2008年12月13日土曜日

藤純子の眼差しは切なすぎるなあ。

  午前中は宅急便を待ちながら、本を読みつつ惰眠を貪る。地元食材買い物をして、
  阿佐ヶ谷ラピュタで山下耕作ノ世界。74年東映京都『極道VS不良番長(358)』。
  島村組を解散し堅気になった島村清吉(若山富三郎)は、「大日本ホルモン焼移動レストラン株式会社」を作り、15人の若い衆とホルモン焼きの屋台を連ねて岐阜にやってきた。大勝の兄貴(大木実)と会い、住まいを格安で紹介してもらう。売主はバーのママ道代(美浦わか)、支払いを半年待ってくれとの不躾な島村の頼みを聞いてくれるが、実は前の借主が博打の借金が嵩み、妻が首を吊ったので離れには幽霊がでるから安いのだという。その夜、島村が離れに寝ていると、女の声がする。思わず、小便を漏らす島村。女は、源五郎(小林勝彦)の情婦のテン子(橘真紀)で、源五郎会いたさに、十三のトルコから逃げてきたのだ。追い返そうとする源五郎に、二人で離れに住めと言う島村。
  その日の昼間、岐阜の市内を、アメリカで人間ロケットとして有名な神崎弘(梅宮辰夫)のバイクスタントショーの宣伝をしている。結局子供が二人しか集まらなく、逃げるつもりが、バイクのトラブルで空を飛び、大怪我を負う神崎。入院した部屋に、マモル(山城新伍)、アパッチ(安岡力也)、?(鈴木やすし)らが詰めている。神崎は、弟の謙次(渡瀬恒彦)ら暴走族の新宿カポネ団のリーダーなのだ。神崎の入院代を工面するために、謙次は、岐阜を仕切るヤクザの中部興業の石黒銀蔵(内田朝雄)に、日系二世でピストルを10丁売ると偽って、水鉄砲を売りつける。うまく逃げおおせたかと思ったが、チームのニッキー(森田日記)が撃たれる。ニッキーは島村によって助けられる。引き取りに一人で乗り込んできた謙次に、ニッキーを引き渡す
  中部興業の妨害を受けながらも、何とか売り上げる島村たち、50万貯まり道代に渡そうとすると、大阪の大衆組の連中(川谷拓三)らがテン子を捕まえにやってくる。道代に返す筈の50万をテン子の前借り分として大衆組に渡してしまう島村。道代に謝罪に行く島村。その日道代は石黒に借金の返済を迫られている。島村に好感を持った道代は、店を閉め、酔って島村を誘惑する。いよいよという時に、道代の弟でバーテンをしている鉄男(嵐誠)が帰ってきて、中部興業に入ってやくざになるという。悲しむ道代に、その後何かと鉄男に極道の道の切なさを説く島村。
   中部興業が、島村の大好きな歌手小林みちる(ジュディ・オング)の交通遺児のためのチャリティコンサートを開くと聞いて感激し、石黒に手伝いを申し入れる島村。みちるがホテルに着いた。出迎える島村たち。しかし、一瞬の隙をついてカポネ団がみちるを誘拐する。中部興業に身代金1000万を持って来いという電話が入る。自らの100万も出し石黒からの200万と合わせて、指定の場所に出向く島村。金を取りにきた若造を二人ぶちのめし、カポネ団が根城にしているモーテルに出向く。身代金の約束が違うと謙次は拳銃を向けるが、ニッキーが止める。みちるを返してもらうが、謙次に交通遺児へのチャリティは、会場などを安く借りるための方便で、結局中部興業の金儲けなのだと教えられ、ショックを受ける島村。取り返したみちるを「大日本ホルモン焼き移動レストラン株式会社」に連れてきてホルモン焼きを御馳走する島村。みちるはお礼のしるしに歌を披露する。石黒たちがやってきた。チャリティーの信憑性を問いただす島村に、引き上げる石黒たち。
