近くの相談が聞こえてくるが、職安ビギナーらしい女性に、丁寧ではあるんだけど、彼女の悩みの解消は全く望めない。確かに労働基準監査局と職安は違うけど…。まあ、生かさず殺さず、絶望して無気力になって言うとおりになるのを待っている感じ。お代官さまあんまりでごぜえます(苦笑)。
更に、11時半過ぎには、女性たちを中心に、お昼ご飯か、端の方に集まって気もそぞろ、確かに高層ビルのオフィスは昼時のエレベーターと近くの食堂は大変だけど、我々失業者たちの目が気にならないのか。お前ら公僕だろと、毒づいてしまう。彼らの生活を守るために、毎月失業保険を払い、相談に来ているような気がしてくると言うか絶対そうに違いない。誠に精神衛生的には最悪の場所だ。
立て万国の労働者と失業者!!
独身美人OLに惣菜を貢ぎ、元同僚と昼食。
神保町シアターで東宝文芸映画の世界。
61年東宝筧正典監督『トイレット部長(135)』
笠島昇(池部良)は、国鉄の営繕課長。妻の友子(淡路恵子)との間に、息子の稔(島津雅彦)がいる。営繕課は、駅舎の設計、施工、管理、修繕を行う部署だが、一番中心は何と言ってもトイレットに関する仕事がメインだ。昇は誇りを持って仕事をしているが、友子は外聞が悪いと思っている。昇と友子は倦怠期を迎えている。家を出ると向いの家の主人(松村達雄)がマイカー(マツダ、ミゼット)を買ったので乗って行きませんかと声を掛けてくる。あの満員電車が嫌でマイカー通勤を始めたんだと言い、国鉄職員としては、複雑な心境だ。少し遅刻して出社する。営繕課では、新入社員の三上(久保明)が、この仕事に打ち込めない。ある日、産婦人科医をしている義姉の橋本さわ子(沢村貞子)が学会のついでに笠島家を訪れ、友子に、18歳の娘純子(浜美枝)が地元の沼津で男と付き合い初め、心配なのでかねてより本人が希望していた東京暮らしをさせようと思っているので、この家に下宿させてくれないかと頼む。
純子は稔の部屋に住むことになる。せっかちでそそっかしい娘だが、物おじしない素直な娘で、稔と直ぐに仲良くなり、昇と友子は気に入った。純子は結婚まで、美容師として自活したいので、美容学校に入学する。入学手続き中の純子を見て西川(桂小金治)は、同じクラスにどうしても入れてくれと強引にねじ込み、それ以来付きまとうことに。三島は昇に相談したいことがあると言う。それなら、ウチに来てゆっくり話を聞くと言う昇。
純子が夜道を歩いていると、若い男がウロウロしている。話しかけてきた男に空手チョップを喰らわす純子。走って家に入ると男がやってくる。三上だった。笠島家と純子、三上の夕食はとても楽しいものとなった。食後、自室に三上を呼び、今日の要件を尋ねる昇。話にくいので会社て改めてと言う三上に、今のトイレばかりの部署は自分には向いていない、人に話せないような恥ずかしい仕事なので、異動させてくれということかい?と聞く昇。どうして分かるんですか?と尋ねる三上に、15年前の自分もそうだったからさと答える昇。しかし、いつの間にか慣れたこともあるし、やりがいもあると思うようになったんだと昇。まだ一月もう少しやってみて、どうしても駄目なら異動を考えると言う昇に、納得する三上。
その日以降三上の仕事の取り組み方は変わる。今日もトイレで扉に向かって用を足すか、尻を向けて用を足すかと言うアンケートを回収に出掛ける。しかし、実は純子が通う美容学校だった。純子に会い、こういう人が嫌がる仕事をする三上を見直したと言われて嬉しくなる三上。
三上は日曜日にデートをしないかと純子に電話をする。映画とか東京タワーとかではないところに行きたいと言われて、隅田川の水上バスに案内する三上。とてもいい雰囲気だったが、三上がかって純子が付き合っていた沼津の彼氏のことを尋ねてから、少しずつ喧嘩になる二人。一方、純子と三上がデートしていると聞いて、たまには稔を連れてハイキングにでも行くかと友子に言う昇。しかし、保険の外交員がやってきたが、昇の幼なじみの斎藤克代(森光子)だと分かって、せっかく家族サービスをしてくれると思った昇が、克代との昔話を優先させたことで、友子の昇への不満は爆発する。
