随分久しぶりに水道橋の再就職支援会社。
神保町シアターで女優・山田五十鈴。55年東宝川島雄三監督『愛のお荷物(348)』。厚生大臣の新木錠三郎(山村聰)は、厚生委員会で、産児制限の法案の審議で野党の神岡議員(菅井きん)からの追及を受けている。戦後のベビーブームによる人口の急増に歯止めをかけることに効果が在るや無しやの議論だ。
長女の和子(東恵美子)は産科の医者の荒牧章吾(田島義文)と結婚して6年になるが、子宝に恵まれない。長男の錠太郎(三橋達也)は、家業の薬屋を継がず、長唄を趣味としながら、テレビやラジオの設計をしている変わり者だが、錠三郎の秘書をしている五代冴子(北原三枝)と交際して妊娠もしていることを打ち明ける。錠三郎は、有能な秘書に辞められると困ることと、母の蘭子(轟夕起子)には内緒にしておけと言う。その頃蘭子は産婦人科でおめでたを告げられ困っていた。錠一郎は妻の話を聞いてショックを受ける。息子のみならず、自分の子供まで産まれるとなると、厚生大臣としての面目だけではなく、選挙にも響きかねない。錠太郎は、蘭子に冴子と結婚したいと告げるが、どういう家柄なのかもわからないし、末娘のさくら(高友子)に、京都の出羽小路家の一人息子亀之助(フランキー堺)との縁談に差し支えるかもしれないので、結婚は認められないという。怒った錠一郎は家を出てしまう。
錠三郎は、政治家としての立場を考え、妻に子供を処置してくれないかと言う。渋々ながら頷く蘭子。しかし、念のため別の医師に診立ててもらうと、妊娠は間違いだという診断だ。しかし、ある検査を使って、完全に分かるのは1週間後に。
冴子は、錠三郎に一月後に秘書を辞めると辞表を出す。冴子は、亡父の知り合いの坂口(小沢栄)に錠太郎を紹介する。錠一郎が考えた廉価な大衆テレビ受像機の設計は画期的なもので、坂口のやっているテレビ会社で実用化することになった。さくらは、亀之助の子を妊娠していた。式を挙げる4月では、お腹も大きくて外聞も悪い。箱根に居る祖父の錠造(東野英治郎)に相談をする。その頃、錠三郎は、産児制限の法案で京都に出向いている。祇園での懇親会の時に、古い知人だという女性が訪ねてくる。彼女は貝田そめ(山田五十鈴)。錠三郎が京大の学生だったときに、そめは舞妓で関係を持ったが、一人で、錠三郎の子供を育ててきたと言う。驚く錠三郎だが、新聞社に勤めている息子の力になることを承諾する。そこに、父親の錠造が危篤だという連絡が入る。錠造は、かわいい孫娘みどりのために、自分の余命も長くないので式を早めてくれと、一芝居打ったのだ。
箱根の錠造のもとに首相から召集がかかり、迎えに来る冴子。錠三郎に防衛庁長官への辞令が降りる。錠太郎もテレビ会社の重役だ。また、冴子は、九州の名家の娘だとわかって蘭子も大喜びだ。
新木家を、そめの息子の貝田錠一郎(三橋達也)が訪ねる。錠三郎が、帰宅していないので、蘭子が相手をする。錠一郎の話を聞き、驚きながらも彼の人柄に好感を持つ蘭子。帰ってきた錠三郎に一言釘を刺したところに、番頭の山口(殿山泰司)が男寡をしているうちに女中お照(小田切みき)を妊娠させてしまったと謝りに来る。そんな所に、蘭子の検査の結果が来る。陽性だった。つわりで寝込む蘭子。長女の和子も妊娠の兆候が出たと報告に。和子も、みどりも、そしてやってきた冴子も、みなつわりに苦しみ出す。錠三郎と錠太郎は、布団をしき、洗面器を用意するなど、てんてこ舞いしている。錠三郎は、子供を産めと蘭子に、蘭子は、山口とお照の祝言を挙げてやろうと言う。新木家のおめでたが一遍にやってきた。
44年東宝成瀬巳喜男監督『芝居道(349)』。日露戦争の頃、大阪角座で大栄と言う一座の座長の大和屋栄吉(古川緑波)は、日清日露戦争ものの芝居で大当たりしていた。しかし、栄吉の悩みは、一座の看板役者中村新蔵(長谷川一夫)が最近増長し、自分の忠告を聞こうとしないことだ。このままでは、せっかくの才能が伸びないと思い一計を考える。新蔵が結婚したいと言い出した娘浄瑠璃の竹本花籠(山田五十鈴)をお座敷に呼び、想い人のために別れるよう頼む。花籠に振られ酒を呑んで楽屋入りした新蔵を咎めると、東京の小屋からいい条件で話があるので、一座を辞めるという。しかし、東京の小屋へ行くと話が違った。座長に文句を言うと、大阪で人気だと聞いて呼んだものの実力はなく、実力相応の扱いをしているだけだと言われ言葉を失う新蔵。自分の力を知り努力を始める。一方花籠は、娘浄瑠璃を辞めお光として、針仕事の内職で生計を立て始める。栄吉は、そんないじらしいお光に申し訳なく思い、娘のお絹(花井蘭子)に、度々お金を持たせるのだった。
