読書と惰眠。阿佐ヶ谷ラピュタで山下耕作ノ世界。71年東映京都『女渡世人 おたの申します(360)』。上州伊勢崎生まれの小松まさ子は上州小政(藤純子)という通り名の女渡世人。大阪の南田一家(遠藤辰雄)の賭場に客人となっていた。そこで、岡山宇野の船宿浜幸の若旦那の矢吹良吉(林彰太郎)が浜幸宛ての証文で300円もの金を借りるて勝負するが、まさ子に負けて一文無しになり、とっさにイカサマだと騒ぎ、梅田の銀蔵(待田京一)に刺され命を落とす。今わの際に、良吉はまさ子に両親への伝言を託す。小政は、300円の取り立てに宇野へ出向くことを請け負った。
宇野に向かう船中で、船場の呉服問屋から反物を持って出奔した福松(南利明)と、渡り床の音羽誠二郎(菅原文太)に出会う。渡誠には、金比羅様の土鈴の御守りを貰う。宇野に着き、浜幸を訪ねると、目の不自由な良吉の母おしの(三益愛子)が出迎える。おいえは息子が死んだことを知らない。主人の矢吹幸作(島田正吾)は、小政の用件を聞き、店と家屋の権利書を担保に小西商会から金を借りてまさ子に300円を渡す。その頃まさ子は、浜幸の裏長屋で仕事をする女たちと親しくなっていた。そこに滝島組の連中が多摩の飯場か女渡世人 おたの申しますら工夫が逃げだと捕まえにくる。女たちの中の乳飲み子を抱えるおのぶの夫の三蔵だった。主人は三蔵を逃がすが、瀧島に捕まり、浜幸の主人が逃がしたと白状してしまう。浜幸に現れた瀧島周蔵(金子信雄)は、浜幸の権利書を持っており、中西と、この一角を遊廓にする計画があるので、立ち退けと言う。
結局政子は大阪に戻らず、浜幸の危機を救おうとする。しかし、女たちは、良吉の借金を取りに来たと知って、憎悪の目で政子を見る。梅田の銀蔵は瀧島組の客人として再会する。政子を助けてくれたが、浜幸の権利書と引換に自分と一緒になってくれと言う。実は銀三は、渡清の弟勘次郎の女千代に横恋慕した末、弟を斬った男だった。誠二郎は銀三を探し続けていたのだ。清次郎と銀三の勝負は、清次郎が勝つ。土下座して浜幸の権利書を出す銀三に止めを刺そうとした清次郎に、再び刑務所にはいるに値しない男だとまさ子は止める。まさ子は、良吉の代わりに、おしのを金毘羅さまのお参りに連れて行く。おしのは、まさ子に、本当は良吉の妻なんだろうと言う。言葉を詰まらせるまさ子。
浜幸の裏長屋に放火する滝島組。まさ子は火の中に取り残されたおのぶの赤子を助け出すが、女たちの憎悪の視線は変わらない。涙するまさ子に、銀次郎は、自分たちのような日陰ものは日向には出られないのだと慰める。放火までする滝島組に、拳銃を片手に幸作は乗り込む。しかし、卑劣な銀三に刺殺される。滝島組に呼ばれたまさ子に、滝島は、逃がした筈の福松と三蔵の死体ともに引き取れと言う。更に、そこに大阪の南田も現れた、浪速の銀三の仲人で、滝島と兄弟の杯を交わしたと言う。南田は、渡世の義理で引き受けた筈の300万はどうしたと聞く。自分が返すので少し待ってくれというまさ子に、浜幸の権利書と裏長屋の住人たちの立ち退き承諾書を今日中に持って来いと言う。渡世人の掟として、承諾せざる負えないまさ子。更に銀蔵は自分への落とし前をつけろという。ただちに皆の前で、指を詰めるまさ子。
幸作たちの通夜が行われている。まさ子が抜けると、清次郎がついてくる。滝島組に乗り込むふたり。
女渡世人シリーズ。菅原文太と通い合う想い。プラトニックと以前書いたがプラトニックとはちょっと違う。精神肉体ともに、相手への強い想いはお互いの中に溢れそうになっている。しかし、あと1滴で溢れるコップを支えながら、侠客としてのプライドや面子や矜持のために、我慢に我慢して、更に我慢するんだな。意地の張り合いというか忍耐競争というか我慢比べを男同志だけではなく、男女の恋愛の中にも美しいとするんだろうな。その溜めに溜めた忍耐を、義理で死にに行く時のエネルギーに変えるのだな。切ない。
