2008年12月20日土曜日

大掃除

朝から大掃除の続き、奥からいろいろな物を出したり捨てたりしまったり。片付いたと言えるかどうか(失笑)。それから明日の忘年会の食材の買い出し。夕方ふと渋谷に行かなければいけないことを思い出し、何だか埃っぽい感じで、さらっと顔をだし、年末の挨拶。何だか、久しぶりに体を使った1日だ。普段楽しているだけに、腰やら背中やらに来ている感じなので、地元のブチ・スーパー銭湯で埃と汗を流す。明日は、何人来ることやら。結局博華で餃子とビール。

2008年12月19日金曜日

溝口健二・山田五十鈴2作品。

  早朝から大掃除、やりはじめると止まらずたちまち昼に。カーテンを洗濯し、窓ガラスを磨き、たまった雑誌の整理・・・・。
  神保町シアター、女優・山田五十鈴
  36年第一映画溝口健二監督『祗園姉妹(372)』。祗園の芸妓おもちゃ(山田五十鈴)は、姉の梅若(梅村蓉子)と2人暮らし。老舗の木綿問屋が潰れて旦那の古沢(志賀廼家弁慶)が姉を頼って転がり込む。かっての恩や義理、世間の目などに縛られた姉の考え方におもちゃは歯がゆい気持ちを持っている。お人好しの姉は、芸は立派だが、旦那に家や着物をねだる訳でもないので、総振舞でも新しい着物も買えないのだ。おもちゃは、置き屋の女将に姉の総振舞への出演を頼み、呉服屋の番頭木村(深見泰三)が自分に気があることをいいことに極上の反物を巻き上げる。総振舞の日、骨董屋の聚楽堂の主人(大倉文男)が古沢に会いたいと言うので梅若は家に連れてくるのだが、聚楽堂は、とても酔っており、古沢に絡む。聚楽堂を送り届ける時に、おもちゃは、梅若が聚楽堂に気があるが、古沢が居ついて困っていると言って手切れ金を迫る。帰宅して、金を渡すと出ていく古沢。聚楽堂への工作もばれ、梅若は家を出て、古沢が居候している元番頭定吉(林家染之助)の元へ行く。
   木村がおもちゃに用立てた反物のことが主人工藤三五郎(進藤栄太郎)にばれた。おもちゃに文句を言いにきた工藤だが、逆におもちゃの虜に。工藤がおもちゃの家に いるときに、店を首になった木村が現れ、2人に毒づいて出ていく。
  ある日、おもちゃは騙されて車に乗ると、聚楽堂と木村から今までの借りを返すのだと脅される。車から飛び降りて、重傷を負うおもちゃ。梅若は置屋の女将から連絡をもらって駆けつける。しかし、一度、おもちゃの身の回りを用意しに、家に帰ると、古沢も定吉もいない。定吉の妻から、古沢が妻の郷里で、工場の支配人の職が決まったので、すぐに発ったと言われる。書き置きもなく、「自分のようなしょうもない男は忘れて、いい旦那をさがせ」という伝言しかなかったと聞いて、落ち込む梅若。病室で、芸妓という職業の不幸を嘆くおもちゃ。
   36年第一映画溝口健二監督『浪花悲歌(373)』。薬種問屋の電話交換手をしている村井アヤ子(山田五十鈴)は、父親準造(竹川誠一)が会社の金を使い込んだ300円という大金で悩んでいた。返さなければ警察に訴えると会社の人間は連夜村井家を訪れるが、準造は、こそこそ逃げ回っており、家の中だけ勇ましい。アヤ子が好きな西村(原健作)は同じ会社の会計係。相談しても頼りにならない。結局、以前から妾にならないのかと口説いていた薬種問屋の社長麻居惣之助(志賀廼家弁慶)の世話になって、300円を出して貰うことにする。会社を辞め家を出て、惣之助が用意してくれた高級アパートに住む。惣之助は、従業員から婿養子になったので、妻のすみ子(梅村蓉子)が、家庭を顧みず遊びあるいているので寂しい思いをしていたのだ。
  人形浄瑠璃を二人で見ているところをすみ子に見つかる。医師の横尾(田村邦男)の機転で、アヤ子が、惣之助の友人の株屋藤野喜蔵(進藤栄太郎)の愛人だと装って、すみ子にごまかした。しかし、惣之助が高熱を出して倒れたと往診を頼まれた時に、横尾が本宅に出向いたことで、結局ばれてしまった。偶然、西村に再会する。アヤ子を、ずっと探していたという。西村には、妾をしていたとは言えずに、悩むアヤ子。 
   その頃、アヤ子の兄で東京の大学にいっている弘(浅香新八郎)が、父からの仕送りがなくなって学費が払えず、就職は決まっているのに、卒業できなくなると言って、帰省している。偶然妹の幸子(大倉千代子)に駅で、その話を聞く。幸子からは家に帰って200円なんとかしてくれと言われ、冗談じゃないと答えるアヤ子。しかし、思い直して、以前から口説いていた株屋の藤野に会い、200円を巻き上げた上で、袖にして藤野を激怒させる。200円の小切手を父親に送る。
   アパートに西村がやってきた。好きな人と結婚できることで有頂天になるアヤ子。金を返せと言ってきた藤野も追い返す。しばらく後に刑事がやってきて、アヤ子と西村は逮捕される。西村は、アヤ子のしたことに驚き、自分は巻き添えになっただけだという。アヤ子は、初犯で未成年ということで、許された。父に連れられ、実家に戻るアヤ子。妹の幸子も、兄の弘も、一口もきかない。こんなことをしたアヤ子を一方的に責め、何で家に連れ帰ったと父親にまで文句を言う。家を出るアヤ子。途中医師の横尾に会う。自分のような不良少女はどうしたら治るか横尾に尋ねるが、分からないと答える横尾。町をさすらうアヤ子。
   2本とも、目の前の不幸を、自分でなんとか解決しようと、男を手玉にとって成功したかにみえるが、結局破滅する娘を、山田五十鈴が演じている。現代では、誰も彼女を責めないと思うが、70年前の倫理感では自業自得ということなのか。若くきれいな女をものにしようとしながら、金にせこい男たちこそ自業自得だと思うのだが、なんだか切ないなあ。アヤ子に至っては、父親と兄に大金を渡す為に、自ら身を売ったようなものなのに。父ちゃんも自分が業務上横領で捕まらなかったのは娘のお陰で、長男の200円まで工面したのに、その事情を一切、長男や次女には教えないんだもんな。
    修理に出していた腕時計を受け取りに東急ハンズに、博華で餃子とビールで身体を暖めて、帰宅後、大掃除の続き、堀起こせば、堀起こすだけ、やろうという場所を思いつく。どこかで線引きしないと、キリがない。

