2009年4月18日土曜日

落語とかけて

   川崎市民ミュージアムで、今井正監督の「婉という女」を見ようと思っていたのだが、週に何本も今井監督の映画を観てしまうと本当にやりきれない気分になるので、地元で食材の買い物。
     夕方から有楽町よみうりホールで、立川談志独演会に、無理矢理取って貰ったら、とてもいい席で恐縮する。持つべきものは、出世した友人だ。談志師匠は、そこにいるだけで本当に凄い噺家だった。まあ小咄というかジョークというか、とりとめもない話のくだらなさも芸の内だ。
   斜め前に、麻生久美子坂井真紀両夫妻が座っていて、麻生久美子の生笑い声が、自分の幸福感を倍増させる。ただ、お二人ともかなり好きなタイプなのに、それぞれの夫は、細身でかっこいい、いわゆるイケメンで、自分と正反対なことに少し傷つく(苦笑)。
   一緒に行った後輩Kと有楽町の炉端に入る。旨過ぎる!!ヤケ食い気味で、かなり苦しい。いい年して恥ずかしいなあ。

2009年4月17日金曜日

清水宏監督3本立て。

    神保町シアターで、昭和の原風景
    36年松竹蒲田清水宏監督『有りがたうさん(255)』
    伊豆の天城街道を走る乗合バスの運転手(上原謙)は、人や馬車を追い抜く時に、有りがとうと声を掛けるので、有りがとうさんと街道の人々の人気者だ。上りの始発の茶店で、母(二葉かほる)と娘(築地まゆみ)が茶店の婆さん(高松栄子)が話している。17才の娘は東京の遊廓に売られていくのだ。初めて村を出る娘に汽車に乗るまで見送ると母は言う。婆さんは、同情し、峠を2つも越える長旅だと、車中で食べろと羊羹を渡す。バスを出す時間が来る。有りがたうさんさんの直ぐ後ろには、流れ者の酌婦(桑野通子)が、本当はひとつ前のバスだったが、次が有りがたうさんだと聞いたので遅らせたのだと言う。有りがたうさんは、一番後ろに座った母と娘に、前の席の方が揺れませんよと声を掛けるが、付け髭の男(石山高嗣)が座ってしまう。バスが出発すると、居眠りをしていた老人(青野清)が、茶店の婆さんにバスに乗るんじゃなかったの?と言われ慌てて追い掛ける。
   舗装されていない山道を走る乗合バスの中では、色々な出来事が起こる。

   母親は茶店で貰った羊羹を行商人たちに配る。酌婦が荷物から洋酒の小瓶を出し……

   隣村の祝言に出席する夫婦(桂木志郎/水上清子)が乗ってくると次の停留所で、やはり紋付き袴の男(県秀介)が乗ってくる同じ祝言かと尋ねると通夜だと聞いて、縁起が悪いと言って夫婦は降り、通夜の男も悪いことをしたと下車してしまった………
     終点の河津駅が近づいて来た。酌婦は、涙を流す娘をチラチラ見ている有りがたうさんに、脇目はやめておくれと言いながら、村から出て帰ってきた娘はいないんだろう。シボレーのセコハンを買うぐらいで、この娘が、一山いくらの女にならずにすむと耳元で囁く。翌日の天城街道はピー干だ。乗合バスを運転する有りがたうさんの後ろには、17才の娘が母親と座っている。娘は、あの姉さんにお礼の手紙を出したいと言う。有りがたうさんは、渡り鳥なら、また会えるが…と言う。

    何か起きそうで、日常のことしか起きない清水宏監督作品の尋常ではないカメラワークに、やられまくりだ。今日の3本も、奥深いなあ。

     37年松竹大船清水宏監督『花形選手(256)』
いつも森(日守新一)や木村(近衛敏明)と校庭で昼寝ばかりしている関(佐野周二)と、真面目な谷(笠智衆)は大学の同級生で、競走部の花形選手。勝てばいいと言いながら、いいライバルだ。軍事教練の行軍演習に出掛ける。隊長(大山健二)の後を行進しながら、敵は幾万という軍歌をコール&レスポンスで、「敵は幾万ありとても~♪」「敵は幾万ありとても~♪♪」と歌っていると、近所の子供たちが後を付いてくる。しばらく行くと、今度は10人ほどの女学生が歩いている。追い抜きながら、気持ちが高ぶる。女学生たちは、後ろからやってきたトラックの荷台に乗って追い越していく。しばらく先で待っているのを見て、抜刀し駆け足になる。更に河に出て突撃する。
   昼休みになり、いつものように、森、木村と一緒に昼寝をしている関に、谷が声を掛けてくる。勝てばいいと挑発してくるので、相撲を取って勝とうと立ち上がると、集合との声が掛かる。午後の行軍中に、木村は腹が痛くなる。隊長は、森に付き添うように命じた。太った木村をおぶって歩いているうちに、森もへばってくる。そこに、運よく空の荷馬車が通りかかり、乗せて貰って、昼寝だ。ゴールに近づき、関に二人を迎えに行ってくれと貧乏くじを引く関。来た道を歩いて行っても二人の姿は見当たらない。娘の芸人と男女の子供が歩いて来るのに出会う。二人ずれの学生を見なかったかと聞いたが見ていないと言う。しかし、少し先で荷馬車で気持ちよさそうに眠っている森と木村を見つける。自分も後ろに腰掛ける関。娘芸人と一緒の女の子を一緒に乗せてやり、お姉さんかいと聞くと違うと答える子供、おばさんかいと聞いても違うと答える。どういう関係かと尋ねると分からないと答える子供。荷馬車の上にあった柿を子供にやる関。
   夜は、近くの村に分宿する。関のグループが泊った家の主人が学生たちに酒を注ぐ。このうちの息子は、身体が弱く、大学にまで進学したが、去年亡くなってしまったのだという主人。隣家に泊るグループが勝てばいいと騒いでいるので文句を言いに行く関。谷たちかと思うと、森たちだった。谷は、もう一軒先で、浪速節の上手い学生が唸るのを聞いていた。外を歩いていると、娘芸人と一緒だった男の子に出会う。女の子が具合が悪くなり、医者を迎えに行くと言う。自分が柿を食べさせたせいかと責任を感じた関は、娘芸人が泊る商人宿に同行する。


     池袋新文芸坐で、芸能生活70年 淡島千景の歩み
     59年大映清水宏監督『母のおもかげ(257)
    隅田川の水上バスの運転手の瀬川定夫(根上淳)は、半年前に妻を亡くし、息子の道夫(毛利光宏)と二人暮らし。向かいに住み、豆腐屋を営む叔父の大木恭介(見明凡太郎)と、ふで(村田知栄子)夫婦と娘でファッションモデルの慶子(南左斗子)に炊事洗濯掃除などやってもらっている。叔父は、定夫の後妻を、仲人30件目にしたいと張り切り、病院の炊事婦の高田園子(が、コブ付きだが、器量も性格もいいのでなんとか纏めたいと、無理矢理その日の夕方に見合いをセッティングする。
    仕方なしに会うだけだと言いながらも、定夫も床屋に行き、園子も一旦帰宅し着替えて喫茶店にやってくる。叔父は、二人でざっくばらんに話せと帰ってしまう。最初は気まずかったものの、おでんやで酒を飲み、寄席で、林家三平の落語を聞くうちに、お互い憎からず思うようになる。園子の家まで送る定夫。病院の調理場で世話になっているお藤夫婦(清川玉枝、南方伸夫)の二階に間借りしているのだ。園子の娘のエミ子(安本幸代)は既に眠っていたが、その寝顔を見て定夫の気持ちは固まる。
   問題は、息子の道夫の気持ちだ。道夫は、亡くなった母ちゃんの写真と、母ちゃんが買ってくれた伝書鳩をとても大事にしている。慶子は、両親から話を聞いて、子供同士の見合いをしたらどうだろうと提案する。自分が出演する最新モードのファッションショーが開かれるデパートに、道夫とエミ子を呼んで、お好み焼屋で食事をする慶子。

