2009年8月8日土曜日

夏の映画

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、昭和の銀幕に輝くヒロインたち【第48弾】星由里子
   62年東宝川島雄三監督『箱根山(455)』
   運輸省で唐沢運輸大臣(藤田進)出席のもとで、箱根地区の道路に関する聴聞会が開かれている。外では雷鳴が轟き、中での激しいやりとりと呼応しているかのようだ。南部急行の篤川安之丞(小沢栄太郎)は、自分たちが私費を投じて建設した箱根観光道路を、近藤杉八(中村伸郎)の西郊鉄道傘下の箱根横断鉄道バスが勝手に使わせてくれと言うのは乗っ取りに会ったようなものだと口汚く罵った。篤川傘下で、大浜銀次社長の(上田吉二郎)が経営する函豆観光バスと、西郊鉄道傘下で千葉雄次郎社長(浜田寅彦)の箱根横断鉄道バスは、箱根の観光事業で激しく争っていた。
    箱根観光道路を締め出された箱根横断鉄道バス側は、道路の遥か上を行くロープウェイを施設した。函豆観光バスは、芦ノ湖に、初の双胴船を導入、更に箱根横断鉄道側は、豪華遊覧船を建造した。実は2社と別に、床原園と言う大型温泉施設を持つ氏田観光の北条一角(東野栄次郎)は、独自に芦ノ湖スカイラインを建設中であった。しかし北条は、工場現場の視察をしながら、小さなところで足を引っ張り合っていてもしょうがないので、喧嘩に巻き込まれるなとにかく完成を急げと、床原園の総支配人の塚田肇(有島一郎)に、激を飛ばしていた。
     床原園に民政党の大物議員の大原泰山(森繁久彌)が北条に呼ばれやって来た。しかし、大原は虫に刺され体が痒いので、薬効のある温泉に行きたいと言い出し、芦刈にある老舗旅館の玉屋に宿泊することになった。芦刈には、玉屋と道を挟んで若松屋と言う旅館があり、玉屋から暖簾分けをした親戚だったが、その時のゴタゴタで150年に渡ってライバル関係にあった。
    今日も、若松屋の跡取り娘17才の森川明日子(星由里子)と、玉屋の使用人の乙夫オットー(加山雄三)もそれぞれの泊まり客の子供同士が「箱根の山は天下の険」か「喧嘩の険」と言う喧嘩に巻き込まれて喧嘩をしている。乙夫は、玉屋の女中の子供だったが、産後直ぐに亡くなった母親に代わって自分を育ててくれた玉屋の女将森川里(東山千惠子)に感謝し、尽くしていた。
    明日子が帰宅すると母親の森川きよ子(三宅邦子)が、学校から英語と物理の成績が下がったと電話があったと心配顔だ。明日子は、国語と作文はすこぶるよいのでいいでしょうと全く気にしていないが、女と言うものは、どれも平均的に80点位な方がいいのだと言う。その頃明日子の父親の幸右衛門(佐野周二)は、ちょうどロケで泊まっていた映画監督の川口豪(藤木悠)に、箱根の古代人についての自説を語っていた。芦刈、足柄、芦ノ湖など箱根一帯にアシと付く地名が多いが、アシは明日の意味で、縄文時代よりも前の石器時代の原人たちは、野生動物たちから身を守るために最も早く陽が登る場所に住み着いたからだと言う。箱根山の外輪山の東の切れ目から陽が差す場所は朝日ヶ丘と呼ばれていると言う。そこで、石器などの遺跡を発見すべく、研究をしているのだと言う。更にアシの地名に因んで、娘に明日子と名付けたのだと誇らしげに語る幸右衛門。
    大原泰山は、乙夫に身体を洗って貰いながら、彼の女将への忠誠心の強さと、相撲取りになっても良さそうな体つきと、聡明さに、とても好感を持った。風呂上がり用意された女将の?が板場を仕切って出された食事がある。大原が、乙夫に目を付け、自分の秘書兼ボディガードにしようと思っていると話すと、北条もぜひとも自分の会社に迎えたいと思っていたと言い出し、俄かに険悪になる二人。
     最近若松屋に押され気味な玉屋は起死回生に、番頭の小金井寅吉(藤原釜足)が温泉井戸のボウリング工事をやっていた。しかし、金が掛かる割にはなかなか簡単には出てくれない。職人気質の親方(西村晃)に、くどくど言い過ぎて怒られてしまう。里は、そんなに簡単に温泉が出る訳はない、自分は5年位掛かると思っていると言うが、資金繰りに困っていた。里は、寅吉に乙夫に、三島の親類の茗荷屋の末娘フミ子(北あけみ)と結婚させ、旅館を継いで貰おうと芦ノ湖祭りにフミ子を手伝いに越させて、人柄を見ようと思っていた。
   寅吉は、大原泰山の宿代を床原園の総支配人、塚田のもとに受け取りに行く。塚田は、北条からどうしても乙夫を連れて来いと厳命されており、乙夫の出生の秘密を寅吉に尋ねる。乙夫の父親は、横浜に寄港したドイツ巡洋艦のフリッツ兵曹だった。巡洋艦は故障し、修理が終わるまで、主人がドイツ語を理解する若松屋が宿舎となった。フランツは玉屋の女中のお留と親しくなり、乙夫が産まれたのだ。しかし、難産だったお留は数日後亡くなり、フリッツ兵曹は帰国しなければならなくなった時に、本国の嫉妬深い妻がいて、乙夫わ連れて帰ることは出来ないが、くれぐれも宜しく頼むと里に頭を下げて帰国したのだと言う。寅吉は、ドイツ人の父親も女中の母親も容姿は特によくなかったと、余計な話までしている。

