2009年3月12日木曜日

ララピポの撮影シーンは流石に地獄のようだったろう。

     朝から荻窪税務署、若干待ったが、順調に確定申告完了。ついでに二年遡っての医療費還付も申告。自分は家で、PCの国税庁の申告のページに入力して、自動計算なので、プリントアウトして、領収書やら大量に添付するだけだし、会社の経費計算と同じで、全部済ませて行ったので、確認して貰って提出するだけだが、年配の方で、税務署にバラの領収書持ってきて、手計算、直筆記入を始めるのも多く、多分年金やら、不動産やら、介護やら控除になるならないで、大変なことになっている。また、そういう年齢層は係員の話を聞かない(苦笑)。
     政治家は、減税やら補助金やら得意げに語るが、こうした申請やら控除の仕組みやら、もっと簡単にしないと、片手落ちだ。役人は自分たちの手間を減らしつつ、手続きを面倒にして、手のこりを増やそうとしているのではないか。来年は絶対eーtaxで青色申告だっ。

     シネマート新宿で、新東宝大全集。50年新東宝小津安二郎監督『宗方姉妹(142)
     宗方節子(田中絹代)は京都大学医学部を訪れている。内田教授(斎藤達雄)は、父の忠親(笠智衆)の古くからの友人だ。父は長くてあと1年。半年くらい覚悟しておいてくれと言う。節子は、このことを忠親と、妹の満里子(高峰秀子)には、黙っていることにした。その頃、父の家に神戸に住む田代宏(上原謙)が来ている。満里子がお茶を出すが、奔放な今時の娘だ。田代は、かって節子の恋人だった。しかし田代は、仕事でフランスに行くことになり、節子は、三浦(山村聡)と結婚した。三浦は現在失業中であり、鬱屈して酒浸りの生活をしている。猫を異常に愛している三浦。京都を訪ねた帰りに、奈良の寺院を回る姉妹、変わらない美しさを節子は愛しているが、毎回、寺社仏閣廻りなので、満里子は嫌気がさしている。
   節子はバーアカシアを経営している。そこには、店で働く前島(堀雄二)は、戦中は特攻隊に志願し、戦後は、競輪をしたり、180度違う生活をしている。満里子は前島と遊び歩いていたが、京都の父の家で会った、落ち着いて優しい田代に惹かれて、田代が上京した際には、突然、田代の宿を訪問して、食事を奢らせたりする。満里子は、姉が何故、田代と別れ、三浦と結婚したのか不思議に思っている。更に今の陰鬱とした三浦を立てて尽くす姉の気持ちが分からない。上京した折に、田代は、アカシアで節子と会い、店のことで困っているという相談にのり、お金を貸してやる。
   しかし、そのことは、三浦の気持ちを傷つけ、お前と田代の間には何かあったんだろうと絡み、挙句は節子を叩く。節子は三浦に詫び、田代に金を返し店を畳むことにする。満里子は、そんな節子が歯がゆくてしょうがない。お姉さんは、何もかも古すぎると言うと、あなたが、思っている新しさは、目新しいスカートみたいなもので、来年には古くなっている。前島だって、特攻隊と思ったら、競輪だ、自由主義だと、世間の流行に振り回されているだけだ。本当に、新しいものは、いつまで経っても古くならないものだと答える・・・・(to be continued)

   小津論は、ともかくとして、最近はなるべく見ないようにしていた。小津魔術というか、作品の登場人物の物の見方や生き方、はたまた、生活スピードまで、影響されやすい自分は、ガンガン侵食されてしまう恐怖があるからだ。20代前半の自分の理想のカップルは、「東京物語」の笠智衆と東山千栄子演じる老夫婦で、海を見ながら、船が行くのう、そうですねという会話だけで生活するというモノだった。枯れ過ぎで、50になった今でもまだ、その境地には達しないのだった。久し振りに見て、少し冷静に見られるようなったかもしれない。よかった。しかし、「新しい物は、いつまで経っても古くならない」。いいなあ。「かっこいいものは、なんてかっこ悪いんだろう」と並んで座右の銘としよう。

