2010年2月6日土曜日

暗黒街・・・・・今の日本の夜はどこもやけに明るい。

    京橋フィルムセンターで、アンコール特集:1995ー2004年度の上映作品より
    58年日活鈴木清順監督『暗黒街の美女(43)』
   夜道を歩く男の影がある。あるマンホールの前に立ち止まると、蓋を開け中に入る。通りかかったトラックの乗務員(長弘)が車を停め降りてくる。「絶対何かが動いた。」「錯覚じゃないのか」「このマンホールだ」乗務員は蓋を開け、中に入ってみるが、何かの死体を見つけて逃げてゆく。男(水島道太郎)は、下水道の煉瓦を抉じ開け、中に隠してあった拳銃と皮の小さな袋を取り出す。革袋には三つ大粒のダイヤが入っていた。
   とあるナイトクラブ、今宵も若者が踊り騒いでいる。クラブに下水道にいた男が入って来る。ボーイ(加藤博司)は男の姿を見つけると、グラスを乗せた盆を落として逃げ出した。このクラブを仕切っている組の連中は殺気立つ。音楽が切れクラブが静まり返る。男はジュークボックスにコインを入れる。重苦しい曲が流れ始めた。支配人室に入る。そこには大沢(高品格)がいた。「よう」と声を掛けられ怯える大沢。「宮本の兄貴・・・。」「いつ出て来たんです」「今朝だ。大矢根はいるか」「今日は本部の方に」「本部か・・・。すげえじゃねえか。南町でトルコ風呂を経営していて、そちらにいます」「三原はどうしてる?」「あいつは、ちんばになって、足を洗い、おでんの屋台を引いていますぜ」「大矢根に、ちょっと会いたいんだ」
   トルコ風呂「ニュートルコ」、女(三田蓉子)が電話を取る。「はい、会長慰安室です・・・・。会長、大沢さんからです」「こっちに回せ」大沢「コーナロックに宮本さんがお見えです」「野郎、いつ出て来たんだ?」「今朝らしいです」「石のこと何か喋ったか?・・・そうか、石のこと話すんじゃねえ」
   ニュートルコに宮本を案内する大沢。「会長室は4階です」大矢根(芦田伸介)「お帰り、いつ出て来たんだ」「今朝だ」「連絡をくれれば誰か迎えにやらせたものを・・。大沢!!何ぼやぼやしているんだ!兄貴に何かお出ししろ!!!俺もなかなか、事業の方が忙しくてな」「そうらしいな・・・。頼みがあってやってきたんだ」「水臭せえじゃねえか。お前には、あの時随分借りがある」「例の石のことだが、処分したいんだ」「持っていたのか」「あの石を捌いて、その金を三原にやりてえんだ。あの時の出入りで、俺は3年食らったが、口を割らなかった。三原は、撃たれてびっこになって、貧乏籤引かせちまったからな。だからおめえも泣いてくれ」「勿論だぜ。で、石は今日そこに持っているのか」「捌ける時にもってくるぜ」「ちょうど、近々、船が入るぜ。おい宮本!良かったら一風呂浴びていかねえか」「今日は遠慮しておくぜ」帰って行く宮本。大矢根は、大沢に後をつけるよう目配せする。
   三原(安部徹)のおでん屋台。妹の亜紀子(白木マリ)「あんちゃんをびっこにさせた奴は今も務所かい?会ったら私がぶっ殺してやる」そう言って去っていく亜紀子。「有田の野郎と付き合うんじゃねえ!」刑事の渡辺(二谷英明)が顔を出す。「どうだ?」「いや景気はよくないです」「でも頑張るんだぞ。妹も危ない年頃だ気をつけてやるんだぞ」「へい」
   渡辺が去ると、隠れていた宮本が顔を出す。三原の顔がほころんで「宮本の兄貴!!!」「今のはデカの渡辺か?」「ええ」「おめえには、悪いことをしちまった。お前を誘わなければ、びっこにならなかったものを・・」「俺が希望したんでさ。それに、まだ足は1本残ってますぜ」「そういえば、妹さんが国から出て来たんだったな」「あいつ、すっかりぐれちまって・・・。」
   亜紀子は、有田(近藤宏)のオフィスに来て、「さあ、仕事しよう」と服を脱ぎだす。有田は、マネキンの塑像を作っているのだ。デッサンをする有田に甘えて、「あ~あ、くたびれちゃった」「駄目だ!!ワンモー!ワンモー!」有田が亜紀子の彼氏なのだ。電話がなる「もしもし、有田です。分りました。すぐ電話します。今日は仕事だからここまでだ!帰ってくれ!!」「遊ぼうよ」我儘を言う亜紀子を部屋に閉じ込めて外出する有田。
    