75年東映京都『日本仁侠道 激突編(361)』。
三多摩八王子をシマに持つ龍神一家の龍神一蔵(高倉健)は、恋女房お幸(大谷直子)の兄であり、恩義のある親分の2代目である青梅扇谷一家の東金参次郎(渡辺文雄)から、八王子の三業地開発を十国一家の神戸雷吉(小松方正)と一緒にやろうと持ちかけられる。しかし、神戸は新宿の三業地も地元の組と組んで立ち上げながら自分たちのものにしている。参次郎は、組が生き残るには神戸と組むしかないという考えだが、一蔵は先代の教えの自分のシマは自分で守れと言うもので、十国組と組むことを断る。
十国組は、龍神組のシマ内の日野で賭場を開いた。すぐに駆けつけてテラ銭を取り上げる一蔵。扇谷一家の500人の土方頭の房州熊(宍戸錠)は、龍神組の賭場のお得意の澤野喜兵衛の娘おきみ(竹下景子)で面子をつぶされており、一蔵を殺そうとして拳銃を撃つ。一蔵を庇って、音無しの三五郎(渡瀬恒彦)が撃たれた。十国組に匿われる。
再び十国組がシマ内を荒らした際に、殴り込むことを決める。龍神組に草鞋を脱いでいた旅常こと友次常次(北大路欣也)が単身十国組の賭場に乗り込んで、代貸しを刺す。十国組からの喧嘩状を受けて、一触即発になったところに、関東に名を轟かす、秩父の藤が崎一家の国嶺達之助(辰巳柳太郎)が仲裁を買ってでる。手打ち式が行われたが、兄貴分の参次郎は姿を現さなかった。
龍神組の巳代吉(藤間文彦)は、喜兵衛の相手をしていたので、おきみと二世を誓っていたが、ある日、房州熊の子分たちどくろの留(岩尾正隆)とはっぱの松(川谷拓三)に強姦されてしまう。追いかけてきた巳代吉は留を刺し殺す。十国組から巳代吉の身柄を渡せという話があったが、一蔵は、巳代吉を破門にする。おきよは、いつまでも巳代吉を待っていると言う。
お幸に子供ができたことが分かり、夫婦の結びつきはより深くなったが、参次郎は、神戸と兄弟の杯を交わし、龍神組と敵対する側に入った。達之助を見舞いに秩父まで出かけると、藤が崎一家の跡目を継いでくれないかと頼まれる。そんな大きな名前を継ぐことはできないと断る。しかし、その話は、参次郎に伝わる。秩父と八王子を一蔵が束ねると、青梅の扇谷一家は挟み撃ちになってしまうのだ。おきみが働く料理屋に、一蔵とお幸が訪れる。そこに、はっぱの松がダイナマイトを投げ込む。再び三五郎は身を挺して一蔵たちを救った。しかし、房州熊や十国組の刺客が襲う。お幸を庇っておきみも死ぬ。房州熊が、参次郎からの刺客だと話すのを聞いてショックを受けるお幸。
シマ内でここまでやられて、一蔵は十国組に殴り込むことにする。新堀左吉(待田京介)と番笠銀次(林彰太郎)を組に残し、4人のメンバーを連れていくことにする。お幸が消えた。おきみの病院を一蔵が訪ねると、花嫁衣装を着たおきみの亡きがらの横で自害しているお幸。一蔵は、二人の手を結ばせる。八王子から中央線に乗って新宿へ。
龍神組などと甘く見ている神戸たち。そこに斬り込む一蔵たち。参次郎が一蔵を撃とうとした時に、巳代吉が飛び込んできて身代わりになった。参次郎、神戸たちを斬る一蔵。そこには、連れてきた自分の子分たちや十国一家の人間もみな死んでいる。真っ赤に血塗られた座敷の中を歩く一蔵。
日本任侠道というタイトルそのままに、任侠のしきたりが、横内正のナレーションで語られる。非常によく纏まられた映画。映画を楽しみながら、自然とヤクザのしきたりに詳しくなる、ためになる任侠映画。
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