     渋谷シネクイントで、宮野雅之監督『ララピポ(143)』。
     月収15万円のライター杉山博(皆川猿時)は、全くモテず、最近は引き籠もり、上の階のチャラい男が毎晩違う女を連れ込むのを盗み聞きし、自涜に耽っている。ある日、彼が自棄酒を飲んでいると、隣に不細工な娘玉木小百合(村上知子フロム森三中)に声を掛けられ、小百合の部屋で5回もしてしまう。しかし、終了すると我に返り、私たち釣り合いがとれていて、似合いのふたりだと思うと言われてマジに殴って帰る。
    猿時の上に住む男は風俗のスカウトマンの粟野健治(成宮貴寛)。今日も、美人だが、負のオーラを放っているデパガのトモコ(中村ゆり)に声を掛ける。どん底の生活から抜け出したいトモコは、粟野の言うままに、セクシーキャバクラから、抜きキャバ、ヘルス、AVと転落の一途だ。
   カラオケボックスの店員青柳光一(吉村嵩)は、ボックス内で売春する女子高生や買春するサラリーマン親父たちを見て、怒りで爆発しそうだ。彼の脳内では、正義の味方Bマンが、最低な男たちやコギャルたちを叩きのめすのだが、現実には隣家の娘(インリン・オブ・ジョイトイ)を盗み見るだけで股間は大爆発だ。粟野はある日熟女女優を担当しろと言われる。待ち合わせにやって来たのは、髪は爆発、化粧もせず生活感丸出しのおばさん佐藤良枝(濱田マリ)だ。無理矢理ラブホテルに連れて行かれ絞り取られる粟野。粟野は、トモコのセクキャバ時代からの客(杉作J太郎)がストーカー化し付きまとっているのを脅し、公務員だと知って強請ることで、高級マンションに引っ越す。粟野が居なくなったことで、盗聴出来なくなった杉山は、再び小百合の部屋を訪ねる。しかし、そこには郵便局員の40男(中村ゆうじ)がいる。お似合いのカップルだと言う男に飛びかかり組み合いになっていると、私の為に喧嘩をしないでと泣き出す小百合。杉山と男は脱力し、男は逃げ帰った。倒れたままの杉山の上に乗り、優しく私も寂しかったのと甘える小百合。小百合に馬乗りになって首を絞める杉山。
    青柳は、チンビラに女子高生たちがボックスで売春するのを黙認するよう強制される。アナルでやらせろとしつこい中年男(蛯子よしかず)を止めなかったため、チンビラにそんなにアナルをやりたかったら、こいつとやれと、中年男に釜を掘られる苦痛と屈辱に遭う・・・・。

    伏線も多く、時制も前後する。その複雑さは、ケラの「罪とか罰とか」ほどではないものの、中島哲也監督が書いたという脚本は、悪くない。しかし、出演者によって、スクリーンの温度がすこしずつ違い、テンションが上滑りして見えたりする。長編初監督という宮野監督の、うまく全体をいい話として纏めようとした演出が、ちょっと裏目に出た気がする。しかし、80年代のディスコサウンドをうまくパクった音楽は、流石CM業界、リフや、裏メロや、サウンドが、それぞれ、これはあれあれ!!この曲はあの曲のあそこ!!!とか、ダレそうになると、統一したトーンで最後まで引っ張って見させた。次の映画を見たいなあと思う。個人的には、「パッチギ LOVE&PEACE」の中村ゆりが、転落していっても決して汚れないAV女優をリアルに好演。濱田マリの熟女AV女優のゴミ屋敷女も。女ばっかり褒める。

