2009年3月14日土曜日

酔っ払い日記。

    朝から池袋新文芸坐で中村錦之助特集に行こうかと思っていたが、昨日調子に乗って飲み過ぎた所為か、胃腸の調子悪く、午前中は、水だけ飲んで過ごす。
    とはいえ、元の会社の後輩Kの新居にお邪魔して飲み会と言うかホームパーティ。元部下のO夫妻とも去年の正月に地元飲みして以来だろうか。結局調子に乗って、酔っ払ってタクシーで帰宅。

2009年3月13日金曜日

月形龍之介の黄門さまだ。

   池袋新文芸坐で、錦之助映画祭り(パート1)
59年東映京都松田定次監督『水戸黄門天下の副将軍(145)』
宝永元年江戸城。現将軍綱吉(若山富三郎)の世継ぎに関して、綱吉の母親天樟院が、綱吉の子?に継がせようとするが、そもそも、綱吉は病弱だった兄の綱重が弟に譲ったもので、本来は兄の綱重の子綱豊が次の将軍を継ぐべきと、水戸のご老公の光圀(月形龍之介)は、綱吉に直言した。綱吉は光圀の諫言を感謝し受け入れた。
   数日後、水戸藩江戸上屋敷に、綱吉の使者がやってきた。側用人の大田原伝兵衛(大河内伝次郎)が、慌てて光圀の寝間に行くと高鼾で眠っている。畏れながらと布団をめくると佐々木助三郎(東千代之介)だ。側用人が光圀の行き先を問いただすと、渥美格之助(里見浩太郎)と、神田の丹前風呂に行ったと言う。板前の伊之吉(大川橋蔵)が、丹前風呂に入ると、大阪商人の与惣右衛門(進藤栄太郎)がいる。主人の商人臭さが嫌で、店を飛び出して来たので、運が悪い。直ぐに湯船を飛び出して、二回に上がり、湯女と酒を飲むことに。そこに助三郎に連れられた側用人にがやって来る。光圀は碁を打っている。隣の卓では格之助が酒を飲んでいたが、側用人を見て背中を向ける。与惣右衛門が、光圀たちの碁を覗き込んでへぼな手だと貶しながら、ご隠居さんは江戸のお人だっかと尋ねる。水戸の在だと答えると、水戸と言えばご老公だが、あの方は阿呆だっせと言う。伝兵衛は切り捨てようとするが、助三郎に止められる。光圀公はなぜ阿呆ですか?と本人が尋ねると、光圀公は、病弱な兄に水戸藩主の座を譲られた代わりに、自分の後を兄の子に継がせ、自分の実子の松平頼常(中村錦之助)を兄が勤めた高松藩12万石の藩主にしたが、頼常は乱心して家臣たちは困っていると言う。諸国漫遊や書物の研究の前に自分の子を何とかしなはれと言いたいんやと言われる。水戸様贔屓の伊之吉は、光圀公の悪口は俺が許さねえと言って、与惣右衛門を殴る。考え込む光圀。
  光圀、伝兵衛、助、挌の4人は、金毘羅詣でに行く水戸屋と言う大店のご隠居と番頭、小者を装い、東海道を下る。大井川の増水で、川留めになり、島田宿の宿屋かぶと屋に逗留することに。助と挌は、夕食に酒が欲しいが伝兵衛に睨まれ、夜外出することに。宿の主人が裏の蔵で手慰みに博打をしないかと声を掛けている。伊之吉が行くと、既に与惣右衛門が一人勝ちだ。伊之吉は、直ぐに所持金が無くなり、商売道具の包丁を担保に金を借りようとするとかぶと屋の番頭(杉狂児)は、包丁で脅されたと思って大騒ぎになる。料理人だと言うと、与惣右衛門が料理を作ってみろと言う。作った料理に鼻くそをまぶして与惣右衛門に出す伊之吉。塩加減が絶妙だと舌鼓を打つ与惣右衛門。ことの経緯を、光圀、伝兵衛は見ている。
   8人の武士たちが御用旅だと言って、かぶと屋にやってきた。急に狭い部屋に他の客と一緒に押し込められる光圀たち。武士たちは、高松藩江戸表の加藤玄蕃(加賀邦男)一派で、実は光圀たちが東海道を下ったという情報を得て、追跡してきたのだ。狭い部屋から、助と格は抜けだし、飲みに出ると、
芸者のおはる(丘さとみ)が声を掛けてくる。座敷に上がり、芸者を数人上げて飲んで騒ぐ二人。翌朝、勿論勘定は足りない。助三郎は、おはるに、金毘羅参りの帰りにお前を向かいに来る、そうしたら夫婦になろう、それまで勘定を立て替えておいてくれと頭を下げる。気のいいおはるは承諾する。しかし、通りがかった伊之吉が懐から1両2分出し、博打で儲けたあぶく銭だと言って払ってくれた。宿に戻り、川止めも終わったので旅立とうと支度をしていると、旅支度のおはるがやってくる。大店の手代さんが夫婦になろうと言ってくれたら、前借も棒引きの上に附いて行けと店の主人が出してくれたと嬉しそうに言う。事の次第を知って、伝兵衛は怒るが、光圀は同行を許す。
   鈴鹿の山で、加藤玄蕃が山賊の権六(阿倍九州男)たちに、一行を片付けたら礼金を弾むと言っている。光圀たちに立ちふさがる権六たち。分かったと言い、着物を脱ぎ始める光圀。光圀に言われて伝兵衛も渋々脱ぎ始める。胴巻きに87両入っていると聞いて色めく権六。その胴巻きを奪って逃げだす助と格。追い掛けてくる権六たちを少し離れた林の中に誘い込み、30人をあっという間に叩きのめす。おはるは、愛しい助三郎のために、我を忘れて、伝兵衛の小刀を取って、助三郎を追う。おはるの声を聞いて、二人は倒れて気絶している振りをして、天狗が現れて皆を気絶させたのだと嘘をつく。更に山中で玄蕃の手の者が、光圀を矢で射かけようとしたが、小銃で撃たれ倒れる。撃ったのは、何故か商人の筈の与惣右衛門だ。
   一行は大坂に入り、高松藩の大坂蔵屋敷を見張る助と格。加藤玄藩が蔵屋敷に入り、大阪留守居役の中川与惣右衛門に、光圀一行が、頼常乱心を確かめに高松に向かっていると報告している。大坂商人の筈の与惣右衛門は、実は高松藩の大坂留守居役だったのだ。伝兵衛は、大坂城城代家老の土岐伊予守(三島雅夫)に光圀の親書を持参する。頼常乱心を確認した際には、自ら実子を殺害し、腹を切るとしたためてあった。内容は知らないと言う伝兵衛に、ご老公のご懸念、一身に代えても承知いたしましたと頭を下げる伊予守。翌日、四国に出る船を見送る伊予守の姿がある。
    高松城の屋根に登り「遠くまでよう見える」と無邪気に手を叩く頼常の姿がある。腰元の鞆江(美空ひばり)の名を呼び、ここまで登ってまいれという頼常。乱心した殿様の姿が痛ましいと涙を浮かべながら、優しくやりとりをする鞆江。座敷では城代家老の佐伯将監(山形勲)は、加藤玄蕃の報告を受けている。あの通り、乱心した頼常を隠居させ、まだ幼い義理の弟の頼芳(久保雅計)に継がせ、藩政を一挙に操ろうと陰謀を巡らしていたのだ。幕府の間者が藩に潜入しているという情報もあるので、光圀一行を間者として葬り去ろうと命ずる。光圀一行は、金毘羅様を詣でている。高松藩の輿が来て、頼常が乗っているかと眺めていると頼芳が、病気の頼常の代参にやってきたと聞いて、高松藩に乗り込むことを決める。
    鞆江は、大坂蔵屋敷留守居役の中川与惣右衛門の娘で、頼常を守るために遣わされていたのだ。父親に乱心は真だと報告する鞆江。しかし、頼常は、藩内で不正が行われていることを暴こうと、乱心しているふりをしているだけであった。その事実を、鞆江にだけは伝える頼常。頼常は、天井に刀を投げる。血が垂れてきた。家老の間者でしょうかという鞆江に、なかなかの腕を持つ男なので違うだろうと言う。鞆江から光圀が高松藩にやってきたと聞いて、父上は悲しむであろうなと言う頼常。
    佐伯将監は、家臣を城に集め、頼常に隠居を迫る。頼常は、乱心が詐病であったことと、それが将監一派の不正を暴くためであったと言い、将監の罪状を上げていく。殿乱心と斬り捨てようと将監が立ち上がった時に、光圀一行が現れる。光圀たちを幕府の間者で、光圀を名乗った不届き者だと、頼常ともども亡き者にしようと、家臣に命ずる。激しい戦いの火蓋が落とされた・・・・。
    月形龍之介の黄門様、後の印籠も出ないが、手に汗握る娯楽時代劇として最高だ。オールスターキャストで美空ひばりの歌も披露。このシリーズ全部見たいぞ!!松田定次監督いいなあ。

