2009年10月10日土曜日

やっぱり美貌に罪あり。

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、銀幕に輝くヒロイン【第49弾】雪村いづみ
   56年東宝山本嘉次郎監督『お嬢さん登場(575)』
    かって伊達島藩だった街らしい。近隣の名所旧跡という看板に、雲月城、城下町、八幡神社、伊達島牧場、上泉道場と書かれている。上泉道場にスーツ姿の若い男(池部良)が入って行く。
奥では、腰を傷め寝込んでいる道場主上泉広正(古川ロッパ)の前に、かって伊達島藩家老だった大野黒兵衛(柳家金五楼)と山岸勘左衛門(森川信)が座っている。「世が世であれば、藩の剣術指南役だった私がこのていたらく」と嘆く上泉広正。
     そこに、息子の正夫(池部良)がやってくる。「どうした?」「お父さんが病気だと聞いたので」「大したことはない、それよりも仕事はどうした?」「休暇を貰いました。休暇や日曜日は、柳生の道場に通うと言う約束で東京に行ったのではなかったか」「もちろんいつも通っていますよ。今日はそれだけでなく、お殿様のお使いもありまして。」三人は、お殿様と言う言葉を聞いて姿勢を正す。「実は殿様が、東京で府会議員に立候補なさると言うのです。殿様がやっておられる帝国かきもち製造所は赤字なので、選挙資金百万を相談してこいと仰るのです。特に殿様から拝領した伊達島牧場で、大野と山岸は随分儲けているようだから、特に相談をしろと仰っていました。」大野と山岸は、そんなに儲けてはいないですと目を白黒させる。まあ、殿様も冗談半分でしたと言われ安心する。しかし、ともかく上泉広正の身の回りの面倒を見てくれる女の子を探して欲しいと言って、正夫は東京へと帰って行く。道場の床には埃が溜まり、蜘蛛の巣だらけになっている。
   伊達島牧場、トンコ(雪村いづみ)が来て以来、若い者たちが張り切って仕事をするようになって、牛は増えていないのに採乳料が倍になったと言う、そのトンコを上泉道場で働かせたいと言う大野。
トンコは、道場を瞬く間に綺麗にし、上泉広正の腰を揉み、料理を作る。働き者で、明るい彼女は、上泉広正の気持ちを癒やし、トンコと一緒に歌い出す程だ。
   ある日地元の新聞記者が、剣豪小説の有名な作家を連れて、上泉広正に会いに来ると言う。失礼のない対応をしたいが、お金がないと嘆く上泉広正に、私に任せておいてと、自転車で買い物に出掛けるトンコ。酒屋、肉屋始め、特上の物ばかり、「武士は相身互い。」の一言で、巻き上げるトンコ。大野には、旅館の宿代の請求書が行くから宜しくねと明るく言われ、みなトンコちゃんには困ったものだで、済んでしまう。
    トンコが用意したすき焼きを、小説家の穴山高介(南道郎)、東京毎々新聞の記者(柳沢真一)、上泉広正、大野、山岸が囲んでいる。穴山は、上泉家の古文書など資料を勝手に探し始め、価値のあるものをドンドン懐に突っ込む。あまりに乱暴な行動に怒ったトンコは穴山を一喝する。剣道、柔道、空手の有段者のトンコの勢いに、慌てて懐から古文書を放り出し、謝る穴山。しかし、高そうな一品だけ、こそこそ隠すせこい男だ。

    学校の体験入学の後はお茶の水に出て、

    神保町シアターで、川本三郎編 鉄道映画紀行 思ひ出は列車に乗って

   63年松竹大船山田洋次監督『下町の太陽(576)』
    総武線隅田川を越えてからの景色だろうが、スモッグで曇った空と、無秩序に埋め尽くされた屋根、下町の光景だ。
    銀座四丁目の交差点、ステレオを前に「やっぱり凄いな。他のが聴けなくなってしまうよ。」「値段が、値段よ。8万円だって」「ゼロが一つ多いよ。80万円だよ。」「!」宝飾店、「百万円だ」「誰が買うのかしら」「買う人がいるから売っているんだよ。」喫茶店で話し合う2人、寺島町子(倍賞千恵子)と毛利道夫(早川保)の二人はオリエント石鹸の工場で働いている。休日銀座までデートに来たのだ。丸の内まで歩き、「ほら、あそこがうちの本社だ。社員試験に通ったらあそこに通うんだ。」「道夫さんのお父さんと課長さんはどういう知り合いなの?」「軍隊時代に上官と部下だったんだ。」「課長さんが上官?」「いや親父が上官さ。だから課長も嫌とは言えないんだ。」
   二人で総武線か常磐線に乗る。川を越えると景色が変わってくる。「あっち側に住みたいんだ。まっちゃん、今日は楽しかったよ。」中川か江戸川か、土手を歩く松子。歩きながら、「下町の太陽」を歌う。地元商店街、近所の源吉(東野英治郎)が、笛を吹き交通整理をしている。源吉は息子の利夫が、交通事故にあって亡くなって以来、おかしくなってしまった。

   56年日活新藤兼人監督『銀[しろがね]心中(577)』
   吹雪の夜泣きながら歩く女の姿(乙羽信子)がある。白猿旅館に入ってきて、二階の自分の部屋に戻り、倒れ込んで号泣する。宿の下男の源作(殿山泰司)が、お客さん元気を出してくれと声を掛けるが、女が剃刀を出したので慌てて止める。酒を呷る女に「毒だ」と言う源作。顔に青あざのある田舎芸者が、襖を開け女を見て勝ち誇ったように笑う。石川佐喜枝(乙羽信子)は、太平洋戦争中、夫の喜一(宇野重吉)と東京で理髪店を開いていた。戦況は、硫黄島が玉砕し沖縄決戦が叫ばれていた。喜一の福島の姉の息子である珠太郎(長門裕之)が、修行のため店にやって来た。珠太郎が隠し持って来たつきたての餅は、喜一と佐喜枝を喜ばせた。灯火管制や空襲などが起きていたが、石川理髪店は平和だった。しかし、喜一に2度目の赤紙が来る。かって北支に3年送られた時とは戦況もかなり違う。喜一は、珠太郎に佐喜枝を支えてやってくれと頼んで出征していく。
   珠太郎は、実家から米と石鹸を持って帰る。福島駅で憲兵が張っていて怖かったと言う珠太郎と、無事を喜ぶ佐喜枝。
    しかし、間もなく珠太郎も徴兵検査を受け、甲種合格、慌ただしく出征して行った。

