2009年11月28日土曜日

自宅居酒屋

   結局、当日朝から掃除と料理を始めることになるが、面倒くさくなり、前回よりも3品程少なくなる。今日は昼寝をしてホスト役を務めるつもりだったが、そんな余裕もなく、結局開店時間に。ということで10時には眠っている。途中目が覚めると、お客さんの顔ぶれが変わっている。初来店の方含め沢山お越し頂きありがとうございました。洗い物も済ませてくださり恐縮です。

2009年11月27日金曜日

おヒーさま。

     ラピュタ阿佐ヶ谷で、昭和の銀幕に輝くヒロイン【第50弾】叶順子
     59年大映東京吉村公三郎監督『貴族の階段(666)』
     洋館の二階の西の丸氷見子(金田一敦子)の部屋。1935年のダイアリーが机の上に置いてある。外は真っ暗だが、窓の外には見事な桜が咲き誇り、開いた窓から桜吹雪が入ってきている。ベッドの中で西の丸氷見子は微笑み、起き上がって、机に座り、日記帳を開く。4月3日と日付をつける。「今日はお父様の部屋に来ていらした陸軍大臣の猛田大将が、階段を転げ落ちた…。」派手に転がり落ちて倒れる猛田(滝沢修)。大きな物音に慌てて駆け寄る下士官や、西の丸一家の人々。公爵の父秀彦(森雅之)、母多美子(細川ちか子)執事(花布辰男)。負け惜しみに、公家の家は階段まで意地悪く出来ていて油断ならないと言って、部下に支えられ帰って行った。
     ベッドに腹ばいになり、日記を書く氷見子。毎年恒例の、桜会があった。いつものお姫さま(おひーさま)たちの集まりである。「最近は男の方ばかり、威張って変な世の中ですわ。陸軍大臣を女性がやれば、平和になるのに」何でも明け透けに言う徳川正子(仁木多鶴子)が言う。若松さん(岸正子)は品のよさを鼻にぶら下げているような人だ。猛田節子(叶順子)は、猛田大将の令嬢にして、私の姉でもある。何て素敵な人だろうと氷見子の独白。他に、鶴宮さま(立花泰子)男爵夫人(大和七海路)伯爵夫人(八潮悠子)子爵夫人(岡村文子)侍従長の孫娘芳子(弓恵子)らが出席し、お茶を飲んでいる。
    今晩も、猛田大将がやって来た。腕を吊っている。氷見子は、父に来客があると、応接室の隣りにある書斎で客と父の会話を全て筆記することになっている。「君は何を飲む?」「スカッチの水割りを頼む。しかし、沼津のご隠居には困ったものだ。御隠居が暗躍して、我々軍の足を引っ張っているのだ。」「沼津の自由思想が軍部の英米派を後押ししていると言うのですな・・・。」「いや、軍部に英米派も、独伊派もない。日本派があるだけだ。」
   氷見子の独白、「猛田さまも、沼津のおじい様が私におっしゃったことを聞いたらどう思うかしら・・・。」祖父(志村喬)を訪ねた氷見子と海岸を歩きながら、「あの男を男爵にしたのは間違いだった。品がないという言葉は猛田のためにあるものだ。下賤そのものだ。あんな男から、節子さんが生まれたとは思えない」と笑う。
   猛田「このままでは、日本は滅びる。下層の国民は、苦しんでいる。政党政治家と元老重臣の腐敗は許しておくことは出来ない。」「青年将校たちの妄動をどうするつもりだ。」「勿論私は彼らに自制を求めている。しかし、彼らの国を憂う気持ちは純粋なものなのだ。」「どうも君は殺し合いをさせるつもりだな。しかし、その後をどうするのだ。」「後始末をつけるのは貴公がいる。貴公たち貴族が必要なのだ。古(いにしえ)から天皇家は、軍人たちの争いとは関係なしに、権威を持ち続けてきた。今回も後始末の後に、君たち公家ののっぺりした顔が世の中を治めるのだ。」別室で筆記をしていた氷見子は「猛田のおじさまにしては、珍しく上手いことを言うものだわ。」とクスリと笑う。

