2008年12月13日土曜日

藤純子の眼差しは切なすぎるなあ。

  午前中は宅急便を待ちながら、本を読みつつ惰眠を貪る。地元食材買い物をして、
  阿佐ヶ谷ラピュタで山下耕作ノ世界。74年東映京都『極道VS不良番長(358)』。
  島村組を解散し堅気になった島村清吉(若山富三郎)は、「大日本ホルモン焼移動レストラン株式会社」を作り、15人の若い衆とホルモン焼きの屋台を連ねて岐阜にやってきた。大勝の兄貴(大木実)と会い、住まいを格安で紹介してもらう。売主はバーのママ道代(美浦わか)、支払いを半年待ってくれとの不躾な島村の頼みを聞いてくれるが、実は前の借主が博打の借金が嵩み、妻が首を吊ったので離れには幽霊がでるから安いのだという。その夜、島村が離れに寝ていると、女の声がする。思わず、小便を漏らす島村。女は、源五郎(小林勝彦)の情婦のテン子(橘真紀)で、源五郎会いたさに、十三のトルコから逃げてきたのだ。追い返そうとする源五郎に、二人で離れに住めと言う島村。
  その日の昼間、岐阜の市内を、アメリカで人間ロケットとして有名な神崎弘(梅宮辰夫)のバイクスタントショーの宣伝をしている。結局子供が二人しか集まらなく、逃げるつもりが、バイクのトラブルで空を飛び、大怪我を負う神崎。入院した部屋に、マモル(山城新伍)、アパッチ(安岡力也)、?(鈴木やすし)らが詰めている。神崎は、弟の謙次(渡瀬恒彦)ら暴走族の新宿カポネ団のリーダーなのだ。神崎の入院代を工面するために、謙次は、岐阜を仕切るヤクザの中部興業の石黒銀蔵(内田朝雄)に、日系二世でピストルを10丁売ると偽って、水鉄砲を売りつける。うまく逃げおおせたかと思ったが、チームのニッキー(森田日記)が撃たれる。ニッキーは島村によって助けられる。引き取りに一人で乗り込んできた謙次に、ニッキーを引き渡す
  中部興業の妨害を受けながらも、何とか売り上げる島村たち、50万貯まり道代に渡そうとすると、大阪の大衆組の連中(川谷拓三)らがテン子を捕まえにやってくる。道代に返す筈の50万をテン子の前借り分として大衆組に渡してしまう島村。道代に謝罪に行く島村。その日道代は石黒に借金の返済を迫られている。島村に好感を持った道代は、店を閉め、酔って島村を誘惑する。いよいよという時に、道代の弟でバーテンをしている鉄男(嵐誠)が帰ってきて、中部興業に入ってやくざになるという。悲しむ道代に、その後何かと鉄男に極道の道の切なさを説く島村。
   中部興業が、島村の大好きな歌手小林みちる(ジュディ・オング)の交通遺児のためのチャリティコンサートを開くと聞いて感激し、石黒に手伝いを申し入れる島村。みちるがホテルに着いた。出迎える島村たち。しかし、一瞬の隙をついてカポネ団がみちるを誘拐する。中部興業に身代金1000万を持って来いという電話が入る。自らの100万も出し石黒からの200万と合わせて、指定の場所に出向く島村。金を取りにきた若造を二人ぶちのめし、カポネ団が根城にしているモーテルに出向く。身代金の約束が違うと謙次は拳銃を向けるが、ニッキーが止める。みちるを返してもらうが、謙次に交通遺児へのチャリティは、会場などを安く借りるための方便で、結局中部興業の金儲けなのだと教えられ、ショックを受ける島村。取り返したみちるを「大日本ホルモン焼き移動レストラン株式会社」に連れてきてホルモン焼きを御馳走する島村。みちるはお礼のしるしに歌を披露する。石黒たちがやってきた。チャリティーの信憑性を問いただす島村に、引き上げる石黒たち。
   みちるのコンサートの日がやって来た。観客もいっぱいだ。お金の流れに不正がないか目を光らす島村たち。そこに、カポネ団がやってきて、金を奪って逃げた。その途中で、みちるを見たさに施設を抜けて来た交通遺児の男の子がはねられる。一人だけ大勝の手助けもあり捕まえる。男の子は重体で大手術に。捕まえたカポネ団を呼び出し、一人で暴走族に取り囲まれる島村。しかし、カポネ団は、“武装”ホルモン焼き屋台に囲まれていた。結局島村と謙次の1対1の決闘になり、謙次が勝った。
病院の手術室の前で待ち続ける島村たち。そこにカポネ団がやってくる。子供の血液型がRH-だと聞いて献血に来たのだ。手術は成功した。大勝は、看病しているうちに情が移り、養子にしたいと言う。同じ病院に入院していた神崎弘が車椅子に乗って現れた。自分の医療費のために謙次が無理をしたことを詫び、謙次に東京へ帰れと言う。
  その夜、島村はカポネ団の送別会をやってやる。島村組もカポネ団も、今までの経緯を水に流して酒を酌み交わした。東京に帰るカポネ団を見送る島村たち。しかし、岐阜を出る前にマシンガンが彼らを襲う。名古屋の新栄会の助っ人たちだ。謙次一人残る。ニッキーも絶命した。中部興業、新栄会の話を聞いて、島村たちは、再び島村組の法被を着る。“武装”ホルモン屋台が重戦車のように中部興業を取り囲む。銃撃さえ弾き飛ばす屋台。そこに、謙次も駆けつけ、島村と、中に飛び込む。石黒を斬った島村を一発の銃弾が、鉄男がピストルを握っている。島村に、とどめをさせと恫喝され泣き崩れる鉄男。島村は、自分が一人罪を被るので、謙次に逃げろという。謙次は、自分の組に入れてお前の性根を叩き直すと言っただろといって、刑務所に付いていくと言う。二人は、外に待つ警官隊のもとへと歩いていく。
 若山富三郎の3枚目振りは絶好調だ。仮面ライダーの変身ポーズみたいなものや、キックボクシングの要素、子連れ狼の乳母車のような屋台など、少し悪乗り気味な気もしないでもないが、楽しい。