      59年東映京都河野寿一監督『風雲児 織田信長(146)』。
      天文20年春、信長の父信秀の葬儀が万松寺で執り行われている。読経も終盤だが、嫡男の信長がいっこうに現れない。信長の妻 濃姫(香川京子)、家臣たち、平手政秀(月形龍之介)森三左兵衛(織田政雄)らはやきもきしている。困り果てたところに、着物を片肌脱ぎ、長い髪を縄で結わえた汚らしい信長が馬で駆け付ける。焼香をと言われ、灰を鷲掴みにして、位牌に投げつける。その目の端に、涙をみとめて、微笑む濃姫。

柴田権六(阿部九州男)佐久間信盛(中村歌昇)林佐渡守(沢村宋之助)山口左馬頭(清川荘司)丹羽万千代(里見浩太郎)蜂須賀小六(戸上城太郎)今川義元(柳永二郎)斎藤道三(進藤栄太郎)

      シアターイメージフォーラムで、WE ARE THE PINK SCHOOL
      70年国映梅沢薫監督『濡れ牡丹 五悪人暴行編(147)』
      夜更け、 砂浜のような所で、少女が焚き火をし、かってこのあたりに墓があった母親に語り掛け、ギターの弦で縛り上げる。暫くの後、二台の車が現れ、ヘッドライトを点滅し合う。女と男が降りてきて、東京、横浜と合い言葉を言い合い、2つに切ったトランプの符丁を合わせてみる。用心深く確かめ初めて、金と覚醒剤の入ったトランクを交換する。その時、少女がいた小高い場所から、男が取引現場の者たちを狙いターを爪弾いている。車が来て、ライフルを持った男が、少女を気絶させ、ギ撃つ。次々に倒れる男たち。待ち伏せした男は現場に降りてきて、倒れている男たちにトドメをさしていく。一人残った女を無言のまま、犯し、金と覚せい剤を奪って消える。
     
     神保町シアターで、東宝文芸映画の世界。東宝千葉泰樹監督『羽織の大将(148)』
     東西大学法学部4年の十文字忠夫(フランキー堺)が寿限無を諳んじながら歩いている。熱中しすぎて、車に轢かれそうになる。顔を上げると、運転しているのは同級生で、成績の最下位を争う北川(藤木悠)だ。北川は関西の大会社の息子で、父親の会社に入社することが決まっている。お互いよく卒業できたもんだと言う北川。就職に行くのだという忠夫を四谷の駅まで乗せてくれる北川。忠夫が向かった先は、古典落語の名人、桂文楽(本人出演)の弟子の桂五楽(加東大介)の家だ。恩師の安藤鶴夫(本人出演)の紹介状を持って弟子入りを頼みに来たのだ。しかし五楽は、大学まで出て落語家になるんじゃないと、内弟子になるには、落語協会の規定で、保証金2万円が必要だと言う。改めて出直ししてくると言う忠夫。
    下宿に古本屋と古道具屋を呼び、一切合財を売るが5000円にもなりはしない。結局北川を訪ね、2万円貸してくれと頼む、簡単に貸してくれる北川。翌日、美寿々亭で、五楽が席亭と、大学出の弟子入り志願者がいたが、2万円と言ったら尻尾巻いて帰って行ったと噂話をしている。そこに、忠夫が現れる。2万円を出し、もう下宿も引き払って来たので、内弟子にしてくれと言う忠夫。根負けした五楽は、弟子入りを認め、小楽という名前をくれた。五楽には、兄弟子で前座の小丸(桂小金治)がいる。弟子入りすれば、稽古をつけて貰えるかと思うと、まずは、早朝起きて、五楽の家の掃除、洗濯だ。内弟子は甘くない。翌日、小丸は、小楽を、美寿々亭近くの中華料理屋大盛軒に連れていく。大盛軒の店員の春江(団令子)は、小丸を気に入り、応援すると励ます。
  何事も要領がよく、器用な小楽は前座での高座もソツなくこなす。しかし、ある日北海道から母親のこう(梅野公子)と妹の勝子(原知佐子)が上京してくる。両親には、大学を出て丸ビルにある法律事務所に勤めていると嘘をついていたので、下宿先と聞いていた家が、師匠の自宅で、落語家の内弟子になっていたと知って母親は嘆く。しかし師匠の五楽は、とりなして小楽を通いの弟子にしてやり、上京して大学に通うと言う勝子と同居させてやる。
   練習熱心だが、横で勉強している勝子は、うるさくてしょうがない。社会科学研究会に入会して、社会の矛盾を変えようとしている勝子は、兄に似て弁が立つ。通常3年掛かる前座を1年少しで二つ目に上がる。女将さんの浜子(東郷晴子)は上等な着物を仕立ててくれた。高座を無事務め、満腹亭に小丸と出掛けると、店の奢りだと言って春江がご馳走してくれた。文楽、五楽の古典落語を継いでいくのは自分たちの使命だと誓い合う小丸と小楽。師匠のご贔屓筋で、北海道鉱山の奥山社長(柳家金語楼)が同郷のよしみで、幟を作ってくれ、ナイトクラブに呼んでくれた。やはり同郷の小結の鉄峰関(里井茂)、芸者の茶良子姉さん(塩沢とき)たちも一緒だ。クラブの舞台に上がって、三題話(毛生え薬、オリンピック、メーデー)を披露する。ちょうど、客席にいた東洋テレビの「とんちんかん大放送」のプロデューサー(岡豊)と放送作家(村上冬樹)は、番組への抜擢を考える。
   小楽は、師匠に、自分にはまだ古典落語の味が出せないのと相談する。今の自分に飽き足らなくなったのは、一人前になった証拠だと新作落語を手掛けることを認めてくれる。一躍マスコミの寵児と持て囃され、テレビ、ラジオでのレギュラー番組だけでなく、CMなどにも出演、人気者となり、高級マンションに住む小楽。北川から突然電話があり、相談があると言う。神楽坂の料亭で再会する旧友。弟子入りの時に借りた2万円を返却するが、それはご祝儀だと北川に言われ、懐に戻す小楽。北川は、参議院議員補欠選挙に出馬するので、応援演説をしてくれと言うのだ。快諾する小楽。その座敷に呼ばれた茶良子と飲み直し、箱根に一泊旅行に出かけることにする小楽。小丸、桂遊太郎(三遊亭歌奴)桂桂馬(佐田豊)ら兄弟子たちが、満腹店に集まって師匠の還暦祝いの打ち合わせをすることになっていたが、御贔屓筋のお座敷を理由に、約束をすっぽかす。更に翌日、美寿々の高座に大幅に遅れ、席亭と大ゲンカをし、出入り禁止となる。執り成そうとした師匠の顔にまで泥を塗る小楽。
    後日、五楽の還暦祝いが行われ、文楽、安鶴先生ら盛大に開かれたが、小楽は欠席し、電報で済ます有様だ。その頃、北川の応援演説会で一席ぶっている。見事北川は当選したが、新聞の1面には、北川亮太郎は5600万で買収をして、選挙違反で逮捕された。小楽は、不正選挙の片棒を担いだと、さんざんマスコミに叩かれる。妹の勝子に、人民大衆の敵で、革命が成立したら、兄さんは、絞首刑になってもおかしくないと言われる始末だ。しかし、そんな声も馬耳東風の小楽。今日も東京放送のピンピンアワーの収録で、孫悟空の扮装をしている。局内で、安鶴先生に会う。君は何をやっているんだと言われてしまう。更に、その扮装のまま警察に北川の選挙違反で、連行される。身元引受人として警察に来てくれたのは師匠五楽だが、これで、師匠弟子の縁を切ると言われる小楽。
   それ以来、小楽のスケジュールはガラ空きだ。東京放送の井口から収録は中止、最後に残った東洋テレビの凸凹横丁も、小楽に相談のないまま、フグに当たって死んだことになり途中降板となった。大家が家賃を催促に来るが、数日待ってくれと追い返す。その時茶良子から電話があり、いそいそと出かけると、旦那にばれたので別れると宣告され、愛の証しだとして指には待てくれた60万円の翡翠の指輪も取り返される。失意の小楽が、屋台で酒を飲もうとすると、先客があり、兄弟子小丸だった。忙しいと見栄をはる小楽に、そんな嘘はすぐにわかる、お前と俺は古典落語を守ろうと言ったじゃないか、お前の腕は俺が一番知っている、お前が心を入れ替えるというなら師匠にとりなしてやると言う小丸。しかし、素直になれない小楽は、兄弟子を罵り、もう落語を止めて俳優になる。ほっておいてくれと言ってしまう。喧嘩の末、歩きだした小丸は車にはねられる。
    病室の小丸の枕もとに、小楽と小丸の母親が立っている。小丸が、うわ言で、ケチン坊のマクラを呟く。母親は、昔からこの子はこの話が好きで、いつも聞かせてくれたと言って泣く。小楽が内弟子になったばかりの頃に、よく小丸が稽古をつけてくれたことを思い出す小楽。師匠夫妻がやってくる。師匠は、妻の浜子に、すぐにこの人に引き取っていただきなさいと言う。項垂れて病室をあとにする小楽。家に帰ると、勝子と勝子の学友たちが、引っ越しの準備をしている。どうするんだと聞く小楽に、兄さん、あたしのことより自分のこと心配しなさいよと言って、出ていく勝子。俺には妹のお前を監督する責任があるんだと言ってみるが、ドアは閉まっている。あてもなく歩いている小丸。ふと満腹亭を見つけて入り、チャーハン、シューマイ付きと春江に頼む小楽。小丸さん、今朝亡くなったんですってねと言う春江。知らなかったの?明後日お葬式ですってと春江。国に帰って、県庁に勤める従兄と結婚するのだと言う春江・・・。
    小丸の葬儀に、師匠の家に行く。敷居が高く中に入れずウロウロしていると、文楽が通りかかる。おめえは、大ションのアバラカバッスン(大学での小便垂れの・・・意味不明?)じゃねえか、早く線香上げてやれと声を掛けてくれ、ようやく霊前に出る小楽。憮然とした師匠たちの前で、ケチン坊のマクラを話し始める小楽。途中から涙が止まらなくなる。頭を下げ、帰ろうとする小楽を、女将さんが、私が師匠に謝ってあげるから帰っていらっしゃいと言う。師匠も、周りにいる弔問客に許してやってもらえるだろうかと声を掛ける・・・。
   美寿々亭、二つ目桂小楽の高座だ。満員の寄席で笑いを取る小楽。スーツケースを下げた春江が入ってきた。小楽の姿を寂しそうに見つめ、春江は美寿々亭を後にする。
   去年の「落語娘」への失望と正反対な出来だ。フランキー堺の芸達者振りは、勿論だが、桂小金治よかった。本当に落語家だったんだなあ(笑)。笑って泣かせる、娯楽映画の王道だ。

