文化祭の出し物を決めで、敦史は占い、芽衣は大道具の担当に。タカ、夏樹、充はバンドで筋肉少女隊の「日本インド化計画」をやることに。内気な沙良(桜庭ななみ)を誘うと歌や演奏は出来ないがダンスならということで、美亜と優梨と3人でゴスロリファッションでダンサーに。教室の占いも盛況だ。敦史のもとに幼なじみの麻美(石橋杏奈)がやってくる。父親が自殺し天涯孤独になって力になってくれと言う。敦史が教室に戻ると、芽衣が1人。芽衣を占ってやると言って生年月日を聞く敦史。芽衣は2月29日生まれ。同じ誕生日の人間に会ったことかあるかと聞く敦史。8歳の時に1度だけあると言う芽衣に、更に詳しい話を聞こうとするが、バンドのライブが終わったみんなが帰ってきた。
文化祭が終われば長崎への修学旅行だ。自由行動はグループで打ち合わせろと先生に言われて、8人で話していると、敦史が芽衣に2人で行動しようと言う。みんなに冷やかされるが、2人は帰りに本屋で長崎のガイドブックを買い、芽衣の姉の情報で、ビードロの色付けをやろうと決まった。芽衣を家まで送り母に会う。敦史の名字を聞いて母の名前と近況をはぜか聞く芽衣の母。
いよいよ修学旅行だ。自由行動の前夜、敦史に入院している母が、病院の前で事故にあったという連絡が入り敦史は東京に帰ることに。その夜、2人は宿舎を抜け出して、長崎の夜景が見える公園に。敦史が自分の初恋を話し始める。敦史も2月29日の誕生日で、8歳の誕生日の雪の日に同じ誕生日の女の子とぶつかって女の子のバースデーケーキを落としてしまった話をする。8歳の誕生日に、2人は既に出会っていたのだ。運命的な縁を感じる2人。キスをし、手を繋いで夜景を眺め、16歳の誕生日を一緒に迎えようという2人。宿舎に帰ると沙良がまだ起きていた。両思いの二人を自分のことのように喜び、自分もタカへの思いを伝えるという沙良。
翌朝、芽衣は、1人でビードロの絵付けに行くと言う芽衣。夏樹と優梨はカップルで、美亜、充、タカ、沙良は4人で出掛ける筈が、急に芽衣が乗った市電に飛び乗るタカ。驚く芽衣に、1人じゃ心配たがらと言うタカ。しかし、ビードロの絵付けをしている店の前を偶然通り、芽衣とタカが一緒にいることを目撃し、芽衣の携帯に電話する沙良。1人だとつい嘘をつく芽衣。宿舎に帰ってくると、沙良は、芽衣に自分は芽衣を1番大切に思っていたが、芽衣は自分が必要でなかった。嘘をつかれたのがつらい。芽衣の中に自分はいないのなら、自分で自分の存在を消すと言って、宿舎の屋上から飛び降りてしまう沙良。病院の集中治療室の前で、立ち尽くす仲間たち。沙羅の母と芽衣の両親が東京から駆けつける。両親を前にただ泣くことしか出来ない芽衣。実は、母は東京で敦史に会っていた。敦史の母(山本未来)は、覚醒剤の依存症で病院の出入りを繰り返していた。芽衣には出生の秘密があり、そのことに敦史の母が関係していたのだ。敦史に全てを打ち明け、芽衣には理由を告げずに、会わないようにして欲しいと頼む母。
それ以来夏休みの間も、芽衣からの電話やメールに一切応えなくなった敦史。沙良は大阪に転校することに、放課後沙良の家に走る芽衣たち。沙良はいたが、事件の前後も芽衣たちの記憶を失っていた。大阪で、やり直すので、芽衣たちも沙良のことを忘れるように頼む沙良の母。翌日学校に行くと黒板には、沙良が記憶を失ったのは芽衣だ。死んで詫びろという落書きに溢れている。メールも死ね!ウザい!など酷いものばかりだ。タカは芽衣ではなく、自分を責めろと言う。しかし、芽衣は、沙良の心に自分を恨む気持ちも含めて消えてしまったので、自分が沙良にした事を忘れずにずっと背負っていくと話す。