吉沢専務(大川健二)巡査(酒井三郎)

  子役がいい。映画を見ながら思ったのは、この59年製作の映画に出ている子役と、50年後の2009年の子役は全く違う。何だか、今の子役は、子供の役者だ。子供というよりも、物凄く若い役者という方がいいかもしれない。演技が達者な子供というより、何だか、役者としてうまい下手かどうかみたいな早熟を感じる。子供自体が変わったんだろうな。この映画のような子役は、梨園の3歳とかの子供が初舞台とかでないと見ることができないのかもしれない。昔の一生だった50年間での、人間の老成のスピードの早さを思った。

  高田馬場の四谷天窓で、実籾の歌姫・小笠原愛のライブ。そこから渋谷の立ち飲みバーで、元上司と久し振りに。

2009年4月16日木曜日

シネマ大吟醸

    神保町シアターで、昭和の原風景
    39年東宝京都石田民三監督『むかしの歌(250)』
    明治初期、大阪西横堀町(船場)の回船問屋兵庫屋の一人娘お澪(花井蘭子)は芸事好き。父親の治平(進藤栄太郎)と母親のお辻(三條利喜江)が結婚させたがっている四つ橋の油問屋の若旦那珊次(藤尾純)が店の前を通りかかる。珊次は、お澪の端唄を聞いている女を見かける。珊次は治平に声を掛けられ、兵庫屋に上がることに。お澪は、子供のいない兵庫屋夫婦に、納得ずくで家に入った女の子供であり、兵庫屋が続くための、道具として期待されている存在なのだと知って以来、屈託があり、気ままに勝手をしてきた。
    お澪は、頭もいいが、飄々として人がいい珊次を嫌ってはいないが、何か決められたレール通りに生きることに抵抗感があり、一緒に駆け落ちをしようと無茶を言う。二人が連れ立って歩いていると、車夫に追われた娘(山根寿子)が逃げてきて気を失う。娘を兵庫屋に連れて行く。医者に見て貰うと、空腹のせいだろう。一晩寝かせておけば大丈夫だと言う、しかし、熱もあり、お澪は、娘の看病をする。しばらくして目を覚ます娘。
   娘は十軒通りという貧しい長屋の貧しい士族の鉱平(高堂黒典)とおそよ(伊藤智子)の一人娘のお篠。貧しく内職で食べているが、鉱平は、かって上野の山で戦った相手であるが、西郷が薩摩で士族のために立ち上がるのであれば、馳せ参じたいが、旅費がない。そのために鬱屈する父のために、車夫に身を売ろうとしたが、果たせず逃げ出したのだ。お澪は、珊次に帰宅の途中に、お篠は無事であるので心配しなくていいと伝言を頼む。珊次は、お澪とお篠の顔を見て何事か気が付いたようであるが、お篠の家で一人夫と娘を待つおそよの顔を見て、あなたは、兵庫屋でお澪の端唄を聞いていた女だと確認して得心した。
   翌日、お澪は、お篠によかったら、兵庫屋で、妹のように暮さないかと言う。遠慮をしながらも、自分が家を出れば、少しは実家の生活も楽になるだろうし、お澪の人柄に承諾する。再び、珊次は、十軒通りの鉱平の元を尋ねる。士族としての誇りを傷つけられるが、何か珊次の人柄にお篠を預けることを了解する鉱平。その頃、兵庫屋の治平は、大阪の島津家を訪ねていた。島津家の用人は、西郷の蜂起はありえないと否定し、その言を信じた治平は、商いの勝負に出る。西郷立たずで、仕入れの金を運用する。番頭の泰三(冬木京三)は、お澪が柵次の元に嫁がないのであれば、泰三を婿にするという話もあるほど、主人夫婦の信頼も厚かったが、治平の賭けに反対し使用人の分際でと怒鳴られている。お澪が、お篠に三味線を教えていると、義母のお辻から、家がこんな大変な時に芸事は止めろと言われ、お篠を残して、一人珊次の元を訪ねる。
   お澪を部屋に上げて話している。自分は、兵庫屋の商売を続けるための道具にしかすぎない。自分を産むための哀しい運命の女だった実母に、ひと目会ってみたいものだと言うお澪。珊次は、何も言わずに、お澪を十軒通りに連れていく。鉱平は不在で、おそよが一人内職をしていた。珊次に呼ばれ、おそよと対面したお澪は、おそのの涙を見て、全てを理解する。しかし、ショックで走り去るお澪。その夜遅く帰宅したお澪は、ねえさんと呼ぶお篠に耐えられない。手紙を書き、珊次の元に届けるよう使いに出した。お澪の手紙を読んだ珊次は、いきなりの母子の再会がお澪にとってショックが強過ぎたのだと反省する。何も知らないお篠に全てを話し、お澪の気持ちが落ち着くまで、この家にいるよう勧める。またそれは、気持ちの整理のつかないお澪の希望でもあった。
   鉱平が兵庫屋を訪れた。おそよから全てを聞いて、礼をいいに現れたのだ。お澪は、自分の手箱に入っていた金を取り出し、この金を持って行ねと鉱平に叩きつける。そんなお金を貰いに来たのではないと言う鉱平。しかし、その時西郷立つという瓦版屋の声が聞こえてくる。読むなり、鉱平は、今度だけは、この金を借りていくと言って掴むなり、全速力で家に駆け戻り、刀をつかむや、西郷軍がいると言う熊本に向かった。西郷が起ったということは、兵庫屋治平にとっては、商いの破綻を意味した。破産した兵庫屋の店先では、兵庫屋の財産の競売が行われている。炬燵には、呆然とした治平夫婦がいる。お澪の髷を髪結いの大亀(沢井三郎)が、色街風に整えている。嘆く大亀に、平然とお客を呼んでねとサバサバと話すお澪。色街に売られたが、すっきりとした表情のお澪。そこに、お篠を連れた珊次がやってくる。お篠と、お篠と自分の実母のおそよのことを頼むお澪。人力車が迎えに来た。雪がちらつく中、お澪が人力車に乗ると、おそよがいる。おそよに笑顔を見せて、去っていくお澪。お澪は、かっておそよが兵庫屋の前で聞いていた端唄をくちずさんでいる。

   凄い。セット、カメラ・・・すべてに唸る。市川崑が助監督として参加している。市川崑の映像美の教科書だったのだろうか。明治維新からそんなに時間が経っていない日本の、いや大坂船場の風景。すべてセットなのだろうか・・・。しかし、古めかしく重々しいだけでなく、お澪の花井蘭子と珊次の藤尾純のやりとりは、今でも全く通用するような男女の会話。気まぐれなお澪に振り回されながら、飄々と楽しんでいる珊次。大傑作だ。