   ヒロイン白木マリを美女じゃないだろと誰も突っ込みたくなるだろうが、前作の「拳銃と裸女」に続く水島道太郎、鈴木清順、白木マリ作品。清順はタイトルを会社に変えられても、表立って騒がなかっただろうし、清順と作品を責めるのは違う気がする。でも、イタリア映画全盛期、日本にあんな肉体派女優は貴重だったと思うよ(笑)。

   もう何本か観ようかと思っていたが、プチ幸せなメールが入り、少し浮かれて、西荻に帰り、博華で餃子とビール。

2010年2月5日金曜日

62年の映画は圧倒的だが、70年代にもいい映画はある。

    ラピュタ阿佐ヶ谷で、昭和の銀幕に輝くヒロイン【第51弾】若尾文子
     62年大映東京木村恵吾監督『やっちゃ場の女(40)』
    築地青果市場、通称やっちゃ場。小田ゆき子(若尾文子)は、「精ちゃん!リンゴとネーブル頼んだわよ!」井上精一(藤巻潤)「ネーブルは手が出ないですよ」「どうしても欲しいのよ」「女将さんに怒られますよ」「大丈夫よ!頼んだわよ!私は夏柑…」夏蜜柑の競りに参加し、競り落とすゆき子。仲買人たちに「小田新さん、そんなに仕入れてどうするの?」「冷凍して、後で外人に売るのよ」「しっかりしてんなあ」
    店の使用人の三吉(吉葉司郎)春夫(飛田喜佐夫)らに「三ちゃん!ボーっとしないで!荷を店に運んで!あら精ちゃん!どうだった?」「リンゴは仕入れましたが、ネーブルは手が出ませんでした。ダメね精ちゃん、あんたは案外臆病なんだから…」
     この小田新は、大根河岸の時代から続く青果仲買、ゆき子は5代目だ。女将はゆき子の母のくめ(清川玉枝)だが、血圧が高く今日は休んでいる。
     ゆき子は家に電話をする「ああおきよ!?一郎はどうしてます。駄目よ、あの子はすぐ学校サボるんだから」一番古い女中のおきよ(小笠原まりこ)「坊ちゃまは、今お食事中です。女将さんは、休んでおられます、あっ今起きられました」くめ「ああ大丈夫だよ。ちょっと目眩がしただけなのに、あんたたちが騒ぐから。どっちにしても、今から支度をして店に行くよ。一郎ご飯食べているよ。あたしが甘やかすから学校に行かないって、はいはい分かりました。えっ?早苗に20円の小遣い?わかったよ。あんたの方が甘やかしているじゃないか」一郎は、拳闘好き、いきなりおきよの腹にパンチを入れる。息が詰まって、悲鳴を上げ座り込むおきよ。
    次女の早苗(叶順子)が降りてくる。早苗は丸の内の商事会社のBGだ。くめが「あんた、間に合うのかい?」「全然平気よ。あたし課長さん全く怖くないの…朝食はいらないわ」とリンゴだけとる早苗に「体に毒だろ」とくめが言うが、「あたし少し痩せないと」と言われ「あたしも少し減量したほうがいいかね」と自分の腹をさする。「そうそうゆき子から、あんたにお小遣いをと言われてたわ」と財布を出すが、40円の筈が、百円札2枚取られてしまう。そこに、精一が配達の途中、家用の果物を持って来た。早苗は方向が違うと言う精一に、強引に会社まで送るよう頼む。三陽商事の前に、小田新の小型トラックが停まる。下車した早苗に、先輩BGの市田(穂高ねり子)が声を掛ける。「あら、今運転していた人イカすじゃない?」
    出勤した早苗に課長の伊達(根上淳)が声を掛ける「君ひどいじゃないか、昨日の晩、僕は8時過ぎまで待ったんだぜ」「私は伺えませんとお断りした筈です」「いや、誤解して欲しくないんだが、僕は変な意味ではなく、部下の女子社員を理解するために、たまに食事に誘うんだ」「失礼します」
    くめが店先で客に怒っている。「小田新は、大根河岸の時代から、ツケなしの現金商売でやってきたんだ。その代わり、品物はやっちゃ場一だ!!高いだなんだ言うなら他の店に行っておくれ!!」ゆき子に「お母さん、血圧高いんだから怒っちゃだめよ」と窘められる。くめは、ゆき子の目を盗み、戸棚から一升瓶を出し、コップ酒を美味そうに飲み干す。精一が「女将さんいけませんよ」「ゆき子には内緒だよ」「そうじゃなくて、体を心配しているんですよ」しかし、鳴った電話を取ろうとしたくめは、ふらっと倒れてしまう。ゆき子も店の者たちも慌てて駆け寄る。
    小田家の前にタクシーが停まり、早苗が 慌てて降りて来る。玄関先で早苗が「お母さんは?」と声を掛けると、女中のおときとおまつは泣き出した。くめの布団の横に、医者と看護婦、ゆき子らが座っていた。ゆき子が「お母さん死んじゃったわ。さっきまで、鼾をかいて眠っていたのに、それっきり」と淡々と言うのを聞いて早苗は母の亡骸にしがみついて号泣した。「一郎は、また今日も学校サボって…。学校に電話をしても今日は休みだと言われたし」とゆき子。探しに出る精一。組合長が、ゆき子の肩を叩いて、席を外す。「直ぐ、こんなことを言うのは何だが、葬儀の方は、組合で手伝わせて貰うが、どうする?親父さん、声を掛けた方がいいだろう」赤坂の叔母萩源たけ(村田知栄子)が私が言おうかと言うが、「あんな人お父さんでも何でもないわ…」と言いかけて、「私が話に行きます」と気丈に言う。
   父の源三(信欣三)は、病気の時の付添婦の時子(水戸光子)と駆け落ちし、佃島で暮らしていた。源三が間借りしている家のおかみさん(村田扶実子)「誰?おしまさん?」「築地の小田でございますが…」「あらまあ」おかみは慌てて「ちょっとお待ちを」と言って二階に駆け上がる。二階で浴衣を縫っているお時に「小田新のお嬢さまだよ。お父さまいるかって!?」

