2009年2月28日土曜日

武蔵小杉と六本木。

    大門の歯医者で昨夜のインプラント埋め込み跡の消毒。
    川崎市市民ミュージアムで、
 70年創造社/ATG大島渚監督『東京战争戦後秘話~映画で遺書を残して死んだ男の物語~(116)』。
 8mmを撮っている男がいる。そこに元木象一(後藤和夫)たちが、取り囲みカメラを返せと迫ってくる。男はカメラを持ったまま走り出し、ビルの屋上から飛び降りる自殺をする。パトカーと救急車がやってくる。警官が証拠品として持って行こうとする。元木は、パトカーを全速力で走って追いかけるが、見失う。男が撮影していたフィルムは、普通の住宅街の屋根だったり、ありふれた商店街だったり、煙草屋の老婆だったり、何を撮ろうとしていたものだか全くわからない。
    元木が目を覚ますと、映画製作サークルの部屋で、皆討論をしている。4.28沖縄返還デーを撮影し続けていたが、私服警官にカメラを奪われてしまったのだ。カメラを奪還しようと追跡していて、元木は倒れたのだ。しかし、元木は、何故か、自殺した“あいつ”という存在に取りつかれている。映像製作の政治活動としての意義を語り合う仲間は、元木が意味不明の発言をしているのは、疲れて錯乱しているのだろうと相手にせず、元木と、元木の彼女である泰子(岩崎恵美子)を残して去る。
   元木は、何故か泰子を“あいつ”の彼女だと思い込み、彼女を強姦しようとする。泰子はいつもと様子の違う元木に戸惑う。しかし、“あいつ”は、風みたいに静かで、水みたいに穏やかで、太陽みたいにギラギラしていたわと元木に答える。元木は、泰子と“あいつ”の撮った風景を探し始める。一日中都内を回って、最後にたどりついた場所は、元木という表札のかかった家だ。中に入りましょうと言う泰子に、何故か今日はここまでにしようと答える元木。しかし、元木は翌日、その家を訪ねる。母親が久しぶりねと言う。腹が減ったと答える元木。2階の自分の部屋に上がり、ベランダから外を見ながら、母親の作ってくれた朝食を食べる元木。
   元木は、“あいつ”が撮影した場所を撮影し始める。しかし、泰子は元木が撮ろうとする場所に入って、撮影を妨害しようとする。泰子を引っ張り出しては撮影をする元木。しかし、国道を無理に渡ろうとした泰子は、車の接触事故を起こし、怒ったドライバーに、車に連れ込まれる。近くの店に機材を預け、車に駆け寄る元木。元木は、縛られて、助手席の足もとに転がされている。後部座席では、男たちが代わる代わる泰子を強姦する。泰子は、全く無表情だ。車は高速道路を走り続けている。河の土手に、泰子と元木が立っている。泰子は、私が見ていた風景は、“あいつ”が撮ったものではなかったので、“あいつ”に勝ったのだと言う。泰子は、ビルの屋上に駆け上がり、下を見ると泰子の投身自殺した死体がある。
   元木が、撮影していると、映像製作グループの仲間がカメラを返せと迫ってくる。元木は逃げ、ビルの屋上に駆け上がる。ビルの下に、カメラを手にした元木の死体がある。元木は、遺書としての映画を撮影したのだ。
   観念的な台詞が棒読みされる。政治闘争への絶望と喪失感、寂寥感なのか、とても哀しく、寂しい映画だ。すっかり、鬱々とした気分に・・・。
   六本木で、元同僚と会食。美人3人を呼んでくれたのだが、映画で遺書を残して死んだ男の物語から逃げたい気持ちとの相乗作用で、酔っ払う。

2009年2月27日金曜日

キムチを売る女。凄いタイトルの映画だが、中身も凄い。

    世の中には何人か、自分に似た人間がいると言うが、今日は知り合いに同一人物としか思えない人間に遭遇することが二度起こる。一人目は、渋谷のとあるデパートのエスカレーター脇にある椅子。まあよく疲れた外周りの会社員が爆睡しているが、そこで口を開けて寝ている元の会社の後輩Kの姿が(苦笑)。疲れているんだなあと同情しながらも、あまりの派手な爆睡に近寄って起こして脅かしてやれと手を伸ばすと、どうもおかしい。襟に着いているバッジが違う。転職したという話は知らないし、どう考えても別人だろう。
    更に映画館でよく知るクリエーター(♂)に会う。先日も呑んだばかりなのに、リアクションがない。そんなに眼が悪かったかなあと思っていたら、女子トイレに入って行く。当人だとしたらマニアックな性癖か、犯罪者だ。とてもよく似たご婦人だったのか。何だかなあ。

     シアターイメージフォーラムで、88年活人堂シネマ松本俊夫監督『ドグラマグラ(114)』。
    大正15年、九州医科大学精神科病棟第7号室。男(松田洋治)が気がつく。しかし、ここがどこだか、自分が誰だか、鏡に写った顔にも、全く記憶がない。隣からは、少女の叫び声がしている。男は、取り乱して激しくドアを叩いて人を呼ぶ。ドアの鍵が開いて、きちんとした身なりの男(室田日出男)が入ってきて、何か思い出しましたかと尋ねる。首を振り、あなたはと聞くと、私はこういう者ですと名刺を出す。九州医科大学法医学博士秋山鏡一郎と書かれている。精神科は、正木博士が担当していたのだが、先月亡くなったので自分が兼務していると言う秋山。
   秋山に連れられ、隣の病室に行くと、少女(三沢恵里)が眠っている。眠ったまま、少女は涙を流し、お姉さまに謝りますと呟いている。目を覚ました少女は、男に「お兄様、どうしてここに」と呼びかけるが、男には全く記憶が無い。少女の名はモヨ子、記憶を失っている男、呉一郎のいとこで婚約者だったと言う。正木博士の写真(桂枝雀)が飾られている部屋で、秋山が語る話は想像を絶する複雑怪奇な話だった。
   正木博士は、記憶遺伝という説を唱えていた。1100年前唐の玄宗皇帝末期の宮廷画家・呉青秀は、妻である楊貴妃の侍女・黛子の絵を皇帝に献上するために、黛子を殺して、腐敗していく様を描こうとしたが、腐敗の早さに、他の侍女を次々と殺したという。結局、自分を慕う黛子の妹・芬子と逃走の末、亡くなり、芬子は妊娠していた青秀の子と生き延びたのだ。その末裔である呉一郎とモエ子は、呉青秀と芬子の記憶を遺伝していると言う。
    また、正木は、精神病治療に、解放治療という手法を取り入れている。巨大な菩薩の頭部だけがある庭に、沢山の狂人たちが、畑を耕したりしている。正木博士は、狂人でいっぱいの講堂で、あほだら経を歌い踊る。
    発狂した大学生が書いたと言う「ドグラマグラ」という小説も、正木、秋山を含め、現実と交錯する内容で、男(一郎)の記憶を混乱させる。主人公は、勿論男(一郎)である。正木がポカン君と呼ぶ狂人の大学生は、正木の講義を完全に記憶しており、博士の代講することが可能だ。正木自身、細部の記憶が曖昧な時には、ポカン君の話を聞いて確かめたりしているのだ。
     秋山は、なんとか、一郎の記憶を取り戻させようとする苦労する。挙式の前日に花嫁を絞殺した医学生の新聞記事を読ませる。5か月前、一郎とモヨ子の挙式の前夜、八代子は、妹の絞殺体と、娘のモヨ子がいないことに気が付く。下男の仙五郎(灰地順)と屋敷を探し回ると、蔵に明かりが灯っている。戸が開かないので、梯子に昇り、中を見ると、全裸で横たえられたモヨ子の前に、絵巻物の空白部分に、まさにモエ子の姿を描こうとしている一郎がいる。食事が出来たと嘘をつき、戸を開けさせた八代子は、二階に駆け上がり絵巻物を取り上げるが、一郎によって撲殺されたのだ。
  しかし、一郎には全く信じられない。一郎の父親は不明だった。妊娠した千世子が東京に家出をして7か月目に一郎は生まれた。八代子は、誰が父親かと尋ねるが、千世子は、「男は偉い人ほど嘘をつく」と答えただけだ。絵巻物の末尾に、母千代子の筆で、一郎が、正木の子供であることが書かれている。
  正木博士は、一郎に、これは秋山博士の計画的な犯罪なのだと一郎に言う。大正15年5月15日の夜10時、正木が法医学教室に黒い服の男が入っていくのを見かける。屋根裏に登り、覗いていると、黒い服の男は、棺桶から花嫁衣装を着たモヨ子の死体を取り出し、解剖台に乗せる。モヨ子の心臓は正常に動いている。もうひとつある棺桶から、モヨ子と背格好年齢が似通った腐敗したした女の死体を出し、切り刻み、内蔵を取り出して、死体を弄んだ。元に戻して、女の死体をモヨ子の花嫁衣装を着せ、入れ替えたのだ。その証拠写真を見せられる一郎。秋山は4か月間モヨ子をどこかに隠し、前日まで空室だった6号室に運び込んだのだと説明する。そして、隣室に消える正木。部屋は鍵がかかっている。通りかかった学校の小使いは、正木は一か月前に、解放教室で起きた殺人事件の後自殺し、この部屋もそれ以来鍵が締まったままだと言う。開けて貰うが、勿論誰もいない。正木が自殺した新聞記事がある。解放教室で、一郎が、他の狂人を皆殺しにしたのだ。
  強い風が、一郎を包む。頭を抱え、うずくまる一郎。気を失っていた一郎が、起き上がる。しかし、ここがどこだか、自分が誰だか、鏡に写った顔にも、全く記憶がない。隣からは、少女の叫び声がしている。男は、取り乱して激しくドアを叩いて人を呼ぶ・・・。
 