      40年松竹大船野村浩将監督『絹代の初恋(251)』
     三好絹代(田中絹代)が、煎餅屋の開店準備をしていると、毎朝煎餅を買いに来る女児にオマケをしてやる。父親の六達(河村黎吉)が出勤しようとしているが、寄る年波に勝てず、立て続けに忘れ物をする。弁当、ハンカチ、帽子全部長女の絹代が確認してやるのだ。次に二階に寝ている妹の光代(河野敏子/井川邦子)を起こさなければならない。枕元で声を掛けても起きないので、目覚ましを鳴らし、火事だと叫ぶとようやく飛び起きる。朝ご飯を食べさせ、送り出す。父親は弁当を光代のと間違えて小さい弁当箱を持って行ってしまった。
   光代は、証券会社の桐山商店で働いている。社長の桐山誠之助(三桝豊)は、息子で常務の昌一郎(佐分利信)に、もっと仕事に身を入れるよう忠告している。大学時代山登りをしていた昌一郎は、株屋という仕事に現実感が持てないのだ。また、社長の息子だとおべっかを使う幹部の社員にも、馴染めないものを感じている。昼休み、弁当を食べている光代に、昌一郎が「随分と大きな弁当だね」と声を掛ける。光代は、父親が弁当を間違えて持って行ってしまったことと、仕事を一生懸命やっている人間はお腹が空くと言う。自分への皮肉を言われているように思えた昌一郎は、社長から昼を食べに行かないかと誘われたが、腹は減ってはいないと断る。
   六達は、外国人客の利用も多い格式高いホテルのボーイを務めている。しかし、昨晩客(宮島健一)から大阪行きの急行券を買ってくれと金を預かったが忘れてしまっていた。支配人(寺門修)、六達は首を言い渡される。絹代が、店で煎餅を焼いていると、幼馴染で髪結いをしている親友のおのぶ(水戸光子)が、そろそろ髪をやりに来る頃でしょうと誘いに来る。小僧に仕事を任せ、出かける絹代。街を歩いていると、おのぶが、あそこに立っているのはおじさんじゃないの?と言う。確かに、ボーッと立っているのは、父親だ。店には後から行くと言って、父親を連れて家に戻る絹代。ホテルを首になってしまったという六達に、絹代は、小豆と日本酒を小僧に買いにやり、悲しむのではなく、無事に仕事を務めあげたことを喜びましょうと励ます。
   改めて、おのぶの店で、髪を結い、銀座に遊びに行く。甘味屋で、とりとめもなく話をした後、街を歩いていると、歌舞伎座だ。演目に見て行きたいと券売所を見るとすべて売り切れだ。がっかりして帰ろうとすると、一人の紳士が、二枚の切符を要らなくなったので差し上げますと声を掛ける。遠慮するが、捨てる所だったのでと、名前も名乗らずに去って行った。二枚目でスマートな男が忘れられなくなる絹代。実は男は、桐山昌一郎だった。蔦の家の房江(坪内美子)が見たいと言うので、せっかく苦労して切符を取ったのにすっぽかされたのだ。蔦の家に行くと、風邪気味だが房江はいる。長い間のお馴染だが、囲碁敵なのだ。
   昌一郎は、率直なもの言いのあの女事務員が気になっている。昼休み、社内電話で光代に電話をして、「今日のお菜は?」と冷やかすと「乾し鱈と昆布の佃煮です」とそっけなく答えて電話を切られる。数日後、常務室に光代を呼び、社員は、みな自分に対してチヤホヤするばかりで、何も言ってくれない。君には、自分の味方になってほしいので、僕について思っていることを言ってごらんと言う。そう言われましてもと遠慮する光代に直も尋ねると「怠け者です。お酒を飲みます。ぜいたくです」
と言い、「でも一番いけないのは、これと思う仕事を持っていないことです」付け加える。この一言に、昌一郎は傷つく。
   その夜、学生時代の山登りの友人の北原(山口勇)を、蔦の家に呼び出し、会社の事務員に恋をしてしまったのだと告白する。昌一郎は、その話を房江にも聞いてほしいと座敷に呼んだ。房江は、結婚しなさいよと明るく進めて、酒を取りに部屋を出る。けなげに結婚を勧めたものの傷つく房江。昌一郎の両親が、六達を呼び出し光代を息子の嫁に欲しいと切り出した。六達は、光代の勤め先の社長夫妻の呼び出しに、娘が何かしでかして首になるのかとやってきたが、突然の話に目を白黒する。何か狐につままれたような気分のまま、帰って家族と相談しますと言って、帰宅する。
   帰宅した六達は、光代の玉の輿話に魂消たと絹代に話している。本当は長女のお前に申し訳ないのだがと切り出したが、私は光代の姉でもあり母でもあるのだから、そんなありがたい話をお受けしましょうと言う。しかし、六達から見せられた相手の写真に息をのむ。歌舞伎座で切符をくれた、あの紳士だったのだ。少し置いて、六達に振り返って、私は光代の母なのだからと繰り返した。


    38年松竹大船清水浩監督『按摩と女(252)』
    山中にある温泉場に向かい二人の按摩が歩いている。洋装は徳市(徳大寺伸)和装は福市(日守新一)。彼らは、毎年寒い冬は海に近い温泉街、暑い夏は、山中の温泉街と往復している。二人は健脚で、山道で目明きを追い越すことを自慢にしている。彼らを追い越していく馬車がある。徳市は、馬車に東京の匂いのする女が乗っていると福市に告げる。温泉街に着いた二人、今年も20人程目明きを抜かしたが、ハイキングの学生5人連れに抜かれたのが、徳市は悔しくてたまらない。
    徳市は鯨屋から声が掛かる。行ってみると、東京の匂いがする女三沢美千穂(高峰三枝子)だ。若い女なのに、とても凝っている。いつまで逗留するか決めていないとも言うし、何か悩みがありそうだ。次の客は、徳市たちを追い抜いた学生たちだ。念入りに揉み、翌日歩けないようにしてしまう。一方福市は、やはり追い抜いて行った女学生5人組だ。按摩さんたちが余りに頑張るのでつられて歩いてしまったので、按摩代をまけろと無茶を言う。次に、馬車にも乗っていた子供と若
い男(佐分利信)の部屋だ。子供は、竹籤で福市の顔に触れると蚊が止まったと勘違いするので、面白がっている。
    翌日、朝から徳市指名で、昨日の東京の匂いのする女からの按摩の注文が入る。
  to be continued.

    この特集は、居酒屋大全などの書籍を愛読させていただいている太田和彦さんの「シネマ大吟醸」の文庫化に伴うものだ。酒の飲む方に関しては、二十歳頃からの意地汚い飲み方から一向に成長せず、恥をかいてばかりだ。ちょうど一回り上の戌年の太田さんが、あとがきで、評論家の川本三郎さんの「古い日本映画を見ることを全てのスケジュールに優先させる」という20年程前の言葉を引用されているが、この言葉とともに、この文庫は、今の自分には最高のプレゼントとなった。


   池袋新文芸坐で、芸能生活70年 淡島千景の歩み
   53年文学座/新世紀映画社今井正監督『にごりえ(253)』

 【第1話十三夜】
     満月の夜、人力車で、奏任官原田勇の元に嫁に行った娘のせき(丹阿弥谷津子)が訪ねてくる。父親の齋藤主計(三津田健)と母もよ(田村秋子)は、思いがけない娘の里帰りに喜ぶ。両親は、孫の太郎のことや、原田のお陰で、せきの弟の亥之助が昼間仕事につくことが出来て夜間に通うことになったことなど語り尽きない。実は、せきは、外に女を作り遊び歩き、家でも教養やしつけのなさをあからさまに罵る夫の仕打ちに耐えられず、息子の太郎を寝かしつけた後、家を出て来たのだ。もよは、家の前でわずか17歳のせきを見染め、まだ、何のしつけもしていないと固辞するのを、半ば強引に嫁にした癖に、そんなひどい仕打ちをするような原田と別れればいいと言い、せきと一緒に泣き崩れた。
    しかし、父主計は、息子太郎と永久に会えなくなるのだと言い、息子への想い一生泣き暮すことを考えたら、原田の仕打ちに耐えることは簡単だろうと言う。また若くして奏任官に選ばれるような原田には、我々のような凡人が想像も出来ないような苦労があるだろうと言って、直ぐに婚家に戻るように告げた。せきは、息子太郎のために、全てを耐えて過ごすと誓って、家を出る、門前で弟の亥之助(久門祐夫)が夜間から戻ってきたところに出会った。主計は、亥之助に表通りで人力車を探して、姉を乗せてやれと言う。
   表通りで、人力車を見つけ麹町の屋敷までと頼む。しかし、しばらく行った人気のない場所で、車夫は、気分がすぐれないので、ここで降りてくれと言いだす。こんなところでは、代わりの車も拾えない、せめて何とか広小路まで行ってくれないかと車夫に頼んだせきは、車夫が、幼い頃よく遊んだ近所の煙草屋の息子の高坂祿之助(芥川比呂志)だと気が付く。

