2008年12月27日土曜日

もう、いくつ寝るとお正月か・・・。

    阿佐ヶ谷ラピュタで、昭和の銀幕に輝くヒロイン第44弾 乙羽信子。58年宝塚映画木村恵吾監督『野良猫(384)』。大原君江(乙羽信子)は、金龍という妹芸者だった留田春子(環三千世)を頼って、河内から大阪ミナミに出て来た。春子の旦那の浮田五郎(山茶花究)は、帝国モダン芸術会と言う怪しげなヌードスタジオを経営している。ヌードモデルなら1日500円稼げるのだ。久しぶりの再会に夜はご馳走を作ると、春子が買い物に出ている隙に、浮田はモデルとしての試験で全裸になれと言う。盲腸の手術跡が大きいので難しいかもと言っておいて、魚心あれば水心と迫る浮田。すがる気持ちで身を任せる君江。そこに春子が帰宅、大阪での仕事がなくなった君江。仕事を探して闇市をさ迷う君江。女プロレスの訓練所を覗いていると、倉田忠平(田崎潤)にレスラーにならないかと言われるが断る君江。  飯やの看板を見つけ食事をしていると隣の工夫が自分の鮹の皿を君江に押し付けたことで、お金が足りなくなる。奢ってくれた親切な男は勿論下心から。金をやるからどうだと誘われ、仕方なしに頷く君江。男は、倉本に隣の部屋を借りる。その部屋の持ち主は、村上兵太郎(森繁久弥)。兵太郎は、かって飛田新地で3代続く遊廓の主人だったが、妻子が出て行ってから、捨て鉢な生き方で極貧の生活を送っていた。君江は、かって兵太郎の遊廓から足抜けした紅若だったのだ。
昔を懐かしむ2人。無一文の2人には夢も希望も無い。2人で死のうと思う。考えあぐねた末、汽車に飛び込むことにした。逡巡し、なかなか死ねない2人。いよいよとなった時に、君江がつわりを催す。河内の悪い男の子で3ヵ月だと言う。兵太郎は、自分たちは死ね決意をしているが、子供の意志はどうなんだろうと言い、自分が今のような自堕落な生活を送っているのは、今3歳になる息子に会えないからだと付け加えた。2人は生きて行くことに、日の出だ。朝日を浴びて線路を歩いていく2人。
線路沿いで、汽車に飛び込もうとするが、死にきれないやりとりが最高だ。乙羽信子さんは、足が本当に綺麗な人だったんだなあ。少し頭が緩いというか、貞操観念が少し希薄な、不幸な身の上だが、明るい女性の役が素敵だ。
    神保町シアターで女優・山田五十鈴。52年新星映画/前進座山本薩夫監督『箱根風雲録(385)』。箱根権現に近在の百姓が筵旗を掲げて集まってくる。水乞いの儀式のためだ。芦ノ湖は満々と水を湛えているが、この湖水の利用は出来ず、いつも水不足に悩まされ、米麦も採れず、蕎麦、ヒエ粟しか採れない。水呑百姓どころか満足に水も飲めないのだ。箱根権現の大僧正快長(河原崎国太郎)を商人友野与右衛門(河原崎長十郎)が訪ねてくる。箱根の湖尻峠に穴を掘って、三島側に流し、灌漑用水にしたいので承諾して欲しいと言うのだ。気鬱で殆ど引きこもっていた快長は、箱根に来て初めて楽しみに出会ったと言う。しかし、大老、老中、各奉行に呼び出され、事業計画を問い質され、武士の自分たちの用水事業が難航しているのに、町人風情が何か企てているのではないかという言いがかりや、お万の方(内田礼子)の、芦ノ湖は徳川の守り神を祀ってあり、町人の分際で将軍家に弓なすつもりかと責められ、友野は涙する。しかし、大老の酒井雅楽頭(薄田研二)は、弘文院学士林大学頭(嵯峨善兵)に、友野の後ろ盾が日本橋の豪商松村(三島雅夫)であると調べさせた上で、工事の施工
を承認する。