    シネマート六本木の方で、新東宝大全集60年新東宝中川信夫監督『地獄(144)』
    大学の教室、矢島教授(中村寅彦)は地獄の思想と題して講義をしている。清水四郎(天地茂)は最上段で憂鬱そうに聞いている。隣に田村(沼田曜一)が座っていて驚く。田村は昨日の男は死んだぜ。君が教授の娘の幸子(三ツ矢歌子)と婚約した記念すべき日にと言って笑う田村。昨夜のこと、矢島教授の家で四郎と幸子はキスをしようとするが、教授と夫人の芙美(宮田文子)が来る気配に離れる。甘やかして育ててしまったが幸子のこれからを宜しく頼むと言う教授と、あなたも一層勉強して主人のように立派な研究者になってねと夫人。皆は、部屋の隅に田村がいるのに気がついて驚く。勝手に入ってきたことを咎める矢島に、声を掛けようと思ったのですが、声を掛けてまた居留守を使われても困りますからと開き直る田村。友人の清水と幸子さんの婚約を祝って乾杯したいところですが、時間もないので、借りた本だけお返して帰ります、車で来ているので送っていくと強引に四郎を連れ出す田村。
   車の中で四郎に金を渡そうとして断られ、下宿代だって相当溜めているだろうと言う田村。ちょっと寄りたいところがあるので回り道をしてくれと言う四郎。しかし、暗い裏通りを走って行くと、酔っ払って道の真ん中を歩いてきた男をはねてしまう。自首しようと言う四郎に目撃者もいないし、随分と酔っ払っていたのだから分かりゃしないし、自業自得だと言って押し切る田村。はねられた男は権藤組の幹部で志賀恭一(泉田洋志)。実は恭一の母親やす(津路清子)が、事故を目撃し車のナンバーも覚えていた。警察にも権藤組にも、そのことは伝えず、車に乗っていた二人に直接復讐しようと恭一の情婦の洋子(小野彰子)に言うやす。
    目撃者も無く死んだのがヤクザだと聞いて、心配することはないだろと四郎に言う田村。しかし、良心の呵責に耐えられないと言う四郎に、お前と俺は一蓮托生で、勝手なことは許さないと田村。苦悩しながら下宿に戻った四郎を由紀子が待っていた。相談があると言う由紀子の話を遮って、自分が田村と乗った車が死亡事故を起こしたことと、警察に自首すると告白する。自分の父親と相談したらと言う由紀子に、直ぐにでも警察に行きたいので、タクシーを拾って行こうと言う四郎。何か胸騒ぎがするので、電車で行こうと言う由紀子を無理矢理タクシーに乗せ警察に向かう四郎。しかし、由紀子の不安は的中し、タクシーは街路樹にぶつかり、運転手と幸子死んでしまう。田村に自分の言うことを聞かず勝手に自首しようとした報いだと言われる。
    幸子の通夜で、矢島教授は君の責任じゃないと言うが、娘を返してくれと四郎に詰め寄る教授夫人。鬱々とした気持ちで、下宿に帰る気も起きずストリップバーで飲んでいる四郎。ダンサーに声を掛けられ連れ込み宿で泊まる四郎。朝偶然に、四郎の学生証を見た女は、自分の男を殺した一人だと気がつく。女は洋子だった。今晩9時に店に来ることを四郎と約束して 、母親と打ち合わせる洋子。しかし、四郎は夜汽車に乗っている。四郎の手にはハハキトク、スグカエレとの電報がある。
    四郎の父親の清水剛造(林寛)は、養老施設の天上園の園長をしている。養老施設といっても、大広間に全員が収容されているような劣悪な施設だ。四郎の母親のイト(徳大寺君枝)は、少し回復していた。そこにいるサチ子を見て、四郎は驚く。サチ子と幸子(ユキコ)は瓜二つだったのだ。サチ子は、酒で身を持ち崩した画家谷口円斎(大友純)の娘だった。円斎は、地獄絵を描いている。その絵を剛造は寺に奉納するのだと言う。実は、かってイトは円斎の恋人だったが、剛造が無理やり奪ったのだ。そのことが円斎を酒に溺れさせることになったのだ。しかし、剛造は、イトが病で寝込むと、絹子(山下明子)を同衾していた。更に街の食堂、豚酎軒の女将の梅代を3号にしている。絹子は、四郎に色目を使ってくる。しかし、四郎はサチ子に惹かれ始めていた。しかし、刑事の針谷(新宮寺寛)は、サチ子を嫁にくれと剛造と円斎に迫っている。
