2008年12月27日土曜日

もう、いくつ寝るとお正月か・・・。

    阿佐ヶ谷ラピュタで、昭和の銀幕に輝くヒロイン第44弾 乙羽信子。58年宝塚映画木村恵吾監督『野良猫(384)』。大原君江(乙羽信子)は、金龍という妹芸者だった留田春子(環三千世)を頼って、河内から大阪ミナミに出て来た。春子の旦那の浮田五郎(山茶花究)は、帝国モダン芸術会と言う怪しげなヌードスタジオを経営している。ヌードモデルなら1日500円稼げるのだ。久しぶりの再会に夜はご馳走を作ると、春子が買い物に出ている隙に、浮田はモデルとしての試験で全裸になれと言う。盲腸の手術跡が大きいので難しいかもと言っておいて、魚心あれば水心と迫る浮田。すがる気持ちで身を任せる君江。そこに春子が帰宅、大阪での仕事がなくなった君江。仕事を探して闇市をさ迷う君江。女プロレスの訓練所を覗いていると、倉田忠平(田崎潤)にレスラーにならないかと言われるが断る君江。  飯やの看板を見つけ食事をしていると隣の工夫が自分の鮹の皿を君江に押し付けたことで、お金が足りなくなる。奢ってくれた親切な男は勿論下心から。金をやるからどうだと誘われ、仕方なしに頷く君江。男は、倉本に隣の部屋を借りる。その部屋の持ち主は、村上兵太郎(森繁久弥)。兵太郎は、かって飛田新地で3代続く遊廓の主人だったが、妻子が出て行ってから、捨て鉢な生き方で極貧の生活を送っていた。君江は、かって兵太郎の遊廓から足抜けした紅若だったのだ。
昔を懐かしむ2人。無一文の2人には夢も希望も無い。2人で死のうと思う。考えあぐねた末、汽車に飛び込むことにした。逡巡し、なかなか死ねない2人。いよいよとなった時に、君江がつわりを催す。河内の悪い男の子で3ヵ月だと言う。兵太郎は、自分たちは死ね決意をしているが、子供の意志はどうなんだろうと言い、自分が今のような自堕落な生活を送っているのは、今3歳になる息子に会えないからだと付け加えた。2人は生きて行くことに、日の出だ。朝日を浴びて線路を歩いていく2人。
線路沿いで、汽車に飛び込もうとするが、死にきれないやりとりが最高だ。乙羽信子さんは、足が本当に綺麗な人だったんだなあ。少し頭が緩いというか、貞操観念が少し希薄な、不幸な身の上だが、明るい女性の役が素敵だ。
    神保町シアターで女優・山田五十鈴。52年新星映画/前進座山本薩夫監督『箱根風雲録(385)』。箱根権現に近在の百姓が筵旗を掲げて集まってくる。水乞いの儀式のためだ。芦ノ湖は満々と水を湛えているが、この湖水の利用は出来ず、いつも水不足に悩まされ、米麦も採れず、蕎麦、ヒエ粟しか採れない。水呑百姓どころか満足に水も飲めないのだ。箱根権現の大僧正快長(河原崎国太郎)を商人友野与右衛門(河原崎長十郎)が訪ねてくる。箱根の湖尻峠に穴を掘って、三島側に流し、灌漑用水にしたいので承諾して欲しいと言うのだ。気鬱で殆ど引きこもっていた快長は、箱根に来て初めて楽しみに出会ったと言う。しかし、大老、老中、各奉行に呼び出され、事業計画を問い質され、武士の自分たちの用水事業が難航しているのに、町人風情が何か企てているのではないかという言いがかりや、お万の方(内田礼子)の、芦ノ湖は徳川の守り神を祀ってあり、町人の分際で将軍家に弓なすつもりかと責められ、友野は涙する。しかし、大老の酒井雅楽頭(薄田研二)は、弘文院学士林大学頭(嵯峨善兵)に、友野の後ろ盾が日本橋の豪商松村(三島雅夫)であると調べさせた上で、工事の施工
を承認する。
友野は、貧農の若者捨吉(坂東春之助)の才知を認め、自分の土木技術を惜しみなく伝え、図面を引かせる。しかし、捨吉の寝たきりの父は、怪しげなキリシタンの技を使う友野を手伝うことには反対だ。近在の百姓たちも、水が引けて米が作れるとは信じておらず、工事の賃金だけのために働いている。日当が遅れる度に不満ばかり洩らしている。磊落した侍で、盗賊黒鞍隊の大将になっている蒲生玄藩(中村翫右衛門)からマツ(岸旗江)が逃げてきた。玄藩は、友野を攫い、徳川を転覆させ天下を穫るための軍師になれと言う。友野は戦の技術ではなく、民を救うことしか出来ないと断る。マツと捨吉が助けに玄藩のアジトにやってきて無事逃げることができた。
    何年も過ぎ、百姓たちの中に、水不足への思いが薄れ諦観がもたげ始めた頃、坑道に出水があった。命の代金まで払っていないと現場に出ずに、手慰みの丁半博打を始める百姓たち。金が底をつき始めた頃に豪商の松島が江戸からやってくる。喜ぶ友野に、実は勘定奉行から友野への援助を止めなければ、取り潰しにすると言われ、支援中止の謝罪に来たのだ。しかし、松島の話の中でたとえ話の金山という言葉で、出水対策の瓢箪石を思いついて素直に喜ぶ友野と妻のリツ(山田五十鈴)を見て、内密に援助を約束する松島。しかし、そのやり取りは、沼津奉行(加藤嘉)の間者に聞かれていた。沼津奉行の手のものにより、斬られる松島。直ちに、金策の為に旅支度をするリツ。命を賭けている夫の為に、自分も命を賭けるので、万が一自分が死んだら、夫の面倒をみてくれと頼むリツに、名主の妻のイネ(河原崎しづ江)は、友野夫妻の思いを初めて理解する。
瓢箪石の方法で出水を防げると、博打をうつ百姓たちに、手伝ってくれと頭を下げる友野。しかし帰ってきた答えは、日当をもらえなければ仕事はしない。お前の金儲けのために、これ以上のタダ働きはしたくないというものだった。落ち込む友野は、工事から手を引き江戸に帰る決意をする。捨吉は、途中で投げ出すのは卑怯だと言うが、自分の独り相撲だったのではと挫折を感じた友野は承知しない。しかしその時、リツが帰ってきた。すべてを投げうつつもりで、親類から可能なだけ借金をし、また、江戸の屋敷、商売の株まですべてを売り払ってきたのだ。この村に骨を埋めるという夫婦の覚悟は、百姓たちの気持ちを動かす。最も強欲なトラ(飯田蝶子)まで、村人から博打で巻き上げた金を使ってくれと差し出した。しかし、友野は、今まで自分は百姓を救うといった驕った態度だったのではないかと頭を下げる。
    すべての人々の気持ちが一つになって工事は進んでいく。しかし、沼津奉行の妨害工作は厳しくなった。支えに傷をつける隠密。果たして友野は崩れた木材の下敷きに。友野に会ってから心が満たされなくなった玄藩は、盗賊を続けることが空しくなり、現場に来ていた。満身の力で、友野を救う玄藩。それから、身を偽り、百姓に混じって働く玄藩の姿がある。
    いよいよ、両方から掘る鎚の音が聞こえ、開通する。大喜びし、涙を流す村人たち。しかし、幕府の捕り方たちが、やってくる。友野を捕らえようとすると、村人たちが立ちはだかる。必死に止め縄につく友野。しかし、友野を救おうとする百姓たちの思いは誰にも止められない。火縄銃が放たれ、死人まででる事態だ。玄藩は、アジトに引き返し、子分たちを引き連れ友野を取り戻しに馬を走らす。しかし、捕り方たちは、鉄砲隊を幾重にも用意していた。捕り方や奉行を討つものの、絶命する玄藩たち。
   結局友野は、箱根用水の開通とともに、幕府の兇刃に倒れる。しかし、その箱根用水は今でも静岡の田畑に水を供給し続けている。
   江戸時代版「黒部の太陽」みたいなものだな。独立プロとしては、スケールの大きい作品を頑張って作っているといえるのではないか。