ずっと待っていた敦史のメールが来た。しかし、もう好きでもなくなったと言って去っていく敦史。呆然と見送る芽衣。敦史も、母親が入った療養施設の近くに引っ越す。高校受験が近づく。タカは芽衣に同じ高校に受かったら付き合ってくれと告白する。いつも近くで見守ってくれていたタカの気持ちに応えたいと頷く芽衣。合格発表の日、芽衣と美亜は合格したが、タカは落ちた。夜間に進むと言うタカに付き合って、毎日5時に会う約束をする芽衣。
しかし、次第にタカと芽衣の間はギクシャクしたものになっていく。芽衣がタカを好きになろうと努力していることに苛立つタカは、芽衣を束縛し、思う通りにならないと暴力を振るうようになる。そんな頃、充に同じ学校の好きな子が出来たと美亜から相談される芽衣。放課後に相談すると約束をするが、タカから大事な打ち合わせがあるというメールがある。結局、美亜を取るか自分をとるのかといわれてタカから殴られる芽衣。結局、辛い美亜の話を聞いてあげることができない。美亜は、中学の同級生に誘われ、辛いことを忘れられると言われて、薬に手を出し、学校に来なくなる。美亜と何とか連絡を取ろうとする芽衣。タカからの電話に出ずに、街を探し回る芽衣。偶然、敦志は瞳孔が開き薬に溺れている美亜に会う。薬をやめろと言っているところに、芽衣が現れる。もう薬は辞めて学校に行くと芽衣に言う美亜に、そんな簡単に止められないという敦志。私は美亜を信じると言う芽衣。そこにタカが現れる。何本電話したと思っているんだと叫んで、芽衣を殴るタカに、敦志がやめろとタカを殴る。タカを庇って、自分が相談したかった時に何もしなかった敦志ではなく、自分を支えてくれたタカを信じると言う芽衣。打ちのめされて去る敦志。
夏祭りの神社、浴衣姿の芽衣は、タカを探しながら縁日の人混みを歩いている。敦志と話しているタカ。何で別れたんだと聞くタカ。好きでなくなったと敦志は答えるが、文化祭の日に芽衣と敦志が話しているのを聞いてしまい、二人には運命的な関係があると思っていたと言うタカ。好きでも付き合えないことはあるんだ呟く敦志。芽衣の携帯にメッセージを吹き込んでいるタカ。自分のことを好きになろうと努力してくくれている芽衣の心に、自分への自信がないために暴力を振るったりしてきたことを詫び、中学時代のような友人に戻ろうと。しかし、吹き込んだあと、神社の前で自動車事故で亡くなるタカ。
2月29日ファミレスで、芽衣の誕生日を祝う美亜、優梨、夏樹、充。ようやく美亜も元に戻った。家に帰ると、父と母が言い争いをしている。母は、姉を芽衣を呼び、二人が離婚すること、また実は芽衣は、二人の実の娘ではなく、亡くなった親友の娘であり、その親友の死には、覚醒剤に溺れた敦志の母が関係しており、そのために自分が敦志に芽衣と別れてくれと頼んだのだと告白する。その頃、スーパーのレジ打ちのパートの遅番に出るが、帰宅したら誕生日を祝おうと言う母を見送った敦志に、療養施設から電話が入る。完治した筈の母は、親類の不幸を理由にした一時退院でしかなく、病院に戻らないので心配しているという話だった。勤めていると聞いていたスーパーに行くと、母はすぐに辞めたと言われる。捜し歩き、母が薬に溺れる原因を作った男の店に行くと母がいる。男は、母は息子を捨てて自分と一緒にいたいと言っていると暴露する。近くにあったアイスピックで男の足を刺す敦志。