    学校、今年度最後。2年生はこれが最終日なので、自分の講義の感想を書かせる。概ねホロリとさせる。巧いなあ。評価大甘になりそうだ。一年のイベント実習は佳境。集客大丈夫だろうか?心配だなあ(苦笑)


    シネマヴェーラ渋谷で、70年代の青春 鬱屈と混沌と
   76年松竹/バーニングフロダクション山根成之監督『さらば夏の光よ(41)』
   夜の無人の街を空き缶を蹴りながら走る宏(郷ひろみ)。前をみると車が停まっている。助手席のドアが開き、女が外に出ようとする。「嫌よ!わたし帰る」「いいじゃないか…」車のボンネットを叩き「開けろよ!降りろよ!馬鹿野郎!!へえ、いい女じゃねえか?…学生だろ!!女も車もお前には勿体無いって言ってるんだよ」車を降りた男と殴り合う。


   78年日活藤田敏八監督『帰らざる日々(42)』
   1978年夏、窓から西新宿の高層ビルが見えるアパート。野崎辰雄(永島敏之)と西螢子(根岸とし江)「ねえ、どうして急に国に帰るなんて言うのよ」「だから電報が来たって言っただろ」「何て書いてあったのよお」「電報を食っちまったと言っただろ」「里帰り、いいわね。6年振りの帰郷。あー帰る田舎がある人はいいわね。どうして私を連れてってくれないの?」「仕事まずいだろ」「ホステスだから?」「ホステスとボーイが付き合っているのがバレたらマズいだろ!!」「そんな法律ないわよ」「就業規則があるだろ。どうせ直ぐ帰ってくるよ」「あんたが帰った時には、私はいないかも。転がりこんで、いなくなる、簡単なものね…」うんざりした表情の辰雄。
    翌日、新宿駅、中央本線飯田行き急行こまがね一号のホームに螢子が現れ、辰雄を見つけ駆け寄る。「誰かと一緒じゃないかと思って確かめに来たな…。店の明美ちゃんとか美沙子とか…」週刊誌と缶ジュースを買って、窓越しに辰雄に渡す螢子。
   発車し、しばらくすると熟睡する松男。列車は甲府に着く。突然、「野崎!野崎じゃないか!?長姫の建築科で一緒だった田岡だよ」自衛隊の制服をきた田岡(丹波義隆)は若い女(加山麗子)を連れている。「僕は防衛庁にいるんだ。こちらは婚約者の村瀬喜代美さん。彼は高校のクラスメート野崎。国語だけは、どうしても勝てなかった」「結婚かあ」「彼女の父親が空幕で…、縁あってこうなったんだ…、懐かしいなあ、あの夏はいろんなことがあったなあ、駒ヶ岳のライフル乱射の立てこもり事件や、あの首吊り事件や…」勝手に喋り続ける田岡。
   辰雄の脳裏に、高3の夏が思い出される。
   1972年7月、飯田の喫茶店BONに、辰雄と級友の八郎(阿部敏郎)相沢(高品正広)赤点(深見博)が座っている。辰雄はウェイトレスの竹村真紀子(浅野真弓)を好きなのだ。辰雄たちの隣の席の怪しい中年男(小松方正)が「お姉ちゃん、ジンフィス」と真紀子に声を掛ける「うちは喫茶店なんですけど」と答える真紀子。しかし、チンピラのような若い男が店に入って来て、真紀子に親しげに声を掛ける。指を3本立て、真紀子が財布を出すと、そこから札を持って行くヒモのような男(江藤潤)。誰かが「あいつ、学校で見たことがある」と言いだす。
   数日後、校内マラソン大会が行われる。辰雄の仲間たちは、直ぐにバテバテだ。しかし、折り返し地点で辰雄は、あの喫茶店のマドンナ真紀子のヒモが走っているので、俄然やる気がでる。男を抜かし、挑発する辰雄。男もダッシュし始めるが、転んでしまい、辰雄の圧倒的な勝ちかと思われたが、男は、斜面をショートカットして走り始めた。圧倒的な勝ちを確信した辰雄が悠々と走っていると、目の前に男がいる。目を疑う辰雄。ダッシュして抜こうとするが限界だ。コースの脇で、黄色い胃液を吐く辰雄。