   軍務局長室、抜刀した青年将校の相沢中佐(杉田康)が入ってくる。局長の永田鉄山(伊東光一)が顔を上げる。天誅だといって斬りかかり刺殺する。陸軍本部内でのことであり、世の中に大きな衝撃を与えた。暗殺、クーデター・・・、「お兄様も、そのお仲間かしら・・・。」セーラー服姿の猛田節子が西の丸家にやってきた。氷見子は駆け寄り、「お姉さま。お兄様が帰っていますの。早く」と言って兄の部屋に案内する。氷見子の兄義人(本郷功次郎)は、陸軍に入隊し見習士官をしていた。軍服をはだけ、軍靴を脱いでくつろいでいた義人慌てて身づくろいをする。「ごきげんよう。」「ごきげんよう。」氷見子の独白「お兄様が用もないのに、度々帰ってくるのは、節子お姉さまに会いたいからに相違ない。早くプロポーズをすればいいのに」氷見子はやきもきしながら見守っているのだ。節子は自分で作ったというお守り袋を義人に渡す。「政治を正すため、猛田大臣は頑張っておられます。」と言う義人に、「なぜ、軍人が政治をするんでしょうか。」と呟く節子。もう時間がないと帰ろうとする兄を呼びとめ、「お別れの御挨拶はこういうものですわ。」と言って、二人を握手させる氷見子。義人も節子も赤く頬を染める。かって、三人で登った明神岳の写真を見て、今年の夏はお兄様は無理なので、二人で登りましょうよと氷見子。二人だけのほうが気楽でいいわと節子。夏休みに軽井沢の別荘へ、徳川正子を誘って出掛けることにする。


  西の丸公(志村喬)渡辺先生(楠田薫)先生(河原侃二)猛田那子(村瀬幸子)大山巡査(菅原謙二)大山の妻しの(倉田マユミ)右翼理論家(佐々木孝丸)伊藤少尉(友田輝)小間使松(近藤美恵子)政憲党幹事長(大山健二)老女(橘喜久子)西の丸公の美女(矢島ひろ子)新見大佐(八木沢敏)衛兵司令(三田村元)青年将校(石井竜一)参謀(谷謙一)下士官(早川雄三)医師(見明凡太朗)運転手(守田学)


   午後は講師2コマ。マーケティングの本の音読が終わったので、今度は、マネージャーに関する本。割と集中力が持続するようになって嬉しい。今までの本のタイトルを教えて欲しいと言う学生もいて大喜びだったがタイトルを間違えて教えてしまった(苦笑)エンタメ1年のイベント企画は、かなり盛り上がって来た。来週職員会議で学生たちがプレゼンすることになっている。グループ分けすると自発的に議論をする彼らは頼もしい。
   歯医者に行き、インプラントの検査をし、西荻に戻り買い忘れていた食材を購入。仕込みを始める筈が、家の片付けの途中で、飲み始めると止まらない。今日はこれでお終いだなあい。
  CXの2時間ドラマが点いていたが、酷いな(笑)。ドラマに拘っているフジでさえ、NO演出。マッチはマッチでしょうがないが、20世紀少年の平愛梨、あーあ。こんなに地上波急速に駄目になってしまうとは・・・。まあ、新聞も一緒なのだが・・・。

2009年11月26日木曜日

古(いにしえ)の京と最近のわが庵は、荒れ果てていた。

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、俳優 佐藤慶
   64年近代映画協会/東京映画新藤兼人監督『鬼婆(665)』
  一面に芒(すすき)が生い茂っている。甲冑姿の二人の落ち武者(松本染升、加地健太郎)が逃げ込んで来た。ニ騎の追っ手が探しているが、深い茂みでなんとか逃げおおせたようだ。腰を下ろし荒い息をつく。突然二本の槍が芒の陰から突き出し、二人を突き刺す。
   芒の間から出て来たのは、中年女(乙羽信子)と若い女(吉村実子)。武士から甲冑、刀、槍、着物などを手馴れた感じで剥ぎ取り、下帯ひとつにすると死体を引きずり、近くの深い穴に突き落とす。
   槍に戦利品を下げ自分たちの小屋に運ぶ。部屋に戻ると瓶から水を飲み、鍋の粟飯を手掴みで口に入れる。賤しい女たちだ。空腹感が満たされると大の字になって眠る。日が暮れ、暑さも凌げるようになると起き出し、籠に戦利品を入れ背負って出掛ける。洞穴に住み着いている武器商人の牛(殿山泰司)に売りつけに行くのだ。
   牛は、京は焼け野原になって、大変だと言う。何せ帝も吉野に逃げ出したと言うのだ。お前らの持って来る武具は質が悪いと言って粟二袋を出してくる。不作と戦が続いて、百姓が逃げてしまったので食物が手に入りにくいので足元を見ているのだ。嫌ならいいと言われて仕方なしに粟二袋を受け取る。もう一袋欲しければ抱かせろと言う牛。牛と牛の手下(荒谷甫水)を相手にするくらいなら死んだ方がマシだと中年女。翌日二人が飯を食っていると、近くに住む八(佐藤慶)がやって来て、何か食わせてくれと言う。中年女は若い女に椀をとってやれと命じ、「一緒に行った倅はどうした?」「おらの旦那はどうしただ?」二人は姑と嫁だった。「飲まず食わずでやっとのこと帰って来たんだ、まずは食わせてくれ」と八。。