   神保町の居酒屋の4階で、後輩Kと飲んでいると、先輩Kが途中参加し、飲む。この2、3日夜映画を見るので酒飲んでなかったからでは無いと思うが、かなり酔っ払う。

2009年3月12日木曜日

ララピポの撮影シーンは流石に地獄のようだったろう。

     朝から荻窪税務署、若干待ったが、順調に確定申告完了。ついでに二年遡っての医療費還付も申告。自分は家で、PCの国税庁の申告のページに入力して、自動計算なので、プリントアウトして、領収書やら大量に添付するだけだし、会社の経費計算と同じで、全部済ませて行ったので、確認して貰って提出するだけだが、年配の方で、税務署にバラの領収書持ってきて、手計算、直筆記入を始めるのも多く、多分年金やら、不動産やら、介護やら控除になるならないで、大変なことになっている。また、そういう年齢層は係員の話を聞かない(苦笑)。
     政治家は、減税やら補助金やら得意げに語るが、こうした申請やら控除の仕組みやら、もっと簡単にしないと、片手落ちだ。役人は自分たちの手間を減らしつつ、手続きを面倒にして、手のこりを増やそうとしているのではないか。来年は絶対eーtaxで青色申告だっ。

     シネマート新宿で、新東宝大全集。50年新東宝小津安二郎監督『宗方姉妹(142)
     宗方節子(田中絹代)は京都大学医学部を訪れている。内田教授(斎藤達雄)は、父の忠親(笠智衆)の古くからの友人だ。父は長くてあと1年。半年くらい覚悟しておいてくれと言う。節子は、このことを忠親と、妹の満里子(高峰秀子)には、黙っていることにした。その頃、父の家に神戸に住む田代宏(上原謙)が来ている。満里子がお茶を出すが、奔放な今時の娘だ。田代は、かって節子の恋人だった。しかし田代は、仕事でフランスに行くことになり、節子は、三浦(山村聡)と結婚した。三浦は現在失業中であり、鬱屈して酒浸りの生活をしている。猫を異常に愛している三浦。京都を訪ねた帰りに、奈良の寺院を回る姉妹、変わらない美しさを節子は愛しているが、毎回、寺社仏閣廻りなので、満里子は嫌気がさしている。
   節子はバーアカシアを経営している。そこには、店で働く前島(堀雄二)は、戦中は特攻隊に志願し、戦後は、競輪をしたり、180度違う生活をしている。満里子は前島と遊び歩いていたが、京都の父の家で会った、落ち着いて優しい田代に惹かれて、田代が上京した際には、突然、田代の宿を訪問して、食事を奢らせたりする。満里子は、姉が何故、田代と別れ、三浦と結婚したのか不思議に思っている。更に今の陰鬱とした三浦を立てて尽くす姉の気持ちが分からない。上京した折に、田代は、アカシアで節子と会い、店のことで困っているという相談にのり、お金を貸してやる。
   しかし、そのことは、三浦の気持ちを傷つけ、お前と田代の間には何かあったんだろうと絡み、挙句は節子を叩く。節子は三浦に詫び、田代に金を返し店を畳むことにする。満里子は、そんな節子が歯がゆくてしょうがない。お姉さんは、何もかも古すぎると言うと、あなたが、思っている新しさは、目新しいスカートみたいなもので、来年には古くなっている。前島だって、特攻隊と思ったら、競輪だ、自由主義だと、世間の流行に振り回されているだけだ。本当に、新しいものは、いつまで経っても古くならないものだと答える・・・・(to be continued)

   小津論は、ともかくとして、最近はなるべく見ないようにしていた。小津魔術というか、作品の登場人物の物の見方や生き方、はたまた、生活スピードまで、影響されやすい自分は、ガンガン侵食されてしまう恐怖があるからだ。20代前半の自分の理想のカップルは、「東京物語」の笠智衆と東山千栄子演じる老夫婦で、海を見ながら、船が行くのう、そうですねという会話だけで生活するというモノだった。枯れ過ぎで、50になった今でもまだ、その境地には達しないのだった。久し振りに見て、少し冷静に見られるようなったかもしれない。よかった。しかし、「新しい物は、いつまで経っても古くならない」。いいなあ。「かっこいいものは、なんてかっこ悪いんだろう」と並んで座右の銘としよう。

     渋谷シネクイントで、宮野雅之監督『ララピポ(143)』。
     月収15万円のライター杉山博(皆川猿時)は、全くモテず、最近は引き籠もり、上の階のチャラい男が毎晩違う女を連れ込むのを盗み聞きし、自涜に耽っている。ある日、彼が自棄酒を飲んでいると、隣に不細工な娘玉木小百合(村上知子フロム森三中)に声を掛けられ、小百合の部屋で5回もしてしまう。しかし、終了すると我に返り、私たち釣り合いがとれていて、似合いのふたりだと思うと言われてマジに殴って帰る。
    猿時の上に住む男は風俗のスカウトマンの粟野健治(成宮貴寛)。今日も、美人だが、負のオーラを放っているデパガのトモコ(中村ゆり)に声を掛ける。どん底の生活から抜け出したいトモコは、粟野の言うままに、セクシーキャバクラから、抜きキャバ、ヘルス、AVと転落の一途だ。
   カラオケボックスの店員青柳光一(吉村嵩)は、ボックス内で売春する女子高生や買春するサラリーマン親父たちを見て、怒りで爆発しそうだ。彼の脳内では、正義の味方Bマンが、最低な男たちやコギャルたちを叩きのめすのだが、現実には隣家の娘(インリン・オブ・ジョイトイ)を盗み見るだけで股間は大爆発だ。粟野はある日熟女女優を担当しろと言われる。待ち合わせにやって来たのは、髪は爆発、化粧もせず生活感丸出しのおばさん佐藤良枝(濱田マリ)だ。無理矢理ラブホテルに連れて行かれ絞り取られる粟野。粟野は、トモコのセクキャバ時代からの客(杉作J太郎)がストーカー化し付きまとっているのを脅し、公務員だと知って強請ることで、高級マンションに引っ越す。粟野が居なくなったことで、盗聴出来なくなった杉山は、再び小百合の部屋を訪ねる。しかし、そこには郵便局員の40男(中村ゆうじ)がいる。お似合いのカップルだと言う男に飛びかかり組み合いになっていると、私の為に喧嘩をしないでと泣き出す小百合。杉山と男は脱力し、男は逃げ帰った。倒れたままの杉山の上に乗り、優しく私も寂しかったのと甘える小百合。小百合に馬乗りになって首を絞める杉山。
    青柳は、チンビラに女子高生たちがボックスで売春するのを黙認するよう強制される。アナルでやらせろとしつこい中年男(蛯子よしかず)を止めなかったため、チンビラにそんなにアナルをやりたかったら、こいつとやれと、中年男に釜を掘られる苦痛と屈辱に遭う・・・・。