   15,6の頃だっただろうか、読めば気が狂う奇書という言葉に惹かれて原作を読んだのは。話は前後左右、時空さえ超えて展開するので頭は混乱し、何度か読み返さないと分からなくはなった記憶がある。
   未見だと思っていたが、観ていたんだなあ。六本木シネヴィヴァンか俳優座劇場あたりで、睡眠不足を押してレイトショーで見たせいで、夢うつつで悪夢のように見ていたのかもしれない。
   やっぱり、よく出来ている映画だと思う。木村威夫さんの美術も冴えわたっている。今だったら、CGで安直に処理されるだろう、特殊効果は、実験映画を作ってきた松本俊夫ならではの、技が冴えわたっている。邦画低迷期に、こんな映画が作られていたんだなあと改めて思う。

    韓国アートフィルム・ショーケース・ベスト・セレクション境界線のヒロインたち
    05年チャン・リュル監督『キムチを売る女(115)』
    中国東北部、荒れ果てた土埃ばかりの町、鉄道の敷地内のような場所に建つ壊れかけたレンガ作りの家に、32歳の朝鮮族の女チェ・スンヒ(リュ・ヒョンヒ)は一人息子のチャンホ(キム・パク)と暮らしている。夫は、あるいざこざから人を殺め死刑になった。彼女は3輪の自転車でキムチを売っているが、 露天商の資格を貰っていないので、公安の目を恐れながら場所を頻繁に変えている。ある日自動車工場の技師をしているキム(ジュ・グァンヒョン)が声を掛けてくる。同じ朝鮮族だと言い、キムチを買ってくれた。また、背の高くハンサムな男も、いつも買ってくれるようになったが、自転車の荷台に若くてきれいな娘を乗せている。
    息子のチャンホには、ハングルの文字が読めるように教育したいが、この町ではほとんど使わないので嫌がっている。ある日、チャンホは友達とサッカーをしていて、ある家の窓ガラスを割ってしまう。友達は皆逃げたが、一人捕まるチャンホ。スンヒが窓の修理をしている。椅子を返しに家に入り、お金を出そうとすると、妻子と食事をしながら男は、キムチを街で売っている人だろうと言い、今度キムチを持ってきてくれればいいと言う。
   ある日、3輪自転車を漕いでいると、軍のトラックがやってきて、自転車も商品ケースも没収されてしまう。呆然としていると、キムが通りがかり、自転車の後ろに載せてくれる。食事に誘い、飲めないビールを注いでくれた。カラオケに行くが、スンヒは気分が悪くなる。洗面器や水を甲斐甲斐しく運ぶチャンホ。2人の隣には、若い娘たちが4人住んでいる。貧しい農村から出てきた彼女たちは夜毎街に出て客をとる街娼だ。貼ってある新聞の種まきの季節と言う記事に田舎に帰って手伝いたいと呟く少女たち。
   ある日、没収された筈の3輪自転車を売っている男がいる。買い戻すために70元取られてしまう。ガラスを割った家の主人が声を掛けてくる。自分はスといい、自動車教習所の食堂を任せられていると言う。この間貰ったキムチが旨かったので、良かったら仕入れてやると言う男。教習所に行くと、所長以下100人分の食事を作るのだと自慢する。しかし男仕事を紹介した見返りはないのかと、スンヒの手を引き、奥に連れて行こうとする。男を殴って逃げるスンヒ。スンヒの部屋にキムがいる。キスをしている二人。キムの服を脱がし、扇風機を付け、ベッドに誘うスンヒ。
   3輪自転車を漕いでいるスンヒ。パトカーと警官がいる。慌てて逃げようとすると、一人の警官が追ってくる。いつも買ってくれていたハンサムな男は、ワンと言う警官だった。ワンは、露天商の営業許可証を取れるように手配してくれた。許可証を受け取り、キムの働く自動車工場に行くスンヒ。家に連れて帰り、愛し合う二人。帰りがけにキスをしていると息子のチャンホが石を投げつける。その日、以前からチャンホが欲しがっていたテレビを買って帰る。アイロンを掛けているスンヒ。チャンホにキムのことを話そうかと名を呼ぶが、テレビのボリュームを上げるチャンホ。
    チャンホに営業許可証が降りたことを自分たちのことのように喜ぶ隣家の少女たち。しかし、翌日公安の車がやってきて街娼たちを連行して行ってしまう。その警官たちの一人はワンだ。翌日、老人が孫娘と凧揚げをしているのを見たスンヒは、チャンホに大きな鯉の凧を買ってやる。スプレーで青く塗るチャンホ。チャンホはいつ僕たちは前住んでいた家に戻るの?と尋ねる。答えずにいるとその後、ここにいつ戻ってくるのと聞くチャンホ。キムが来ている時に、妻と男たちが怒鳴り込んで来る。年上の女房に頭が上がらないキムは、浮気ではなく、スンヒは娼婦で金を払っていると言い訳をする。その場でスンヒが売春婦だと警察に通報するキムの妻。
    その日の昼間ワンは婚約者と新居の下見に行っていた。ダブルベッドにムラムラしたワンは、婚約者を誘うが、生理中だから嫌だと拒絶される。その夜、交番の警官たちの飲み会が行われている。昼間のこともあり、鬱屈したワンは、交番に戻り、勤務中の同僚と代わってやる。手錠で繋がれたスンヒがいる。スンヒの手錠を外すが、自分と繋ぎ、宿直室にスンヒを連れて入りドアを閉めるワン。
    翌朝、釈放されたスンヒが帰宅すると、チャンホがいない。線路のほうに歩いて行くと、救急車が停まっている。スンヒに気がついて、同情の眼差しを向ける人々。チャンホが塗った青い凧を揚げているスンヒ。いつものように、キムチの仕込みをしているスンヒ。
    ワンの婚約者が、自分たちの披露宴にスンヒのキムチを出したいと言ってくる。キムチを売るスンヒ。道路の反対側をキムが自転車で通りがかるが、直ぐに逃げていく。キムチの仕込みをしている。ネズミが死んでいる。あれほどネズミが嫌いで、チャンホに捨てさせていたスンヒが素手で掴んで投げ捨てる。猫いらずの袋を手に、キムチの樽に戻り注ぎ込むスンヒ。
    ワンの披露宴の日だ。3輪自転車にキムチの樽を積みスンヒがやってくる。調理室に運び入れ、3輪自転車を漕いで、家に戻るスンヒ。向こうからけたたましいサイレンを鳴らして数台の救急車が走ってくる。帰宅するスンヒ。家を通り過ぎ、駅舎を通り抜け、線路を横切り、どんどん歩いていくスンヒ。スクリーンは暗転し、クレジットロールが流れるが、スンヒの歩く足音だけが続いている。
    凄い。素晴らしい。何事も起きず、諦観しているようなスンヒの退屈な生活。腕組みをしながら窓の外を眺め、ゆっくりとやる気なさそうに自転車を漕ぎ、停めてキムチを売っているときも腕組みをし遠くを見ている、まるで誰かを待っているかのように。少しずつ、事件とも言えないような事件が、変わらないテンポで起き、スンヒの心を侵食していく。失望とか絶望と言った感情の起伏と言うより、満月のような心が欠けていく感じ。見ているこちらは、哀しく切ない気持ちで満たされていく。音楽が一切使われていない。が、非常に音楽的な映画だ。やられた。
    大門の歯医者に行き、二週間前に続き、インプラントの土台作り。前回よりも痛みは少なかったが、上顎の骨が弱いということで、相当量入れられた人工骨粉末。鼻をかむと、どうも副鼻腔に圧力がかかるようで、口の中がジャリジャリする。花粉症なのに困った。困った。