  南北朝の頃、京は戦に明け暮れ荒れ果てていた。

  元会社で打合せ、前向きな話が出来てよかった。渋谷に出て散髪、阿佐ヶ谷某所に預かって貰っていたギター2本を受取り帰宅。西荻に出て土曜日の自宅居酒屋の食材集め、博華で餃子とビール。家が片付かない(苦笑)。

2009年11月25日水曜日

映画見ないと体調悪いなあ(笑)。

午前中は旗の台でミーティング。昼から学校3コマ。夜はエッグマンで、女性アーティストだけのイベントを覗く。

2009年11月24日火曜日

腐っても東大。

  午前中は、大門の睡眠クリニックから、赤坂のメンタルクリニック。

  京橋フィルムセンターで、生誕百年 田中絹代 映画女優
   56年日活阿部豊監督『色ざんげ(662)』
   西条信光と表札が掛かった邸宅を見渡せる借間の窓から眺めている洋画家の湯浅譲二(森雅之)。そこに刑事(大森義夫)がやってくる。「失礼します。」「何だね、君は。」「警察の者ですが…。お仕事は?つまり、ここで何をしているんですか。」「君には関係がない。帰ってくれ。」「あなたは関係なくても、警察は不審なものがいると通報があれば、対応しなくてはいけないんだ。」「誰が通報したと言うんです。」「それは言えませんよ。」「西条さんちが丸見えですね。」「君には関係ない」「そういう態度を取るんであれば、署まで同行して貰いましょう。」
   警察署長(松下達夫)、「高名な洋画家の湯浅譲二さんともあろう人が、少し非常識ではありませんか。」「好きな女のことを眺めて何がいけないんだ。」「奥さんもちゃんといる人が、そんなことをして、それが非常識だと言うんです。」
      湯浅が帰宅をすると、妻のまつ代(山岡比佐乃→山岡久乃)が服をトランクに詰めている。湯浅の顔を見るなり、「お帰りなさい。警察の気分はどう?刑事が来て、露子さんのこと、根掘り葉掘り聞いて言ったわ。私はほとほと愛想が尽きたので出て行きます。慰謝料と言うか手切れ金を頂きたいのですけれど…。」「楠本に任せてあるので、彼と話してくれ。」「楠本さんと話せばいいんですね。お春も一緒に行きたいと言うので、連れて行きますね。」「ああ、勝手にすればいい。」

  西条信光(菅井一郎)弟二郎(武藤章生)お八重(田中絹代)津村(二本柳寛)楠本(芦田伸介)小牧高尾(高田敏江)お八重の亭主(三島耕)井上とも子(天路圭子)父真平(冬木京三))母靖子(坪内美詠子)白井国彦(宍戸錠)

   北原三枝は、八頭身で昭和の人間とは思えないかっこよさ。森雅之の渋い中年紳士。最高の年の差カップルで、森雅之に自分を投影しようと言うかなりの意気込みで、個人的に相当期待したのだが、二人の恋愛がどうも薄っぺらくて残念だった。脇役がなかなか揃っていた分、何だか散漫になってしまったのだろうか。