    71年東映京都『日本女侠伝(じょきょうでん) 血斗乱れ花(359)』。
    明治中頃のある年の大晦日、大阪船場の呉服問屋平野屋の女将おてい(藤純子)に堂島の叔父(内田朝雄)か訪ねて来ている。これが最後だと言って二百円貸してくれた。お汀の夫藤吉(津川雅彦)は婿養子、石炭で一山当てると全く家業に身が入らない。結局、虎の子の二百円を持って平吉(山本麒一)と逃げ出す。お汀は夫を追って筑豊にやって来る。藤吉は二百円でこの山を買ってしまったと言い、平吉と2人で掘っている。やっと石炭層を見つけたものの支柱が折れ、石炭を握り締めたまま夫は死んでしまう。おていは藤吉の夢を叶えるために山を継ぐと言いだし、叔父夫婦は怒り大阪に帰ってしまう。
    おていは船場の店をたたみ、平野炭鉱の炭坑主としての人生が始まる。新しい炭坑は坑夫も集まらない。近くの大島鉱業の笹倉炭鉱に抗夫を回して貰うように頼みに行くが、逃げた抗夫への折檻の余りに酷さに、抗長の笹倉勘造(遠藤辰雄)に一言言うと取り囲まれ危ない目に会う。川船頭の吉岡組の吉岡幸次(高倉健)に助けられる。前渡しで払った給金を持ち逃げされ、再び吉岡に助けられる。あまりの素人さに吉岡は、かって、十丁鶴嘴の銀蔵と筑豊に名前を轟かせた先掘りの父親吉岡銀蔵(水嶋道太郎)のもとに連れて行く。素人誰もが儲かると思って石炭に手を出す風潮を嫌っていた銀蔵は、女まで炭坑をやるのかと言ったが、夫は石炭に命を賭けたという思いつめたていの話を聞いて、炭坑を見せろと言う。いい石炭だと言い、力を貸してくれることになった。また筑豊の石炭を一手に収めようという野望を持つ、大島儀十(大木実)は、ていの美貌に目をつけていたが、ていは袖にする。また吉岡の行動が目障りになった、大島と笹山は、吉岡を消そうとする。5人組に襲われた吉岡は、しかし3人を殺し、2人に怪我をさせたということで服役する。
    2年の間は、平野鉱山は順調だったが、厚い岩盤に遮られる。銀蔵も平吉もこの山は終わったと言う。しかし、ていは、石炭が出なくとも賃金は払い続けるので、新しい鉱脈が見つかるまで掘り続けてくれと言うのであった。ていの貯えは底を付き、着物も全て無くなった。大阪の親類を訪ねても金を貸してくれるものは誰もいなかった。ていは、大島のもとに行き3000円の借金を頼む。笹山は自分の体を担保にいれろと辱しめるが、大島は1か月利子2割5分という高利で金を貸す。戻ると、鉄砲水が出て、3名の抗夫が亡くなった。さすがのていも、抗夫の妻の責めにはこたえた。断念しかけたところで、銀蔵と平吉が駆け寄ってくる。また何か起きたかと眉をひそめるていに、銀蔵は石炭を見せる。ていに負けたのだと頭を下げる銀蔵。石炭は、縮緬炭と言われる筑豊でも一等級のものだ。
    更に5年が経った。大島は、芦屋百軒の石炭問屋の組合長として、炭鉱主を召集する。はるかに炭坑主の足元を見たような契約条件の改悪だ。ていは、問屋あっての山だが、山あっての問屋だと言って、席をたつ。しかし、一緒に立ち上がったのは、松木(中村錦二)だけだ。ていと松木は、若松の石炭問屋を訪ね、最も石炭を大事にしている問屋を探しだし、扱ってもらう契約を取り付ける。
    大島は川船頭の元締め、村井仁平(天津敏)に圧力をかけ、若松への運び出しをさせないようにする。その頃、ちょうど、吉岡が出所してきた。川船頭の組合から抜けてまで、吉岡組は、平野鉱山と松木鉱山の石炭を若松に運ぶ。村井も大恩のある大島に従いつつも、吉岡と縄張りを交換したのだと伝える。他の炭坑主も、大島のあまりのひどいやり口に、平野鉱山と松木鉱山の後に従う動きが出てきた。大島と笹山は、いよいよ手段を選ばなくなった。まず、松木を殺した。平野鉱山にダイナマイトを投げ込み抵抗した銀蔵たちを殺した。自分が大島たちを追い込んだのだと自分を責めるてい。ありったけの金を銀行から下ろして、吉岡組の川船頭たちと他の炭坑主に宴席を設けるてい。その夜、ていは、村井を訪ね、私がつっぱったから、死んだものや村井に迷惑をかけたのだと頭を下げる。黙って聞いていた村井だが、大島と笹山のもとへ行き、これからは協力しないと言う。大島は村井を撃ち、死体を川に流した。
    平野鉱山の貯炭場で川面を眺めるていに吉岡は言う。「自分が想う人だから言うが、ていの夫と自分の父親が命を賭けた炭坑を閉めないと約束してくれ」と。涙を浮かべて頷くていは、吉岡にも、大島のもとへ行かないと約束してくれと言う。吉岡の手にある鶴嘴に決意を見たのだ。吉岡は頷いて、川に船を出す。しかし、吉岡は、日本刀を持って大島の事務所に単身殴り込む。笹山を、そして大島を斬るが、大島の弾を数発受けている。一人歩きながら意識が遠くなる吉岡の瞼には、ていの姿が浮かんでいた。数年がたち、貯炭場で川を眺めているてい、平吉がやってくる。平吉と話をしながらも、ていの目は遠い所を見ている。河原には女郎花が咲いている。
  日本女侠伝シリーズ4作目。いいなあ。高倉健と藤純子は思い合っていても、あくまでもプラトニックだ。平吉が、二人の気持ちを察して、二人を騙して、待合いに呼びつけた時も隣の部屋にある布団を見て、出ましょうかと高倉健は言う。情感に溢れた藤純子の瞳は何とも言えない。山本麒一は、切なく屋台で飲んでいるのに・・。プラトニックな男女の機微は、山下耕作監督ならでは。
  結局、今日も博華で餃子とビール。

