2009年10月6日火曜日

欽一と欣二。伊賀と甲賀。

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、CINEMA★忍法帖


    69年東宝福田純監督『コント55号 俺は忍者の孫の孫(568)』
    テレビ局のアナウンサー(砂川啓介)が、子供たちに大きくなったら、何になりたいかと尋ねる。レーサー、プロ野球選手などが上がるが、途中から政治家になって金儲けがしたいという声が上がる。どういう人が政治家に向いているのかと聞くと、誤魔化すのが上手い人とか、平気で嘘がつける人と散々だ。
    消防士姿の伊賀欽一(萩本欽一)が消防署に駆け戻って、「大変だ!大変だ!緊急出動だ」と同僚を起こす。係長が何があったと尋ねると、焼身自殺をしようとしている男がいると言う。ビルの屋上に、腐敗政治撲滅と幟を立て、頭から灯油を被る男(坂上二郎)がいる。男は、遠く鈴鹿の山深く、甲賀の里からやって来た甲賀二郎と名乗り、下から見上げる群集に向かって、巨大なライターを取り出し、火を点けようとする。

    81年東映京都深作欣二監督『魔界転生(569)』
   寛永15年、徳川幕府は、備前の国、島原で起きた一揆に12万の軍勢を送り、94日の死闘の末、1万8千のキリシタン伴天連信徒を悉く惨殺、戦果を過大に伝える為、1つの首を2つにし、4万5千個の首を晒したと宣伝した。勿論、乱の総大将、天草四郎時貞(沢田研二)の首も、その中にある。幕府方総大将松平伊豆守信綱(成田巳樹夫)らの前で、薪能が奉納されている。
   しかし、雷鳴が轟く中、突然激しい風が起こり、天草四郎の首が宙を舞い、開眼する。黄泉の国から戻って来たのだ。伊豆守始め徳川の軍勢は全て気絶し、倒れた。一人、能を舞っていた男は、無数の首の中を歩き出す。面を取ると天草四郎だ。「神よ!全能の神よ!94日の間、神の国と神の義を信じて、老若男女、戦い続けた。しかし、なぜ我々を見捨てたのだ。これより、神と兄弟と別れ、復讐の旅に出でる。復讐するは我にあり。我これを報いん。エロエムエッサイム、エロエムエッサイム・・・。」
  肥後の国、熊本。細川家の菩提寺、泰勝寺、天草四郎の姿が、細川ガラシャの墓前にある。想いと憎しみの美をもって黄泉の国からガラシャの魂を呼び戻す。夫である忠興

