2009年10月5日月曜日

佐久間良子は、ぽっちりした唇が最高だ。

     ランチミーティングの予定が飛んだので、久し振りに惣菜を4品作って、独身美人OLに届け、後輩Kらと4人で昼食。そこから、N氏の市が尾の自宅で打合せ。

   神保町シアターで、川本三郎編 鉄道映画紀行 思ひ出は列車に乗って

   60年東映東京関川秀雄監督『大いなる驀進(567)』
    東京駅の前で、若い男女が揉めている。「辞めないで」「今のままじゃいつまで経っても結婚出来ないじゃないか」「でも辞めないで頂戴。」「いつまで待てば結婚出来るんだ。僕は金のことで君と結婚出来ないことに、もう我慢が出来ないんだ。今回の長崎への往復の乗務を最後に辞めるんだ」と言って、東京駅舎に入って行く若者は矢島敏夫(中村賀津雄→嘉葎雄)。寝台特急さくらのボーイだ。見送る娘は、矢島の恋人の望月君枝(佐久間良子)だ。ボーイの白い制服に着替える矢島。専務車掌の松崎義人(三國連太郎)が、点呼をするぞと声を掛ける。東京駅当直助役(沢彰謙)が、下り8号点呼と上り9号の点呼を行う。
東京駅のホームにさくらが入っている。憲政党の大物代議士坂之上坂二郎(上田吉二郎)と秘書(大村文武)の周りには見送りの党員が幟を持って囲んでいる。また、社内結婚のカップル(木川哲也、片岡昭子)が新婚旅行に出るらしく、仲間たちが歌声で送っている。また、赤い帽子を被った派手な身なりの女(小宮光江)と男(北川恵一)は駆け落ちらしい。憂鬱そうで落ち着かない紳士(小川虎之介)黒いサングラスにスーツの怪しげな男時定(波島進)、辺 りを窺う男(花沢徳衛)など雑多な客が乗り込んでくる。
松崎と矢島が、食堂車を通る際に、ウェイトレスの松本芳子(中原ひとみ)が、今日は矢島さんの好きなコロッケだから、取っておくわと声を掛ける。芳子は矢島のことが好きなのだ。周りの食堂ガール(古賀京子、岡田悦子)たちに冷やかされる芳子。しかし、今日の矢島は不機嫌だ。
   いよいよ発車だ。坂之上先生万歳!の連呼や、新婚旅行に贈る歌声で、ホームは賑やかだ。階段を駆け上がって、動き始めた列車に飛び乗る君枝の姿がある。
    もう今回の乗務で辞めると言う矢島に、4年間頑張って来たのに勿体無いじゃないかと松崎。僕は4年も無駄にしてきたと後悔していますと矢島。そこに矢島の同僚が、お前の恋人が乗ってるぜと声を掛ける。驚いて、教えて貰った二等席に行くと、君枝が座っている。君枝の隣に座っていた山本年子(大原幸子)が、博多には何時に着きますか?と心配そうに尋ねてきた。翌日の朝に着くと教えてから矢島は、君枝を乗務員室に連れてゆく。食堂車の営業開始のアナウンスをしている芳子を追い出したので、芳子は気が気ではない。入場券で乗った君枝は、矢島が考えを改めるまで長崎まで乗って行くと言う。そこに、芳子から話を聞いた松崎がやってきて、乗客の確認はしたのかと言う。
    矢島を仕事に戻らせて、松崎は君枝と話しをする。君枝の父親が病気になり、幼い弟たちも含めた生計は、君枝の月12000円の給料で立てている。父親が復職出来るまで待ってくれと言って2年、一向に進展しないことに苛立った矢島は、君枝の一家を面倒みるためには、今の仕事を辞めて、昔の友人と喫茶店の共同経営者になるしかないと思い込んでいる。しかし、かって鉄道員であることに誇りを持っていると言った矢島に、辞めて欲しくないのだと君枝。   
   富士川鉄橋を渡る頃、時定は、5号車に殺人犯が乗っていると密告する。静岡駅に着き立川七郎(直木明)は鉄道公安官に逮捕、連行される。静岡駅では、憲政党の名古屋支部の人間がやはり坂之上のために集まり万歳三唱、更に新婚カップルのために東邦化成静岡工場の組合員がやはり歌を歌っている。静岡駅を出るさくら。鉄道公安室で、立川は、「昨日8時、新宿で黒木組の若いやつを、ある男の依頼で殺した。そいつが裏切ったんだ。密告した奴は分かっている」と言う。赤信号の灯りに照らされて笑ほくそ笑む時定の姿がある。協力ありがとうございますと頭を下げる矢島に、「新宿2丁目8番地で店をやっている時定やすおだと名乗る」
   夕食の時間になり、食堂車は満員だ。坂之上は、秘書と一緒にやってきて、ビールとステーキを注文する。坂之上の座席の傍の憂鬱そうな紳士は、ウィスキーを飲み続けている。辺 りを窺う男(花沢徳衛)と時定は相席だ。赤い帽子を被った派手な女の連れの男は食事をしながらも、周囲をきょろきょろ見て落ち着かない。芳子ら食堂ガールたちは狭く、時に揺れる社内を器用に動いて、注文を聞き、料理を運び、会計をしている。坂之上が立ち上がって席に戻る際に辺 りを窺う男(花沢徳衛)が擦れ違う。