  銀座シネパトスで、「日本映画レトロスペクティブ-PART2-」~戦争と人間 良心の重さ~。
   68年ATG岡本喜八監督『肉弾(456)』
   海に浮かぶ魚雷に繋がれたドラム管から、"あいつ"が顔を出し、第二あけぼの楼と書かれた番傘を広げる。昭和20年の夏のことだ。"あいつ"は21歳6ヶ月だった。硫黄島、沖縄と奪われたことで、お臍まで見られてしまったような恥ずかしさがあると、砂浜で出会った中年女が言っていた。広島に、新型爆弾が落とされ全滅、次は九州に上陸され、本土決戦だ。強い閃光は新型爆弾だろうか。ドラム缶に飛び込んできた小魚を
   

   59年東宝橋本忍監督『私は貝になりたい(457)』
   
   橋本忍さんの脚本家としての功績は本当に素晴らしいものだと思うが、自身で監督した作品は、どれも、どうもシャキっとしない感じがしてしまうところはとても残念だ。しかし、清水豊松が初めて巣鴨プリズンに入って眠れぬ一晩を過ごし、翌日の木曜日に、同室の大西三郎(中丸忠雄)が、処刑のために、部屋を出されるシーンの緊張感は格別だ。
   音楽は、よさこいをオーケストレーションしたものが何度もリピートされ、ちょっと耳障りだ。

   COOL&WILD 妖艶美 反逆のヒロイン 梶芽衣子
   74年東京映画藤田敏八監督『修羅雪姫 怨み恋歌(458)』
   荒廃しきった寺で、疲れ果てた表情で座り込む鹿島雪(梶芽衣子)の姿がある。目の前の墓は、父親と母親の名が、また雪に剣を教え込んだ元旗本の道海和尚の墓もある。気が付くとドスや長ドスを下げた着流しの男たちに取り囲まれている。墓地内で、石段を下りながら斬り捨てる雪。最後に斬られた男が池に落ちた。その池の水をすくい飲む雪。フラフラと立ち上がり、山門を開け外を見ると、日露戦争から戻った兵士たちが行進している。明治38年9月、日露戦争は勝利に終わったが、戦死者37万にも及んだ。
   雪は気が付くと、馬上の丸山警部(山本麟一)に指揮された警官たちに取り囲まれていた。凶悪犯として指名手配されている雪は、逃亡を続けるうちに焦燥しきっていた。何とか斬り捨て、丸山の乗る馬を奪って逃走する。海岸で馬から降り、よろよろと歩き始める雪。警官たちの呼び笛に追われるように、しばらく行くと焚火を見つける。そちらに歩き出そうとしたところで、雪はトラバサミの罠に足を挟まれる。苦痛に歪む雪。疲れきった雪に罠を外す力は残っていなかった。そこに、野兎を下げた長髪のマタギのような姿の男(原田芳雄)が現れる。足の傷を手当てし、2,3日で治るだろうと言う男。食事を勧めてくれるが、逃亡生活の中で、神経を酷使しすぎた雪は、松ぼっくりが落ちた音にさえ反応してしまう。そんなに気をつめていると参ってしまうぞと男は声を掛ける。
   翌朝、日の出ととも、雪が目を覚ますと、自分には毛布が掛けられており、食事とコーヒーが目の前にあった。しかし、おとこの姿は見えない。手が昨日の戦いの血で汚れている。砂浜に降りて、海の水で手を洗う雪。気が付くと、半端ではない人数の警官たちに取り囲まれている。紫紺の傘から仕込み刀を抜き、二人ほど倒すが、離れてる場所に立っている昨日の男と目が合うと、覚悟を決めたように、刀を宙に投げ、大人しく逮捕された。
    雪は、自分が生まれおちた女囚のみが収監される特別監獄に入れられた。明治39年3月14日大審院の丹野静一郎判事は、殺人請負人として、37名もの人間を殺し、逃亡を続けていた凶悪犯として、絞首刑が相当だと判決した。雪の死刑執行の日がやってきた。二頭立て馬車で護送される雪。気が付くと洋装だが、おかめの面を被った男たちが護送車を襲撃し、雪を奪取した。この男たちは、特別警察を率いる菊井精四郎(岸田森)に指示された蜍(南原宏治)たちだった。
    菊井は、命を救う代わりに無政府主義者の徳永乱水(伊丹十三)に近づき、乱水の元の”あるもの”を探し出して手に入れることと、乱水の命を奪うことを要求した。承諾する雪。
雪は、乱水の家に女中として住み込んだ。乱水は、妻のあや(吉行和子)と二人暮らし。本来は女中に来て貰うような暮らしではないが、あやの身体が弱いからだと言う乱水。乱水とあやの濃厚なセックスを覗いてしまう雪。乱水の書斎を探すが、目当ての物は見つからない。
   ある日、叛逆事件一周年と言う原稿を書いていた乱水は外出するので、雪に同行して欲しいと伝える。家を出た途端特別警察の尾行がついた。何とか刑事をまくと、乱水は、雪を犬猫の墓に連れて行き、修羅雪姫と呼ばれる鹿島雪だろうと言う。乱水は、雪の正体と自分の家に来た訳を知っていた。一年前、たまたま入院していた乱水を除き、同志12名を叛逆事件と言うでっち上げで殺され、この犬猫墓地に葬られたのだと言い、自分のボディガードをやってくれないかと頼む乱水。元より菊井に恩義を感じている訳ではない雪は承諾する。更に自分に万が一の場合は、四ッ谷鮫ヶ橋の貧民窟にある診療所に、菊井たちが探している秘密文章を届けてくれと雪に預ける乱水。