翌日、授業中にぼうっとしている純子。三上も仕事中に考え事をしている。昇は不機嫌だ。そこに、克代から電話があり、その夜会うことになる。急に会議が入って、遅くなると友子に電話をする昇。食事をしながら家庭の愚痴を言っているうちにご機嫌に酔っ払う昇。夫と死に別れて独り暮らしの克代は、昔昇のことが好きだったと話し、何だか怪しい雰囲気に。一方、三上も、純子へのもやもやした気持ちに、先輩の大場(藤木悠)に誘われて飲みに行く。酔っ払った大場に連れていかれたバーに、昇と克代がいる。大場は、止めようとする三上を振り切って、昇はとても優しい上司だから、ご馳走になろうと勝手に同席する。少し前に、自分のアパートの電話番号をバーのマッチに書いて渡す克代に、朝まで飲もうといって盛り上がっていたのだ。微妙な雰囲気を感じて、まだまだ飲むぞと言う昇を無理やりタクシーに乗せ送って帰る三上。
泥酔した昇を送って、部屋にまで運ぶのを手伝う三上。友子に先輩の社員とバーで、親戚の女性と飲んでいる課長に偶然お会いして一緒に飲んだんですと思わず言ってしまう三上。三上を送るように純子に言い、スーツを脱がせ、寝かせる友子は、ワイシャツに口紅が付いているのと上着に電話番号が書いてあるバーのマッチを見つける。三上は、結婚するまで自活するために美容師になるんだという純子に、その必要はなくなったよと言って、プロポーズをする。純子は承諾し、キスをする二人。
純子の母さわ子が上京してくる。いきなり、結婚することにしたと連絡してきた娘に、東京に出したことが裏目に出たと嘆いている。しかし、三上と会って話をして、その誠実さをとても気に入るさわ子。笠島家に行き、昇と友子に、仲人をしてほしいと頼む。数日後の仏滅の日に、式場に急にキャンセルが出たので、プロポーズしてすぐに結婚式で、夫婦仲が怪しい昇と友子は躊躇いながら承諾する。
美容学校で、花嫁衣装の着付けと高島田の授業をしている。モデルは純子だ。教師(塩沢とき)が、本当の花嫁にモデルになってもらうのは本校初めてのことだと言い、教室じゅうが祝福する。一人泣く西川。そのまま、式場に向かう純子。
仲人の昇は、スピーチで、「自分の仕事のトイレの設計よりも、結婚は難しい。オスカー・ワイルドの言葉として、夫婦の愛情は、お互いが鼻につきだしてから、やっと湧き出してくる。ロマンスが見つかったのではなく、一生を賭けて作るロマンスを始めることだ。」と話す。新婚旅行の見送りで東京駅にいると、克代が500万の保険に入ってくれたと男と結婚すると言って、やはり新婚旅行に出かけるところに偶然出会う。帰宅した昇と友子。今日は二人にとって2度目の結婚式だねと言う昇。翌日、出かける昇に、家庭内ではトイレット部長に昇格させてあげると言う友子。
66年東宝千葉泰樹監督『沈丁花(136)』
上野家の法事。長女で上野歯科を継いでいる菊子(京マチ子)、次女で歯科の受付、経理を担当している梅子(司葉子)、他家に嫁いでいる三女さくら(団令子)、野村謙功(夏木陽介)との結婚が決まった四女あやめ(星由里子)の4姉妹と、弟の鶴夫(田辺靖男)、母親のあき(杉村春子)。今日の法事は、野村が、兄で僧侶の悠了(藤木悠)に読経を頼んでいるが、悠了は調子がいいがどうも頼りない。