2009年2月26日木曜日

探偵物語再評価

   シネマヴェーラ渋谷で東映セントラルフィルムの栄光。
   82年角川春樹事務所長谷部安春監督『化石の荒野(112)』
   雨の中、帰宅した刑事の仁科(渡瀬恒彦)。灯りをつけようとするが、気配を感じ、寝室のドアを開け確認し、誰もいないことを確かめてから、拳銃と警察手帳を机に置き、浴室のバスタブにお湯を出す。仁科の背中に拳銃が付きつけられる。激しい格闘になるが、多勢に無勢、首に注射を打たれ気を失う仁科。気が付くと、銃を持たされている。外国人が射殺されている。仁科は外を窺い逃走する。
   警視庁で、野川(青木義明)による記者会見が行われている。被害者は、米人の貿易商ジェイムス・ハンス。使われた拳銃は、私服警官が持つコルトローマン。容疑者として仁科草介が指名手配された。会見場で隣の記者(角川春樹)に、峰ちゃんの同期だったんじゃないかと言われる峰島悟(川津祐介)。新聞社に戻ると、仁科から電話が入る。ホテルの一室に出向く。「こんな処にいていいのか?」「こういった場所の方が、目立たない」「ジェイムス・ハンスは元進駐軍の将校で、来日するたびに、山に登っていたようだ」簡単なやりとりで、部屋を後にする仁科。ホテルのエレベーター前に、雪江千沙(浅野温子)がいる。「こんなところで会えるとは。新聞は読んだけど、あなたは犯人ではないと思ったわ」という千沙。ロビーで銃を突きつけられる仁科。4人の男に車に乗せられ、アイマスクを渡される。
   山沢(郷瑛次)と名乗えう男が待っていた。3人の男の尾行、追跡、調査をして欲しいと言う。相手は、総裁選への出馬が噂される大物政治家の中臣晴義(佐分利信)と息子の中臣克明(夏木勲)。克明は、警視庁のエリートだったが、FBIへの留学から帰国後、退職。何故か山を探索していると言う。ギャラは3000万。前金として2000万だと言う。44口径オートマグナムを渡され、克明は四国の剣岳にいるらしい。
   剣岳を登り、克明を追跡する仁科。向いの山から反射した光が当てられる。そこの場所に行ってみると、数人の靴跡がある。自分を見張る何者かがいるのだ。仁科は足を撃たれる。傷は浅いがうずくまる仁科。そこに克明が現れる。「仁科、冤罪を晴らしたいだろ。そのチャンスをやるので、忘れろ」と言う克明。山を下山し、ホテルで山沢と会う。山の上まで見張るのかと尋ねるが、自分たちではないと答える山沢。ホテルに向かってパトカーがやってくる。指名手配の仁科がいると何者かの通報があったのだ。仁科を乗せ山沢が運転する車と、徳島県警の殆どのパトカーによるカーチェイス。フェリー発着場に追い詰められるが、ヘリコプターで車を吊りあげ逃走する山沢と仁科。
   山沢のアジトに戻ると、契約通り、自白剤による麻酔分析をさせろと言われる仁科。かすかな記憶の中で、初老の男が現れ、しきりと仁科の故郷と子供のころのこと尋ねられたような気がする。ホテルのバーに、中臣晴義が、私設秘書の高桑(伊吹徹)らと打ち合わせしている。カウンターでバーの女(竹井みどり)に晴義のことについて話を聞く。雪江千沙の部屋を訪ねる仁科。なんで一目で俺が無実だと思ったのか?と聞く仁科に、自分は各刑務所で犯罪者の肖像を描いているが、そうした人間たち共通のものとは違ったからと答える千沙。網走に行った帰りに、サロマ湖の近くの湧別と言う漁村を訪れた。そこで一人で育ったのよねと言う千沙。何も答えないが、昔のことを思い出すような仁科の表情。今日は、ここでゆっくり眠っていってという千沙。勿論大人の男女だから眠るだけではない。
      翌日、河原のグランドで、サッカーをする少年たちを眺めている仁科と峰島。峰島の息子がサッカーをしている。峰島の調査により、ジェイムス・ハンスは来日の度に、 平井剛一(田中明夫)に会っていたことが分かる。平井は、昭和31年に日本ウラニウム公社を作って総裁 となっている。中臣晴義と軍隊時代の上官部下の関係だった。
   駒ヶ岳に向かう仁科。山頂付近で敢えて仕掛けて克明を襲撃する仁科。2人で組み合い格闘するも、部下たちが戻ってきて、逃走する仁科。駒ヶ岳のロープウェイに乗っていると緊急停止する。乗務員(竹田かほり)は、ごまかそうとするが、仁科が乗っていることを通報されたらしい。遥か下にパトカーが走るのが見える。乗客に拳銃を突き付け、緊急脱出装置を使い、ゴンドラから下降する仁科。しかし、停止した位置が最も高度の高い場所であり、まだ百メートル以上ある。ロープを揺らし、茂みに飛び降りる仁科。ニュースでは、指名手配犯の仁科が地元の人間でも足を踏み入れたことのない原生林に逃げたが、冬の夜では命が持たないだろうと告げている。峰島が、平井剛一を見張っていると、一人の男が現れ、言い争いをしている。その写真を自衛隊情報に詳しい記者の片山(江角英)に見せると、元厚木基地作戦部付将校で、最近まで自衛隊の特殊部隊を率いていた坂本英夫(大木実)だと言う。
   峰島のもとに千紗が訪ねてくる。そこに仁科から電話があり、千紗の車で待ち合わせに指定された長野の喫茶店に行く。中臣、平井、坂本という3人の関係と、剣岳や駒ケ岳など中臣克明が探索している山々では、白骨死体が発見されているが、中臣晴義が政治力で握りつぶしていると言う峰島の話を聞き、旧海軍の厚木基地が何かの鍵だとわかってきたが、北海道で育ち、警視庁で刑事をしていた自分を、ハントを殺すリスクまで負って、自分を巻き込んだのかは分からない。そこに白バイの巡査たち(宍戸錠、阿藤海)が現れる。喫茶店の女主人(范文雀 )は、指名手配の手配書を警官たちから体で隠す。
    横須賀で、太平洋戦争中の厚木基地の警備隊長で、今は身を持ち崩している松本安男(加藤武)に接触、50万の金で、終戦前後に厚木基地で起ったことを全て喋らせる。終戦直前に吉宗中佐が指揮する陸上攻撃機剣山が広島の極秘基地に向けて極秘物資を空輸する作戦があった。極秘物資とは、金塊5000kgで、ソ連に運び、和解工作資金にするつもりだったが、敗戦に間に合わず、結局オホーツク海に不時着、吉宗中佐と乗務員は金塊と共に行方不明になっていたのだ。進駐軍も含め、徹底した捜索がされたが、結局わからなかったのだ。ジェームス・ハントは当時進駐軍で、その捜査を担当していたのだ。中臣晴義、平井剛一、坂本英夫は、当時厚木基地で事実を知ることのできる立場にいたのだ。
    仁科は、日本ウラニウム公社の平井を直撃する。中臣晴義、克明父子や、非合法の特殊部隊を持つ坂本に対抗するために、子分の山沢を使って、仁科を罠にかけて手駒としたのだ。更に、吉宗たち搭乗員たちは、仁科の母が住む小屋にしばらく潜伏していたこととが、敗戦後すぐに追跡して行った中臣、平井、坂本は知って、翌年仁科を生んで直ぐに亡くなった母親から何か金塊について知っているのではないかと麻酔分析を行ったのだと言う。
       ホテルのバーにいると、電話が鳴る。峰島を攫ったと言う山沢からの電話だ。千沙の無事を確かめに部屋に行くと、何故か中臣克明がいる。お前と千沙と自分は異母兄弟なのだと言う。あの日、仁科の母の元に訪れた3人のうち、血液型がBなのは、中臣晴義だけなのだと言う。少し前に、その事実を聞いた千沙は、呆然として座り込んでいる。一緒に組んで面白いことをしようぜと言う克明に、首を横に振る仁科。束の間の兄弟気分だったが、これで終わりだと言い去る克明。
     峰島を引き取りに川崎球場に行く仁科。山沢は、仁科の冤罪を晴らしてやると言う。ハント殺人の実行犯の手下を射殺しておいて、仁科、峰島は真犯人を見つけたが撃ち合って死んだことにしてやると迫ってくる、しかし、平井、山沢たちを射殺、駆け付けるパトカーから逃げながら、息子のために手を引いてくれと峰島に言う仁科。
    しかし、峰島は、平井の告白をテープに収め、中臣晴義のもとに取引に行き、手を引かなければ新聞に書くぞと脅す。しかし、中臣ははるかに狡猾だった。門前払いをし、帰る峰島を、交通事故に見せかけて殺した。今際の際に、峰島は仁科宛に電話をする。晴義、あいつは悪者というより役者やの~と言ってから、大雪山の相沢という電話が入っていたことを伝え、息子のサッカーの試合を、たまには見に行ってくれと言い残して息絶える。いよいよ北海道に向かって決着をつけに行く仁科に、グッドラックと呟いて、ペンダントを渡す千沙。
    かって、自分と母親が住んでいたあばら家を眺めている仁科。冬のオホーツクの海は波打っている。白いポンチョを被り、大雪山を登り始める仁科。山中で克明たちのグループが見つめる先には、砂金採りをしている老人(垂水悟郎)がいる。5人の搭乗員の生き残りではなくとも、何か事情を知っているだろうと言い、明日親父が来るので、引っ張ってこいと命ずる克明。しかし、老人の顔を見た中臣晴義は、生きていたのか吉宗中佐と呻く。金塊はどこだと締め上げるが、口を割らない。今は、こういった便利なものがあるのだと、自白剤を注射しようとする晴義。明日隠し場所に案内するという吉宗。この金で、堕落した日本に活を入れるのだと野心を語る晴義。
     翌日、吉宗を先頭に、山を登る中臣親子と子分達の姿がある。グループから離れた隊員を一人づつ仕留める仁科。クレバスの隙間に出来た小さな洞窟がある。入口の岩をどかし、洞窟に入る吉宗、中臣父子。金の延べ棒が山と積まれている。大きな声を上げる晴義。その頃、洞窟の外では、坂本の率いる特殊部隊が、雪上車3台、ヘリコプター1台という大部隊で迫ってくる。外の騒ぎに、克明。激しい銃撃戦となる。双方とも次第に倒れている人間が多くなる。仁科は、入口を見張っている克明の隊員を倒し中に入る。晴義を射殺する。奥では、吉宗が自分の体にダイナマイトを結びつけ、誰にも渡さない、出て行けと言う。
   仁科が外に出ると、克明と坂本しか残っていない。坂本を倒し、克明と向かい合う。相打ちで、倒れる二人。克明の身体から血が流れ始める。仁科は、懐から千沙から貰ったペンダントを取り出す。グッドラックという言葉が、潰れている。自分の命を救ったペンダントを見つめている仁科。