 【第2話大つごもり】
   資産家山村嘉兵衛(竜岡晋)は、後妻のあや(長岡輝子)の不人情と気まぐれに、奉公人はひと月と持たない。前妻との惣領息子の石之助(仲谷昇)は、そんな家庭を嫌って家には寄り付かず、放蕩を繰り返している。山村の下女みね(久我美子)は、孤児の自分を育ててくれた伯父の安兵衛(中村伸郎)が伏せっていると聞いて、見舞いに行く。そこで伯父夫婦が高利貸しから借りた金の利息の2円だけでも大晦日に入れなければならないので貸してもらえないだろうかと相談される。気立ての優しいみねは、あやに頼むので心配するなと答える。甥の三之助(戌井市郎)に取りに来てくれと告げた。
   大晦日、酔った石之助が勝手口から入ってきた。再び奉公人が辞め、みね一人になっていた。嘉兵衛は、大晦日にも関わらず釣りに、あやと二人の娘(長女は、岸田今日子)は買い物に外出している。石之助は、金の無心に来たのだが、お茶の間で待つので、酒を用意してくれと言う。みねが酒と簡単な肴を用意して持っていくと、石之助は炬燵で眠っていた。三之助がやって来るが、あやには話をしてあるが、外出しているので、夕方改めて来てくれと言う。
   あやと二人の娘が帰ってくる。石之助が来ていると言うと眉を顰めるあやたち。みねが勇気を振り絞って、あやに、2円の借金の話を持ち出すと、貸すと言った覚えはないと言う。更に、あやの妹が産気づいたという連絡が来ると、いそいそと出かけてしまう。出掛けに嘉兵衛が貸していた20円の金を返しに来た男がいる。あやは、金を娘にしまっておくように依頼して外出してしまう。娘は、結局20円の金を仕舞う様に下女のみねに預ける。お茶の間の引出しに一旦はしまうみねだが、石之助は寝ており、魔がさしたみねは、20円から2円を抜いてしまう。伯母のしん(荒木道子)がやってくる。もともと2円は頼める筋ではなかったので忘れてくれというしん。みねは、既に主人に借りていると言って2円を渡してしまう。
   主人の嘉兵衛が帰宅する。石之助は、いろいろと、やくざな遊びの借金を返さないと醜聞が起こって、山村家に迷惑を廃嫡して、娘に婿を取りたいのだろう、その手切れ金としてもらえないかと言う。あやは、50円の金を渡して帰らせる。大晦日も夜となり、主人夫婦は、金を計算している。今日帰ってきた20円を思い出したあやは、下女のみねに、お茶の間の小箱を持ってくるように言う。恐れていたことが目の前になったみねは、震える手で、小箱をあやに渡す。引出しを開けるなり、あやは、お金がないと言う。目をつぶるみね。しかし、引き出しの中には、石之助の引出しの金も拝借候という手紙が残されていた。石之助を罵る主人夫婦の声を背で聞きながら、台所で脱力するみねの姿。

 【第3話にごりえ】
  本郷丸山の岡場所を後に控えた新開地にある雨が降ればぬかるむ通りにある小料理屋というか、あいまい宿の菊の井のお力(淡島千景)は、新開地一と言われる売れっ子の酌婦。かっては布団屋を手広く営んでいたがお力に入れあげた挙句、今は落ちぶれ荷馬車の後押し程度の賃仕事の人足、源七(宮口精二)が、ひと目会いたいと度々訪れるが、お力は顔さえ出そうとはしない。
  ある晩、お力は朝之助(山村聡) という客に声を掛け、座敷に上げる。見栄えもよく、金払いもいい朝之助に、お力は惚れる。しかし、同僚のお高(北條まき子)お照(文野朋子)お秋(賀原夏子)に、朝之助の財布から金を配るが、自分は名刺だけを抜き、明後日改めて来てくれと言って、朝之助を帰す。菊の井の主人の藤兵衛(十朱久雄)と女将のお八重(南美江)も、思いがけない上客にホクホクだ。
  お力は、気まぐれで、しつこい客の座敷を中座したりする。しかし、下女が櫛を落としたと聞いて、縁日で買ってきて、こっそり渡したりする気立てはいい女なのだ。朝之助は、身の上話をして、妻にしろ妾にしろとは、けっして言わないお力の気風を気に入って通って来るようになった。ある日酔いつぶれたいとお力は、貧しかった少女時代の話をする。
  源八は、お力との楽しかった日々を思い出して、ろくに働きもせず、ゴロゴロしているような男だ。妻のお初(杉村春子)が、お力のせいで夫がこんなになってしまったと、はっぱをかけたり、愚痴をいったり、お力を罵ったりするが、源八の屈託を深めるばかりだ。息子の太吉(松山省次)は、道で見かけたお力に鬼と罵っている。日に日に、お初と源八の距離は広がっていく。源八は離縁を申し出る。お初は、太吉を連れて家を出た。
  お初は、長屋の者たちに仲裁を頼み、家に戻るが、源八はいない。その頃、新開地の裏山で、心中死体が発見された。死体を改めている巡査たち。男が、女を後ろから斬りつけた上、自害したようだ。勿論、男は源八、女はお力である。

  本当に不遇としか言いようのないお力の人生。貧しさから身を売られ、なんとか生きてきた女を、かって金で買っていた男が没落の上、そんな女に未練を残し、しがみ付こうとした挙句、無理心中する。心中とは名ばかりで、自殺の道連れだ。救いようのない映画の巨匠今井正は、裏切らない。