2008年12月18日木曜日

大掃除を始めると止まらないので、書きあがりません。

    阿佐ヶ谷ラピュタで昭和の銀幕に輝くヒロイン第44弾 乙羽信子
    57年東京映画杉江敏男監督『肌色の月(369)』。
女優の宇野久美子(乙羽信子)は、同じ劇団の滝(仲代達也)への失恋から自殺を決意した。和歌山に旅に出ると皆に言って夜行に乗る。車中で助監督の楠田(酒井左千夫)らに会う。豊橋で下車するが、洗面所で着替え駅のアナウンスで偽装工作をした。豊橋で大池孝平(千田是也)の車に乗せてもらい別荘に。ここの湖は吸い込み口があり、水死体は上がらないと聞き、ここで投身自殺をすることにする。
   夜になり、缶詰めの食事を済ませると、大池は暖炉の前の揺り椅子で自分は寝るので、二階の寝室で休めという。夜遅くなっても、大池は起きているようだ。久美子は困っているうちに眠ってしまう、早朝目が覚めると大池はいない。湖に出てみると、昨日見つけておいたボートが見つからない。探していると別荘地の管理人の石倉(千秋実)が声を掛けてくる。大池は銀行から多額の浮き貸しで、警察から追われているが、東京の実家に投身自殺をする遺書が届いて大騒ぎになっていて、探していると言う。
   久美子は、足を滑らしてずぶ濡れになる。暖炉で服を乾かしていると、警察がやって来た。皆久美子が大池と入水心中して、一人助かったと思っている。大原の後妻の喜代(淡路景子)と息子の隆(石浜朗)もやって来るが、久美子を大池の愛人だと疑っている。警察は、大池の浮き貸しで作った隠し財産の行方を、追っていて久美子は共犯者扱いだ。ここに来た理由を言えば容疑は晴れるかもしれないが、自殺する気持ちは変わっていない。
   警察は湖で水死体を探すが見つからず、翌日も潜水夫を読んで探索することになった。管理人の石倉にバンガローへ泊まらせてもらうが、刑事が張り込んでいる。翌朝石倉が迎えに来て、隆がアクアラングを使って潜るので立ち会えと言う。大池の上着が見つかる。急にボートが転覆し、泳げない久美子は溺れる。インターンの隆に依って蘇生した。警察は後追い心中をしようとしたんだろうと決め付ける。
   大池の別荘の寝室で寝ている久美子。大原の妻子と警察は引き上げ、一人残される久美子。息子は気をつけてと書き置きを残す。書き置きは風で飛ぶが、久美子が目覚めた時には瓶入りのジュースが上に載せられていた。目覚めた時は夜中だったが、1階で物音がする。そこでずぶ濡れの大池が揺り椅子に座っているのに気がつく。かなり弱っているようだ大池は心臓に持病があるのだ。水を渡すと警察を呼んでくれというが、日の出まで後2時間くらいだと言うと大池は話始める。実は管理人の石倉は浮き貸しの共犯で、偽装自殺しようと計画し、工作したが、石倉の裏切りに遭い、穴の空いたボートに乗せられ危うく死ぬところを泳いで来たのだと。久美子は枕元にあったジュースを半分大池に渡し自分も飲むと、寝てしまう。朝起きると、大池は死んでいる。刑事たちがやってきた。久美子は逮捕された。既に刑事たちは、豊橋での偽装と身元まで全て知っていた。大池から聞いた話を伝えても信用されない。ジュースには睡眠薬が入っていて、久美子に殺人の嫌疑までかかる。何日も取り調べが続き衰弱していく久美子。
   自宅で大池の葬儀が行われているが、弔問客はすぐ帰り。妻子と石倉の3人だ。隆はジュースの中の睡眠薬に関する証言で警察に喚ばれる。誰が入れたか分からない。大池家の愛犬がいなくなった。ある時、隆は近くの犬が庭を掘っていることに気が付く。そこには、殺された愛犬が埋められている。後妻と石倉が外出から戻ってくる。サンドイッチを買ってきたので食べろという。隆がしばらく病院に泊まり込みだというと、病院で食べろと渡す後妻。翌朝、大池家の寝室で、後妻と石倉が寝ている。庭で犬が吠えている。二人で降りてみると犬を埋めた場所を掘ろうとしているではないか。慌てて、別の場所に埋め直そうとしているときに、刑事たちがやってきた。埋められた犬の死体の薬物と、サンドイッチに入れられた薬物が一致したのだ。犬で致死量を実験したのだ。
   病院の昼休みに、隆がバレーボールをしていると久美子がやってきた。女優をやめて、しばらく和歌山でのんびりすると言いに、あいさつにきたのだ。
  久生十蘭の推理小説が原作、脚本進藤兼人が書いた方がよかったんじゃないのか(笑)。ちょっと、テンポがもたつく感あり。
   山下耕作ノ世界。68年東映京都『博奕打ち 総長賭博(370)』。
昭和9年、天龍組総長荒川(香川良介)は、兄弟分の仙波多三郎(金子信雄)から、政界の黒幕川島と組んで、大陸から麻薬や武器を密輸入して儲ける話を持ち込まれるが、総長は侠客の本分とは違うと断る。しかし、その場で荒川は、脳卒中で倒れる。跡目の話となり、一門衆の組長たち兄弟会と組内六人衆で話合いが行われる。組内筆頭の中井信次郎(鶴田浩二)を押す声が多いが、中井は大阪から流れてきた自分ではなく、兄弟分で組の為に刑務所にいる松田鉄男(若山富三郎)が筋だと言う。しかし松田は後刑期が二年残っていると、仙波は5厘下がりのNO.3で石田組の石戸孝平(名和宏)を押す。次の話し合いで、中井が固辞する以上、荒川の娘婿である石戸が二代目だと、仙波は一門衆の意見をまとめ押し切った。