  辰雄の母親の野崎加代(朝丘雪路)が電話で言い争いをしている。別居中の夫、野崎文雄(草薙幸二郎)が家を出て若い女と同棲しているので揉めているのだ。そこに辰雄が帰ってくる。酔相手を察して、辰雄が黙っていると、「今からお店に出なければならないけど、御飯どうする?」と加代。「気持ちが悪いんでいらないよ」と辰雄。
  ある夜、学校前の林で、辰雄が一人佇んでいると、あの男がやってきた。「俺は黒岩隆三、土木だ。この間の校内マラソンで、お前がつっかかって来た訳が分かったぜ」偉そうな言い方に辰雄がむかついていると、「これだろ」喫茶店ボンの真紀子の写真を出し、「やるよ!これでセンズリでもかけよ」頭に来た辰雄は、隆三に飛びかかり、喧嘩だ。殴り合い、揉み合っていると、辰雄は、上から下がった足に抱き付く。見上げて、それが首吊り死体であることを知った辰雄は腰を抜かした。首を吊っている男は、以前喫茶BONでジントニックを何杯もも頼んでいた中年男だ。逃げようとすると、隆三が、自殺した男の鞄を改め始める。茶封筒に10万程の金が入っているのを見つけると、「この金は残しておいても誰にもいいことないんだ」と呟くと、辰雄のポケットに無理矢理3万程突っ込み、残りを自分のものにした。
    脂汗をかきながら帰宅する辰雄に、「野崎くんでしょ」と声を掛けたのは中学の同級生だった平井由美(竹田かほり)だ。名古屋に行っていたが、飯田に帰って来て、水商売をやっているという由美に生返事で帰宅する辰雄。
    翌日、学校は大騒ぎだった。使い込みをした小役人の杉本双一郎と言う男が、東京から逃げてきて学校の前の林で自殺したのだ。クラスの誰かが「男は戦時中飯田に疎開していたらしい」と言う。
    どうも引っ掛かった気持ちのまま浮かない表情の辰雄。授業中に、校庭で体操をする女生徒のブルマーを眺めていると、安西がエロ本を見ているのを見つかる。「これは何だ!?」「エロ本です」引きちぎる教師。直ぐにチャイムがなり、教師は出て行ったが、級長の田岡が注意をし、安西と喧嘩になる。取っ組み合いの2人に防火バケツの水を掛ける辰雄。
    隆三が試験勉強をしている。ふと手を休め、机の引き出しを開けると、隆三が貯めた金が入っている。その中には勿論首吊り中年から盗んだ金も入っている。引き出しの奥から、日本競輪学校の案内書を取り出し、ウットリ眺める隆三。窓が開き、真紀子が「感心ね。勉強しているのね。お母さんがおはぎを持っていってやれって」「そんな筈はないよ」「相変わらずひねくれているのね。だから友達が一人も出来ないのよ」「いや、一人いる…」「へえ…ホント?」疑わしそうな真紀子。「うるせえな。」
   真紀子は、隆三が住む離れに上がって来て「お茶入れてあげるわ」「酒がいいな。母屋から持ってきてくれよ」「そんなこと出来る訳ないじゃないの」近くのヤカンを取る真紀子に、突然抱き付き「やらせろよ」「あたしたちいとこなのよ」「いいじゃねえか」必死に抵抗し、最後に隆三の腕に噛み付いて逃げる真紀子。「油断も隙もあったもんじゃない」浴衣を身繕いし、しかし、お茶をいれて上げる真紀子。お茶を飲みながら「本当に友達出来たの?」「同じ学校で、よくマキの店に来ている奴…」「野崎さん?」
     一人辰雄が試験勉強をしていると、父親(草薙幸二郎)から電話が入る、「母さんが離婚届にハンコを押さないんだ。お前からも説得してくれないか…。」辰雄は歓楽街に出る。自分の母親の店?だ。サングラスを掛けカウンターに座る。コーラを出そうとする母親。横に座っていた着流しの男(中村敦夫)が、飲めとビールを注いだ。「戸川さん」と母親は止めようとするが、いいだろと戸川。戸川が別の店に連れて行ってくれた。突然カウンターの中にいた平井由美が「野崎くん!」と声を掛ける。店のママで由美の母親の平井ふさ(吉行和子)は、ヤクザの戸川佐吉の情婦らしい。ふさが戸川に電話を渡すと、突然怒鳴りつける。由美によれば、この店の権利のことで揉めているらしい。
  

