2009年10月31日土曜日

府中4中同窓会

    中学の同窓会で、府中まで。2時から5時まで元府中市民会館茶話会。5時から駅前の居酒屋に場所を移し飲み会に。中学卒業以来、30才、40才と開催しているらしい。10年前は覚えているが、20年前の記憶はない。50代になると、物故者も何人か出て来たが、のべだと60人以上出席し、楽しい(笑)。最初は、14、5のガキからオッサンオバチャンに変わり果てた姿のギャップに戸惑いながら、酒が入ると、お前変わらねーなあとなる。変わらないというより、成長しないと言うのか、進歩ないんだろうな。
   中学時代のマドンナとは、「お変わりなく…。」「あなたは、変わる一方ね。」と、一言しか話せない。確か40の時も同じことしか話せなかったと思う。他の女子とは全く平気なのに…。本当に中2男子から成長しない駄目な私(苦笑)。いくつになったら、思い出話として話が出来るようになるのだろう。ああ。
   次は60才なのだろうか…。もう少し早くやってもらえないものか。
    平山城址公園の実家に久しぶりに帰ることにしていたが、気がついたら、高尾駅終点。上りがまだあって助かる。

2009年10月30日金曜日

白馬のルンナ。

   学校、午後2コマ。

   シネマヴェーラ渋谷で、東宝青春映画の輝き

   68年東宝出目昌伸監督『年ごろ(618)』
    小林陽子(内藤洋子)は高校最後の春休みに、友達の高木マリ(松本めぐみ)と兄の大介(松山省二)や竹山達郎(黒沢年男)、兄のガールフレンドの戸田幸子(吉村実子)らとスキーに出掛ける。そのホテルには、ブルーコメッツが来ていた。ブルコメファンのマリは大喜びだ。
転んでばかりで、おでこで停まっていた陽子も、竹山のコーチで段々滑れるようになっていった。
   幸子はスキー板を流してしまった時に助けてくれた紳士小倉(岡田真澄)に、周りの男子学生とは違った大人の男性を感じて惹かれて行く。親しそうな二人を目撃してしまった洋子は気になった。
   新学期が来て、陽子は高3になった。NYで、前衛芸術家の内田一夫(熊倉一雄)と結婚した姉秀子(村松英子)が二年ぶりに帰国する。洋子は、母久子(京塚昌子)と大介と羽田まで迎えに行く。大介は「兄さんは商業芸術に転向したのが成功したね。アメリカに行く前の絵は、どっちが上だか下だか解らなかった。」と言って母親にたしなめられている。アメリカで有名になった前衛芸術家の義兄を取材に来たマスコミが多数来ている。しかし降りてきた義兄の格好は、なんとも奇っ怪な風体だ。陽子は、飛行機を降りて来たパイロットがスキー場で会った紳士だと気がつき、航空会社に確認し小倉良治という名前だと知る。
   小林家では、父親の大造(佐野周二)が一夫の書いたサイケなポスターを見て、なかなかのものだねと誉めている。一夫の風体や発言は、秀子が全て演出しているのだ。都会的で垢抜けた姉を、陽子は好きだった。

(岡田眞澄)八木正明(川上大輔)守口昭(高島稔)斉藤明子(中川さかゆ)鈴木民子(高橋厚子)

   69年東宝出目昌伸監督『俺たちの荒野(619)』
   横田基地近く、バイクの二人乗りをする哲也(黒沢年男)とジュン(東山敬司)。哲也は、昼間は、横田基地で米兵を運ぶアルバイトをしており、夜はバーストリートでバーテンをしている。ジュンは、ガソリンスタンド兼整備工場で働いている。二人はかって東洋自動車の工場で働いていた。集団就職で上京してきたのだ。二人は仲がよい、いつもつるんで遊んでいた。

哲也(黒沢年男)純(東山敬司)由希(酒井和歌子) サチ(赤座美代子)亜希(原知佐子)
ジミー(ウォーレン・サクソン)よし子(望月敦子)田島(清水元)ママ(宮田芳子)労務者風の男(左卜全)
町田通訳(草川直也)メリー(ミセス・カーター)金髪女(マギー・ウォーゴー)サウナ風呂の親爺(佐田豊)

   バディものということだろうか。

2009年10月29日木曜日

流行歌と時代劇と黒沢明とロスプリモス。

  大手町の成人病クリニック、午前中は先日のCTの結果を消化器科の先生から、膵臓は特に異常はないが、内臓脂肪はかなり多いと言われる。眼鏡美人の女医さんにたしなめられると、マゾ心が燃える(笑)。昼からは糖尿病の経過観察。そんな日の前夜遅くに呑んだ挙げ句に、ホープ軒でラーメンと言う自制心の欠如した私(苦笑)。