    伏線も多く、時制も前後する。その複雑さは、ケラの「罪とか罰とか」ほどではないものの、中島哲也監督が書いたという脚本は、悪くない。しかし、出演者によって、スクリーンの温度がすこしずつ違い、テンションが上滑りして見えたりする。長編初監督という宮野監督の、うまく全体をいい話として纏めようとした演出が、ちょっと裏目に出た気がする。しかし、80年代のディスコサウンドをうまくパクった音楽は、流石CM業界、リフや、裏メロや、サウンドが、それぞれ、これはあれあれ!!この曲はあの曲のあそこ!!!とか、ダレそうになると、統一したトーンで最後まで引っ張って見させた。次の映画を見たいなあと思う。個人的には、「パッチギ LOVE&PEACE」の中村ゆりが、転落していっても決して汚れないAV女優をリアルに好演。濱田マリの熟女AV女優のゴミ屋敷女も。女ばっかり褒める。

    シネマート六本木の方で、新東宝大全集60年新東宝中川信夫監督『地獄(144)』
    大学の教室、矢島教授(中村寅彦)は地獄の思想と題して講義をしている。清水四郎(天地茂)は最上段で憂鬱そうに聞いている。隣に田村(沼田曜一)が座っていて驚く。田村は昨日の男は死んだぜ。君が教授の娘の幸子(三ツ矢歌子)と婚約した記念すべき日にと言って笑う田村。昨夜のこと、矢島教授の家で四郎と幸子はキスをしようとするが、教授と夫人の芙美(宮田文子)が来る気配に離れる。甘やかして育ててしまったが幸子のこれからを宜しく頼むと言う教授と、あなたも一層勉強して主人のように立派な研究者になってねと夫人。皆は、部屋の隅に田村がいるのに気がついて驚く。勝手に入ってきたことを咎める矢島に、声を掛けようと思ったのですが、声を掛けてまた居留守を使われても困りますからと開き直る田村。友人の清水と幸子さんの婚約を祝って乾杯したいところですが、時間もないので、借りた本だけお返して帰ります、車で来ているので送っていくと強引に四郎を連れ出す田村。
   車の中で四郎に金を渡そうとして断られ、下宿代だって相当溜めているだろうと言う田村。ちょっと寄りたいところがあるので回り道をしてくれと言う四郎。しかし、暗い裏通りを走って行くと、酔っ払って道の真ん中を歩いてきた男をはねてしまう。自首しようと言う四郎に目撃者もいないし、随分と酔っ払っていたのだから分かりゃしないし、自業自得だと言って押し切る田村。はねられた男は権藤組の幹部で志賀恭一(泉田洋志)。実は恭一の母親やす(津路清子)が、事故を目撃し車のナンバーも覚えていた。警察にも権藤組にも、そのことは伝えず、車に乗っていた二人に直接復讐しようと恭一の情婦の洋子(小野彰子)に言うやす。
    目撃者も無く死んだのがヤクザだと聞いて、心配することはないだろと四郎に言う田村。しかし、良心の呵責に耐えられないと言う四郎に、お前と俺は一蓮托生で、勝手なことは許さないと田村。苦悩しながら下宿に戻った四郎を由紀子が待っていた。相談があると言う由紀子の話を遮って、自分が田村と乗った車が死亡事故を起こしたことと、警察に自首すると告白する。自分の父親と相談したらと言う由紀子に、直ぐにでも警察に行きたいので、タクシーを拾って行こうと言う四郎。何か胸騒ぎがするので、電車で行こうと言う由紀子を無理矢理タクシーに乗せ警察に向かう四郎。しかし、由紀子の不安は的中し、タクシーは街路樹にぶつかり、運転手と幸子死んでしまう。田村に自分の言うことを聞かず勝手に自首しようとした報いだと言われる。
    幸子の通夜で、矢島教授は君の責任じゃないと言うが、娘を返してくれと四郎に詰め寄る教授夫人。鬱々とした気持ちで、下宿に帰る気も起きずストリップバーで飲んでいる四郎。ダンサーに声を掛けられ連れ込み宿で泊まる四郎。朝偶然に、四郎の学生証を見た女は、自分の男を殺した一人だと気がつく。女は洋子だった。今晩9時に店に来ることを四郎と約束して 、母親と打ち合わせる洋子。しかし、四郎は夜汽車に乗っている。四郎の手にはハハキトク、スグカエレとの電報がある。
    四郎の父親の清水剛造(林寛)は、養老施設の天上園の園長をしている。養老施設といっても、大広間に全員が収容されているような劣悪な施設だ。四郎の母親のイト(徳大寺君枝)は、少し回復していた。そこにいるサチ子を見て、四郎は驚く。サチ子と幸子(ユキコ)は瓜二つだったのだ。サチ子は、酒で身を持ち崩した画家谷口円斎(大友純)の娘だった。円斎は、地獄絵を描いている。その絵を剛造は寺に奉納するのだと言う。実は、かってイトは円斎の恋人だったが、剛造が無理やり奪ったのだ。そのことが円斎を酒に溺れさせることになったのだ。しかし、剛造は、イトが病で寝込むと、絹子(山下明子)を同衾していた。更に街の食堂、豚酎軒の女将の梅代を3号にしている。絹子は、四郎に色目を使ってくる。しかし、四郎はサチ子に惹かれ始めていた。しかし、刑事の針谷(新宮寺寛)は、サチ子を嫁にくれと剛造と円斎に迫っている。
    突然、田村が、天上園に現れる。旅行がてらやってきたのだと言う。帰ってくれと四郎が言っても、俺と四郎はいつも一緒にいるのだと言う。更に矢島教授が、妻の具合が少し良くなったので夫婦で、講演旅行の途中で、四郎のもとに寄ると言う。絹子が現れ、母イトの容体が急変したと言う。亡くなった母を前に泣いているのは、四郎とサチ子のみだ。通夜の席で、新聞記者の赤川(宮浩一)が医師の草間(大谷友彦)に、イトの死因を尋ねている。狭心症だと言う答えに、誤診じゃないのかと言う。そこに、田村が現れ、ここにいる連中は、皆人殺しだと言いだす。イトを殺したのは、剛造と草間医師、針谷刑事は、賄賂を取って罪を見逃したが、犯人は自殺、赤川記者は、誤報の記事で被害者が自殺、矢島先生とて、マライ戦線で水筒を奪おうと戦友を殺したのだと、四郎と自分だけではないと言う田村。
    天上園の開園10周年記念の祝賀会が開かれる。死んだ魚が流れてくるのを掬っている男から、入所者用の材料として格安で買い上げている剛造。サチ子は、父親の絵の具がきれたので、町に買いに行くことになった。四郎の元には、洋子から、吊り橋で会いたいという手紙が届く。四郎が出かけると橋の上に洋子がいる。どうしても会いたかったという洋子とキスをする四郎。洋子は、ピストルを出し、実は恭一は私の男だったと言って四郎を撃とうとする。しかし、足を踏み外し真っ逆さまに谷底に落ちる洋子。そこに、田村が現れ、ピストルを奪おうとする。しかし、やはり田村も谷底に・・。
    祝賀会で、久し振りの酒に盛り上がる入所者たち。歌い踊り、どんどんと盛り上がっていく。絹子は、納屋でたそがれている四郎を見つけ迫ってくる。とくに拒むわけでもない四郎。しかし、絹子を探しに来た剛造が、抱き合っている二人を発見、三人で揉めていると、絹子は階段を踏み外し死んだ。ここから静かに逃げるぞと言う剛造と付いて出る四郎。剛造、草間、針谷、赤川と四郎たちの酒が無くなった。そこに、かってこちらでお世話になっていたんですよと言って、恭一の母やすが酒を持って現れ、皆に振る舞う。これを飲んでお開きにしようと乾杯して、飲み干すと、皆苦しみだす。毒が入っていたのだ。四郎にとどめを刺そうと首を絞めるやす。苦しんでいるところに、サチ子が帰ってきて、矢島夫妻が、汽車に身を投げて自殺したといいに来る。更に亡霊のような田村がピストルを持って現れ、サチ子を撃つ。入所者たちも、毒で死んだ魚を食べたことで、苦しみながら亡くなった。首を絞められ気を失う四郎。
    四郎が気が付くと、三途の川の前だ。閻魔大王(嵐寿十郎)、八熱地獄(八大地獄)、八寒地獄の数々が、全員死んだ登場人物に襲いかかる・・・。
    まあ、大蔵貢社長の、夜祭りの見世物小屋趣味全開で、採録不可能というか、面倒くさくなって採録意欲喪失な超大作だ(笑)。結末の意味は各自が勝手に解釈するほかはないかもしれないが、一番恐ろしいと思ったのは、かなりの数(a lot of people ララピポ)の役者、エキストラが全速力で渦巻きのように全速力で回転し走っているシーンや、血の海地獄で悶え苦しむシーン。さぞや撮影スタジオは地獄のように阿鼻叫喚だったんだろうな。あんな老人たちをくるくる自転しながら、円を描いて走り続けさせて、大丈夫だったんだろうか・・・。