    神保町シアターで、日本文芸散歩

    54年近代映画協会吉村公三郎監督『足摺岬(663)』
    昭和9年冬、世の中が暗く生きにくい時代になって行く時代のことである。
    警察署の未決房。学生が看守が番号を呼ぶ。学生(木村功)が立ち上がり、鉄格子から出る。中に残った弁当を食い続ける労務者に、包帯を頭に巻いた男が「何だ?」「ありゃ、アナだろう。」(多分アナキスト)と答える。
    警察署の外に母親に付き添われた学生が出て来る。「驚いたろう。貧乏な学生はみんなアカだと決め付けているんだ。」「政夫がアカだなんて…。」「でも、母さんが来てくれたから、すぐ出られたよ。」
    坂道を二人で歩いていると、向こうから新聞配達の少年がやって来て、「浅井さん、今出られたんだね。早く出られて良かったね。」と言い、夕刊を渡す。夕刊を開くと、ワシントン海軍条約破棄と見出しが出ていて顔を曇らす浅井。「彼は下宿の隣りに住んでいる福井くん。新聞配達をして夜学に通っているんだ。」「偉いんだねえ。」本郷の下宿。浅井は、自分の部屋に母親のトヨ(原ひさ子)を案内し、お茶を沸かす。文机にガリ版があるのを見た母に、「内職みたいなものさ。」と説明する。隣りの福井の姉八重()が弟の部屋に来ていて、ついでに洗濯をしてくれていた。八重は近くの学生食堂の住み込みだった。浅井はトヨの連れ子で、夫から行くなと言われたが上京したのだ。大学への進学も反対した夫は、学費を一切出さないので、夜なべしての針仕事で、小さなお金を稼いでは送ってくれるのが浅井は心苦しいと言う。しかし、トヨは、政夫が東大を無事卒業することだけが、自分の希望だと言い、栗と揚げ餅を置いて慌ただしく田舎に帰って行った。

浅井政夫(木村功)八重(津島恵子)福井義治(砂川啓介)松木(信欣三)坪内(内藤武敏)緒方(斎藤雄一)香椎(庄司永建)さよ子(日高澄子)広瀬隆剛(森川信)ユキ(赤木蘭子)文春(河原崎建三)印刷所支配人(嵯峨善兵)印刷職工(下元勉)病院の助手(芦田伸介)西野(金子信雄)商店主人(菅井一郎)特高刑事(神田隆)おちせ(野辺かほる)のぶ(田中筆子)遍路婆さん(小峰千代子)遍路爺さん(御橋公)売薬売り(殿山泰司)