2008年12月12日金曜日

芸事習いたくなったなあ。

  ポレポレ東中野で、山本眸古監督『小梅姐さん(355)』。
  不世出の民謡歌手、赤坂小梅の生涯を追ったドキュメンタリー。福岡筑豊の田川で生まれ、実家の前が検番だったために、歌と三味線が好きで、家族の反対を押し切って勘当までされても芸者になり、民謡を歌わせたら日本一と噂され、ビクターで新民謡を吹き込んで、東京赤坂の花柳界に移って赤坂小梅となり、コロムビアから歌謡曲「ほんとにそうなら」でデビュー、大ヒット、以来全国的人気歌手として戦中、戦後を生き、芸能界を引退したのちも、千葉の勝山で、民謡を歌ったり、人に教えたりして83年の人生を全うした。身体も人間も大きな人だなあ。最終日のせいか、意外にかなりの動員が。
   神保町シアターで女優・山田五十鈴、43年東宝成瀬巳喜男監督『歌行燈(356)』。
   恩地喜多八(花柳章太郎)は、能の恩地流の若師匠である。12月25日名古屋能楽堂での公演も終わり、家元で父の恩地源三郎(大矢市次郎)と鼓の辺見雪叟(伊志井寛)と、古市の温泉に入って行こうとすると、古市の按摩の宗山(村田正雄)の謡いは相当のもので、東京でも聞けないと大評判らしい。家元は放っておけと言うが、若い喜多八は、雪の中宗山の家に行き、東京からわざわざ聞きに来たのだと言って無理矢理歌わせる。しかし、素人芸の悲しさ、喜多八の合いの手に息が続かなくなり絶句させる。宗山も、ことここに及んで、若い男が恩地流の若師匠であることが分かり、引き止めようとするし、娘のお袖(山田五十鈴)を追い掛けさせるが、喜多八は宗山の妾と勘違いして「金で身を売るような真似をするな」と言い捨て去る。
   翌朝喜多八が目覚めると、辺見が呼びに来る。宗山は、昨夜鼻をへし折られて自殺したという。地元の人間も、新聞記者たちも増長する宗山を嫌っており責めてはいないが、源三郎は、これは喜多八の驕りであり、素人の人間の命を奪ったことは許し難いので、喜多八を恩地流から破門、謡いを禁じた。東京に帰り、喜多八の後任を弟弟子にするが、拙い芸で、辺見は喜多八を探し出すと言うが源三郎は許さない。
  2年が過ぎ、喜多八は博多節の門付けをしている。いい喉に客を取られた次郎蔵(柳永二郎)に因縁をつけられるが、ちゃんとした芸を持ちながら礼儀正しい喜多八に惚れ込む次郎蔵。次郎蔵が客を引き喜多八が唄うやり方でかなり上手く稼いだ。次郎蔵は元々桑名の料理人で、金も溜まったので、親方に頭を下げて戻ると言う。喜多八は、最近宗山の夢にうなされており、墓参りをしようと思っていると次郎蔵に告白した。次郎蔵は、事件を覚えており、そういうことなら宗山の娘のお袖を救ってやれと言う。お袖は宗山の死後、継母に鳥羽の廓に売られ、客に媚びを売れないことで、酷い目にあっているところを次郎蔵が助けて伊勢の春木屋で芸者になっていると言う。しかし歌も三味線も一向に出来ないので、困っていると言うのだ。
   喜多八は伊勢に行き、春木屋に門付けして博多節を唸っていると、姉さんからおひねりを預かったお袖が出てくる。喜多八はお袖に、舞「松風」を一週間で教え込むと言う。東京の父に向かって、謡を封印するという約束を一週間だけ破ることを祈る喜多八。
   38年東宝成瀬巳喜男監督『鶴八鶴次郎(357)』。鶴屋鶴次郎(長谷川一夫)は新内の太夫。お世話になった先代の娘の鶴八(山田五十鈴)の三味線で、鶴屋鶴次郎、鶴八として喜楽亭に上がり、人気を博している。二人は幼馴染で、お互いの技量も認め、憎からず思っているが、素直になれず、喧嘩ばかりして、鶴次郎の番頭の佐平(藤原釜足)らをやきもきさせている。
  有楽座の名人会に出演の話が来る。これは、人気だけではなく実力も認められた証であるが、些細なことで喧嘩をしている。先代からのごひいき、岩善の若旦那松崎(大川平八郎)と鶴八に焼き餅を焼いた鶴次郎は、金持ちの四谷の下駄屋の娘が、弟子入りだけでなく婿入りして欲しいという話にさも気があるかのように言う。このままでは、鶴次郎鶴八の芸も危ういと佐平は、名人会のプロデューサーの竹野(三島雅夫)に相談する。
  竹野は、打ち上げを兼ねて温泉に二人を招待する。普段と違う環境で、素直になった二人は、お互いの気持ちを確かめ合う。鶴次郎は、寄席を持ちたいという夢を語り、二人で、実現しようと誓う。鶴八に二度と松崎に会うなという鶴次郎。
  幸い喜楽亭を譲ってもいいという話があり、悩んだ末名づけた鶴屋亭は竹野を支配人にいよいよ実現の運びとなった。オープン直前になって、開亭資金の一部の金を松崎から借りていることを知って激怒する鶴次郎。怒りのあまり、他人の女に金を出す人間などないので、お前は松崎の妾だったんだろうと言ってしまう。全てがぶち壊しだ。鶴次郎鶴八は解散となった。尚二人の芸を惜しむ佐平さえ、追いだす鶴次郎。
  2年後、鶴八は松崎のもとに嫁いでいる。芸事の好きな一家で幸福な鶴八。一方鶴次郎の芸は荒むばかり。ドサ廻りをしながら、細々と寄席に上がっているが、酒で失敗することも度々だ。陰ながら鶴次郎を心配している佐平は、竹野と諮り、鶴次郎鶴八の2年ぶりの名人会復活を計画する。頭を下げる佐平に、松崎の了承を受ける鶴八。
  やはり、鶴次郎鶴八の復活は大好評で帝劇からの出演依頼まで来た。しかし、最終日舞台が引けて、鶴次郎は、2年ぶりの鶴八の三味線は聞くに堪えないものなので、これきりにすると言う。憮然と去る鶴八。佐平を飲み屋に誘った鶴次郎は、鶴八の芸は、先代を超え名人の域に達しているが、松崎と離縁してでも再び芸人に戻ると鶴八が言うのを聞いて、愛する人間の幸せを考えると松崎のもとに返したかったんだと告白する・・・。
  うーん、この結論でいいのか。鶴次郎が芸人の悲哀を舐めたのは、自分の精神的な幼さによる自業自得だろうと突っ込みたくなる。しかし、当代随一の人気者長谷川一夫と山田五十鈴は、結ばれちゃいけないんだろうな。やきもきしてしまうのは、この映画に引き込まれているということなんだろう。
  赤坂小町と、成瀬巳喜男の芸事2本。何だか、もう少し枯れたら、小唄か鼓でも習いたくなってしまう単純な自分なのであった(苦笑)。博華で餃子とビール。
  

