2008年10月3日金曜日

大人と子供。

   阿佐ヶ谷ラピュタで香川美子特集、63年松竹京都吉田喜重脚本監督『嵐を呼ぶ十八人(173)』呉の造船所に臨時工として鑑別所上がりの不良少年18人がやってくる。同じ境遇で長く造船所にいる主人公宗夫(早川保)が彼らの寮長をやることなる。主人公を慕う酒場の娘ヒロ(香山美子)は、ある日無人の寮の部屋で、彼らの一人に暴行されてしまう。香山美子、健気にしかし逞しく生きようとしている娘を好演。いきいきと新鮮で清らかな感じ。地方都市の繁華街は今とは正反対に活気に満ちている。
  65年東映東京今井正監督水上勉原作『越後つついし親不知(174)』。今井監督、やはり本当に救いのない映画だ。越後から京都伏見の造り酒屋に出稼ぎに着ている蔵人の権三(三國連太郎)は女好きでいい加減な男、同じ村の出身で真面目で努力家のトメ(小沢昭一)の昇進が決まったことが面白くない。権三は母親の危篤で急に帰省することになるが、その途中雪道で出会った、トメの美しく働き者の妻おしん(佐久間良子)を暴行し、妊娠させてしまう。そのことはおしんとトメ夫婦に地獄のような日々をもたらしたのだった。身寄りもなく貧しいが、更に美しいことで不幸なでき事が降りかかるおしんを佐久間は10代から演じている。本当に美しく華麗なだけに、そんな女性を不幸のどん底に突き落としていく監督は鬼だ。そんな役を健気に演じている佐久間良子、妻を愛し、権三のせいで苦しめられるトメ役の小沢昭一、二人は本当に素晴らしいが、あまりに悲しい結末。人生はあり、更に深いあり。常に最悪の結末を考えていれば、自分達はまだ幸せという教訓なのか。
   渋谷シネアミューズEWで『コドモのコドモ(175)』この間のベティもそうだが、子供は大人が考える程未熟ではない。というか、我々大人は長く生きてきた分テクニックは身についたが、未熟なままではないのか。それを理解出来ない程愚かなので、自分達よりも子供を幼稚だと思っている。大人になって純粋さが失われるわけでも、成熟した知性や理性を獲得したわけでもなく、殆ど進化していないことを理解できないまま自分達の優位性を信じ込んでいるのではないか。『大人は判ってくれない』でも『子供は分かってくれない』のではなく、他者は分からないままなんじゃないか。我々は大して賢くもならず、愚かで幼稚なままなんだろう。
   夜は、大久保の韓国料理屋。うまいなあ。黒マッコリ

2008年10月2日木曜日

昭和30年代の格差社会に逆戻り

  午前中は大門の睡眠障害医。新宿伊勢丹とジュンク堂に寄り、
  神保町シアターで58年松竹大船大庭秀雄監督『黒い花粉(173)』。有馬稲子奔放な性格の重役令嬢役。父親(笠智衆)の秘書の鉄道自殺の現場で、目撃した普通のサラリーマン佐田啓二)と出会う。は心中未遂を起こした社員の後始末で熱海に向かう途中だった。50年前日本は大変な格差社会だった。高度成長により国民総生産が増え一気に縮まって総中流だと騙されていた(笑)。ただ、グローバル化の中で、結局格差があることに思い知らされ始めている。世界中で富の再分配が行われたら、世界の一部の大金持ちと、膨大な数の貧しい人間に二分され、結局、大金持ちのサーバントとしておこぼれを頂戴する人間と生きていけないような弱者がほとんどを占めるのか。南北問題、民族問題、人種問題、国内問題を飛び越えて、新しい革命的思想や運動が起きるのか。一気に人類地球の生存の危機が訪れるのか。映画は、終盤登場人物達が皆、坂道転げ落ちる ように不幸になっていく。それまでの中弛みで不覚にも寝るが、結局、父親が部下の不正で死を選んだことで、目が覚めた令嬢は、ごく普通のサラリーマンとの平凡な生活を選ぶという、何だか昔話のような結末に。 そんなことより、これからの生活や格差社会について考える50歳の失業者なのであった。でも有馬稲子はいいなあ。
   永田町海運ホールでAMNという会社のマーケティングセミナー。アサヒビールとソニーマーケティングのWEB関連部門の話面白かった。それ以上に気になったのは、WEB関連の代理店や企業担当者だけでなく有力ブロガーが来ているからなのか、コンフィデンシャルな筈のパワーポイントをデジカメや携帯でパシャパシャ。フラッシュ焚く奴まで。こういうもんなのかー。
   夜、元会社の九州エリアのプロモーションスタッフNさんが明日からの会議に前乗りしているということなので、元同僚Kと三人で赤坂で飲む。ちょっと愚痴っぽくなってしまったかなあ。