    突然、田村が、天上園に現れる。旅行がてらやってきたのだと言う。帰ってくれと四郎が言っても、俺と四郎はいつも一緒にいるのだと言う。更に矢島教授が、妻の具合が少し良くなったので夫婦で、講演旅行の途中で、四郎のもとに寄ると言う。絹子が現れ、母イトの容体が急変したと言う。亡くなった母を前に泣いているのは、四郎とサチ子のみだ。通夜の席で、新聞記者の赤川(宮浩一)が医師の草間(大谷友彦)に、イトの死因を尋ねている。狭心症だと言う答えに、誤診じゃないのかと言う。そこに、田村が現れ、ここにいる連中は、皆人殺しだと言いだす。イトを殺したのは、剛造と草間医師、針谷刑事は、賄賂を取って罪を見逃したが、犯人は自殺、赤川記者は、誤報の記事で被害者が自殺、矢島先生とて、マライ戦線で水筒を奪おうと戦友を殺したのだと、四郎と自分だけではないと言う田村。
    天上園の開園10周年記念の祝賀会が開かれる。死んだ魚が流れてくるのを掬っている男から、入所者用の材料として格安で買い上げている剛造。サチ子は、父親の絵の具がきれたので、町に買いに行くことになった。四郎の元には、洋子から、吊り橋で会いたいという手紙が届く。四郎が出かけると橋の上に洋子がいる。どうしても会いたかったという洋子とキスをする四郎。洋子は、ピストルを出し、実は恭一は私の男だったと言って四郎を撃とうとする。しかし、足を踏み外し真っ逆さまに谷底に落ちる洋子。そこに、田村が現れ、ピストルを奪おうとする。しかし、やはり田村も谷底に・・。
    祝賀会で、久し振りの酒に盛り上がる入所者たち。歌い踊り、どんどんと盛り上がっていく。絹子は、納屋でたそがれている四郎を見つけ迫ってくる。とくに拒むわけでもない四郎。しかし、絹子を探しに来た剛造が、抱き合っている二人を発見、三人で揉めていると、絹子は階段を踏み外し死んだ。ここから静かに逃げるぞと言う剛造と付いて出る四郎。剛造、草間、針谷、赤川と四郎たちの酒が無くなった。そこに、かってこちらでお世話になっていたんですよと言って、恭一の母やすが酒を持って現れ、皆に振る舞う。これを飲んでお開きにしようと乾杯して、飲み干すと、皆苦しみだす。毒が入っていたのだ。四郎にとどめを刺そうと首を絞めるやす。苦しんでいるところに、サチ子が帰ってきて、矢島夫妻が、汽車に身を投げて自殺したといいに来る。更に亡霊のような田村がピストルを持って現れ、サチ子を撃つ。入所者たちも、毒で死んだ魚を食べたことで、苦しみながら亡くなった。首を絞められ気を失う四郎。
    四郎が気が付くと、三途の川の前だ。閻魔大王(嵐寿十郎)、八熱地獄(八大地獄)、八寒地獄の数々が、全員死んだ登場人物に襲いかかる・・・。
    まあ、大蔵貢社長の、夜祭りの見世物小屋趣味全開で、採録不可能というか、面倒くさくなって採録意欲喪失な超大作だ(笑)。結末の意味は各自が勝手に解釈するほかはないかもしれないが、一番恐ろしいと思ったのは、かなりの数(a lot of people ララピポ)の役者、エキストラが全速力で渦巻きのように全速力で回転し走っているシーンや、血の海地獄で悶え苦しむシーン。さぞや撮影スタジオは地獄のように阿鼻叫喚だったんだろうな。あんな老人たちをくるくる自転しながら、円を描いて走り続けさせて、大丈夫だったんだろうか・・・。


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