    池袋新文芸坐で、映画に輝く“天下の美女”山本富士子
    56年大映京都吉村公三郎監督『夜の河(578)』
    京都姉小路から御池、それも堀川の東一帯に京染の店が並ぶ。「丸由」は、舟木由次郎(東野英治郎)が?から暖簾分けをし、今では娘のきわ(山本富士子)の?染めの見事さで高い評価を受けていたが、既に着物の需要自体が減って、この界隈でも3軒程の染屋が潰れている。今日は妹の美代子(山野道子)が、清吉(夏目俊二)と結婚して東京に向かう日だ。由次郎は、妻を亡くしてから、きわと年の変わらない後妻のみつ(橘公子)と再婚して、まだ赤ん坊がいる。丸由の小僧の国男は、労働条件が悪すぎるので、ここを辞めて友人の電機工場に行くと言う。

   きわは妹を送ってから、きわを先生と呼んで崇拝する美大の学生、岡本五郎(川崎敬三)の展覧会に出掛ける。岡本の「髪を洗うT女」と言う絵のTって誰と尋ねると、勿論きわさんですと言う。きわは会場で女学校時代からの同級生のせつ子(阿井美千子)に会う。せつ子は、茶屋の美よしの女将をしている。二人とも戦争中に青春時代を過ごし、30になろうとしているのに独身だ。

竹村の娘あつ子(市川和子)岡本五郎(川崎敬三)竹村幸雄(上原謙)美代の夫清吉(夏目俊二)阪大の助手早坂(舟木洋一)桜屋(星ひかる)篠田(山茶花究)大沢はつ子(大美輝子)開陽亭の女主人(若杉曜子)近江屋妻やす(万代峰子)舟木由次郎(東野英治郎)近江屋(小沢栄)舟木の妻みつ(橘公子)
   
   映画館に行くようになった時には、スクリーンから姿を消していたので、顔立ちが凄く整った、第一回ミス日本ということで、偏見を持っていた山本富士子(苦笑)。大映女優陣の中でも、バンプ振りにやられる若尾文子に比べて、過小評価をしていた自分の子供さ加減を恥じる。完全に脱帽です。

2009年10月9日金曜日

美貌に罪あり

   昨夜の深酒、最近二日酔いにはならないが、体力的に駄目だ。好意を持っている女の子と飲むと、泥酔して自滅するのは、何とかならないものかと思う。

     レジュメを作り直し昼から、学校、2コマ。マスクをしている学生目立つなあ。

    池袋新文芸坐で、映画に輝く“天下の美女”山本富士子

    58年大映増村保造監督『氷壁(573)』
    冬の奥穂高を一人で登る魚津恭太(菅原謙二)の姿がある。クリスマスの街を歩き、料亭浜岸の暖簾をくぐり、店の片隅にリュックを下ろす。板前たちは、皆山ですかと声を掛ける魚津の馴染みの店らしい。主人(中条静夫)が、さっきまで小坂乙彦(川崎敬三)が来ていて珍しいことに全く飲まずに食事だけで、常盤会館の二階で待ち合わせだと言っていたと言う。食事を済ませ、魚津は、常盤会館の喫茶に行ってみると、小坂は、随分待っている雰囲気だった。直ぐに美しい人妻八代美那子(山本富士子)がやって来た。何だか訳ありそうで、山帰りだからもう出ると魚津が言うと、美那子も直ぐに出ますと言う。
    とりあえず魚津が出ると美那子が後を追ってきた。魚津が大森の下宿に帰ると言うと、自分の住まいが田園調布なので、車で送ると美那子。とりあえず車を拾い、田園調布にと言う魚津。美那子は、四年程前から小坂を知っていたが、年齢の離れた八代教之助(上原謙)と結婚した。一昨年のクリスマス偶然出会って、交際が復活し、一度だけ過ちを犯してしまったと言う。今、一方的に小坂から求愛をされることは迷惑なのだと言う。
    翌日魚津は、勤務先の新東亜商事東京支社に出勤する。支社長の常盤大作(山茶花究)に、君は山が好きだが、何で登るのだと声を掛けられる。年末の忙しい時に、休暇を取る魚津は、会社にとって迷惑かもしれないが、皆に好かれているようだ。大阪本社からお電話ですと秘書()が常盤に声を掛けようやく魚津は解放される。魚津は小坂の出版社に電話をして会いたいと告げた。
    日比谷公園だろうか、

小坂かおる(野添ひとみ)小坂の母(浦辺粂子)時松専務(大山健二)小屋番(伊藤光一)上條信一(河原侃二)東京製綱のナイロンザイル
飛騨側から前穂に自分は登る。徳沢小屋で君に会った時には、全て迷いを捨て君にプロポーズをするよと言う。