     59年大映木村恵吾監督『歌麿をめぐる五人の女(254)』
      日本橋の裏通り金兵衛長屋、まだ薄暗い明け方、金魚売り甚八(見明凡太郎)が出てくる。3年も仕官が叶わない浪人の妻のおたみ(淡島千景)は、井戸を使っている。そこに、大家の金兵衛(山茶花究)が出てきて、おたみに、家賃の催促をする。おたみのところと、今美人画で江戸では人気者の喜多川歌麿(長谷川一夫)が、この3年間家賃を溜めているのだ。金兵衛は、歌麿の戸を開けると、甚八の娘のお雪(野添ひとみ)が掃除をしている。お師匠さんは昨夜からお留守です、仕事場には誰も入れてはいけないと言われていますというお雪に、大家と言えば親も同然、自分の長屋の店子の部屋に入って何が悪いんだと言って、入り込み。そこにある美人画を勝手に持って帰る。
   その頃、歌麿は吉原の大文字屋にいる。花魁の滝川(矢島ひろ子)と瀬川(倉田マユミ)が歌麿の噂をしている。花魁の小車(毛利郁子)の部屋で、刺青の下絵を小車の肌に書いていた。本来はご法度の花魁の刺青を入れろという小車に、江戸で一番の刺青師権次(寺島貢)は、小車の肌を見るなり、こんな綺麗な肌は、今まで自分が描いてきた刺青が色あせるので、彫れないと言いだしたので、小車は歌麿に下絵を描かせればいいだろうと頼んだのだ。しかし、そもそも花魁に刺青はご法度、奥には内緒で、歌麿は、一晩かかって描いていたのだ。歌麿も、こんな餅肌は見たことない。自分が今まで描いてきた美人画は、女を描いていなかったと嘆かした。小車は、歌麿と権次の刺青を一目見ようと、昼も夜も客が押し寄せた。
  歌麿の美人画に描かれるだけで、江戸中の話題となり、女のいる店は大繁盛する。水茶屋小伊勢屋のおとせ(淡路恵子)もその一人。同じ長屋に住むおかく(清川玉枝)の娘で、日本橋の袂の一膳飯屋で働くお蝶(春川ますみ)も、歌麿に描いてほしいと、捨て身で、歌麿に迫ってくる。よく知る長屋の娘、拒んでいたが、娘心に打たれた歌麿は描く。お蝶も大層評判になって、一膳飯屋をやめ、水茶屋の看板娘に出世した。
   歌麿の美人画を売る絵草紙屋いせ源は、連日押すな押すなの大盛況。そこに、松平周防守(沢村栄之助)お抱えの狩野栄川(河津清三郎)を中心とする狩野派の一問が通りかかる。いせ源に飾られている歌麿の絵を、品性が賤しく絵と言うものではない、ちゃんと狩野で学べと店主のいせ屋源兵衛(南部彰三)に言って、踏みつけた。ある夜、柳橋を歌麿が歩いていると、栄川の門弟たちが、襲いかかる。そこに通りかかった柳橋一の人気芸者の小はん(山本富士子)が通りかかり、歌麿を助ける。実は、栄川や、田川玉川(尾上栄五郎)たちは、柳橋で飲んでいて、門弟たちが歌麿を痛めつけたという報告を待っていた。小はんを座敷に呼んだが、女将は小はんが風邪でこれないと言う。しかし、離れから小はんの歌が聞こえてくる。一言文句を言おうと門下が離れに行くと、歌麿と一緒に盃を重ねている。小はんは、歌麿を闇打ちしようとしたのを助けたのは自分だと啖呵を切る。
   歌麿は、自分の絵に、春信のような気品がないことを気にしていた。長屋にいるおたみ(淡島千景)に絵を描かせてもらうよう取りなしをおかくに頼んだ。1両の金を出すと言われ悩みながら承諾するおたみ。
   江戸に、イベリアの曲芸団が象を連れてやってきた。水野筑前守(嵐三右衛門)松平周防守たちは、象ではなく、象使いの異人の女たちに目をつける。歌麿に描かせようと思いつく。お抱え絵師として、栄川は何故自分にと言うが、襖に絵でも描いておれと言い捨てられる。筑前守の屋敷に呼ばれた歌麿は、側室たまき(中田康子)を紹介される。江戸の女は誰でも自分の絵を描いてほしいと言われた歌麿に断るたまき。
   イベリアの訪日団の接待に、自宅の庭に鯉を放ち、二手に分けた腰巻一枚の女たちに鯉の生けどりを競わせようという下品な趣向を筑前守たちは、考える。歌麿は、甚八に頼んで、金魚問屋の辰巳屋の身分証明を借りて忍び込み、その様子を盗み見る。たまきの姿に我を忘れた歌麿は、池の水門を開け、失神して流れてきたたまきの裸像を描き取った。武家屋敷に忍び込んだことは、斬り捨てられてもしょうがないことだったが、たまきの絵に喜んだ筑前守に、お抱え絵師と言われたが、歌麿は、市井で江戸の女たちを描き続けることを選び、使者を怒らせた。
   おたみは、歌麿に裸像を描いてもらう時だけが、女としての自分を感ずることができる瞬間だった。絵の完成が近づき、おたみは、自分の身を歌麿に任せようとするが、歌麿は避け、多額の礼金をはずむ。しかし、おたみと歌麿の気持ちを感じ取ったお雪は、泣いて走り去り、以前より持ちかけられた室町丸正の若旦那からの縁談話を承諾する。玉の輿に乗ったお雪を祝う宴会が金兵衛長屋で盛大に行われた。金にセコイ金兵衛が自分の金を出す訳ではなく、全て歌麿の出費だ。酔って、水を飲もうと井戸に行った歌麿を、暴漢が襲う。狩野栄川の門弟なのか、お抱え絵師を断ったことで面子を潰された筑前守の意を汲んだものたちなのかは分からないが、歌麿の利き手を骨折させ絵筆を握れなくなった。
   お雪の嫁入りの行列が金兵衛長屋を出る。金兵衛は得意満面だ。丸正の屋敷に入ったところで、お雪は、父甚八に突然歌麿が好きなのだと言う。今更と言いながら、娘の気持ちを知った甚八は、火事だと大声を上げ、娘を逃がす。お雪は、走りに走り、金兵衛長屋を目指す。棒手振りを切りきり舞いさせ、大名行列を横切ってまで花嫁姿のお雪は走った。金兵衛長屋につき、歌麿の部屋の戸を開けると、だれもいない。遅すぎたのかと溜息をついたお雪に旅姿の歌麿が、祝言はどうしたのだと尋ねる。自分は歌麿の手となりますと言うお雪。

2009年4月15日水曜日

嗚呼!花の応援団。懐かしいのネンのネン。

   新文芸坐で、芸能生活70周年、淡島千景の歩み
   57年松竹大船渋谷実監督『気違い部落(246)』
   緞帳が降りたステージ。司会者風の男(森繁久彌)が下手から現れる。解説者らしい。東京日本橋、車が溢れかえっている。そこから西南に50~60㎞先に、この映画の舞台となる“気違い部落”がある。この部落は、14世帯、一世帯当たり2反の石だらけの田畑。むろんそれでは食べられないので、何かしら兼業をしている。一時間に1本しかないバスの停留所の名無し川の前は、金貸しの川端又一(須賀不二夫)の家だが、家の軒先にパスを待つ者に勝手に座って欲しくないため、五寸釘を剣山のように立ててあるほどのケチだが、部落の意見を纏める、二人しかいない親方の一人だ。すぐ近くの味噌、醤油、酒始め何でも商う店は、木崎三造(信欣三)の妻お紺(清川虹子)がやっている。この店は、塩には水差しで、目方を増やし、酒は水で薄めている。大倉仁太郎(藤原釜足)の妻。自転車の主人は青木助夫(三井弘次)。もう一人の親方は、機織りの工場を営む部落一番の金持ちの野村良介(山形勲)。妻のお三重(三好栄子)長男の太一(諸角啓二郎)と東京に行っている次男の次郎(石浜朗)。良介は、機織りに働きに来た女は手当たり次第に手を付けてしまう。
    下の部落の男たちが、チョボ一賭博の勝負をつけにやってくる。自転車屋の助夫は、又一と良介に報告に行く。軍資金とメンバーが大事だ。村田鉄次(伊藤雄之助)を誘おうとなり、鉄次ね家に行くと、女房のお秋(淡島千景)がウチのような貧乏人は、こんな時間に上がっていたら、飢え死にすると愛想がない。裏山に行くと、鉄次は、何故か鉄次と焼き印を押した杭を打ち縄張りしようとしている。鉄次は、博打のような悪さはもうしないと言う。良介らは、鉄次が親方の座を狙っていると言う噂を聞いて不満顔だ。
    良介と鉄次の仲が悪いことを鉄次の娘の光子(水野久美)は心配顔だ。弟の保(藤木満寿夫)に、良介の次男の次郎が手紙を渡してくれと頼む。夜、朧月夜の中で、光子と次郎はランデブーする。しかし、二人はきれいな関係だ。ただ、光子は風邪がなかなか治らないといって、時々咳をするのが気がかりだ。次郎は、東京では大学を出たのに、クリーニング屋の配達をしている。今度、国会のエレベーターボーイになると言う。この仕事で何とか代議士にコネを作って議員秘書になろうと思っているのだ。その時、バイクの音がする。駐在の酒盛巡査(伴淳三郎)が、山道を登っていく。その頃、部落の寺では、チョボ一賭博の真っ最中だ。

野村良介(山形勲)太一(諸角啓二郎)次郎(石浜あきら)お三重(三好栄子)川端又一(須賀不二夫)
木崎三造(信欣三)木崎お紺(清川虹子)大倉仁太郎(藤原釜足)おらく(賀原夏子)お千代(瞳麗子)土屋俵太郎(中村是好)孫娘(町田祥子)酒盛巡査