   派手だなあ。これだけアクションシーンに派手に金を使えて、監督楽しかったろうな。

83年角川春樹事務所根岸吉太郎監督『探偵物語(113)』
   女子大生の新井直美(薬師丸ひろ子)が田園調布にある屋敷の壁を二階に上がり、自分の部屋に忍び込む。靴を持って玄関に降りる。家政婦の長谷部君江(岸田今日子)が電話をしている。電話の相手は直美の海外にいる父親らしい。長谷部は直美の父親に結婚を申し込まれており、その事は、直美に孤独感と屈折をもたらしている。
   翌朝、直美が叡智大学に向かうと、尾行している男(松田優作)がいる。大学につき、講義のあと、所属する広告研究会の部室に行く。あと1週間でアメリカに行くので、もうお別れだと言う直美。憧れていた先輩の長井(北詰友樹)が、送別会をしようと言ってくれる。海に行こうと言ってくれたので夢見ごこちの直美。キャンパス内で、永井は、同じゼミの友達だという正子(坂上味和)から、強引に金を借りる永井。
   バイクの二人乗りで海に向かう二人。海岸にある店でペアのネックレスを買ってくれる。貝殻とナメクジ、二つ合わせると蝸牛になるペンダントだ。夕暮れ時に、海岸のレストランで夕食を食べる二人。食事の終りに、このまま朝食を一緒に食べないかと誘う長井。ホテルの前で送っていくよと言う長井に、勇気を振り絞って泊って行こうかなと呟く直美。ホテルの部屋のベランダで潮風に当たっている二人。背中に手を回し、長井がキスをしようとした瞬間、ドアが叩かれる。なんなんだよと苛立ちながら、ドアの前に行き、誰ですかと尋ねる長井。フロントですが、という返事にドアを開けると男が立っていて、私は直美の叔父だが、お前は帰れと脅す男。そそくさと帰ってしまう長井。直美は、何をやっているんだと頬をぶたれるが、叔父でも何でもない見知らぬ男に驚き警察に電話をする。
   近くの交番で取り調べられている男。男の名は、辻山秀一、興信所の探偵だ。直美の尾行と護衛の依頼を受けているが、依頼者は知らないと言う。長谷部さんが頼んだんだわと言って、もういいですと言って、交番を出る直美。帰りの電車の中を付けてくる辻山。
翌日大学に行くのを待ち構えている辻山。駅で、何とか捲いたが、大学に行くとやはり辻山の姿がある。長井に昨日の説明をしようと電話をしても、直美からだと分かると切られてしまう。電話局に問い合わせても、番号から住所は教えてくれない。困り果てた直美に辻山は、これでも探偵だからと調べてくれた。長井の住まいは、なかなかの高級なマンションだ。実はそこで正子と同棲をしているのだ。チャイムを鳴らすが、直美だと知った長井は居留守を使う。
   直美は、今日クラスメートが送別会を開いてくれると言うので、長井を誘おうと思っていたのだ。結局、辻山が参加する。隅で飲んでいる辻山が探偵だと聞いて興味津々なクラスの女子たち。一緒に踊ってと誘われるが、自分には踊れないと断る辻山。しかし、チークタイムになり、あぶれている直美に、依頼者の命令だと言われて、ぎこちなく直美と踊る辻山。家まで送る途中、直美に家族のことを尋ねられ妻とは別れたのだと答える辻山。生き方に不器用な男だとは分かり、気になり始めた直美は、辻山の後をつける。辻山が別れた妻幸子(秋川リサ)と会っている。幸子は、バニーガールクラブで歌手をしているが、クラブオーナー石崎(鹿内タケシ?)の愛人でもある。偶然、オーナーと冴子の浮気調査を受け、既に報告書を提出済みだと忠告しに来たのだ。何故か幸子は、関心を持たず、あなたは私のステージ見たことなかったわよねと言う冴子。金を持っていないと答えると、その位奢るわよと言われる。
   楽屋を抜ける途中、オーナーに殴られ脅されているバニーガールの姿を見かける辻山。客席に行くと何故か直美がいて驚く辻山。尾行される気持ちが分かったかと言う直美。先ほど殴られていたバニーガールが注文を取りにくる。長井の彼女の正子だ。あんたが長井のうちに来た時私もいたのよ、早く海外でもどこにでも行って頂戴と言う正子。直美はカッとして、ウィスキーをロックでガンガン飲み始めた。直美をおぶって、家の前の坂を登る辻山。送り届けてやっと帰宅する。
    夜中、いきなり叩き起こされる辻山。なぜか幸子がいる。目が覚めたら人が死んでてと動揺する幸子。朝テレビのニュースで、石崎組組長の息子でバーオーナーの男がラブホテルで殺され、昨夜一緒にチェックインし、明け方一人で逃げたクラブ歌手の幸子を重要参考人として指名手配したという報道があり驚く直美。辻山のアパートに行く。ドアを叩きニュースを見たと告げる。しきりと追い返そうとする辻山。アパートの近くに明らかにヤクザな車が停まる。慌てて、辻山に伝えて中に入る直美。バスタブの中に隠していた幸子を窓から逃がそうとするが、怯えて動けない。直美は冴子をバスタブに戻し、いきなり服を脱いで下着姿になり、敷いたままの布団に辻山を引っ張り込む。そこに石崎組のヤクザがドアをぶち壊して入ってくる。布団を手荒に捲ると、辻山と直美だ。冴子を隠しているだろうと脅して帰っていくが、ドアどうしてくれるのよーと叫ぶ直美に、若頭の沢田 (財津一郎)は、財布を取り出し、札を叩き付けて出て行く。
     しかし、近くで、冴子を張っている沢田たちに弱るが、隣家の夫婦に引っ越しを持ちかけ、運送屋を呼び、荷物に紛れて脱出に成功する。いかなり指名手配の女を連れてきて驚く長谷部に出ていけと言われるが、何とか匿うことに。真犯人を見つけなければならない。石崎の告別式に潜り込む直美。石崎の大泣きしている妻三千代(中村晃子)をいたわって控え室に連れて行く沢田。二人は怪しい。告別式を中座して家に戻ろうとする2人を尾行しようとタクシーに乗ると辻山が現れる。ヤクザ相手に何をやっているんだと怒る辻山。しかし、石崎の屋敷に忍び込んで、盗聴マイクを仕掛け録音をする。しかし、鏡を運ぶ車に二人の姿は映り、沢田に見つかってしまい、逃げる二人。
    何とか田園調布の家まで逃げ帰る。幸子は地下室に隠れていたが、長谷部がいない。石崎組から電話があり、明日の昼までに幸子を渡せと言う。とりあえず、カセットテープをダビングする直美。沢田と三千代の悩ましげな喘ぎ声に眉をしかめる直美。ダビングが終わり、辻山を泊めた部屋の前に行くと、幸子の喘ぎ声がする。直美は傷つき、家を出る。ディスコに行くが、茫然自失なままの直美。そんな所に一人のサラリーマンに声を掛けられる。雨の中、ラブホテルに連れ込もうとするが、どこも満室だ。結局殺人事件が起きたホテルしか空いていない。同じ部屋に入り、バスルームにで、抜け穴がないか探し始める直美。
    翌朝早く直美が帰宅すると長谷部しかいない。結局、辻山と幸子はカセットテープを持って石崎のところに行ったのだ。しかし、違うテープを持って行ったのだ。急いで石崎会館に乗り込み、会長に強引にテープを聞いてもらう直美。辻山と幸子は痛めつけられ失神している。沢田と三千代が関係していたことがばれ、沢田は指を詰める。石崎を殺した真犯人が二人だと主張する直美。二人は否定したが、実際にホテルに行ってみることに、石崎が殺された浴室から実際に換気口を通って隣室に移動する直美。しかし、換気口の中で、ペンダントを発見してしまう。
   ラブホテルの支配人(三谷昇)が、指名手配の女と暴力団の団体が来ていると通報した。辻山と幸子は連行された。直美は大学に行き、永井を見つけ、正子の所に案内してもらう。ペンダントのことを問い質す直美。正子は、永井との交際のために、バニーガールのバイトをしており、そこで売春をしていた。止めようとしたが、石崎にそんな事をしたら、両親に教えると脅され、その日も客を取らされたので、いつも石崎と幸子が泊まるホテルに宿を取り、客が寝た隙に、バスルームの換気口から石崎の部屋に行き刺し殺したのだと告白する。永井は、ショックを受けるが、正子が自分の子供を妊娠していると聞いて、自首する正子に同行する。一人残される直美。帰宅すると長谷部が辻山からお礼の電話があったと伝える。直美は、長谷部にパパを愛しているかと尋ねる。そんな大事なことは口に出すとすり減ってしまいますと答える長谷部。
    日本最後の夜だ。直美は今晩も、門をよじ登って外出する。辻山が、アパートで洗濯していると、ドアをノックする。直美だ。部屋に上げて欲しいと言う。何故ラブホテルのバスルームの換気口がわかったんだと尋ねる辻山。思っていた通り、実際に行ってみたと言う返事に顔が歪む辻山。好きな人に相手がいたからだと言う直美に、永井のことかいと尋ねる辻山。今日は帰らないつもりで来たと言う直美。駄目だと辻山。子供じゃない、子供だと言うやり取りの後、泣きながら直美は帰っていく。沈痛な表情の辻山。
   翌朝、成田空港に直美が一人で現れる。チェックインし、税関へのエスカレーターに乗るが、表情が変わり、下りのエスカレーターを駆け上がる。辻山だ。柵越しに抱き合いキスをする二人。直美は手を小さく降り、エスカレーターに再び乗る。いつまでも動かない辻山。
    素晴らしい。ラストシーンは、女優薬師丸ひろ子の誕生の瞬間だ。一方、松田優作も、アクションスター、ダーティーヒーローを演じ続けてきたが、森田芳光、根岸吉太郎ら若い監督たちと組んで、作り上げた俳優松田優作。ここを経ての「ブラックレイン」。もしも、そのあとがあったなら、どんな凄い松田優作が現れたんだろうかと、考えて見てもせんないことだが・・・。傑作だ。