    59年大映増村保造監督『美貌に罪あり(574)』
     多摩川に近い、東京都下らしい田園地帯を走る汽車から撮影されているらしい光景。タクシーの後部座席に、吉野菊江(山本富士子)と日本舞踊の若手として飛ぶ鳥を落とす勢いの藤川勘蔵(勝新太郎)の姿がある。菊江は車を停めさせ、谷村吉蔵(潮万太郎)にご無沙汰していますと声を掛ける。「あの吉野の娘です。14から東京に出たので、垢抜けてえらい別嬪になってます」と言う吉蔵に、「あの吉野の頑固婆は、いつになったら土地を手放す気になるのか」と答える男。この一帯の田畑を潰して、ベッドタウンとしての団地を建てたい住宅公団の人間らしい。吉蔵は吉野家の小作人だったが、農地解放で土地を得て、更に土地ブローカーとしてかなり儲けていた。
     菊江は藤川を連れ、実家である吉野農園の大きな門の前に来る。オート三輪に花の積込みをしている次女の敬子(若尾文子)と、使用人の清水忠夫(川口浩)に声を掛ける。中に入っていくのを見て、「やっぱり菊江さんは綺麗だなあ。」という忠夫に、「そりゃ、働かないで踊りだけしているからよ」と言う。そこに、ここで蘭を育てている谷村周作(川崎敬三)が現れる。「お姉さん来たわよ。早く何とかしないと、お姉さん取られちゃうわよ。」「菊江さんが来ているですか・・・。」
   菊江は、母親のふさ(杉村春子)に、挨拶し、「先生が今度の発表会用に蘭を見たいというからお連れしてわ」と言う。藤川のいないところで、「あんた、周作さんとの結婚の返事を早くしておくれ」というふさ。「私は、一度も周作さんと結婚すると考えた事はないわ」というもののはっきりしない菊江。


  聾唖学校に通うかおる(野添ひとみ)藤川勘蔵(勝新太郎)吉蔵(潮万太郎)きく(村田扶実子)
粂川女将おくめ(村田知栄子)春枝(三宅川和子)勘吉(春本富士夫)下川(夏木晃)長沢(星ひかる)和田(穂高のり子)片倉一郎(藤巻公義)佐平(見明凡太郎)

2009年10月8日木曜日

台風一過。

久し振りの直撃だし大雨洪水警報が出て、杉並区は土嚢を配布していると聞いて、何年前だったか、ゲリラ豪雨での床上浸水を思い出す。善福寺川が溢れ、床上30cmまで泥水が一瞬に被った。床も壁紙も全部張り替えて貰ったものの、2、3年は、クローゼットなどの湿気が抜けなかった気がする。思えばあれから、人生は下降線を下った気も(苦笑)。
しかし、風は強いものの、日が射して来たので、急いで洗濯、気持ちいいなあ。洗濯機を回してる間、久しぶりに掃除機を掛け、雑誌を束ねる。一息つくと昼寝。窓からの日光が気持ちいい。犬猫の気分だ。

   恵比寿ガーデンシネマで、『キャデラックレコード(572)』。やっぱり、いいなあ。それから、吉祥寺のフレンチへ。料理うまいし、ワインも安いし、こりゃいい店だ。

2009年10月7日水曜日

くノ一とくの一とカールセル麻紀

    何だか喉だけ風邪っぽい。特別熱もだるさもないし、鼻水出る訳でもないので、月曜からフラフラ出歩いたまま、学校に。後期授業初日、担当コマ数は変わらず、一年を二コマ持つことになり、少しだけ変更。

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、CINEMA★忍法帖
   76年東映京都皆川隆之監督『くの一忍法 観音開き(571)』
   元和8年、碓氷峠に於いて、信州上田真田藩の幕府への御用金三万両が奪われた。幕府の威信に懸けて必ずや探し出せと、頭領服部半蔵(名和宏)は、虚無僧姿の三人に命じた。既に潜入した伊賀者たちと、上州高崎、国分寺で絡ぎを取れと言う。
    高崎宿に三人の虚無僧の姿がある。国分寺に向かう途中、白装束の修験者姿の男たちに襲われる。三人が笠を投げ棄てると、女だ。お妖(衣笠恵子)、お炎(堀めぐみ)、お乱(橘麻紀)、三人は伊賀のくの一だった。人数では劣勢だったが、よく戦い、三人程倒すしたところで、首領らしき男(汐路章)の指示で男たちは去った。
   「行こう!」とお妖の声で、絡ぎを取る筈の国分寺に行くと、伊賀者たちが殺され木から吊るされている。「兄さん!!!うっ、うっ、うっ・・。知らなかった。兄さんが先に来ていたなんて・・・。頭領は、何も言ってくれなかった。もっと、優しくして、もっと甘えればよかった・・・。」と泣くお乱。「これでもうみんな、一人ぼっちだ。お炎とあたいは物心ついたときから身寄りはいない。お乱は兄さんと一緒だっただけ幸せだったんだ・・・。あたしたち、忍びには、親もなければ、子もいない、あるのはお役目だけなんだ。」とお妖が言うと、「ごめんよ、女々しいところを見せちまって。奴らは、兄さんを殺してから、私たちを殺りに、戻って来たんだ。」「あいつらは何者だろう。でもあの顔に大きな傷のある男の顔だけは、覚えた・・・」
   高崎の宿の女郎屋、格子の中から客を惹く女たちがある。一人の女郎が二階に上がりながら同僚に、「風邪気味だってのに、あんな化け物みたいな顔の男の相手をしなけりゃいけないなんて、替わっておくれでないかい。」「あたしだって嫌だよ」「ああ、厭だねえ。」階段の踊り場で、お妖が、女郎を気絶させ、入れ替わる。「おう、遅かったじゃねえか。」「あの子は風邪引きで、あたしに変わったよ。」男は、美しく若い女に変わったので、舌舐めずりをし、お妖に挑みかかる。しばらく歓喜の表情だった男の顔が突然苦痛に変わる。お妖は、観音菩薩像を出し、「伊賀忍法、かまきり観音・・・」男のモノを激しい力で締め付け離さないのだ。「碓氷峠で、真田藩の御用金を奪ったのはお前らだろう。何者だ。」脂汗を流しながら、短刀で、お妖を刺そうとする男、「あたしを殺すと、二度と離れなくなるよ。」男は、自分の男性自身を切り取って、逃走する。追い駆けるお妖。しかし、雲水姿のものが、男に吹き矢を放ち、即死させた。その一部始終を見ている山伏がいる。
   お妖、お炎、お乱の三人は、惣月庵という尼寺にいた。壺を股に挟んでいるお炎と、お鉢から直接ご飯を食べ続けるお乱に、お妖は「お炎!!もっと絞めろ!!お乱!!米ばっかり食うな!!ちゃんと頭領から言われている掟てを覚えているかい?」「ひとつ、くの一は、男に惚れるべからず。ひとつ、くの一は、女であって女にあらず・・・・・」
   尼寺に昨夜の山伏(岡崎二朗)がやってきた。「御免、五道の教えを賜りたく・・・。」「やばい、問答されて、留守に潜り込んでいることが、バレちまう・・・」お乱が「じゃあ、あたしが出て行ってみる。」「拙者、了仙と申す。五道の真髄をご教授されたし。」しかし、勿論、了仙が繰り出す無言での手での問答は分かりはしない。山伏が帰ってゆくのを、追いかけたお妖は、「あんた、ただの山伏じゃないね。」「さすが、伊賀のくの一。俺は、真田忍者の風響之介だ。真田藩の三万両は俺がいただく。お前らは、怪我をしないうちに、江戸に帰れ!!。」お妖は、観音像を取り出し、「伊賀忍法、招き観音・・・」全裸のお妖が手招きをしているのだ・・・。しかし、風響之介には通用しない。「伊賀忍法、招き観音。確かに気に入った。気に入りついでに教えてやろう。三万両を奪ったのだ、鍬形衆だ。」
   尼寺に、腹痛を訴える女(カルーセル麻紀)がやってくる。お乱が苦しむ女を介抱していると、女の身体には、薔薇と牡丹の刺青がある。見とれているお乱に、女は、「鍬形忍法 薔薇の刃!!」といって、薔薇の茎で刺そうとする。鍬形衆のくの一、葉月だったのだ。間一髪、お妖は葉月の術を破る。お乱は、逆にこの女は私に任せてと言って、葉月の身体を愛撫する。激しい絡み合いだ。そして虜にした上、「一緒に帰ろう。あなたの家に帰ろう。」と囁く。葉月は「安中の巴屋。」と告げて絶頂を迎えた。