2008年12月26日金曜日

悪女は魅力的。

    新宿ピカデリーで、村上正典監督『赤い糸(381)』。竹宮芽衣(南沢奈央)は、父(甲本雅裕)母(渡辺典子)姉(岩田さゆり)の4人家族の中学3年。クラスメートの西野敦史・アッくん(溝端淳平)高橋陸・タカ(木村了)藤原夏樹(柳下大)神谷充(田島亮)山岸美亜(岡本玲)中西優梨(鈴木かすみ)たち仲良しグループ(失笑)。
   文化祭の出し物を決めで、敦史は占い、芽衣は大道具の担当に。タカ、夏樹、充はバンドで筋肉少女隊の「日本インド化計画」をやることに。内気な沙良(桜庭ななみ)を誘うと歌や演奏は出来ないがダンスならということで、美亜と優梨と3人でゴスロリファッションでダンサーに。教室の占いも盛況だ。敦史のもとに幼なじみの麻美(石橋杏奈)がやってくる。父親が自殺し天涯孤独になって力になってくれと言う。敦史が教室に戻ると、芽衣が1人。芽衣を占ってやると言って生年月日を聞く敦史。芽衣は2月29日生まれ。同じ誕生日の人間に会ったことかあるかと聞く敦史。8歳の時に1度だけあると言う芽衣に、更に詳しい話を聞こうとするが、バンドのライブが終わったみんなが帰ってきた。
文化祭が終われば長崎への修学旅行だ。自由行動はグループで打ち合わせろと先生に言われて、8人で話していると、敦史が芽衣に2人で行動しようと言う。みんなに冷やかされるが、2人は帰りに本屋で長崎のガイドブックを買い、芽衣の姉の情報で、ビードロの色付けをやろうと決まった。芽衣を家まで送り母に会う。敦史の名字を聞いて母の名前と近況をはぜか聞く芽衣の母。
  いよいよ修学旅行だ。自由行動の前夜、敦史に入院している母が、病院の前で事故にあったという連絡が入り敦史は東京に帰ることに。その夜、2人は宿舎を抜け出して、長崎の夜景が見える公園に。敦史が自分の初恋を話し始める。敦史も2月29日の誕生日で、8歳の誕生日の雪の日に同じ誕生日の女の子とぶつかって女の子のバースデーケーキを落としてしまった話をする。8歳の誕生日に、2人は既に出会っていたのだ。運命的な縁を感じる2人。キスをし、手を繋いで夜景を眺め、16歳の誕生日を一緒に迎えようという2人。宿舎に帰ると沙良がまだ起きていた。両思いの二人を自分のことのように喜び、自分もタカへの思いを伝えるという沙良。
   翌朝、芽衣は、1人でビードロの絵付けに行くと言う芽衣。夏樹と優梨はカップルで、美亜、充、タカ、沙良は4人で出掛ける筈が、急に芽衣が乗った市電に飛び乗るタカ。驚く芽衣に、1人じゃ心配たがらと言うタカ。しかし、ビードロの絵付けをしている店の前を偶然通り、芽衣とタカが一緒にいることを目撃し、芽衣の携帯に電話する沙良。1人だとつい嘘をつく芽衣。宿舎に帰ってくると、沙良は、芽衣に自分は芽衣を1番大切に思っていたが、芽衣は自分が必要でなかった。嘘をつかれたのがつらい。芽衣の中に自分はいないのなら、自分で自分の存在を消すと言って、宿舎の屋上から飛び降りてしまう沙良。病院の集中治療室の前で、立ち尽くす仲間たち。沙羅の母と芽衣の両親が東京から駆けつける。両親を前にただ泣くことしか出来ない芽衣。実は、母は東京で敦史に会っていた。敦史の母(山本未来)は、覚醒剤の依存症で病院の出入りを繰り返していた。芽衣には出生の秘密があり、そのことに敦史の母が関係していたのだ。敦史に全てを打ち明け、芽衣には理由を告げずに、会わないようにして欲しいと頼む母。
   それ以来夏休みの間も、芽衣からの電話やメールに一切応えなくなった敦史。沙良は大阪に転校することに、放課後沙良の家に走る芽衣たち。沙良はいたが、事件の前後も芽衣たちの記憶を失っていた。大阪で、やり直すので、芽衣たちも沙良のことを忘れるように頼む沙良の母。翌日学校に行くと黒板には、沙良が記憶を失ったのは芽衣だ。死んで詫びろという落書きに溢れている。メールも死ね!ウザい!など酷いものばかりだ。タカは芽衣ではなく、自分を責めろと言う。しかし、芽衣は、沙良の心に自分を恨む気持ちも含めて消えてしまったので、自分が沙良にした事を忘れずにずっと背負っていくと話す。
   ずっと待っていた敦史のメールが来た。しかし、もう好きでもなくなったと言って去っていく敦史。呆然と見送る芽衣。敦史も、母親が入った療養施設の近くに引っ越す。高校受験が近づく。タカは芽衣に同じ高校に受かったら付き合ってくれと告白する。いつも近くで見守ってくれていたタカの気持ちに応えたいと頷く芽衣。合格発表の日、芽衣と美亜は合格したが、タカは落ちた。夜間に進むと言うタカに付き合って、毎日5時に会う約束をする芽衣。
  しかし、次第にタカと芽衣の間はギクシャクしたものになっていく。芽衣がタカを好きになろうと努力していることに苛立つタカは、芽衣を束縛し、思う通りにならないと暴力を振るうようになる。そんな頃、充に同じ学校の好きな子が出来たと美亜から相談される芽衣。放課後に相談すると約束をするが、タカから大事な打ち合わせがあるというメールがある。結局、美亜を取るか自分をとるのかといわれてタカから殴られる芽衣。結局、辛い美亜の話を聞いてあげることができない。美亜は、中学の同級生に誘われ、辛いことを忘れられると言われて、薬に手を出し、学校に来なくなる。美亜と何とか連絡を取ろうとする芽衣。タカからの電話に出ずに、街を探し回る芽衣。偶然、敦志は瞳孔が開き薬に溺れている美亜に会う。薬をやめろと言っているところに、芽衣が現れる。もう薬は辞めて学校に行くと芽衣に言う美亜に、そんな簡単に止められないという敦志。私は美亜を信じると言う芽衣。そこにタカが現れる。何本電話したと思っているんだと叫んで、芽衣を殴るタカに、敦志がやめろとタカを殴る。タカを庇って、自分が相談したかった時に何もしなかった敦志ではなく、自分を支えてくれたタカを信じると言う芽衣。打ちのめされて去る敦志。
  夏祭りの神社、浴衣姿の芽衣は、タカを探しながら縁日の人混みを歩いている。敦志と話しているタカ。何で別れたんだと聞くタカ。好きでなくなったと敦志は答えるが、文化祭の日に芽衣と敦志が話しているのを聞いてしまい、二人には運命的な関係があると思っていたと言うタカ。好きでも付き合えないことはあるんだ呟く敦志。芽衣の携帯にメッセージを吹き込んでいるタカ。自分のことを好きになろうと努力してくくれている芽衣の心に、自分への自信がないために暴力を振るったりしてきたことを詫び、中学時代のような友人に戻ろうと。しかし、吹き込んだあと、神社の前で自動車事故で亡くなるタカ。
