2009年8月4日火曜日

二日酔いで蒸し暑いのは厳しいなあ。

   シネマート新宿で、鈴木卓爾監督『私は猫ストーカー(447)』
    谷根千(谷中、根津、千駄木あたりのことですね)の古本屋猫額堂でアルバイトをしているハル(星野真里)の本職は、イラストレーターだ。しかし、日がな野良猫の行動を着けて歩く猫ストーカーである。猫額堂には、チビトムと言う猫が、一等席の赤い布団に寝ている。本を静かに読んでいる主人(徳井優)と、主人が失恋してやけ酒を飲みに来ていたスナックのホステスだったが、愚痴を聞いているうちに結婚してしまった奥さん(坂井真紀)。またもう一人のバイト真由子(江口のり子)と、猫の額のような店でやっていけるのだろうかと他人ながら心配してしまう(笑)。
   ハルが猫の姿を探して街を歩くと、猫仙人や、寺の住職や、店の常連だが、何故か街で出くわす度に、いつも店にない本を探してくれと頼むストーカーチックな若者鈴木…。ハルは、気ままに暮らす猫たちの後を着けて、その行動経路をスケッチブックに纏めるのが日課だ。かって付き合っていたプロミュージジャンになることを夢見ていた男は田舎に帰り、リンゴ農家になっている。送ってきたリンゴの箱の中に、結婚しますという手紙が入っている。

   神保町シアターで、没後四十年 成瀬巳喜男の世界
   51年東宝成瀬巳喜男監督『舞姫(448)』
   バレエの公演。客席に矢木波子(高峰三枝子)と竹原(二本柳寛)の姿がある。表情の暗い波子。耐えきれず外に出る波子。竹原も後に続く。「どうしました?」「どうも、矢木や高男の視線を感じてしまうんです。」「矢木さんは京都に出張だし、高男くんはバレエが嫌いだし、出会うことはないんじゃないですか。そもそも見られて困るようなことは僕たちはしていませんよ」「高男は父親を尊敬しているので、時々、矢木に頼まれて、私を見張っているんです。」「まさかそんな、本当の神経衰弱になってしまいますよ」

   35年PCL成瀬巳喜男監督『妻よ薔薇のやうに(449)』
   退社時間のようだ。誰もいなくなったオフィスを、詰め襟姿の小僧が、口笛を吹きながら、片づけている。あれ山本さんまだ帰らないんですか?と山本君子(千葉早智子)の手元を覗くと、便箋にネギとか食材が書かれている。あれ?ラブレターでも書いているのかと思ったら…。山本さんは恋人いませんね。寂しいでしょと言われ、おあいにく様一人ならいるわと答え会社を出る君子。
   会社の前で、恋人の精二(大川平八郎)が待っていた。待ってくれていたの?と君子が尋ねると、帰ろうとしていたところだと言う。その割には写真見に行かないかと誘う。今日は渋谷の伯父さんに相談があると言われて行かなければならないので、明日、その写真代でお母さんへのお土産を買ってウチに来てくれば、腕によりを振るってご馳走するわと言う。
  君子は帰宅し、料理を作る。母の悦子(伊藤智子)は、優雅に短歌を詠んでいる。君子が話掛けると、今インスピレーションが湧いたので、静かにしていてと言う。食事をしながら、悦子は、あんたが朝晩おさんどんをするのも大変だろうから女中を雇おうと言う。二人しかいないからいいわよと君子。

  銀座シネパトスで、「日本映画レトロスペクティブ-PART2-」 ~戦争と人間 良心の重さ
 52年北星映画山本薩夫監督『真空地帯(450)』

  52年近代映画協会新藤兼人監督『原爆の子(451)』
  小学校の校庭で生徒たちと体操をする女教師の石川孝子(乙羽信子)。「はい、これで一学期はおしまいです。夏休みいっぱい遊んで、元気に9月に会いましょう!!」孝子が職員室に戻ると、男性教師の?が、「石川先生、夏休み厳島にキャンプに行きませんか」と声を掛けてきたが、「私は広島に行くので」と断るたか子。「石川先生は広島のご出身でしたか。」「僕なんか、この島で生まれ育ったので羨ましいです。」「こんな素敵な島で生まれ育ったなんて羨ましいですわ」と孝子。
   自転車に乗って帰宅する孝子。叔父夫婦木島浩造(寺島雄作)とおいね(英百合子)のもとで暮らしていた。叔母が、布団の打ち直しをしているので、手伝おうとすると、明日の支度をした方がいいんじゃないのと叔母。このまま明日の朝の船で行くので準備なんてありませんと孝子。何年振りかしらと尋ねられ、あれから一度帰ったきりですから、4年振りです。昔のことを思い出さなくなったのは、おじさんとおばさんのお陰です。あなたの田舎はここだと思って貰っていいのよとおばさん。どこに泊まるのと尋ねられ、幼稚園で一緒に働いていた森川さんの家に泊めてもらいますと孝子。
   船に乗っている孝子。牛を連れた男(東野栄治郎)と船長(殿山泰司)が、先生も親許に甘えに帰るんだなとからかう。しかし、孝子の一家は、原爆でみな亡くなっている。
    「1945年8月6日、広島の街な上空に、原子爆弾が投下されました。美しい広島の川は、今日もあの日と同じように美しく流れています。」自宅の後に立つ孝子。花を手向けて、手を合わせる。その日のことを思い出す孝子。優しい母せつ(細川ちか子)とひょうきんな父親利明(清水将夫)と妹の春子の生活は楽しかった。その時間、洗濯をしている母せつ、役場で笑っている父利明、校庭で整列している春子、幼稚園でオルガンを弾き、園児と歌を歌う孝子。8:15にその地獄が訪れた。
   原爆ドームを見つめている孝子。相生橋に、顔のケロイド痕がある乞食の姿がある。近づいて、「岩さん、岩吉さんでしょ」と声を掛ける。かって家の爺やだった岩吉(滝沢修)だった。