   安中の旅籠、巴屋に葉月が戻ってきた。鍬形衆の頭領鍬形一獄(汐路章)

  お妖役の衣笠恵子、少し上に尖った鼻と少し離れた目、スレンダーなプロモーション、裸にもなって、絡みも挑戦。演技も取り立てて悪くもないし、どこかで見た気がして気になり、検索すると、この映画以外は、1976年の『新仁義なき戦い 組長最後の日』のクレジットしかない。勿論観ているが、そんなもんだったかなあと更に調べると、2chにこんな書き込みが・・《“深田由美”でデビュー後、“深田ユミ”で東京12ch(現・TX)『プレイガール』第102話にゲスト出演、 続いてレギュラーに決まり、片山由美子さんと名前が同じだからということで、“深田ミミ”に改名。73年東映『温泉おさな芸者』に出演、 番組『プレイガール』終了後、事務所が変わり“奈々ひろみ”に改名。この名前で東京12ch(現・TX)『プレイガールQ』に二度ゲスト出演。 76年、再び事務所が変わって、“衣笠恵子”に改名。77年に再び“深田ミミ”に戻った 。》
  ダッチロールのような変遷だ。プレイガールと平凡パンチあたりのグラビアで拝顔していたのかもしれ
ないな。タイミングが悪かったんだろうか。いっそ、日活ロマンポルノに入っていれば、アイドル女優になれたのかもしれないなあ。


2009年10月6日火曜日

欽一と欣二。伊賀と甲賀。

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、CINEMA★忍法帖


    69年東宝福田純監督『コント55号 俺は忍者の孫の孫(568)』
    テレビ局のアナウンサー(砂川啓介)が、子供たちに大きくなったら、何になりたいかと尋ねる。レーサー、プロ野球選手などが上がるが、途中から政治家になって金儲けがしたいという声が上がる。どういう人が政治家に向いているのかと聞くと、誤魔化すのが上手い人とか、平気で嘘がつける人と散々だ。
    消防士姿の伊賀欽一(萩本欽一)が消防署に駆け戻って、「大変だ!大変だ!緊急出動だ」と同僚を起こす。係長が何があったと尋ねると、焼身自殺をしようとしている男がいると言う。ビルの屋上に、腐敗政治撲滅と幟を立て、頭から灯油を被る男(坂上二郎)がいる。男は、遠く鈴鹿の山深く、甲賀の里からやって来た甲賀二郎と名乗り、下から見上げる群集に向かって、巨大なライターを取り出し、火を点けようとする。

    81年東映京都深作欣二監督『魔界転生(569)』
   寛永15年、徳川幕府は、備前の国、島原で起きた一揆に12万の軍勢を送り、94日の死闘の末、1万8千のキリシタン伴天連信徒を悉く惨殺、戦果を過大に伝える為、1つの首を2つにし、4万5千個の首を晒したと宣伝した。勿論、乱の総大将、天草四郎時貞(沢田研二)の首も、その中にある。幕府方総大将松平伊豆守信綱(成田巳樹夫)らの前で、薪能が奉納されている。
   しかし、雷鳴が轟く中、突然激しい風が起こり、天草四郎の首が宙を舞い、開眼する。黄泉の国から戻って来たのだ。伊豆守始め徳川の軍勢は全て気絶し、倒れた。一人、能を舞っていた男は、無数の首の中を歩き出す。面を取ると天草四郎だ。「神よ!全能の神よ!94日の間、神の国と神の義を信じて、老若男女、戦い続けた。しかし、なぜ我々を見捨てたのだ。これより、神と兄弟と別れ、復讐の旅に出でる。復讐するは我にあり。我これを報いん。エロエムエッサイム、エロエムエッサイム・・・。」
  肥後の国、熊本。細川家の菩提寺、泰勝寺、天草四郎の姿が、細川ガラシャの墓前にある。想いと憎しみの美をもって黄泉の国からガラシャの魂を呼び戻す。夫である忠興