2009年2月25日水曜日

変わりゆく野毛の姿にびっくり。

    独身美人OLに惣菜8品(ひじき炒め煮、キンピラ、インゲン胡麻よごし、切り干し大根、鯖味噌、鴨挽き肉と大根白滝炒め、博多煮、南瓜煮物)。元同僚と赤坂成都酒家で、五目焼きそば。
    横浜の野毛に出て、アート系のNPOを主宰する友人の映像クリエーターインキュベーションオフィスを下見に、なにも無いガランとしたオフィスに机が二つ、一人ぽつんといる彼女の姿に涙。まあ私よりも圧倒的に逞しい人だから、心配には及ばないと思うが、営業しろとの無言の圧力がバシバシと、高校時代から弱いんだなあ(苦笑)

    渋谷シネマヴェーラで東映セントラルフィルムの栄光
    79年角川春樹事務所村川透監督『蘇える金狼(110)』。
    共立銀行丸の内支店、雨の中、白バイに乗った警官姿の男が、現金輸送の男を射殺し、ジュラルミンケースを奪う。近くにある東亜油脂の本社経理部の朝倉(松田優作)は風邪を引いたらしくくしゃみをする。上司の金子次長(小池朝雄)に嫌みを言われる朝倉。同僚の湯沢(岩城滉一)や石田(加藤健一)と今朝銀行強盗が発生し1億盗まれたと言う世間話をする朝倉。部長の小泉(成田三樹夫)が共立銀行の男を紹介する。今朝の事件は幸い本店で紙幣の番号を控えていたので、リストの札を見つけたら通報してほしいと話す。机の下で、鉛筆を折る朝倉。足元のリンゴ箱を金子に聞かれ、青森の実家から送ってきましたと答える朝倉。
     退社時間になり、ロビーで社長令嬢の絵理子(真行寺君枝)とすれ違う。羨ましそうに見る同僚たちと違い、朝倉の目が光る。目蒲ボクシンジムでトレーニングをする朝倉、トレーナー(角川春樹)が、お前はちゃんとやればチャンピオンにもなれるのに、血友病で試合には出られないんだったなと残念そうに言う。帰宅してリンゴ箱から札束を出すが、着替えてバイクに乗り、横須賀の繁華街の裏に足を踏み入れる。さっそく絡んできた海神会のチンピラを叩きのめし、薬を手に入れたいのだと尋ねる。散々ぶちのめした末、クラブ ドミンゴのカウンターに座っていれば大丈夫だと聞き出した。ドミンゴのカウンターに座った朝倉を、拳銃を持った男が連れだす。お前の正体は何者だと聞かれるが、結局、海神会は、市会議員でもある磯川が麻薬に関してはすべて握っているということが分り、海神会の組員(南原宏治)らを射殺する。射殺した組員たちの懐からヘロインなどを盗む朝倉。
   部長の小泉が愛人の長井京子(風吹ジュン)と住むマンションを張る朝倉。小泉が社用車で会社に向かったあと、京子をつけ、成城のゴルフ練習場に行く。隣で気を引き、不動産関係の仕事をしている堀田修平と名乗り、食事に誘い、食前酒にヘロインを混ぜて、横浜のホテルOZに連れ込んで、京子を抱く朝倉。翌日、京子のマンションにいると、小泉が訪ねてくる。ベランダから脱出する朝倉。
   磯川の邸宅をセントラルタイムスの記者の千川を名乗って訪問する朝倉。新聞記者でないことはバレており、屈強な用心棒たちに銃を向けられるが、朝倉の方が一枚上手だ。襲ってきたナイフを奪い取り、磯川を脅す。1億3千万でヘロインを買いたいと告げ、改めて、取引の場所を連絡すると言って消える朝倉。帰宅し銃の手入れをしている朝倉。横須賀の猿島に約束の時間より前に、ゴムボートで上陸し、待ち伏せしている磯川の部下たちを一人一人片付ける朝倉。約束の時間となり、磯川たちがやってくる。金とヘロインの交換が終わり、磯川は、朝倉を殺す合図を出すが、何も起きない。すべて片付けましたよと言って、磯川に附いていた男たちを気絶させ、磯川一人を残し、島を去る朝倉。
   経理次長の金子が女を抱いている。銀座のバールナの雇われママの牧雪子(結城しのぶ)だ。二人のあられもない姿を隠し撮りしている男がいる。翌日、会社に雪子が電話をしてくる。12時に東和デパート屋上で取引を指示して電話が切れる。金子の後をつける朝倉。金子の前に現れた男は、写真とやり取りを録音したテープを持っていると言う。最初高飛車に出た金子だが、桜井と名乗る男(千葉真一)が、有名な乗っ取り屋の鈴本光明(安部徹)の東亜経済研究所の人間だと聞いて態度を改める。しかし、5000万を要求され即答はできない。金子たちが汚れ仕事に使う興信所の石井(岸田森)に後をつけさせる。そのやり取りを盗み聞きしていた朝倉も、桜井が東亜経済研究所に入っていくのを確認した。
   桜井は、鈴本の甥だが、叔父の仕事を手伝うでもなくフラフラしている男だ。とりあえず、写真のネガやテープは研究所のトイレのタンク内に隠す桜井。叔父に挨拶だけしてビルの裏口から逃げ出し、石井を撒く。朝倉が会社に戻ると、金子と小泉がいない。緊急役員会議らしいぞと言う湯沢。役員会議室の近くの部屋に入り、盗聴器のイヤホンを耳にする。そこには、金子と小泉に加え、社長の清水(佐藤慶)、監査部長の竹島(草薙幸二郎)たちが集まっている。金子の報告を受け、2500万を渡して納得させようと言う小泉の案に頷く役員たち。
   朝倉は、東亜経済研究所の受付嬢をしている朱美(吉岡ひとみ)を襲い、桜井と鈴本が叔父甥の関係であることと、桜井が、牧雪子の広尾のホウエイマンションに同棲していることを聞きだす。雪子のマンションの部屋のベランダに忍び込む朝倉。中では、石井と子分の男(高橋明?)が雪子を脅している。そこに、桜井が帰ってくる。2500万入りのスーツケースを桜井に渡し、これで手を打てという石井。さもないと、お前の情婦の雪子を殺すと言うのだ。桜井はそんな女の命などくれてやると言う、動揺した石井たちに反撃し、二人を追い出す桜井。殺してもいいと言ったのは本心じゃないわよねと言う雪子を抱く桜井。朝倉は、ゆっくりマンションを後にする。
   翌日、桜井を車でつける朝倉。尾行に気が付いた桜井は、廃屋のアパートの前に車を止め、尾行者を誘いこむ。まんまと撒いたかに見えた桜井だが、車に戻ったところを、後部座席に潜んでいた朝倉に後頭部を殴られ気絶する。2500万入りのアタッシュケースを奪う朝倉。役員会議室で、清水、小泉たちを前にして、桜井は、自分を襲い金を奪ったことを非難し、要求を2億に吊り上げる。フラメンコバーに朝倉と京子がいる。京子は既にヘロイン中毒になっている。自分のパトロンが東亜油脂の取締役経理部長の小泉で、小泉もヘロインに興味を持ち、吸引するようになったと言う。石井を使い神戸から凄腕の殺し屋(映画の中では、筋金入りの?)を呼んだという情報を漏らす。2500万の受取りに現れた桜井と雪子の乗った車の前に、2台の車が現れる。桜井の車を挟み撃ちにし、拳銃を撃ちながらの激しいカーチェイスだ。3台の車は横転し、石炭置場での争いになる。殺し屋の福田(トビー門口)を、相棒の国友(待田京介)は誤射する。結局、桜井と雪子は射殺される。
   その夜、京子から話を聞いた朝倉は二人の死体を確認する。しかし、その翌日、国友は清水を脅そうと、金を強請ろうと電話を掛けてきた。石井が裏切ったのだ。その頃、目蒲ジムを装って朝倉は会社に電話をし、チャンピオンになってもおかしくない朝倉が最近ジムに来なくなっているという問い合わせの電話をする。電話を受けた金子は、ジムに行き裏を取った。金子が朝倉を呼び出し、社長のもとに連れていく。朝倉は会社のために命を捨てられるかと尋ねられ、肯くと、石井と国友たちを殺せと命令される。その代わりに、3年後に取締役にするという念書を貰う。
   5億出せと脅迫しにやってきた国友を尾行する朝倉。隠れ家を突き止め、中に忍び込むと、福田は大けがをしで苦しんでいる。しかし、石井に見つかり、万事休すとなった朝倉。国友と石井が仲間割れをした瞬間に逆襲、3人を殺し、隠れ家に火を放った。成功した朝倉を社長の葉山の別荘に案内するという金子。途中から歩けと言われるが、金子は後ろから朝倉を撃とうとする。しかし、安全装置にはずし方を知らない金子は、朝倉に肩の骨を骨折させられる。金子と社長秘書を連れ、清水の別荘に行く朝倉。始末した筈の朝倉が現れて、驚く清水、小泉ら役員たち。役員を脅しつけ、東亜油脂の株200万株寄こせと要求する朝倉。時価8億の株券と株券譲渡書を翌日受け取る。夜は、清水の孫娘絵理子を交えての役員たちとの夕食会に招待される朝倉。
   絵里子と交際をしながら、京子との関係を続ける朝倉。ある日、鈴本の子分達が現れ、鈴本が話をしたいと言っていると告げる。鈴本は、甥を殺した東亜油脂を必ず自分の手中に収めると言う。朝倉の持っている株を時価の3倍、24億で買いたいと言う鈴本。ドルの高額紙幣で用意できるかと尋ねる朝倉。朝倉の家に、京子が訪ねてくる。小泉の情報を手に入れるために、利用されていると知っていたが、小泉の話に出てくる朝倉と言う男があなただと確信していた。絵里子と付き合っているが、朝倉を失いたくないという京子は、完全にヘロイン中毒患者になっていた。朝倉は小泉に、自分が持っているヘロインを買わないかと持ちかける。危険な思いをして街のチンピラから手に入れることから解放される喜びで、小泉は1億以上の金をドル紙幣で購入することを承諾する。手に入れたヘロインの瓶を持ち、京子に見せびらかす小泉。
   猿島で、京子と会い、本当は海外に一緒に逃げようと思っている朝倉。しかし、京子は、この日が二人の別れだと思っている。朝倉の腹を深く刺す京子。京子は事切れている。京子の遺体を愛おしそうに抱き上げ、誰にも見つからない深い穴に投げる。京子の分の航空券を破り捨てる。空港のロビーを倒れながら歩いて行く朝倉。スカンジナビア航空の飛行機が離陸する。客席にいる朝倉に声を掛ける外国人スチュワーデス。日本人の搭乗員(中島ゆたか)に代わる。ワインをくれ、自分の友人のナポレオンが好んでいたシャンベルタンの2001年をくれ、ジュピターに着くのは何時だ。木星にいつ着くんだ。と呟く朝倉。朝倉の顔は奇妙な笑みを浮かべ、既に事切れているかのようだ。
   久しぶりに見た。やっぱり、角川春樹、村川透、松田優作の鉄板トリオ(笑)すごい。当時はかっこいいで終わっていたけれど、今は、無茶苦茶なところを楽しめる。風吹ジュン切ないなあ。スキャンダルにまみれて、女優として一皮剥けた時期だったんだろうか。
    