2010年2月4日木曜日

2年ぶりの失速バンド

午前中は、池尻にあるIさんの事務所。

シネマヴェーラ渋谷で、70年代の青春 鬱屈と混沌と。

75年東宝映画小谷承靖監督『はつ恋(38)』
冬の湘南の海岸、由木原一彦(井上純一)が手持ちの16mmカメラを自分に向けている。
半年前の夏の日の朝、同じ海岸を、犬を連れた一彦が、友人の守(塩崎三樹男)と自転車に乗っている。地元の漁師に金を渡し、一隻の古い小舟を買う。
一彦と守は、舟を白いペンキで塗る。「名前どうする?」「カレン…」「カーペンターズかあ、あの娘、腰が太いからな…」「ミレイ。M・I・REY…」「ミレイユ・マティスかあ、まだネンネだぞ」「ビッキー、リンダ、ダイアナ…」「何で女の名前ばっかなんだ?」「船の名前は女の名前だろ」「舟には、女と猫は不吉だろ」
翌日、一彦が、舟に積もうと無線や水や食料を持って来ると、守の姿がない。替わりに、舟の陰から、白いサマードレスを着た若い美人(仁科明子)が立ち上がり、「海辺って不便ね」と笑うと、白いパラソルを開いて歩いて行く。一彦が女のいた辺りを見ると、小便をした跡がある。バケツに海水を組み、その辺りに掛ける一彦。しかし、女の後ろ姿を見つめる一彦は笑顔だ。
しばらくして、やって来た守は、一彦が日除け兼用の帆を広げていても浮かない顔だ。「お前にこの舟やるよ!」「えっ、もう飽きたのか?本代を貯めてやっと買ったんだぞ!」「俺だけここに残りたいって親に言ったんだけど…。親父が神戸に転勤なんだ…。田舎だったら、受験に不利だとか言えたかもしれないけれど、神戸じゃな…」
東京高裁の廊下を、報道陣に囲まれ判事の由木原直彦(二谷英明)が歩いている。「私は学者ではない。裁判官として、私は良心に従って判決を出した」その模様を放送するテレビの前で、一彦が手にしている新聞には、「東京高裁で、公務員のスト理由による解雇は違憲。憲法の新解釈」と言う大きな見出しが踊っている。判事として父親の写真が乗っており、誇らしげな一彦。
窓の外が賑やかだ。昨日の白いサマードレスの女と4人の男たちが、荷物を運び込んでいる。空き家だった隣の家に引っ越して来たようだ。昨日の美人が隣人になることで、嬉しくなった一彦が、隣の家を覗きに行く。玄関先で、女はビール瓶を開け、自分が飲んでから男に渡す。男たちは、女が口を付けたビール瓶を喜んでラッパ飲みをしている。一彦は、外人の男に見つかり「レイディを、そんな見方しちゃ駄目よ!」と注意をし、ピーピングトムと言う。慌てて家に逃げる一彦。