あやめと野村の結婚式は仏式だ。式が終わって、あきの兄の島田(加東大介)と帰宅する、あき、菊子、梅子。鶴夫は、ナイターを見に行ってしまった。32歳の菊子と27歳の梅子の結婚が遅れているのがあきの悩みのタネだ。夫さえ生きていてくれればと、歯科医院を菊子が継ぐこともなかっただろうと思うと、どうしても愚痴っぽくなる。島田に菊子の縁談を念押しして、娘二人と、披露宴から持って帰った料理とタラチリで夕食を取る。日本酒を飲んでいるうちに、何故か大声で歌い始め部屋に上がる梅子。あきは、どうしても梅子に尋ねずにはいられない。あんた男の人嫌いなのかい。溜息をつき、歯医者として、男がカバのように大口を開けているのを見ると、始終エサをねだられているみたいで馬鹿にしかみえないのよといい、飲み過ぎてしゃっくりをする菊子。
姉妹たちの伯父の島田の貿易会社に、シンガポールで2年と4か月過ごして活躍していた工藤十郎(宝田明)が戻ってきた。報告書を持ってきた工藤が35歳だと聞き、また歯が痛むと聞いて、島田は菊子にどうかと思う。工藤に上野歯科を紹介して、あきにだけは工藤のことを伝える。海外で活躍したワニみたいな男だと説明する。隙間から工藤を見て、梅子に、工藤という客はどうだいと尋ねる。なかなかいい男だと言う梅子。歯を見た菊子は奥歯が1本多いことが分る。工藤は治療中暴れて、家が地震のように揺れた。帰り際、菊子を土曜の午後会わないかと誘う工藤。
土曜日、午前中で診察を終え、午後になって工藤のレンドゲン写真を見ながら調べ物をしている梅子の所に、着飾った菊子が現れ、梅子の鰐革のハンドバックを借してくれと頼む。承諾すると既に借りていて出かける菊子。菊子が待ち合わせに出かけると、工藤は一人ではなく、弟の五郎(佐藤允)が同席している。上野歯科のブザーがなり、休診ですと梅子が出ると、男(三木のり平)は寺尾と名乗り、32歳の独身歯科医の縁談募集の広告を見てやってきたと言う、名前は出ていないが、編集部に友人がおり、上野歯科の長女梅子だと知ってやって来たのだと言われ、叩き出す梅子。梅子はあきに怒りをぶつける。伯父の島田に頼んで、匿名の広告を出していたのだ。「42歳くらいまでOK、子供一人くらい可、少々資産あり」これじゃあバナナの叩き売りじゃないと涙ぐむ梅子に、32にになっても、お嫁に行かず、家に縛り付けられているあんたが不憫なんだよと泣き出すあき。実は、工藤さんも候補なんだけどどう思うと尋ねられ、まんざらでもない梅子。酔っ払って帰宅した菊子が、工藤とデートをしてきたと言う。経緯を話すあきに、それでも工藤のことを好きになったので譲らないという菊子。受けて立つと宣戦布告をする梅子。間に入ったあきは途方に暮れる。翌日、伯父の島田が現れ、工藤から菊子を弟の嫁に欲しいと頼まれた、工藤はインドネシア駐在中に現地で結婚していたと言う。笑いだす梅子と菊子。あきもがっかりしながらも笑う。
鶴夫の大学の教授の金平(仲代達矢)が診察を受けにやってくる。金平は、菊子と梅子を見て、なるほど﨟長けている(年功を積み、気品ある美しさを備えていること)と言い、鶴夫から腕は大したことはないけれど、美人で楽しめ、オールドミスの救済の一助になる。また治療代も安くしておくので、その分成績に、ご配慮くださいと聞いて来たのだと、全て話してしまう。梅子は勿論怒り、鶴夫が帰ってきたらとっちめてやりますと言う。
上野歯科の近くに、大岡歯科が内装工事中だ。大岡(小林桂樹)は、母親の朝子(賀原夏子)に、自分の腕には自信があるが、母さんが若い娘は嫌だ、後家は嫌だと言って断ってばかりだからいつまで経っても看護婦が決まらないじゃないかと文句を言っている。せっかく、息子に開業させてやることができたんだからという朝子。何も結婚相手のことじゃないんだからと言う大岡。大岡は、上野歯科に身分を隠して、診療を受けるが、美しくて、テキパキとしている梅子に目を奪われる。幾らもらっていますかと聞いて、住み込みで1万五千円と聞いて、それは安いなあと言う。