2009年3月11日水曜日

今日もタンドリーチキンでビール

    テアトル新宿で、ケラリーノ・サンドロウ゛ィッチ監督『罪とか罰とか(139)』
    加瀬吾郎(段田安則)は46歳のしがないサラリーマン。その年になっても未婚で、いつものコンビニで朝食としてパンを買い、店員(市川由衣)に挨拶されることだけが楽しみだ。しかし、彼女の名札の名字が田辺から榎本に変わっていることに気がつくが、万が一、店長(徳井優)と結婚でもしていたらガッカリするので、彼女がいつものですねと、パンと卵一パック、グラビアアイドル雑誌、蚊取り線香、と正体不明な商品を渡されるが、全く違うと言うことは出来ない。満員電車に乗るが、生卵が気になって毎朝のように痴漢も出来ない。車内のグラビア雑誌の中吊り広告の表紙巻頭グラビアの耳川もも(安藤さくら)が少し気になるが、一番下の圓城寺あやめというグラビアアイドルには全く気がつかなかった。駅を降りると見るからに風体の悪い男(緋田康人)に声を掛けられるが、走って逃げる。その際に携帯を落とす。更に、ビルの上から血だらけの女(佐藤江梨子)が落ちて来た。慌てて、携帯を探すと、無い。道路の向こう側に電話ボックスを見つけて渡ろうとする加瀬。しかし、デコトラがやって来て跳ねられる。遠ざかる意識の中で、薄汚れた娘が立っている。流れ出る血と割れた生卵の黄身が道路を流れている。
   立ち尽くしていた娘の名は、円城寺あやめ(成海璃子)、全く売れないグラビアアイドルだ。グラビア雑誌NADESHIKO は、同じ事務所で、実は高校の同級生だった耳川ももだが、中であやめも取材を受けていた。しかし、その写真は上下逆さまな上に鼻の下に何故か黒い鼻クソのような汚れがある・・・。

    角川シネマ新宿で、マキノ雅彦監督『旭川動物園物語(140)』
昆虫と遊んでいる子供がいる。いじめられっ子でうまく周りとコミュニケーションのとれないまま成長、獣医として成長した吉田強(中村靖日)が旭山動物園に獣医・飼育係として配属されてきた。旭山動物園の園長の滝沢寛治(西田敏行)、飼育係は、ゾウとチンパンジー担当の韮崎啓介(長門裕之)、ゴリラとホッキョクグマの担当でゴリラのマリに慕われている柳原清之輔(岸部一徳)、清掃局を志望したが何故か動物園に配属されたという砥部源太(塩見三省)、吃音のひどいトラとアカハナグマの担当の三谷照夫(六平直政)、玄人はだしの絵を描くカバ、ダチョウ担当の臼井逸郎(柄本明)、ベテランのひとくせもふたくせもある飼育係に、事務員の池内早苗(堀内敬子)で全メンバーだ。
   動物園は、入場者は減る一方で、客寄せのためにジェットコースターを入れたりするが、一時的な動員にしか繋がらず、毎年3億の赤字を出していて、予算が付けてもらえないため、施設は老朽化し、修繕費も出ない。今日も、滝沢は、旭川市商工観光部長の磯貝三郎(笹野高史)と会議に出席するが、市長の上杉甚兵衛(平泉成)と助役たちは無関心、他の部署の話で時間が無くなり、最後の動物園の予算請求の時間は、赤字部門としてカットされる。to be continued.

    新宿ピカデリーで、三池崇史監督『ヤッターマン(141)』
ヤッターマン1号の高田ガン(桜井翔)は高田玩具店の長男で発明好き、ヤッターマン2号で彼女の上成愛(福田沙紀)と日夜正義の為に戦っている。今日も、海江田博士(阿部サダヲ)の娘翔子(岡本杏理)の持つドクロストーンを狙うドロンジョ(深田恭子)、ボヤッキー(生瀬勝久)、トンズラー(ケンドーコバヤシ)と、廃墟となった渋谷のみなしごハッチ公前広場で戦っていた。ヤッターワンとダイドコロンの戦いは、ヤッターマン1号が投げた?をダイドコロンが奪いヤッターワンは破壊されドロンジョたちの勝利かと思われたが、ドロンジョが誤って自爆装置のボタンを押してしまい失敗に。3人乗り自転車を漕いで逃げるドロンジョたちは、ドクロベエさまの怒りに触れてお仕置きだ。to be continued.