  2月29日ファミレスで、芽衣の誕生日を祝う美亜、優梨、夏樹、充。ようやく美亜も元に戻った。家に帰ると、父と母が言い争いをしている。母は、姉を芽衣を呼び、二人が離婚すること、また実は芽衣は、二人の実の娘ではなく、亡くなった親友の娘であり、その親友の死には、覚醒剤に溺れた敦志の母が関係しており、そのために自分が敦志に芽衣と別れてくれと頼んだのだと告白する。その頃、スーパーのレジ打ちのパートの遅番に出るが、帰宅したら誕生日を祝おうと言う母を見送った敦志に、療養施設から電話が入る。完治した筈の母は、親類の不幸を理由にした一時退院でしかなく、病院に戻らないので心配しているという話だった。勤めていると聞いていたスーパーに行くと、母はすぐに辞めたと言われる。捜し歩き、母が薬に溺れる原因を作った男の店に行くと母がいる。男は、母は息子を捨てて自分と一緒にいたいと言っていると暴露する。近くにあったアイスピックで男の足を刺す敦志。
  8歳の時に二人が出会ったケーキ屋の前に立っている芽衣。雪が降ってきた。現れる敦志。16歳の誕生日を一緒に過ごそうという約束を二人は果たしたのだ。人間は一生の間に3万人の人に会い、そのうち3000人の人と学校や職場で出会い、300人の人と仲良くなるという話をして、二人が出会ったことは意味があり、きっと自分たちが出会ったことも凄いことだと思わないかと言う敦志。私は、何があっても敦志を信じればよかったと言う芽衣。二人はそれぞれの道に戻っていく。
  うーん携帯小説の映画化らしく、愛とか、信じるとか、運命といった言葉ばかり。そして、みな直ぐ死んじゃう。死んじゃうけど、飛び降りたり自動車事故もテレビのコード以上に全く惨たらしいところは出てこないできれいにラッピングされている。覚醒剤に関しても、心の弱い人間が辛いことを忘れるためのちょっとした逃げ道だ。薄っぺらいなあ。まあ、中学生が考える人生や愛や恋や運命は狭い世界での経験でしかないからしょうがないが、日本の小児的なメンタリティを感じるなあ。しかし、「恋空」の映画ドラマ展開に関するTBSの失敗を踏まえて(苦笑)、CXはうまくやっているのだろうか。テレビ見てないので何とも言えないが、映画はドラマのオープニングスペシャルみたいなものなのか。何だか、テレビドラマを大スクリーンで見ているようで物足りなさが残る。
   神保町シアター、女優・山田五十鈴51年松竹京都伊藤大輔監督『おぼろ駕籠(382)』。
   当時権勢を誇る若年寄沼田隠岐之守(菅井一郎)の邸宅には、賂をもった多くの人間で門前市をなしていた。隠岐之守の用人生島(山本礼三郎)に、許嫁の三沢が大奥で中藹になるといいう話があるが、それでは一生結婚できなくなるので返してほしいと頼む小野田数馬(永田光男)の姿がある。生島は取り合わず、思いつめた数馬は、城中で隠岐之守に直訴し、皆に取り押さえられ、隠岐之守の門前で腹を召した。それを、目撃していたのは、久しぶりに江戸に戻ってきた夢覚和尚(坂東妻三郎)と、隠岐之守に疎まれ無役になっている本田内蔵助(月形龍之介)。深川の飲み屋で飲んでいると、酔った羽織芸者のお仲(田中絹代)が入ってくる。男嫌いで通しているお仲も、夢覚には好感を持ったようだ。
  一緒に飲んでいると、内蔵助と懇意のコソ泥の蝙蝠の吉太郎(三井弘次)が来て、不思議なものを見たという。深川の水路の傍に、身分の高い女中が載ったおぼろ駕籠が灯りも灯さず2提見かけ、なんだろうと思っていると、一提が信濃屋の別邸に入って行った。大奥の女中と役者との逢引かと別邸に忍び込むと、御殿女中のお勝(月宮乙女)が会っていたのは、旗本の次男坊小柳進之助(佐田啓二)。お勝は、自分が中藹に推挙される話があるが、自分は進之助が好きなので、受けたくないと相談している。進之助は、知人に譲ってもらった刀の金を支払いに行って戻ってくると言って出ていく。進之助が別邸を出てしばらくし、吉太郎が忍び込むとお勝は血だけ残して不在だ。裏木戸に向かって血は垂れており、木戸の向こうは川が流れている。
   翌日、お勝の死体が上がった。一緒に進之助の買ったばかりの刀の鞘も見つかる。昨晩の刀代を払った時に、誘われて賭場を眺めていたという進之助の証言も朝までなんて嘘だと否定され、進之助の進退は極まった。目明しの門前の亀蔵(伊志井寛)は、足跡が二人分あり、高級な紙入れが落ちていたことと、下手人が身元が割れる鞘を死体と一緒に流す訳がないと、進之助は嵌められたと思っている。しかし、火盗改めから、進之助を下手人とするよう圧力がかかる。更に重要な証拠である紙入れを預からせろという火盗改めに、亀蔵は中に入っていた家紋入りの紙を抜いて渡す。
   酔った夢覚和尚が歩いていると、捕縛される前に、家のために自害せよと叔父や兄(安部徹)たちに迫られ逃亡、追いかけられている進之助を救う。内蔵助の屋敷に逃げ込むと、小野寺家がやってきて引き渡せと言う。拒否する内蔵助。内蔵助と夢覚は、進之助が死んだことにする。河原の乞食たちの中に混じって夢覚と進之助は暮すことに。お勝担当の御前女中だったお蝶(折原啓子)は、事件が起きて宿下がりして以来、内蔵助と夢覚に進之助を助けてほしいと頼んできていたが、徐々に進之助といい感じになってきている。吉三郎は、亀蔵の家に忍び込み、証拠の家紋入りの紙を盗んで夢覚に渡す。
徳川家の代参法要に、中藹三沢(山田五十鈴)がやってくるという話を聞いて、吉三郎とお蝶は、紙入れの紋を確かめに。果たして、お勝殺人の現場の紙入れは三沢のものだ。しかし、吉三郎やお蝶は、怪しげな風体の者たちに捕らえられてしまう。
   夢覚とお仲は、代参法要のあとに、三沢が高級割烹の四季庵に廻ることを知る。四季案の離れでは、三沢と隠岐守の要人生島が話している。生島は、火盗改めから手に入れた三沢の紙入れを見せ、三沢を脅す。もともと、三沢は、隠岐守が殿中の権勢を確実なものにするため中藹に押したのだが、お勝を殺したのは三沢の考え。重要な証拠があるのを、なんとか進之助に罪を着せようと手を打ってきたのだ。生島は、紙入れを自分の手に置くことによって、自分の力としようと考えたのだ。表情一つ変えずに、癪を起したふりをして、女を武器に生島を懐柔しようとする三沢。二人が抱き合っているところに、夢覚が現れる。三沢を誘拐し、外に待たせた駕籠に乗せ、お仲に預ける。生島の立てた追手を倒して、追う夢覚。
   信濃屋別邸に連れ込んだ三沢を前に、お勝殺しを認めろと迫るお仲。さすがに、大奥中藹を務める三沢は、平然と否定するが、許嫁小野田数馬の死の真相を聞いて、顔色が変わる。隠岐守からは、病死したと偽りを教えられていたのだ。自害しようとする三沢の小太刀を取り上げる夢覚。死ぬ前に、罪の償いをしろと言うのだ。