   松田の仮釈放が決まった。中井は、自分の妹で、今は松田の妻になっている弘江(藤純子)に伝えに行く。千鳥という小料理屋をやりながら、息子を育て苦労してきた弘江は涙する。松田組の若い衆で中井が預かっていた音吉(三上真一郎)と清(大木勝)の2人は松田組に帰る。中井の妻つや子(桜町弘子)は、2人に法被を返す。身内の祝いで千鳥盛り上がる中、中井は松田を呼び、跡目の話をする。松田はてっきり中井が継いだと思い祝うが、5厘下がりの石戸と聞いて怒る。頭を下げる中井。その場では中井を立て了解するが、一門会の松田の出所祝いの席で爆発する。石戸が中井を差し置いて上座にいることを渡世の義理に反していると言うのだ。仙波と石戸に、この跡目は認めないと吠えたことで会は流れた。
   、かって松田が潰した愚連隊の桜会の三下たちが、ビリヤードをしていると、天龍会の法被を着た連中が、松田が出所したのに親分の仇を討たないお前らは腰抜けだと煽り、松田は千鳥にいると教える。久しぶりに子供を背負って遊んで帰ってきた松田たちを三下たちが襲うが、敵ではない。彼らは天龍組の法被を着た連中にヤサを教えられたと白状した。松田は石戸の所に行く。石戸は松田が因縁をつけてきたと思い、一触即発の事態だ。中井の必死の仲立ちで松田の謹慎ということで何とか収まった。
    先代総長の引退と二代目の襲名披露に全国の親分衆を集めて盛大な花会を開くのだが、その準備と当日の仕切り一切を任され、各地の顔役への挨拶に旅に出なければならない中井。千鳥で弘江を前に、松田に妻子の為にくれぐれも自重してくれと頭を下げる。しかし結局松田は石戸とぶつかることに、大阪の西浜組の西尾宇一郎親分(曽我廼家明蝶 )に松田の身の振り方含め相談しているところに町田と石戸の抗争の知らせが。急ぎ帰京し、何とか納めようと奔走する。杯を返すとまで言った中井に、最後には松田は折れる。しかし、松田の無念に、子分の音吉は単身石戸を狙って失敗する。中井組に逃げ込んで来た音吉に、自分の努力を全て無駄にした怒りを抑え、再び中井は、石戸の元へ。
松田が中井組に現れ、音吉と二人で殴り込みに行こうとするのを皆で止める。特につや子は、金井の言いつけでもあり、身を張って松田たちを止めるが、音吉を慕う千鳥の小女久美(服部三千代)と音吉を見て逃がす。その責任をとって、自ら命を断つつや子。
   雨の中、つや子の墓前の中井と久江の前に、松田が現れる。今回の件で松田には破門状が回されていた。どうしても男の意地として、花会を潰し石戸の命を取るという松田に、盃を返す中井。
   花会の日がやってきた。石戸は、仙波と川島から、天龍組を解散し仙波が会長を務める右翼組織に加わって、今日の花代を全て、その組織が買い付けた大量の麻薬の買付け資金に渡せと言われる。岩戸を兄弟会が押したのは、仙波が金をばら撒いたからだとも言われるが、岩戸は、筋が違うと拒否する。伊豆湯河原に全国の名だたる親分衆が続々と集まる。中井が仕切る会場の厳重な警備に、岩戸が早朝地元の神社に参拝するところを松田が襲う。石戸は腹を刺されるが、仙波のたくらみを中井に話し、自分の不明をわびるとともに、意地でも襲名して、仙波たちの良いようにはされないと言う。西尾の後見で石戸の襲名が認められた。腹の傷も、ぎりぎり手遅れにならずにすんだ。しかし、仙波組代貸の北川(沼田曜一)がとどめを刺す。
  亡くなった石戸の前で、仙波は、殺した松田の始末と花代を兄弟会が預かることを求められる中井。しかし、松田の始末をしてくるまで、花代に手をつけるなと言う。松田の潜伏する旅館に現れる中井。音吉は、金井のドスに自ら刺され、今までのことを詫びる。松田も覚悟していたように金井に倒された。その時、音吉に呼ばれていた弘江と息子が実に連れられて旅館に現れる。松田の死体の前で、中井に「人殺し」とつぶやく弘江。ドスを捨て、沈痛な面持ちで、花会に戻る中井を、北川たち仙波組が襲う。
   花会も無事終わり、二代目の仏前で、中井組の代貸し青木(中村錦司)たちが、花代の計算をしていると、仙波たち兄弟会が現れ、全て自分たちが預かると言う。中井が帰るまでという青木に、兄弟会に意見をするのかとすごむ。仙波に北川が戻ったという言づけがあり、首尾よく中井を消したかと声をかけると、北川は既にこと切れていた。中井が現れ、全て北川から聞いたと言い仙波に迫る。渡世人のくせに叔父貴である自分を斬るのかと言われ、俺はただの人殺しだといって仙波を斬る中井。
   三島由紀夫が任侠映画の最高傑作だと褒めたということで、これを山下耕作の最高傑作だという人間が多いが、本当にそうなのだろうかと、全作品見ているわけではないが、自分は思う。うまくストーリーはまとまっているのかもしれないが、松田がなぜ筋を通そうとしたのかということをもう少し丁寧に書かないと、ただの頭の悪い武闘派が、横紙破りしただけに見えてしまう。任侠映画の最高峰とか、山下耕作の最高傑作と言ってしまうと、山下耕作に失礼な気がするのだが・・・。
  新宿バルト9で、小栗謙一監督『TOKYO JOE(371)』。
シカゴ暗黒街、マフィアの大幹部にケン・エトーという日系二世がいた。またの名をトーキョー・ジョー。1983年彼が捕まることで自分たちの身が危うくなると思ったマフィアの大幹部たちは、エトーの口封じを目的に、二人のヒットマンを差し向ける。頭部を撃たれながら奇跡的にエトーは一命を取り留める。エトーが信じていた組織への誓いを正に逆に彼らが破ったことを知り、エトーはFBIに協力することを決める。FBIの証人保護プログラムの保護下で、彼は誠意を持って証言し、シカゴのマフィア組織は壊滅した。
夜は、元同僚たちと新宿でもつ鍋。