8歳の時に二人が出会ったケーキ屋の前に立っている芽衣。雪が降ってきた。現れる敦志。16歳の誕生日を一緒に過ごそうという約束を二人は果たしたのだ。人間は一生の間に3万人の人に会い、そのうち3000人の人と学校や職場で出会い、300人の人と仲良くなるという話をして、二人が出会ったことは意味があり、きっと自分たちが出会ったことも凄いことだと思わないかと言う敦志。私は、何があっても敦志を信じればよかったと言う芽衣。二人はそれぞれの道に戻っていく。
うーん携帯小説の映画化らしく、愛とか、信じるとか、運命といった言葉ばかり。そして、みな直ぐ死んじゃう。死んじゃうけど、飛び降りたり自動車事故もテレビのコード以上に全く惨たらしいところは出てこないできれいにラッピングされている。覚醒剤に関しても、心の弱い人間が辛いことを忘れるためのちょっとした逃げ道だ。薄っぺらいなあ。まあ、中学生が考える人生や愛や恋や運命は狭い世界での経験でしかないからしょうがないが、日本の小児的なメンタリティを感じるなあ。しかし、「恋空」の映画ドラマ展開に関するTBSの失敗を踏まえて(苦笑)、CXはうまくやっているのだろうか。テレビ見てないので何とも言えないが、映画はドラマのオープニングスペシャルみたいなものなのか。何だか、テレビドラマを大スクリーンで見ているようで物足りなさが残る。
神保町シアター、女優・山田五十鈴。51年松竹京都伊藤大輔監督『おぼろ駕籠(382)』。
当時権勢を誇る若年寄沼田隠岐之守(菅井一郎)の邸宅には、賂をもった多くの人間で門前市をなしていた。隠岐之守の用人生島(山本礼三郎)に、許嫁の三沢が大奥で中藹になるといいう話があるが、それでは一生結婚できなくなるので返してほしいと頼む小野田数馬(永田光男)の姿がある。生島は取り合わず、思いつめた数馬は、城中で隠岐之守に直訴し、皆に取り押さえられ、隠岐之守の門前で腹を召した。それを、目撃していたのは、久しぶりに江戸に戻ってきた夢覚和尚(坂東妻三郎)と、隠岐之守に疎まれ無役になっている本田内蔵助(月形龍之介)。深川の飲み屋で飲んでいると、酔った羽織芸者のお仲(田中絹代)が入ってくる。男嫌いで通しているお仲も、夢覚には好感を持ったようだ。
一緒に飲んでいると、内蔵助と懇意のコソ泥の蝙蝠の吉太郎(三井弘次)が来て、不思議なものを見たという。深川の水路の傍に、身分の高い女中が載ったおぼろ駕籠が灯りも灯さず2提見かけ、なんだろうと思っていると、一提が信濃屋の別邸に入って行った。大奥の女中と役者との逢引かと別邸に忍び込むと、御殿女中のお勝(月宮乙女)が会っていたのは、旗本の次男坊小柳進之助(佐田啓二)。お勝は、自分が中藹に推挙される話があるが、自分は進之助が好きなので、受けたくないと相談している。進之助は、知人に譲ってもらった刀の金を支払いに行って戻ってくると言って出ていく。進之助が別邸を出てしばらくし、吉太郎が忍び込むとお勝は血だけ残して不在だ。裏木戸に向かって血は垂れており、木戸の向こうは川が流れている。
翌日、お勝の死体が上がった。一緒に進之助の買ったばかりの刀の鞘も見つかる。昨晩の刀代を払った時に、誘われて賭場を眺めていたという進之助の証言も朝までなんて嘘だと否定され、進之助の進退は極まった。目明しの門前の亀蔵(伊志井寛)は、足跡が二人分あり、高級な紙入れが落ちていたことと、下手人が身元が割れる鞘を死体と一緒に流す訳がないと、進之助は嵌められたと思っている。しかし、火盗改めから、進之助を下手人とするよう圧力がかかる。更に重要な証拠である紙入れを預からせろという火盗改めに、亀蔵は中に入っていた家紋入りの紙を抜いて渡す。