その日の夕食、久しぶりに道彦の早い帰宅に母親の雅代(南風洋子)も華やいでいる。祖母のきく(原ひさ子)は虫眼鏡を使って、鯛の骨を取っている。「おばあちゃん、骨取ってあげようか」と一彦。道彦に「今日の判決どうだったの?」と声を掛けると、「お父様がせっかく帰っていらっしゃったのに、そんなお仕事のお話するんじゃありません」とたしなめられる。しかし、そんな母も「隣に画家の未亡人と言う方と娘さんが引っ越して来て挨拶にいらっしゃいました。でも、変な方で、相続のことで揉めているので、判事さんにご相談しようかしらと言うので、ウチの主人は、そんなつまらないことやりませんって言ってやりましたわ。きっとお妾に違いないわ」と言って、道彦に「そんな言い方するんじゃない」と窘められた。母親は、女中のはつ(笠井うらら)に八つ当たりする。
翌日、一彦が自転車で出掛けようと隣家を通りかかると、門の前で女が目を瞑って微睡んでいる。一彦が近づくと、女は突然目を開け、街まで行くなら乗せていってと荷台に座った。「私の名前は、松宮るお、変な名前でしょ。お父さんが付けだの…」「画家だったんでしょ、聞きました」「私は率直な言い方が好きなので聞くけど、私はあなたの顔好きだけど、あなたは私をどう思う?」「…」「若いんだから、はっきり言いなさい!」「あなたは、綺麗です!」後ろのるおの腕が自分にしがみついていることに、とても嬉しい一彦。ブティックで白いドレスを値引きして、食料品と、マーガレット(?)の花束を買った一彦とるおが帰って来ると、由木原家のシェパード太郎が吠えかかる。道彦が散歩させようと出て来たところだった。ここでと遠慮するるお、ちゃんとお送りしなさい一彦に命じてと、軽快に太郎を伴って走り出す道彦。見送るるお。
るおの荷物を抱えて一彦が隣家に行くと、るおの母、道子(根岸明美)が、るおに「あんた、何時まで遊び歩いて、私を飢えさせる気かい?何だい!その服!あんたウチにいくら金があるんだい!?」と噛みつく。るおが「お母さんの好きな?も買ってきたよ」と答える。食料品の紙袋をるおから取り上げ、袋の仲の物を確かめる道子。
見てはいけないものを見た気がして、帰ろうとする一彦を追い掛け、今晩、東京の友達が集まってパーティをやるので、参加してと誘うるお。
その夜、スーツにネクタイをした一彦は、居間を通ろうとすると、雅代が道彦と話している。「松田画伯は、自分が京都にいた時に事件を扱ったことがあった。自分は次席判事だったが、確か認知訴訟だったな」と言う道彦に、「いやね。やっぱりお妾さんだったんだわ。近所付合いを、どうしようかと悩んでいたけど、お付き合いしないことに決めたわ。あら、一彦どうしたの?」「友達の家でパーティがあるんだ」「あなた、ひょっとしてお隣のウチね。近所付き合いをお断りすることにしたわ」道彦が「もう、一彦は子供じゃないんだ」「子供です」結局部屋に戻る一彦。暫くすると道彦がやってくる。手には一彦の靴をぶら下げている。「あんまり、遅くならないうちに帰って来いよ。」