ある日、菊子が外出し、大岡歯科から大岡が出てくる。職人にあの人が先生だと聞いて、偵察に来たのだと知る。その頃、梅子は大岡から電話を受け、喫茶店で待ち合せる。自分が開業する歯科の受付に来てほしいと言いながら、結婚してくれと熱烈に求愛する。梅子はその晩遅く酔っ払って帰宅し、大岡と結婚すると宣言する。菊子は、人の病院に偵察に来るようなハンパ野郎と結婚するなんて、あんたの目はおかしいと言い、私だって、ノラ犬とサラブレッドの違い位分るわ、彼はサラブレッドよと言う梅子と大ゲンカになる。翌日、母のアキは、庭をぼーっと見ていると、鶴夫がなんだか愉快でなさそうだねと声を掛ける。とうのたった女が三人いれば、たまには愉快でないこともあるわと答えるアキ。
大岡医院に乗り込む菊子。あなたは、病院をスパイしに来た上に、梅子をタダで看護婦にしようという卑劣な人間だと詰め寄る菊子に、あなたは、腕は確かだが、頭はもうひとつですなと答える大岡。思わず、大岡の頬を打ち帰っていく菊子。すぐに梅子が現れ、ねえさんと憎しみ合ってまで、自分の幸せを欲しがらないわと言うのに、それじゃ駄目だと言って梅子の頬を打つ大岡。大岡に抱きついて、わたし、やっと決心がついたわと言う梅子。
教会で結婚式を挙げる梅子と大岡。帰宅して、鶴夫がお通夜みたいだなと言う。嫌なこといいなさんなと言いながらも、アキも、菊子も虚脱状態になっている。梅子の替りは、かって夫が開業していた時以来勤めることになった。梅子と大岡の新婚旅行は、レンタカーを借りて伊豆を一周するのだ。
金平が、診察のあと、次の土曜日の午後、アートシアターの映画の切符を貰ったので、映画を見たあとに食事をしませんかと誘い、菊子は承諾する。映画館で、ラブシーンが流れている。しかし、菊子の横に座った金平は居眠りをしている。食事の会話は弾むが、どうして40歳を過ぎても結婚なさらないのと聞く菊子に、そちらのほうは、全くもてなくてと答える菊子。
留守中、上野家には、菊子、大岡夫婦と、あやめ野村夫妻が来ている。二人の妹とも、菊子の縁談を持って来ている。菊子は、大岡の先輩で泥鰌すくいの上手い陽気な男(高嶋忠夫)、あやめは、インド哲学を学び石屋をしている男前川(小泉博)、帰ってきた菊子は、二人との見合いを了承する。続けて、見合いをする。どちらも悪くないと菊子は言うが、本当は金平が気になっているのに、煮え切らないので苛立っているのだ。翌日の金平の診察にも、それは現れて手荒になってしまう。見合いの話を他人ごとのように答える金平。しかし、菊子の目に涙が浮かんでいるのを見て、朴念仁の金平にもようやく菊子の想いは伝わり、プロポーズをする金平。金平の胸で泣く菊子。
診療室で一人酒を飲む菊子。もう二時だし、明日は結婚式なのだから寝なさいとアキが現れる。結婚することが決まってから、つっかえ棒が外れて、ガタガタになってしまった。おかあさんお世話なりましたと言う菊子。二人、静かに涙を流す。窓を開けると、父親が好きだった沈丁花が咲いている。高浜虚子の「娘(こ)の部屋を、仮の書斎や、沈丁花」という句も、お父さんが好きだったと言うアキ。
翌日、神社で結婚式を挙げる菊子と金平。新幹線で新婚旅行に出る二人。鶴夫の試験はどうだったのと聞く菊子に、落第だから追試験を受けさせないと駄目だと金平は応える。幸せそうに笑う二人。
杉村春子を筆頭に、オールスターキャストのような映画。婚期を逃した娘京マチ子と、心配する母、杉村春子のやり取りをはじめ、ちゃっかりしている三女団令子と、四女星由里子が、姉たちの縁談について母に叱られてしゅんとなる場面・・・・挙げていくときりがない。メリハリが効いていなながら、情感に溢れた名場面が多数。うーん役者、俳優、最高の演技と、演出、素晴らしいなあ。
59年東宝千葉泰樹監督『狐と狸(137)』