酔った夢覚和尚が歩いていると、捕縛される前に、家のために自害せよと叔父や兄(安部徹)たちに迫られ逃亡、追いかけられている進之助を救う。内蔵助の屋敷に逃げ込むと、小野寺家がやってきて引き渡せと言う。拒否する内蔵助。内蔵助と夢覚は、進之助が死んだことにする。河原の乞食たちの中に混じって夢覚と進之助は暮すことに。お勝担当の御前女中だったお蝶(折原啓子)は、事件が起きて宿下がりして以来、内蔵助と夢覚に進之助を助けてほしいと頼んできていたが、徐々に進之助といい感じになってきている。吉三郎は、亀蔵の家に忍び込み、証拠の家紋入りの紙を盗んで夢覚に渡す。
徳川家の代参法要に、中藹三沢(山田五十鈴)がやってくるという話を聞いて、吉三郎とお蝶は、紙入れの紋を確かめに。果たして、お勝殺人の現場の紙入れは三沢のものだ。しかし、吉三郎やお蝶は、怪しげな風体の者たちに捕らえられてしまう。
夢覚とお仲は、代参法要のあとに、三沢が高級割烹の四季庵に廻ることを知る。四季案の離れでは、三沢と隠岐守の要人生島が話している。生島は、火盗改めから手に入れた三沢の紙入れを見せ、三沢を脅す。もともと、三沢は、隠岐守が殿中の権勢を確実なものにするため中藹に押したのだが、お勝を殺したのは三沢の考え。重要な証拠があるのを、なんとか進之助に罪を着せようと手を打ってきたのだ。生島は、紙入れを自分の手に置くことによって、自分の力としようと考えたのだ。表情一つ変えずに、癪を起したふりをして、女を武器に生島を懐柔しようとする三沢。二人が抱き合っているところに、夢覚が現れる。三沢を誘拐し、外に待たせた駕籠に乗せ、お仲に預ける。生島の立てた追手を倒して、追う夢覚。
信濃屋別邸に連れ込んだ三沢を前に、お勝殺しを認めろと迫るお仲。さすがに、大奥中藹を務める三沢は、平然と否定するが、許嫁小野田数馬の死の真相を聞いて、顔色が変わる。隠岐守からは、病死したと偽りを教えられていたのだ。自害しようとする三沢の小太刀を取り上げる夢覚。死ぬ前に、罪の償いをしろと言うのだ。
夢覚は、隠岐守の屋敷に、大僧正の扮装で大行列をしたてて乗り込む。出迎えた生島は、自分の目の前で三沢を誘拐した男の顔に驚く。隠岐守の面前で、河内山宗春ばりに、今回の事件の真相を話し、小野田数馬の無罪を認めろという。土産だと持参した京人形と書かれた箱を開けると三沢が入っている。隠岐守の傀儡で罪を犯した生き人形だと言う皮肉だ。隠岐守は、認めざるを負えない。退席する前に、このくらいのことを仕切れない用人生島を責め、解任する。三沢は、夢覚に、これで自害していいかと聞いて、小野田数馬の後を追う。
河原の乞食たちが、飲み騒いでいる。三味線を弾き喉を披露しているお仲。夢覚に生き返してもらた進之助の侍姿への着替えを、手伝うお蝶。夢覚たちも当てられ気味だ。三沢、お勝ら政争の具にされ命を失くしたおんなたちを、不幸だと呟く夢覚。お仲は、夢覚の後ろ姿に、「わたしは?」と問いかけるが、何も答えず去っていく夢覚。お仲の目にあふれる涙。
主役は夢覚和尚を演ずる坂東妻三郎だが、権力者の陰謀を暴いていく社会派推理小説のような展開なので、チャンバラシーンは、あまりない。まして破戒坊主でも、坊主の自分に殺生させるのかと言いながらの殺陣、あくまでも受けて逃げるための刀や、金剛杖だったりするので思い切りは悪い。全盛時のバンツマのチャンバラを知らない、お恥ずかしの自分にはもちろんつべこべ言えないし、もの足りないとも思わないが、旗本本多内蔵助の月形龍之介の、動かないかっこよさが目立つ。思わずワイズ出版「月形龍之介」を買い求めてしまう(苦笑)。スチール写真の眼力凄いなあ。