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、俳優 佐藤慶

   73年勝プロダクション増村保造監督『御用牙 かみそり半蔵地獄責め(615)』
   北町奉行所隠密廻り同心かみそり半蔵こと板見半蔵(勝新太郎)は、自分を見て逃げ出した二人組を追っていた。連れているのは小者の鬼火(草野大伍)とマムシ(蟹江敬三)。二人とも自分がお縄にした小悪党だった。勘八(北野拓也)と小三郎(宮下有三)を橋に追い詰めたが、運悪く、勘定奉行大久保山城守(小松方正)の行列が通りかかる。共先を乱した二人組を斬り捨てようとする山城守の家中の者たちの間に割って入る半蔵。山城守の側近の本多麟太郎(岸田森)は、町方風情の不浄役人が、奉行の列に飛び込むとはと、山城守の剣術指南役兼用心棒御子柴十内(黒沢年男)に半蔵を斬れと命ずる。しかし十内、自分は藩に雇われているのではなく、山城守に個人的に雇われているのであって、大久保家から指図は受けないと答える。駕籠から顔を覗かせた山城守は、御子柴の実力を見てみたいといって立ち会いを許すが、引き分けた。
   2人連れの持ち物を調べると若い娘の着物が。追い剥ぎかと問い詰めると、水車小屋に死んでいた娘から盗ったと自供。死体を改めると、堕胎の後、死んだことが分かる。近くを調べると巫女(小柳圭子)が堕胎を請け負っていた。女の死体を棺桶に入れて、鬼火マムシに運ばせ、巫女に迫ると、駿河屋の娘お町だと知れた。駿河屋六佐衛門(稲葉義男)とお甲(近江輝子)の元に行くと、お町は、男を知っているなどはありえない娘で、外出も近くの尼寺海山寺にお茶、お花に習いに行くことしかなかったと言った。
  勿論、神社仏閣は、寺社奉行の管轄。お構い無しに乗り込むと、嗜虐趣味のある大店の主人たちを相手にいかがわしい商売をしていることが分かる。さっそく尼僧の如海尼(相川圭子)を攫って、自慢の男の武器で吐かせると、裏に山城守が関わっていることが判明する。
   そんな時に北町奉行と筆頭与力大西から呼び出しがあり、勘定奉行の行列への無礼を咎められ、しかし今江戸で暗躍する極悪非道な浜島正兵衛(佐藤慶)の一味を捕まえろという命が下った。次に金座を狙うという情報を得て、金座を女だてらに取り仕切る若後家の陸(稲野和子)を訪ねる。主のりきの寝所の押入れで見晴らせろと言い出して驚かす。
   それどころか、後家の操を守る陸に正兵衛に陵辱されるのかと言ってモノにしてしまう(苦笑)。心の落ち着きを取り戻した陸を山城守が訪ね、小判の改鋳を行い、金の含有率を半分に落とし更に一部を自らの懐に入れよと指示する。勿論押入の中で半蔵は聞いていた。更に筆頭与力大西が現れ、警護をするかわりに袖の下を要求、半蔵に追い返される。
    最後に火盗改めが泊まり込みで警護をすると申し入れ、陸に受け入れるよう指示をした。果たして火盗改めは浜島正兵衛の一味だった。まず、陸を陵辱しようと寝所にやってきた正兵衛が、布団を剥ぐと中には半蔵が。一人一人斬り捨てる半蔵。大勢の捕り方に包囲され、追い詰められた正兵衛は、少女を人質に。半蔵の命と引き換えに解放するとの話に半蔵は棺桶を背負い刀を捨て一味のもとに。しかし卑劣な正兵衛は、少女に襲いかかった。それを見て半蔵は棺桶に仕込んだ武器で一味を倒す。引き立てられていく正兵衛たち。北町奉行矢部常陸守(大森義男)と山城守から褒美を取らすとの言葉に、山城守の首だと答える。驚く皆に、山城守の悪行を暴露する。
   山城守は、大目付、老中たちによる詮議により、蟄居、領地召上げとなった。橋を渡ろうとする半蔵、鬼火、マムシの前に、御子柴十内が現れる。山城守の失脚により、再び素浪人になったと言う十内は、勝負しろと言う。立会いの結果、十内は負けた。橋の上で、切腹して果てる十内。

   うーん。テアトル新宿の勝新若山特集で、見ていたな(苦笑)。しかし、前回見た時は、劇画的に、男の刀を鍛える方法を勝新が大真面目にやっているのに失笑して、もう一つの印象だったが、今回はそれなりに楽しめた。特に黒沢年男に感じいったがよかった。若い頃の、まあぶっちゃけ大根ワンパターンの演技が、いい具合に枯れて渋い味を出していた。最後の勝VS黒沢はスケールの大きな殺陣ではないけれどいいなあ。

   64年東映京都長谷川安人監督『集団奉行所破り(616)』
   (NA)江戸は武士の街、大阪は商人の街。大阪の口が堂島の米市場なら、胃袋は天満のやっちゃ場、頭は東町奉行所でしょうか。
  天満宮で、一心に祈る男の懐から財布を擦る掏摺のエテキチこと捨吉(神戸瓢介)。気がつかれて逃げ出す。ダマシチこと為七(市川小金吾)の懐に財布を押し込んで、捕まってから、さあ探せ!!と下帯ひとつで、地面に転がる捨吉。
  為七は、懐の財布を調べ、下町までやってくる。少し誤魔化そうとするが、為七は、財布が軽くなったと言われ、銭を返す。溜まり場の飯屋萬兵衛に入り、捨吉に酒をたかろうとした時に、三人の浪人者(島田秀雄、大城泰、有島竜司?)が店に入ってくる。女郎屋の親父が金を払ってくれと付いてきている。どうやら踏み倒そうとしているのだ。騒がしさに、奥の小上がりで寝ていた悪源太こと田村源太(大友柳太朗)が、五月蝿いと文句を言い、表に出ろと言うことになった。
  為七は、捨吉にニセ町医者の法眼の道伯(内田良平)の下に走らせ、自分は浪人者たちに、もし亡くなった場合には、懐中の銭を自分にくれるよう約束をして断られる。勝負は一瞬にして決まり、三人の浪人者は鼻を切られていた。もんどり打って転がる三人を為七は堂白のもとに連れて行く。道伯は、痔の薬を鼻に塗り、為七は、1両2分の有り金全てを治療費だと言って巻上げる。源太が追い掛けてきたと脅すと、大慌てで逃げて行く浪人者たち。
  すけこましの業平こと丹次郎(里見浩太朗)が、商家の若旦那風の格好で、天神さんの人混みで娘に声を掛けながら歩いている。ふと一人の娘(嘉手納清美)に目を止める。「君みたいなお嬢さんは、こんな処を独りで歩いていると危ないよ。」と声を掛けると、 お糸という名の娘は、「本当にそうみたいね。」ちんぴらの三人組(島田秀雄、大城泰、有島竜司?)が、取り囲み、付き合ってくれねえかと声を掛けてくる。丹次郎は、色男金と力はなかりけりを地で行くので、なかなか割って入れない。調子に乗った男たちは、お糸を攫おうとする。そこに、東町奉行所の同心竹内金次郎(佐藤慶)がやってきて、男たちをボコボコにする。「お父さん止めて!!死んじゃうわ。」お糸は、同心の娘だったのだ。お糸は「行きましょう!」と丹次郎を誘って、竹内を置いて行く。「腕の振るいどころをなくしちゃったわね。」お糸は、どうも父親に屈託があるらしい。そこに、すぼけの吉蔵(田中春男)が、「兄貴、勘助の親方が呼んでいまっせ。」と声を掛ける。「お前、若旦那と言え」「若旦那って、おまえさん業平やろ・・。」「ちょっと、店に戻らなけばならなくなったみたいだ。」
   商人宿碇屋の主人勘助(金子信雄)は、7年前まで海賊の頭領だった。