   夢覚は、隠岐守の屋敷に、大僧正の扮装で大行列をしたてて乗り込む。出迎えた生島は、自分の目の前で三沢を誘拐した男の顔に驚く。隠岐守の面前で、河内山宗春ばりに、今回の事件の真相を話し、小野田数馬の無罪を認めろという。土産だと持参した京人形と書かれた箱を開けると三沢が入っている。隠岐守の傀儡で罪を犯した生き人形だと言う皮肉だ。隠岐守は、認めざるを負えない。退席する前に、このくらいのことを仕切れない用人生島を責め、解任する。三沢は、夢覚に、これで自害していいかと聞いて、小野田数馬の後を追う。
   河原の乞食たちが、飲み騒いでいる。三味線を弾き喉を披露しているお仲。夢覚に生き返してもらた進之助の侍姿への着替えを、手伝うお蝶。夢覚たちも当てられ気味だ。三沢、お勝ら政争の具にされ命を失くしたおんなたちを、不幸だと呟く夢覚。お仲は、夢覚の後ろ姿に、「わたしは?」と問いかけるが、何も答えず去っていく夢覚。お仲の目にあふれる涙。
   主役は夢覚和尚を演ずる坂東妻三郎だが、権力者の陰謀を暴いていく社会派推理小説のような展開なので、チャンバラシーンは、あまりない。まして破戒坊主でも、坊主の自分に殺生させるのかと言いながらの殺陣、あくまでも受けて逃げるための刀や、金剛杖だったりするので思い切りは悪い。全盛時のバンツマのチャンバラを知らない、お恥ずかしの自分にはもちろんつべこべ言えないし、もの足りないとも思わないが、旗本本多内蔵助の月形龍之介の、動かないかっこよさが目立つ。思わずワイズ出版「月形龍之介」を買い求めてしまう(苦笑)。スチール写真の眼力凄いなあ。
   58年松竹大船渋谷実監督『悪女の季節(383)』。 大金持ちの八代(東野英治郎)は、人間ドックを受け、何万人に1人の健康的な肉体だと、医者から誉められる。68歳の八代は、20歳は若いと言われ、帰宅し、妻の妙子(山田五十鈴)に100歳まで生きると大威張りだ。妙子は陰で診断書を破り捨て冗談じゃないと怒る。彼女は、芸者をしていてひかされたが、籍を入れてくれる訳でも、2号のようにお手当を毎月貰える訳でもなく、無給の女中を20年近くさせられてきた。転がり込む遺産のことで我慢してきたのに、この生活が何十年と続くと考えると冗談ではない。
   焼き肉を食べて、八代が眠ったのを見て、ガス栓を開いておいて、1階のばあやに風呂を焚くと言って元栓を開けさせた。ばあやはかなり耄碌しており、主人の顔を忘れるほどだ。風呂に入りながら、様子を窺う妙子。しかし、白タクの運転手で、妙子のかっての客だった片倉(伊藤雄之助)が、車の月賦の無心をしようと家に忍び込んできたことで、間一髪八代は助かる。片倉は、ガス漏れに不審を抱き、妙子にカマをかけ、警察に話に行くと脅して、白状させる。しかし、金と八代の眼球だけが欲しいだけの片倉は、矢島殺しの片棒を担ぐことに。妙子と片倉は、殺し屋の秋ちゃん(片山明彦)に手伝ってもらうことに。色々考えを巡らすがうまく行かない。
   そこに妙子の娘の眸(岡田茉莉子)がやってくる。眸は義父の八代に、今後一切縁を切るので、百万くれと頼むが、八代の方が一枚上手で、ちゃんと結婚して届けを持ってきたら、お祝いとして百万をあげるとはぐらかされる。眸の百万は、ヌードダンサーをしている友人の美美(岸田今日子)に車の代金を払わなければならないのだ。もう待てないと言われて、ピストルを渡される。眸は、自分で手を下そうと、八代の寝室に忍び込むと、ベッドにナイフを突き立てる影が。灯りを点けると八代の甥の慎二郎だ。彼は、死の直前の母親から船員だった叔父の八代が、南米で成功した父親の全財産であるダイアモンドを横取りするために、ヨーロッパで狩猟時の事故を装って父親を殺したのだという告白を聞いていた。その口止めのために、母親を自分の女にした非道な男の八代に復讐するのだと言う。協力するという眸。二人は、バイクで都内の街を走り、キスをする。
    八代と妙子は、片倉の運転する車で山道を走っている。浅間にある別荘に向かっているのだ。3人の乗る車を、バイクの集団が追い抜いていく。その中に慎二郎と眸の姿を見つけて驚く八代と妙子。別荘に着くと、バイクの若者たちが庭を占拠している。あまりの騒がしさに、八代は、裏山続きの気象観測所に泊まらせて貰おうとするが、教授からは学生たちが多く物置しか空いていないと言われる。それでも騒がしい自分の別荘よりはいいと言って移る。しかし途中、別荘の防空壕に入り缶詰などの裏側にある隠し扉を開け、宝石箱を入れ替えている。
   夜になり、眸に促されて慎二郎は八代にナイフを向ける。八代は、母親の話を、有名な小説の話で、自分は、全財産を慎二郎に譲るつもりでいるのだと言い、慎二郎は説得され戻ってくる。小説の話かどうか、明日図書館に確かめにいくのだと言い出す慎二郎に呆れる眸。八代のもとに、殺し屋の秋ちゃんが現れる。八代の殺しを頼まれたが、あまりにギャラが安いので、情報を教えるので金をくれと言う。依頼人は妙子で、八代を怒らせて心臓発作を装って殺そうとしているのだと言うと、まさに妙子と片倉がやってくる。八代のベッドの陰に隠れる秋ちゃん。片倉に脅され貞操の危機にあると訴える妙子。真実を知っている八代は、妙子と片倉がどう話そうが、全く動じない。
   翌日、山を下りて図書館で、八代に担がれたことを知って怒る慎二郎。自分の言ったとおりだと言う眸。山に戻る二人。秋ちゃんは、八代が財産をどこかに隠していることを知って、穴を掘っている。そこから出てきたのは、旧日本軍の不発弾だ。しかし秋ちゃんはこれが八代の隠した宝石箱だと信じて疑わない。開けようと金槌で叩いていると暴発、秋ちゃんは爆死、近くにいた慎二郎も巻き添えを食う。重症で唸っている慎二郎の前で、八代、妙子、眸、片倉が言い争いをしている。妙子の女の武器も、真実を知っている八代には通じない。妙子と眸は、掴みあいの大ゲンカをする。その最中、慎二郎は死ぬ。お前に全財産を譲るつもりだったと言い、天国に持って行けと言って、気象観測用の気球に宝石箱をつけ放す八代。片倉と眸は、漂う気球を追いかけていく。別荘に残った妙子と八代。八代は、あの宝石箱は偽物だと言う。妙子は、別荘の猟銃を取り出し、八代に突き付け、本物の宝石箱を取り立たせる。蓋を開けると、手元のものは偽物だった。八代の勘違いで本物を飛ばしてしまったのだ。殺せるものなら殺してみろという八代に、引き金を引く妙子。弾は当たらなかったが、八代は心臓発作を起こして倒れる。
  いつのまにやら気球を追って浅間山の火口に、片倉と眸は来ている。そこに妙子が現れ、八代は死んだという。気球は火口の入口に止まっている。もう疲れたから三人で山分けしようと言う片倉に同意するふりをして、片倉を突き落とす眸。眸と妙子はつかみ合いになるが、縺れ合ったまま火口に落ちていく。強い風が吹いて再び、浮き上がる風船。火口に、立ち上がった片倉らしい姿が見えるが、硫黄煙にかすんでよく見えない。
  岡田茉莉子の悪女がキュートだなあ。丸く大きな瞳をくりくり動かす表情は、本当にかわいい。

