2008年12月15日月曜日

本数は3本でも、6時間以上映画見ていると脳みそは駄目

  池袋新文芸坐で、野上照代が選んだ映画たち。64年東映京都内田吐夢監督『飢餓海峡(362)』。
  昭和22年、 層雲丸遭難事故。台風の直撃で大荒れの北海道岩内、駅で待っている男犬飼太吉(三國連太郎)のもとに、2人の仲間が駆け寄り、函館行きの汽車に飛び乗る。2人は強盗殺人の上、放火してきたらしい。荒天で汽車は止まる。3人は、函館まで歩くことにする。函館では、青函連絡船の層雲丸が港の外で転覆し、大騒ぎだ。この騒ぎに乗じて、本州へ逃げようと救援隊を装って船を借りる。
   岩内の町は焼けたが、警察は火元の家が強盗殺人の末火を着けられたことを突き止める。また、層雲丸の死者の中に2名乗員名簿にない死体があった。函館暑の刑事弓坂(伴淳三郎)は、2つの事件の関連性を疑う。その頃、犬飼は下北半島の恐山で、1人の貧しい娼婦杉戸八重(左幸子)と出会う。森林列車で山を降り、大湊の八重がいる花やに上がる。いくつもの地獄を通った犬飼の精神は、八重との一時で癒される。八重は、膝枕で犬飼の爪を切ってあげる。八重は、泊りにしてくれと言うが、用心した犬飼は断る。しかし犬飼は帰り際、ヤミで儲けた金だからと言ってまとまった金を置いて去る。八重は、病の父親や幼い弟妹たちの生活のために、自分で高等小学校を出て直ぐに、自ら身を売ったのだ。見たこともない大金をくれた犬飼は、八重に強烈な印象を植え付けた。犬飼がくれた金が包まれていた層雲丸転覆と岩内の大火の記事が載った新聞と犬飼が残した大きな足の爪を、八重は一生宝物として持ち歩くことになる。八重は、犬飼から貰った金で、遊郭の借金を返し、病気の父親(加藤嘉)を湯治に連れて行く。弓坂は、八重に会いに温泉まで行くが、八重は男について嘘の証言をした。函館暑に戻った秋元を待っていたのは、網走刑務所を出所して行方不明になっている2人の写真が届いている。洞爺丸の事故での身元不明者だった沼田八郎と木島忠吉だ。また岩内の手口が死んだ沼田の手口と一緒だった。実行犯は3人、本州に逃げだのは1人だったのだ。
   弓坂は八重が嘘をつき、その理由が今回の事件の鍵だと直感し、八重が地元の友人を頼って出稼ぎに出た東京に出張する。友人宅を張るが間一髪で逃げられる。八重も、身体を売る商売から足を洗おうとするが、結局娼婦に逆戻りだ。5年ほと経ち、八重は新聞に京都舞鶴の資産家樽見京一郎が受刑者のために多額の寄付をしたという記事を見つける。名前は違うが、見間違える筈もない。一言お礼を言って、あの時のお金を返そうと舞鶴を訪ねる。樽見の邸宅を訪ねるが、自分ではないと頑なに否定する樽見。八重は自分のあの日からの10年まで否定された気がする。しかし、樽見の親指の傷に真実を知り狂喜する八重。興奮する八重を抑えようと樽見は殺してしまう。また現場を目撃した書生も手にかける樽見。
    雨の中三輪トラックを運転し心中に見せかけ、二人の死体を海に捨てる。翌日死体を調べた舞鶴暑の警部補味村(高倉健)は、女の懐にあった新聞記事の切り抜きを頼りに、心当たりがないか樽見に尋ねる。2人の死体を見て樽見は、女は知らない人間だが、男が自分の書生であると認める。しかし死んだ2人の死因はどちらも力の強い男に締め殺されたのだ。樽見が犯人であるという証拠は得られない。
   しかし、八重の父親が、10年前彼女を訪ねて函館暑の刑事がやってきたと証言したことから糸口が見つかる。刑事を辞め少年院の刑務官をしている弓坂を訪ねる高倉。2人の間で樽見が犬飼であると確信する。しかし物的証拠はない・・・・。
  野上照代さんと三國連太郎さんのトークショー付き。月曜でも満員だった。しかし3時間強、長く感じさせないのは本当に凄いな。自分には、何回見てもどうも唐突で釈然としない結末も含め(毎回えっ?って驚いてしまう自分は学習能力がないのか・・・)、日本映画の頂点の作品の一つだろうな。
   神保町シアターで女優・山田五十鈴。42年東宝マキノ正博監督『待って居た男(363)』。
   ある旅籠で、新妻を狙った事件が起きた。小さなことから始まったが、殺人事件に繋がる。本格推理時代劇。あらすじは改めて。長谷川一夫とエノケンのやりとりが見もの。この頃の時代劇は、夫のいる女は皆鉄漿を塗っている。そのせいか、若い娘の高峰秀子がより可愛く見えてしまうが、そんな可憐な高峰秀子が実は・・・。
    55年日活マキノ雅弘監督『人生とんぽ返り(364)』。新国劇に、それまでの歌舞伎のような型でない、新しい殺陣を取り入れた殺陣師段平の物語。50年版の「殺陣師段平」のリメイク。何だか、製作が逆の印象を持つ程、山田五十鈴は若々しい。段平を森繁久弥、おきくを左幸子、50年版より情緒的か。森繁より、月形龍之介の段平の方が芝居の世界でしか生きられない少しやさぐれた段平のイメージだろうか、しかしその分森繁の段平は、お春(山田五十鈴)とのやりとりなど流暢でスマートかな。好みだと思うが、個人的には先にみた分、「殺陣師段平」だろうか。しかし、京都南座から最後の幕が開いて新国劇の人間がみんなお辞儀をするところまでの流れは、こっちかな。森繁と山田五十鈴の亡霊はちょっとどうかと思うが。
  しかし、飢餓海峡の八重といい、このおきくといい、不幸のどん底を健気に生きてきた娘の役の左幸子は凄いな。純粋過ぎて、少しバランスが崩れている感じ。怖いくらいの存在感だ。多分実生活で会うと、もの凄く好きになって、結果自分はボロボロになる感じだろうか。

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