2008年12月23日火曜日

山口美也子さんの登場は、衝撃だった。

   天気もいいし、日だまりで、惰眠と読書。気持ちいいなあ。
   気がつくと午後に。2時過ぎには、ようやく目も覚めたので、遅昼を西荻で済ませ、渋谷に。
  渋谷シネマヴェーラで日活ロマンポルノをやっているのだ。官能の帝国ロマンポルノ再入門2
77年日活神代辰巳監督『悶絶!!どんでん返し(376)』。 東大出のエリートサラリーマン北山俊夫(鶴岡修)は、父親が常務の会社で係長をしている。父の秘書の長谷川久美子(宮井えりな)と交際し順調な生活を送っていたが、ある日会社の人間に連れられて行ったキャバレーメキシコで朱美(谷ナオミ)というホステスに会い、彼女のアパートに行ったことから人生が変わった。朱美の情夫の川崎竜二(遠藤征慈)が出てきて、無理矢理俊夫を犯したのだ。トイレに立てこもり泣き続ける俊夫。
   やっと解放され出社するも、常務の父親には怒られ、尻も痛くて最低だ。しかし、夜は久美子とレンタルルームで関係を持つ。竜二は、舎弟の丸山(粟津號)と、スケバンのみどり(牧レイカ)たちを使って美人局をやっている。スケバンたちを脅すために、大組織山下組とさも関係があるかのように装うが、どこの組織にも入っていない半端者だ。みどりが引っ掛けた老人は、心臓が悪く竜二と丸山が飛び込んだら腹上死、埋め立て地に捨てに行くが穴を掘り埋めるのはスケバンたちだ。次の客は俊夫だ。スケバンと丸山を追い出し、俊夫にのしかかる竜二。最初は抵抗していたものの、いつしか快感を覚える俊夫。
   竜二と朱美、俊夫の3人の生活が始まった。俊夫に夢中で、次第に朱美を構わなくなる竜二。徐々に女装していく俊夫、朱美と俊夫の立場は逆転する。ついには竜二と俊夫は、神前で血書で永久の愛を誓い合う。丸山と惚れあうようになっていたみどりは、男を取らなくなり、それを俊夫は竜二と一緒になって締める。今月の上がりの計算が出来ず、中学中退だからと言う竜二。俊夫は、トウダイよというので、どこの灯台だ?と聞く竜二。東京大学よと答える俊夫。徐々に、スケバンたちからの上がりの回収は俊夫の仕事になった。
   アパートに久美子がやってくる。お金を払うので、俊夫を返してという久美子に、爆笑する朱美。
久美子と朱美がつかみ合いの喧嘩をしていると、俊夫が戻ってきた。女装し、更に豊胸手術までしている恋人の姿に愕然とする久美子。父親に二度と戻らないと伝えろと言って、俊夫は買ってきたケーキを、久美子の顔に押し付ける。ケーキをぶつけ合う三人。
   彫物の入った痩せぎすの男を、引っかけたときに、刑事に踏み込まれる。刑事と揉み合ううちに、客を脅すために持っていたナイフで刺してしまう竜二。あわてて、家に戻って、朱美に逃げると言う。私も連れて行ってという俊夫に、お前なんか連れていたら目立ってしょうがないので駄目だという竜二。待たせてあった車に乗り込む竜二と朱美。車の後ろに必死にしがみつく俊夫。振り落とす竜二たち。道に転がり落ちる俊夫。崩れた化粧を隠しながら、艶然と微笑む俊夫。
   77年日活曾根中生監督『新宿乱れ街いくまで待って(377)』
   女優志望の山口ミミ(山口美也子)は、新宿ゴールデン街のママ揺子(絵沢萌子)の店で働いている。彼女にはシナリオライター志望の沢井(神田橋満)がヒモのように付いている。夜毎クリエーターの卵や虫のような人々が集まっては、飲み騒ぎ喧嘩をしている70年代のゴールデン街。そこでは、世の中に認められない屈託や、自分の才能に対する不安が澱んでいる。沢井が書いたシナリオは没になる。ママは、ミミに、店の客の映画監督三浦護(渡辺護)に沢井を紹介したらと言う。