日本軍の勝ち戦が続く中、信濃屋善五郎(志村喬)や近江屋利兵衛(鳥羽陽之助)も真似して、勇ましい戦記をやり始め大入りに。しかし、栄吉は、こういう時こそ、質素倹約を説く時代ものを上演する。芝居の通人たちには受けるものの小屋には閑古鳥が鳴いている。栄吉の苦難を察したお光は姿を消す。新しい演目を決めたものの、新蔵以外に唯一名前のある役者の嵐扇十郎(進藤栄太郎)が、信濃屋に引っ張られ、小屋主(鬼頭善一郎)から、小屋の使用を断られる。さすがの栄吉も落ち込む。
そんな時に、新蔵が帰ってくる。中村新蔵の名前で角座は借りられ、大入りだ。
60年東宝成瀬巳喜男・川島雄三監督『夜の流れ(350)』。 ホテルのプールに、園田浩一郎(志村喬)と、その秘書でNY帰りの高見沢(中丸忠雄)が、娘の忍(白川和子)とその友人の藤村美也子(司葉子)が来ている。高見沢と美也子の見合いだった。
美也子の母の綾(山田五十鈴)は、新橋の花柳界で料理屋藤むらの雇われ女将をやっている藤村綾。オーナーの園田浩一郎(志村喬)からの誘惑をかたくなに拒む。藤むら出入りの芸者置き屋の七福の女将の志満(三益愛子)は彩とはお互いが芸者だった頃からのお馴染みだ。七福には、元夫に付きまとわれる一花(草笛光子)、男に惚れっぽいが振られては自殺未遂を繰り返す紅子(市原悦子)、酒を飲むと正体がなくなる金太郎(水谷良重)、あけみ(星由里子)万里(横山道代)小町(北川町子)らがいる。
美也子は、藤むらの板前の五十嵐力(三橋達也)が好きで、食事に連れだしたり、家に押し掛けたりするが、五十嵐は相手にしない。五十嵐は、シベリア抑留時代に足を凍傷にして少し不自由が残っている。金太郎は銀座の呉服屋の滝口(宝田明)に惚れているがなかなか相手にしてもらえない。忍は、口うるさい戦争未亡人の叔母(長岡輝子)を嫌って、藤むらに身を寄せている。一花、金太郎、美也子、忍の四人で夜遊びをする。深夜、一花が帰宅すると、滝口がいる。二人は付き合っていて、五反田に店を出して独立しようという相談をしているのだ。
綾は、月に一度浅草にお参りにいくと美也子や店のものには伝えていたが、本当は、板前の五十嵐と逢い引きをしているのだ。こうした関係を終わらせたいと言う五十嵐に別れたくないと言う綾。五十嵐は、板場で足を滑らせて、古傷が痛み歩けなくなる。女将として、てきぱきと病院の手配などする綾。手術になった。美也子は、看病に行き、世話をやく。金太郎、あけみ、万里が見舞いに来る。その帰りに旧知の不良学生たちに会い、麻雀をすることに、金太郎一人酒を飲んでいるうちにいい調子に。酔った金太郎は彼らにやられてしまう。悔し泣きをする金太郎。美也子は、夕方に差し入れをもって、もう一度五十嵐のもとに行くと、他の用事があった筈の綾が五十嵐と抱き合っているのを見てしまう。ショックを受ける美也子。夜美也子が帰ってくるのを待っている綾。釈明しようとする綾に、別に母も女だから、謝ることではないと言う美也子。しばらく母娘の関係はぎくしゃくしたものに。
一花の元夫の野崎(北村和夫)は、滝口と一花が始めた店までやってくる。金を払うから離婚届を出してくれと言う一花。役場に行き、帰りの駅のホームで三人は電車を待っている。いきなり一緒に死んでくれと言って一花と電車に飛び込む野崎。
五十嵐が退院してきて、荷物をまとめている。綾は我を忘れて行かないでくれと泣き崩れる。店の従業員は呆然と見ている。園田が新しい女将の弥生(越路吹雪)を連れてきて、今晩中に引き継ぎを済ませてくれと言う。綾と美也子は、七福に厄介になる。美也子は芸者になる決意をする。ずっと母の脛を齧ってきたので、稼いで綾に楽をさせると健気な美也子。披露目の日が来た。志満に連れられて、店に挨拶に回る美也子。その後姿を見送り、綾は美也子への手紙を書きはじめる。五十嵐が働いているという神戸に行くと言う。
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