2011年8月13日土曜日

銀座シネパトスで梶芽衣子。

   銀座シネパトスで『日本映画レトロスペクティブ ~ Part24 ~「梶芽衣子スタイル その魅力にはまる」

  72年東映東京伊藤俊也監督『女囚さそり 第41雑居房(15) 』
  地の底に繋がるような階段と鉄格子。さそりーと呻くような声が聞こえる。松島ナミ(梶芽衣子)が地下牢に投獄され一年が経った。後ろ手に手鎖を掛けられで、足鎖でエビぞりのような姿だが、口に加えたスプーンを口にくわえて、床で擦っている。いつの間にやら、スプーンはメスのように鋭利なものになった。ある日、辻(小松方正)尾形(阿藤快)2名の看守がやってくる。「おー寒い!やけに冷えるな。松島、狂っていないか?狂っていなければ教えてやる。巡察官が来るので、一年振りに日の光を拝ませてやる。あっ!いけねえ、所長のお出ましだ」
郷田所長(渡辺文雄)がやって来た「おい!どうだナミ!ここにお前を隔離して1年、この刑務所では悪い事は起こっていない。私たちにとって、お前はペスト菌だ。おい!松島!いい話しを聞かせてやる。俺は東京管区長に昇進して、本省に異動になる。ただ、お前が片目を潰したことは絶対に許さん!!それまでに、絶対発狂させてやる!そして、一生この地下牢にいるのだ!」巡察官の訪問の為に、一年分の垢を落として身体をきれいにしてやろうと、加圧消火ホースを持って来させ、激しく、ナミに水を浴びせ掛けた。水流により呼吸も出来ず激痛呻くナミ。
   巡察官(戸浦六宏)の歓迎式典が行われている。女囚たちの楽団が演奏する。巡察官は郷田に、凶悪犯たちをよくこれだけ大人しくさせたものだと言って、本省の東京矯正管区長に栄転しても、更に囚人たちの更生のために尽力してほしいと言った。その時、女囚たちが、連れられてきた女を見て、小さなつぶやきが生まれ、次第に広がっていった。松島ナミ、マツ、さそり…。度重なる逃亡歴、最後には地下牢に繋がれ、誰も姿を見ないまま一年が経った。女囚たちの間では伝説化されているのだ。1年間地下牢で横たわっていたナミは、一人で立っていることも出来ない。
    巡察官ナミにも「罪を償って、早く社会に復帰してください。」と声を掛けた。その時、立つことも出来ない筈のナミが想像を絶する跳躍で、隠し持った鋭利に尖らせたスプーンで、郷田の残った方の目を刺そうとした。掛けていた眼鏡にあたり、頬を傷つけただけであったが、巡察官は、恐怖のあまり腰を抜かし、失禁する。ズボンから床を小便の水溜りを広げた。大人しくしていた女囚たちは、嘲笑し騒いだ。巡察官を取り囲み、ズボンを、服を脱がす。今まで殊勝に演奏をしていた女囚楽団も、ジンタを演奏する。面目を丸潰しにされた郷田は、看守たちに指示をし、威嚇射撃をさせると、「絶対許さん。全員懲罰!!!!」と叫ぶ。
   炎天下の中、採石場で、石を引かされる女囚たち。ナミは、キリストのように、十字の大きな木を背負わされている。その光景を見た郷田は、「沖崎!!!あれでは駄目だ。松嶋ナミは、どんな懲罰も効かん。耐えるマツの姿は、女囚たちに神格化させるだけだ。女囚たちに、松島もしょせん女だと思い知らせてやる。こうするのだ。」と言い。沖崎(室田日出男)に命じて、茶色の服を着た4人の看守を集めさせ、彼らにストッキングを顔に被らせて、ナミを輪姦させる。辻が、最初に圧し掛かると、ナミは顔を食い千切ろうとする。しかし、他の男たちに取り押さえられ、次第に遠い目をするナミ。その姿を見る女囚たちの中には、涙を流す者もいる。
   法務省と書かれた黒く塗られ、窓もない囚人護送車が何台も、採石場から刑務所に戻っていく。助手席に座る辻(小松方正)は、「あんなハクいスケを抱けるとは、今日はヤリ得だったぜ。」と舌なめずりをしている。護送車の中には、ナミを含め7人の女がいた。リーダー格の大場ひで(白石加代子)、及川君代(荒砂ゆき)野田朝子(伊佐山ひろ子)、我妻春江(八並映子)、安木富子 (賀川雪絵)都ローズ(石井くに子)。大場や野田が、「いきがりやがって!!」とナミを蹴り始めると。都(以降、愛称のチビを使用)を除いて全員がナミに暴行する。