  

2008年12月17日水曜日

冬の雨

   恵比寿ガーデンシネマで、グリンダ・チャーダ監督『ジョージアの日記 ゆーうつでキラキラな毎日(366)』。ジョージアはイギリスロンドンの南西にあるイーストボーン&ブライトンに住む14才。いい年をして、娘の前でベタベタキスをするくせに、石器時代のような価値観で誕生パーティーをクラブで開くことに反対する両親、凶暴な飼い猫のアンガスに変な服を着せて遊ぶ妹の4人家族。鼻が木星並みに大きくてブスなせいでボーイフレンドもいないしキスも未経験だ。今日も、新学期なので眉毛を抜いても物足りなくて髭剃りを出したら妹の体当たりのせいで、眉毛が半分無くなった。しかしキスの10段階を一緒に考えたジャス、スウェーデン人の彼がいるロージー、少し幼いエレンという仲のいい女友達4人組の友情は盤石だ。と思って、仮装パーティーに赤ピーマンのせオリーブの被り物を着て参加したら、前菜4品のセットの筈だったのに、みんなは普通の格好で来ていて、落ち込むジョージア。
   2年上にロンドンから転校生がやってくる。ロビーとトムという二卵性双生児だ。絵に書いたようなクールさに、4人は追い掛ける。二人の母がやっている自然食屋で、偶然を装って買い物をするジョージアとジャス。ジャスとトムはいい感じだ。猫の話で盛り上がるがロビには、巨乳で学校一ビッチなリンジーと付き合っているらしい・・・。
   典型的で少女マンガのようなティーンエイジャーのラブストーリーでも、みんな生き生きして青春映画として成功している。陰陽、ドライウェット対照的だが、「俺たちに明日はないッス」の女子版のようで、続けて見られてよかった。まあ、17才の男子と14才の女子、そんなもんだろうな。主人公の親友のジャス役のエレノア・トムリンソン可愛い!!!未見の「幻影師アイゼンハイム」に出ていたことを知り、確か年末、新文芸坐で上映される筈なので見に行こうと心に決める。しかし、“ゆーうつでキラキラな毎日”って、80年代な感じで少し痛いと思うんだが、来ている感じなんだろうか。
   渋谷シアターNで、ブライアン・デ・パルマ監督『リダクテッド(367)』。アメリカのイラク侵攻で起きた米兵のイランの少女の強姦殺人を、ドキュメンタリー的な作り方で描き出す。ヒスパニック系のサラサール19歳は、南カリフォルニア大学の映画学科に入学するため、兵役に志願し、イラクサマラに派兵される。小隊は、弁護士のマッコイとインテリで静かに読書をするゲイブを除けば、南部出身のプアホワイトを代表するようなフレークとラッシュだ。彼らは、検問所に配属される。近くで少年たちがサッカーをしているような平和そうな場所でも、検問所をハイスピードで突破した車を銃撃すると産院に急ぐ妊婦とその兄を射殺してしまったり、転がっているボールに仕掛けられた爆弾で曹長が爆死したりする。
  来る日も来る日も、検問所での仕事に鬱屈する兵士たち。特にラッシュは、通学する少女の身体検査は変質的である。小隊のメンバーである日ポーカーをしているとあの少女の家に捜索しに行こうということになる。彼女の父親は、既にシーア派として逮捕していた。止めようとするマッコイとゲイブだが、フレークとラッシュの狂気は押さえられない。
   サラサールが撮っているカメラの映像や、米陸軍のカメラ、ユーチューブや、他のネット上の動画のみで繋いでいるかのような演出なので、演出されない動画で構成されているかのようだ。見ていて色々な思いが交錯する。イラク人もアジア人だ。
   シアターTSUTAYA 渋谷で梶野竜太郎監督『ピョコタン・プロファイル(368)』。ちょっと最近いい映画を見過ぎていたので、目が醒める。久々の手作り映画感。久し振りにストーリー纏めるのも馬鹿らしいので映画タイトルクリックすれば、オフィシャルHPへ飛ぶのでチェックしたいひとはチェックしてください。こんなに楽しめない映画もないなあとずっと思っていたが、結末を見て少し考えが変わった。今の素材で45分に縮めたら面白くなるんじゃないだろうか。これも製作委員会なんだな。まあ、保証あるからだろうが、よく1800円でこの映画掛けるなあとむしろ劇場に思う。