佐吉の妹お駒(桜町弘子)お光(御影京子)松平右近将監(原田甲子郎)、長坂又右衛門(戸上城太郎)逸見軍十郎(楠本健二)、宇部甚八(佐藤洋)、大沢小太夫(藤木錦之助)万兵衛(市川祐二)、彦助(佐々木松之丞)お松(牧淳子)おしげ(園千雅子)万作(鶴田淳一)甚兵衛(源八郎)久兵衛(中村錦司)浪速屋庄右衛門(水野浩)堺屋五兵衛(有馬宏治)和泉屋安次郎(熊谷武)茨木屋藤四郎(矢奈木邦二郎)

   68年日活舛田利雄監督『わが命の唄 艶歌(617)』
   夜の海が見えるホテルSEA。そこの一部屋に津上卓也(渡哲也)が佇んでいる。森亜矢子(牧紀子)と抱き合う。津上は、ルピエ化粧品宣伝部の臨時雇いのコピーライターだった。自分のコピーに自信が持てない津上。同じ宣伝部のイラストレーターの亞矢子のみが、自分のコピーを認めてくれた。そんな亞矢子は津上のプロポーズを受け入れてくれ、今日は初めて身体の関係を持った。翌朝、亞矢子は「津上くんにはサムシングエルスがある」と言い残して津上の前から姿を消した。
   その日、亞矢子の車は、近くの港の海中から発見された。結婚の約束をした亞矢子が何故死んだのか、全く見当もつかず、氷雨降る港で、立ち尽くす津上に、宣伝部長の黒沢正信(佐藤慶)は、気持ちの整理がついたら俺のところへ来いと声を掛けてくれた。
   暫く津上は亞矢子の死を受け入れられず、食事もろくに取らず部屋に籠もっている。下宿の管理人夫婦の娘京子(水前寺清子)が心配してうどんを持ってくるが、布団から出て来ない。
   突然黒沢が下宿を訪ねて来て、無理矢理津上を会社に連れて行く。亞矢子の席に座らせ、マンツーマンで、コピーを書かせ始める。しかし津上は自信を持てないままだった。ある日、テレビCM用の長いコピーを命じられたが、徹夜をしても書けずにいると黒沢が、パンと牛乳を届けてくれたが、「何故、黒沢さんは僕なんかに優しくしてくれるんですか…。僕は亞矢子が死んだ日にラジオから流れていたジャズのメロディーがいつも僕の頭の中で聞こえているのだ」と告白する。黒沢は、そのメロディーに歌詞を付けてみろと言う。そのCMは社長にも誉められた。しかし、報告しようとした黒沢は退社し、東洋テレビに引き抜かれたと言う。
   数日後、津上は黒沢に東洋テレビに呼び出され、今の化粧品会社を辞めて、大手広告代理店弘電社に入ってCM音楽をやれと言って、CM制作部長の西条を紹介された。更にスーツを買えとまとまった金まで貰う。グリークラブ時代の友人で、東洋テレビの制作にいる露木隆一(藤竜也)を訪ねる。黒沢は経営の立て直しの為に大鉈を振るい、台風の目となっていると言う。長く続いていたルポルタージュと言う硬派のドキュメンタリー番組を打ち切り、交響楽団も解散させたと言う。その夜、二人は痛飲する。偶然入った民謡酒場で、京子に再会する。サントリーのダルマを頼む。黒沢から貰った金を一晩で使ってしまいたかったのだ。酔っ払って、夜の街を、露木、京子と歩きながら、最初は外国の歌を、途中から日本の歌を高らかに歌う。
   CM音楽のディレクターとして成功していた津上を、三年振りに誘いにやってきた黒沢。レコード会社の役員としてミリオンレコードに、親会社のミリオン電機から一人送り込まれた黒沢は、今のレコード業界をぶち壊すために、津山が必要なのだ。即答を避ける津山。
   津山は、黒沢に連れられ、ミリオンレコードの歌謡ショーを見に行く。「黒沢明とロス・プリモス」(そうか、黒沢明だったんだなあ)「青山ミチ」「美川憲一」・・・。古臭いワンパターンの歌詞とメロディー、音程の悪い歌手。鳥肌がたつほど嫌悪した津山は、逆に、ミリオンレコードに興味を持つ。再び、東洋テレビの露木のところに行き、ミリオンレコードの看板ディレクターの高円寺隆三の話を聞く。露木は「狐と狸とアヒルとドブネズミがいるような」流行歌の世界と言いながら、自分がかって演出したルポルタージュという番組の「艶歌の竜 ~艶歌に命を賭けたある男の人生~」を見せてくれる。
   (テレビ番組)ステージで、一節太郎が「浪曲子守唄」を歌っている・・・。高円寺隆三は、今年52歳。会社が創立10周年の年に、上野の音楽学校を卒業して、入社した。青臭い音楽理論を話す鼻持ちならない若造だった高円寺は、意志に反して、地方セールスに配属された。北は函館、南は博多、全国のレコード屋の注文取りの仕事は、高円寺をくさらせた。
