2008年12月19日金曜日

溝口健二・山田五十鈴2作品。

  早朝から大掃除、やりはじめると止まらずたちまち昼に。カーテンを洗濯し、窓ガラスを磨き、たまった雑誌の整理・・・・。
  神保町シアター、女優・山田五十鈴
  36年第一映画溝口健二監督『祗園姉妹(372)』。祗園の芸妓おもちゃ(山田五十鈴)は、姉の梅若(梅村蓉子)と2人暮らし。老舗の木綿問屋が潰れて旦那の古沢(志賀廼家弁慶)が姉を頼って転がり込む。かっての恩や義理、世間の目などに縛られた姉の考え方におもちゃは歯がゆい気持ちを持っている。お人好しの姉は、芸は立派だが、旦那に家や着物をねだる訳でもないので、総振舞でも新しい着物も買えないのだ。おもちゃは、置き屋の女将に姉の総振舞への出演を頼み、呉服屋の番頭木村(深見泰三)が自分に気があることをいいことに極上の反物を巻き上げる。総振舞の日、骨董屋の聚楽堂の主人(大倉文男)が古沢に会いたいと言うので梅若は家に連れてくるのだが、聚楽堂は、とても酔っており、古沢に絡む。聚楽堂を送り届ける時に、おもちゃは、梅若が聚楽堂に気があるが、古沢が居ついて困っていると言って手切れ金を迫る。帰宅して、金を渡すと出ていく古沢。聚楽堂への工作もばれ、梅若は家を出て、古沢が居候している元番頭定吉(林家染之助)の元へ行く。
   木村がおもちゃに用立てた反物のことが主人工藤三五郎(進藤栄太郎)にばれた。おもちゃに文句を言いにきた工藤だが、逆におもちゃの虜に。工藤がおもちゃの家に いるときに、店を首になった木村が現れ、2人に毒づいて出ていく。
  ある日、おもちゃは騙されて車に乗ると、聚楽堂と木村から今までの借りを返すのだと脅される。車から飛び降りて、重傷を負うおもちゃ。梅若は置屋の女将から連絡をもらって駆けつける。しかし、一度、おもちゃの身の回りを用意しに、家に帰ると、古沢も定吉もいない。定吉の妻から、古沢が妻の郷里で、工場の支配人の職が決まったので、すぐに発ったと言われる。書き置きもなく、「自分のようなしょうもない男は忘れて、いい旦那をさがせ」という伝言しかなかったと聞いて、落ち込む梅若。病室で、芸妓という職業の不幸を嘆くおもちゃ。
   36年第一映画溝口健二監督『浪花悲歌(373)』。薬種問屋の電話交換手をしている村井アヤ子(山田五十鈴)は、父親準造(竹川誠一)が会社の金を使い込んだ300円という大金で悩んでいた。返さなければ警察に訴えると会社の人間は連夜村井家を訪れるが、準造は、こそこそ逃げ回っており、家の中だけ勇ましい。アヤ子が好きな西村(原健作)は同じ会社の会計係。相談しても頼りにならない。結局、以前から妾にならないのかと口説いていた薬種問屋の社長麻居惣之助(志賀廼家弁慶)の世話になって、300円を出して貰うことにする。会社を辞め家を出て、惣之助が用意してくれた高級アパートに住む。惣之助は、従業員から婿養子になったので、妻のすみ子(梅村蓉子)が、家庭を顧みず遊びあるいているので寂しい思いをしていたのだ。
  人形浄瑠璃を二人で見ているところをすみ子に見つかる。医師の横尾(田村邦男)の機転で、アヤ子が、惣之助の友人の株屋藤野喜蔵(進藤栄太郎)の愛人だと装って、すみ子にごまかした。しかし、惣之助が高熱を出して倒れたと往診を頼まれた時に、横尾が本宅に出向いたことで、結局ばれてしまった。偶然、西村に再会する。アヤ子を、ずっと探していたという。西村には、妾をしていたとは言えずに、悩むアヤ子。 
   その頃、アヤ子の兄で東京の大学にいっている弘(浅香新八郎)が、父からの仕送りがなくなって学費が払えず、就職は決まっているのに、卒業できなくなると言って、帰省している。偶然妹の幸子(大倉千代子)に駅で、その話を聞く。幸子からは家に帰って200円なんとかしてくれと言われ、冗談じゃないと答えるアヤ子。しかし、思い直して、以前から口説いていた株屋の藤野に会い、200円を巻き上げた上で、袖にして藤野を激怒させる。200円の小切手を父親に送る。
   アパートに西村がやってきた。好きな人と結婚できることで有頂天になるアヤ子。金を返せと言ってきた藤野も追い返す。しばらく後に刑事がやってきて、アヤ子と西村は逮捕される。西村は、アヤ子のしたことに驚き、自分は巻き添えになっただけだという。アヤ子は、初犯で未成年ということで、許された。父に連れられ、実家に戻るアヤ子。妹の幸子も、兄の弘も、一口もきかない。こんなことをしたアヤ子を一方的に責め、何で家に連れ帰ったと父親にまで文句を言う。家を出るアヤ子。途中医師の横尾に会う。自分のような不良少女はどうしたら治るか横尾に尋ねるが、分からないと答える横尾。町をさすらうアヤ子。
   2本とも、目の前の不幸を、自分でなんとか解決しようと、男を手玉にとって成功したかにみえるが、結局破滅する娘を、山田五十鈴が演じている。現代では、誰も彼女を責めないと思うが、70年前の倫理感では自業自得ということなのか。若くきれいな女をものにしようとしながら、金にせこい男たちこそ自業自得だと思うのだが、なんだか切ないなあ。アヤ子に至っては、父親と兄に大金を渡す為に、自ら身を売ったようなものなのに。父ちゃんも自分が業務上横領で捕まらなかったのは娘のお陰で、長男の200円まで工面したのに、その事情を一切、長男や次女には教えないんだもんな。
    修理に出していた腕時計を受け取りに東急ハンズに、博華で餃子とビールで身体を暖めて、帰宅後、大掃除の続き、堀起こせば、堀起こすだけ、やろうという場所を思いつく。どこかで線引きしないと、キリがない。

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