ合い歩く二人の姿を目撃する。
翌朝、岐阜駅に紫乃たちを見送りに行く竜子。特急つばめの少し後ろの席に座っていた青木が、ホームの竜子に声を掛ける。憂鬱な顔の竜子。店に帰ると、何も商品がない店の中で、従業員たちは暗い表情で座っている。何か月も給料が払われていないことで、皆が絶望していた。そんな中で、種夫からの手紙は竜子を勇気づけた。青木が動いてくれたことで、店に荷が付いた。ようやく従業員たちの顔に笑顔が戻る。しかし、そんな中、兄の富夫は、名古屋の妾のところに出かけたまま帰ってこない。青木から店に電話がある。美森製紙の殿村社長が会ってくれると言うので、直ぐに富夫に上京して欲しいというのだ。竜子は、代わりに自分が出かけることにする。
東京の料亭で、殿村(中村伸郎)と青木と三人で会食をする。殿村は、経営は経理ではなく人事が大事だと考えているので、支援するかどうか会ってみたかったのだと言う。しかし、若く美しい竜子と飲んでご機嫌な殿村は、竜子を怒らせようと、老獪だと言い続ける。竜子は耐えられなくなり、杯を投げつけ座敷を出る。必死に竜子を留め、とりあえず、ここは納めてくれと言う青木。座敷に戻ると殿村は帰っていた。ホテルのバーで酒を勧め、慰める青木。疲れたと言う竜子を部屋の前まで送った青木は急に竜子の肩を抱く。竜子は激しく拒絶し、野蛮ですと言って部屋に入る。頭が混乱した竜子は、熱海に行っていると言う紫乃に電話をする。横には吉見がいたが、紫乃は、翌朝早く、こちらに来いと言う。
to be continued.