2008年12月16日火曜日

BGM;南沙織「17才」

   午前中は 赤坂のメンタルクリニック、不況の話は、盛り上がると言うのか盛り下がるというのか、仕事首になってメンタルクリニックに来る患者もいるらしい。日本は季節が変わるように、一挙に何でも冬のうすら寒い世の中に変わった。欧米と違って日本はバブル崩壊の経験があるから大丈夫と、少し前までみんな言っていた気がする(苦笑)。日本だけ良ければ円高が急速に進んで、車、家電厳しくなるのは誰でも分かるようなものだが。まあバブルで学んだといえば、風向きが変わったら、アメリカ的に直ちに人減らしして、利益率の下げ幅を圧縮して、企業防衛することだけは素早い決断して、町中に失業者溢れかえると言うことか。完全失業率も、職探しは、失業保険の間は、職安に通うが、支給が終わり次第職安から足が遠のき、お上は当てにならないので、自分で街を彷徨く限りは、失業者のカウントから外れる。何だか年金未払い者を数字の上だけ、除外して払込の率を改善したのと同じ手口だ、厚労省だし(苦笑)。
   お惣菜5品を独身美人OLに届け、昼ご飯を元同僚とフィッシュのチキン&キーマカレー。独身美人OLに坊主頭が少し伸びて怖くなくなったと言われたので、渋谷に出て散髪。床屋の鏡で出来上がりを見て、この人相ゆえに就活うまくいかないのかもと反省する。もっと、世の中に迎合した髪型や眼鏡にしたほうがいいのだろうか・・・。
   ユーロスペースで前から見たかったタナダユキ監督『俺たちに明日はないッス(365)』。
   比留間は(柄本時生)は、高校3年。ただただ、セックスの実現だけが頭をしめており、肥満児の安藤通称安パイ(草野イニ)の胸を100円で揉ませてもらうことと1日最高13回の自涜のみが毎日な青春だ。
   クラスの友野(三輪子)が、担任の吉田(田口トモロヲ)とラブホテルから出て来るところを目撃し、愛読書のフランス書院文庫の女子高生教師ものの文章が脳内を交錯する。口では、友野にやらせろと脅すが、病弱だが大人びてクールな友野が猛烈に気になっているのだ。仲間の峯(遠藤雄弥)は、学校をサボって公園で、昼寝をしていると、近くに同じ学校の制服を着た“ちづ”(安藤サクラ)が、倒れていて驚く。ちづは初潮を迎え貧血を起こして倒れたが、金魚屋の父親(ダンカン)とずっと2人暮らしだったので、全く生殖についての知識がなかったのだ。峯はスーパーに一緒に行って、生理用品を買ってやる。他人に言ったら殺すとちづには言われていたが、その夜ビールを飲みながら麻雀をやっていたら、楽しくなって全部話してしまう。安パイはビールを買いに行かされると巨乳で可愛い同級生の秋恵(水崎彩女)に会う。巨乳であることが、コンプレックスだと打ち明ける秋恵。
   翌日、峯は、二日酔いで学校の水飲み場で顔を洗っていると、千紗が男子にからかわれている。済まない気持ちになる。ちづがやってきて友達がいなくなったので、みんなが知っていることを教えろと言う。峯はちづをピンク映画館に連れて行く。ちづにセックスしたことあるかと聞かれて、勿論だと言う峯。ちづにセックスしようと言われ、好きでもないので嫌だと言う峯。友野は、朝礼などで度々倒れる。比留間は、心配で保健室を覗きに行くと、担任の吉田と友野がいちゃついている。校舎の裏で、吉田を殴る比留間。
  しづが、比留間たちにセックスしよと言う。大喜びで、何故か峯の家に行く。順番のジャンケンをしている比留間たち。峯は、もっと大事にしろ、好きな相手とやれと言う。しづは、峯を好きだからと言う。白けてふらふらと出ていく比留間たち。そのあと、峯としづは、ぎこちなく抱き合う。峯は自分も初めてだと言う。誰でも最初は初めてだと、嬉しそうに言うしづ。うまく出来ない峯、ピンク映画のように上に乗ってみるしづ。二人は結ばれる。ぎこちなく、しかし互いを大事そうに抱き合う二人。
   秋恵とデートをする安パイ。安パイといると安心すると言って、キスをする秋恵。秋恵とラブラブな安パイ。学校でもディープキスをする二人。しかし、何故か、秋恵は安パイの胸を揉む。安パイのおっぱいは痣だらけだ。
   友野は、家で吉田とのことを怒られたらしい。いつものようにやらせろという比留間にいいよと言う友野。手近のホテルでなく、バスに乗って海に行こうと言う比留間。友野は、身体が弱かったので海に来たのは何年振りだろうと言う。海辺のラブホテルの料金を見て愕然とする比留間。貸そうかという友野に、セックスはどこでもできると言う比留間。海岸の小屋で、キスをする比留間。しかし、13連発の自慢の息子は全く役にたたない。焦っているうちに、友野は体調を崩す。今度にしようよという友野に、今日じゃなくちゃなくちゃ駄目なんだと言うが、全く駄目なのは自分自身。南沙織の17才を歌いながら、水辺で戯れ、溺れる友野。慌てて、全裸で海に飛び込み、救急車に乗せる。病院の待合室に、比留間と吉田がいる。友野は大丈夫だ、自分は既に妻と別居しており、友野が卒業次第結婚するんだという吉田。よろめきながら、吉田だってガキじゃないか、これって何って言ったか、失恋というやつかとつぶやいて病院を出る比留間。
   安パイは、放課後、級友と掃除をしていると、秋恵の机が倒れる。中から出てきたのは、相撲やレスリングなどデブ専のマニアックな雑誌ばかりだ。気持ち悪がる級友たち。その後、校舎の裏で、秋恵と安パイが話している。安パイは、最初から僕の身体が目当てだったの?と聞く。最初はそうだけど、今は中身だと秋恵は言うが、納得しない安パイ。気持ちの問題だったら、他人の机の中を見るのはどうなのと言って秋恵は去る。
   しづは妊娠した、峯は既に金魚屋を手伝っている。卒業したら、本格的に継ぐらしい。安パイは激やせした。別人のようだ。卒業式を迎える。教室に戻ってきて、吉田が、自分も今日で教師を辞めると言う。みんなから希望とかパワーを貰ったんだと言う吉田に、希望なんて言うなと叫んで殴りかかる比留間。今回は吉田も逆襲して殴り返す。大騒ぎになり2人を止める級友たち。ぼこぼこの顔を水飲み場で冷やしている比留間。ティッシュを渡す友野。こういう時はハンカチだろと毒づきながら受け取る比留間。吉田は、生徒たちと記念撮影をしている。じゃあなと友野に一言言って校門に向かう比留間。その背中に、海に行ったことはずっと忘れないと言う友野。明日から何をしようかと考え始める比留間。明日を生まれて初めて意識したのだ。  
   きれいで美しい思い出ではなく、青臭く、恥とマスだけかいてやりきれない10代。いい映画だなあ。タナダユキよくなるなあ。特に、病院の吉田と比留間のやりとりのくだりはとてもいい。比留間も安パイもかっこよくなく、イケメンの筈の峯も何だか冴えない、女の子もみんなそこそこ可愛いんだけど、アイドルや女優のレベルまできれいでない(ほんとは、みんなモデルや女優だけど)感じがリアリティあっていい。青春映画ジャンル今年のベスト1を争うな。素晴らしい映画を観た。