2008年12月11日木曜日

竹田かほり初々しかったなあ。

   午前中は溜まった本を読みながら居眠りし、午後から、神保町シアターで女優・山田五十鈴
56年東宝成瀬巳喜男監督『流れる(353)』。柳橋の芸者置屋つたの屋の女将おつた(山田五十鈴)は、娘の勝代(高峰秀子)を女手一つで育て上げたが、勝代は一座お座敷に上がったものの男に上手いことを言えず芸者を辞めている。また、つるの屋には、娘を連れて転がり込んだ妹の居候の米子(中北千枝子)や、給金に文句をつけて、勝代との口喧嘩の末出て行ったなみ江(泉千代)など頭を痛めることが多い。そこに職業紹介所から、女中として梨花(田中絹代)がやってくる。梨花と言う名前が呼びづらいので、おつまにお春さんとされてしまうが、文句一つ言わずよく働く梨花。
    千葉の鋸山で石工をしているなみ江の叔父(宮口精二)が、人権蹂躙だと金を強請にくる。しかし、つるの屋は、姉のおとよ(賀原夏子)への借金のかたになっており、つたには金はない。おとよは月末になると取立につるの屋にやってくる。製鉄所の専務がつたに気があるのをいいことに、金銭面の援助をさせようと、見合いをさせたりする。見合いの場所に、芸者時代の姉貴分だった料理屋水野の女将お浜(栗島すみ子)が居合わせて逃げ出すつた。改めてお浜を訪ね、借金の依頼をする。お浜は、甥の水野(仲谷昇)が秘書をしている、つたのかっての旦那花山に取り計らって、10万円用意してくれた。
   なみ江の叔父が再び現れ、つたは5万円でなんとか示談にしようとして、家に上げ飲食させたりするが、なかなか了承しない。ある日、米子の娘が熱を出す。全く面倒を見ようとせず、梨花におしつけたまま。別れた夫(加東大介)を探し歩く米子。芸者のなな子(岡田茉莉子)はOL上がり、かっての上司から誘われてウキウキ出掛けるが、下心だけの男に幻滅して帰ってくる。つたの妹分だった年増芸者の染香(杉村春子)は、吝嗇で、10歳年下の男と同棲し貢いでいる。結局、女中のお春が全て按配することで回っているのだ。お浜から、花山を呼ぶので、久し振りに会えと言われ、待ち続けるおつた。しかし、水野一人が現れ、花山はどうしても来られないと言う。華やいだ気分が一気に冷めるおつた。
   なみ江の叔父の余りのしつこさに米子が巡査を呼んだことで、つたと勝代は警察に呼ばれることに。水野のお陰で、示談にはなったが、つたは、お浜につるの屋を売ることにする。その金で姉おとよへの借金を返して、芸者に戻ることにしたのだ。お浜は快諾するものの、かっての10万円は、花山からの手切れ金だと明かす。おつたは、男も引退ということなのだと寂しげに微笑む。染香は情夫から捨てられ、そのやり取りの中で、花代の分配について口喧嘩となる。勝代も口を出し、最後は男なしに女は生きていけっこないと言って、染香はなな子を連れてつたの屋を出て行く。
つたは新しい芸者見習いを入れ三味線の稽古をつけている。2階では勝代がミシンをかけている。自分で収入を得ることにしたのだ。染香がやはりつたの屋がいいと戻ってきた。しかし、梨花は、お浜に、つたの屋を閉めて料理屋の支店にするので女将をやらないかと言われ断っていたのだ。他言無用の約束を守りながら、つたの屋の人々を温かいまなざしで見つめる梨花。勝代に、ずっといて欲しいと言われると寂しそうに、夫の故郷に戻ると告げるのだ。
  この年の女優賞を総なめにしたという山田五十鈴は勿論だが、栗島すみ子、田中絹代、杉村春子といったベテランの大物から、高峰秀子、岡田茉莉子といった当時の若手まで、大女優や将来の大女優たちの演技は素晴らしいというしか無い。溜息がでるようなやりとりの連続だ。しかし、熱演というのが、別に力が入った暑苦しい演技でないことを教えられる。
  流石に傑作と言われるだけあって、普段の3倍以上の観客。初めての客が多いせいか、ちょっと説明の必要があるルールに、少し殺気立つチケット売り場と入場整理(笑)。自分も含め中高年頑固で自己チューだからなあ(苦笑)。
阿佐ヶ谷ラピュタで山下耕作ノ世界、77年東映京都『ピラニア軍団 ダボシャツの天(354)』。
  昭和53年冬、阪神刑務所を上方会の会長が出所してくる。凄い数の出迎えと共にいなくなると、刑務所の塀に立ち小便をしている男がいる。刑吏に注意をされ、ハクをつけたいので刑務所に入れてくれという。松田天、通称ダボシャツの天(川谷拓三)、通天閣のように、天まで真っ直ぐ伸びろと死んだ母親が付けてくれた。不良学生がかつあげしていると、大市組のチンビラが金を取り上げる。そこに天が現れ、大市組のシマでかってな真似はさせないと言う。しかし、チンビラの兄貴分の花本が出てきて天はボコボコだ。しかし後白河錦三、通称まむしの錦三の兄貴(夏八木勲)がやってきて、金を巻き上げてっちりをご馳走してくれた。
   天は錦三に何とか上方会の組員にしてもらうよう必死なのだ。錦三は、阿倍野の旭町にトルコを開くので、女を集めて来いと言う。天は、全く女に弱く痴漢に間違えられてブタ箱入りする始末。天王寺動物園の前でシンバルモンキーを売る天。全く売れないが、家出少女を見つける。奈良の十津川から出てきたナツ(竹田かほり)だ。彼女を錦三のもとに連れて行く。トルコ嬢としての身体検査として、金造にやられそうになった時に、金造の女房が帰宅して助かった。
    二親も無く帰るところのないナツを、天は自分のバラックに連れて行き、泊めてやる。寝ているナツを極道の情婦にするのだといって、関係をもとうとするが、そう思った途端射精してしまう天。
    翌日、ナツを使って美人局で金を稼ごうとする天。ホテルに客とナツを送り込んだところまではよかったが、大市組のチンピラに捕まって、このまえの仕返しにボコボコに。ホテルの部屋に来た血だらけの天を見て、客は逃げ出す。ホテルの回転ベッドの上で、天とナツは結ばれる。
    大市組と上方会の抗争は激化する。何とか準構成員から組員と男を上げたい天だが、殴り込みでは、腰を抜かすし、代貸しの笹本(菅貫太郎)が乗る車の運転手を買ってでるが、運転さえまともに出来ない。しかし笹本が参加した上部団体の神組の幹部会7人会に、大市組のヒットマンが襲ってくるのを見つけるお手柄だ。天はまた腰が抜け錦三が捕まえたのだが・・・。
   大市組の背後に九州での糞尿処理での対立があることで、九州に乗り込むことに。精鋭部隊の選考からは漏れたが、チンピラ学生たちが集めた金で自費参加させてもらうことに。ナツは喫茶店のウエイトレスのバイトをしていた。喫茶店のマスター(小松方正)は、ナツに気があるようだ。気が気でない天。河の土手で、九州への出入りで別れなければならないとナツに告白する天。ナツの健気な言葉に天は涙する。
   九州に乗り込んだが、警察の規制で、武器を持つことを禁じられ、町中に漂う殺気。そんな中、天
とパチンコをしていた錦三が、岡田半次、通称二尺三寸の半次(室田日出夫)に呼び出された。人斬り半次だと聞いて、慌てて出刃包丁を買い求める天。実は、錦三と半次は、かって小菊という女を巡って斬り合った間柄だった。小菊が亡くなった話を聞いて、遠い目をする錦三。そこに、出刃包丁を持った天が半次に斬りかかる。勿論失敗し川に落ちる。天を助けに飛び込むが泳げなくて、逆に天に助けられる錦三。錦三と天が、立ち小便をしていると横に人相の悪い男が、小便まみれになる男。その夜、男が、射的の銃で錦三を撃ったことから、全面戦争の火蓋が落とされる。錦三は、半次と対決する。互角の戦いで一進一退を繰り返していると二人に雷が落ちる。天も、橋の下で震えている立ち小便男・桜島一家の清(志賀勝)と再会。斬り合いになるが、二人ともヘタレで、しまいには顔を引っ掻き合って、疲れ果てて寝てしまう。夜が明け、錦三と半次、天と清は、無事だった。組織のトップ同士は、既に手打ちをしている。錦三と半次は大阪に帰る。
  ピラニア軍団勢ぞろいだが、川谷拓三の主演だ。これ一作で終わったようだが、確かにドタバタが過ぎて、かなり散漫な映画だ。しかし、竹田かほりのスクリーンデビューとなれば、欠かせない。GOROの激写とどっちが先だったんだろうか。少し後に、日活ロマンポルノのライトポルノ作品の橋本治原作の「桃尻娘」2作に出て、甲斐よしひろのオールナイトニッポンにゲストに出て、偶然ラジオを聞いていて、木ノ内みどりの後藤次利との失踪以来の“これはやばい”という第6感が働いたが、直ぐに、甲斐が竹田かほりと婚約という話を聞いて涙したことが、思い出されるなあ。高校3年か大学1年くらいだっただろうか。ささら亭で、ビール。