    いや想像以上に入っていてびっくり。動員的にデートムービーとファミリームービーになっていて、大成功だなあ。

2009年3月10日火曜日

有馬稲子の秋子先生、いいなあ。

   阿佐ヶ谷ラピュタで昭和の銀幕に輝くヒロイン[第45弾]木暮実千代
   61年ニュー東映東京田坂具隆監督『はだかっ子(138)』
   小学6年の三浦元太(伊藤敏孝)は、母のおよし(木暮実千代)と2人暮らし。シンガポールで戦死した父親の大工の弟弟子だった尾沢おじちゃん(三國連太郎)と身重のおばちゃん(小宮光江)家の二階に暮らしている。母ちゃんは、チンドン屋で三味線を弾いたり、道路の建設現場でニコヨンをして元太を育てて来た。ある朝、元太は学校に行く途中、同級生で身体が弱く休んでいる久雄(大場健二)の飼い犬コロが野犬捕獲員(関山耕司)に連れて行かれそうになっている。首輪を付けているが放し飼いにしているから駄目だと言う。元太はコロを何とか助けようと、捕獲員の腕に噛みつく。コロは逃がすことはできたが、捕獲員に捕まる元太。幸い担任の秋子先生(有馬稲子)が現れ助かった。捕獲員を病院に連れて行くために、1時間目は我が家と言う題で作文を書くことになった。その日、学校の帰りに、久雄の家に行くと、久雄のばあちゃん(五月藤江)が、コロが帰ってこない。元太たちは、暗くなるまで探す。大声でコロの名を呼んでいるのと、雑木林からコロが走ってきた。
   家に帰ると、ちんどんやの親分(千秋実)がやってきた。親分は、あさってちんどんやの仕事があると言って、元太に100円くれ、ポータブル蓄音器とお富さんのレコードを置いて行った。近所迷惑になるといけないからと原っぱに行って、三味線の練習をする母ちゃんと蓄音器のねじを巻く元太。翌日、学校の帰りに、コロの散歩をしてやっていると、商店街で母ちゃん達ちんどん屋の音が聞こえてくる。元太たちが、駆け寄ると、母ちゃんは歯痛でふらふらで、歯医者に行くので家にある保険証を取って来てくれと元太に頼む。走り続けて家に帰り、階段を転がり落ちる元太。
   今日はユネスコ村に遠足だ。元太は、クラスの友達と相撲を取り、4連勝だ。秋子先生と対戦することに、先生の胸が綿みたいにフワフワしていて、どうも勝手が違い負ける元太。そのあと、写生をすることに、ユネスコ村には世界中の家が建てられている。元太は、父ちゃんが戦死したインドネシアの家を描くことにする。途中、雷雨になり、離れたインドネシアの家にいた元太は、一人取り残される。雨の中、雨合羽で探しに来る秋子先生。帰宅して、母ちゃんに絵を見せながら、大きくなったら大工になって、母ちゃんにこのインドネシアの家を建ててやるという元太。
    翌日は快晴だ。母ちゃんは、父ちゃんの夢を見たと言う。学校では、「日本と世界」という教科書を使い、ユニセフのこと、戦争をなくすにはどうしたらいいかと授業をする秋子先生。しかし、授業中久雄が、はしかから肺炎になって亡くなったという連絡が入る。みんなで、久雄の思い出話をして、久雄が好きだった「どじょっこ、ふなっこ」をみんなで、歌った。翌日、元太は母ちゃんにコロを飼いたいと言うが、母ちゃんは親子二人暮らしていくのがやっとだから駄目だと言って仕事に出かけた。おじさんが、うちで飼うから貰っておいでと言ってくれ、久雄の家に行くと、久雄の両親が秋田に連れて帰ったと婆ちゃん。しかし、久雄によくしてくれた元太にと言って、久雄が乗っていた赤い自転車をくれた。
   熱い中、ニコヨンの仕事をしていた母ちゃんが倒れた。貧血の難しい病気らしい。元太は母ちゃんに、修学旅行に行くのを止めて、積立金を返してもらうと言いだす。母ちゃんに病院に薬を貰いに行ってくれと言う。元太は、病院に行った帰りに、高木庄平、高木秋子と表札が架かっている家を見つける。生け垣の隙間から覗くと、秋子先生が浴衣姿でお茶をたてている。きれいだなあと眺めていると、何をしていると巡査に声を掛けられる。驚いて逃げようとして薬瓶を割ってしまう元太。元太を連れた巡査が秋子先生の家を訪ね、あなたの教え子ですかと尋ねる。また、秋子先生に助けられる。秋子の父で、かって校長先生だった庄平は、素直な元太を気に入って、お菓子をくれた。秋子先生が、元太を、医者に寄って家まで送ってくれる。修学旅行を止めると言う元太に、おかねの問題なら先生が何とかしてあげると言ってくれたが、元太は、積立金を返してもらえば、母ちゃんが辛い仕事を何日か休めるからと言う。帰ると布団に寝ている筈の母ちゃんがいない。少しして、着物を着て化粧した母ちゃんが疲れた顔で帰ってくる。ちんどん屋のおじさんから金を借りて来たのだ。このことは誰にも言っちゃいけないよと元太は口止めされる。
   学校で親子討論会が行われた。競輪場の近くの子供が競輪は子供を不幸にするので無くしてほしいと言う。地元のボスで、後援会長をしている沖山(織田正男)が、大人には必要なことだと答えるので、元太は、会長は弱い者いじめをする卑劣な人間だと言う。元太をきっかけに、子供たちは沖山をコテンパンに言い負かす。怒って会場を出ていく沖山。元太が家に帰ると沖山が母ちゃんと話している。あんなことを子供が言える筈はないのだから誰かに教えられたのだろうという沖山。かって、母ちゃんは沖山のもとで働いていたことがあったらしい。
   修学旅行に参加しなかった元太と、ねえさんがアメリカ軍人のオンリーさんの竹内ひとみ(大鐘光子)と遊園地に自転車に乗って出かけることにする。遊びまくって帰ろうとすると、自転車が盗まれている。歩いて帰るうちに夜になる。足の豆を潰したひとみのために、トラックにヒッチハイクして帰る。帰ると、下のおばちゃんが産気づいていた。産婆さんを呼んで来てくれと言われて、氷屋の自転車を借りて呼びに行く元太。無事男の子が誕生した。喜ぶおじさん。自分が生まれた時に父ちゃんは、あんなに喜んだかい?と尋ねる元太に、妊娠中に出征して、お前が生まれたという葉書と入れ替わりに戦死の通知が来たのだと答える母ちゃん。
   運動会だ。元太は、母ちゃんに気分がよくなったら絶対来てくれと頼む。おじちゃんも負けたら家に入れないぞと言う。いよいよ、クラス対抗リレーだ。これで勝てばクラス優勝だ。だんだん抜かれてアンカーの元太のときには最下位だったが、元太は頑張って1番になる。喜んでいる元太に秋子先生がやってきて、かあちゃんが倒れたと言う。家に走る元太。母ちゃんは、運動会を見に行こうとして、露地の角で倒れたのだと言う。秋子先生も、ちんどん屋の親方もやってくる。必至に母ちゃんに話しかけるが二度と母ちゃんは目を開けなかった。葬式の間も元太は泣かなかった。母ちゃんの死を受け入れることを拒むように・・。しかし、そのあといなくなったと言う。秋子先生が下のおじちゃんとユネスコ村のインドネシアの家に行って見ると、中で眠っている元太を見つける。秋子先生の胸で泣く元太。
   下のおじさんは、元太を引き取って大工の弟子にすることにした。今日も学校へ走っていく元太。
   
   田坂監督、うまいなあ。元太たち子役の使い方はもちろん、大人たちは脇役ということなんだろうが、それぞれ魅力的だ。特に若くて美しい秋子先生。いいなあ。ニュー東映のオープニング、噴火している火山に、東映三角マークで、東映がニュー東映になっている。すみません初めて見ました。
   昔の子供は、始終走っていたなあ。信じないかもしれないが痩せて背の高かった私も小学生の頃は、一年中半ズボンで、駆け回っては、転んでひざを掏りむいたり、鼻血を出したりしていた。頭が大きかったので少しバランスが悪かったのかもしれない(苦笑)、事実幼稚園の頃から、何度も、団地の階段を転がり落ちたものだ。
  
   その後は、終日家で確定申告の書類作り。医療費の還付のために、領収書の山を整理、計算してみると、今更ながら、去年こんなに払っていたのかと再認識する。うーん。金のかかる身体だなあ。飲み食い、医療費(苦笑)。
   

2009年3月9日月曜日

ハローワークって、なんちゅうネーミングなんだ!!!何でもかんでも腹が立つ(苦笑)

   朝一番から料理、朝食取り二度寝し、職安に遅刻する。かなり待つことに。相変わらず混んでいると言うか、相談窓口の数だけは相当増えている。朝から疲れた顔で、殺気立っているのはこちら側だけで、やっぱり役所だなあ。一年近く通っているが、事務処理のスピードは、変わっていない。職探しを諦めさせて、完全失業率を下げようとしているんじゃないかと思う。ここに来て、前向きになる人は皆無だろうな。やだやだ(苦笑)。
   近くの相談が聞こえてくるが、職安ビギナーらしい女性に、丁寧ではあるんだけど、彼女の悩みの解消は全く望めない。確かに労働基準監査局と職安は違うけど…。まあ、生かさず殺さず、絶望して無気力になって言うとおりになるのを待っている感じ。お代官さまあんまりでごぜえます(苦笑)。
   更に、11時半過ぎには、女性たちを中心に、お昼ご飯か、端の方に集まって気もそぞろ、確かに高層ビルのオフィスは昼時のエレベーターと近くの食堂は大変だけど、我々失業者たちの目が気にならないのか。お前ら公僕だろと、毒づいてしまう。彼らの生活を守るために、毎月失業保険を払い、相談に来ているような気がしてくると言うか絶対そうに違いない。誠に精神衛生的には最悪の場所だ。
立て万国の労働者と失業者!!