2009年8月7日金曜日

港のヨーコ、ヨコハマ、ヨコスカ~♪

   午前中は大門の歯医者。二日酔いではないが、血中のアルコール濃度が相当高い感じ。風呂に入っても抜けない。歯科医に申し訳なさすぎだ。不幸中の幸いで、今日はここのとても可愛い歯科衛生士のお嬢さんが付くことはなかった。しかし、私が帰った後に、翌朝歯医者に来ることが分かっているのに、深酒するなんて最低な人間のすることだと毒づかれたかもしれない(涙)

    それから、品川経由で横須賀まで。遠い!東京の西のはずれで育った自分には、どうも横浜・横須賀とセットのイメージだが、西荻窪と西八王子くらいの感じだ。ただの横同士西同士。
    今日は、友人N氏が重要なプレゼンがあるので、彼がブッキングした庄野真代さんの横須賀のライブハウスの仕事。久しぶりの横須賀(というか、いつ以来なのか思い出せないくらいの久しぶりだ。)、早めに入って、これぞ横須賀ってあたりを歩こうと思っていたのだが、33℃超えの灼熱地獄。横須賀中央駅から10分歩いただけで駄目だ。ビールとワインが65%含まれた汗が噴き出し、このままでは、死んでしまう。ライブハウス近くで、喫茶店探すが発見出来ず、ダンキンドーナツへ。コーヒーお代わり自由だったんだDD。さすがにコーヒーだけ頼むのも心苦しく、ドーナツ100円均一だったので、オールドファッションを頼み、二時間読書。
    高峰秀子の「わたしの渡世日記」の下巻を一気に読む。5歳でデビューしたトップ子役がロクに学校にも通わずに仕事を続け成長して、奇跡的にトップ女優になってしまい、50歳を迎えた時に、無理矢理文章を書かされ、自伝をまとめたら、どんな凄いゴーストライターが書いたと誰もが思いこむような文才を発揮。凄い人だ。どっちが、高峰秀子さんで、どっちが高峰三枝子さんなのか区別もつかないような恥知らずな人生を50年も送ってしまった自分が、ようやくこの人を知ったのだ。遅すぎたが、気が付いて良かった。本当に良かった。

   それから会場に行くと、4階なのに、エレベーターの工事中だ。メンバーの皆さんをビルの前で待ち、荷物を上げるのを手伝い、楽屋に案内し、ステージドリンクなど買いに近くのコンビニに行ったり、4階までの階段を何回往復しただろうか。再び、ビールとワインが50%含まれた汗が噴き出す。しかし、意外にも、水を飲み飲み、登ったり降りたりしていると、アルコールも抜け始める。庄野さんのライブ、なかなか良い!!ピアノ、アコースティックギター、ウッドベースのミュージシャンたちとの演奏は、何だかキャロル・キングとセクションのようだ。名盤「タペストリー」を想い出しながら、ただただ、オーディエンス化。幸せな気分で、上りの京急に。決して健全な労働とは言い難いが、1日汗にまみれて、快いだるさで帰宅するのだった。