女たらしで有名な監督は、ミミに次の映画に出ないかと言い、キスをしたらしい。嫉妬する沢井。沢井はディスコで10代の少女をナンパしてホテルに連れ込むが、役に立たない。しかし、不良少年二矢(清水浩一)に殴られる。原稿を書くでもなく、ミミの金で怠惰な毎日を送る沢井にキレるミミ。しかし、結局、喧嘩の後の強引なセックスは、毎日を何も変えやしない。ミミは、監督と飲み自宅に案内をする。階段に座っている沢井。「幕は自分で下ろせ」と言って帰る監督。何で寝るんだと聞く沢井。寝ることに理由なんてないと叫ぶミミ。急にウィスキーをラッパ飲みして暴れるミミ。倒れて寝てしまう。以前からミミに気があるピンク映画の助監督正平(堀礼文)に、やれと言うが、タオルをかけ正平は帰った。
   海を見に行くと書置きを残して、ミミが出かけた。男と行ったんだろうと酔いつぶれる沢井は、ママの揺子を家に連れ込んで寝てしまう。翌朝、ミミは帰っきて、事情を察し、別れるために戻ってきたと言って、沢井の荷物を外に出す。揺子は、ミミに消毒液の臭いがしたので、たぶん中絶してきたのだろうと、沢井に告げる。
   ミミは、三浦監督の新作「性少女マコ」での主演デビュー記者会見に出席している。記者たちの取材を受けるミミ。揺子の店で、お別れパーティをやっている。祭りのような盛り上がりだ。ミミは、見納めだと言って裸になる。店を出た沢井の足を、待ち伏せしていた二矢が刺す。おんなのためにそこまでやるのかと沢井は問いかけるが、二矢は答えずに去る。痛てえなあと言いながら立ち上がる沢井。
   懐かしいなあ。どっちも、シナリオ持ってたくらいだからなあ。当時、何度も見たので、ほとんどセリフまで覚えている。こういうシナリオ書きたくても、ガキ過ぎて全く駄目だったこととか、走馬灯のように思い出される。
  山口美也子さんもよかった。それまでの日活ロマンポルノの女優さんは、白川和子さんや宮下順子さんたちのようなピンク映画から叩き上げた女優さんか、平凡パンチのグラビアとかから出てきたような色っぽいセクシー女優や、どこかに転がっていたのを誰かが拾ってきたような不良少女が多かったし、所詮ポルノ映画、裸になって、客を興奮させればいいので、たたき上げで現場を沢山通ったピンク映画出身の女優さん以外、芝居は二の次、三の次、アフレコなのでセリフは本当に棒読みだったが、山口美也子さんは違った。この映画のミミさながら、自分たちの近くから出てきて、ポルノのための裸というよりは、映画のための裸になっている気がしたものだった。
   とはいえ、ゴールデン街は、当時金もない18位の自分には、誰か先輩やOBに連れて行ってもらう時しか味わえない大人の街だった。それも、小さくなって飲んでいると喧嘩が起きて更に小さくなれ小さくなれと心の底で祈ったり、歩いていると客引きのオカマのお姉さんにからかわれて厳しかった思い出ばかりだ。しかし、この映画に出てくるブラックシープというディスコは、フィリピンの生バンが入っていて、ここはお馴染だと嬉しかった思い出も。
   観客若い人多いな。女性の姿もかなり。日本映画底辺の時代、東映と日活の映画には、なにか殺伐として荒涼としながら変な熱気のようなものがあった。
   場内BGMは当時のサントラを流しているので、かなり雰囲気出てるけど、殺伐さはなく、普通の映画館。AV世代には、ポルノ映画という感覚もないだろうし。山口美也子さんの裸を見ていて、なぜか「俺たちに明日はないッス」の安藤サクラの裸を思い出す。
  そういえば、昔は場末の映画館は禁煙じゃなかった。どうして大丈夫だったんだろうか(苦笑)。

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