2008年12月10日水曜日

志村喬いいなあ。

   角川シネマ新宿で、50年大映黒澤明監督『羅生門 デジタル完全版(351)』。戦乱の世、焼け落ち、朽ち果てた京の羅生門。激しい雨が降る中、杣人(志村喬)と旅の僧(千秋実)が頭を抱え、「分からない」と繰り返し呟いている。そこに盗人(上田吉二郎)が雨宿りしに来て、何が分からないのかを尋ねた。杣人は、先程まで彼らがいた検非違使での話を語り始めた。3日前、彼が、山に薪を伐りにいくと、女ものの笠や踏みつけられた烏帽子などが落ちていた。その先に男の死体を見つけ、慌てて検非違使に届け出た。直ぐに盗賊の多壌丸(三船敏郎)と死んだ男(森雅之)の妻(京マチ子)が呼ばれた。僧は、その少し前に、男が栗毛の馬に妻を乗せているところを目撃していた。多壌丸、男の妻、また巫女が降臨させた男の霊が話すことは、食い違っている。僧は人を信じられなくなったと嘆いているのだ。
  検非違使では関わりを恐れて言わなかったが、実は杣人は藪の中からことの始終を覗いていたという。しかし、その話を聞いて、盗人は杣人の話も本当ではないだろうという。宝石が散りばめられた短刀が見つからないのはネコババしたからだと言う。返す言葉がない杣人。気がつくと、羅生門の裏に捨子が泣いている。その高価そうな服を剥いで、雨の中を去る盗人。子供を見ながら、杣人は、六人子供がいるので、一人増えても大して変わらないので、捨子を引き取ると言う。旅の僧は、誰も人間を信じられなくなって来たが、その話を聞いて救われたと言う。
   今更説明もいらないが、デジタル修正、復元された羅生門。子供の頃から幾度となく見てきたが、フィルムの傷はともかくとして、音声がかなり歪んでいて相当苦痛だった。かなり改善されたと思うが、やっぱり大映黒澤映画のセリフ聞きずらい。 かっての記憶では、雨が凄いと思っていたら、その後のシーンになって、太陽が出ていても、雨が降っていてフィルムの傷だと分かるようなものも沢山あったと思うが、きれいなものだな。
    溜池で糖尿病の経過観察の検査。
    新宿ピカデリーで、ベン・スティラー監督・脚本・原案・製作『トロピックサンダー史上最低の作戦(352)』。落ち目の3人のハリウッドスターが、ベトナム戦争当時ベトコンに捕えられた戦友を救出に行く実話小説の映画化に出演することになる。イギリス人の若手監督も、役者たちを抑えきれないまま、製作費が超過していく。本当の戦場の死と隣り合わせの環境に置くことが必要だという原作者のアドバイスから、ミャンマーの黄金の三角地帯で撮影が再開される・・・。
  うーん、ハリウッドも企画の袋小路に入っているんだろうな。笑えることは笑えるんだが・・・。
  志村喬について書かれた澤地久枝の「男ありて」読みながら、博華で餃子とビール。