    56年大映市川崑監督『日本橋(247)』
    日本橋元大工町に、自殺した芸者のお若の幽霊が出ると噂の露地がある。そこに、稲葉屋お孝(淡島千景)が引っ越してきた。九人の芸者を置き、手狭なので、怪談話を笑い飛ばしてやってきたのだ。お孝を、赤熊と呼ばれる五十嵐伝吉(柳永二郎)が訪ねてくる。赤熊は、北海道の出身で、一時は海産物の商いでかなり羽振りが良かったが、すっかり身を持ち崩し、樋熊の毛皮を身にまとい乞食に落ちぶれていた。かって入れあげたお孝が忘れられず何かとつきまとっていた。お孝は、所詮芸者の自分とは、飽き足ら別れるという約束の関係、昔のことを持ち出されてもしょうがないと叩き出す。
   ある夜、お孝は、半玉のお千代(若尾文子)を連れて、待合いのお鹿の座敷に上がった。女中上がりの女将(沢村貞子)は、自分の店を恐縮するが、お孝はそういうことには拘らない気性だった。しかし、隣の座敷に一人でいる客が、この界隈では一番の人気芸者の滝の屋清葉(山本富士子)に熱を上げていると聞いて嫉妬心を燃やす。お孝は、清葉の客というだけで、冷静ではいら
れなくなるのだった。赤熊こと五十嵐伝吉も、元は清葉に振られていた客に、自分から声を掛け、いい仲になったのだった。お座敷を出る時に、清葉とすれ違ったお孝は、少し前まで、女将への言葉とは正反対に、こんな安い座敷に清葉姉さんともあろう人が上がるのは、問題だと皮肉を言う。
   清葉を呼んだ客は、実は東京帝国大学の医学博士の葛木晋三(品川隆二)だった。葛木は、幼い頃に両親を亡くし、ただ一人の肉親の姉が身を売り男の妾になって弟を大学にまで進ませた。今は行方不明になってしまった姉の面影を清葉に見て、告白したのだ。清葉は葛木の気持ちを嬉しく思いながらも、旦那のいる身で、娘も育てている。葛木の気持ちには応えられないと言い、別れの杯を交わす。
お酌お千世(若尾)葛木晋三(品川隆二)五十嵐伝吉(柳永二郎)
笠原信八郎(船越)
植木屋甚平(杉寛)蒟蒻島の阿婆(岸輝子)清葉の母(浦辺粂子)お鹿の女将(沢村貞子)腕白大将(川口浩)

   池袋から阿佐ヶ谷に行く途中、ばったり元同僚に会い、驚く。就職祝いに、渡そうと思っていたんですと、ちょっと意外なものを貰って、これは嬉しかった。50年間の人生の中で、何度も使ったことはあるが、自分のものを持つのは初めてだ。自分で所有している人は少ないだろうなあ。

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、孤高のニッポン・モダニスト映画監督中平康
   56年日活中平康監督『牛乳屋フランキー(248)』
   長州追分駅、東京に働きに出る堺六兵衛(フランキー堺)を村人総出で見送っている。村長で、六兵衛の叔父の堺小五郎(フランキー堺)は、長州男子たるもの誉をたてるまで故郷の土を踏まない覚悟をしろと言い、六兵衛は、長州の偉人である月形半兵衛の12倍の数を付けたのだから、それだけの働きをして来いと送り出す。東京駅に六兵衛が着く、小学生の少年が、お前は堺六兵衛だろうと言う。六兵衛は、叔父の杉健一と言う人が迎えにくる筈だと答えると、死んだ父親は、六兵衛の父親の一番下の弟だったので、小学生の自分が叔父の健一だと言う。健一はタクシーを止め、北沢にある自宅に連れ帰ろうとするが、六兵衛は、宮城に寄って行きたいと言う。話が分かるなあと健一は、タクシーで向かった先は、後楽園球場だ。
  やっとの思いで、杉牛乳店に辿り着くが、六兵衛はすっかり車酔いだ。


   76年日活曽根中生監督『嗚呼!花の応援団(249)』
   大阪の南河内にある、南河内大学、略して南河大、またナンパ大とも言われ、どこにも入れない受験生が入学してくる底辺大学だ。新入生の富山一実(香田修)と北口(深見博)は、無理矢理の勧誘で、応援団に入部する。応援団は、1回生ゴミ、2回生奴隷、3回生人間、4回生神様と言われる程厳しい上下関係の中、1回生たちは、しごかれ、殴られる毎日だ。
   ある日、応援団の部室に制服をボロボロにした婦人警官の今成いくら(伊佐山ひろ子)が、怒鳴り込んでくる。3回生で親衛隊長の青田赤道(今井均)に大事に守ってきた女の操を奪われたと言う。婦人警官と青田赤道は、もつれあったまま、部室の窓の外の川に落ちていった。巻き添えを食った大団旗も、びしょ濡れだ。そこで、富山と北口は、川の土手で、大団旗の虫干しをしていると言う訳だ。
しばらく後、青田が浪花大の応援団を袋叩きにしたので、浪花大応援団の連中が殴り込みに来るとの情報が入った。団長の木村誠(坂田情児)、副団長の下村等(坂田金太郎)ら4回生は、口では勇ましいことを言うが、卑怯で軟弱だ。富山と北口は、裏門で襲撃に備えろと命じられる。夜になり、車が裏口に止まり、下りてきたのは、サングラスにマスクをし、日本刀を持った男だ。北口は一人部室に報告に行く。団員を連れ裏門に戻ると、富山は腰を抜かしている。男はトイレに行ったと聞き、団長たちが向かうと、イボ痔が痛いのネンのネンと聞き慣れた声が個室の中からする。青田赤道は、停学中だが、浪花大の殴り込みだと聞いてやってきたのだと言う。
  喧嘩は先制攻撃だと青田は、富山と北口を連れて浪花大に向かう。応援団の部室に飛び込むともぬけの殻だ。果たして、その時、南河大応援団部室は殴り込みを受けていた。ボコボコにされる幹部や団員たち。青田のお陰で、無傷だった富山と北口は今日も大団旗の虫干しだ。ふと気がつくと、河原で逢い引きする男女がいる。女はいつぞやの婦人警官、男は青田赤道だ。触らぬ神に祟りなし、二人が団旗に戻ると、土手を走るトラックからの吸い殻の投げ捨てで、団旗の真ん中が焼けて穴が開いている。応援団の命の大団旗、これがバレたら、二人の命はない。富山は近くで寝る青田のくわえ煙管を見て、青田に罪をかぶせる。青田は団長たちを前に男としてケジメを付けると、ドスで腹を刺す。苦痛に飛び上がりながら、何事かを思い付いた青田。
   浪花大に果たし状を書き、富山と北口は届けに行く。安達ヶ原では、人糞を投げたりの奇襲作戦と青田の人間離れした怪力で南河大の勝利となる。浪花大の団旗を奪い、返還する際に、争いの最中に南河大の大団旗が破けたといちゃもんをつけ、団旗の修繕費と怪我をした幹部の治療費を巻き上げる。団旗は修繕したものの、治療費は、青田と親衛隊のメンバーのアルサロ貸切代に化ける。おんな達を独占したことで、やくざがいちゃもんをつけてくる。しかし、返り討ちし、やくざを袋叩きにする青田。この事件で、青田は再び停学になる。
   南河大の野球部が、関西三部リーグの決勝戦に出ることになった。しかし、大団旗は、あまりの重さのため、青田にしか掲げられないのだ。2回生の小林(野崎英則)は、4回生たちのいじめにあっている。大量の革靴を磨かされ、1000円と手書きで書いた紙で、タバコを買いに行かされる。精神安定剤を大量に飲んだ小林は、幹部たち用のジョニ黒を3本も飲み干し高鼾で眠っているところをどやされる。河原で青田の代役を探すが、あまりの重さに次々と失敗する。小林は、自分がやると前に出たが、背骨を折ってしまう。それを見ていて、富山が手を挙げる。何とか、持ちあげることは出来たが、試合が続く限り、団旗は掲げ続けなければならないのだ。
   