  
木村(岸田森)阿川(内田勝正)沢田(富川激夫) フレデリック(ジャクソン・スミス)昌夫(中村健介)

75年松竹/サンミュージック広瀬襄監督『スプーン一杯の幸せ(39)』
梅村乃里子(桜田淳子)古賀昌子(沢田亜矢子)田所由美(石原亜希子)林泉(長谷川コッペ)鮎川光江(百々玲子)ら光明女子高バトミントン部員が、晴れ着で野立てに参加している。澄ましていても、直ぐに足が痺れ、モジモジし始め、苦痛に顔がゆがむ。庭園に男(黒沢年男)が現れ、望遠レンズをつけたカメラで撮影をし始める。乃里子は、自分たちの醜態が撮られていることに気が付き、男を捕まえようと立ち上がるが、足が痺れて、転び引っ繰り返る。せっかくの晴れ着も破けて散々だ。とっ捕まえようと思った男は、やってきた美人(早乙女愛)と親しそうに話しながら去って行った。
とある下町にある小料理梅村、女将の梅村千恵(浜木綿子)に口を開けさせ、「きれいな歯ですね。まさに明眸皓歯だ」と歯科医。そこに丸山耕作(坂上二郎)東々亭豊楽(三遊亭小円遊)が現れ、抜け駆けはいけませんよと言う。みな千恵の大ファンで、自称「千恵の純潔を守る会の会員」なのだ。そこに晴れ着の乃里子が帰って来る。晴着の乃里子をみな褒めそやすが、乃里子はプリプリ怒って、二階の自分の部屋に上がって行った。千恵が上がって来て「どうしたの?」と声を掛ける。「お母さ~ん」甘えるように、野立てでの事件を語る乃里子。「あら、あなた、足が痺れて転んだから、破いちゃったんじゃないの?」千恵には、全てお見通しだ。「そうそう、乃里子宛てに、届いていたわよ」差出人が書かれていない郵便物を手渡し、店に戻って行った。包を解いて、中に入っていたブローチを嬉しそうに見つめる乃里子。
数日後の朝、セーラー服姿の光明女子高バトミントン部員たちは、通学途中「レディたちの春」という記事が載った週刊誌を見て、口々にこんな写真出されたらお嫁に行けなくなっちゃうと怒っている。先日の野立てでの姿が載っているのだ。小さい文字で、カメラ福島清彦というのを見つけ、週刊誌の編集部に電話をして抗議しましょうと言っていると、目の前に、先日のカメラマンが歩いている。跡をつけると、光明女子高の構内に入って行く。   
朝礼で、神近校長(葦原邦子)から、新任の先生として紹介され登壇したのは、福島だ。

松田徹(坂上大樹)丸山良夫(佐藤佑介)山下剛(加藤和夫)宇田川正(橋達也)若林辰平(中村一司)(黒沢年男)ひとみ(早乙女愛)松本喜代子(清水理絵)島岡大介(沖正夫)大古茂一(山本伸二)松田徹海(山田禅二)ゴルフ場の指導員(小松政夫)谷本医師(穂積隆信)女学生(西川洋子)