   みちるのコンサートの日がやって来た。観客もいっぱいだ。お金の流れに不正がないか目を光らす島村たち。そこに、カポネ団がやってきて、金を奪って逃げた。その途中で、みちるを見たさに施設を抜けて来た交通遺児の男の子がはねられる。一人だけ大勝の手助けもあり捕まえる。男の子は重体で大手術に。捕まえたカポネ団を呼び出し、一人で暴走族に取り囲まれる島村。しかし、カポネ団は、“武装”ホルモン焼き屋台に囲まれていた。結局島村と謙次の1対1の決闘になり、謙次が勝った。
病院の手術室の前で待ち続ける島村たち。そこにカポネ団がやってくる。子供の血液型がRH-だと聞いて献血に来たのだ。手術は成功した。大勝は、看病しているうちに情が移り、養子にしたいと言う。同じ病院に入院していた神崎弘が車椅子に乗って現れた。自分の医療費のために謙次が無理をしたことを詫び、謙次に東京へ帰れと言う。
  その夜、島村はカポネ団の送別会をやってやる。島村組もカポネ団も、今までの経緯を水に流して酒を酌み交わした。東京に帰るカポネ団を見送る島村たち。しかし、岐阜を出る前にマシンガンが彼らを襲う。名古屋の新栄会の助っ人たちだ。謙次一人残る。ニッキーも絶命した。中部興業、新栄会の話を聞いて、島村たちは、再び島村組の法被を着る。“武装”ホルモン屋台が重戦車のように中部興業を取り囲む。銃撃さえ弾き飛ばす屋台。そこに、謙次も駆けつけ、島村と、中に飛び込む。石黒を斬った島村を一発の銃弾が、鉄男がピストルを握っている。島村に、とどめをさせと恫喝され泣き崩れる鉄男。島村は、自分が一人罪を被るので、謙次に逃げろという。謙次は、自分の組に入れてお前の性根を叩き直すと言っただろといって、刑務所に付いていくと言う。二人は、外に待つ警官隊のもとへと歩いていく。
 若山富三郎の3枚目振りは絶好調だ。仮面ライダーの変身ポーズみたいなものや、キックボクシングの要素、子連れ狼の乳母車のような屋台など、少し悪乗り気味な気もしないでもないが、楽しい。
    71年東映京都『日本女侠伝(じょきょうでん) 血斗乱れ花(359)』。
    明治中頃のある年の大晦日、大阪船場の呉服問屋平野屋の女将おてい(藤純子)に堂島の叔父(内田朝雄)か訪ねて来ている。これが最後だと言って二百円貸してくれた。お汀の夫藤吉(津川雅彦)は婿養子、石炭で一山当てると全く家業に身が入らない。結局、虎の子の二百円を持って平吉(山本麒一)と逃げ出す。お汀は夫を追って筑豊にやって来る。藤吉は二百円でこの山を買ってしまったと言い、平吉と2人で掘っている。やっと石炭層を見つけたものの支柱が折れ、石炭を握り締めたまま夫は死んでしまう。おていは藤吉の夢を叶えるために山を継ぐと言いだし、叔父夫婦は怒り大阪に帰ってしまう。
    おていは船場の店をたたみ、平野炭鉱の炭坑主としての人生が始まる。新しい炭坑は坑夫も集まらない。近くの大島鉱業の笹倉炭鉱に抗夫を回して貰うように頼みに行くが、逃げた抗夫への折檻の余りに酷さに、抗長の笹倉勘造(遠藤辰雄)に一言言うと取り囲まれ危ない目に会う。川船頭の吉岡組の吉岡幸次(高倉健)に助けられる。前渡しで払った給金を持ち逃げされ、再び吉岡に助けられる。あまりの素人さに吉岡は、かって、十丁鶴嘴の銀蔵と筑豊に名前を轟かせた先掘りの父親吉岡銀蔵(水嶋道太郎)のもとに連れて行く。素人誰もが儲かると思って石炭に手を出す風潮を嫌っていた銀蔵は、女まで炭坑をやるのかと言ったが、夫は石炭に命を賭けたという思いつめたていの話を聞いて、炭坑を見せろと言う。いい石炭だと言い、力を貸してくれることになった。また筑豊の石炭を一手に収めようという野望を持つ、大島儀十(大木実)は、ていの美貌に目をつけていたが、ていは袖にする。また吉岡の行動が目障りになった、大島と笹山は、吉岡を消そうとする。5人組に襲われた吉岡は、しかし3人を殺し、2人に怪我をさせたということで服役する。