2008年10月1日水曜日

三船敏郎と勝新太郎。

  昔からの友人に就職相談。一応スーツとネクタイ。一度行ったことがあったのに、なかなか見つからず、汗かく。昼飯食べ、 渋谷に出て、
  シネセゾンで『ベティの小さな秘密』10歳のエリザベスは、みんなからベティと呼ばれることが子供扱いされているようで好きではない。姉は寄宿舎に入り、精神病院の院長と元ピアニストの母との間も上手くいっておらず、遂には母は出て行ってしまう。ベティは顔に痣のある転校生に優しくしたりするが、彼は彼女との秘密をクラス中の笑い物にする。ベティの心の支えは、父の病院から脱走したイヴォンを納屋に匿い、彼の面倒を見ることだけだ。10歳でも女なんだなあ。心を病んだ男と捨て犬を従者のように引き連れ、家出するベティは、立派にエリザベスなのであった。
   シネマヴェーラで、63年日活吉村廉監督『アカシアの雨がやむとき西田佐知子のこの曲は、昭和の歌謡曲の中で自分にとってベスト3に入る(ベスト3は10曲くらいあるが・・・)。クラブ歌手として出演している西田佐知子が良かった。映画としては浅丘ルリ子と高橋英樹コンビ。生真面目な新進画家がファッションモデルを山中湖で助けるが、実はボート上で彼女を暴行しようとしたカメラマンが事故死していた。カメラマンとファッションモデルの心中未遂として、彼女はマスコミや世間の関心のまとになるが・・というミステリーが始まるのかという冒頭は、何のことはない、二人の恋愛のきっかけに過ぎないというかなり乱暴なストーリー展開だったが(苦笑)、彼の将来のため、身を引くルリ子と、探した末彼女を忘れようと絵に打込む高橋英樹、更に西田佐知子と「アカシア~」の作曲をするピアニスト葉山良二(作詞はルリ子だ!!)を挟んでのすれ違いの辺りから、俄然テンポがよくなる。 スキャンダルでモデルを続けられなくなり、病気の母親との生活のために仕事を探し回るルリ子の姿が、またもや自分の境遇に重なり切ない・・・。って、もっと足を棒にして、仕事を探し続けろという教訓なのかもしれない(苦笑)。
  70年三船プロ製作待ち伏せ三船敏郎、裕次郎、錦之助、勝新、日本映画衰退に対抗すべく、総出演。やはりスクリーンでの存在感は、今の役者とは圧倒的に違う。見せ場的には、三船勝新、ルリ子の三人、裕次郎錦之助は三人に良いところを譲っている感じ。やはり三船勝新の殺陣は凄い。ただ、日本映画と役者たちのその後を知っているだけにやはり切ない。茶店の娘役の北川美佳は、三船美佳の母親なのだろうか、よく似ている。しかし、三船敏郎と比べると遥かに若い。三船美佳が思い切り年上の高橋ジョージと結婚したことが思い出される。
  シアターTSUTAYAで気になっていた『芸者VS忍者』。ああ観るんじゃなかった(苦笑)。まあ何でもありだし、時代考証とか刀剣はとかいうのも野暮だし、自分もどれだけ知っているんだとも思うが、藤純子のお竜さん や今日の三船敏郎勝新太郎の後に見たのが圧倒的に失敗だった。多分DVDになってからPCのモニターか何かで観りゃよかった。殺陣師じゃなくてアクション監督しかいないことや、多分時代劇の衣装やっている人や、時代劇の出演経験のある役者が野村将希 (柘植の飛猿 from 水戸黄門(笑))以外入ってないだろうことを考えればしょうがないだろうが、今、時代劇らしいものを作れるスタッフと役者が本当にいなくなったことを実感する。
 映画を観ながら、鯉口を切れー!とか、何だか町人の恰好なのに侍か?とか、おいおいそれじゃフェンシングだろ!とか、刀の血を拭いてから鞘に収めろー!とか、豹柄の毛皮かよ?とか、アイヌ民族に失礼だろ!とか、おいおいそれじゃ自分の指が落ちるだろ!!とか、舞を舞う武士だって沢山いたのだから、何も芸者にならなくたっていいだろ!!とか、帯くらいちゃんと締めろ!!とか、息つく間がない程突っ込みたくなって、見終わったら疲労困憊に。長澤奈央が、今度は、戦忍びの恰好で出演していて、『ロックンロール☆ダイエット』では、ハードロックギター弾いてたし、戦隊モノでデビューしたせいか器用だなあと感心(笑)。
 とってもお手軽な『あずみ』、ウルトラローバジェットでも時代ものスウォードアクション作れまっせというところだろうか。どうせやるなら、どんどん作って、上達していって欲しい(笑)