   ウイスキーのポケット瓶を呷る時定の寝台の斜め上が、男(花沢徳衛)だ。普通座席の検札をする松崎と矢島。入場券を出す君枝に、次の名古屋で下車して東京に帰れと矢島は言うが、長崎まで行くという君枝に、特急券も含め2970円を受け取る松崎。君枝の隣の娘が、再び博多の到着時間を尋ねる。博多の駅からバスで二時間かかる場実家で母親が危篤だと言う。
  9時18分名古屋駅に到着する。坂之上を見送りに、やはり憲政党名古屋支部の支部員たちが集まっている。新婚のカップルは、ここで乗り換えて、伊勢に行くらしい。幸せそうな二人の後姿を、矢島はホームで、君枝はデッキで、羨ましそうに眺めている。
  名古屋を出ると、食堂車は営業終了だ。松崎と矢島はようやく遅い夕食だ。矢島が辞めることを何とか思いとどまらせようと、ハラハラ見ている君枝。芳子は「恋人来たわよ」と矢島に言う。「関係ねーや。今日、コロッケあるんだろ。」「もうおしまいです。」「取っておくって言ってただろ。」「ないものは、ありません。」松崎が「僕はカレーライス」と注文する。「カレーライスまずいですよ」と矢島。「食べてから言ってください。」と芳子。「僕もカレーライス」「まずければ結構です。」君枝が気になる芳子は不機嫌だ。
  精算をしている松崎の運賃の計算を手伝いながら矢島は、「フー、金儲けてやる」「金なんて、そう簡単に儲かる訳じゃないんだよ。」「そんなことじゃ、一生うだつが上がらないですよ。」カレーライスを二つ、運んでくる芳子。二人が食べ始めると、君枝がやってきて、電報お願いしますと松崎に言う。「矢島さんに話しがあるので、長崎に行く。キミカ(ここでは、そう言っているように聞こえたんだが・・・)」 
  更に、坂之上の秘書が松崎のもとにやってきて、この車内に掏摸がいると言う。坂之上が、総裁から貰った高級な金の懐中時計が盗まれたと言う。同乗する鉄道公安官に直ぐに列車を止め全乗客を身体検査しろと無理難題を言う。ななめ前の寝台では、カーテンを閉め、乗車以来憂鬱の表情だった男が、大量に薬を飲んでいる姿がある。矢島が、松崎のもとにやってきて、乗客に掏摸の名人が乗っているという。以前、東西掏摸名人対決というイベントがあって優勝した「カメレオンの松」が213番にいるのだ。しかし、証拠はないので、運賃を払っていただいた人は皆、お客様だと、矢島を窘める松崎。
  大阪駅に到着した。サングラスを掛けた怪しい男(曽根晴美)が乗ってくる。また大阪大学医学部の准看護婦森原数子(久保菜穂子)が、阪大医局員(滝沢昭)に送られてくる。明日の2時までに、長崎医大まで血清を届けなければ、3人の命が掛かっているという。数子は、君枝の前の席に座った。ここでもやはり、憲政党の大阪支部員たちが、浴衣姿の坂之上を囲み、万歳三唱をしている。山陽本線は非電化区間があるので、ここからは蒸気機関車に変わる。機関士も引き継がれる。しかし、大型の台風19号が四国の南まで来ており、直撃を受ける可能性があった。


   新藤兼人の脚本だけあって、結婚に悩む若い男女の恋物語に、グランドホテル形式に沢山登場してくる脇役たちのエピソードがうまく織り込まれている。
   こういう企画でないと上映されない作品だと思うが、鉄道マニアではない自分でも、そうか、この頃は、山陽本線は電化されていなかったら、大阪で電気機関車から蒸気機関車に変わり、機関士も変わるんだったなとか、食堂車で食事をするというのはどういう気分だろうかとか、小学校時代の交通図鑑を何度も読み返したことが思い出され、なかなか男子心を掻き立てる映画だ。

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