2008年12月9日火曜日

山田五十鈴凄いなあ。

   随分久しぶりに水道橋の再就職支援会社。
   神保町シアターで女優・山田五十鈴。55年東宝川島雄三監督『愛のお荷物(348)』。厚生大臣の新木錠三郎(山村聰)は、厚生委員会で、産児制限の法案の審議で野党の神岡議員(菅井きん)からの追及を受けている。戦後のベビーブームによる人口の急増に歯止めをかけることに効果が在るや無しやの議論だ。
    長女の和子(東恵美子)は産科の医者の荒牧章吾(田島義文)と結婚して6年になるが、子宝に恵まれない。長男の錠太郎(三橋達也)は、家業の薬屋を継がず、長唄を趣味としながら、テレビやラジオの設計をしている変わり者だが、錠三郎の秘書をしている五代冴子(北原三枝)と交際して妊娠もしていることを打ち明ける。錠三郎は、有能な秘書に辞められると困ることと、母の蘭子(轟夕起子)には内緒にしておけと言う。その頃蘭子は産婦人科でおめでたを告げられ困っていた。錠一郎は妻の話を聞いてショックを受ける。息子のみならず、自分の子供まで産まれるとなると、厚生大臣としての面目だけではなく、選挙にも響きかねない。錠太郎は、蘭子に冴子と結婚したいと告げるが、どういう家柄なのかもわからないし、末娘のさくら(高友子)に、京都の出羽小路家の一人息子亀之助(フランキー堺)との縁談に差し支えるかもしれないので、結婚は認められないという。怒った錠一郎は家を出てしまう。
  錠三郎は、政治家としての立場を考え、妻に子供を処置してくれないかと言う。渋々ながら頷く蘭子。しかし、念のため別の医師に診立ててもらうと、妊娠は間違いだという診断だ。しかし、ある検査を使って、完全に分かるのは1週間後に。
   冴子は、錠三郎に一月後に秘書を辞めると辞表を出す。冴子は、亡父の知り合いの坂口(小沢栄)に錠太郎を紹介する。錠一郎が考えた廉価な大衆テレビ受像機の設計は画期的なもので、坂口のやっているテレビ会社で実用化することになった。さくらは、亀之助の子を妊娠していた。式を挙げる4月では、お腹も大きくて外聞も悪い。箱根に居る祖父の錠造(東野英治郎)に相談をする。その頃、錠三郎は、産児制限の法案で京都に出向いている。祇園での懇親会の時に、古い知人だという女性が訪ねてくる。彼女は貝田そめ(山田五十鈴)。錠三郎が京大の学生だったときに、そめは舞妓で関係を持ったが、一人で、錠三郎の子供を育ててきたと言う。驚く錠三郎だが、新聞社に勤めている息子の力になることを承諾する。そこに、父親の錠造が危篤だという連絡が入る。錠造は、かわいい孫娘みどりのために、自分の余命も長くないので式を早めてくれと、一芝居打ったのだ。
   箱根の錠造のもとに首相から召集がかかり、迎えに来る冴子。錠三郎に防衛庁長官への辞令が降りる。錠太郎もテレビ会社の重役だ。また、冴子は、九州の名家の娘だとわかって蘭子も大喜びだ。
    新木家を、そめの息子の貝田錠一郎(三橋達也)が訪ねる。錠三郎が、帰宅していないので、蘭子が相手をする。錠一郎の話を聞き、驚きながらも彼の人柄に好感を持つ蘭子。帰ってきた錠三郎に一言釘を刺したところに、番頭の山口(殿山泰司)が男寡をしているうちに女中お照(小田切みき)を妊娠させてしまったと謝りに来る。そんな所に、蘭子の検査の結果が来る。陽性だった。つわりで寝込む蘭子。長女の和子も妊娠の兆候が出たと報告に。和子も、みどりも、そしてやってきた冴子も、みなつわりに苦しみ出す。錠三郎と錠太郎は、布団をしき、洗面器を用意するなど、てんてこ舞いしている。錠三郎は、子供を産めと蘭子に、蘭子は、山口とお照の祝言を挙げてやろうと言う。新木家のおめでたが一遍にやってきた。
    44年東宝成瀬巳喜男監督『芝居道(349)』。日露戦争の頃、大阪角座で大栄と言う一座の座長の大和屋栄吉(古川緑波)は、日清日露戦争ものの芝居で大当たりしていた。しかし、栄吉の悩みは、一座の看板役者中村新蔵(長谷川一夫)が最近増長し、自分の忠告を聞こうとしないことだ。このままでは、せっかくの才能が伸びないと思い一計を考える。新蔵が結婚したいと言い出した娘浄瑠璃の竹本花籠(山田五十鈴)をお座敷に呼び、想い人のために別れるよう頼む。花籠に振られ酒を呑んで楽屋入りした新蔵を咎めると、東京の小屋からいい条件で話があるので、一座を辞めるという。しかし、東京の小屋へ行くと話が違った。座長に文句を言うと、大阪で人気だと聞いて呼んだものの実力はなく、実力相応の扱いをしているだけだと言われ言葉を失う新蔵。自分の力を知り努力を始める。一方花籠は、娘浄瑠璃を辞めお光として、針仕事の内職で生計を立て始める。栄吉は、そんないじらしいお光に申し訳なく思い、娘のお絹(花井蘭子)に、度々お金を持たせるのだった。