58年松竹大船渋谷実監督『悪女の季節(383)』。 大金持ちの八代(東野英治郎)は、人間ドックを受け、何万人に1人の健康的な肉体だと、医者から誉められる。68歳の八代は、20歳は若いと言われ、帰宅し、妻の妙子(山田五十鈴)に100歳まで生きると大威張りだ。妙子は陰で診断書を破り捨て冗談じゃないと怒る。彼女は、芸者をしていてひかされたが、籍を入れてくれる訳でも、2号のようにお手当を毎月貰える訳でもなく、無給の女中を20年近くさせられてきた。転がり込む遺産のことで我慢してきたのに、この生活が何十年と続くと考えると冗談ではない。
焼き肉を食べて、八代が眠ったのを見て、ガス栓を開いておいて、1階のばあやに風呂を焚くと言って元栓を開けさせた。ばあやはかなり耄碌しており、主人の顔を忘れるほどだ。風呂に入りながら、様子を窺う妙子。しかし、白タクの運転手で、妙子のかっての客だった片倉(伊藤雄之助)が、車の月賦の無心をしようと家に忍び込んできたことで、間一髪八代は助かる。片倉は、ガス漏れに不審を抱き、妙子にカマをかけ、警察に話に行くと脅して、白状させる。しかし、金と八代の眼球だけが欲しいだけの片倉は、矢島殺しの片棒を担ぐことに。妙子と片倉は、殺し屋の秋ちゃん(片山明彦)に手伝ってもらうことに。色々考えを巡らすがうまく行かない。
そこに妙子の娘の眸(岡田茉莉子)がやってくる。眸は義父の八代に、今後一切縁を切るので、百万くれと頼むが、八代の方が一枚上手で、ちゃんと結婚して届けを持ってきたら、お祝いとして百万をあげるとはぐらかされる。眸の百万は、ヌードダンサーをしている友人の美美(岸田今日子)に車の代金を払わなければならないのだ。もう待てないと言われて、ピストルを渡される。眸は、自分で手を下そうと、八代の寝室に忍び込むと、ベッドにナイフを突き立てる影が。灯りを点けると八代の甥の慎二郎だ。彼は、死の直前の母親から船員だった叔父の八代が、南米で成功した父親の全財産であるダイアモンドを横取りするために、ヨーロッパで狩猟時の事故を装って父親を殺したのだという告白を聞いていた。その口止めのために、母親を自分の女にした非道な男の八代に復讐するのだと言う。協力するという眸。二人は、バイクで都内の街を走り、キスをする。
八代と妙子は、片倉の運転する車で山道を走っている。浅間にある別荘に向かっているのだ。3人の乗る車を、バイクの集団が追い抜いていく。その中に慎二郎と眸の姿を見つけて驚く八代と妙子。別荘に着くと、バイクの若者たちが庭を占拠している。あまりの騒がしさに、八代は、裏山続きの気象観測所に泊まらせて貰おうとするが、教授からは学生たちが多く物置しか空いていないと言われる。それでも騒がしい自分の別荘よりはいいと言って移る。しかし途中、別荘の防空壕に入り缶詰などの裏側にある隠し扉を開け、宝石箱を入れ替えている。
夜になり、眸に促されて慎二郎は八代にナイフを向ける。八代は、母親の話を、有名な小説の話で、自分は、全財産を慎二郎に譲るつもりでいるのだと言い、慎二郎は説得され戻ってくる。小説の話かどうか、明日図書館に確かめにいくのだと言い出す慎二郎に呆れる眸。八代のもとに、殺し屋の秋ちゃんが現れる。八代の殺しを頼まれたが、あまりにギャラが安いので、情報を教えるので金をくれと言う。依頼人は妙子で、八代を怒らせて心臓発作を装って殺そうとしているのだと言うと、まさに妙子と片倉がやってくる。八代のベッドの陰に隠れる秋ちゃん。片倉に脅され貞操の危機にあると訴える妙子。真実を知っている八代は、妙子と片倉がどう話そうが、全く動じない。