2008年12月15日月曜日

本数は3本でも、6時間以上映画見ていると脳みそは駄目

  池袋新文芸坐で、野上照代が選んだ映画たち。64年東映京都内田吐夢監督『飢餓海峡(362)』。
  昭和22年、 層雲丸遭難事故。台風の直撃で大荒れの北海道岩内、駅で待っている男犬飼太吉(三國連太郎)のもとに、2人の仲間が駆け寄り、函館行きの汽車に飛び乗る。2人は強盗殺人の上、放火してきたらしい。荒天で汽車は止まる。3人は、函館まで歩くことにする。函館では、青函連絡船の層雲丸が港の外で転覆し、大騒ぎだ。この騒ぎに乗じて、本州へ逃げようと救援隊を装って船を借りる。
   岩内の町は焼けたが、警察は火元の家が強盗殺人の末火を着けられたことを突き止める。また、層雲丸の死者の中に2名乗員名簿にない死体があった。函館暑の刑事弓坂(伴淳三郎)は、2つの事件の関連性を疑う。その頃、犬飼は下北半島の恐山で、1人の貧しい娼婦杉戸八重(左幸子)と出会う。森林列車で山を降り、大湊の八重がいる花やに上がる。いくつもの地獄を通った犬飼の精神は、八重との一時で癒される。八重は、膝枕で犬飼の爪を切ってあげる。八重は、泊りにしてくれと言うが、用心した犬飼は断る。しかし犬飼は帰り際、ヤミで儲けた金だからと言ってまとまった金を置いて去る。八重は、病の父親や幼い弟妹たちの生活のために、自分で高等小学校を出て直ぐに、自ら身を売ったのだ。見たこともない大金をくれた犬飼は、八重に強烈な印象を植え付けた。犬飼がくれた金が包まれていた層雲丸転覆と岩内の大火の記事が載った新聞と犬飼が残した大きな足の爪を、八重は一生宝物として持ち歩くことになる。八重は、犬飼から貰った金で、遊郭の借金を返し、病気の父親(加藤嘉)を湯治に連れて行く。弓坂は、八重に会いに温泉まで行くが、八重は男について嘘の証言をした。函館暑に戻った秋元を待っていたのは、網走刑務所を出所して行方不明になっている2人の写真が届いている。洞爺丸の事故での身元不明者だった沼田八郎と木島忠吉だ。また岩内の手口が死んだ沼田の手口と一緒だった。実行犯は3人、本州に逃げだのは1人だったのだ。
   弓坂は八重が嘘をつき、その理由が今回の事件の鍵だと直感し、八重が地元の友人を頼って出稼ぎに出た東京に出張する。友人宅を張るが間一髪で逃げられる。八重も、身体を売る商売から足を洗おうとするが、結局娼婦に逆戻りだ。5年ほと経ち、八重は新聞に京都舞鶴の資産家樽見京一郎が受刑者のために多額の寄付をしたという記事を見つける。名前は違うが、見間違える筈もない。一言お礼を言って、あの時のお金を返そうと舞鶴を訪ねる。樽見の邸宅を訪ねるが、自分ではないと頑なに否定する樽見。八重は自分のあの日からの10年まで否定された気がする。しかし、樽見の親指の傷に真実を知り狂喜する八重。興奮する八重を抑えようと樽見は殺してしまう。また現場を目撃した書生も手にかける樽見。
    雨の中三輪トラックを運転し心中に見せかけ、二人の死体を海に捨てる。翌日死体を調べた舞鶴暑の警部補味村(高倉健)は、女の懐にあった新聞記事の切り抜きを頼りに、心当たりがないか樽見に尋ねる。2人の死体を見て樽見は、女は知らない人間だが、男が自分の書生であると認める。しかし死んだ2人の死因はどちらも力の強い男に締め殺されたのだ。樽見が犯人であるという証拠は得られない。
   しかし、八重の父親が、10年前彼女を訪ねて函館暑の刑事がやってきたと証言したことから糸口が見つかる。刑事を辞め少年院の刑務官をしている弓坂を訪ねる高倉。2人の間で樽見が犬飼であると確信する。しかし物的証拠はない・・・・。
  野上照代さんと三國連太郎さんのトークショー付き。月曜でも満員だった。しかし3時間強、長く感じさせないのは本当に凄いな。自分には、何回見てもどうも唐突で釈然としない結末も含め(毎回えっ?って驚いてしまう自分は学習能力がないのか・・・)、日本映画の頂点の作品の一つだろうな。
   神保町シアターで女優・山田五十鈴。42年東宝マキノ正博監督『待って居た男(363)』。
   ある旅籠で、新妻を狙った事件が起きた。小さなことから始まったが、殺人事件に繋がる。本格推理時代劇。あらすじは改めて。長谷川一夫とエノケンのやりとりが見もの。この頃の時代劇は、夫のいる女は皆鉄漿を塗っている。そのせいか、若い娘の高峰秀子がより可愛く見えてしまうが、そんな可憐な高峰秀子が実は・・・。
    55年日活マキノ雅弘監督『人生とんぽ返り(364)』。新国劇に、それまでの歌舞伎のような型でない、新しい殺陣を取り入れた殺陣師段平の物語。50年版の「殺陣師段平」のリメイク。何だか、製作が逆の印象を持つ程、山田五十鈴は若々しい。段平を森繁久弥、おきくを左幸子、50年版より情緒的か。森繁より、月形龍之介の段平の方が芝居の世界でしか生きられない少しやさぐれた段平のイメージだろうか、しかしその分森繁の段平は、お春(山田五十鈴)とのやりとりなど流暢でスマートかな。好みだと思うが、個人的には先にみた分、「殺陣師段平」だろうか。しかし、京都南座から最後の幕が開いて新国劇の人間がみんなお辞儀をするところまでの流れは、こっちかな。森繁と山田五十鈴の亡霊はちょっとどうかと思うが。
  しかし、飢餓海峡の八重といい、このおきくといい、不幸のどん底を健気に生きてきた娘の役の左幸子は凄いな。純粋過ぎて、少しバランスが崩れている感じ。怖いくらいの存在感だ。多分実生活で会うと、もの凄く好きになって、結果自分はボロボロになる感じだろうか。