   日本軍の勝ち戦が続く中、信濃屋善五郎(志村喬)や近江屋利兵衛(鳥羽陽之助)も真似して、勇ましい戦記をやり始め大入りに。しかし、栄吉は、こういう時こそ、質素倹約を説く時代ものを上演する。芝居の通人たちには受けるものの小屋には閑古鳥が鳴いている。栄吉の苦難を察したお光は姿を消す。新しい演目を決めたものの、新蔵以外に唯一名前のある役者の嵐扇十郎(進藤栄太郎)が、信濃屋に引っ張られ、小屋主(鬼頭善一郎)から、小屋の使用を断られる。さすがの栄吉も落ち込む。
  そんな時に、新蔵が帰ってくる。中村新蔵の名前で角座は借りられ、大入りだ。
    60年東宝成瀬巳喜男・川島雄三監督『夜の流れ(350)』。 ホテルのプールに、園田浩一郎(志村喬)と、その秘書でNY帰りの高見沢(中丸忠雄)が、娘の忍(白川和子)とその友人の藤村美也子(司葉子)が来ている。高見沢と美也子の見合いだった。
   美也子の母の綾(山田五十鈴)は、新橋の花柳界で料理屋藤むらの雇われ女将をやっている藤村綾。オーナーの園田浩一郎(志村喬)からの誘惑をかたくなに拒む。藤むら出入りの芸者置き屋の七福の女将の志満(三益愛子)は彩とはお互いが芸者だった頃からのお馴染みだ。七福には、元夫に付きまとわれる一花(草笛光子)、男に惚れっぽいが振られては自殺未遂を繰り返す紅子(市原悦子)、酒を飲むと正体がなくなる金太郎(水谷良重)、あけみ(星由里子)万里(横山道代)小町(北川町子)らがいる。
   美也子は、藤むらの板前の五十嵐力(三橋達也)が好きで、食事に連れだしたり、家に押し掛けたりするが、五十嵐は相手にしない。五十嵐は、シベリア抑留時代に足を凍傷にして少し不自由が残っている。金太郎は銀座の呉服屋の滝口(宝田明)に惚れているがなかなか相手にしてもらえない。忍は、口うるさい戦争未亡人の叔母(長岡輝子)を嫌って、藤むらに身を寄せている。一花、金太郎、美也子、忍の四人で夜遊びをする。深夜、一花が帰宅すると、滝口がいる。二人は付き合っていて、五反田に店を出して独立しようという相談をしているのだ。
   綾は、月に一度浅草にお参りにいくと美也子や店のものには伝えていたが、本当は、板前の五十嵐と逢い引きをしているのだ。こうした関係を終わらせたいと言う五十嵐に別れたくないと言う綾。五十嵐は、板場で足を滑らせて、古傷が痛み歩けなくなる。女将として、てきぱきと病院の手配などする綾。手術になった。美也子は、看病に行き、世話をやく。金太郎、あけみ、万里が見舞いに来る。その帰りに旧知の不良学生たちに会い、麻雀をすることに、金太郎一人酒を飲んでいるうちにいい調子に。酔った金太郎は彼らにやられてしまう。悔し泣きをする金太郎。美也子は、夕方に差し入れをもって、もう一度五十嵐のもとに行くと、他の用事があった筈の綾が五十嵐と抱き合っているのを見てしまう。ショックを受ける美也子。夜美也子が帰ってくるのを待っている綾。釈明しようとする綾に、別に母も女だから、謝ることではないと言う美也子。しばらく母娘の関係はぎくしゃくしたものに。
   一花の元夫の野崎(北村和夫)は、滝口と一花が始めた店までやってくる。金を払うから離婚届を出してくれと言う一花。役場に行き、帰りの駅のホームで三人は電車を待っている。いきなり一緒に死んでくれと言って一花と電車に飛び込む野崎。
   五十嵐が退院してきて、荷物をまとめている。綾は我を忘れて行かないでくれと泣き崩れる。店の従業員は呆然と見ている。園田が新しい女将の弥生(越路吹雪)を連れてきて、今晩中に引き継ぎを済ませてくれと言う。綾と美也子は、七福に厄介になる。美也子は芸者になる決意をする。ずっと母の脛を齧ってきたので、稼いで綾に楽をさせると健気な美也子。披露目の日が来た。志満に連れられて、店に挨拶に回る美也子。その後姿を見送り、綾は美也子への手紙を書きはじめる。五十嵐が働いているという神戸に行くと言う。
   