友野は、貧農の若者捨吉(坂東春之助)の才知を認め、自分の土木技術を惜しみなく伝え、図面を引かせる。しかし、捨吉の寝たきりの父は、怪しげなキリシタンの技を使う友野を手伝うことには反対だ。近在の百姓たちも、水が引けて米が作れるとは信じておらず、工事の賃金だけのために働いている。日当が遅れる度に不満ばかり洩らしている。磊落した侍で、盗賊黒鞍隊の大将になっている蒲生玄藩(中村翫右衛門)からマツ(岸旗江)が逃げてきた。玄藩は、友野を攫い、徳川を転覆させ天下を穫るための軍師になれと言う。友野は戦の技術ではなく、民を救うことしか出来ないと断る。マツと捨吉が助けに玄藩のアジトにやってきて無事逃げることができた。
    何年も過ぎ、百姓たちの中に、水不足への思いが薄れ諦観がもたげ始めた頃、坑道に出水があった。命の代金まで払っていないと現場に出ずに、手慰みの丁半博打を始める百姓たち。金が底をつき始めた頃に豪商の松島が江戸からやってくる。喜ぶ友野に、実は勘定奉行から友野への援助を止めなければ、取り潰しにすると言われ、支援中止の謝罪に来たのだ。しかし、松島の話の中でたとえ話の金山という言葉で、出水対策の瓢箪石を思いついて素直に喜ぶ友野と妻のリツ(山田五十鈴)を見て、内密に援助を約束する松島。しかし、そのやり取りは、沼津奉行(加藤嘉)の間者に聞かれていた。沼津奉行の手のものにより、斬られる松島。直ちに、金策の為に旅支度をするリツ。命を賭けている夫の為に、自分も命を賭けるので、万が一自分が死んだら、夫の面倒をみてくれと頼むリツに、名主の妻のイネ(河原崎しづ江)は、友野夫妻の思いを初めて理解する。
瓢箪石の方法で出水を防げると、博打をうつ百姓たちに、手伝ってくれと頭を下げる友野。しかし帰ってきた答えは、日当をもらえなければ仕事はしない。お前の金儲けのために、これ以上のタダ働きはしたくないというものだった。落ち込む友野は、工事から手を引き江戸に帰る決意をする。捨吉は、途中で投げ出すのは卑怯だと言うが、自分の独り相撲だったのではと挫折を感じた友野は承知しない。しかしその時、リツが帰ってきた。すべてを投げうつつもりで、親類から可能なだけ借金をし、また、江戸の屋敷、商売の株まですべてを売り払ってきたのだ。この村に骨を埋めるという夫婦の覚悟は、百姓たちの気持ちを動かす。最も強欲なトラ(飯田蝶子)まで、村人から博打で巻き上げた金を使ってくれと差し出した。しかし、友野は、今まで自分は百姓を救うといった驕った態度だったのではないかと頭を下げる。
    すべての人々の気持ちが一つになって工事は進んでいく。しかし、沼津奉行の妨害工作は厳しくなった。支えに傷をつける隠密。果たして友野は崩れた木材の下敷きに。友野に会ってから心が満たされなくなった玄藩は、盗賊を続けることが空しくなり、現場に来ていた。満身の力で、友野を救う玄藩。それから、身を偽り、百姓に混じって働く玄藩の姿がある。
    いよいよ、両方から掘る鎚の音が聞こえ、開通する。大喜びし、涙を流す村人たち。しかし、幕府の捕り方たちが、やってくる。友野を捕らえようとすると、村人たちが立ちはだかる。必死に止め縄につく友野。しかし、友野を救おうとする百姓たちの思いは誰にも止められない。火縄銃が放たれ、死人まででる事態だ。玄藩は、アジトに引き返し、子分たちを引き連れ友野を取り戻しに馬を走らす。しかし、捕り方たちは、鉄砲隊を幾重にも用意していた。捕り方や奉行を討つものの、絶命する玄藩たち。
   結局友野は、箱根用水の開通とともに、幕府の兇刃に倒れる。しかし、その箱根用水は今でも静岡の田畑に水を供給し続けている。
   江戸時代版「黒部の太陽」みたいなものだな。独立プロとしては、スケールの大きい作品を頑張って作っているといえるのではないか。

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