   失神したナミを死んだと思って、チビは、「マツが死んだ!!!」と半狂乱になる。運転席側の壁をガンガンなぐり喚くのに気が付いた辻たちが、車を止め、荷台の鍵を開け覗く。奥でナミは倒れている。近づいた辻に、突然起き上がって、手枷についた鎖で首を絞めるナミ。銃を持った尾形には、大場が飛びついて銃を取り上げる。7人の女たちは、逃亡した。
郷田、沖崎、古谷(堀田真三)が見つけたのは、横転して燃え上がるトラックと、全裸で、股間を丸太で串刺しにされた辻の死体だった。
    7人の女囚たちは、荒野を走り続けた。無人の部落を見つける。3匹の野犬を追い込み、焼いて喰う女囚たち。ナミは黙って、竹を細かく裂いている。大場ひでがナミを睨み「何を見ているんだ?!どうせ、どうせ、あたしゃ、人間の顔(ツラ)してねえよ!ケダモノだよ! 夫が私許せなくて、そいつの血が流れているガキを二人殺したんだ!! 見てみろ!」囚人服を捲りあげると、腹に大きな縫い跡がある。「稚児を鍋で煮て殺し、さらには腹の中の胎児を切腹して始末したんだ!!」連れ子いびりの男を殺した及川君代、不倫相手の妻を毒殺した色情狂、我妻春江、レズビアンの放火魔、野田朝子と、売春婦の安木富子、てて親殺しの都ローズ・・。
他の女たちも、不倫相手の妻を殺害したり、凶悪犯罪を重ねた不幸な女たちばかりだ。突然、風が吹き、あばら屋が倒れ始める。
    松明に火を付け、部落の外れまでいくと、1つのあばら屋が解体する。中には、包丁を手に震える老婆(田中筆子)が座っている「恨んでやる・・殺してやる・・・」低く呻いている。「化け物だ!」「こりゃ、姥捨てじゃねえのか?」
   老婆は、ナミに出刃包丁を残し、枯葉の中に消えた。
    犬を連れた刑務官たちは、無人部落を突き止めた。しかし、一足違いで、女囚たちには逃げられ、哀れ、犬はナミがつ作った竹のギロチンの罠に掛って死ぬ。
    走り続けた女囚たちは、ようやく山を下り、街がもう少しのところまで辿り着いたが、夜になるまで、山小屋で時間を潰すことにする。しかし、息子会いたさに、及川君代は無断で山を下り、息子を育てている両親の家に行く。
   しかし、既に沖崎(室田日出男)と?(三重街恒三?)の二人は、先回りをしていた。仲間の居場所を白状しろと、二人は、泣き叫ぶ子供を放り投げ、君代をいたぶる。沖崎は、自分が連絡に行くので、君代を尾行するように命ずる。しかし、君代の態度が気になり尾行していたナミは、男を捕まえ、包丁で脅しながら山小屋に戻った。
    ぶっ殺してやると大場ヒデがライフルで撃とうとすると、揉み合いになり、暴発し、我妻春江の腹部が血に染まった。沖崎たちが、山小屋に着くと、中には惨殺された仲間が逆さにつりさげられていた。
   その頃、観光バスに『若い正直の会』の一行が温泉旅行に行くところだった。酒の入った若い男たち(小林稔侍、高月忠、伊達弘)は、やりたくてしょうがない。中年の男は「今の若いやつらは可哀想だな。俺らの若い頃は、
行軍中にやりたくなったら、近くの女を攫って、強姦し放題だった。背負った飯盒が、腰の動きに合わせてカタカタ言ったもんよ!!」
たまらなくなった男たちは、バスガイドに触りまくり。
   渓谷を走る女囚たち。チビが河でパンツを下し、小便をしている。ふと見ると、観光客の男児2名も立ち小便だ。「おねえちゃん!どこから来たの?」「悪いオジサンたちから逃げて来たんだ」
   しかし、バスの若い男3人は、チビを見つけ、輪姦してしまう。悲鳴を上げるチビ。滝の水が赤く変わった。チビの悲鳴を聞いた女囚たちが男たちを追う。