     78年東映セントラルフィルム長谷部安春監督『皮ジャン反抗族(111)』
     花屋の店先で、白い薔薇を一本手に取る皮ジャン姿の男(舘ひろし)。薔薇を大事そうにバイクに乗り、スーパーの紀ノ国屋に行き、レジに並ぶ。レジの店員(森下愛子)の胸に一本の薔薇を差し、レモンを一個買って出て行く男。
    ディスコ、カンタベリーハウス、DJ青山一郎(林ゆたか)のトークは今晩もノリノリだ。このディスコのマドンナのメグ(夏樹陽子)の親衛隊踊っていると、ペギー(山科ゆり)や、ソバカス(恵千比絽)スケバン(あきじゅん)葉っぱ(広京子)キーコ(八城夏子)たちスケ番グループが現れ、キーコをやり逃げした復讐だと、ペギーの二枚剃刀で頬を切る。そこに、皮ジャンの男、新治が現れ、喧嘩を仲裁する。新治が帰ろうとするとペギー達が恥を搔かせてくれたと待ち伏せしており、男の不良たちを呼んでいた。リーダーの男(内田裕也)の指示で、ナイフを手にした内田(片桐竜次)や他の男たちが襲いかかる。内田を除く連中を叩きのめし、内田と対マンになったところで、人がくる気配があり、信治を残して不良やスケ番たちは消える。やってきたのは、メグと、メグの親衛隊のリーダー格の正一(加藤大樹)だ。メグは、信治が気になり、正一に車で送らせるだけだ。
    信治は昼間、自動車整備工場で働いている。工場の社長は先日亡くなり、未亡人の文代(白川和子)は、神崎主任(古川哲唱)を頼りにしており男女の関係になってしまっている。15歳の息子の修(秋山敏和)は、高校受験だが、そんな家庭の雰囲気に気持ちがすさんでおり、信治とバイクに関心を持っている。  to be continued.