    2年の間は、平野鉱山は順調だったが、厚い岩盤に遮られる。銀蔵も平吉もこの山は終わったと言う。しかし、ていは、石炭が出なくとも賃金は払い続けるので、新しい鉱脈が見つかるまで掘り続けてくれと言うのであった。ていの貯えは底を付き、着物も全て無くなった。大阪の親類を訪ねても金を貸してくれるものは誰もいなかった。ていは、大島のもとに行き3000円の借金を頼む。笹山は自分の体を担保にいれろと辱しめるが、大島は1か月利子2割5分という高利で金を貸す。戻ると、鉄砲水が出て、3名の抗夫が亡くなった。さすがのていも、抗夫の妻の責めにはこたえた。断念しかけたところで、銀蔵と平吉が駆け寄ってくる。また何か起きたかと眉をひそめるていに、銀蔵は石炭を見せる。ていに負けたのだと頭を下げる銀蔵。石炭は、縮緬炭と言われる筑豊でも一等級のものだ。
    更に5年が経った。大島は、芦屋百軒の石炭問屋の組合長として、炭鉱主を召集する。はるかに炭坑主の足元を見たような契約条件の改悪だ。ていは、問屋あっての山だが、山あっての問屋だと言って、席をたつ。しかし、一緒に立ち上がったのは、松木(中村錦二)だけだ。ていと松木は、若松の石炭問屋を訪ね、最も石炭を大事にしている問屋を探しだし、扱ってもらう契約を取り付ける。
    大島は川船頭の元締め、村井仁平(天津敏)に圧力をかけ、若松への運び出しをさせないようにする。その頃、ちょうど、吉岡が出所してきた。川船頭の組合から抜けてまで、吉岡組は、平野鉱山と松木鉱山の石炭を若松に運ぶ。村井も大恩のある大島に従いつつも、吉岡と縄張りを交換したのだと伝える。他の炭坑主も、大島のあまりのひどいやり口に、平野鉱山と松木鉱山の後に従う動きが出てきた。大島と笹山は、いよいよ手段を選ばなくなった。まず、松木を殺した。平野鉱山にダイナマイトを投げ込み抵抗した銀蔵たちを殺した。自分が大島たちを追い込んだのだと自分を責めるてい。ありったけの金を銀行から下ろして、吉岡組の川船頭たちと他の炭坑主に宴席を設けるてい。その夜、ていは、村井を訪ね、私がつっぱったから、死んだものや村井に迷惑をかけたのだと頭を下げる。黙って聞いていた村井だが、大島と笹山のもとへ行き、これからは協力しないと言う。大島は村井を撃ち、死体を川に流した。
    平野鉱山の貯炭場で川面を眺めるていに吉岡は言う。「自分が想う人だから言うが、ていの夫と自分の父親が命を賭けた炭坑を閉めないと約束してくれ」と。涙を浮かべて頷くていは、吉岡にも、大島のもとへ行かないと約束してくれと言う。吉岡の手にある鶴嘴に決意を見たのだ。吉岡は頷いて、川に船を出す。しかし、吉岡は、日本刀を持って大島の事務所に単身殴り込む。笹山を、そして大島を斬るが、大島の弾を数発受けている。一人歩きながら意識が遠くなる吉岡の瞼には、ていの姿が浮かんでいた。数年がたち、貯炭場で川を眺めているてい、平吉がやってくる。平吉と話をしながらも、ていの目は遠い所を見ている。河原には女郎花が咲いている。
  日本女侠伝シリーズ4作目。いいなあ。高倉健と藤純子は思い合っていても、あくまでもプラトニックだ。平吉が、二人の気持ちを察して、二人を騙して、待合いに呼びつけた時も隣の部屋にある布団を見て、出ましょうかと高倉健は言う。情感に溢れた藤純子の瞳は何とも言えない。山本麒一は、切なく屋台で飲んでいるのに・・。プラトニックな男女の機微は、山下耕作監督ならでは。
  結局、今日も博華で餃子とビール。

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