    終盤の燃え盛る江戸城の中での、柳生但馬守と十兵衛との剣に賭ける父子の死闘は、若山富三郎を得て、やはりかなりの見せ場だ。
  セットの大きさも東映京撮ならでは。

    64年東映京都船床定男監督『隠密剣士(570)』
    大名行列、近江のあたりらしい。東海道の進路に縄が張られ、犬が繋がれている。停まる行列に次々と弓矢が放たれる。黒装束の忍者が現れ、供侍たちを倒す。
江戸城、老中たちが集まっている。老中首座の松平定信(加賀邦男)に詰め寄る。大名行列への襲撃は既に6件となっている。このままでは、御政道への信頼は失われるだろう。この件の黒幕と目される尾張家に厳しく出ないのは御三家だからではないかと言うのだ。定信は、確たる証拠のないまま、尾張様を訴えても、こちらが潰されるだけ、既に手を打ってござる。流石定信と老中たちが感心をすると襖の奥から鈴が鳴る。定信が首尾はと声を掛けると、公儀隠密、伊賀の組頭高山太郎佐(品川隆二)が、無事手に入れましてございます、今夜半には松平様のお屋敷に届けられるかと…。これで、一気に決着をつけ申すと定信。
    深夜の江戸の街を疾走する町人姿の男がある。西念寺の山門を叩くが、反応はない。塀の上に軽々と飛び上がる。中に飛び降りると大量の撒き菱だ。既に甲賀の者たちに待ち伏せされていたのだ。「尾張から86里の道を2日で走りきるとは、流石伊賀の市之丞だな。」「うっ、するとうぬらは…」「甲賀組組頭、甲賀竜四郎だ。」伊賀の市之丞は、あっけなく、甲賀竜四郎(天津敏)に討たれる。死体を探った配下の忍者に、「頭領、こやつ体には何も…」「くそ、誰かに渡したのか…。」
     橋を渡る男に、甲賀忍者が襲いかかる。変わり身の術で、何とか水中に逃れる。息抜き用の竹筒を目掛け、手裏剣を放つ甲賀忍者。
脚に板を履き、水面を歩く甲賀忍者、水面に出ていた竹を見つけるが、逆に水中に引き込まれる。水面で凄まじい死闘が繰り広げられる。その時、秋草新太郎(大瀬康一)は、周作(竹内満)と釣りをしに舟を出していた。そこに、伊賀者が上がってくる。助け起こすと、反対側から甲賀が現れ邪魔立てするとうぬらも斬るぞと言う。助けた者を斬るぞと言われ差し出す道理はなかろうと新太郎。新太郎の腕を見極め、下がる甲賀忍者。瀕死の伊賀者は、蜘蛛の水糸と言い残して、水中に没した。
     新太郎と周作は釣りから戻る途中だ。「おじちゃん、魚は一匹も釣れなかったけれど、忍術使いが釣れたね。何で最後に死を選んだの」「死に顔を晒してはいけない身だったんだろう。うぬっ!周作下がっておれ!」13人の甲賀忍者が、取り囲み、伊賀者から受け取ったものを大人しく渡せと言う。何も受け取っていないと新太郎が言っても信じない。では、悪いが死んでもらおうと組頭の甲賀竜四郎の命で、切り掛かってきた。しかし、 新太郎の腕の前に、押し包みながらも苦戦する甲賀衆。そこに、西念寺の住職呑海和尚(宇佐美淳也)が通りかかり、一緒にいた男が助太刀に入り、何とか甲賀衆を退散させた。男は伊賀三の組、霧の遁兵衛(牧冬吉)。呑海和尚は、西念寺の庭で男死んでいたので、もしやと思い、遁兵衛どのを呼び、公儀隠密が討たれたことが分かったのだ。何故甲賀にと尋ねられ、川での出来事を話すと「陣助ほどの者が討たれるとは…」と絶句する遁兵衛。
       新太郎は、徳川家の血筋で、幼名信千代と言った。弟の豊千代が第11代将軍・徳川家斉になったことで、呑海が預かり、幼少の頃より、西念寺で育ち、浪人秋草新太郎として、のんびり気儘な暮らしを送っていた。
     新太郎は、遁兵衛に、蜘蛛の水糸の意味を尋ねる。遁兵衛は、それは忍者の符丁で、大事なものを水底に隠すと言う意味だと教える。しかし、西念寺の地下には、甲賀のくノ一、霞(藤純子)が忍び込んでいた。報せを聞き、甲賀竜四郎たちは、陣助を殺った川に走る。果たして竹筒が沈められていた。ほくそ笑みながら竜四郎が、巻物を広げると、「お探しのものは、既に頂戴して候。秋草新太郎」と書かれてある。地団駄を踏む甲賀衆。
     新太郎は、公儀隠密の伊賀者たちが、命を賭けて、尾張城から盗み出し、運んだ巻物を松平定信に渡す。中をご覧になられたかと聞かれ、関心などない。自分の任務のために一命を賭けた者に報いたかっただけだと言う。これは、尾張家が、現将軍が幼少過ぎるので、退位をさせ、尾張の?を将軍にとの密約を、周りの大名たちに署名させた連判状なのだと 言う。これすなわち尾張家の謀叛の証拠なのだ。
     数日後、呑海和尚が、新太郎に話しがあると言う。尾張家謀叛を問い質すために、将軍家から尾張大納言への極秘の使者を立てることになったが、甲賀衆の攻撃を考えると、新太郎にその大任を委ねたいと言うのだ。しかし新太郎は、市井の気儘な暮らしを求めて、将軍家を出たのに、徳川家内の揉め事を引き受けるのは嫌だと固辞する。
    苦慮の末、定信と呑海は、伊賀組組頭の高山太郎佐を差し向けることにする。呑海の前で、伊賀二百人の中で選りすぐりの12名を連れ、必ずや尾張に到着しますと言って、12名を紹介する。甲賀は13名、いや12名に減りますると言うと、畳に刀を突き立て甲賀者をあぶり出した。自爆して果てる甲賀忍者。では、今宵伊賀江戸屋敷に集まれと言って分かれる。
    呑海は、新太郎に意見をしようと部屋に行くが、もぬけのからだ。本堂に戻った呑海の目に、高山太郎佐と12名の伊賀衆の名前が全て書かれた紙が貼ってあり、太郎佐の名に墨が引かれてあった。
その頃、伊賀江戸屋敷に身支度をする太郎佐の姿があるが、既に甲賀衆が入り込み、囲まれてた。あっという間に打ち果たされる太郎佐。しかし、太郎佐の身体にも、屋敷内にも連判状はなかった。
   12名が集まってきた。頭領はどこに行ったのだろうと語り合いながら、何だか物見遊山に出かけるような伊賀者たち(苦笑)。小部屋かもしれん、わしが呼びに行くと回転する壁に入っていく忍者は、そのまま出てきたが、背中を刺されて息絶えている。甲賀の襲来だと慌てるが既に遅し、現れた甲賀衆と切り結ぶ。遁兵衛よ、我らがここで抑える間に急げと、一人外に逃れる。この時点で、連判状を持っているのが、遁兵衛だということは誰にも分る。外に出た遁兵衛の前に、甲賀竜四郎が立ち塞がる。危うし!遁兵衛!!
  しかし、そこに、秋草新太郎の姿が!!甲賀竜四郎は、配下の忍者に「引け!!!」と叫んだ。伊賀の忍者は二人斬られた。一命に賭けても尾張に行くぞと言い合う伊賀組。そこに周作が、新太郎と自分の笠を持ってきた。秋草さまが行って下さるならと、伊賀の者たちは大喜びだ。

霞(藤純子)霧の遁兵衛(牧冬吉)神保小平太(尾形伸之介)石川平内(国一太郎)

  とにかく、公儀隠密の伊賀ものは、弱い上に、考えが本当に浅い(失笑)。たぶん、映画を見ているよい子のみんなは、そっちへ行っちゃ駄目だ!!!とか、騙されるな!!とか大きな声でスクリーンに向かって叫んだんだろうな。


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