   ある時、北国の漁師宿に泊まり、痛飲した。もう辞めようと思った高円寺の寝室に、その夜女中が入ってきて、高円寺を慰めた。一晩中海鳴りがする宿の年増の女中は暖かだった。少し気持ちが軽くなった高円寺は、2年目で制作部でサブディレクターとなった。「海鳴りの宿」が初めてのヒット曲となった。そのレコードを持って北国の漁師宿に出かけるが、とうに女中はおらず、行方も知れなかった。日本海に向かって、そのレコードを投げ泣いた。
  その後、召集。入隊した部隊は、226事件で蜂起した。そのため、鎮圧後、満州の前線に送られた。現地で病気になり、除隊。ミリオンレコードに戻ってきた。会社は当時、軍歌を量産していた。それに反発し、流行歌のディレクターとなった。演歌とは、怨みの歌だ。泣く代わりに、人々は歌うのだ・・・。
   「貧乏人にとっちゃ、暗い青春しかない。そんな貧しい日本の歌を変えてやる。」そう決意して、黒沢を訪ねる津山。そこで、黒沢の秘書をしている森亞矢子の妹、美矢子(松原智恵子)に会う。美矢子は姉を殺した津山を憎んでいた。自分も亞矢子の死の理由は分からないのだと伝えようとしても美矢子は一切聞く耳を持たない。ミリオンレコードは、この数年新しいヒット曲を出せずにいた。社長の野川(清水将夫)と専務の高根(山内明)の権力争いもあるようだ。高根は、「コマソンの人か、2,3年きっちり詩の勉強をして、ヒット曲を作ってくれたまえ」と言う。黒沢は、この会社は2,3年待って居られませんよと露骨に告げて、高根を鼻白ませる。
  黒沢は、津山を、社内のスタジオに連れてゆく。高円寺の現場だ。ミキシングルームには、随分と沢山の人で溢れていたが、肝心の高円寺はいない。競輪に行っている高円寺を待っているのだ。やっと最終レースが終わり、高円寺がやってくるが、ソファーに横になり競輪の新聞を頭から被っている。笹みどりのレコーディングがスタートした。流し上がりの作曲家の雨宮(青木義朗)が歌わせていくが、歌い終わっても高円寺は動かない。何度歌っても高円寺は、同じままだ。焦る雨宮やミキサーたち。歌い終わった時に、津山は黒沢に「今度は駄目だ。音程が狂った。」と耳打ちする。しかし、意外にも高円寺は置き上がり、「これで行こう!」と言う。
  ホッとした空気が流れるが、雨宮が津山に詰め寄る。「てめえ、先生に失礼だろ!!コマソン野郎にイチャモンをつけられたくねえ。嘗めるなよ小僧!!」高円寺は、割って入り、「君の率直な感想を聞かせてくれ。」という。「古臭く、ワンパターンの歌詞とメロディ、音程も悪い。」「そうか、コマソン屋さんとは違う作り方をしているようだな。俺たちは流行歌に命を掛けているからな。」その後、津山は、グループサウンズの制作部を希望するかという黒沢に、高円寺の下につけてくれと頼む。
  居酒屋で、高円寺、雨宮、津山が飲んでいる。雨宮が「いや、初めておめえに会ったときは、気に喰わなかったが、先生のところを希望するなんざ見上げたもんだ。気に入ったぜ。」と言い、津山に酒を注ぐ。高円寺が隣で歌っている流しを連れて来いと言う。飛びだしていく雨宮。高円寺、「あいつは、流しあがりの作曲家で単純は奴だが、悪い奴じゃない。」「はい。」「歌は世につれ、世は歌に連れという言葉があるが、あれは嘘だ。歌は世に連れるが、世は歌に連れないんだ。」「そんなことはないと思います。僕は強烈な歌で、世の中を変えたいんです。」そこに、雨宮が二人組の流し(杉山俊夫、野呂圭介)を連れてくる。今日は喉の調子が悪くて、民謡酒場で見つけた女の子に歌っているんですという流し達。高円寺は、雨宮に君は何年俺と仕事をしているんだ、その女の子を直ぐに呼んで来いと言う。
   連れられて来たのだ京子だった。高円寺に言われ、「いっぽんどっこの歌」を歌う京子。「こりゃ本物だ。掘り出し物だ」と言う高円寺。京子は、お金がいると言う。父親が若い女に入れあげて会社の金を横領して、一年の実刑を食らったと言う。途端に母親気が抜けて、寝たきりになり、弟と妹の面倒もみなければならなくなったのだ。

   テレビで放送されたのを、2度ほど見て、観た気になっていたが、全然違う印象だ。

2009年10月28日水曜日

リスペクトする音楽映画2発。

   渋谷シアターNで、竹藤佳世監督『あがた森魚 ややデラックス(613)』            
  歌いながら、苛立ち、怒っているようなあがた森魚。「今日は、二千円だか三千円だか、みなさんは払って来てくれているんですが、極楽なのは、僕の方です。不甲斐ない作品でごめんなさい!!」絶叫してステージを降りる。店を出て、追い掛けてくるカメラに向かって「子供だよ!!ここに来て、今も子供だよ!!」と吐き捨てる。                
  釧路空港、到着口から出てくるあがた森魚。キャンピングカーが停まっている。この車で全国を回って行くのだ。