翌日、山を下りて図書館で、八代に担がれたことを知って怒る慎二郎。自分の言ったとおりだと言う眸。山に戻る二人。秋ちゃんは、八代が財産をどこかに隠していることを知って、穴を掘っている。そこから出てきたのは、旧日本軍の不発弾だ。しかし秋ちゃんはこれが八代の隠した宝石箱だと信じて疑わない。開けようと金槌で叩いていると暴発、秋ちゃんは爆死、近くにいた慎二郎も巻き添えを食う。重症で唸っている慎二郎の前で、八代、妙子、眸、片倉が言い争いをしている。妙子の女の武器も、真実を知っている八代には通じない。妙子と眸は、掴みあいの大ゲンカをする。その最中、慎二郎は死ぬ。お前に全財産を譲るつもりだったと言い、天国に持って行けと言って、気象観測用の気球に宝石箱をつけ放す八代。片倉と眸は、漂う気球を追いかけていく。別荘に残った妙子と八代。八代は、あの宝石箱は偽物だと言う。妙子は、別荘の猟銃を取り出し、八代に突き付け、本物の宝石箱を取り立たせる。蓋を開けると、手元のものは偽物だった。八代の勘違いで本物を飛ばしてしまったのだ。殺せるものなら殺してみろという八代に、引き金を引く妙子。弾は当たらなかったが、八代は心臓発作を起こして倒れる。
いつのまにやら気球を追って浅間山の火口に、片倉と眸は来ている。そこに妙子が現れ、八代は死んだという。気球は火口の入口に止まっている。もう疲れたから三人で山分けしようと言う片倉に同意するふりをして、片倉を突き落とす眸。眸と妙子はつかみ合いになるが、縺れ合ったまま火口に落ちていく。強い風が吹いて再び、浮き上がる風船。火口に、立ち上がった片倉らしい姿が見えるが、硫黄煙にかすんでよく見えない。
岡田茉莉子の悪女がキュートだなあ。丸く大きな瞳をくりくり動かす表情は、本当にかわいい。
当時権勢を誇る若年寄沼田隠岐之守(菅井一郎)の邸宅には、賂をもった多くの人間で門前市をなしていた。隠岐之守の用人生島(山本礼三郎)に、許嫁の三沢が大奥で中藹になるといいう話があるが、それでは一生結婚できなくなるので返してほしいと頼む小野田数馬(永田光男)の姿がある。生島は取り合わず、思いつめた数馬は、城中で隠岐之守に直訴し、皆に取り押さえられ、隠岐之守の門前で腹を召した。それを、目撃していたのは、久しぶりに江戸に戻ってきた夢覚和尚(坂東妻三郎)と、隠岐之守に疎まれ無役になっている本田内蔵助(月形龍之介)。深川の飲み屋で飲んでいると、酔った羽織芸者のお仲(田中絹代)が入ってくる。男嫌いで通しているお仲も、夢覚には好感を持ったようだ。
一緒に飲んでいると、内蔵助と懇意のコソ泥の蝙蝠の吉太郎(三井弘次)が来て、不思議なものを見たという。深川の水路の傍に、身分の高い女中が載ったおぼろ駕籠が灯りも灯さず2提見かけ、なんだろうと思っていると、一提が信濃屋の別邸に入って行った。大奥の女中と役者との逢引かと別邸に忍び込むと、御殿女中のお勝(月宮乙女)が会っていたのは、旗本の次男坊小柳進之助(佐田啓二)。お勝は、自分が中藹に推挙される話があるが、自分は進之助が好きなので、受けたくないと相談している。進之助は、知人に譲ってもらった刀の金を支払いに行って戻ってくると言って出ていく。進之助が別邸を出てしばらくし、吉太郎が忍び込むとお勝は血だけ残して不在だ。裏木戸に向かって血は垂れており、木戸の向こうは川が流れている。
翌日、お勝の死体が上がった。一緒に進之助の買ったばかりの刀の鞘も見つかる。昨晩の刀代を払った時に、誘われて賭場を眺めていたという進之助の証言も朝までなんて嘘だと否定され、進之助の進退は極まった。目明しの門前の亀蔵(伊志井寛)は、足跡が二人分あり、高級な紙入れが落ちていたことと、下手人が身元が割れる鞘を死体と一緒に流す訳がないと、進之助は嵌められたと思っている。しかし、火盗改めから、進之助を下手人とするよう圧力がかかる。更に重要な証拠である紙入れを預からせろという火盗改めに、亀蔵は中に入っていた家紋入りの紙を抜いて渡す。