2008年12月14日日曜日

ためになる任侠映画。

    読書と惰眠。阿佐ヶ谷ラピュタで山下耕作ノ世界。71年東映京都『女渡世人 おたの申します(360)』。上州伊勢崎生まれの小松まさ子は上州小政(藤純子)という通り名の女渡世人。大阪の南田一家(遠藤辰雄)の賭場に客人となっていた。そこで、岡山宇野の船宿浜幸の若旦那の矢吹良吉(林彰太郎)が浜幸宛ての証文で300円もの金を借りるて勝負するが、まさ子に負けて一文無しになり、とっさにイカサマだと騒ぎ、梅田の銀蔵(待田京一)に刺され命を落とす。今わの際に、良吉はまさ子に両親への伝言を託す。小政は、300円の取り立てに宇野へ出向くことを請け負った。
   宇野に向かう船中で、船場の呉服問屋から反物を持って出奔した福松(南利明)と、渡り床の音羽誠二郎(菅原文太)に出会う。渡誠には、金比羅様の土鈴の御守りを貰う。宇野に着き、浜幸を訪ねると、目の不自由な良吉の母おしの(三益愛子)が出迎える。おいえは息子が死んだことを知らない。主人の矢吹幸作(島田正吾)は、小政の用件を聞き、店と家屋の権利書を担保に小西商会から金を借りてまさ子に300円を渡す。その頃まさ子は、浜幸の裏長屋で仕事をする女たちと親しくなっていた。そこに滝島組の連中が多摩の飯場か女渡世人 おたの申しますら工夫が逃げだと捕まえにくる。女たちの中の乳飲み子を抱えるおのぶの夫の三蔵だった。主人は三蔵を逃がすが、瀧島に捕まり、浜幸の主人が逃がしたと白状してしまう。浜幸に現れた瀧島周蔵(金子信雄)は、浜幸の権利書を持っており、中西と、この一角を遊廓にする計画があるので、立ち退けと言う。
   結局政子は大阪に戻らず、浜幸の危機を救おうとする。しかし、女たちは、良吉の借金を取りに来たと知って、憎悪の目で政子を見る。梅田の銀蔵は瀧島組の客人として再会する。政子を助けてくれたが、浜幸の権利書と引換に自分と一緒になってくれと言う。実は銀三は、渡清の弟勘次郎の女千代に横恋慕した末、弟を斬った男だった。誠二郎は銀三を探し続けていたのだ。清次郎と銀三の勝負は、清次郎が勝つ。土下座して浜幸の権利書を出す銀三に止めを刺そうとした清次郎に、再び刑務所にはいるに値しない男だとまさ子は止める。まさ子は、良吉の代わりに、おしのを金毘羅さまのお参りに連れて行く。おしのは、まさ子に、本当は良吉の妻なんだろうと言う。言葉を詰まらせるまさ子。
  浜幸の裏長屋に放火する滝島組。まさ子は火の中に取り残されたおのぶの赤子を助け出すが、女たちの憎悪の視線は変わらない。涙するまさ子に、銀次郎は、自分たちのような日陰ものは日向には出られないのだと慰める。放火までする滝島組に、拳銃を片手に幸作は乗り込む。しかし、卑劣な銀三に刺殺される。滝島組に呼ばれたまさ子に、滝島は、逃がした筈の福松と三蔵の死体ともに引き取れと言う。更に、そこに大阪の南田も現れた、浪速の銀三の仲人で、滝島と兄弟の杯を交わしたと言う。南田は、渡世の義理で引き受けた筈の300万はどうしたと聞く。自分が返すので少し待ってくれというまさ子に、浜幸の権利書と裏長屋の住人たちの立ち退き承諾書を今日中に持って来いと言う。渡世人の掟として、承諾せざる負えないまさ子。更に銀蔵は自分への落とし前をつけろという。ただちに皆の前で、指を詰めるまさ子。
   幸作たちの通夜が行われている。まさ子が抜けると、清次郎がついてくる。滝島組に乗り込むふたり。
   女渡世人シリーズ。菅原文太と通い合う想い。プラトニックと以前書いたがプラトニックとはちょっと違う。精神肉体ともに、相手への強い想いはお互いの中に溢れそうになっている。しかし、あと1滴で溢れるコップを支えながら、侠客としてのプライドや面子や矜持のために、我慢に我慢して、更に我慢するんだな。意地の張り合いというか忍耐競争というか我慢比べを男同志だけではなく、男女の恋愛の中にも美しいとするんだろうな。その溜めに溜めた忍耐を、義理で死にに行く時のエネルギーに変えるのだな。切ない。