    終盤の燃え盛る江戸城の中での、柳生但馬守と十兵衛との剣に賭ける父子の死闘は、若山富三郎を得て、やはりかなりの見せ場だ。
  セットの大きさも東映京撮ならでは。

    64年東映京都船床定男監督『隠密剣士(570)』
    大名行列、近江のあたりらしい。東海道の進路に縄が張られ、犬が繋がれている。停まる行列に次々と弓矢が放たれる。黒装束の忍者が現れ、供侍たちを倒す。
江戸城、老中たちが集まっている。老中首座の松平定信(加賀邦男)に詰め寄る。大名行列への襲撃は既に6件となっている。このままでは、御政道への信頼は失われるだろう。この件の黒幕と目される尾張家に厳しく出ないのは御三家だからではないかと言うのだ。定信は、確たる証拠のないまま、尾張様を訴えても、こちらが潰されるだけ、既に手を打ってござる。流石定信と老中たちが感心をすると襖の奥から鈴が鳴る。定信が首尾はと声を掛けると、公儀隠密、伊賀の組頭高山太郎佐(品川隆二)が、無事手に入れましてございます、今夜半には松平様のお屋敷に届けられるかと…。これで、一気に決着をつけ申すと定信。
    深夜の江戸の街を疾走する町人姿の男がある。西念寺の山門を叩くが、反応はない。塀の上に軽々と飛び上がる。中に飛び降りると大量の撒き菱だ。既に甲賀の者たちに待ち伏せされていたのだ。「尾張から86里の道を2日で走りきるとは、流石伊賀の市之丞だな。」「うっ、するとうぬらは…」「甲賀組組頭、甲賀竜四郎だ。」伊賀の市之丞は、あっけなく、甲賀竜四郎(天津敏)に討たれる。死体を探った配下の忍者に、「頭領、こやつ体には何も…」「くそ、誰かに渡したのか…。」
     橋を渡る男に、甲賀忍者が襲いかかる。変わり身の術で、何とか水中に逃れる。息抜き用の竹筒を目掛け、手裏剣を放つ甲賀忍者。
脚に板を履き、水面を歩く甲賀忍者、水面に出ていた竹を見つけるが、逆に水中に引き込まれる。水面で凄まじい死闘が繰り広げられる。その時、秋草新太郎(大瀬康一)は、周作(竹内満)と釣りをしに舟を出していた。そこに、伊賀者が上がってくる。助け起こすと、反対側から甲賀が現れ邪魔立てするとうぬらも斬るぞと言う。助けた者を斬るぞと言われ差し出す道理はなかろうと新太郎。新太郎の腕を見極め、下がる甲賀忍者。瀕死の伊賀者は、蜘蛛の水糸と言い残して、水中に没した。
     新太郎と周作は釣りから戻る途中だ。「おじちゃん、魚は一匹も釣れなかったけれど、忍術使いが釣れたね。何で最後に死を選んだの」「死に顔を晒してはいけない身だったんだろう。うぬっ!周作下がっておれ!」13人の甲賀忍者が、取り囲み、伊賀者から受け取ったものを大人しく渡せと言う。何も受け取っていないと新太郎が言っても信じない。では、悪いが死んでもらおうと組頭の甲賀竜四郎の命で、切り掛かってきた。しかし、 新太郎の腕の前に、押し包みながらも苦戦する甲賀衆。そこに、西念寺の住職呑海和尚(宇佐美淳也)が通りかかり、一緒にいた男が助太刀に入り、何とか甲賀衆を退散させた。男は伊賀三の組、霧の遁兵衛(牧冬吉)。呑海和尚は、西念寺の庭で男死んでいたので、もしやと思い、遁兵衛どのを呼び、公儀隠密が討たれたことが分かったのだ。何故甲賀にと尋ねられ、川での出来事を話すと「陣助ほどの者が討たれるとは…」と絶句する遁兵衛。
       新太郎は、徳川家の血筋で、幼名信千代と言った。弟の豊千代が第11代将軍・徳川家斉になったことで、呑海が預かり、幼少の頃より、西念寺で育ち、浪人秋草新太郎として、のんびり気儘な暮らしを送っていた。
     新太郎は、遁兵衛に、蜘蛛の水糸の意味を尋ねる。遁兵衛は、それは忍者の符丁で、大事なものを水底に隠すと言う意味だと教える。しかし、西念寺の地下には、甲賀のくノ一、霞(藤純子)が忍び込んでいた。報せを聞き、甲賀竜四郎たちは、陣助を殺った川に走る。果たして竹筒が沈められていた。ほくそ笑みながら竜四郎が、巻物を広げると、「お探しのものは、既に頂戴して候。秋草新太郎」と書かれてある。地団駄を踏む甲賀衆。
     新太郎は、公儀隠密の伊賀者たちが、命を賭けて、尾張城から盗み出し、運んだ巻物を松平定信に渡す。中をご覧になられたかと聞かれ、関心などない。自分の任務のために一命を賭けた者に報いたかっただけだと言う。これは、尾張家が、現将軍が幼少過ぎるので、退位をさせ、尾張の?を将軍にとの密約を、周りの大名たちに署名させた連判状なのだと 言う。これすなわち尾張家の謀叛の証拠なのだ。
     数日後、呑海和尚が、新太郎に話しがあると言う。尾張家謀叛を問い質すために、将軍家から尾張大納言への極秘の使者を立てることになったが、甲賀衆の攻撃を考えると、新太郎にその大任を委ねたいと言うのだ。しかし新太郎は、市井の気儘な暮らしを求めて、将軍家を出たのに、徳川家内の揉め事を引き受けるのは嫌だと固辞する。
    苦慮の末、定信と呑海は、伊賀組組頭の高山太郎佐を差し向けることにする。呑海の前で、伊賀二百人の中で選りすぐりの12名を連れ、必ずや尾張に到着しますと言って、12名を紹介する。甲賀は13名、いや12名に減りますると言うと、畳に刀を突き立て甲賀者をあぶり出した。自爆して果てる甲賀忍者。では、今宵伊賀江戸屋敷に集まれと言って分かれる。
    呑海は、新太郎に意見をしようと部屋に行くが、もぬけのからだ。本堂に戻った呑海の目に、高山太郎佐と12名の伊賀衆の名前が全て書かれた紙が貼ってあり、太郎佐の名に墨が引かれてあった。
その頃、伊賀江戸屋敷に身支度をする太郎佐の姿があるが、既に甲賀衆が入り込み、囲まれてた。あっという間に打ち果たされる太郎佐。しかし、太郎佐の身体にも、屋敷内にも連判状はなかった。
   12名が集まってきた。頭領はどこに行ったのだろうと語り合いながら、何だか物見遊山に出かけるような伊賀者たち(苦笑)。小部屋かもしれん、わしが呼びに行くと回転する壁に入っていく忍者は、そのまま出てきたが、背中を刺されて息絶えている。甲賀の襲来だと慌てるが既に遅し、現れた甲賀衆と切り結ぶ。遁兵衛よ、我らがここで抑える間に急げと、一人外に逃れる。この時点で、連判状を持っているのが、遁兵衛だということは誰にも分る。外に出た遁兵衛の前に、甲賀竜四郎が立ち塞がる。危うし!遁兵衛!!
  しかし、そこに、秋草新太郎の姿が!!甲賀竜四郎は、配下の忍者に「引け!!!」と叫んだ。伊賀の忍者は二人斬られた。一命に賭けても尾張に行くぞと言い合う伊賀組。そこに周作が、新太郎と自分の笠を持ってきた。秋草さまが行って下さるならと、伊賀の者たちは大喜びだ。