夜は、5月に行われる失速バンドというイベントのキックオフ飲み会。久し振りの方々と飲み盛り上がる。

2010年2月3日水曜日

イベント2週間前。

    洗濯をして、学校へ。今日から試験期間だが、試験ではなく、通常の授業にして、今まで提出したものと、授業態度で成績をつけることにしている。苦労した2年生のクラスも、あと1回だと思うと少し感傷的になるが、勿論学生たちにそんな空気は全くない(苦笑)
    1年のイベント準備は佳境に、ようやくやる気になって良かった、良かった(笑)。近くにいたN氏と話し、その後、イベントのゲストを頼んだ実籾の歌姫と学生たちの打合せに。サイゼ(苦笑)で、実籾の歌姫を待つ間、学生にはメシだけ食わせ、自分だけワイン。サイゼ(苦笑)のワインは安い分、どうも変な酔いとなり、実籾の歌姫が来た時には、いつもの酔っ払いに。一人だけ飲むのは辛いなあ。

2010年2月2日火曜日

寝不足の割には、忙しい一日。

   一昨日からCPAPが故障し、眠りが浅いせいか、早く目が覚めてしまい。パソコンに向かう。
   昼前に横浜のI先輩のオフィスに行き相談事。直ぐに引き返し、浜松町の睡眠障害クリニックで、動かないCPAPを交換してもらう。
   遅目の昼食を済ませ、浜松町から神谷町まで歩いて元会社で百周年企画打合せ。その後N氏と、白金のデザイン会社へ、バスで渋谷に出て、別れて銀座。
    
    銀座シネパトスで、魅惑の女優列伝Part.2 関根恵子
    70年大映東京帯盛迪彦監督『高校生ブルース(37)』
   北原良子(関根恵子)が、夏服のセーラー服で、登校してくる。五十嵐(篠田三郎)たち、クラスの落ちこぼれ4人組は、ミス百合ヶ丘高校の良子がやってきたと騒いでいる。クラスの優等生加藤昇(内田義郎)が良子を見つめている。
    体育の時間、校舎の屋上から、女生徒のブルマー姿を双眼鏡で眺める4人組。高松と川上が見学をしているのを見つけ、五十嵐がノートを開く。クラスメートの生理日を記録しているのだ。ランニングをしている女生徒たち。良子は徐々に遅れ、終いにはお腹を押さえて倒れてしまう。体育教師の井島が慌てて医務室に運ぶ。ものすごい汗をかき、医務室のベッドで気が付く良子。
    2年C組は英語の授業中だ。良子が後ろのドアから入ってくる。蝶ネクタイの英語教師が「体育の井島先生から聞いたけど、大変だったって?私の授業なら休んでいていいから・・」「大丈夫です」と良子。心配そうに眺める昇。



   ダイニチ配給ということは、末期の大映作品。性典ものだ。びっくりするほど、酷い出来だが、当時は、クラスメートが脱いだようで中1男子には、アカデミー賞並みの映画だった(苦笑)。しかし、当時15才の関根恵子が体当たりでと言うことは、今の児童ポルノの要件に当たってしまう筈だ。かっての言葉狩りのように、児童の人権という錦の御旗のもとに、被害者のいない表現の魔女狩り。

2010年2月1日月曜日

寒い朝

  旗の台の事務所で、もろもろの打合せ。自宅居酒屋関連のメールや電話を頂く、本当はこちらからお礼の連絡をしなければならない筈なのだが。

2010年1月31日日曜日

観劇。

    今朝起きると、完璧に洗い物が片付いている。本当に有り難いなあ。窓を開け空気を入れ換え、常備菜になるものを保存食器に纏め冷蔵庫に、素材は冷凍庫に、ゴミを月曜に出せるように纏めてから、残り物ブランチ。唐々鍋、辛味噌は投入前の時点ではあまり極端な辛さではないと思っていたが、雑炊を温め直して食べると、それなりに辛い。久しぶりの根菜尽くしと辛さで、腸の活動が活発化し、駅に向かう途中で、我慢出来なくなり、早歩きダッシュで帰宅、間一髪間に合い、再び外出。
   今日は体験入学の講師だったのだ。ギリギリだった。生徒は女子二名。
   それから、池袋の東京芸術劇場小劇場で『悪ノ娘~凄艶のジェミニ~』を観る。外苑前粥屋の主人のが出演しているのだ。いきなり主役格で出演で驚く。他人の姪だが、勝手に「こんなに立派に成長して・・・」と感慨にふける(苦笑)。芝居時代は、アニメ世代の演劇はこういうものなのか・・・という感想。(すみません。写真は無断転載しました)