    COOL&WILD妖艶美 反逆のヒロイン 梶芽衣子
    74年東京映画藤田敏八監督『修羅雪姫(452)』
    明治8年神奈川県八王子村東京監獄八王子?。雪の降る夜、女囚たちの中で難産に苦しむ鹿島小夜(赤座美代子)の姿がある。産声を上げた赤子に、雪と名付け、怨みを背負って生きていく不憫な子、修羅の子だと声を掛ける小夜。産婆のお寅(楠田薫)、小夜を励ますお菊(根岸明美)たち女囚仲間。
    雪の中を紫の番傘を差して歩く女(梶芽衣子)がいる。向こうから人力車とそれを護る男たちがやってくる。女は番傘から仕込み刀を抜く。餞両会元締めの柴山源三と知ってのことかと尋ね、殺すんじゃねえ、そいつに頼んだ奴の名前を吐かすんだと柴源(小松方正)。しかし、若い衆は次々に斬られていく。「柴源を狙うのは何故だ。」「怨み…」「誰の?」「女…てめえはいったい」「修羅雪…」息絶える柴源。荒海の見える岩場で、木刀を振る女。竹林で真剣を振るう女。
   雪が、乞食溜りにやってくる。乞食差配の松右衛門さまにお会いしたいと言う雪。掃き溜めに鶴。美しい雪に男たちは舌舐めずりをして、取り囲みはしゃいでいる。しかし、近寄ると番傘で殴られ、指一本触れることは出来ない。そこに、待てーと松右衛門(高木均)が現れ、この人はオレの大事な客人だ。金儲けのために、わしらを追い出そうとしていた柴源を叩き斬ってくれたのが、この修羅雪さんよと言った。松右衛門の家に案内され、柴源を斬った見返りが何か欲しいかと尋ねられ、紙を出した。そこには、塚本儀四郎、竹村伴蔵、北浜おこのの3名の名前が書いてある。鳥取県余見郡小一村、あなたと同郷の者たちです。明治6年3月に太政官令として施行された徴兵制に対して働き手を奪われると反対する農民たちに、270円を払えば徴兵免除を受けられると騙し、大金を集めて放逐したのだ。良くはしらねえが、その時放逐したのは4人だという話もありますぜ。正景徳市(地井武男)は既に死にました。全国に繋がりのある松右衛門さまにお願いするしかないと思っています。
    監獄の中で、今までの人生を語る小夜。徴兵免除で百姓から金を集めていて、逃げるきっかけを待っていた四人は、徴兵官が白装束を来ているという噂を利用して、ちょうど小学校に赴任してくるところだった。小夜の夫の鹿島剛(大門正明)と息子の司郎(内田慎一)を嬲り殺しにした上、小夜を三日間、代わる代わる凌辱した。そして、金を分配して逃走したのだが、正景徳市は小夜の身体に惚れ、小夜を連れて東京で料理屋を開く。そして、小夜は徳市を殺した。残りの三人を殺そうとしている間に、捕縛されたのだ。終身刑なので、二度と娑婆には出られないが、子供を産んで復讐させようと、あんたたちから色きちがいだと誹られながらも、僧侶、看守手当たり次第に関係を持ったのだ。ようやく、この娘に乗り移って復讐が出来るといって、事切れる小夜。その話を聞いた女囚たちは、涙を流し協力を誓った。
   その後出所した三日月のお寅は、雪を元旗本の僧侶道海和尚(西村晃)のもとへ連れて行った。道海の鬼のような修行に、幼い雪は耐えた。そして、美しく、しかし復讐の鬼として成長した雪は、母親の墓に手を合わせ、寺を出た。その日、母の20回忌だった。
   乞食差配松右衛門が、竹村伴蔵(仲谷昇)の居場所を探しあててきた。娘の小笛(中田喜子)が伴蔵に声を掛ける。「おとっつあん、竹夫人出来た分だけ納めてくるよ。」身体を悪くし、極貧の状態だが、酒浸りの伴蔵だ。小笛は海の断崖まで来ると、背負った荷を降ろし、次々に竹夫人を海に投げ始めた。そこに通りかかった雪が、「なぜ?」「いいの、どうせ売れないもん」そして、小笛は、雪に、自分が作った竹の簪をくれた。「お名前は?」「竹村小笛・・・。」
    小笛は、そのままこの辺りを仕切る濱勝組の元締め勝目大八(長谷川弘)のもとへ尋ねる。「いつものように、3円だ。今夜の相手は県のお役人だ。大事な客だからよろしく頼むぜ。」その頃、濱勝組の代貸マサ(松崎真)とその乾分のカネ(阿藤快→海)が伴蔵の元を訪ねる。お前の借金は、全部で80円、期限はとっくに切れていてね・・・。「小笛はどうした?」「竹夫人を卸しにいっている。」「あんなものが売れると思っているのか・・。そんなことで、お前の借金を返せやしない。勝目の親分に頼んで身体を売っているのさ。」「小笛に限ってそんな。」「酒浸りで、身体も壊した親の因果とはいえ、可哀そうなのは小笛だな、はっはっは」「うぅ、ゲホゲホ・・・」