2009年8月5日水曜日

神保町はシルバー料金、新宿はレディーズデー。映画館は人で溢れている。

  神保町シアターで、没後四十年 成瀬巳喜男の世界
  35年PCL成瀬巳喜男監督『噂の娘(453)』
  新橋烏森、灘屋酒店と看板がある。向かいの山田理髪店で、客と主人(三島雅夫)が会話している。「向かいの灘屋は相当いけないらしいね」「ご隠居の時、だいぶ傾かせてしまいましたから。可哀想なのは今のご主人ですよ。養子だし、傾いてからやって来たし。」
   噂の主人建吉(御橋公)が、長女の邦江(千葉早智子)に邦江ちょっと出掛けてくるよと言う。隠居の啓作(汐見洋)が、邦江にちょっと貰うよと声を掛けて、湯呑みに酒を注ぎ、隠居部屋に戻り、ご機嫌で三味線を弾き小唄を唸る。客が、ご隠居さんはお酒がお好きなんですねえと言う。灘屋は、量り売りだけでなく、店先で一杯飲む客もいるのだ。若い男と一緒に歩いている娘が、向こうから自転車に乗った建吉の姿を見つけ、隠れる。どうしたの?と男に聞かれ、お父さんと答える娘は次女の紀美子(梅園龍子)。
   紀美子は帰って来ると、塩豆の鉢を抱えたまま居眠りをしている店の小僧にお姉さんは?と尋ねる。大きなお嬢さんは裏に行っていますと答える。紀美子は帳場の銭入れからお金を取る。そこに邦江が戻って来て紀美ちゃん、お店のお金は駄目よと叱る。いいわよと言ってお金を放る。でも、お小遣いをくれないなら、明日のお姉さんの頼み聞いてあげないからと紀美子。明日、邦江は見合いをすることになっており、照れ臭い邦江は妹に同行を頼んだのだ。お姉さんの負けねと言って小遣いを渡す邦江。
   建吉が帰って来て、邦江と見合いのことを話している。「うちの店はこういう状態だから、確かに相模屋さんに嫁に行くと、援助をしてくれるかもしれないが、どうも私は、邦江がそのことと、紀美子と母さんのことを考えて、この縁談に承諾したのだと思えてならないのだ。」「いえお父さん、これが最善なのよ。」「しかし、私とお母さんの結婚はお互いを不幸にしてしまったと反省しているのだ。」「わかったわ、よく考えてみるわ。」「紀美子は最近遊んでばかりいて、何か問題を起こさなければいいのだが。」「いえ、紀美ちゃんは、あたしよりずっと頭がいいのだから、心配ないわ。」「ちょっと、お前から注意をしてくれないか。」
   翌日、邦江と紀美子、伯父(藤原釜足)、相模屋の息子佐藤新太郎(大川平八郎)と母親が、レビュー劇場で見合いをしている。お洒落で遊び人の新太郎と、邦江の趣味はあまり合わない。更に、会話の度に、紀美子が口を挟み、叔父さんは困り顔だ。新太郎たちと別れて歩きながら、「紀美子、お前だって嫁に行ってもおかしくないんだから、もっとしっかりしろ」「いえ、私はお見合い結婚なんてしないわ。」「邦江、新太郎さんとのことどうする。」「私は何もないので、叔父さんにお任せするわ。」



    渋谷で散髪。トップ2ミリ、サイドとバック0.1ミリ、やっぱり気持ちいいなあ。毎日でも刈って欲しい。

    新宿へ回り、ジュンク堂。

    ピカデリー新宿で、デイビッド・イェーツ監督『ハリー・ポッターと謎のプリンス(454)』
    ストーリーはどこにでもあると思うので不精する。うーん。毎回公開の度に見ているが、原作やシリーズに思い入れがないと今回は辛いなあ。ちょっと間が開いてしまったし、今回の見所はと聞かれても、なんとも言いようがないのだった。とはいえ、レディースデーでもあり、ポップコーンを持ったカップルでいっぱいなのだ。久しぶりに洋画系デートムービーなんだな。

    外苑前の粥屋喜々に。飲みながら、お客さんに紹介してもらう予定は少し狂ったが、N氏と飲み、いろいろ話ができてよかった。

2009年8月4日火曜日

二日酔いで蒸し暑いのは厳しいなあ。

   シネマート新宿で、鈴木卓爾監督『私は猫ストーカー(447)』
    谷根千(谷中、根津、千駄木あたりのことですね)の古本屋猫額堂でアルバイトをしているハル(星野真里)の本職は、イラストレーターだ。しかし、日がな野良猫の行動を着けて歩く猫ストーカーである。猫額堂には、チビトムと言う猫が、一等席の赤い布団に寝ている。本を静かに読んでいる主人(徳井優)と、主人が失恋してやけ酒を飲みに来ていたスナックのホステスだったが、愚痴を聞いているうちに結婚してしまった奥さん(坂井真紀)。またもう一人のバイト真由子(江口のり子)と、猫の額のような店でやっていけるのだろうかと他人ながら心配してしまう(笑)。
   ハルが猫の姿を探して街を歩くと、猫仙人や、寺の住職や、店の常連だが、何故か街で出くわす度に、いつも店にない本を探してくれと頼むストーカーチックな若者鈴木…。ハルは、気ままに暮らす猫たちの後を着けて、その行動経路をスケッチブックに纏めるのが日課だ。かって付き合っていたプロミュージジャンになることを夢見ていた男は田舎に帰り、リンゴ農家になっている。送ってきたリンゴの箱の中に、結婚しますという手紙が入っている。

   神保町シアターで、没後四十年 成瀬巳喜男の世界
   51年東宝成瀬巳喜男監督『舞姫(448)』
   バレエの公演。客席に矢木波子(高峰三枝子)と竹原(二本柳寛)の姿がある。表情の暗い波子。耐えきれず外に出る波子。竹原も後に続く。「どうしました?」「どうも、矢木や高男の視線を感じてしまうんです。」「矢木さんは京都に出張だし、高男くんはバレエが嫌いだし、出会うことはないんじゃないですか。そもそも見られて困るようなことは僕たちはしていませんよ」「高男は父親を尊敬しているので、時々、矢木に頼まれて、私を見張っているんです。」「まさかそんな、本当の神経衰弱になってしまいますよ」