2008年12月25日木曜日

サラリーマンは気楽な稼業と来たも~んっだ。

  家で探し物。片付いていたものも引っ張り出して、散らかる。大掃除のやり直しのような状態に。
  夜は、青山マンダラで、植木等生誕祭というライブに。かって、元の会社所属だったNUUという女性シンガーソングライターが企画したイベント。かって、担当していた今は粥屋のSに誘われて、後輩Kと。音楽ライターで、代官山のライブハウスのブッキングマネージャーをしているKさんと、本当に久しぶりに再会。元の会社のアーティストやらスタッフの話をする。NUUが、クラリネット、ギター、パーカッションをバックに編成したものと、クモノス・カルテットという7人編成(?)のグループが、クレージーキャッツの曲を中心に。
  近くの「とちの樹」で遅い食事。何だか、ご機嫌で酔っ払って歩いていると、駅に着かない(苦笑)。うまい具合にタクシーが通りかかって、乗ってしまう。運転手さんは、ずっと今の政治に怒っていた。
  

2008年12月24日水曜日

悲しい女が似合う女優坂井真紀。

     渋谷シネマヴェーラで、官能の帝国ロマンポルノ再入門2
     83年日活中原俊監督『3年目の浮気(378)』。専業主婦の京子(門万里子)と、人形メーカーの企画部に勤めるサラリーマンの秀樹(阿部雅彦)は結婚して3年目。秀樹は会社のOLで、最近パパと別れたばかりの知美(林亜里沙)に迫られ浮気をしている。妻の京子は水泳教室のコーチ川又(金田明夫)に独身だと言っている。隣に住む大家の夫婦、斉藤又一郎(鶴田忍)、博美(朝比奈順子)は、非常にSEXにオープンで積極的だ。ヒロシ&キーボーの「三年目の浮気」のヒットで企画された、3年目の少し倦怠期を迎えた夫婦の危機を描くコメディー。
  未見、根岸吉太郎脚本、中原俊監督ということで、少し期待していたが、まあ、ロマンポルノの末期。手慣れた作り方ばかりが目について、退屈だった。
 78年日活田中登監督『人妻集団暴行致死事件(379)』。
   東京から荒川を渡った埼玉県吉加谷市の旧住民の若者有田善作(酒井昭)20才は、ガス会社のガス管埋設の仕事をしている。その日は、大雨で仕事は中止に、ガールフレンドの八重子(志方亜紀子)と食事をして「ロッキー」を見た。3回目のデート、なんとかモノにしたいと迫るが、拒絶される。農家の息子池本礼二(深見博)19才は、鋳物工場を辞めて、家の畑を手伝っている。職安に失業保険を貰いに行くと、中学の1年先輩の歌川昭三(古尾谷雅人)20歳に会う、白タクをしている昭三はキャバレーで働く元スケバンの尚子(日夏たより)と優子(岡麻美)を紹介してくれると言う。優子は頼めばやらせてくれるというのだ。女将(絵沢萌子)の飲み屋ヤマサトで、3人は再会。直子たちの勤めるキャバレーに行こうとするが、所持金が足りない。そこに荷台に卵を積んだ車が止まっている。捌くルートを知っていると言って自分たちの車に積み替えさせる昭三。しかし、直子たちのキャバレーはもう閉店していた。川に卵を投げ捨てる3人。
   翌朝、善作と礼二は家族に起こされる。昨晩の卵泥棒が通報され、既に昭三は警察に捕まっているという。礼二の祖父は、被害者の江口泰三(室田日出男)のもとに2人を連れて行き、謝らせた上に、金を払って示談にしてくれるように頼んだ。泰三は、元々上野で香具師をしており、人がいい。警察に直ぐに行き、昭三も貰い下げた。3人に焼き肉を奢った上に、後の小遣いまで渡す泰三。その金で、尚子と優子を誘い、3人は思いを遂げる。しかし、善作と礼二の性欲に油を注いだことにしかならなかった。善作と礼二が帰宅すると言うので、昭三は実家に帰る。藍染めを営む父親(小松方正)は、他の2人は親が動いてくれたので、警察に入らず済んだのに、酷い親だという昭三に、こんな親不孝な息子は知らないと言う。父子2人殴り合いだ。兄は笑っているだけだ。母親一人とりなそうとするが、まずは謝れしかいわない母に、昭三はいたたまれず、家を出る。
   昭三がアパートを借り、引っ越し祝いをすることになる。直子たちも来るので、いつもお世話になっている泰三も呼ぼうと言うことに。しかし、礼二が泰三を連れてアパートに行くと女の子はいない。団地の大学生たちにドライブに誘われて帰ってしまったのだ。せっかくの若い連中の好意に応えようと、酔わせると裸になると言う噂のヤマサトの女将を呼ぶ。盛り上がったが、部屋の中で小便までしてしまう女将。酔った女将を途中で撒いたが、泰三は酔いつぶれてしまった。3人は送って行くが、泰三の家に着いた時、泰三の妻枝美子(黒沢のり子)を強姦してしまう。江梨子は心臓が悪く死んでしまう。