     60年大映東京増村保造監督『偽大学生(664)』
     昭和39年東都大学の入学試験の合格発表。大須彦一(ジェリー藤尾)は打ちひしがれていた。山口県萩の田舎から出て来て、日本一の最高学府東都大学に入れと死んだ父と一人小さな商店を営み仕送りをする母の期待を背に、4度目の受験に失敗したのだ。郷里の母に「マタオチタヒコイチ」と電報を打とうとしたが、落胆する母の顔が浮かんで出せなかった。下宿の靴屋に戻ると、主人が「どうだったかい?」と聞いてくる。思わず頷いてしまう大須。「そうかい!!受かったかい。ウチに天下の帝大生を住まわせていると思うと鼻が高いよ。祝杯を上げよう!!」と言って、かみさんから、酒は駄目だと言われる。女房は「大須さんも、4度目だから、これで駄目なら、頭が悪いと言うことだね。」と噂をする。
   二階の自分の部屋で、大須は参考書の山を押しのける。「ゴウカクシタ」と電文を書き換える。
    東都大学の入学式。総長(三津田健)が祝辞を述べている。
    下宿で、詰め襟に東都大学のバッジを付けている大須。鏡に自分の姿を映し満足そうに下宿を出ようとすると、靴屋の主人が新聞を読みながら、東都大学の学生でも、この記事に出ている全学同の空谷委員長(伊丹十三)みたいになっちゃいけないよと言う。「いや、大学生はみんな全学同の一員なんだ」と言う大須。
    大須は、ジャズ喫茶に入り、コーヒーを頼む。ウェイトレスが、襟章を見て「あなた東都大学生ね。やっぱり他の人とはどこか違うわ」と言う。少し鼻が高い大須に「あそこにも東都大生いるわよ」と言う。「いや、キャンパスでは見かけないな」そこでは正に、空谷がマスコミの取材を受けているところだった。マスコミが帰ると、二人の刑事がやって来て、逮捕状を見せ、連れて行こうとした。空谷は、東都大のバッジを付けた大須に気がついて、歴史研究会に伝言をしてほしいと言う。
   学生寮にある歴史研究会の部室では、木田靖男(藤巻潤)や高木睦子(若尾文子)柳沢(三田村元)原田(大辻伺郎)辻(森矢雄二)らが全学同の支部委員会を開いていた。委員長の空谷が現れない。刑事に逮捕されたところに居合わせ、空谷から伝言を受けたという新入生の大津がやってくる。
   大津は、学生集会で、空谷の不当逮捕を証言してくれと頼まれる。多数の寮生たちに囲まれた集会に大津の気持ちは高揚し、空知は、刑事たちの暴力に寄って不当逮捕されたと作り話をしてしまう。全学同東都大学支部は、城西署の前で、空知の不当逮捕に抗議をする座り込みに参加する。過激な発言をし、言われたままよく働く大津は、幹部の学生たちに気に入られ、住み込みのアルバイトをしていた中華料理屋で、夕食を奢る。大津は、自分の母親は、地元でデパートを経営し、中小小売店を潰している、吐唾すべき資本家だと言い、そんな母親からの仕送りは闘争のために使ってしまった方が好ましいのだと言う。結局、大津は明日、労働組合のストライキの支援闘争に参加することにする。
   睦子は実家に帰る。睦子の父高木次郎(中村伸郎)は、戦時中自由主義的な研究者として東都大学の教授だった。しかし、自分の信念を曲げなかったため、特高の拷問により、視力を失っていた。姉の国縞子(岩崎加根子)が実家に戻ってきていた。夫で、東都大学助教授の国恭介(船越英二)と結婚していた。国は高木の教え子で、戦後進歩的な学者として発言していたが、縞子と離婚をして財閥の令嬢の教え子と再婚すると言う。国は、歴史研究会の部室で、社会思想史の自主ゼミを開いていた。
   闘争は、右翼のスト破りや警察も入り混じって、暴力的な弾圧となった。全学同の学生たちは傷つき、検挙される。一人づつ取り調べを受けるが、皆黙秘を貫いた。ただ、大津だけは、刑事たちに、「お前は、東都大に在籍していないのに、なぜ偽装潜入しているのだ」と問い詰められる。刑事たちは、過激左翼組織か、海外組織から潜入し、学生たちを煽動しているのだと思っていた。大津は、母親に照会すると言われただけで、実は浪人が続き、母親に言いだせなくて、偽学生になったと自供する。あまりの顛末に刑事たちは、愕然とし、簡単に釈放する。他の逮捕者と違って、半日で釈放になったことで、会わせる顔がない大津は、頭への怪我で頭痛がすると言って、警察署前の学生たちから逃げるように去った。
   数日後、木田達逮捕学生と空谷が釈放され、祝賀会をやると告げに、高木睦子が中華料理屋を訪ねてくる。当初は頭が痛いと隠れるようにしていた大津だったが、皆が疑っていないことを知り、また睦子が来てくれたことで、喜び勇んで祝賀会に出かける。皆大きな怪我をしても果敢に戦った大津を褒めた。一人、空谷は大津のことを知らず、皆逮捕された時に伝言を頼んだ新入生ではないかと答える。空谷は、逮捕拘留中、かなり内部の情報が漏れていたので、スパイがいるのではないかと言う。
   木田と原田は、辻(?)から大津を学内で見ないと言う話を聞いて、学務課に行き、学籍簿を調べ、大津の名前が掲載されていないことを突き止める。その頃、大津は、睦子の付添いで、全学同の本部に出かけていた。辻はバイト先の初台ベーカリーの車を借り、大津を捕まえ、部室に連れてくる。みな、警察からスパイを強要されたのだろうと追及する。

彦一の母(村瀬幸子)野口里子(三浦友子)