   35年PCL成瀬巳喜男監督『妻よ薔薇のやうに(449)』
   退社時間のようだ。誰もいなくなったオフィスを、詰め襟姿の小僧が、口笛を吹きながら、片づけている。あれ山本さんまだ帰らないんですか?と山本君子(千葉早智子)の手元を覗くと、便箋にネギとか食材が書かれている。あれ?ラブレターでも書いているのかと思ったら…。山本さんは恋人いませんね。寂しいでしょと言われ、おあいにく様一人ならいるわと答え会社を出る君子。
   会社の前で、恋人の精二(大川平八郎)が待っていた。待ってくれていたの?と君子が尋ねると、帰ろうとしていたところだと言う。その割には写真見に行かないかと誘う。今日は渋谷の伯父さんに相談があると言われて行かなければならないので、明日、その写真代でお母さんへのお土産を買ってウチに来てくれば、腕によりを振るってご馳走するわと言う。
  君子は帰宅し、料理を作る。母の悦子(伊藤智子)は、優雅に短歌を詠んでいる。君子が話掛けると、今インスピレーションが湧いたので、静かにしていてと言う。食事をしながら、悦子は、あんたが朝晩おさんどんをするのも大変だろうから女中を雇おうと言う。二人しかいないからいいわよと君子。

  銀座シネパトスで、「日本映画レトロスペクティブ-PART2-」 ~戦争と人間 良心の重さ
 52年北星映画山本薩夫監督『真空地帯(450)』

  52年近代映画協会新藤兼人監督『原爆の子(451)』
  小学校の校庭で生徒たちと体操をする女教師の石川孝子(乙羽信子)。「はい、これで一学期はおしまいです。夏休みいっぱい遊んで、元気に9月に会いましょう!!」孝子が職員室に戻ると、男性教師の?が、「石川先生、夏休み厳島にキャンプに行きませんか」と声を掛けてきたが、「私は広島に行くので」と断るたか子。「石川先生は広島のご出身でしたか。」「僕なんか、この島で生まれ育ったので羨ましいです。」「こんな素敵な島で生まれ育ったなんて羨ましいですわ」と孝子。
   自転車に乗って帰宅する孝子。叔父夫婦木島浩造(寺島雄作)とおいね(英百合子)のもとで暮らしていた。叔母が、布団の打ち直しをしているので、手伝おうとすると、明日の支度をした方がいいんじゃないのと叔母。このまま明日の朝の船で行くので準備なんてありませんと孝子。何年振りかしらと尋ねられ、あれから一度帰ったきりですから、4年振りです。昔のことを思い出さなくなったのは、おじさんとおばさんのお陰です。あなたの田舎はここだと思って貰っていいのよとおばさん。どこに泊まるのと尋ねられ、幼稚園で一緒に働いていた森川さんの家に泊めてもらいますと孝子。
   船に乗っている孝子。牛を連れた男(東野栄治郎)と船長(殿山泰司)が、先生も親許に甘えに帰るんだなとからかう。しかし、孝子の一家は、原爆でみな亡くなっている。
    「1945年8月6日、広島の街な上空に、原子爆弾が投下されました。美しい広島の川は、今日もあの日と同じように美しく流れています。」自宅の後に立つ孝子。花を手向けて、手を合わせる。その日のことを思い出す孝子。優しい母せつ(細川ちか子)とひょうきんな父親利明(清水将夫)と妹の春子の生活は楽しかった。その時間、洗濯をしている母せつ、役場で笑っている父利明、校庭で整列している春子、幼稚園でオルガンを弾き、園児と歌を歌う孝子。8:15にその地獄が訪れた。
   原爆ドームを見つめている孝子。相生橋に、顔のケロイド痕がある乞食の姿がある。近づいて、「岩さん、岩吉さんでしょ」と声を掛ける。かって家の爺やだった岩吉(滝沢修)だった。