    独身美人OLに惣菜を貢ぎ、元同僚と昼食。

    神保町シアターで東宝文芸映画の世界
    61年東宝筧正典監督『トイレット部長(135)』
    笠島昇(池部良)は、国鉄の営繕課長。妻の友子(淡路恵子)との間に、息子の稔(島津雅彦)がいる。営繕課は、駅舎の設計、施工、管理、修繕を行う部署だが、一番中心は何と言ってもトイレットに関する仕事がメインだ。昇は誇りを持って仕事をしているが、友子は外聞が悪いと思っている。昇と友子は倦怠期を迎えている。家を出ると向いの家の主人(松村達雄)がマイカー(マツダ、ミゼット)を買ったので乗って行きませんかと声を掛けてくる。あの満員電車が嫌でマイカー通勤を始めたんだと言い、国鉄職員としては、複雑な心境だ。少し遅刻して出社する。営繕課では、新入社員の三上(久保明)が、この仕事に打ち込めない。ある日、産婦人科医をしている義姉の橋本さわ子(沢村貞子)が学会のついでに笠島家を訪れ、友子に、18歳の娘純子(浜美枝)が地元の沼津で男と付き合い初め、心配なのでかねてより本人が希望していた東京暮らしをさせようと思っているので、この家に下宿させてくれないかと頼む。
    純子は稔の部屋に住むことになる。せっかちでそそっかしい娘だが、物おじしない素直な娘で、稔と直ぐに仲良くなり、昇と友子は気に入った。純子は結婚まで、美容師として自活したいので、美容学校に入学する。入学手続き中の純子を見て西川(桂小金治)は、同じクラスにどうしても入れてくれと強引にねじ込み、それ以来付きまとうことに。三島は昇に相談したいことがあると言う。それなら、ウチに来てゆっくり話を聞くと言う昇。
   純子が夜道を歩いていると、若い男がウロウロしている。話しかけてきた男に空手チョップを喰らわす純子。走って家に入ると男がやってくる。三上だった。笠島家と純子、三上の夕食はとても楽しいものとなった。食後、自室に三上を呼び、今日の要件を尋ねる昇。話にくいので会社て改めてと言う三上に、今のトイレばかりの部署は自分には向いていない、人に話せないような恥ずかしい仕事なので、異動させてくれということかい?と聞く昇。どうして分かるんですか?と尋ねる三上に、15年前の自分もそうだったからさと答える昇。しかし、いつの間にか慣れたこともあるし、やりがいもあると思うようになったんだと昇。まだ一月もう少しやってみて、どうしても駄目なら異動を考えると言う昇に、納得する三上。
   その日以降三上の仕事の取り組み方は変わる。今日もトイレで扉に向かって用を足すか、尻を向けて用を足すかと言うアンケートを回収に出掛ける。しかし、実は純子が通う美容学校だった。純子に会い、こういう人が嫌がる仕事をする三上を見直したと言われて嬉しくなる三上。
   三上は日曜日にデートをしないかと純子に電話をする。映画とか東京タワーとかではないところに行きたいと言われて、隅田川の水上バスに案内する三上。とてもいい雰囲気だったが、三上がかって純子が付き合っていた沼津の彼氏のことを尋ねてから、少しずつ喧嘩になる二人。一方、純子と三上がデートしていると聞いて、たまには稔を連れてハイキングにでも行くかと友子に言う昇。しかし、保険の外交員がやってきたが、昇の幼なじみの斎藤克代(森光子)だと分かって、せっかく家族サービスをしてくれると思った昇が、克代との昔話を優先させたことで、友子の昇への不満は爆発する。
   翌日、授業中にぼうっとしている純子。三上も仕事中に考え事をしている。昇は不機嫌だ。そこに、克代から電話があり、その夜会うことになる。急に会議が入って、遅くなると友子に電話をする昇。食事をしながら家庭の愚痴を言っているうちにご機嫌に酔っ払う昇。夫と死に別れて独り暮らしの克代は、昔昇のことが好きだったと話し、何だか怪しい雰囲気に。一方、三上も、純子へのもやもやした気持ちに、先輩の大場(藤木悠)に誘われて飲みに行く。酔っ払った大場に連れていかれたバーに、昇と克代がいる。大場は、止めようとする三上を振り切って、昇はとても優しい上司だから、ご馳走になろうと勝手に同席する。少し前に、自分のアパートの電話番号をバーのマッチに書いて渡す克代に、朝まで飲もうといって盛り上がっていたのだ。微妙な雰囲気を感じて、まだまだ飲むぞと言う昇を無理やりタクシーに乗せ送って帰る三上。
   泥酔した昇を送って、部屋にまで運ぶのを手伝う三上。友子に先輩の社員とバーで、親戚の女性と飲んでいる課長に偶然お会いして一緒に飲んだんですと思わず言ってしまう三上。三上を送るように純子に言い、スーツを脱がせ、寝かせる友子は、ワイシャツに口紅が付いているのと上着に電話番号が書いてあるバーのマッチを見つける。三上は、結婚するまで自活するために美容師になるんだという純子に、その必要はなくなったよと言って、プロポーズをする。純子は承諾し、キスをする二人。
   純子の母さわ子が上京してくる。いきなり、結婚することにしたと連絡してきた娘に、東京に出したことが裏目に出たと嘆いている。しかし、三上と会って話をして、その誠実さをとても気に入るさわ子。笠島家に行き、昇と友子に、仲人をしてほしいと頼む。数日後の仏滅の日に、式場に急にキャンセルが出たので、プロポーズしてすぐに結婚式で、夫婦仲が怪しい昇と友子は躊躇いながら承諾する。
   美容学校で、花嫁衣装の着付けと高島田の授業をしている。モデルは純子だ。教師(塩沢とき)が、本当の花嫁にモデルになってもらうのは本校初めてのことだと言い、教室じゅうが祝福する。一人泣く西川。そのまま、式場に向かう純子。
   仲人の昇は、スピーチで、「自分の仕事のトイレの設計よりも、結婚は難しい。オスカー・ワイルドの言葉として、夫婦の愛情は、お互いが鼻につきだしてから、やっと湧き出してくる。ロマンスが見つかったのではなく、一生を賭けて作るロマンスを始めることだ。」と話す。新婚旅行の見送りで東京駅にいると、克代が500万の保険に入ってくれたと男と結婚すると言って、やはり新婚旅行に出かけるところに偶然出会う。帰宅した昇と友子。今日は二人にとって2度目の結婚式だねと言う昇。翌日、出かける昇に、家庭内ではトイレット部長に昇格させてあげると言う友子。