  党派でもなく、思想でも、集団でもなく、人間みな未熟で、卑怯で、矮小な生き物だなあ。悲しい寓話。かなりやられる。さすが増村保造!凄い作品は、とてつもなく凄い。

2009年11月23日月曜日

インディーズ映画、67年と09年。うーむ。

    神保町シアターで、日本文芸散歩
  67年創造社大島渚監督『日本春歌考(660)』
  赤い布に、黒い墨が垂れて丸い円になり広がって行く。赤地に黒い日の丸のようだ。
   雪の大学キャンパス。入学試験のようだ。前橋第一高校の中村豊明(荒木一郎)、上田秀男(岩淵孝次)広井克巳(串田和美)丸山耕司(佐藤博)は連れ立って受験に来た。高校の先輩で浪人生の藤原が、試験が終わった時の気分はいいだろう、そのために3年も浪人しているのだ、自分はこれから新宿のロレンスに行くと謎を残して去った。他の大学を受験していた広井と丸山が合流する。
   上田は、同じ教室の受験番号469番が美人だったと言う。ちょうど、ベトナム戦争反対の署名とカンパ集めをしている大学生がおり、そこで署名をしようとするセーラー服姿の469番(田島和子)を見つける。隣に並んで、彼女の署名を見ようとする中村たち、藤原マユコと書いたようだ。君たちも署名をしろと言われて「丸出だめ夫、チビ太」などと書いてふざけるな!!と怒られる。雪の東京をブラブラする4人。どこかの大学から、先頭に「紀元節復活反対」の墓標と卒塔婆を下げ、白地に黒い日の丸と黒旗を掲げたデモ隊が、静かにやってくる。いつしか4人が先頭を歩いているかのようだ。「何も言わないんですか?」と尋ねると「紀元節復活反対」とシュプレヒコールを上げるような静かなデモだ。ふと気がつくと、デモ隊の後部から、自分たちの引率教師大竹(伊丹十三)が金髪の女(小山明子。金髪と言っても、今の感覚では、ブルーネット(栗毛色?)という感じだ。)と列を抜けるのに気が付き、後を付ける。地下鉄の駅で二人は別れ、女の後を付けるとパレスサイドビル(毎日新聞が入っているビル)に入り、エレベーターに乗る。同じフロアで降り、中村が声を掛けようとすると、女は「誰?ずっと後をつけていたでしょう。」と声を掛けられ、「大竹先生の・・・」としか言えない中村。
    結局4人は、同級生の女子が受験している女子大にやって来て、手当たり次第に「前橋の智子さん!」「前橋の早苗さん!」と声を掛けまくる。里見早苗(宮本信子)池田智子(益田ひろ子)金田幸子(吉田日出子)はやってきたが、大竹と約束をしていると言って、相手にしてもらえなかったが、結局、女子について、大竹と一緒に食事をする。軍歌酒場のような場所で、大竹は酔い、春歌は虐げられた民衆の抵抗の歌だと言い「一つ出たホイのヨサホイのホイ、一人娘とやるときは、ホイ…。」と歌い出す。男子学生たちにとって強いインパクトのある歌だ。結局徘徊しているうちに、前橋行きの下りの列車を逃し、大竹の世話で、大竹の下宿の近くの旅館に学生たちは泊まることになる。

前橋第一高校の中村豊明(荒木一郎)、上田秀男(岩淵孝次)広井克巳(串田和美)丸山耕司(佐藤博)谷川高子(小山明子)藤原眉子( 田島和子)

  シネマート新宿で、井土紀州監督『行旅死亡人(661)』
  朝の洗面所で、不機嫌そうに歯を磨きながら、手櫛で髪を解かす娘(藤堂海)。
    (本人のNA)私の名前は滝川ミサキ、ノンフィクション作家を目指す24歳。薬害エイズや、食品偽装、セックスボランティアなど現代社会にメスわ入れるような文章を書きたいと思っているが、原稿を持ち込んでも、二番煎じだといつも言われている。つまり、私は単なるフリーターだ。でも、今朝は何かが書けそうな予感がしている…。自転車を漕ぎ、バイト先のスーパーに急ぐミサキ。