2008年12月8日月曜日

最強☆GS

   午前中職安認定日。新たに受給希望者の行列が。失業率は漫画総理の支持率と反比例していることを肌身で感じる(苦笑)。昨日作った惣菜を独身美人OLに差し入れて、元会社の同僚と赤坂の成都酒家で、五目焼きそば。
   新宿シネマートで、クァク・ジェヨン監督『最強☆彼女(346)』。ソフィー(シン・ミナ)は、武林という幻の拳法家一族の四天王の一人である父と芙蓉美剣の達人の母を持つ、かって神童と呼ばれる武術の達人だった。しかし、ある事故が元で、普通に大学に入り、怪力部という変なサークルに入っている。今日は怪力部の芝居の本番の日だ。急ぐあまり、空を跳びながら学校に向かう。バスの中からバイクに乗ったイケメンに一目惚れをする。芝居は、ソフィー演じるお姫様が王子と結ばれるために苦行に耐える話。角材やビール瓶で殴られたり、焼いた炭や剣山の上を歩いたり、客席はどん引きで拍手一つ起こらない。しかし打ち上げは部員全員大盛り上がり。焼酎を丼で何杯も呑んでも、ソフィーは全く平気で、酔いつぶれた男子部員を軽々と何人も面倒を見る。しかし、帰ろうとバス停にいると芝居を見たカップルたちが、ソフィーの怪力振りを噂している。気味悪がるカップルの会話に、彼氏もいないソフィーは落ち込む。
   ある日学内でバイクに乗っていたイケメンを見つける。彼はアイスホッケー部のエースのジュモン(ユゴン)だった。なんとかアイスホッケー部に潜り込めソフィー。新入部員歓迎の飲み会で、スケート靴いっぱいの焼酎を飲み干し、周りを驚かす。彼が途中で抜けるのに無理矢理付いていくソフィー。彼は警察に行き、年上の婦人警官に愛の告白をしている。
   また、かって子供の時に武術を共に習ったイリョン(オン・ジュアン)がやってきた。   
   ちょっとストーリー書くのが馬鹿らしいほどなのも珍しいくらい。クァク・ジェヨンはオリジナル脚本もういいんじゃないか(苦笑)。力自慢だけど、コンプレックスのある女の子のラブストーリー。サイボーグの時はタイムトリップ、今回はワイヤーアクション。一つずつ好きな映画のリスペクトネタを持ってきているだけのような・・・。次は宇宙か。まあ、プロデューサーの問題なのか、韓流映画界の企画の枯渇かもしれないなあ。
続いて、本田隆一監督『GSワンダーランド(347)』。
 ジャズ喫茶ACEの客席で、ザ・ナックルズのリーダーの長谷川タツオ(高岡蒼甫)に「ポール・マッカートニーとリンゴ・スターが極秘に来日していて、秋田の山奥で、極秘のベースとドラム講座をやっている」という話を聞かされ真に受けている正巳屋シュン(水嶋ヒロ)と柏崎ケンタ(浅利陽介)。有楽町の日劇の前で、いつかこのステージに立つと決意を新たにする大野ミク(栗山千明)。また、高3なのに、勉強もしないでGSにかぶれている紀川マサオ(石田卓也)は、世の中の祭りに乗り遅れるのは勿体ないと言って、クラスメイトにも見放される。そのころ、老舗のレコード会社ファインレコーズの制作部長佐々木智典(杉本哲太)は、社長の松田(岸部一徳)の前で、専務の鎌田(大杉漣)や三崎(森田順平)たちに、GSバンドはまだ見つからないのかと責められていた。あわてて、超弱小プロダクションのオフィス梶井の梶井社長(武田真治)を呼びつけて、すぐに連れて来いという佐々木。梶田は、事務所に戻ってくると、事務所の前に、歌手になりたいとやってきたミクに会う。探しているのはGSで女はいらないという梶田。
 ACEの楽屋で、長谷川に、ザ・ナックルズのボーヤをやらせてくれと頼むマサオ。長谷川は、マサオに今秋田にジョン・レノンが来日中だとささやく。シュンたちとは違って信じないマサオ、そこに、過激派の学生がヘルメット角材で乱入する。ザ・ナックルズのメンバーを叩きのめそうとするが、店の店員に逆襲されるととても弱い。ダイナマイトの導火線に火をつける。怯えるメンバーたち。それは、ダイナマイトではなく、蛇花火だった。
 過激派学生の二人がヘルメットを脱ぐと、シュンとケンタ。3か月も秋田で、ビートルズを探させられた仕返しにやったことだった。二人についてきたマサオととりあえず、三人でバンドをやろうということに。
ビルの屋上で演奏をし始めると梶井が飛んできた。いきなり、オフィス梶井の所属が決まった。しかし、佐々木は、三人ではなくキーボードを入れて4人にしろという。そういえば、あの歌手志望の女の子がキボードが弾けたことを思い出す。ミクは男として活動することに。
 作曲家の百瀬(山崎一)のレッスンを受けることに、一緒になったのは、ドヤ街でスカウトされたというフレッシュフォーの4人大河内宗雄(温水洋一)団弦太(大堀こういち)五味渕勝彦(緋田康)佐分利徳次郎(村松利史)だ。かくして、ザ・ダイヤモンズはデビュー。しかし、デビューシングル「君にヘイ!ヘイ!」の売上は全国で23枚。ファインレコーズの最低売上を更新する。更にレコードのバンド名は、ダイナモンズに誤植が・・・。会議でまたまた佐々木は責められ、部下の鶴田恭一(ケンドーコバヤシ)らと頭を捻る。鶴田の娘が好きだという絵本に出てくる白いタイツを履いた王子様をモデルに、第2弾目の衣装とバンド名のチェンジが決定した。
  「タイツをはいてニュー歌謡」というトホホなキャッチフレーズ、「ブルーライトヨコハマ」の大ヒットメーカー橋本淳&筒見京平コンビによる「海岸線のホテル」、バンド名も新たにザ・タイツメンだ。王子様風ファッションに抵抗を覚えつつ、しかしジャズ喫茶ACEで、中性的魅力のミクに女の子たちの注目が集まり、一躍人気者に。しかし、哀しいかな、第2弾目は、松田社長の民謡とハッピという思いつきで、「レッツ・ゴーよさこい」に決定、白タイツにハッピ姿の四人組だ。しかし、順調かに思えた活動に暗雲が、ゴシップカメラマン酋長(片桐仁)が、タイツメンの合宿所を盗撮。疲れ果てて寝ているミクのシャツからブラヒモが!!!(カメラ小僧たちが言うブラチラですな)。その写真をタネに梶井を強請るカメラマン。
  京浜テレビの番組出演が決まった。更にその出演時には、日劇のプロデューサーも見にくるという。盛り上がるメンバー。しかし本番前に、ザ・ナックルズがやってきて、ミクのブラチラ写真を見せ、これをばら撒かれたくなかったら、番組の本番中に、サビ前で演奏を止めろと脅迫してきた。司会者(湯原昌幸)の紹介で、「海岸線のホテル」の演奏が始まった。硬い表情で演奏するメンバー。サビ前で、キーボードとベース以外の音が消える。謝ろうとするマサオに、ミクは自分が女で世の中の人を騙していたことを告白する。自分は歌手になりたくて、こんなことをしていたんだと・・・。
  ファインレコードや、オフィス梶井には、ミクにソロで歌わせてという手紙が殺到する。ミクは夢が叶うが、他の3人のことを思い悩む。しかし彼らは、ミクのソロデビューを応援すると言う。合宿所を出て、4人別々の道にわかれる。
  ミクのソロデビューの日、マサルとシュンはジャズ喫茶ACEにやってくる。ミクとの共演は、ザ・ナックルズだ。マサルはふと祭りを思い出す。ザ・ナックルズがリハ終わりでシャワーを浴びていると、どこかで観た衣装の4人組が自分たちの楽器を持ち出すのを見つける。ガウンやバスタオル姿でおいかけるナックルズのメンバーたち。やっとの思いで楽器車に追いつくと、自分たちの楽器を破壊しているのは、フレッシュー・フォーの変装姿だった。
  その頃ACEでは、ナックルズの幕が上がると、出てきたのはタイツメン。驚く会場に、解散コンテストをやらせてほしいと言って「海岸線のホテル」を演奏し始める。
  いろいろ薀蓄たれたくなるが、封印して、郷愁とか企画のための企画というよりも、ちゃんとGSや音楽への愛情を持った人間が作っていて素晴らしい。スケールは四畳半かもしれないが、音楽青春映画として成立している。音楽や衣装に関わっている方々も、20年前ころのネオGSブームの時にご一緒に仕事というか遊ばせてもらっていた懐かしい人たちですな。元会社ゴタつかなければ、この映画に関わりたかったなあ。
  新宿伊勢丹で食材仕入れ、西荻ささら亭で夕食。ここのメニューは、自分で作ってみたくなるものが多いなあ。

2008年12月7日日曜日

料理は愉し。

風邪気味なのは変わらず、終日睡眠三昧。風邪薬のせいか、本を読んでいても眠くなる。夕方、買い物で一回り。夕食を兼ねて、飲みながら5品作る。