  日活ロマンポルノの中では、傑作としてあげられることの多い作品。長部日出雄の原案をもとに、佐治乾脚本。古尾谷雅人がセンセーショナルに登場した「女教師」に続いて、また確か「嗚呼!!花の応援団」のオーディションから出てきた深見博らが、ギラギラした近郊の不良少年として好演、また「サード」でデビューした志方亜紀子と、当時は「音楽」から久しぶりの登場の印象だった黒沢のり子という二人の少年たちの欲望に花を散らす無垢なヒロイン二人など、見るべきものはたくさんあるが、何よりも、干されていたピラニア軍団の兄貴分の室田日出夫が、非常に力が入った素晴らしい演技を見せる。
   ヒューマントラストシネマ文化村通りで、熊切和嘉監督『ノン子36歳(家事手伝い)(380)』。
   ノン子は、かって売れない芸能人だった。マネージャーだった夫宇田川(鶴見信吾)と離婚し、実家の神社に戻ってきている。何もなく、行き場のない田舎町へのやりきれなさに、ノン子の屈託は深まるばかりだ。神主の父(斉木しげる)は、自堕落な娘に腹を立て、母(宇都宮雅代)は、殺伐としたノン子の気持ちを持て余し気味だ。同級生の富士子(新田恵利)に会う。やはりバツイチだが、母親から引き継いだ和風スナック藤のママをしている。
  ある日、若い男マサル(星野源)が神社を訪ねてきて、お祭りの時に店を出させて欲しいという。縁日は香具師の仕切りなので、安川時生(津田寛治)のところに何故かノン子が連れて行くことに。神主修行中の義弟の要領を得ない連絡のせいて、何度も無駄足を踏む2人。やっと会えた時生は、届け出や他の店への承諾が必要なので駄目だと言う。しかし、ワタルは、香具師は義理と人情の人なので、最後には承諾してくれるだろうと判断する。
  富士子の店で、煙草を買ってくると言って放り出されたマサルは、なぜかお祭りの日まで、ノン子の家に居候することになる。ノン子の父は、薪割りなどの手伝いをさせる。不器用で、しかし何かをしようとしている若者にノン子の気持ちは動き始めている。元夫の宇田川が、復帰の話をもってやってくる。断りながら、しかし気持は揺れ、一夜を共にしてしまうノン子。
   ひよこが詰められた沢山の段ボールが届く。マサルは、オスのひよこが破格の値段で売ってもらえることを知って、夜店で売って、ひと儲けしようと考えたのだ。しかしお祭りの日、大雨が降り、延期になってしまう。泥だらけのひよこを一つずつ洗っているマサルを見ているノン子。逃げたひよこを二人で追いながらいつのまにやら笑顔が戻っているノン子。マサルと結ばれるノン子。この街を出ることにしたというノン子に、お祭りが終わったらいっしょに旅しようというマサル。しかし、ノン子の街を出るという意味は、東京に出て、もう一度やり直すという意味だ。
  ようやく、お祭りの日がやってきた。いきなり、時生に、土下座をしてひよこを売らせてくれと言い出すワタル。驚きながら、断った筈だという時生。お前らは義理人情じゃないのかというマサルに、お前には義理はないという時生。時生にしがみついて許すまで離れないというマサルを、香具師の若者たちが引き剥がして、痛めつける。ノン子の父親が止め、とにかく出て行ってくれとマサルに言う。
 そのころ、ノン子は、巫女姿で祭事を手伝う筈だったが、怪しげな変装をした元夫の姿を見つける。東京に戻るというノン子に、いきなり土下座した宇田川は、再デビューの話は嘘で、先日は借金の保証人になってもらいに来たのだと謝る。更に、富士子が借金の相談に乗ってくれるので、もうノン子は無用になったと言う。キレるノン子が家に戻るところを、ボコボコにされたマサルが追いかけてくる。祭りのお囃子が鳴っている。うるさい!と叫んでうずくまるノン子。気がつくと、お囃子の音とマサルの姿が消えている・・・。
   この後の破天荒な展開とあっけないエンディングは、新作だし書かない。好き嫌いは分かれるだろう。しかし、自分は、「鬼畜大宴会」に感じた違和感が少し弱まった。熊切監督よくなったなあという感じだ。自分勝手に思い込んだストーリーで他者に期待していたことを裏切られて、暴力的な衝動でぶち壊してしまうマサルは、最近の無差別殺人に通じるものを感ずる。ノン子が出した結論は、こういう感じなんだと思う。坂井真紀、「連合赤軍」といい、救いのない少し痛い女の役が似合う女優になったな。
  地元でミニ忘年会。今日も少し飲みすぎに。