    COOL&WILD妖艶美 反逆のヒロイン 梶芽衣子
    74年東京映画藤田敏八監督『修羅雪姫(452)』
    明治8年神奈川県八王子村東京監獄八王子?。雪の降る夜、女囚たちの中で難産に苦しむ鹿島小夜(赤座美代子)の姿がある。産声を上げた赤子に、雪と名付け、怨みを背負って生きていく不憫な子、修羅の子だと声を掛ける小夜。産婆のお寅(楠田薫)、小夜を励ますお菊(根岸明美)たち女囚仲間。
    雪の中を紫の番傘を差して歩く女(梶芽衣子)がいる。向こうから人力車とそれを護る男たちがやってくる。女は番傘から仕込み刀を抜く。餞両会元締めの柴山源三と知ってのことかと尋ね、殺すんじゃねえ、そいつに頼んだ奴の名前を吐かすんだと柴源(小松方正)。しかし、若い衆は次々に斬られていく。「柴源を狙うのは何故だ。」「怨み…」「誰の?」「女…てめえはいったい」「修羅雪…」息絶える柴源。荒海の見える岩場で、木刀を振る女。竹林で真剣を振るう女。
   雪が、乞食溜りにやってくる。乞食差配の松右衛門さまにお会いしたいと言う雪。掃き溜めに鶴。美しい雪に男たちは舌舐めずりをして、取り囲みはしゃいでいる。しかし、近寄ると番傘で殴られ、指一本触れることは出来ない。そこに、待てーと松右衛門(高木均)が現れ、この人はオレの大事な客人だ。金儲けのために、わしらを追い出そうとしていた柴源を叩き斬ってくれたのが、この修羅雪さんよと言った。松右衛門の家に案内され、柴源を斬った見返りが何か欲しいかと尋ねられ、紙を出した。そこには、塚本儀四郎、竹村伴蔵、北浜おこのの3名の名前が書いてある。鳥取県余見郡小一村、あなたと同郷の者たちです。明治6年3月に太政官令として施行された徴兵制に対して働き手を奪われると反対する農民たちに、270円を払えば徴兵免除を受けられると騙し、大金を集めて放逐したのだ。良くはしらねえが、その時放逐したのは4人だという話もありますぜ。正景徳市(地井武男)は既に死にました。全国に繋がりのある松右衛門さまにお願いするしかないと思っています。
    監獄の中で、今までの人生を語る小夜。徴兵免除で百姓から金を集めていて、逃げるきっかけを待っていた四人は、徴兵官が白装束を来ているという噂を利用して、ちょうど小学校に赴任してくるところだった。小夜の夫の鹿島剛(大門正明)と息子の司郎(内田慎一)を嬲り殺しにした上、小夜を三日間、代わる代わる凌辱した。そして、金を分配して逃走したのだが、正景徳市は小夜の身体に惚れ、小夜を連れて東京で料理屋を開く。そして、小夜は徳市を殺した。残りの三人を殺そうとしている間に、捕縛されたのだ。終身刑なので、二度と娑婆には出られないが、子供を産んで復讐させようと、あんたたちから色きちがいだと誹られながらも、僧侶、看守手当たり次第に関係を持ったのだ。ようやく、この娘に乗り移って復讐が出来るといって、事切れる小夜。その話を聞いた女囚たちは、涙を流し協力を誓った。
   その後出所した三日月のお寅は、雪を元旗本の僧侶道海和尚(西村晃)のもとへ連れて行った。道海の鬼のような修行に、幼い雪は耐えた。そして、美しく、しかし復讐の鬼として成長した雪は、母親の墓に手を合わせ、寺を出た。その日、母の20回忌だった。
   乞食差配松右衛門が、竹村伴蔵(仲谷昇)の居場所を探しあててきた。娘の小笛(中田喜子)が伴蔵に声を掛ける。「おとっつあん、竹夫人出来た分だけ納めてくるよ。」身体を悪くし、極貧の状態だが、酒浸りの伴蔵だ。小笛は海の断崖まで来ると、背負った荷を降ろし、次々に竹夫人を海に投げ始めた。そこに通りかかった雪が、「なぜ?」「いいの、どうせ売れないもん」そして、小笛は、雪に、自分が作った竹の簪をくれた。「お名前は?」「竹村小笛・・・。」
    小笛は、そのままこの辺りを仕切る濱勝組の元締め勝目大八(長谷川弘)のもとへ尋ねる。「いつものように、3円だ。今夜の相手は県のお役人だ。大事な客だからよろしく頼むぜ。」その頃、濱勝組の代貸マサ(松崎真)とその乾分のカネ(阿藤快→海)が伴蔵の元を訪ねる。お前の借金は、全部で80円、期限はとっくに切れていてね・・・。「小笛はどうした?」「竹夫人を卸しにいっている。」「あんなものが売れると思っているのか・・。そんなことで、お前の借金を返せやしない。勝目の親分に頼んで身体を売っているのさ。」「小笛に限ってそんな。」「酒浸りで、身体も壊した親の因果とはいえ、可哀そうなのは小笛だな、はっはっは」「うぅ、ゲホゲホ・・・」
    濱勝組の賭場、雪の姿がある。雪は、松右衛門の紹介で、ここの客人として草鞋を脱いでいた。そこに伴蔵がやってくる。金を借りて打ち始めるが、まったくついていない。雪が親になった。苦し紛れに伴蔵はイカサマをしようとして、代貸のマサに見つかる。マサとカネにいたぶられている。そこに、雪がやってきて、「イカサマを見抜けなかったのは私の責任です。この件私に預けてもらえませんか。」「客人、出過ぎた真似をするんじゃねえ。」マサの怒りが雪に向かったところで、勝目が現れ、「まあいいだろう、客人さんに預けな。」伴蔵の命は助かる。雪が伴蔵の後を追って、濱勝組を出ようとすると、小笛に会う。女郎の格好をしている小笛に、何かあったら、上野七軒町の田尻のお菊を雪の紹介だと言って訪ねろと言う。
   近くの飲み屋で酒を呷る伴蔵の前に、雪が現れる。あんた、何で俺を助けた・・・。まあゆっくり話すと言い伴蔵を連れ出す雪。塚本儀四郎、北浜おこの、正景徳市…。明治?年、あんたたちが?村で小学校教員の一家を忘れたか、その後3日3晩なぶりものにした妻の顔の面影が私に残っていないか?お前たちに復讐をするためにやってきたのだ。儀四郎とおこのの居場所を知らないか?
あれは塚本儀四郎に唆されてやったのだ許してくれ、すまなかった、と手を合わせ、土下座をする儀四郎。許さぬと一言言って、雪は紫紺の番傘の仕込み刀で、伴蔵を斬った。絶命した伴蔵を断崖まで引き摺ってゆき、海に投げ捨てた。
雪の目が怒りに震えている。目の前には菊の花が手向けられた塚本儀四郎の墓がある。儀四郎は既に死んでいたのだ。雪は一閃、儀四郎の仏花と墓石に刀を抜いた。刀は折れ、墓石に傷が出来た。そして帰って行く雪。そこに、平民新報と言う新聞社の記者である足尾竜嶺(黒沢年男)が通りかかり、墓石の傷に激しい怒りを見た。竜嶺は雪の後を尾行した。雪はすぐ気がつき、待ち伏せし、竜嶺の身分を尋ねた。塚本儀四郎の墓への刀傷、何か深い訳があると新聞記者としての勘が、騒いでいる。話して貰えまいか。周りをうろうろされるのは嫌いだ、次には命の保証はないと雪。しかし新聞屋根性に火を点けるだけだった。
雪は、田尻のお菊のもとに戻る。お菊は、掏摸の女親分なのだ。お菊の前には、苦虫を噛んだような松右衛門の顔がある。わしらだって、必死に動いているんだ。まさか、儀四郎は阿片の密輸をやっていて、ヤバくなったのでアメリカに逃げようとして乗った船が難破して、1年前に海の藻屑に消えていようとは…。雪 だけでなく、お菊も、松右衛門も悔しい思いは一緒だった。一人、復讐のためは父を殺したのが、雪であることを知ってしまった小笛以外は。
暫く後、平民新報に、一家を皆殺しにされた女囚が、復讐するために、獄中で、女の子を産み、亡くなり、成長した娘は、復讐の鬼となったとの修羅雪姫と言う記事が掲載され世間で話題を集めた。 当事者しか知らないことが書かれた、その記事にショックを受ける雪。北浜おこの、の行方は要として知れない。雪は母の墓参りに、和尚のもとを訪ねる。
竜嶺に、修羅雪姫の話を書かせたのは和尚だった。驚く雪に、和尚は穴に潜ったおこのを炙り出すには、この方法しかないと言う。半信半疑で、お菊の下に帰った雪は、竜嶺が官警に捕らえられ、何故か警察署ではなく、花月と言う料亭に連れて行かれたと聞く。果たして、この話を誰から聞いたと警吏たちに締め上げられる竜嶺の近くには、おこのの姿があった。春は警吏たちを斬り、竜嶺を救い出すことに成功する。しかし、おこのは、首を吊っていた。またしても、自らの手で、復讐出来なかったことの悔しさに、おこのの胴体を真っ二つに切断する雪。