2009年2月24日火曜日

辰巳柳太郎いいなあ。

    シネマート六本木で新東宝大全集。55年新東宝伊藤大輔監督『王将一代(107)』。
    明治40年、大阪のとある寺で、全大阪素人将棋大会が開催されている。草履編みを生活の糧にしている坂田三吉(辰巳柳太郎)は、赤貧で文盲の無学、将棋きちがいの男だ。妻の小春(田中絹代)は、苦しい生活に法華経の念仏を唱え続けている。将棋大会の受付で参加費の17銭を出し、名前をと言われると、7本の横線を引き縦銭3本を加えて、三吉としか書けない。天王寺の三やんで通るほどの素人名人だ。今回も順調に決勝戦に進み、相手の宮田製麺の社長の宮田(田中春男)を簡単に破るが、優勝賞品の鷹の剥製はいらないから50銭くれと言う。参加費を捻出するために小春の命より大切な仏壇を質屋に預け、着る服も借りてきたので返して貰うのに50銭あればいいと言う。呆れながら、宮田は1円を貸す。主催者の三田証券の西村(三島雅夫)は、三吉のあまりの強さに宮田に耳打ちする。
三吉が、賞品の山を抱え、仏壇を背負って帰宅すると、ほとほと呆れ果て、病気の娘の玉江を連れて、家を出ようとしている小春の姿だ。驚いて引き止めようにも、小春の怒りは激しく、将棋を捨てろと言われ、手作りの将棋盤と駒を川に投げ捨てる三吉。その時、三吉のあばら屋に、宮田と西村がやって来る。2人は、せっかくの三吉の腕を素人名人で終わらせるのは勿体ない。そのためには、二人が援助すると言うのだ。将棋を止めないと小春が出て行くと言うんやと三吉に聞いて、三吉の将棋の才能を小春に力説する二人。小春も、ただの将棋きちがいとしか思っていなかった夫の才能を始めて理解して将棋を続けろと言う。草鞋を編まずに、将棋だけして暮らせると聞いて子供のように喜ぶ三吉。喜ぶ夫を見て、捨てられた将棋の駒を拾い、その駒が王将なのを見て、手を合わせて祈る小春。
大正5年、職業棋士として苦節10年三吉は七段になっている。東の入江七段(島田正吾)と全日本の王座を争うことになる。五番勝負の緒戦は三吉が勝ち、二勝二敗の五分となり第五局。須磨の料亭、将軍荘で対戦する三吉と入江。入江に追い詰められ、もはや三吉の負けだと誰も疑わなかった。三吉の後援会の宮田、西村、そして名誉会長の貴族院議員の金杉子爵(石山健二郎)も、やはり名人位は、箱根の西には持ってこれないかと諦めかけた時に、三吉は、長考の末、手元の銀を取り二五銀と言う奇策を打つ。これで入江はリズムを崩し敗れる。
   後援会は、皆大喜びだ。妙見さまに祈り続けていた小春も駆け付けた。しかし、娘の玉江(木暮実千代)は、二五銀は、奇策でも棋界の常識を超えた妙手でもなく、苦し紛れの一手だろうと言い、どんな手を打っても勝てばいいというのは恥ずかしい、将棋に命を掛けているなら、勝ちたいではなく、いい将棋をしたいと考えるべきだろうと責める。痛いところをつかれて激怒する三吉。他人には分からなくても父娘だから、心で分かるのだ。娘に殴りかかろうとする三吉を必死に止めようとする小春。しかし、我に返った三吉は、法華の太鼓を持ち出し、須磨の海岸に出て、妙見さんに、立派な将棋指しにしてくれと海に頭を下げるのだ。三吉の後姿を見て、手を合わせる小春。
   大正13年、雪の東北を走る汽車の中で、一人の男が乗客に賭け将棋を持ち掛けている。男は、三吉の弟子だった毛利(舟橋元)だが、玉江と駆け落ちしていたのだ。車掌が来て慌てて、将棋盤を仕舞う毛利だが、向かいの客が読む新聞を見て、慌てて寝ていた玉江を起こす。そこには、坂田八段が、将棋連盟を飛び出して、関西名人を名乗ると書いてあった。既に、入江名人との間では、11戦7勝と圧倒していたが、将棋連盟は、学問、経歴などを理由に、いつになっても、三吉に名人位を与えることをしなかった。
    そこで、後援会長の西村は、将棋連盟を脱会させ、坂田会を結成、第一世関西名人を襲名させようと図ったのだ。三吉は、名人は一人でいいので、自分は絶対嫌だと言っている。説得に行った宮田も、頑固な三吉にほとほと困って帰ってきた。小春の墓に詣でて、どうするか聞きに行ったと言う宮田。上機嫌で帰ってきた三吉は、小春も同じ意見だったと言う。困り果てた西村たちは、三吉がそれだけはいいと言っている坂田会の発足式と偽って、関西名人の襲名式を決行しようと企む。その時、盛岡から戻るので、それまで名人襲名を待つようにという玉江からの電報が届くが、握りつぶす西村。
   襲名式の当日になる。新聞に関西名人襲名という記事が出ているのを、ナンボわしが字が読めんと言っても、こりゃあかん、大阪中の新聞を買い占めて燃やしてしまえと怒っている三吉。 to be continued.

   
    シネマヴェーラ渋谷で、東映セントラルフィルムの栄光
    85年東映東京森田芳光監督『それから(108)』。
     長井大助(松田優作)は、大学を出て働きもせず、日々を送っている。それは、実業家の父、得(笠智衆)と、兄、誠吾(中村嘉津雄)に援助されているからこそだ。書生の門野(羽賀研二)とばあや(一ノ宮敦子)と暮らしている。ある日かっての友人で、大阪で役人をしていた平岡常次郎(小林薫)が、勤めを辞め東京に戻ってくるとの手紙が届く。しかし、大阪の3年間は、平岡をとても屈折した俗物に変えていた。平岡の妻の三千代(藤谷美和子)は、長井大介と平岡の親友であった菅沼(風間杜夫)の妹であった。3人の男たちと三千代はいつも一緒に過ごしていた。平岡も長井も三千代を愛していたが、三千代に結婚を申し込むと告白された長井は義侠心から、間を取り持ったのだ。
to be continued.
  井梅子(草笛光子)長井縫(森尾由美)平岡常次郎(小林薫)平岡三千代(藤谷美和子)菅沼(風間杜夫)佐川の令嬢(美保純)寺尾(イッセー尾形)門野(羽賀健二)神楽坂の芸者小染(川上麻衣子)久米香(遠藤京子)女郎(いずみじゅん)賄いの婆さん(一の宮敦子)

     79年東映セントラルフィルム村川透監督『処刑遊戯(109)』
     暗い倉庫で倒れている鳴海昌平(松田優作)、起き上がろとすると再び殴られ気を失う。次に気がついた時には、手足を縛られ吊り下げられている。バーの歌手直子(りりィ)と親しくなり、一夜を過ごし、海を見に行った帰り、2人が乗った車を襲撃され、気を失われたことを思い出す鳴海。何とかロープをほどく。拳銃を見つける。脱出しようと、現れる敵を倒しながら、最後の所で引き金を弾いても相手は倒れない。右手を撃たれ苦痛に顔を歪める鳴海。流石に殺し屋として最高の成績だ。拳銃に入っていたのが空包だったことに気がつかなかったこと以外は満点だと言う。一緒にいた女を殺されたくなかったら、岡島(青木義明)という同業者を殺せと命じられる。行きずりの女だから知らないと言いながらも、注射を打たれ、再び気を失う。気がついたのは、千代田線の明治神宮前駅のホームだ。懐を探ると500万入った封筒とカセットテープがある。
      自分のヤサの同潤会アパートに戻り、腕の傷の手当てをする鳴海。何度か早く岡島をやれと言う電話が掛かってくる。鳴海は自分を見張る男を締め上げ、組織のボスを呼び出し、自分は2000万の報酬でなければ、仕事を受けないのが、ルールだと言う。岡島の写真が届く。鳴海は、岡島がその晩の飛行機で国外に出ることを知り、ホテルで接触した。用心深い岡島はレンタカーで、空港に向かう途中にあるモーテルで時間を潰した。そこに直子が現れる。岡島の部屋を監視していた鳴海は驚く。実は、直子は組織が新しい人間を引き込む役割をしている。岡島も組織に入った時に、直子に会い抱いたのだ。直子に求められ抱く岡島。岡島がシャワーを浴びている時に、直子はカーテンを僅かに開ける。岡島が煙草を吸おうとした時に一瞬明かりを点ける直子。慌ててカーテンを閉めようとした岡島の額を鳴海のライフルが撃ち抜く。
to be continued.
博華で餃子とビール。