北関東を洋服や、着物、反物などを担いで行商して歩く甲州商人。人絹を本絹と偽って、田舎の百姓たちを騙して商売をしている青島京太(加東大介)の元に、大学を出たが就職できずに困っていた甥の倉掛三郎(夏木陽介)がやってきて手伝わせてくれと言う。青島の仲間で青島の下で売人をやっているのは、飯塚半五郎(三井弘次)と湯舟吾一(小林桂樹)。青島は、隣のバーゴンドラのヒロ子(団令子)に入れあげている。
今日は、泊っている江戸崎銀座通りにある上州屋を出て、青島と三郎、半五郎と吾一で、地区割りをして商売に出かける。青島と三郎が歩いていると、向こうから蒲団を積んだジープに乗った浅田(南道郎)がやってくる、ゴンドラのヒロ子に宜しくと意味ありげに笑う浅田。いけすかない野郎だという青島。青島は、欲の皮を突っ張った百姓たちとの化かし合いだと言って、まず、地元の区長を務める豪農の安福秀松(左ト全)のもとに行き、オーバーコートと背広が、完全オートメーションの工場で作った製品で、北関東に出張所が出来たので宣伝販売中だと言う。安福は、糸を一本抜き燃やして、これは本毛だと確かめる。お客さんは、こんなことも知っているんですかと持ち上げておいて、コートと背広を1万2千円の値段を出し、渋々1万円に負けた振りをして、6千円の代物を売りつける。会社宛に1万円で売っていたと名刺に名前と判子を頼み、それを見せながら、他の農家を回って売りつけるのだ。更に、食事をした店で雨が降ってくると、もう荷を担いで帰るのがおっくうだから、捨て値で譲るといって1万円で売りつけるのだ。
一方、吾一は、偶然入った農家の息子が予科練で死んだと聞いて、その老婆(飯田蝶子)に予科練時代に銀シャリを食わして貰った息子の友人だと騙して、勤めていた会社を首になって、退職金代わりに洋服を売っているのだと言って、買って貰う。半五郎は、少し頭の弱い男を演じて、安く買いたたいてやろうという百姓一家に売りつける・・・。to be continued.
立て万国の労働者と失業者!!
独身美人OLに惣菜を貢ぎ、元同僚と昼食。
61年東宝筧正典監督『
笠島昇(池部良)は、国鉄の営繕課長。妻の友子(淡路恵子)
純子は稔の部屋に住むことになる。
純子が夜道を歩いていると、若い男がウロウロしている。
三上は日曜日にデートをしないかと純子に電話をする。
翌日、授業中にぼうっとしている純子。三上も仕事中に考え事をしている。昇は不機嫌だ。そこに、克代から電話があり、その夜会うことになる。急に会議が入って、遅くなると友子に電話をする昇。食事をしながら家庭の愚痴を言っているうちにご機嫌に酔っ払う昇。夫と死に別れて独り暮らしの克代は、昔昇のことが好きだったと話し、何だか怪しい雰囲気に。一方、三上も、純子へのもやもやした気持ちに、先輩の大場(藤木悠)に誘われて飲みに行く。酔っ払った大場に連れていかれたバーに、昇と克代がいる。大場は、止めようとする三上を振り切って、昇はとても優しい上司だから、ご馳走になろうと勝手に同席する。少し前に、自分のアパートの電話番号をバーのマッチに書いて渡す克代に、朝まで飲もうといって盛り上がっていたのだ。微妙な雰囲気を感じて、まだまだ飲むぞと言う昇を無理やりタクシーに乗せ送って帰る三上。
泥酔した昇を送って、部屋にまで運ぶのを手伝う三上。友子に先輩の社員とバーで、親戚の女性と飲んでいる課長に偶然お会いして一緒に飲んだんですと思わず言ってしまう三上。三上を送るように純子に言い、スーツを脱がせ、寝かせる友子は、ワイシャツに口紅が付いているのと上着に電話番号が書いてあるバーのマッチを見つける。三上は、結婚するまで自活するために美容師になるんだという純子に、その必要はなくなったよと言って、プロポーズをする。純子は承諾し、キスをする二人。
純子の母さわ子が上京してくる。いきなり、結婚することにしたと連絡してきた娘に、東京に出したことが裏目に出たと嘆いている。しかし、三上と会って話をして、その誠実さをとても気に入るさわ子。笠島家に行き、昇と友子に、仲人をしてほしいと頼む。数日後の仏滅の日に、式場に急にキャンセルが出たので、プロポーズしてすぐに結婚式で、夫婦仲が怪しい昇と友子は躊躇いながら承諾する。