 

2009年8月3日月曜日

泡盛飲みすぎました(苦笑)

  午前中は赤坂のメンタルクリニック。新社屋を訪ね、元同僚と昼食。ついでに現社屋に寄り、先日ご馳走になったM先輩に礼など言いつつ、六本木まで歩いて、

  シネマート六本木で、竹中直人監督『山形スクリーム(446)』
  鬼塚トンネルを抜けて、観光バスがやってくる。中に乗っているのは、都立紅高校の歴史研究会だ。顧問の勝海子先生(マイコ)、母親が亡くなった途端新しい外人女性ケイシー(クリスタル・ケイ)再婚した父親の今朝明(岩松了)に反発する岡垣内美香代(成海璃子)、ティーン誌のモデルで自分大好きな鏑木宙子(桐谷美玲)、メカ好きで携帯を改造し続けるメガネっ子敏酒圭(沙綾)、ゴスパンク好きの不良少女波来前胸恵(波瑠)は、山形の落人の里、御釈ヶ部村に向かっている。
   御釈ヶ部村には、800年前、檀の浦の戦いで敗れた平家の武将葛貫忠経(沢村一樹)が、愛する建礼門院の官女の光笛(成海璃子)と出羽の国に落ち延びて来た。家来の伊東丹波成定(石橋蓮司)、藤本権田影頼(斉木しげる)、夏彦(デビット伊東)らは、海に沈み、一人残った山崎田内佐衛門(竹中直人)に守られ、この村に隠されている草薙の剣で、再起を果たそうとしたが、山崎の裏切りにより、村人たちの落武者狩りに捕えられる。欲深な村人たちは、忠経を井戸に突き落とし、山崎を殺し、光笛を攫って行った。井戸の底で、生きたまま埋められながら、この村人たちを祟ってやると誓った。その後、光笛は出家し、小鴨庵でその生涯を閉じたという。忠経のたたりを怖れた村人は、祠を建て、霊を慰めようとした。そして、今では忠経の祠の地蔵は、縁結びに効果があるらしい。どうやら、縁遠い勝先生は、その縁結びと言う言葉に惹かれ、この村を合宿先にしたようだ・・・。
   