2009年2月23日月曜日

人生の寸法

    午前中代々木に届け物あり、六本木に出て、シネマート六本木のメンズデーで、
    アレクシ・タン監督『ブラッドブラザーズ(104)』。
上海郊外の村で病気の母親と妹と暮らす青年フォン(ダニエル・ウー)は、親友のシャオフーと村のダンス教室に行く。そこには、幼馴染で相思相愛のスーチェン(リー・シャオルー)が女性ダンス教師と踊っている。幼かったスーチェンが、女性らしい体つきになったとシャオフーに冷やかされつつ、スーチェンのリードで踊るフォン。シャオフーの兄で腕っ節が強く親分肌のターカン(リウ・イエ)は上海のキャバレー天国でウェイターをすることになっている。母親の薬代や、スーチェンの父親の借金を返して早く結婚するために、金を稼ぎに行こうと誘うターカンとシャオフー兄弟。フォンを入れた三人は兄弟同然なのだから、常に一緒に助けようと言われ上海行きを承諾するフォン。
  上海で人力車夫をするシャオフーとフォン。なかなか稼ぎも上がらず、ターカンがウェイターをしているキャバレー天国で早く働かせてくれと言いに行く二人。華やかな天国は、夢のようだ。歌姫のルル(スー・チー)のステージに息をのむフォン。しかし、ルルは上海の顔役で店のオーナーでもあるホン(スン・ホンレイ)の愛人だ。ある日、フォンが街を歩いていると、ルルの姿があり、思わず後をつけてしまう。ルルは怒って殴りかかるが、先日ステージを見て感動したのだと言うフォンに機嫌を直し、中国人でハリウッドスターになったアン・メイ・ウォンの看板を指差して、私もホンに映画に出して貰うのだと言う。しかし、いい人みたいだから忠告するけど、ホンやあの店に近づいてはいけないと言うのだった。
    しかし、天国のウェイターで終わる気のない野心的なターカンは、ホンの裏の仕事に手を染める。指示通り小銃の入った木箱を盗み出そうと言うターカン。悪事の片棒は担げないと現場を去るフォンだが、木箱を運び出そうとしたターカンとシャオフーの兄弟が見つかって殺されそうになったのを見て引き返し、敵の全員を射殺する。荒っぽい仕事を片付けた三人にホンは大喜びで、ご馳走する。フォンの姿を見て、複雑な笑みを浮かべるルル。フォンは、人を殺した後味の悪さに先に帰ることにする。そこにホンの弟で、兄の右腕として、指示通り人を消してきた殺し屋のマーク(チャン・チェン)が、兄を撃とうとして、逆に腹を刺され致命傷を負って倒れているところに出くわす。自分の家に連れて行き介抱してやるフォン。ターカンは荒っぽい仕事をしていくが、弟のシャオフーは繊細な性格が災いして、ターカンの他の子分に兄は豹だが弟は羊だと馬鹿にされる。その子分を叩きのめし、弟にも怒りを見せるターカン。
    ある日、フォンはルルを映画スタジオに誘う。セットで撮影ごっこを楽しむ二人。殺伐とした日常から癒やされたルルが、私を愛していると尋ねると、他の男のものだからと答えるフォン。あなただって同じじゃないのと言って、フォンの頬を打ち去るルル。翌朝、昨夜自分がルルを傷つけたことに反省したフォンは、朝食を持ってルルのもとを訪ねる。しかし、ルルのベッドにマークがいることを知って慌てて帰るフォン。
    マークとルルの裏切りを知ったホンは、忠誠心を試すには裏切り者を殺せるかだと言って、2人を消せと、ターカン、シャオフー、フォン三人に命ずる。フォンは、2人は友達だから殺すのは嫌だと言い、ターカンとシャオフー兄弟と決別し、マークとルルを逃がそうとする。しかし、ターカンたちが現れマシンガンを撃ってくる。フォンは腕を撃たれて倒れると、シャオフーが駆け寄ってくる。兄のターカンにフォンを撃つなと言うシャオフー。フォンにとどめを差そうとしたターカンをシャオフーは撃つ。マーク、ルル、フォン、シャオフー4人は車で逃走する。マークとルルを逃がした上に、フォンとシャオフーの裏切りにホンは激怒する。ターカンを殺そうとしながらも、油断して背中を見せたホンを刺殺するターカン。新しいボスに着くターカン。異議を唱える古参の子分を冷酷に射殺するターカン。弟のシャオフーが現れ、もう止めてくれと頭を下げる。しかし、ターカンは自分の弟はもう死んでいると言う。子分たちに連れて行かれ殺されたシャオフー。
   フォンは、マークとルルを自分の故郷の村に連れて行く。スーチェンはフォンの母親の面倒を見ながら、フォンを待ち続けていた。雨漏りがするフォンの家の屋根に登って瓦を直すフォンとスーチェン。静か過ぎて眠れないと苦笑するマークに、自分の故郷によく似たこの村でのんびり暮らしたいと言うルル。しかし、スーチェンとルルが市場で買い物をして家に戻る途中、ターカンの差し向けた殺し屋にルルは射殺される。あまりのことに呆然とするスーチェン。その頃、フォンの家にも追っ手が来ていた。際どいところをフォンとマークは返り討ちにする。息絶えたルルを抱きしめるマーク。
    キャバレー天国は、いつもと変わらず賑わっている。ステージではルルの代わりにターカンの愛人の?がセンターで踊っている。そこにフォンが現れ天井にショットガンを放ち、今日でこの店は閉店しますとアナウンスする。逃げ惑う客や踊り子たち。ターカンの子分たちが撃ってくるが、確実に仕留めるフォン。マークも客席から拳銃を撃ち続ける。2人はマフィアたちを全滅させる。ターカンは部屋で静かに待っている。フォンはターカンを撃つ。とどめを差そうとするマークを止めるフォン。しかし、宿命だと言ってとどめを差すマーク。
    エピックレコードジャパン/ジョリーロジャー草野陽花監督『悲しいボーイフレンド(105)』。  
    製薬会社の営業課長をしている岩津中(あたる)(寺脇康文)は37歳独身。中間管理職として今日も部下の失敗をカバーする接待飲み会だ。ある日携帯が鳴り、若い女の声で会って貰えないかと言われる。勿論心当たりなとなく、いたずらだと取り合わなかったが、何度も掛けてきて最後は会社の近くにいると言う。川を挟んだ向かいに制服を着た少女(寺島咲)が手を振っている。少女は、岩津が出た神戸三宮市立東町中学の後輩で、2年の香奈と名乗った。友達同士で、昔の卒業アルバムを見てお互いに好みのタイプを指差して、今どうなっているかを、探すゲームをしているのだと言う。一緒に旅行してくれと言うので、会社もあるし駄目だと言うと、携帯の番号を教えてくれた岩津のアシスタント(松田沙紀)に明日は休みだと聞いたので、1日だけ買い物に付き合ってくれればいいと言う。仕方なしに、承諾する岩津。
     買い物が終わり、高速バスに乗るのを見送る時に、岩津は香奈に騙されてバスに乗ってしまう。結局翌朝早朝三ノ宮に着く二人。会社を休むとアシスタントに電話をすると、既に親戚の不幸で今日明日有給休暇の話を聞いていると言う。これも香奈の仕業だ。
   一睡も出来なかった岩津の為にラブホテルに入る二人。眠っている岩津の傍らに入る香奈。目覚めた岩津は驚いて服を着る。東町中学に連れていかれる岩津。20年振りの出身中学はやはり懐かしい。しかし、香奈が、岩津の中学時代の話をやけに詳しく話し始めたことに戸惑う岩津。昔みたいに逃げ出すの?と尋ねられた時に、中学時代のことを鮮明に思い出す岩津。3年になってのクラス替えで、岩津の悪友たちは目を付けられていたのか、全員違うクラスに入れられた。担任(内山理名)が大声を出しても話を聞いている生徒は少ない。委員の選出で、悪友たちと保健委員になって一緒につるもうぜと言う話を思い出し、立候補する岩津(松下優也)。高川昌子(上田結)と言う女子も手を挙げる。昌子が岩津に好意を持っていることは明らかだった。
    付き合い始める二人。映画デートだけではなく、一緒に深夜に家を抜け出して、ある研究所に潜り込んで、勉強をするようになり、三回目の夜、岩津は思わず昌子にキスをし、更に先を求めてしまう。その後、娘を付けてきた昌子の父親によって、別れさせられる。結局このことは岩津の昌子への気持ちを萎えさせ、昌子は別の中学に転校することになった。昌子の一緒の高校に行こうと言う言葉から逃げるように、東京の私立高校に進学し、昌子とのツラい思い出は封印されたのだ。君は昌子の何なんだと尋ねる岩津。香奈は、岩津と昌子の子供には年齢は合わないし、昌子の生まれ変わりだと言われても信じられない。気がつくと香奈はいなくなっていた。
    東京に帰った岩津は何かが引っかかってしょうがない。神戸にいる友人に昌子の家を調べて貰う。神戸に舞い戻った岩津は、昌子の家を訪ねる。昌子の娘(清水くるみ)が出て来て、昌子は先月亡くなったと言う。心の病で、休みがちだった昌子は、娘によく岩津の話をしていたと言う。帰りかけた岩津に、昌子の娘は追って来て、葬式の後に出てきた日記帖を貰ってほしいと言った。しかし、あのことがあった85年のものだけが欠けている。神戸の山で日記帳を読む岩津。ふと下の河原に香奈の姿がある。河原に駆け降り、川を渡り始める岩津。やっとのことで渡りきり香奈のもとに行く。この日記帳を読んで欲しかったと言う香奈(昌子?)岩津の頬に口づけて去っていく香奈。急いで東京の家に戻り、心当たりの無かった宅急便を探す。差出人は香奈だった。中には8mmフィルムが入っている。そこに写っているのは、あの時の昌子から20年後の岩津へのメッセージだった。涙を流す岩津。吹っ切れた表情で仕事をしている岩津。
    大人のファンタジーを狙っているのかも知れないが、大人が楽しむにはもう少しリアリティないと。まるで、レコード会社か放送局のように雑然として、汚いオフィス、これじゃ製薬会社として、コンプライアンスとか守れないだろ(笑)。夜8時なのに、課長1人しかいなく真っ暗なフロア。こりゃ潰れちゃうよ、この会社。社会人経験のある、ちゃんとした大人のプロデューサーいないのか(苦笑)なんで製薬会社の営業部に、モニターやらデッキやら積み上げられているんだ。更に夜中に家を抜け出して勉強している筈なのにラジオを着けると阪神巨人戦のナイター中継。いい加減だなあ(爆笑)。まあ、細かいいちゃもんはともかく、大人のファンタジーと言うより、昔の少女マンガ。監督女性だからと、女性蔑視発想をしたら、草野陽花監督って男だったのか。「ブラブラバンバン」も原作のコミックのエネルギー完全に消滅していたし、草食系男子ってヤツ?
    ポレポレ東中野で、康宇政監督『小三治(106)』。
    落語家柳家小三治の生き方。最もチケットが取れないと聞いて納得する。一番残った言葉は、「ようやく、50過ぎて、人生の寸法がわかった。人には、自分が楽しんでいないとお客さんは楽しめないと言うけど、自分が楽しめていない。結局、人は生まれや育ちを引きずっている。子供の時に95点の答案を前に、親から、何で100点取れないんだと怒られていた時のままだから、高座で何で100点取れないんだろうと、楽しめない自分がいる。」うーん、自分のことを言われている気がするなあ(苦笑)。
    「小三治」を一緒にみた元同僚と、東中野銀座通りにある、元の会社の元のオフィスの近くにあった定食屋を久しぶりに訪れる。

2009年2月22日日曜日

引き籠り

  午前中洗濯を済ませると、読書と惰眠。というかほとんど惰眠だ。夕方、買い物で、近所を一回りして、帰宅。本を読みながら夕食。