酔った夢覚和尚が歩いていると、捕縛される前に、家のために自害せよと叔父や兄(安部徹)たちに迫られ逃亡、追いかけられている進之助を救う。内蔵助の屋敷に逃げ込むと、小野寺家がやってきて引き渡せと言う。拒否する内蔵助。内蔵助と夢覚は、進之助が死んだことにする。河原の乞食たちの中に混じって夢覚と進之助は暮すことに。お勝担当の御前女中だったお蝶(折原啓子)は、事件が起きて宿下がりして以来、内蔵助と夢覚に進之助を助けてほしいと頼んできていたが、徐々に進之助といい感じになってきている。吉三郎は、亀蔵の家に忍び込み、証拠の家紋入りの紙を盗んで夢覚に渡す。
徳川家の代参法要に、中藹三沢(山田五十鈴)がやってくるという話を聞いて、吉三郎とお蝶は、紙入れの紋を確かめに。果たして、お勝殺人の現場の紙入れは三沢のものだ。しかし、吉三郎やお蝶は、怪しげな風体の者たちに捕らえられてしまう。
夢覚とお仲は、代参法要のあとに、三沢が高級割烹の四季庵に廻ることを知る。四季案の離れでは、三沢と隠岐守の要人生島が話している。生島は、火盗改めから手に入れた三沢の紙入れを見せ、三沢を脅す。もともと、三沢は、隠岐守が殿中の権勢を確実なものにするため中藹に押したのだが、お勝を殺したのは三沢の考え。重要な証拠があるのを、なんとか進之助に罪を着せようと手を打ってきたのだ。生島は、紙入れを自分の手に置くことによって、自分の力としようと考えたのだ。表情一つ変えずに、癪を起したふりをして、女を武器に生島を懐柔しようとする三沢。二人が抱き合っているところに、夢覚が現れる。三沢を誘拐し、外に待たせた駕籠に乗せ、お仲に預ける。生島の立てた追手を倒して、追う夢覚。
信濃屋別邸に連れ込んだ三沢を前に、お勝殺しを認めろと迫るお仲。さすがに、大奥中藹を務める三沢は、平然と否定するが、許嫁小野田数馬の死の真相を聞いて、顔色が変わる。隠岐守からは、病死したと偽りを教えられていたのだ。自害しようとする三沢の小太刀を取り上げる夢覚。死ぬ前に、罪の償いをしろと言うのだ。
夢覚は、隠岐守の屋敷に、大僧正の扮装で大行列をしたてて乗り込む。出迎えた生島は、自分の目の前で三沢を誘拐した男の顔に驚く。隠岐守の面前で、河内山宗春ばりに、今回の事件の真相を話し、小野田数馬の無罪を認めろという。土産だと持参した京人形と書かれた箱を開けると三沢が入っている。隠岐守の傀儡で罪を犯した生き人形だと言う皮肉だ。隠岐守は、認めざるを負えない。退席する前に、このくらいのことを仕切れない用人生島を責め、解任する。三沢は、夢覚に、これで自害していいかと聞いて、小野田数馬の後を追う。
河原の乞食たちが、飲み騒いでいる。三味線を弾き喉を披露しているお仲。夢覚に生き返してもらた進之助の侍姿への着替えを、手伝うお蝶。夢覚たちも当てられ気味だ。三沢、お勝ら政争の具にされ命を失くしたおんなたちを、不幸だと呟く夢覚。お仲は、夢覚の後ろ姿に、「わたしは?」と問いかけるが、何も答えず去っていく夢覚。お仲の目にあふれる涙。
主役は夢覚和尚を演ずる坂東妻三郎だが、権力者の陰謀を暴いていく社会派推理小説のような展開なので、チャンバラシーンは、あまりない。まして破戒坊主でも、坊主の自分に殺生させるのかと言いながらの殺陣、あくまでも受けて逃げるための刀や、金剛杖だったりするので思い切りは悪い。全盛時のバンツマのチャンバラを知らない、お恥ずかしの自分にはもちろんつべこべ言えないし、もの足りないとも思わないが、旗本本多内蔵助の月形龍之介の、動かないかっこよさが目立つ。思わずワイズ出版「月形龍之介」を買い求めてしまう(苦笑)。スチール写真の眼力凄いなあ。