美容学校で、花嫁衣装の着付けと高島田の授業をしている。モデルは純子だ。教師(塩沢とき)が、本当の花嫁にモデルになってもらうのは本校初めてのことだと言い、教室じゅうが祝福する。一人泣く西川。そのまま、式場に向かう純子。
仲人の昇は、スピーチで、「自分の仕事のトイレの設計よりも、結婚は難しい。オスカー・ワイルドの言葉として、夫婦の愛情は、お互いが鼻につきだしてから、やっと湧き出してくる。ロマンスが見つかったのではなく、一生を賭けて作るロマンスを始めることだ。」と話す。新婚旅行の見送りで東京駅にいると、克代が500万の保険に入ってくれたと男と結婚すると言って、やはり新婚旅行に出かけるところに偶然出会う。帰宅した昇と友子。今日は二人にとって2度目の結婚式だねと言う昇。翌日、出かける昇に、家庭内ではトイレット部長に昇格させてあげると言う友子。
66年東宝千葉泰樹監督『沈丁花(136)』
上野家の法事。長女で上野歯科を継いでいる菊子(京マチ子)、次女で歯科の受付、経理を担当している梅子(司葉子)、他家に嫁いでいる三女さくら(団令子)、野村謙功(夏木陽介)との結婚が決まった四女あやめ(星由里子)の4姉妹と、弟の鶴夫(田辺靖男)、母親のあき(杉村春子)。今日の法事は、野村が、兄で僧侶の悠了(藤木悠)に読経を頼んでいるが、悠了は調子がいいがどうも頼りない。
あやめと野村の結婚式は仏式だ。式が終わって、あきの兄の島田(加東大介)と帰宅する、あき、菊子、梅子。鶴夫は、ナイターを見に行ってしまった。32歳の菊子と27歳の梅子の結婚が遅れているのがあきの悩みのタネだ。夫さえ生きていてくれればと、歯科医院を菊子が継ぐこともなかっただろうと思うと、どうしても愚痴っぽくなる。島田に菊子の縁談を念押しして、娘二人と、披露宴から持って帰った料理とタラチリで夕食を取る。日本酒を飲んでいるうちに、何故か大声で歌い始め部屋に上がる梅子。あきは、どうしても梅子に尋ねずにはいられない。あんた男の人嫌いなのかい。溜息をつき、歯医者として、男がカバのように大口を開けているのを見ると、始終エサをねだられているみたいで馬鹿にしかみえないのよといい、飲み過ぎてしゃっくりをする菊子。
姉妹たちの伯父の島田の貿易会社に、シンガポールで2年と4か月過ごして活躍していた工藤十郎(宝田明)が戻ってきた。報告書を持ってきた工藤が35歳だと聞き、また歯が痛むと聞いて、島田は菊子にどうかと思う。工藤に上野歯科を紹介して、あきにだけは工藤のことを伝える。海外で活躍したワニみたいな男だと説明する。隙間から工藤を見て、梅子に、工藤という客はどうだいと尋ねる。なかなかいい男だと言う梅子。歯を見た菊子は奥歯が1本多いことが分る。工藤は治療中暴れて、家が地震のように揺れた。帰り際、菊子を土曜の午後会わないかと誘う工藤。
土曜日、午前中で診察を終え、午後になって工藤のレンドゲン写真を見ながら調べ物をしている梅子の所に、着飾った菊子が現れ、梅子の鰐革のハンドバックを借してくれと頼む。承諾すると既に借りていて出かける菊子。菊子が待ち合わせに出かけると、工藤は一人ではなく、弟の五郎(佐藤允)が同席している。上野歯科のブザーがなり、休診ですと梅子が出ると、男(三木のり平)は寺尾と名乗り、32歳の独身歯科医の縁談募集の広告を見てやってきたと言う、名前は出ていないが、編集部に友人がおり、上野歯科の長女梅子だと知ってやって来たのだと言われ、叩き出す梅子。梅子はあきに怒りをぶつける。伯父の島田に頼んで、匿名の広告を出していたのだ。