2009年11月22日日曜日

婆やという職業。

   京橋フィルムセンターで、生誕百年 映画女優 田中絹代

55年日活久松靜児監督『月夜の傘(658)』
   郊外の街に、小さな建て売り住宅が建っている。とある日曜日、村井家の一人息子で高校生の健一(茂崎幸雄)がハモニカを吹き「広志ちゃーん」と声を掛ける。隣の小谷家の二男広志(真塩洋一)が小さな庭の石を引っ繰り返している。広志は蟻が好きなのだ。健一のハモニカが野薔薇のメロディを奏で始めると、小谷家の長男高志(渡辺鉄彌)と妹の和子(加藤淳子)が出てきて、歌い始める。母の律子(田中絹代)がおろおろ出てきて、「お父さんは調べ物をしているから静かになさい」と注意する。小谷家の主人小谷耕平(宇野重吉)は中学の数学教師、試験答案の採点をしている。急に歌い止めた高志と和子に「どうしたんだい?」と健一が尋ねると、高志は鬼の角のジェスチャーをする。健一の母の村井かね子(轟夕起子)が「うちに遊びにいらっしゃい」と声を掛ける。
  井戸で村井家の婆や(飯田蝶子)が洗濯をしていると、律子がやってくる。「休日は水道の出が悪くなるし、ウチは家族も多くて、お金もかかるので、井戸が一番だわ。」と洗濯を始める。耕平が庭に出てくると庭の石が引っ繰り返っている「また広志だな。広志!!広志!!」と怒り始める。村井家の二階の健一の部屋にいる広志に、「いい加減にしろ!!」と怒鳴る。
  井戸端に、かね子がやってきて、洗濯は自分がするので、婆やには家に戻って子供たちに飲み物を出してあげて頂戴と言う。倉田美枝(新珠三千代)が沢山の洗濯物を持ってやってくる。「うちは4人もいるからこんなに多いけど、あなたはご主人一人なのに随分と多いわね。」と律子。美枝は、新婚だが夫の倉田信男(三島耕)は出張が多く、家を空けることが多い。若くして一軒家を買ったので、給料の4分の1は家の借金に充てなければならないのだ。「御主人は今日お休み?」と律子はかね子に言う。「今日はいないのよ。」「今日もお仕事?」「違うのよ、小野さんにいい縁談があると言って、その打合せなの。小野さんには、もう少しはっきりするまで言っては駄目よ。」
   そこに噂の主、小野妙子(坪内美詠子)が現れる。妙子は、娘の小野雪子(二木てるみ)と二人暮らしの未亡人。洋裁の仕事で生計を立てている。美枝が下請けしていたものを渡す。「もう出来たの?」「これからも、いくらでも手伝わせて下さい。」「なんだか、本職の私の方が煽られてしまうわ。」


村井隆吉(三島雅夫)鈴木吾郎(伊藤雄之助)鈴木一郎(桜井真)川崎豊(宍戸錠)坂本卓二(杉幸彦)江藤とみ(東山千栄子)小泉なつ子(新井麗子)仲人(加原武門))
健一の友達(高田敏江)(大森曉美)八百屋(光沢でんすけ)女給(須田喜久代)女事務員A(丘志摩子)女事務員B(竹内洋子)宮島彌生


  56年東宝稲垣浩監督『(659)』
  大正中頃の話である。フランス文学の研究者の水沢信次(笠智衆)は、4年振りに帰国した。7年前に妻を亡くし、自分の子供たちを親類たちに預けていたが、やはり自ら育てようという決意と共に・・。
  旅館桜館に住まいを決め、荷物を整理していると、誠心堂主人石井(加東大介)が訪ねてくる。一世一代の仕事としてフランス文学大辞典を出版したいので、水沢に編纂を頼みたいと頭を下げる。「一世一代か・・・ライフワークだな。」「ライフルワーク?そりゃ何です?」「ライフワーク、一生を賭ける仕事だよ。君」「そうです。そのライフワークって奴ですよ。お願いできますか?」「いや、今自分には別のライフワークがあるんだよ。」「何ですか?」「育児だよ。子供を預けてフランスに出かける時には、そんなことを考えなかったが、滞在中、無性に子供のことが気になって、異国の子供の頭を撫でたりしていたんだ。大学の講義もあるし、三つは出来ない。君すまんが・・・。」「そりゃ、血の繋がった親と一緒の方が子供に一番ですが、大変ですよ。」肩を落とし帰って行く石井。
   数日前、水沢の義妹しづ江(東郷晴子)の元を訪ねる。「そりゃ、お預かりしているのですから、お返ししますが、育児は大変ですよ。」太郎(武田昭)と次郎(鈴木映弘)が小学校から帰ってくる。4年振りの父親の対面に少し緊張をしている二人。

桜館主人北川(清水元)女中お咲(中北千枝子)雑誌記者宮口(今泉廉)少女時代の末子(中村葉子)お徳(田中絹代)八代教授(江川宇禮雄)
水沢の兄(山田巳之助)少年時代の三郎(平奈淳司)水沢太郎(山本廉)水沢次郎(大塚国夫)水沢三郎(久保明)水沢末子(雪村いづみ)
特高刑事(谷晃)お霜婆さん(馬野都留子)芸者年丸(上野明美)郷里の青年森(松尾文人)森の妹(香川悠子)医者(稲葉義男)
芸者(黒岩小枝子、泉千代)失業者の男(菅大作)その子供(市川かつじ)