   1948年生まれ60才を迎えるあがた森魚が、キャンピングカーで全国67カ所(結果としては4本増えたらしい)をツアーで廻り、最後は2009年2月に、九段会館で、鈴木慶一、矢野顕子、緑魔子、ムーンライダースと言うかはちみつぱいのメンバーなど仲間に囲まれた豪華コンサートを行い、翌日寝台特急北斗星で北海道に行くまでのドキュメンタリー。
    あがたさんは、20数年前、元の会社で三枚程アルバムを出した時に、私は宣伝担当だった。もともとデビュー当時のファンだった私は手を挙げ、オリジナリティ溢れるタンゴをやっていたあがたさんと、とても楽しい仕事をさせて貰った。世は正にバブル時代、ガロや林静一の大正ロマンから昭和デカダン、全共闘世代の中央線文化な香りから始まり、あがた流ニューウェーブバンドのヴァージンVSを経た、あがたさんのタンゴは、世紀末感漂う90年代初めての気分にとっても合った。でもよく考えると、僕のちょうど10才年上のあがたさん、当時僕がギリギリ20代だったので、まだ30代だったんだな。今では50代と60代か。しかし、変わらぬエネルギーを拝見して刺激を受ける。
    監督の竹藤は、10年ちょっと前彼女が広告代理店の若いクリエーター時代に何度か楽しく飲み(彼女は忘れているだろうが(笑))、映画への志しに強く打たれた自分は名前が出る度に、金を払って映画館に行っている。感謝しろ!!!竹藤(笑)!!
   でも、「半身反義」、あがたさんとドキュメンタリーが続くが、あの内面をえぐり出すような青臭い前衛映画、また作ってほしいな。

  昼から学校3コマ。3コマ目は、二人しかいない音楽誌編集専攻。一人が休みだったので、突如課外授業にして(笑)、
   ヒューマントラストシネマ渋谷文化村で、2002年 ポール・ジャストマン監督『永遠のモータウン(614)』
   モータウンレーベルの無数のヒット曲を作り出したスタジオミュージシャンたちファンク・ブラザーズ。
   公開時以来だが、やっぱり最高だ。60年代から70年代のポップスは、スタジオから生まれていた。今、音楽はLDKかワンルームマンションから生まれている。孤独な一人の作業によって。必ずしも、毎回三人寄れば文殊の智恵だとは思わないが、色々な作り方が成立しないと、豊かな畑は生まれないだろう。
  無理矢理見せた学生も良かったですねと温まっていた。来週、感想を提出しろと言ったが、覚えているだろうか(笑)。

   夜は学生が企画するイベントの会場下見。それまで、外苑前の粥屋喜々で、酒を呑まずに、北陸でイベント会社を経営する後輩Kと、北陸のロック映画イベントの企画の打合せをしようとしていたら、特別企画のワイン飲み会だと言う。辛いなあ(苦笑)。ビールちょびっと、水を飲み飲み、早めに抜けて、代々木上原に。会場はなかなか素晴らしく、学生たちも、皆気に入ったようだ。戻ると、酔っ払いまみれで酷い状況に。気がついたら、終電ぎりぎりだ。
   千駄ヶ谷まで、後輩Kと歩いていると、魔のトライアングル、ホープ軒が現れる。やめようなと語り合いながら、通り過ぎるも、次の交差点が赤だったので、引き返してしまう。案の定、食べた途端、ダメージが大きく、運命を呪いながら千駄ヶ谷駅。一人だからでなく、心の弱い人間は二人、三人と数が増えるほど、弱くなっていく。笑い話のようだ(笑)。

2009年10月27日火曜日

村八分と左遷。日本は変わらない。

  大門の睡眠クリニックから、赤坂のメンタルクリニック。

  池袋新文芸坐で、映画夫婦渡世 中原早苗&深作欣二

  68年近代映協製作/松竹配給吉村公三郎監督『眠れる美女(610)』
  鎌倉に住む67才の老作家江口(田村高廣)が散歩をしている。

妻保子(山岡久乃)次女時子(八木昌子)三女美子(香山美子)初恋の少女(松岡きっこ)神戸の女(中原早苗)樋口(大出俊)山本(石川徹郎)夜の家の女(初井言栄)眠れる美女(水城リカ、北里ユキコ、賀川雪絵)木賀老人(北沢彪)福良専務(殿山泰司)江口の母(田中筆子)吉田の兄(飯沼葬)初恋の少女ノ父親(三津田健)料亭の女中(志村幸江)番頭(吉峰英一)時子の娘(渡辺小百合)


25才の頃初恋の少女、雪国に駆け落ち、数年後自殺、少女は父親に口止めしていた。37才頃には、神戸のナイトクラブで知り合った女、女の夫はアメリカ人、年に2ヶ月だけ日本妻、子供が二人。「気晴らしよ。でも浮気はあなただけよ、娼婦じゃないわ。寝てみてわかったでしょう。」


  53年近代映協=現代プロ製作/北星映画配給吉村公三郎演出補導/今泉善珠監督『村八分(611)』
   静岡県選出の参議院補欠選挙の結果は、自民党の前農林大臣の黒田が、農村部の票を集めて圧勝した。朝陽新聞の静岡支局に、野田村で不正選挙が行われたと言う告発の葉書が届く。書いたのは富士原高校の二年生吉川満江(中原早苗)だ。

竹山集落。
一郎(藤原釜足)きみ(英百合子)香山(乙羽信子)本多(山村)和子(日高澄子)村長(山田巳之助)山野(菅井一郎)遠藤(御橋公)教頭(殿山泰司?)
アナウンサー(久松保夫)山口の爺さん(横山運平)