「42歳くらいまでOK、子供一人くらい可、少々資産あり」これじゃあバナナの叩き売りじゃないと涙ぐむ梅子に、32にになっても、お嫁に行かず、家に縛り付けられているあんたが不憫なんだよと泣き出すあき。実は、工藤さんも候補なんだけどどう思うと尋ねられ、まんざらでもない梅子。酔っ払って帰宅した菊子が、工藤とデートをしてきたと言う。経緯を話すあきに、それでも工藤のことを好きになったので譲らないという菊子。受けて立つと宣戦布告をする梅子。間に入ったあきは途方に暮れる。翌日、伯父の島田が現れ、工藤から菊子を弟の嫁に欲しいと頼まれた、工藤はインドネシア駐在中に現地で結婚していたと言う。笑いだす梅子と菊子。あきもがっかりしながらも笑う。
鶴夫の大学の教授の金平(仲代達矢)が診察を受けにやってくる。金平は、菊子と梅子を見て、なるほど﨟長けている(年功を積み、気品ある美しさを備えていること)と言い、鶴夫から腕は大したことはないけれど、美人で楽しめ、オールドミスの救済の一助になる。また治療代も安くしておくので、その分成績に、ご配慮くださいと聞いて来たのだと、全て話してしまう。梅子は勿論怒り、鶴夫が帰ってきたらとっちめてやりますと言う。
上野歯科の近くに、大岡歯科が内装工事中だ。大岡(小林桂樹)は、母親の朝子(賀原夏子)に、自分の腕には自信があるが、母さんが若い娘は嫌だ、後家は嫌だと言って断ってばかりだからいつまで経っても看護婦が決まらないじゃないかと文句を言っている。せっかく、息子に開業させてやることができたんだからという朝子。何も結婚相手のことじゃないんだからと言う大岡。大岡は、上野歯科に身分を隠して、診療を受けるが、美しくて、テキパキとしている梅子に目を奪われる。幾らもらっていますかと聞いて、住み込みで1万五千円と聞いて、それは安いなあと言う。
ある日、菊子が外出し、大岡歯科から大岡が出てくる。職人にあの人が先生だと聞いて、偵察に来たのだと知る。その頃、梅子は大岡から電話を受け、喫茶店で待ち合せる。自分が開業する歯科の受付に来てほしいと言いながら、結婚してくれと熱烈に求愛する。梅子はその晩遅く酔っ払って帰宅し、大岡と結婚すると宣言する。菊子は、人の病院に偵察に来るようなハンパ野郎と結婚するなんて、あんたの目はおかしいと言い、私だって、ノラ犬とサラブレッドの違い位分るわ、彼はサラブレッドよと言う梅子と大ゲンカになる。翌日、母のアキは、庭をぼーっと見ていると、鶴夫がなんだか愉快でなさそうだねと声を掛ける。とうのたった女が三人いれば、たまには愉快でないこともあるわと答えるアキ。
大岡医院に乗り込む菊子。あなたは、病院をスパイしに来た上に、梅子をタダで看護婦にしようという卑劣な人間だと詰め寄る菊子に、あなたは、腕は確かだが、頭はもうひとつですなと答える大岡。思わず、大岡の頬を打ち帰っていく菊子。すぐに梅子が現れ、ねえさんと憎しみ合ってまで、自分の幸せを欲しがらないわと言うのに、それじゃ駄目だと言って梅子の頬を打つ大岡。大岡に抱きついて、わたし、やっと決心がついたわと言う梅子。
教会で結婚式を挙げる梅子と大岡。帰宅して、鶴夫がお通夜みたいだなと言う。嫌なこといいなさんなと言いながらも、アキも、菊子も虚脱状態になっている。梅子の替りは、かって夫が開業していた時以来勤めることになった。梅子と大岡の新婚旅行は、レンタカーを借りて伊豆を一周するのだ。
金平が、診察のあと、次の土曜日の午後、アートシアターの映画の切符を貰ったので、映画を見たあとに食事をしませんかと誘い、菊子は承諾する。映画館で、ラブシーンが流れている。しかし、菊子の横に座った金平は居眠りをしている。食事の会話は弾むが、どうして40歳を過ぎても結婚なさらないのと聞く菊子に、そちらのほうは、全くもてなくてと答える菊子。