   こりゃ楽しかっただろうな。竹中直人に作りたいものを作らせたという意味で、何だかとてもお金のかかった自主制作映画の感がある。しかし、製作委員会に参加した各社は、何をしたかったんだろうな。テレビスポットまで打って、製作費とP&A回収出来るんだろうか。まあ、他人の財布心配してもしょうがないし、お金出した人たちも各社のサラリーマンなんだから。

   その後、四谷で一件打ち合せに参加。
  
   最後は、元の会社の後輩と、高円寺の沖縄料理きよ香へ。飲んだ。飲んだ。酔った。酔った。

2009年8月2日日曜日

最も好きな邦画「砂の女」

  ラピュタ阿佐ヶ谷で、武満徹の映画音楽
   65年松竹大船篠田正浩監督『異聞猿飛佐助(444)』
  16世紀末、天下分け目の決戦、関ヶ原冬の陣は、東軍が勝ち、覇権は徳川の手に渡った。しかし、、14年後の慶長19年、西の大坂城に豊臣秀頼は健在であり、東西の情報戦は激化し、間諜にあたる乱破、隠密、忍者たちが暗躍した。
  信濃路を行く猿飛佐助(高橋幸治)の姿がある。関ヶ原で共に西軍に属した浪人稲村光秋(戸浦六宏)がしきりと後を付いてくる。

   篠田正浩がこんなお金の掛かった時代劇を作っていたなんてというところだが・・・。感想は改めて
  

   64年勅使河原プロダクション勅使河原宏監督『砂の女(445)』
   教師である仁木順平(岡田英治)は、3日間の休暇を取り、昆虫採集をしに、とある砂丘にやってきていた。村人(三井弘次)が声を掛ける。「調査ですか?」「いえ昆虫採集です」「本当に県庁の人でないのですか?」「僕は、学校の教師をしています」「先生をしているんですか・・・」。砂丘の昆虫たちと触れ合う気持ちの良さで、昼寝をする。家庭での妻との関係がうまくいっておらず、趣味の昆虫採集が日常からの逃避であるようなやりとりが挿入される。村人が声を掛け、既に上りのバスはないという。街まで歩くと答えるが、村人の勧めで、泊めて貰うことにする。
   村人は、砂丘の谷底にある一軒に仁木を案内すると、「ばあさん、さっき話したお客さんだ」と声を掛け、縄梯子を降りるように言った。ばあさんと言ったが、下の家には女が一人しかいない。更に、助っ人の分の道具だと上から声が掛かる。家の中は砂だらけだ。汗をかいたので風呂に入りたいというが、明後日まで待ってもらえないかと答える女。水は貴重らしい。電気も通っていなので、ランプが一つあるきりだ。男は女と、木喰い虫の話をする。男は白蟻かと思ったが、どうも違うらしい。更に砂が木材を腐らせるという女の話は、砂とは乾燥したものだという男の常識とは噛み合わない。
   夕食は、焼き魚(鯛)と浅蜊の味噌汁。ご飯を何杯もお替りする男。男の食事が終わると、女は砂掻きをするという。夜の方が、砂に湿り気があるので、いいのだと言う。女が搔いた砂を上にいる村人たちが引き上げる。この村は郷土への愛が強いのだと言う。女がこの砂を搔かないと、隣の家が砂で潰れてしまうのだと言う。女の夫と娘は砂が崩れて、死んだと言う。一晩のつもりでいる男はどうも納得はできないものの、手伝おうかと言うが、今日はいいと言われる。水を飲もうと思って探すと、大きな甕に入った汚いものしかない。その水で、嗽をし、顔を洗って眠る男。
   翌日、男が起きると、既に11時近い。女は裸で寝ている。声を掛けようか迷いながら身支度をして、よく眠っている女に気を遣い金を置き、帰ろうとすると、昨日の縄梯子がない。これではこの擂鉢の底からは出ることは叶わない。女を起こし、村人に話してくれと詰め寄ると、言いにくそうに、女一人では砂掻きは無理なんですと言う。騙されたと知った男は、砂の壁を這い上がろうと試みるが、不可能だ。


  何年振りだろうか。やはりいいなあ。乾いてサラサラしているだけでなく、湿って重たい砂の質感と匂い、時に流れ、時に淀む空気、やはりスクリーンでないと感じることはできない。安部公房の原作含め、誰もがこの根底に流れるものを、語りたくなってしまうが、トワイライトゾーンやウルトラQのようなSFエンタテインメントとして、そのまま楽しんでいいんじゃないかと、改めて思う。勅使河原宏作品の中で、最も分かりやすいものだという恥ずかしい自説、ちょっと不安だったが、改めて思う。自分も初めて見た時はガキだったが、少年少女に見て欲しい。昨日見た「蟹工船」の百倍ヤバイと思う。