2012年11月27日火曜日

木下恵介生誕100周年。


  エルメス銀座店10FのLe Studioで、43年松竹大船木下恵介監督『花咲く港(21)』
   
      朽ち果てた大きな木造船がある砂浜。洋装の女と巡査が話している。日米開戦が近付き南方から帰国したせつ代(槇芙佐子)と木村巡査(仲英之助)である。
      網を持ったせつ代の父、袈裟次(河原侃二)。「またふらふらとしていやがって。この島で、働きもせず無駄飯を食っているのはお前だけだ」巡査が取り成そうと話を変え、袈裟次の目の具合を尋ねる。「目の調子はどうなんだ。袈裟次が船を降りなければならなくなってから、獲れるカツオが減ったと網元がこぼしていたよ」袈裟次は漁船に乗り、潮見をしていたが、目をやられて船を降りているのだ。持ってきた魚網を繕おうと、網を広げるのをせつ代に手伝わせようとするが、やる気のなく雑に扱うせつ代を罵る袈裟次。嫌気がさしたせつ代は、砂浜から逃げ出す。
    浜辺の一本道を自転車でやってくるお春(水戸光子)に兄さんは元気かと声を掛けるが、
からゆきから帰ってきたせつ代に、若いお春は嫌悪感を感じているのか、全くつれなく通り過ぎる。お春は、近くに止まっている馬車の下にもぐっている馬車会社の社長野羽玉(笠智衆)に「お客様からの電報がまた届いたので、かもめ館にすぐ来てほしい」とのかもめ館の女主人おかの(東山千栄子)からの伝言を伝える。馬車の下にもぐって修理をしていたので野羽玉の顔に機械油がついている。「ずいぶん汚い社長さんね」お春は、そのまま村役場に行き、助役をしている兄の平湯良二(半沢洋介)に同じ用件を伝える。

    かもめ館には、既に村長(坂本武)、島一番の資産家である網元の林田(東野英治郎)が来ていた。15年ほど前に島で造船所を作ろうと尽力した渡瀬健三氏の遺児、健介が、父が最も愛した島を一度見たいので来島するという電報が、昨日、長崎から届いたが、ほとんど同じ内容の電報が鹿児島から船に乗ると届いたのはなぜかと集まったのだ。
   鹿児島の船はそろそろ到着するので、皆で出迎えようと、野羽玉の場所に乗り、実は10年前に渡瀬が造船所の夢破れ、ペナンに去った時、渡瀬を慕っていたおかのは、全てを捨てペナンに追い掛けて行ったのだと言う話を村長は披露し、おかのは娘のように頬を赤らめた。


野長瀬修三(小沢栄太郎)、勝又留吉(上原謙)、ゆき(村瀬幸子)、ゆきの子(井上妙子)、英吉(大坂志郎)、技師(毛塚守彦)、小使(島村俊雄)