留守中、上野家には、菊子、大岡夫婦と、あやめ野村夫妻が来ている。二人の妹とも、菊子の縁談を持って来ている。菊子は、大岡の先輩で泥鰌すくいの上手い陽気な男(高嶋忠夫)、あやめは、インド哲学を学び石屋をしている男前川(小泉博)、帰ってきた菊子は、二人との見合いを了承する。続けて、見合いをする。どちらも悪くないと菊子は言うが、本当は金平が気になっているのに、煮え切らないので苛立っているのだ。翌日の金平の診察にも、それは現れて手荒になってしまう。見合いの話を他人ごとのように答える金平。しかし、菊子の目に涙が浮かんでいるのを見て、朴念仁の金平にもようやく菊子の想いは伝わり、プロポーズをする金平。金平の胸で泣く菊子。
診療室で一人酒を飲む菊子。もう二時だし、明日は結婚式なのだから寝なさいとアキが現れる。結婚することが決まってから、つっかえ棒が外れて、ガタガタになってしまった。おかあさんお世話なりましたと言う菊子。二人、静かに涙を流す。窓を開けると、父親が好きだった沈丁花が咲いている。高浜虚子の「娘(こ)の部屋を、仮の書斎や、沈丁花」という句も、お父さんが好きだったと言うアキ。
翌日、神社で結婚式を挙げる菊子と金平。新幹線で新婚旅行に出る二人。鶴夫の試験はどうだったのと聞く菊子に、落第だから追試験を受けさせないと駄目だと金平は応える。幸せそうに笑う二人。
杉村春子を筆頭に、オールスターキャストのような映画。婚期を逃した娘京マチ子と、心配する母、杉村春子のやり取りをはじめ、ちゃっかりしている三女団令子と、四女星由里子が、姉たちの縁談について母に叱られてしゅんとなる場面・・・・挙げていくときりがない。メリハリが効いていなながら、情感に溢れた名場面が多数。うーん役者、俳優、最高の演技と、演出、素晴らしいなあ。
59年東宝千葉泰樹監督『狐と狸(137)』
北関東を洋服や、着物、反物などを担いで行商して歩く甲州商人。人絹を本絹と偽って、田舎の百姓たちを騙して商売をしている青島京太(加東大介)の元に、大学を出たが就職できずに困っていた甥の倉掛三郎(夏木陽介)がやってきて手伝わせてくれと言う。青島の仲間で青島の下で売人をやっているのは、飯塚半五郎(三井弘次)と湯舟吾一(小林桂樹)。青島は、隣のバーゴンドラのヒロ子(団令子)に入れあげている。
今日は、泊っている江戸崎銀座通りにある上州屋を出て、青島と三郎、半五郎と吾一で、地区割りをして商売に出かける。青島と三郎が歩いていると、向こうから蒲団を積んだジープに乗った浅田(南道郎)がやってくる、ゴンドラのヒロ子に宜しくと意味ありげに笑う浅田。いけすかない野郎だという青島。青島は、欲の皮を突っ張った百姓たちとの化かし合いだと言って、まず、地元の区長を務める豪農の安福秀松(左ト全)のもとに行き、オーバーコートと背広が、完全オートメーションの工場で作った製品で、北関東に出張所が出来たので宣伝販売中だと言う。安福は、糸を一本抜き燃やして、これは本毛だと確かめる。お客さんは、こんなことも知っているんですかと持ち上げておいて、コートと背広を1万2千円の値段を出し、渋々1万円に負けた振りをして、6千円の代物を売りつける。会社宛に1万円で売っていたと名刺に名前と判子を頼み、それを見せながら、他の農家を回って売りつけるのだ。更に、食事をした店で雨が降ってくると、もう荷を担いで帰るのがおっくうだから、捨て値で譲るといって1万円で売りつけるのだ。
一方、吾一は、偶然入った農家の息子が予科練で死んだと聞いて、その老婆(飯田蝶子)に予科練時代に銀シャリを食わして貰った息子の友人だと騙して、勤めていた会社を首になって、退職金代わりに洋服を売っているのだと言って、買って貰う。半五郎は、少し頭の弱い男を演じて、安く買いたたいてやろうという百姓一家に売りつける・・・。to be continued.
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