58年松竹大船渋谷実監督『悪女の季節(383)』。 大金持ちの八代(東野英治郎)は、人間ドックを受け、
焼き肉を食べて、八代が眠ったのを見て、ガス栓を開いておいて、
そこに妙子の娘の眸(岡田茉莉子)がやってくる。
八代と妙子は、片倉の運転する車で山道を走っている。浅間にある別荘に向かっているのだ。3人の乗る車を、バイクの集団が追い抜いていく。その中に慎二郎と眸の姿を見つけて驚く八代と妙子。別荘に着くと、バイクの若者たちが庭を占拠している。あまりの騒がしさに、八代は、裏山続きの気象観測所に泊まらせて貰おうとするが、教授からは学生たちが多く物置しか空いていないと言われる。それでも騒がしい自分の別荘よりはいいと言って移る。しかし途中、別荘の防空壕に入り缶詰などの裏側にある隠し扉を開け、宝石箱を入れ替えている。
夜になり、眸に促されて慎二郎は八代にナイフを向ける。八代は、母親の話を、有名な小説の話で、自分は、全財産を慎二郎に譲るつもりでいるのだと言い、慎二郎は説得され戻ってくる。小説の話かどうか、明日図書館に確かめにいくのだと言い出す慎二郎に呆れる眸。八代のもとに、殺し屋の秋ちゃんが現れる。八代の殺しを頼まれたが、あまりにギャラが安いので、情報を教えるので金をくれと言う。依頼人は妙子で、八代を怒らせて心臓発作を装って殺そうとしているのだと言うと、まさに妙子と片倉がやってくる。八代のベッドの陰に隠れる秋ちゃん。片倉に脅され貞操の危機にあると訴える妙子。真実を知っている八代は、妙子と片倉がどう話そうが、全く動じない。
翌日、山を下りて図書館で、八代に担がれたことを知って怒る慎二郎。自分の言ったとおりだと言う眸。山に戻る二人。秋ちゃんは、八代が財産をどこかに隠していることを知って、穴を掘っている。そこから出てきたのは、旧日本軍の不発弾だ。しかし秋ちゃんはこれが八代の隠した宝石箱だと信じて疑わない。開けようと金槌で叩いていると暴発、秋ちゃんは爆死、近くにいた慎二郎も巻き添えを食う。重症で唸っている慎二郎の前で、八代、妙子、眸、片倉が言い争いをしている。妙子の女の武器も、真実を知っている八代には通じない。妙子と眸は、掴みあいの大ゲンカをする。その最中、慎二郎は死ぬ。お前に全財産を譲るつもりだったと言い、天国に持って行けと言って、気象観測用の気球に宝石箱をつけ放す八代。片倉と眸は、漂う気球を追いかけていく。別荘に残った妙子と八代。八代は、あの宝石箱は偽物だと言う。妙子は、別荘の猟銃を取り出し、八代に突き付け、本物の宝石箱を取り立たせる。蓋を開けると、手元のものは偽物だった。八代の勘違いで本物を飛ばしてしまったのだ。殺せるものなら殺してみろという八代に、引き金を引く妙子。弾は当たらなかったが、八代は心臓発作を起こして倒れる。
いつのまにやら気球を追って浅間山の火口に、片倉と眸は来ている。そこに妙子が現れ、八代は死んだという。気球は火口の入口に止まっている。もう疲れたから三人で山分けしようと言う片倉に同意するふりをして、片倉を突き落とす眸。眸と妙子はつかみ合いになるが、縺れ合ったまま火口に落ちていく。強い風が吹いて再び、浮き上がる風船。火口に、立ち上がった片倉らしい姿が見えるが、硫黄煙にかすんでよく見えない。
岡田茉莉子の悪女がキュートだなあ。丸く大きな瞳をくりくり動かす表情は、本当にかわいい。
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