    濱勝組の賭場、雪の姿がある。雪は、松右衛門の紹介で、ここの客人として草鞋を脱いでいた。そこに伴蔵がやってくる。金を借りて打ち始めるが、まったくついていない。雪が親になった。苦し紛れに伴蔵はイカサマをしようとして、代貸のマサに見つかる。マサとカネにいたぶられている。そこに、雪がやってきて、「イカサマを見抜けなかったのは私の責任です。この件私に預けてもらえませんか。」「客人、出過ぎた真似をするんじゃねえ。」マサの怒りが雪に向かったところで、勝目が現れ、「まあいいだろう、客人さんに預けな。」伴蔵の命は助かる。雪が伴蔵の後を追って、濱勝組を出ようとすると、小笛に会う。女郎の格好をしている小笛に、何かあったら、上野七軒町の田尻のお菊を雪の紹介だと言って訪ねろと言う。
   近くの飲み屋で酒を呷る伴蔵の前に、雪が現れる。あんた、何で俺を助けた・・・。まあゆっくり話すと言い伴蔵を連れ出す雪。塚本儀四郎、北浜おこの、正景徳市…。明治?年、あんたたちが?村で小学校教員の一家を忘れたか、その後3日3晩なぶりものにした妻の顔の面影が私に残っていないか?お前たちに復讐をするためにやってきたのだ。儀四郎とおこのの居場所を知らないか?
あれは塚本儀四郎に唆されてやったのだ許してくれ、すまなかった、と手を合わせ、土下座をする儀四郎。許さぬと一言言って、雪は紫紺の番傘の仕込み刀で、伴蔵を斬った。絶命した伴蔵を断崖まで引き摺ってゆき、海に投げ捨てた。
雪の目が怒りに震えている。目の前には菊の花が手向けられた塚本儀四郎の墓がある。儀四郎は既に死んでいたのだ。雪は一閃、儀四郎の仏花と墓石に刀を抜いた。刀は折れ、墓石に傷が出来た。そして帰って行く雪。そこに、平民新報と言う新聞社の記者である足尾竜嶺(黒沢年男)が通りかかり、墓石の傷に激しい怒りを見た。竜嶺は雪の後を尾行した。雪はすぐ気がつき、待ち伏せし、竜嶺の身分を尋ねた。塚本儀四郎の墓への刀傷、何か深い訳があると新聞記者としての勘が、騒いでいる。話して貰えまいか。周りをうろうろされるのは嫌いだ、次には命の保証はないと雪。しかし新聞屋根性に火を点けるだけだった。
雪は、田尻のお菊のもとに戻る。お菊は、掏摸の女親分なのだ。お菊の前には、苦虫を噛んだような松右衛門の顔がある。わしらだって、必死に動いているんだ。まさか、儀四郎は阿片の密輸をやっていて、ヤバくなったのでアメリカに逃げようとして乗った船が難破して、1年前に海の藻屑に消えていようとは…。雪 だけでなく、お菊も、松右衛門も悔しい思いは一緒だった。一人、復讐のためは父を殺したのが、雪であることを知ってしまった小笛以外は。
暫く後、平民新報に、一家を皆殺しにされた女囚が、復讐するために、獄中で、女の子を産み、亡くなり、成長した娘は、復讐の鬼となったとの修羅雪姫と言う記事が掲載され世間で話題を集めた。 当事者しか知らないことが書かれた、その記事にショックを受ける雪。北浜おこの、の行方は要として知れない。雪は母の墓参りに、和尚のもとを訪ねる。
竜嶺に、修羅雪姫の話を書かせたのは和尚だった。驚く雪に、和尚は穴に潜ったおこのを炙り出すには、この方法しかないと言う。半信半疑で、お菊の下に帰った雪は、竜嶺が官警に捕らえられ、何故か警察署ではなく、花月と言う料亭に連れて行かれたと聞く。果たして、この話を誰から聞いたと警吏たちに締め上げられる竜嶺の近くには、おこのの姿があった。春は警吏たちを斬り、竜嶺を救い出すことに成功する。しかし、おこのは、首を吊っていた。またしても、自らの手で、復讐出来なかったことの悔しさに、おこのの胴体を真っ二つに切断する雪。

 

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