    66年東宝千葉泰樹監督『沈丁花(136)』
    上野家の法事。長女で上野歯科を継いでいる菊子(京マチ子)、次女で歯科の受付、経理を担当している梅子(司葉子)、他家に嫁いでいる三女さくら(団令子)、野村謙功(夏木陽介)との結婚が決まった四女あやめ(星由里子)の4姉妹と、弟の鶴夫(田辺靖男)、母親のあき(杉村春子)。今日の法事は、野村が、兄で僧侶の悠了(藤木悠)に読経を頼んでいるが、悠了は調子がいいがどうも頼りない。
    あやめと野村の結婚式は仏式だ。式が終わって、あきの兄の島田(加東大介)と帰宅する、あき、菊子、梅子。鶴夫は、ナイターを見に行ってしまった。32歳の菊子と27歳の梅子の結婚が遅れているのがあきの悩みのタネだ。夫さえ生きていてくれればと、歯科医院を菊子が継ぐこともなかっただろうと思うと、どうしても愚痴っぽくなる。島田に菊子の縁談を念押しして、娘二人と、披露宴から持って帰った料理とタラチリで夕食を取る。日本酒を飲んでいるうちに、何故か大声で歌い始め部屋に上がる梅子。あきは、どうしても梅子に尋ねずにはいられない。あんた男の人嫌いなのかい。溜息をつき、歯医者として、男がカバのように大口を開けているのを見ると、始終エサをねだられているみたいで馬鹿にしかみえないのよといい、飲み過ぎてしゃっくりをする菊子。
   姉妹たちの伯父の島田の貿易会社に、シンガポールで2年と4か月過ごして活躍していた工藤十郎(宝田明)が戻ってきた。報告書を持ってきた工藤が35歳だと聞き、また歯が痛むと聞いて、島田は菊子にどうかと思う。工藤に上野歯科を紹介して、あきにだけは工藤のことを伝える。海外で活躍したワニみたいな男だと説明する。隙間から工藤を見て、梅子に、工藤という客はどうだいと尋ねる。なかなかいい男だと言う梅子。歯を見た菊子は奥歯が1本多いことが分る。工藤は治療中暴れて、家が地震のように揺れた。帰り際、菊子を土曜の午後会わないかと誘う工藤。  
   土曜日、午前中で診察を終え、午後になって工藤のレンドゲン写真を見ながら調べ物をしている梅子の所に、着飾った菊子が現れ、梅子の鰐革のハンドバックを借してくれと頼む。承諾すると既に借りていて出かける菊子。菊子が待ち合わせに出かけると、工藤は一人ではなく、弟の五郎(佐藤允)が同席している。上野歯科のブザーがなり、休診ですと梅子が出ると、男(三木のり平)は寺尾と名乗り、32歳の独身歯科医の縁談募集の広告を見てやってきたと言う、名前は出ていないが、編集部に友人がおり、上野歯科の長女梅子だと知ってやって来たのだと言われ、叩き出す梅子。梅子はあきに怒りをぶつける。伯父の島田に頼んで、匿名の広告を出していたのだ。「42歳くらいまでOK、子供一人くらい可、少々資産あり」これじゃあバナナの叩き売りじゃないと涙ぐむ梅子に、32にになっても、お嫁に行かず、家に縛り付けられているあんたが不憫なんだよと泣き出すあき。実は、工藤さんも候補なんだけどどう思うと尋ねられ、まんざらでもない梅子。酔っ払って帰宅した菊子が、工藤とデートをしてきたと言う。経緯を話すあきに、それでも工藤のことを好きになったので譲らないという菊子。受けて立つと宣戦布告をする梅子。間に入ったあきは途方に暮れる。翌日、伯父の島田が現れ、工藤から菊子を弟の嫁に欲しいと頼まれた、工藤はインドネシア駐在中に現地で結婚していたと言う。笑いだす梅子と菊子。あきもがっかりしながらも笑う。
   鶴夫の大学の教授の金平(仲代達矢)が診察を受けにやってくる。金平は、菊子と梅子を見て、なるほど﨟長けている(年功を積み、気品ある美しさを備えていること)と言い、鶴夫から腕は大したことはないけれど、美人で楽しめ、オールドミスの救済の一助になる。また治療代も安くしておくので、その分成績に、ご配慮くださいと聞いて来たのだと、全て話してしまう。梅子は勿論怒り、鶴夫が帰ってきたらとっちめてやりますと言う。
   上野歯科の近くに、大岡歯科が内装工事中だ。大岡(小林桂樹)は、母親の朝子(賀原夏子)に、自分の腕には自信があるが、母さんが若い娘は嫌だ、後家は嫌だと言って断ってばかりだからいつまで経っても看護婦が決まらないじゃないかと文句を言っている。せっかく、息子に開業させてやることができたんだからという朝子。何も結婚相手のことじゃないんだからと言う大岡。大岡は、上野歯科に身分を隠して、診療を受けるが、美しくて、テキパキとしている梅子に目を奪われる。幾らもらっていますかと聞いて、住み込みで1万五千円と聞いて、それは安いなあと言う。
   ある日、菊子が外出し、大岡歯科から大岡が出てくる。職人にあの人が先生だと聞いて、偵察に来たのだと知る。その頃、梅子は大岡から電話を受け、喫茶店で待ち合せる。自分が開業する歯科の受付に来てほしいと言いながら、結婚してくれと熱烈に求愛する。梅子はその晩遅く酔っ払って帰宅し、大岡と結婚すると宣言する。菊子は、人の病院に偵察に来るようなハンパ野郎と結婚するなんて、あんたの目はおかしいと言い、私だって、ノラ犬とサラブレッドの違い位分るわ、彼はサラブレッドよと言う梅子と大ゲンカになる。翌日、母のアキは、庭をぼーっと見ていると、鶴夫がなんだか愉快でなさそうだねと声を掛ける。とうのたった女が三人いれば、たまには愉快でないこともあるわと答えるアキ。
   大岡医院に乗り込む菊子。あなたは、病院をスパイしに来た上に、梅子をタダで看護婦にしようという卑劣な人間だと詰め寄る菊子に、あなたは、腕は確かだが、頭はもうひとつですなと答える大岡。思わず、大岡の頬を打ち帰っていく菊子。すぐに梅子が現れ、ねえさんと憎しみ合ってまで、自分の幸せを欲しがらないわと言うのに、それじゃ駄目だと言って梅子の頬を打つ大岡。大岡に抱きついて、わたし、やっと決心がついたわと言う梅子。
   教会で結婚式を挙げる梅子と大岡。帰宅して、鶴夫がお通夜みたいだなと言う。嫌なこといいなさんなと言いながらも、アキも、菊子も虚脱状態になっている。梅子の替りは、かって夫が開業していた時以来勤めることになった。梅子と大岡の新婚旅行は、レンタカーを借りて伊豆を一周するのだ。
   金平が、診察のあと、次の土曜日の午後、アートシアターの映画の切符を貰ったので、映画を見たあとに食事をしませんかと誘い、菊子は承諾する。映画館で、ラブシーンが流れている。しかし、菊子の横に座った金平は居眠りをしている。食事の会話は弾むが、どうして40歳を過ぎても結婚なさらないのと聞く菊子に、そちらのほうは、全くもてなくてと答える菊子。
   留守中、上野家には、菊子、大岡夫婦と、あやめ野村夫妻が来ている。二人の妹とも、菊子の縁談を持って来ている。菊子は、大岡の先輩で泥鰌すくいの上手い陽気な男(高嶋忠夫)、あやめは、インド哲学を学び石屋をしている男前川(小泉博)、帰ってきた菊子は、二人との見合いを了承する。続けて、見合いをする。どちらも悪くないと菊子は言うが、本当は金平が気になっているのに、煮え切らないので苛立っているのだ。翌日の金平の診察にも、それは現れて手荒になってしまう。見合いの話を他人ごとのように答える金平。しかし、菊子の目に涙が浮かんでいるのを見て、朴念仁の金平にもようやく菊子の想いは伝わり、プロポーズをする金平。金平の胸で泣く菊子。
   診療室で一人酒を飲む菊子。もう二時だし、明日は結婚式なのだから寝なさいとアキが現れる。結婚することが決まってから、つっかえ棒が外れて、ガタガタになってしまった。おかあさんお世話なりましたと言う菊子。二人、静かに涙を流す。窓を開けると、父親が好きだった沈丁花が咲いている。高浜虚子の「娘(こ)の部屋を、仮の書斎や、沈丁花」という句も、お父さんが好きだったと言うアキ。
   翌日、神社で結婚式を挙げる菊子と金平。新幹線で新婚旅行に出る二人。鶴夫の試験はどうだったのと聞く菊子に、落第だから追試験を受けさせないと駄目だと金平は応える。幸せそうに笑う二人。
  杉村春子を筆頭に、オールスターキャストのような映画。婚期を逃した娘京マチ子と、心配する母、杉村春子のやり取りをはじめ、ちゃっかりしている三女団令子と、四女星由里子が、姉たちの縁談について母に叱られてしゅんとなる場面・・・・挙げていくときりがない。メリハリが効いていなながら、情感に溢れた名場面が多数。うーん役者、俳優、最高の演技と、演出、素晴らしいなあ。

   59年東宝千葉泰樹監督『狐と狸(137)』
   北関東を洋服や、着物、反物などを担いで行商して歩く甲州商人。人絹を本絹と偽って、田舎の百姓たちを騙して商売をしている青島京太(加東大介)の元に、大学を出たが就職できずに困っていた甥の倉掛三郎(夏木陽介)がやってきて手伝わせてくれと言う。青島の仲間で青島の下で売人をやっているのは、飯塚半五郎(三井弘次)と湯舟吾一(小林桂樹)。青島は、隣のバーゴンドラのヒロ子(団令子)に入れあげている。
   今日は、泊っている江戸崎銀座通りにある上州屋を出て、青島と三郎、半五郎と吾一で、地区割りをして商売に出かける。青島と三郎が歩いていると、向こうから蒲団を積んだジープに乗った浅田(南道郎)がやってくる、ゴンドラのヒロ子に宜しくと意味ありげに笑う浅田。いけすかない野郎だという青島。青島は、欲の皮を突っ張った百姓たちとの化かし合いだと言って、まず、地元の区長を務める豪農の安福秀松(左ト全)のもとに行き、オーバーコートと背広が、完全オートメーションの工場で作った製品で、北関東に出張所が出来たので宣伝販売中だと言う。安福は、糸を一本抜き燃やして、これは本毛だと確かめる。お客さんは、こんなことも知っているんですかと持ち上げておいて、コートと背広を1万2千円の値段を出し、渋々1万円に負けた振りをして、6千円の代物を売りつける。会社宛に1万円で売っていたと名刺に名前と判子を頼み、それを見せながら、他の農家を回って売りつけるのだ。更に、食事をした店で雨が降ってくると、もう荷を担いで帰るのがおっくうだから、捨て値で譲るといって1万円で売りつけるのだ。
  一方、吾一は、偶然入った農家の息子が予科練で死んだと聞いて、その老婆(飯田蝶子)に予科練時代に銀シャリを食わして貰った息子の友人だと騙して、勤めていた会社を首になって、退職金代わりに洋服を売っているのだと言って、買って貰う。半五郎は、少し頭の弱い男を演じて、安く買いたたいてやろうという百姓一家に売りつける・・・。to be continued.

2009年3月8日日曜日

にちようび

読書と惰眠で終日。