霞(藤純子)霧の遁兵衛(牧冬吉)神保小平太(尾形伸之介)石川平内(国一太郎)

  とにかく、公儀隠密の伊賀ものは、弱い上に、考えが本当に浅い(失笑)。たぶん、映画を見ているよい子のみんなは、そっちへ行っちゃ駄目だ!!!とか、騙されるな!!とか大きな声でスクリーンに向かって叫んだんだろうな。


2009年10月5日月曜日

佐久間良子は、ぽっちりした唇が最高だ。

     ランチミーティングの予定が飛んだので、久し振りに惣菜を4品作って、独身美人OLに届け、後輩Kらと4人で昼食。そこから、N氏の市が尾の自宅で打合せ。

   神保町シアターで、川本三郎編 鉄道映画紀行 思ひ出は列車に乗って

   60年東映東京関川秀雄監督『大いなる驀進(567)』
    東京駅の前で、若い男女が揉めている。「辞めないで」「今のままじゃいつまで経っても結婚出来ないじゃないか」「でも辞めないで頂戴。」「いつまで待てば結婚出来るんだ。僕は金のことで君と結婚出来ないことに、もう我慢が出来ないんだ。今回の長崎への往復の乗務を最後に辞めるんだ」と言って、東京駅舎に入って行く若者は矢島敏夫(中村賀津雄→嘉葎雄)。寝台特急さくらのボーイだ。見送る娘は、矢島の恋人の望月君枝(佐久間良子)だ。ボーイの白い制服に着替える矢島。専務車掌の松崎義人(三國連太郎)が、点呼をするぞと声を掛ける。東京駅当直助役(沢彰謙)が、下り8号点呼と上り9号の点呼を行う。
東京駅のホームにさくらが入っている。憲政党の大物代議士坂之上坂二郎(上田吉二郎)と秘書(大村文武)の周りには見送りの党員が幟を持って囲んでいる。また、社内結婚のカップル(木川哲也、片岡昭子)が新婚旅行に出るらしく、仲間たちが歌声で送っている。また、赤い帽子を被った派手な身なりの女(小宮光江)と男(北川恵一)は駆け落ちらしい。憂鬱そうで落ち着かない紳士(小川虎之介)黒いサングラスにスーツの怪しげな男時定(波島進)、辺 りを窺う男(花沢徳衛)など雑多な客が乗り込んでくる。
松崎と矢島が、食堂車を通る際に、ウェイトレスの松本芳子(中原ひとみ)が、今日は矢島さんの好きなコロッケだから、取っておくわと声を掛ける。芳子は矢島のことが好きなのだ。周りの食堂ガール(古賀京子、岡田悦子)たちに冷やかされる芳子。しかし、今日の矢島は不機嫌だ。
   いよいよ発車だ。坂之上先生万歳!の連呼や、新婚旅行に贈る歌声で、ホームは賑やかだ。階段を駆け上がって、動き始めた列車に飛び乗る君枝の姿がある。
    もう今回の乗務で辞めると言う矢島に、4年間頑張って来たのに勿体無いじゃないかと松崎。僕は4年も無駄にしてきたと後悔していますと矢島。そこに矢島の同僚が、お前の恋人が乗ってるぜと声を掛ける。驚いて、教えて貰った二等席に行くと、君枝が座っている。君枝の隣に座っていた山本年子(大原幸子)が、博多には何時に着きますか?と心配そうに尋ねてきた。翌日の朝に着くと教えてから矢島は、君枝を乗務員室に連れてゆく。食堂車の営業開始のアナウンスをしている芳子を追い出したので、芳子は気が気ではない。入場券で乗った君枝は、矢島が考えを改めるまで長崎まで乗って行くと言う。そこに、芳子から話を聞いた松崎がやってきて、乗客の確認はしたのかと言う。
    矢島を仕事に戻らせて、松崎は君枝と話しをする。君枝の父親が病気になり、幼い弟たちも含めた生計は、君枝の月12000円の給料で立てている。父親が復職出来るまで待ってくれと言って2年、一向に進展しないことに苛立った矢島は、君枝の一家を面倒みるためには、今の仕事を辞めて、昔の友人と喫茶店の共同経営者になるしかないと思い込んでいる。しかし、かって鉄道員であることに誇りを持っていると言った矢島に、辞めて欲しくないのだと君枝。   
   富士川鉄橋を渡る頃、時定は、5号車に殺人犯が乗っていると密告する。静岡駅に着き立川七郎(直木明)は鉄道公安官に逮捕、連行される。静岡駅では、憲政党の名古屋支部の人間がやはり坂之上のために集まり万歳三唱、更に新婚カップルのために東邦化成静岡工場の組合員がやはり歌を歌っている。静岡駅を出るさくら。鉄道公安室で、立川は、「昨日8時、新宿で黒木組の若いやつを、ある男の依頼で殺した。そいつが裏切ったんだ。密告した奴は分かっている」と言う。赤信号の灯りに照らされて笑ほくそ笑む時定の姿がある。協力ありがとうございますと頭を下げる矢島に、「新宿2丁目8番地で店をやっている時定やすおだと名乗る」
   夕食の時間になり、食堂車は満員だ。坂之上は、秘書と一緒にやってきて、ビールとステーキを注文する。坂之上の座席の傍の憂鬱そうな紳士は、ウィスキーを飲み続けている。辺 りを窺う男(花沢徳衛)と時定は相席だ。赤い帽子を被った派手な女の連れの男は食事をしながらも、周囲をきょろきょろ見て落ち着かない。芳子ら食堂ガールたちは狭く、時に揺れる社内を器用に動いて、注文を聞き、料理を運び、会計をしている。坂之上が立ち上がって席に戻る際に辺 りを窺う男(花沢徳衛)が擦れ違う。