  新宿ピカデリーで、角川映画若松節朗監督『沈まぬ太陽(612)』

   若松監督の演出は、西岡琢也の脚本のお蔭か、長い時間をダレることなくきちんと見せる。(「ホワイトアウト」が嘘のようだ(笑))。また、キャスティングも海外ロケも、今時の映画と比べれば丁寧に、時間とお金を掛けている。一つ不満があるとすれば、今時の邦画らしく、ポストプロの未消化だ。いきなり冒頭のアフリカ象のハンティングと、石坂浩二と渡辺健に見送られて、飛び立つ飛行機は、何ともペラペラで薄っぺらい。(「カムイ外伝」のシャチか、「火天の城」の巨大石と並んで、今年の三大CGNG賞か。ああ「GOEMON」の馬は、もっと凄かったか・・・。) 残念だなあ。最近の邦画は映画館で見る人間を考えていないのか…。
日本一不幸せが似合う女優、木村多江が、御巣鷹で夫を亡くし、アル中になる母親の役で出演。最優秀助演女優賞というか、不幸女優番付では、横綱だ。
  御巣鷹山の事故と、社内の暗部を描いており、JALが目の敵にしているので、放送局も新聞社(新聞社にとってTV局は利権だ)も及び腰になるので、製作出資もしないし、扱いも小さい。角川映画サイドも、登場人物、団体は全て架空のものであり・・・とかなり気を使っている。(プログラムの表4に入れているのは初めて見た。)しかし、角川映画は、頑張ったと思う。JALの再建案が取り沙汰されている今、ジャストなタイミングだ。経営悪化に、労使対立も一つの原因かもしれないが、半官半民という聞こえはよいが、鵺か蝙蝠のような化け物を、政官が私腹を肥やす隠れ蓑として使っていたことが元凶ではないか。
  一度潰した方がいいと思っていたが、そのことによって、リセットして、犯罪者たちを不問にしてしまうよりも、全てを曝して、徹底的に膿を日光消毒させてから結論を出す方がいいのではないか。民主党政権が、どこまでやるのか。期待がどんどん萎んできているが・・・。
  

2009年10月26日月曜日

生誕100周年。太宰治の容姿が、松本清張だったらと考える。

   阿佐ヶ谷ラピュタで、昭和の銀幕に輝くヒロイン【第49弾】雪村いづみ
   59年東宝本多猪四郎監督『こだまは呼んでいる(608)』
  (雪村NA)ブドウで有名な甲府盆地。その西のはずれにある小さな駅(韮崎駅)。その駅前から紅葉沢、青霧峠を経て宿木村までのバスが私の担当です。運転手のナベさん・鍋山精造(池部良)は、とても怒りん坊で、怒鳴ってばかり。洗濯物を干している鍋山を笑うバスガールの三好タマ子(雪村いづみ)。買い物があると言うタマ子に、出発時刻に遅れんな!!と鍋山。この辺りのバスガールはメッセンジャー。山中の人々から街での買い物を頼まれるのだ。大荷物のタマ子が、平沢書店に入る。そこの若旦那の健一(藤木悠)は、頼まれていた本と、「妊娠から出産まで」など花嫁読本三冊を出す。「君が読むの?」「いや頼まれものですよ」「はいこれ」健一が奥を窺うようにして、週刊明星をくれる。「先週も、先先週も貰ったし、悪いわ…。」「いいんだよ」バスの営業所に戻るタマ子を店の外まで送り、手を振る健一。
  発車時刻が過ぎていて、鍋山は、「ばっか野郎!!早く来い!!」と怒っている。何とか大荷物を載せて、タマ子「発車オーライ!!」馴染みの三人組の登山客(加藤春哉、重信安宏、大村千吉)や、近在の人々で席は埋まっている。平沢書店の前を通ると、健一が手を振っている。「本屋の息子、おめえのこと好きなんじゃないか?」「そうかも知れないわね。」「ばっか野郎!!自惚れるんじゃねえ!」鍋山は、何でも「ばっか野郎!!」だ(苦笑)。
  登山客たちが、タマ子と盛上っているのを、癪に障った鍋山は、わざと荒い運転をして、席から転げ落ちさせる。紅葉沢の停留所で、半分ほどの客が降りる。近くの子供が、峠に父ちゃんの弁当を届けてくれとタマ子に手渡す。青霧峠までは難コースだ。勿論舗装もされていない、狭い山道を、タマ子はドアを開け、ステップに立って、目視しながら誘導する。青霧峠では、登山客が降りて行く。タマ子は弁当を置く。その先で、上りのバスがやってくる。ギリギリ擦れ違える場所までバックさせるタマ子。
  終点の宿木村に到着だ。集まって来た村の主婦たちに、頼まれていた買い物を配る。花嫁読本の持ち主がいない。主婦たちの後ろから、子供が私よと答える。タマ子が目を丸くすると、後ろにアヤが恥ずかしそうに立っていた。言いだし難くて、妹に受け取らせようとしたのだ。主婦たちは、アヤは、タマちゃんと学校一緒だったんでないのかいと口ぐちに言う。
  タマ子は、鍋山にお昼食べてきますと声をかけ、「良かったらナベさんも、ウチで食べませんか。どうせ、パンを齧るんでしょ。チョンガーは哀しいわね。」と言うが、鍋山は、「うるせー。ばっか野郎!!」と答える。停留所前の籠吉の爺さん(左ト全)が、「やられたのう。」
  タマ子の実家は美男製造所と看板が出ている床屋を菊三(沢村いき雄)おせん(千石規子)が開いている。村の青年団の為さん(由利徹)と勝ちゃん(南利明)が客として来ていた。「おお、タマちゃん。祭りに、京ちゃんが帰ってくるらしいよ。」「いやー、今年はワシが龍神さまをやるから、タマちゃんをパックンしてやるよ。」と勝ちゃん。龍神に頭を咬まれると、幸運が来るという言い伝えなのだ。おせんが、「厚揚げと牛蒡煮たのが戸棚に入っているよ。」ご飯をよそい、タマ子が食べ始めようとすると弟の富雄(伊東隆)が帰ってきて、厚揚げを捕って食べる。「富雄!!!お祭りの時、お小遣いあげないわよ!!」「えーっ!!じゃあ返す。」食べ掛けの厚揚げを食器に戻す富雄。「汚いわね。」タマ子は、お膳に食べ掛けを置く。
  その頃、籠吉では、コッペパンをそのまま齧っている鍋山。鍋山は、ここに下宿しているのだ。籠を編む爺さんに婆さん(飯田蝶子)が「タマちゃんも年頃になったね。19組目の縁談を纏めたいね。わたしゃ、死ぬまで30組の縁談を纏めたいだよ。」「あれ、18組だろ。馬鹿を言うでね。」「そんなことはないよ。19組目がタマちゃんで、20組目が鍋さんだ。」「おめえ、記録を見て見れ。」不機嫌そうに聞いている鍋山に、「早く所帯を持て。35歳にもなって、独りは心配だ。」と言う。「いや、兵隊に行って、その後抑留されていたからしょうがないだろ。」「あんた、カタワじゃないだろうね。」「馬鹿なこと言うなよ。」「兵隊に行っていた人はあるっていうからよ。大丈夫なんだね。安心したよ。あんた、お祭りで、龍神さまに噛んでもらうといいだ。」
  