2008年12月23日火曜日

山口美也子さんの登場は、衝撃だった。

   天気もいいし、日だまりで、惰眠と読書。気持ちいいなあ。
   気がつくと午後に。2時過ぎには、ようやく目も覚めたので、遅昼を西荻で済ませ、渋谷に。
  渋谷シネマヴェーラで日活ロマンポルノをやっているのだ。官能の帝国ロマンポルノ再入門2
77年日活神代辰巳監督『悶絶!!どんでん返し(376)』。 東大出のエリートサラリーマン北山俊夫(鶴岡修)は、父親が常務の会社で係長をしている。父の秘書の長谷川久美子(宮井えりな)と交際し順調な生活を送っていたが、ある日会社の人間に連れられて行ったキャバレーメキシコで朱美(谷ナオミ)というホステスに会い、彼女のアパートに行ったことから人生が変わった。朱美の情夫の川崎竜二(遠藤征慈)が出てきて、無理矢理俊夫を犯したのだ。トイレに立てこもり泣き続ける俊夫。
   やっと解放され出社するも、常務の父親には怒られ、尻も痛くて最低だ。しかし、夜は久美子とレンタルルームで関係を持つ。竜二は、舎弟の丸山(粟津號)と、スケバンのみどり(牧レイカ)たちを使って美人局をやっている。スケバンたちを脅すために、大組織山下組とさも関係があるかのように装うが、どこの組織にも入っていない半端者だ。みどりが引っ掛けた老人は、心臓が悪く竜二と丸山が飛び込んだら腹上死、埋め立て地に捨てに行くが穴を掘り埋めるのはスケバンたちだ。次の客は俊夫だ。スケバンと丸山を追い出し、俊夫にのしかかる竜二。最初は抵抗していたものの、いつしか快感を覚える俊夫。
   竜二と朱美、俊夫の3人の生活が始まった。俊夫に夢中で、次第に朱美を構わなくなる竜二。徐々に女装していく俊夫、朱美と俊夫の立場は逆転する。ついには竜二と俊夫は、神前で血書で永久の愛を誓い合う。丸山と惚れあうようになっていたみどりは、男を取らなくなり、それを俊夫は竜二と一緒になって締める。今月の上がりの計算が出来ず、中学中退だからと言う竜二。俊夫は、トウダイよというので、どこの灯台だ?と聞く竜二。東京大学よと答える俊夫。徐々に、スケバンたちからの上がりの回収は俊夫の仕事になった。
   アパートに久美子がやってくる。お金を払うので、俊夫を返してという久美子に、爆笑する朱美。
久美子と朱美がつかみ合いの喧嘩をしていると、俊夫が戻ってきた。女装し、更に豊胸手術までしている恋人の姿に愕然とする久美子。父親に二度と戻らないと伝えろと言って、俊夫は買ってきたケーキを、久美子の顔に押し付ける。ケーキをぶつけ合う三人。
   彫物の入った痩せぎすの男を、引っかけたときに、刑事に踏み込まれる。刑事と揉み合ううちに、客を脅すために持っていたナイフで刺してしまう竜二。あわてて、家に戻って、朱美に逃げると言う。私も連れて行ってという俊夫に、お前なんか連れていたら目立ってしょうがないので駄目だという竜二。待たせてあった車に乗り込む竜二と朱美。車の後ろに必死にしがみつく俊夫。振り落とす竜二たち。道に転がり落ちる俊夫。崩れた化粧を隠しながら、艶然と微笑む俊夫。
   77年日活曾根中生監督『新宿乱れ街いくまで待って(377)』
   女優志望の山口ミミ(山口美也子)は、新宿ゴールデン街のママ揺子(絵沢萌子)の店で働いている。彼女にはシナリオライター志望の沢井(神田橋満)がヒモのように付いている。夜毎クリエーターの卵や虫のような人々が集まっては、飲み騒ぎ喧嘩をしている70年代のゴールデン街。そこでは、世の中に認められない屈託や、自分の才能に対する不安が澱んでいる。沢井が書いたシナリオは没になる。ママは、ミミに、店の客の映画監督三浦護(渡辺護)に沢井を紹介したらと言う。女たらしで有名な監督は、ミミに次の映画に出ないかと言い、キスをしたらしい。嫉妬する沢井。沢井はディスコで10代の少女をナンパしてホテルに連れ込むが、役に立たない。しかし、不良少年二矢(清水浩一)に殴られる。原稿を書くでもなく、ミミの金で怠惰な毎日を送る沢井にキレるミミ。しかし、結局、喧嘩の後の強引なセックスは、毎日を何も変えやしない。ミミは、監督と飲み自宅に案内をする。階段に座っている沢井。「幕は自分で下ろせ」と言って帰る監督。何で寝るんだと聞く沢井。寝ることに理由なんてないと叫ぶミミ。急にウィスキーをラッパ飲みして暴れるミミ。倒れて寝てしまう。以前からミミに気があるピンク映画の助監督正平(堀礼文)に、やれと言うが、タオルをかけ正平は帰った。
   海を見に行くと書置きを残して、ミミが出かけた。男と行ったんだろうと酔いつぶれる沢井は、ママの揺子を家に連れ込んで寝てしまう。翌朝、ミミは帰っきて、事情を察し、別れるために戻ってきたと言って、沢井の荷物を外に出す。揺子は、ミミに消毒液の臭いがしたので、たぶん中絶してきたのだろうと、沢井に告げる。
   ミミは、三浦監督の新作「性少女マコ」での主演デビュー記者会見に出席している。記者たちの取材を受けるミミ。揺子の店で、お別れパーティをやっている。祭りのような盛り上がりだ。ミミは、見納めだと言って裸になる。店を出た沢井の足を、待ち伏せしていた二矢が刺す。おんなのためにそこまでやるのかと沢井は問いかけるが、二矢は答えずに去る。痛てえなあと言いながら立ち上がる沢井。
   懐かしいなあ。どっちも、シナリオ持ってたくらいだからなあ。当時、何度も見たので、ほとんどセリフまで覚えている。こういうシナリオ書きたくても、ガキ過ぎて全く駄目だったこととか、走馬灯のように思い出される。
  山口美也子さんもよかった。それまでの日活ロマンポルノの女優さんは、白川和子さんや宮下順子さんたちのようなピンク映画から叩き上げた女優さんか、平凡パンチのグラビアとかから出てきたような色っぽいセクシー女優や、どこかに転がっていたのを誰かが拾ってきたような不良少女が多かったし、所詮ポルノ映画、裸になって、客を興奮させればいいので、たたき上げで現場を沢山通ったピンク映画出身の女優さん以外、芝居は二の次、三の次、アフレコなのでセリフは本当に棒読みだったが、山口美也子さんは違った。この映画のミミさながら、自分たちの近くから出てきて、ポルノのための裸というよりは、映画のための裸になっている気がしたものだった。
   とはいえ、ゴールデン街は、当時金もない18位の自分には、誰か先輩やOBに連れて行ってもらう時しか味わえない大人の街だった。それも、小さくなって飲んでいると喧嘩が起きて更に小さくなれ小さくなれと心の底で祈ったり、歩いていると客引きのオカマのお姉さんにからかわれて厳しかった思い出ばかりだ。しかし、この映画に出てくるブラックシープというディスコは、フィリピンの生バンが入っていて、ここはお馴染だと嬉しかった思い出も。
   観客若い人多いな。女性の姿もかなり。日本映画底辺の時代、東映と日活の映画には、なにか殺伐として荒涼としながら変な熱気のようなものがあった。
   場内BGMは当時のサントラを流しているので、かなり雰囲気出てるけど、殺伐さはなく、普通の映画館。AV世代には、ポルノ映画という感覚もないだろうし。山口美也子さんの裸を見ていて、なぜか「俺たちに明日はないッス」の安藤サクラの裸を思い出す。
  そういえば、昔は場末の映画館は禁煙じゃなかった。どうして大丈夫だったんだろうか(苦笑)。