   ウイスキーのポケット瓶を呷る時定の寝台の斜め上が、男(花沢徳衛)だ。普通座席の検札をする松崎と矢島。入場券を出す君枝に、次の名古屋で下車して東京に帰れと矢島は言うが、長崎まで行くという君枝に、特急券も含め2970円を受け取る松崎。君枝の隣の娘が、再び博多の到着時間を尋ねる。博多の駅からバスで二時間かかる場実家で母親が危篤だと言う。
  9時18分名古屋駅に到着する。坂之上を見送りに、やはり憲政党名古屋支部の支部員たちが集まっている。新婚のカップルは、ここで乗り換えて、伊勢に行くらしい。幸せそうな二人の後姿を、矢島はホームで、君枝はデッキで、羨ましそうに眺めている。
  名古屋を出ると、食堂車は営業終了だ。松崎と矢島はようやく遅い夕食だ。矢島が辞めることを何とか思いとどまらせようと、ハラハラ見ている君枝。芳子は「恋人来たわよ」と矢島に言う。「関係ねーや。今日、コロッケあるんだろ。」「もうおしまいです。」「取っておくって言ってただろ。」「ないものは、ありません。」松崎が「僕はカレーライス」と注文する。「カレーライスまずいですよ」と矢島。「食べてから言ってください。」と芳子。「僕もカレーライス」「まずければ結構です。」君枝が気になる芳子は不機嫌だ。
  精算をしている松崎の運賃の計算を手伝いながら矢島は、「フー、金儲けてやる」「金なんて、そう簡単に儲かる訳じゃないんだよ。」「そんなことじゃ、一生うだつが上がらないですよ。」カレーライスを二つ、運んでくる芳子。二人が食べ始めると、君枝がやってきて、電報お願いしますと松崎に言う。「矢島さんに話しがあるので、長崎に行く。キミカ(ここでは、そう言っているように聞こえたんだが・・・)」 
  更に、坂之上の秘書が松崎のもとにやってきて、この車内に掏摸がいると言う。坂之上が、総裁から貰った高級な金の懐中時計が盗まれたと言う。同乗する鉄道公安官に直ぐに列車を止め全乗客を身体検査しろと無理難題を言う。ななめ前の寝台では、カーテンを閉め、乗車以来憂鬱の表情だった男が、大量に薬を飲んでいる姿がある。矢島が、松崎のもとにやってきて、乗客に掏摸の名人が乗っているという。以前、東西掏摸名人対決というイベントがあって優勝した「カメレオンの松」が213番にいるのだ。しかし、証拠はないので、運賃を払っていただいた人は皆、お客様だと、矢島を窘める松崎。
  大阪駅に到着した。サングラスを掛けた怪しい男(曽根晴美)が乗ってくる。また大阪大学医学部の准看護婦森原数子(久保菜穂子)が、阪大医局員(滝沢昭)に送られてくる。明日の2時までに、長崎医大まで血清を届けなければ、3人の命が掛かっているという。数子は、君枝の前の席に座った。ここでもやはり、憲政党の大阪支部員たちが、浴衣姿の坂之上を囲み、万歳三唱をしている。山陽本線は非電化区間があるので、ここからは蒸気機関車に変わる。機関士も引き継がれる。しかし、大型の台風19号が四国の南まで来ており、直撃を受ける可能性があった。


   新藤兼人の脚本だけあって、結婚に悩む若い男女の恋物語に、グランドホテル形式に沢山登場してくる脇役たちのエピソードがうまく織り込まれている。
   こういう企画でないと上映されない作品だと思うが、鉄道マニアではない自分でも、そうか、この頃は、山陽本線は電化されていなかったら、大阪で電気機関車から蒸気機関車に変わり、機関士も変わるんだったなとか、食堂車で食事をするというのはどういう気分だろうかとか、小学校時代の交通図鑑を何度も読み返したことが思い出され、なかなか男子心を掻き立てる映画だ。