平沢健一(藤木悠)孝子(沢村貞子)

  池尻大橋のIさんの事務所で打合せの後、飯田橋の出版社に、4コマ漫画の企画提案。
  神谷町の元会社で、百周年企画の打合せ。
  渋谷のライブハウスの社長との打合せ。
  何だか久しぶりに仕事をしている気分だなあ。

  新宿ピカデリーで、根岸吉太郎監督『ヴィヨンの妻  ~桜桃とタンポポ~ (609)』
   激しい津軽訛りで女中のキエ(小林麻子)が、「譲治さん、この円盤を回転させて、少しでも逆に回るとその人は地獄サ堕ちるっていう…」。幼少の譲治廻す。逆に戻る円盤。「いゃあ、強く回しすぎだわ」もう一度回してみるが、やはり、少し逆に回る円盤。
   昭和21年(1946年)12月、成人の大谷譲治(浅野忠信)が、何者かから必死で逃げている。大谷譲治と表札が掛かる一軒の家に走り込む。襖が開き、妻の佐知(松たか子)が顔を出す。「起きていたんですか。」「いえ、今目が覚めました。」「坊やは」「少し熱があります。」「医者に診て貰った方がいいでしょう」「医者にかかるお金が無いのです。お金をお持ちですか。」「何で?」「久しぶりにお帰りですので…。食事を召しあがっていないんでしょう。戸棚にお握りが入っています。」
   外で、  「先生!いい加減にしてください。返して下さらないと、警察に届けますよ」と女の声がする。「こんなちゃんとしたお宅があるのに、あんたはひどい人だ。泥棒だ!!」と男の声もする。「何を言うんだ。失敬な事を言うな。ここは、お前たちの来るところでは無い。帰れ! 帰らなければ、僕のほうからお前たちを訴えてやる」と息巻く大谷。
   戸を開けると、吉蔵(伊武雅刀)と巳代(室井滋)の夫婦だ。「あんたは、酷い人だ。もう警察に届けるしかない!!」何を言うんだ!!と懐から、ペーパーナイフのような刃物を振り回し、逃げていく大橋。追い掛けようとする夫婦を押し留め、大橋の妻の佐知だと名乗り、主人が大変ご迷惑をお掛けしているようで、申し訳ありませんが、ご事情をお聞かせ下さいと、家に二人を上げる佐知。
  火の気は全くなく、赤貧洗うような部屋を見渡して、おいくつですかと尋ねる?。「主人は30才で、私は4つ下です。」と聞いて、この窶れた女の年齢に驚く。二人は、中野で小料理屋椿屋をやっている。昭和19年の春、どこかでこの店は闇酒を扱っていることを聞きつけた大谷がやってきた。焼酎を飲み、百円札を出し、お釣りをと言うと、預かっておいてくれと言う。しかし、それ以降、3年間、一度も何だかんだ言って勘定を払ったことはなく今日はことあることか、巳代が仕入れ先への金を計算していたら、五千円を奪って逃走したのだと言う。やっとのことこの家を調べてやってきた夫婦に、何度も頭を下げ、翌日、自分が店までお金を持っていくので、警察に届けるのを一日待って貰った。
  翌日になっても、5千円の当てなどないまま、佐知は、息子の直治(榎本陸)を負ぶって、中野新王マーケットにある椿屋を訪ねる。佐知は苦し紛れに嘘をつく。今日中にお金が届く当てがついたが、それまで、自分が人質となって、店を手伝うと。掃き溜めに鶴のような、佐知の美しさに、椿屋の客たちは、大喜びだ。さっちゃん!さっちゃん!と呼んで、酒をお代わりし、彼女を目当てに長居をし、彼女にチップを渡す。武蔵小金井の家で、子供を育て、夫を待つだけの生活だった佐知は、喜びをかみしめる。
   そこに、クリスマスの帽子とマスクをした大谷が、毛皮を着た女、環(山本未来)と一緒にやってくる。女は、吉蔵を連れ外に出て、5千円を支払った。佐知は、吉蔵に、大谷の借金は大負けに負けて幾らになるかと尋ねて、その2万円を払うまで、ここで働いて返すことにする。


  根岸吉太郎、田中陽造による太宰治、何の文句があろうか・・・。物凄く楽しみにしていただけに、最後まで物足りなさが残る。カメラか、美術か、役者か・・・。うーん、我々の世代には、昭和の映画は作れないのかもしれないな。プログラムの中に、成瀬巳喜男の「浮雲」を、かなり研究したと自慢げに書いてあったが、哀しすぎる。

