京と奈良に二人の帝がいて争っていた南北朝時代、
その時、南朝方の武将たち(五味龍太郎、木村元、
半年が経ち、雪が降り注ぐ。薪が切れたと集めて来いと愛染が太郎に言う。太郎は、台所の竃で料理をする楓に、裏の林で薪を集めて来いと命ずる。しかし、楓は、「行きません。何で愛染の暖まるための薪を私が集めなければならないのです」と平然と答えた。空腹を訴える愛染の声に、妻ならば食事の支度をしろ、もう何も残っていない、干し芋、干し魚はどうした、みな私が食べましたと言うやりとりが交わされる。あの日以来楓は、この荒れ寺に住み着いたのだ。空腹と雪に閉じ込められた毎日への苛立ちを罵る愛染の声に、太郎は本堂に戻り、仏像を叩き斬り、火にくべ、今から京の街に走って、食料を奪って来ると宣言をする。恐ろしさに震える楓と、ようやく決意したかと喜ぶ愛染。山を一気に駆け降り、戦乱で逃げ惑う民衆や貴族たちを脅し、愛染のための着物を奪い、米を奪い、抵抗する者たちを斬捨てる鬼のような太郎の姿がある。
3年ほど月日が流れ、寺を高野山で上人(佐藤慶)が寺を訪ねてくる。僧は、高野山一条院の住職である。楓は上人にすがり、罪深い夫の太郎を救って欲しいと拝む。上人が、持仏の観世音菩薩を持ち出し、経を読み始める。太郎は、黄金の菩薩像共に、上人を斬り捨てようとする。しかし、菩薩像から強い光が出て、太郎は吹き飛ばされる。驚き恐れる太郎。そこに、楓がこの寺に住む本当の鬼と呼ぶ愛染が現れる。お久しゅうございますと声を掛ける愛染。上人は、かって宮中に務める少将の君であった。愛染への愛欲に狂い、恋敵の藤原の中将を斬り捨てたのだ。そのことを恥じた少将の君は仏門に入ったのだ。
愛染は、太郎に仇をうってやると囁き、上人を本堂に誘う。しきりと昔話をし妖しい視線を送る愛染。苦しい修行の末、色欲を断ち切った上人に、一杯だけと酒を飲ませ、もう一杯と勧め、手練手管を繰り出す。結果、上人は、愛染の手に落ち抱いた。事が済むと、愛染は全裸のまま本堂を出て上人に、観世音菩薩に勝ったのだと哄笑した。上人は、恥じて南無観世音菩薩と唱えながら、舌を噛んで死んだ。今わの際に、紫の雲が見えるとつぶやいて。愛染は、菩薩などいないのだ。自分が菩薩なのだと妖艶に笑う。しかし、南無観世音菩薩像の光を体感した太郎には、見えない力を信じざるを得ない。哄笑を続ける愛染を斬り捨てる太郎。上人と愛染を弔い、得度することを決意する。
僧侶の姿となった太郎が荒れ寺に手を合わせ、旅に出る。その後を歩む楓の姿があった。
新珠三千代が素晴らしい。エロスの権化のようだ。自分こそが、菩薩だと言う愛染の言葉はある意味真実だ。肉欲を克服するかできないかは、あくまでも男の自分自身の問題なのだが、鬼と言われて哀れな気もする。愛染との肉欲のために罪を犯したのは太郎と上人なのだがなあ。
専門学校で体験入学の講師。
70年大映京都池広一夫監督『おんな極悪帖(317)』
梅野はお梶の方に、想い人の磯貝伊織(田村正和)を、お目通りさせる。無足の低い身分だが、剣の腕が立ち、顔立ちのよい10歳も年下の伊織に惚れぬいていた梅野は、下屋敷の長屋に住まわせることの許しをお梶の方から得る。梅野にとって30歳を越えての初めての色恋。夜毎伊織に通うのであった。
奥方暗殺に失敗した浪人赤座又十郎(遠藤辰男)
夜更けに、黒頭巾をした身分の高い侍がお梶の部屋を訪れる。男は、江戸家老の春藤靭江(佐藤慶)だった。自分の女の深川芸者お梶を、太守に献上するころで江戸家老の座を得た人物だ。身体を求めるお梶の方を明日にしようと言いながらも、女好きな奥医師玄沢への嫉妬を口にする靭江。靭江を返して、玄沢を部屋に呼ぶ。玄沢も芸者時代のお梶を抱いた男の一人である。毒薬3包をご所望だが、靭江は自分が毒殺するので、奥方暗殺用の1包でいいだろうと手渡し、お梶の身体ににじり寄る玄沢。しかし、お梶が密かに酒に混ぜた自分の毒薬で玄沢は死ぬ。靭江が現れる。上屋敷に帰らず、お梶と玄沢のやりとりを盗み聞きしていたのだ。二人の悪巧み本気にしかけたぞと苦笑いする靭江。艶然と微笑むお梶の方。玄沢の死体を始末する梅野と伊織。