   走る観光バス。女囚たちにバスジャックをされている。

田所(佐藤京一)鳥居(安藤三男)風間(久地明)落合(林宏)稲村(宮地謙吉)警官(相馬剛三)若い女(笠原玲子)

   74年東映京都中島貞夫監督『ジーンズ・ブルース 明日なき無頼派(16)』

   夜の空き地、早川(室田日出男)に命じられて穴を掘るチンピラ、片桐次郎(渡瀬恒彦)。近くに車が走って来て停まる。「次郎!来たぞ!早く掘れ!!」運転席から石松(川谷拓三)が降りて、後部座席から本郷(内田良平)が中川(北村英三)を引き摺り下し「中川さん・・・俺たちだって、あんたに恨みはないんだ。でも借り過ぎですよ。俺たちも金貰っちまったから」スコップを持った早川が殴りかかる。「助けてくれ!!金ならやる!!お願いだ!マリー!!」マリー(加納えり子→橘真紀)「私も分け前くれるのんでしょうね?だから誘い出すの手伝ったんだから」本郷「ああ、こいつを埋めたら、次郎も埋めるぞ。分け前は多い方がいいからな」!」逃げる中川を追いかけ回す早川、石松。
   スナックでゴーゴーを踊る女たち。挿入される新聞の紙面。女たちを、冷めた眼差しで眺める聖子[ひじりこ](梶芽衣子)。男の客(北川俊夫)が入って来て、金を出し「ママ!奥いいだろ」と声を掛け、勝手知ったようにスナックの奥に入って行く。サングラスを掛けたマスター(菅貫太郎)がレジを開け、札を掴んで「出掛ける・・今日は帰らない・・・」出て行く。
  しばらくして、先ほどの男が「ママ。一人足りねえんだよ」と誘うが、聖子は「そんな気分じゃないわ」と冷たく断る。暫くすると、一人の和服姿の年増の客(葵三津子)が、店に入って来て「マスターに聞いて来たの。退屈だから仲間に入れて」と奥に入って行く。店の電話が鳴った。聖子が受話器を取ると「今、和服の女が行っただろ!あいつ金持ちの人妻だ。お前好みのいい男は来たか?今日はやっぱり帰らない」受話器を置く。奥では、乱交が行われている。
  再び夜の土手、殴り殺される中川。本郷の懐から紙包みが落ちる。それを手にした次郎は、中身を見て「これだけありゃ・・・」次郎を殺そうと近付いていた3人は、襲いかかるが、必死に走って逃げる次郎。本郷たちの車に飛び乗って土手を走り、遠くなる車を悔しそうに本郷「クソっ!!必ず取り返せ!!」
  聖子はカウンターにあった車のキーを手に取り、レジを開け残った札を手にすると、店の有線のチャンネルをいきなり軍歌に変える。驚いて顔を上げる客を残し店を出て、車を出す。人気の無い土手沿いの店を飛ばしていると、脇から次郎の載った車と衝突する。
  「やいやい!!何しやがるんでえ」と降りて来た次郎は、聖子を見て、その美しさに少しビビリながら、「金は持っているんだ。俺は、今人一人ばらしてきたところなんだ。」と粋がって、煙草に火を付け、マッチを捨てると、追突で漏れていたガソリンに引火して、2台の車は大轟音とともに爆発する。それを眺めていると通りがかった車から男(福本清三)が「事故だ!!」と降りて来た。その車を盗んで発車しようとした次郎は男を轢いてしまう。男が死んだと思いこんだ次郎は、サイレンが聞こえて来たので、慌てて2万円を男の懐に突っ込んで車を出す。
  「俺は、片桐次郎。おめえの名前は?」聖子は答えない。「そうだ!何か喰おうぜ!!」レストランに入り、食券売り場で「ビール!!それと、ここで一番高いもんは何だ?」「神戸牛のビフテキです」「じゃあ、それを二つ!!」

   
主題歌

百合子(堀越陽子)瀬川(川浪公次郎)堀田(山本麟一)豊子(丸平峰子)ウェイトレス(美川麗子)ハンター(曽根晴美)スタンド店員(奈辺悟)警官(山田良樹)運送会社係員(畑中伶一)丹後半島。映画「スティング」風の帽子とチョッキ。