2009年10月4日日曜日

にちようびの夕方。

    神保町シアターで、川本三郎編 映画鉄道紀行 思ひ出は列車に乗って

    71年東宝石田勝心監督『父ちゃんのポーが聞こえる(566)』
    蒸気機関車C56、機関手の杉本隆(小林桂樹)と機関助手の丸山源太郎(藤岡琢也)が、発車信号の確認をしながら、乗り込む。お互いヘボ機関手、ヘボ釜焚きと悪口を言い合う、長い相棒だ。丸山が、仕事が終わったら話があると言う。
   国鉄官舎の杉本の家、長女の恵子(藤るみ子)が妹の則子(吉沢京子)に、「ノッコちゃん。お父さん遅いわね。お腹空いたでしょ、夕御飯食べようか」と声を掛ける。母の位牌にお供えをするついでに、つまみ食いをしていた則子は、慌てて飲み込み、「もうちょっと、父ちゃんを待とう。また千鳥かしら…」と答える。
    その千鳥で、杉本と丸山が飲んでいる。「話は何だ?早く言えよ」「う…ん。ノッコちゃんのことだ。うちは、かみさんとの間に子供が出来なかったので、二人とも娘みたいに思っている。だからのんちゃんをうちにくれないか…」「そんなことか…」「おまえんちには恵子ちゃんもいるし、奥さんが亡くなった時には、うちで預かったり、していたじゃないか」「恵子は来月結婚して、東京に行ってしまうんだ。第一、則子はお父さん子だから、本人が納得しないよ」と言いながら、則子は目に入れても痛くないほど可愛がっていて、手放すことなど自分が考えられないのだ。丸山が酔って絡み始め、女将(千石規子)に止められている。そこに、当の則子が「父さん、やっぱりここだったのね」と入って来る。丸山はご機嫌で、隣りに座ってジュースでも飲まないかと声を掛けるが、お姉ちゃんが、ご飯の用意して待っているからと言う。丸山は一人残される。
    恵子の東京への嫁入り前に、杉本は休暇を取った。太平洋側の海が見たいと言う則子の希望で、行川アイランドに出掛ける。ポリネシアンショーを見ている三人。ショーが終わり、はしゃいで真似をしていると、転んでしまう則子。
    国鉄御宿保養所、杉本が風呂から上がると、恵子は3枚絵葉書を書いて郵便局に出しに行ったと言う。3枚?と杉本が言うと、お姉さんの婚約者に一枚、私の義理のお兄さんになる人に一枚と、お父さんの義理の息子になる人に一枚、と言って笑う則子。昼間転んで出来た膝小僧の傷を消毒し絆創膏を貼ってやる杉本。ビールを飲みながら、則子に話しがあると言い出す杉本。「新しいお母さんのこと?」「何で知っていたのか…」「お姉さんに聞いたわ」「その話を聞いて則子はどう思った?」「小学生の時だったら、嫌だと思っただろうけど、もうそんな子供じゃないわ。お父さんの気持ちを尊重するわ。いつ頃?」「恵子の結婚が片付いてからと思っている」国鉄官舎内での結婚式。
    仲人の機関区長の一本松(十朱久雄)が高砂やと謡曲を唸っている。新婦の初江(司葉子)が若くて美人だ。お銚子を運んできた則子は、転んでしまう。酒を掛けられた丸山は、これこそ文字通り浴びるほど呑んだと言うことだとみなを笑わせる
    初江がアイロン掛けをしていると、則子が帰宅する。ノッコちゃんお帰りなさいと声を掛けても、返事がない。自分を信頼してくれていないのかと思いながら、則子の部屋に何度か声を掛けて入ると、則子は頬に大きな治療の後がある。学校の廊下で転んで顔を打ったのだと言う。不安げな則子に、あまり気にしない方がいいと言いながら、夜遅くに帰宅した夫に報告する。非番の日に、金沢の鉄道病院に連れて行こうという杉本。鉄道病院の外科の医師は、検査をしても特に異常は認められない、転びやすいのは偏平足が原因だろうと言う。
    しかし、ある日、杉本は学校に呼ばれ、担任や校長から、則子は何度も学校で転ぶので、体育の授業を見学させている、中学3年という時期は忍びないが、市民病院に、肢体不自由児を入院させながら、勉強させる「こまどり学園」があるので、そこに入ったらどうかと勧められる。こまどり学園では、担任の元橋先生(吉行和子)に、本を貸してもらい、詩を書いていると言うと、生きている証しとしていいことだと言われる。
    入院の時点では、則子の病名は分からなかった。しかし、徐々に症状は進行し、下肢、左手と麻痺は進む。嚥下もつらくなり始める。立って歩くことは出来なくなり、車椅子の生活に。杉本と初江の間に男の子が生まれた。赤ん坊を背負って着替えを持ってくる初江に、ついあたってしまう則子。隣のベッドのみどり(山添三千代)は小学生だったが、かなり症状は改善されてゆく。ある日、近所の若者のグループが、こまどり学園の生徒たちに絵画を教えにやってくる。その中の吉川道夫(佐々木勝彦)という青年に、則子は淡い恋心を感ずる。その頃、則子は初潮を迎えた。
   国鉄の方針で、暫時蒸気機関車を廃止して、電気機関車や駆動車に変えてゆくことになった。そのために、杉山は、電気機関車の機関士の試験か、管理職試験を受けるように命じられる。機関士試験を受けるためには、二か月間名古屋の中部鉄道学園で講義を受けなければならない。おぶさった杉山からその話をされた則子は、二か月なんかすぐだから、行ってくれと健気にいい、近くに生えていたポプラの葉を捥いで、お守り代わりに渡す。


   難病もの。勿論タイトルと内容は知っていたが、この映画は観た記憶がない。吉沢京子の可憐さは
ピークで、こんな可愛い子が、こんな目にと、劇場中がすすり泣きの大合唱に。みんなが鼻をすすると我に返ってしまう、へそ曲りなのだ。


   体験入学の講師。今日は理系の院生だ。私でも勿体無いとも思うし、親だったら、尚更だろうな。焚き付けだことになったら、申し訳ない気もするが、頭はいいので、必ずしも技術者になる必要もないだろう。理数系の頭を持った人間で、人付き合いを厭わない性格なら、食べて行く道はいくらでもあるなんて言うと、人の親になったことのない私の、極めて無責任な意見だと怒られてしまうだろうが・・・(苦笑)。

    新宿伊勢丹に行き、阿佐ヶ谷ラピュタで、隠密剣士を観ようと思ったが間に合わなかった。久し振りに、日曜の夕方に、西荻の街をぶらり、やけに人が多い。博華で餃子とビールと思ったら定休日、では久し振りに、美少女インド料理と思ったら、外に待っているお客が!!!