2009年4月14日火曜日

清水宏監督いいなあ。

    神保町シアターで、昭和の原風景
    41年松竹大船清水宏監督『暁の合唱(243)』
    秋田の女子専門学校の入学試験。国語のチェックをしている教師たち。珍解答に笑うと、一人の教師が、作文を力作だと読み上げる。子供の時の怪我がもとで、一本の指が不自由になっていると言う。今までの試験は上手く行っているものの、決して裕福ではない親のことや、本来この学校の身体検査では、彼女の障害はいくら学科試験がよくても不合格になると聞いたことなどを考えると、果たして受験したことがいいことだったのかと悩んでいると、現在の率直な気持ちを、ウイットに富んだ表現で綴られた作文だ。
   この作文をを書いたのは齋村朋子(木暮実千代)。あと1日残した試験の帰り、ふと朋子は、小出自動車と言うパス会社に、車掌募集と出ているのを見かけ、中にはいる。中では男二人が将棋をしている。事務所から和装の小出米子(川崎弘子)が、御用は?と声を掛ける。朋子は、この会社に入りたいと言う。将棋をしていた男(佐分利信)は、浮田兼輔と言う運転手の責任者だった。女子専門学校の受験を止めて、将来は運転手になりたいと言う朋子に、まずは両親の承諾を貰いなさいと言う浮田。あとで、連絡すると言う浮田に、名前も住所も言っていないので、連絡のしようもないと思うわと指摘する朋子。浮田の将棋の相手の小出三郎(近衛敏明)は、近くにある映画館の支配人をしながら、小出自動車を経営する兄が亡くなったので、姉の経理を手伝っている。横手の実家に帰る朋子。父・兵吉(坂本武)も継母・美代(吉川満子)も、異母弟の銀二郎(沖田儀一)ともとても良い家族を築いている。上の学校に進学せず、パスの運転手になると言う朋子の話を承諾する兵吉。
    小出自動車に入社した朋子に、浮田はまず車掌をやらせる。初乗車には、浮田自ら運転手となった。朋子に興味のある三郎も、パスに飛び乗った。物怖じせず、愛想もいい朋子は、少し気が散りやすいのと、思ったままを口に出すのがたまに傷だ。いつも三郎は、バスにタダで乗っていたが、三郎さんの切符はどうします?と尋ねる朋子に、浮田はバスを持っていない客は誰でも運賃を貰わなければ駄目だと答えたことで、三郎から運賃を取る朋子。バスは終点に着く。折り返しの出発の時に、三郎は停留所前の茶屋の軒先で、昼寝をしている。結局三郎を置き去りにして、バスを出す浮田と朋子。

   42年松竹大船清水宏監督『(244)』
   とある山あいの温泉宿を目指して、蓮華講の団体が歩いている。その中に、太田恵美(田中絹代)とお菊(川崎弘子)もいる。尚振りに太陽の下を歩くのは気持ちがいいと話している。温泉宿に着く。幹事は、空いている按摩12人を全員抑える。若い娘たちが中心の蓮華講の騒がしさは格別だ。二階の部屋にいる学者の片多江先生(斎藤達雄)は苛立ち、周りの客に当たり散らしている。まず隣の納村(笠智衆)が、賑やかですなと言うと、これは騒がしいだけで賑やかとは言えないと言う。また、二人の孫を連れて逗留している隣の老人(河原侃二)が景気がいいですなと言うと、あんたはこれが景気がいいと思うんですかと絡む、更に向かいの部屋の妻(三村秀子)連れの広安の若旦那(日守新一)が今夜は派手ですなと言うと、これは派手とは言えないと、またまた文句を言うのだった。学者先生の苛立ちは、団体のせいで、按摩を頼めないと知ってピークに達する。
   翌日、納村が温泉に入っていると、湯船の中に落ちていた簪を足に刺してしまう。昨夜の団体に腹が立っていた学者先生は、ここぞとばかりに、宿の主人(坂本武)や番頭(松本行司)や湯守に文句を言う。納村は、これもまた情緒ですよと言う。太田恵美から、簪の忘れ物はなかったかという手紙が宿に届き、主人は、温泉内に落ちていて宿泊客が怪我をしたと手紙を出した。太田恵美からは、謝罪のために、宿に来ると言う電報が来る。学者先生は、納村の情緒的イリュージョンのためにも、簪の持ち主が美人だったらいいと言う。もし、不美人であった場合に、納村の失望を癒す必要が出てくると、無責任な心配をしていたが、現れた太田恵美は幸い美人であった。
   老人の孫二人と、歩行訓練をしている納村に付き添う恵美。恵美はある男の妾だが、その立場に嫌気がさしている。家政婦に電話をし、もし、男がやってきて、荷物を持って帰ると言うのであれば、引きとめはせず、そのまま別れたいのだと話している。

 池袋新文芸坐で、スティーブン・ウォーカー監督『ヤング@ハート(245)』。
   昨年度、もう一度お金を出しても見たい映画の筆頭に挙げられるドキュメンタリー映画。後輩Sを誘って見に行く。本当は、自分が見た映画の中で、もう一度お金を払ってでも見たい映画を一緒に見に行く会を、開催する予定が、私の人徳で、平日の4時過ぎから映画を観ることのできる人間がSしかいなかったのが真相だ。しかし、今でも、誰にでも見て欲しいと切に思う。

  映画のあと、Sの友達と姪と一緒に晩御飯を食べようということになり、つい先日行って、空いていて、うまかった新宿歌舞伎町のベトナム料理屋に。やっぱり、美人と飲むと緊張しつつ嬉しくなって、オーバーペースになり、昨日に続いて深酒状態に・・・。

2009年4月13日月曜日

3本とも、女優のツンデレにメロメロ。

   午前中赤坂のメンタルクリニック。一件打ち合わせして、
   シネマート新宿でケニー・オルテガ監督『ハイスクール・ミュージカル・ザ・ムービー(240)』
アメリカの州高校対抗バスケット大会決勝、イースト高校ワイルドキャッツは、最終ランドを残して圧倒的に不利な状況だった。ハーブタイム。ボルトンコーチ(バート・ジョンソン)は、戦略もタイムボードも意識するなと言う。あと16分、卒業するメンバーは、これでワイルドキャッツのユニフォームは脱ぐのだ。とにかく16分集中してひとつになれとだけ言う。トロイ・ボルトン(ザック・エフロン)と、チャド・ダンフォース(コービン・ブルー)は改めて、高校生として、後バスケットをプレイ出来るの16分しかないと強く思った。最終ハーフ、ワイルドキャッツは、怒涛の逆転劇を繰り広げる。あとワンチャンス、コーチからどうすると尋ねられたトロイは、新メンバーの2年生ロケットマン(マット・プロコップ)を入れようと答える。最後の瞬間、トロイからのパスをロケットマンは見事にシュート、画期的な逆転劇で、ワイルドキャッツは、大会2連覇を達成する。
      祝賀パーティーがトロイの自宅で行われている。コーチをしている父親の出身校で、子供の時から親しんでいる地元大学のアルバカーキ大学のコーチたちも来ている。トロイとチャドは、ARBQ大への進学の予定だった。トロイは、ガブリエラ・モンテス(ヴァネッサ・バジェンス)を庭の木の上にある秘密の家に誘う。ガブリエラはスタンフォード大学への入学が決まっている。スタンフォード大があるカリフォルニア州スタンフォードは、ここルバカーキから1695kmもある。卒業が二人にとっての別れになるとブルーな気分になる。翌日学校に行くと、担任のダーバス先生(アリソン・リード)は、卒業講演の題目を尋ねる。シャーペイ・エヴァンス(アシュレイ・ティスデイル)がみんな忙しいだろうからと自分のワンマンショウを言いだすが、ケルシー・ニールセン(オルシア・ルーリン)がクラス全員参加を希望していると嘘の企画書を提出する。放課後、みんなが集まっても、前向きに参加するつもりもない。しかしガブリエラが参加すると言ったことで、トロイを始めみんな参加を希望する・・・。
  