2009年10月25日日曜日

奥多摩に行く筈が、天候悪く映画館に。

   京橋フィルムセンターで、生誕百年 映画女優 田中絹代

   44年松竹京都溝口健二監督『宮本武蔵(605)』
  宮本武蔵(河原崎長十郎)を追う者たちがいる。吉岡一門の門弟たちた。一乗寺での果たし合いを約して引き上げる武蔵の後を追う野々宮信夫(田中絹代)と源一郎(生島喜五郎)の姉弟。父親の仇を討つために弟子入りしようと都までやって来たのだ。嵯峨の寺で、菩薩像を彫る武蔵に、頭を下げるが、明日をも知れぬ身の上だと言って断る武蔵。

  兵法は道だ。武士への道だ。仇討ちなための方便ではない。

   佐々木小次郎(中村翫右衛門)野々宮源一郎(生島喜五郎)野々宮信夫(田中絹代)

   吉川英治版ではなく、菊池寛版。どっちも原作を読んでいる訳ではないが、監督自身か、スタッフか、モチベーションの低さがひしひしと伝わってくる映画。戦時下ということだけを理由にしてはいけないが・・・。


   45年松竹京都清水宏、溝口健二、マキノ正博、大曾根辰夫、高木孝一、田坂具隆、市川哲夫監督
  『必勝歌(606)』
  南方だろうか小隊長(佐野周二)が、部下の兵士たちと和やかに話をしている。
  模型飛行機を作る少年三平(島田照夫)が、壊れた模型を直しに戻ってくる。三平の家は竹細工をやっている。直して貰おうと子供たちが待っている。父親(大矢市次郎)は、「三平。先生に聞いたが、お前は少年飛行兵を志願したそうだな。何でワシに言わなかった?反対されると思ったか?」黙っている三平に「ウチが貧乏だからか?子供一人だからか。父ちゃんは、その話を聞いて嬉しかったぞ。お国のために立派に死んでこい。」にっこり頷く母親(沢村貞子)。
大川老人(小杉勇)
   酔っ払った工員・川西(三井秀男)工員・中村(斎藤達雄)が、満員の電車の中でふらふらしている。席を譲って貰った川西が、隣の陸軍中尉(高田浩吉)に寄りかかる。気にした中村が何とか川西を起こそうとするが、駄目だ。中尉は川西に肩を貸す。降りしな中尉は、中村に、こういう時期ですから身体を労ってやって下さいと声を掛ける。

雄一少年(沢村アキヲ)その父(河村黎吉)

信江(高峰三枝子)が見合いから帰ってくる。義姉の律子(轟夕起子)に報告する。高商を出て銀行員をしているが、なかなか武骨で、気に入ったようだった。父(坂本武)と母が帰ってきた。義姉・律子(轟夕起子)子守歌をうたふ女 (田中絹代)
海軍中尉・一野誠(上原謙)その母(吉川満子)妹・弓子(星美千子)大河内曹長の父(荒木忍)田中中尉の老父(藤野秀夫)

  うーん。国策映画ともプロパガンダ映画とも言われ、参加巨匠監督の恥部とも考えられるが、これによって国民が騙されたというよりも、昭和19年救いのなかった日本国民が求めていた気分に応えた映画じゃないだろうか。1億総懺悔ということではなく、この気分を後味悪く生きていくしかない筈が、簡単に総括してしまう安直な日本人のメンタリティ。

  渋谷ユーロスペースで、緒方明監督『のんちゃんのり弁(607)』
   フライパンで炒り玉子を作り、ホウレン草のお浸しを作る永井小巻(小西真奈美)。化粧をし、スーツ姿だ。娘の乃里子(佐々木りお)は自分で幼稚園の制服を着ている。夫の範朋(岡田義徳)は前夜飲んで、そのままだらしなく眠っている。その前のテーブルには小巻が署名捺印した離婚届が広げてある。小巻は、乃里子の弁当が出来ると、手を引き家を出る。両手両肩随分多くの荷物だ。幼稚園のお見送りの場所を素通りし、駅に向かう。範朋が猛スピードで自転車を漕いでいる。
  小巻が駅で切符を買った所で、範朋が追い付く。乃里子は無邪気に「お父さん!!」と喜ぶが、小巻は相手にしない。小巻を追って改札を通ろうとする範朋の前で、改札は閉まる。電車に乗り、窓の外を見る小巻の目に、自転車で電車を追い、笑顔で手を振る範朋の姿がある。腹を立てる小巻。
  墨田区京島の商店街を歩いていると、八百屋の主人(徳井優)や、買い物のおばちゃんたちに取り囲まれ、「原さんのお嬢さんじゃないの?」「今は違う名字よね。里帰り?」「旦那さん、何だか有名な小説家なんでしょ、いいわね」と離して貰えない。実家には原着付け教室と看板が掛かっている。小巻の母フミヨ(倍賞美津子)が着付けを教えながら一人で暮らしているのだ。「結婚する前から、あの男には甲斐性がないと言ったでしょ。」「やっと分かったのよ」「どうやって暮していくの?」「すぐに仕事を探すわよ・・・。」

  原作はモーニングに掲載中、結構気に入って読んでいた。緒方明も気になる監督の一人だ。小西真奈美頑張っている。時に同性から嫌われるだろう部分も含め、許してしまう位好きなタイプだろう。そんな彼女の31才のシングルマザー、娘のコブ付きだなんて母子共々メロメロだ。な筈なのだが、何だか物足りない。もっと激しく泣いて、笑って、怒って欲しかった。何だか小西オーラに、監督遠慮したんじゃないだろうか。もったいないなあ。

  久し振りに、博華で餃子とビール。隣の同世代で夫婦ではないと思われる男女が、何人かの役者の名前が出てこないなあと話し合っている。あぁ、余計な御世話だが、教えてあげたい・・・。男女でなければ、教えるのだがなあ(苦笑)