2008年12月22日月曜日

あぁ二日酔い。

  あぁ二日酔い。むちゃくちゃだるい。家で飲み会やると帰宅しない分楽だけど、起きている間飲んでいるので、酔うなあ。午後3時からだから何時間飲んでいたのか。いつから寝ていたのだろう(苦笑)。明け方、喉が渇いて目が覚めると、約1名ホットカーペットに寝ている人間がいて、トイレから出ると消えていた。寝ぼけていたのかとびっくりする(笑)。午後イチから再就職支援会社でリクルートエージェントの講演があり、申し込んでいたのだが、スーツを着て中央線に乗り、中野駅あたりで、絶不調に。新宿で下車し、コーヒーを飲みながら休んでいると復活。全く間に合わないので、欠席の連絡を。結局、新宿ピカデリーで映画見ることに。
    リドリー・スコット監督『ワールド・オブ・ライズ(374)』
    CIAの中近東担当エージェントのフェリス(デカプリオ)は、イラクでイスラム過激派との戦いに明け暮れていた。ヨーロッパでの自爆テロが続き、組織の情報の入手が求められる。上司のホフマン(ラッセル・クロウ)は、ワシントンの家庭生活の合間に、無人偵察機での監視映像と、世界中から傍受した電話、ネットなどの情報に基づいて、携帯で指示を送ってくる。しかし、アナログな手段でやりとりされる重要事項は、現場ど命をやりとりしたないと得られない。結局、フェリスは、イラク人助手とともに、アジトを襲って貴重な情報を入手するが、一味にやられ助手は死亡、その吹き飛んだ骨がフェリスの身体中に刺さった。傷が癒える間もなく、ホフマンからヨルダンのアンマンのアジトへ向かえと言う指示が。助手の遺族への補償を要求するが、ホフマンは認めない。
    フェリスは、ヨルダンのCIA支局長を首にして後任に。ヨルダン情報局長のハニに、情報を渡して、協力を要請する。紳士然として理知的なハニは、アラブ語が堪能で、頭の回転も速いフェリスが気に入ったが、嘘をつくなと言う。アラブでは、何よりも信頼関係が大切だ。ホフマンがワシントンで子供の通学の送り迎えの途中で、フェリスに相談なしで指示した裏工作は、フェリスをピンチに。なんとか阻止したが、フェリスは野犬に咬まれる。狂犬病のワクチンを打ちにいった病院でフェリスは、看護婦のアイシャに会う。今度は、アムステルダムの市場で爆弾テロが、日本人を含む観光客を爆死させた。なかなか、止められないホフマンは焦る。再びフェリスに言わずに打った手は、ハニを激怒させ、フェリスは国外退去になる。
   ワシントンで失意のフェリスは、アラブの現場を知ろうとしないホフマンを非難する。アラブの現場と自分で言ってうまい謀略を思いつくフェリス。ヨルダンの成功した建築家のサディキを、ある秘密組織の代表に仕立て上げ、トルコでの仕事発注と呼びだしておいて、トルコの米軍基地を爆破、犯行声明をサディキ名で行ったのだ。組織のリーダーのアル・サリームは引っかかって、動き出す。しかし、サディキは、アル・サリームの接触にアメリカ人にはめられた旨を告白して殺される。
   アイシャが誘拐される。組織からの呼び出しに、単身出向くフェリス。砂漠に連れて行かれる彼を無人偵察機は捕えていたが、砂埃を上げて複数の車が違う方向に走り去ることで、完全に巻かれてしまった。アル・サハリたちに、激しい暴力を振るわれる。指をハンマーで潰され、殺される寸前に、ハニの部隊が乱入、フェリスは救出され、アル・サハリも逮捕された。アイシャを誘拐し、フェリスを捕え、アル・サハリに引き渡したのはハニの作戦だった。アイシャたちは、安全に保護されていると言うが、なかなか信じないフェリス。しかし、ハニの打つ手の見事さは認めざるを得なかった。
    アル・サハリを捕え、組織をつぶしたことで、フェリスにワシントンでの昇進についてはなしに来るホフマン。しかし、フェリスは、CIAを辞めて、アラブに残ることを選ぶ。アイシャが働く病院の外から、彼女が元気に仕事をしているのを見つめるフェリス。
    この間観た「リダクテッド」と、この映画はイラクでアメリカがしていることの上と下ということかもしれない。挟み撃ちにされたアジア人の非戦闘員の死体の山。これは、やはり「アラビアのロレンス」を見て、アジアの東の端にいて、西端のことを思うしかない。
     矢口史靖監督『ハッピーフライト(375)』。
     羽田発ホノルル行きのジャンボが離陸し、計器のトラブルで羽田空港に戻ってくるまで、機材トラブルや、離陸時のカモメの激突や、台風の関東上陸や、様々な乗客トラブルなど、襲いかかるありとあらゆる苦難の数々とともに、新人スッチー(綾瀬はるか)と機長昇進の実地試験中のコーパイ・副操縦士(田辺誠一)の成長譚をメインにしながら、運航に関わる多くのスタッフ、空港に屯する航空マニアや、乗客たちの群像劇。矢口監督の細やかな観察力をもとに、よく構成されている映画だと思うが、それ以上でも以下でもない。無難な映画だな。全日空の宣伝映画としてなら、素晴らしい出来だと思うが・・・。

2008年12月21日日曜日

自宅忘年会

  拙宅で、手料理をふるまう忘年会。作り出すと止まらないので、メニュー多かったかとも思う。しまった砂肝炒め作るのを忘れていた。残った材料どうしようか・・・。家で飲むと酔うなあ。ということで、気がついたら寝ていて、洗いものもされている。沢山来てくれてありがとう。