 75年東映京都『日本仁侠道 激突編(361)』。
   三多摩八王子をシマに持つ龍神一家の龍神一蔵(高倉健)は、恋女房お幸(大谷直子)の兄であり、恩義のある親分の2代目である青梅扇谷一家の東金参次郎(渡辺文雄)から、八王子の三業地開発を十国一家の神戸雷吉(小松方正)と一緒にやろうと持ちかけられる。しかし、神戸は新宿の三業地も地元の組と組んで立ち上げながら自分たちのものにしている。参次郎は、組が生き残るには神戸と組むしかないという考えだが、一蔵は先代の教えの自分のシマは自分で守れと言うもので、十国組と組むことを断る。
  十国組は、龍神組のシマ内の日野で賭場を開いた。すぐに駆けつけてテラ銭を取り上げる一蔵。扇谷一家の500人の土方頭の房州熊(宍戸錠)は、龍神組の賭場のお得意の澤野喜兵衛の娘おきみ(竹下景子)で面子をつぶされており、一蔵を殺そうとして拳銃を撃つ。一蔵を庇って、音無しの三五郎(渡瀬恒彦)が撃たれた。十国組に匿われる。
   再び十国組がシマ内を荒らした際に、殴り込むことを決める。龍神組に草鞋を脱いでいた旅常こと友次常次(北大路欣也)が単身十国組の賭場に乗り込んで、代貸しを刺す。十国組からの喧嘩状を受けて、一触即発になったところに、関東に名を轟かす、秩父の藤が崎一家の国嶺達之助(辰巳柳太郎)が仲裁を買ってでる。手打ち式が行われたが、兄貴分の参次郎は姿を現さなかった。
   龍神組の巳代吉(藤間文彦)は、喜兵衛の相手をしていたので、おきみと二世を誓っていたが、ある日、房州熊の子分たちどくろの留(岩尾正隆)とはっぱの松(川谷拓三)に強姦されてしまう。追いかけてきた巳代吉は留を刺し殺す。十国組から巳代吉の身柄を渡せという話があったが、一蔵は、巳代吉を破門にする。おきよは、いつまでも巳代吉を待っていると言う。
  お幸に子供ができたことが分かり、夫婦の結びつきはより深くなったが、参次郎は、神戸と兄弟の杯を交わし、龍神組と敵対する側に入った。達之助を見舞いに秩父まで出かけると、藤が崎一家の跡目を継いでくれないかと頼まれる。そんな大きな名前を継ぐことはできないと断る。しかし、その話は、参次郎に伝わる。秩父と八王子を一蔵が束ねると、青梅の扇谷一家は挟み撃ちになってしまうのだ。おきみが働く料理屋に、一蔵とお幸が訪れる。そこに、はっぱの松がダイナマイトを投げ込む。再び三五郎は身を挺して一蔵たちを救った。しかし、房州熊や十国組の刺客が襲う。お幸を庇っておきみも死ぬ。房州熊が、参次郎からの刺客だと話すのを聞いてショックを受けるお幸。
  シマ内でここまでやられて、一蔵は十国組に殴り込むことにする。新堀左吉(待田京介)と番笠銀次(林彰太郎)を組に残し、4人のメンバーを連れていくことにする。お幸が消えた。おきみの病院を一蔵が訪ねると、花嫁衣装を着たおきみの亡きがらの横で自害しているお幸。一蔵は、二人の手を結ばせる。八王子から中央線に乗って新宿へ。
  龍神組などと甘く見ている神戸たち。そこに斬り込む一蔵たち。参次郎が一蔵を撃とうとした時に、巳代吉が飛び込んできて身代わりになった。参次郎、神戸たちを斬る一蔵。そこには、連れてきた自分の子分たちや十国一家の人間もみな死んでいる。真っ赤に血塗られた座敷の中を歩く一蔵。
   日本任侠道というタイトルそのままに、任侠のしきたりが、横内正のナレーションで語られる。非常によく纏まられた映画。映画を楽しみながら、自然とヤクザのしきたりに詳しくなる、ためになる任侠映画。