  話に聞いたことしかなく、ザック来日誰?みたいな感じだった。しかし、青春ミュージカル映画、壺にはまる。いいなあ。

   村上賢司監督『細菌列島(241)』
   新潟市の真露病院、高熱で苦しんでいた女性患者が、フルシチョフ!!と叫んだかと思うと、頭が爆発、顔が将軍様に変わって死んでしまう。その際に吐しゃ物が、看護婦に掛かる。治療をしていた女医の水橋いずみ(三輪ひとみ)は、原因不明のウィルスによるこの感染症に悩んでいる。
   東京都内、散乱したアパートの部屋で、33歳のフリーターの月岡正一(須藤謙太郎)が熱で唸っている。フォトスタンドには、何故か新潟の女医の水橋いずみの写真が入っている。月岡正一は、北の将軍様の息子で、後継者だった。7年前日本で密入国し、酒池肉林の生活を送っていた月岡正一は、往診に来た女医の水橋いずみに一目惚れ、迫って強力なパンチで殴られる。
    
   シネマート六本木に移動して、
   チン・シウトン監督『エンプレス 運命の戦い(242)』
   燕国と趙国の戦いは、国王の甥の胡覇(グオ・シャオドン)の短慮で劣勢となり国王は、矢を射抜かれる。国王は、全軍の指揮を甥の胡那ではなく、雪虎将軍(ドニー・イェン)に執らせる。王女の燕飛児(ケリー・チャン)に、伝家の宝刀で、燕国の王位継承者に受け継がれる飛燕剣を、燕飛児に預け、燕国と燕飛児の後を雪虎に託すよう伝える。国王には、娘の燕飛児しかいないため、当然自分が王位を継承すると思っていた胡覇は、国王を殺害する。戦いは、雪虎将軍の指揮のもと何とか逍国を撃退させることに成功する。
   城に戻り、首相の滕伯常(寇振海)は国王の遺言として、雪虎に嗣がせることを告げるが、当然胡覇は納得しない。戦いの最中の仲間割れを恐れた雪虎は、燕飛児を女王とすることを勧めた。胡覇は、燕国の王は、先頭に立って戦うものだと文句を付けたが、燕飛児が、剣の腕を磨いて王として恥ずかしくないものになると誓ったため、一旦収まった。
   雪虎の、燕飛児への武術指導は過酷なものだった。全く手加減せず、川に叩き落し、落馬させた。しかし、その試練に燕飛児はよく耐えた。孤児であった雪虎と国王の娘である燕飛児は、兄弟のように育てられた。少年時代の雪虎が初陣の折、燕飛児が、自分だと思って持っていてと渡した石を、今でも大事に持っている雪虎。燕飛児は、雪虎に一流の戦死になることを誓った。
   しかし、ある時、燕飛児が、川で愛馬を水浴びさせていた時に、胡覇に命じられた闇の刺客たちが襲ってきた。燕飛児もよく逃げたが、毒薬を塗った吹き矢を打たれ落馬する。その光景を目撃していた男(レオン・ライ)は、隠していた罠で、刺客たちを倒し、自分の隠れ家に燕飛児を連れていく。毒の矢が刺さった矢痕をえぐり、解毒役を塗った。しばらくして気が付いた燕飛児は、この不思議な隠れ家で仙人のように暮す男の名が段蘭泉だと知る。初めは、治療のために肌を曝すことや、苦い薬を飲むことを拒絶していたが、段蘭泉のやさしさと孤独を知り、次第に心を許す。段蘭泉は、そんな燕飛児を、蜂蜜採りに誘い、戦が民を苦しめていることを話す。いつしか、二人は魅かれあっている。しかし、燕飛児は、王女として戻らなければいけないのだ。
  燕飛児の傷が治り、帰る日がやってきた。その頃、燕国では、燕飛児を亡き者にしたと思っていた胡覇は、王女が苦しい訓練に逃げ出したのだと言って自分が王位を継ぐと言いだした。
滕伯常
は、雪虎たちを捜索に出していた。雪虎は、森の中で、毒矢を発見し、燕飛児の身の上を案じていたが、段蘭泉に送られてきた燕飛児に出会う。燕飛児が、燕国の王女であったと知って驚く段蘭泉に、騙すつもりはなかった、必ず戻ってくると伝える。
  帰国の途中、一人の兵が燕飛児と雪虎たちに、趙国が攻めてきたが、胡覇が兵を押さえているために、大変なことになっていると報告する。急ぎ、滕伯常に合流する。趙国の兵力に対して、圧倒的に劣勢だったが、燕飛児は自らを囮にして、趙武(張山)と王子(延杰)を捕らえることに成功する。燕飛児は、憎しみの連鎖を繰り返すことを断ち切るのだと言って、二人を解き放つ。趙国の軍隊は、退いて行った。燕飛児は、国王としての初陣に勝利したのだ。勝鬨を上げる兵士たちと喜びを噛みしめた燕飛児は、故意に兵を引いて国を危機に陥れた胡覇たちを、殺さずに追放する。それは、胡覇の憎しみを更に募らせる。
  燕飛児は、王位を放棄し、国を滕伯常と雪虎の二人で治めるよう宣言して、段蘭泉の元に戻る。段蘭泉は熱気球を上げる所だった。再び会えないと思っていた段蘭泉は空の上から、桃源郷のような景色を見せるのだった。その夜、二人は結ばれる。しかし、胡覇の指示により更に強力な毒矢を持った刺客が更に迫っていた。
   雪虎は、段蘭泉の元に訪れ、剣を渡す。段蘭泉は、勇猛果敢で名高い朔月戦士の生き残りだった。闘うことの虚しさを知り、森の中で暮らしていたのだ。剣を置いたのだという段蘭泉に、愛する者を守るために剣を使えと言って、燕飛児を連れて遠くに逃げろと言って、国に戻っていくのだった。しかし、胡覇はクーデターを起こし、滕伯常を斬首し、王城を占拠する。雪虎を逃がすために、自ら楯になり、胡覇の軍勢を食い止め、飛燕剣のもとに、兵を集め、胡覇を討ってくれと言う部下たちの言葉に涙する雪虎。   
  一方、森の中の段蘭泉の隠れ家も再び、刺客たちに襲われていた。多数を相手に、二人はよく戦った。しかし、燕飛児を助けようとした段蘭泉は背中に毒矢を2本受けてしまう。この毒の強力さに自分の命を知りながら、段蘭泉は、国はともかく、民を守らなければならないという燕飛児を笑顔で送り出す。
  雪虎は、単身で胡覇の軍隊に乗り込んでいく。


   後輩Kと六本木一ビールが安い居酒屋に行くが、清算の時に、客単価の2.5倍だと言われる。ビール180円でも、一人で10杯飲めばしょうがないか(苦笑)。

2009年4月12日日曜日

週末の引きこもりはいいなあ。

  川崎市民フォーラムで、「橋のない川」を見ようと思っていたのだが、散らかった部屋を見ているうちに落ち込み、1割程度片付けたが、洗濯と読書と惰眠。朝妻一郎さんの「ヒットこそすべて」、ケラの「映画嫌い」、ダイヤモンド☆ユカイの「成りさがり」(苦笑)から読み始めると止まらない。食材の買い物をして、博華で餃子とビール。