2008年9月30日火曜日

今日も昭和の映画

 昼に渋谷で散髪後、
 阿佐ヶ谷ラピュタで『緋牡丹博徒 お命戴きます』71年東映京都加藤泰監督。藤純子さんの大ヒットシリーズ第7弾。何本も観ていたつもりだったが、これは未見。しかし お竜さん。かっこいい!美しい!熊本人吉、矢野組三代目矢野竜子。改めて全部見直したいぞ!
 続いて『密会』59年日活中平康監督。吉村昭原作のサスペンス。桂木洋子、大竹しのぶを美人にした感じ(笑)、あるいは色っぽい中野美奈子。東大の大学教授夫人が、夫の教え子と過ちをおかす。逢い引きしていた場所でタクシー強盗殺人を二人は目撃してしまうが・・・。よろめきって死語のように思うが、正によろめきサスペンス。成城の大豪邸と学生の住む梅ヶ丘のアパート、みんなお金持ちだなあ。しかし、逢い引きをしていた場所すごい山の中かと思ったら、成城の豪邸の少し裏手の神社だった。昭和34年頃の東京世田谷とはあんな感じだったんだなあ。25年程前に元会社の同期と借りていた家のあたりかもしれない。それと、泰葉似の住込みの女中、誰かと思ったら春川ますみ だった。

2008年9月29日月曜日

邦画今昔

  朝惣菜三品作り。独身美人OLに差し入れ元同僚とフィッシュで豆カレー。
神保町シアターで61年松竹渋谷實監督『もず』松山から上京した美容師の娘(有馬稲子)が、小料理屋で酌婦をする母(淡島千景)のもとに20年振りに現れる。父親が戦死すると資産家である祖父母は、母を追い出し、娘に婿を取らせたが、その結婚は失敗していた。待望の母子二人の生活は、互いの気持ちとは裏腹に、感情がすれ違い激しい喧嘩ばかりしている。有馬、淡島母子だけでなく、乙羽信子、山田五十鈴、桜むつ子清川虹子高橋とよ、ら女優陣が本当に素晴らしい。どんな脇役でも、市井に暮らす女たちの生き生きとした役柄を演じきっている。日本映画の最盛期の松竹映画、本当にすごかったんだなあ。今昔を感じて切ない。
  ということで敢えて、新宿シネマートで『ロックンロール☆ダイエット』(苦笑)。メンズデーで男1000円で客男三人(失笑)。神保町シアター、渋谷シネマヴェーラ、阿佐ヶ谷ラピュタでの旧作上映の老人たちの行列、映画業界人!ホントに考えた方がいいんじゃないのか。飲みながら考えたような映画を、捻りもなく作りやがって!ヘビー・メタボリックという誰でも思いつくようなオヤジギャグしかない企画。上映前にリピートされる嶋大輔のフラットしっぱなしの主題歌も酷いが、考えてみれば、嶋大輔もこんな仕事は可哀想。それ以上に、ウガンダ・トラさん、これが遺作だとすると悲し過ぎ。体調悪い時にこんな現場で色々やらさせられたことが死期を早めたんじゃないかと邪推さえする。同じデブとして、デブを笑い物にすることは気にならないが(本心ですよ)、音楽に、というかロックにこだわりもリスペクトもない音楽映画は許せないというか、あり得ない。今年酷い映画も随分観てきたつもりだが、ダントツに最高ラジー賞早々と当確。原作あるとは信じられないが、お前が書いたのはこんなツマラナいものだったのか?中丸謙一朗!! 女の子(長澤奈央波瑠(はる) &紗綾(さあや) )だけちょっと可愛いのが、インディーズ映画とも違って更に痛い。彼女たちのプロフィールに入れるのは可哀そう。このプロデューサー、映画の中に出てくるインチキ音楽プロデューサーと同レベルだ!製作委員会参加各社と監督と原作者に、出口満足度調査したかったな。 さらにオフィシャルHPのURLは、デブロック?!!(失笑)
   西荻S亭でポテサラとビールでクールダウン。

2008年9月28日日曜日

何か面白いことないか。子猫ちゃん。

  そうそう、このところ、普通にブログ書くのもつまらなくなり、自分の書いた文章にリンク貼りまくっている。まあ、最初のうちは、映画のオフィシャルhpとかにしていたのだが、国内の多くのブログのように、よそ様の宣伝をして、儲かるほど他人様が見ているわけではないだろうし、他人を儲けさせるのもなんだか気に食わないということを考えるうちに、自分の好きな映像や音楽にリンクを貼ったほうがいいという気になった。youtubeが多いし、明らかに映画の隠し撮りらしいもの以外はどこにでも飛ばしているので、すぐ見られなくなるものもあるだろうが、ずいぶんと昭和の名曲や名画や懐かしいCMが上がっていて、楽しい。ブログを書くより、その編集作業の方が時間が掛かったりする。しかし、こんなものまでよくというものも、上がっていて、世の中にはマメな人が多いのだなあ。世の中、テレビを見るよりも、PCに向かっている時間が長くなっていることが実感される。自分もテレビをつけていても、BGMにしている方が多い。じっくり鑑賞するものは、テレビには、ほとんど無くなってしまった。テレビっ子としては、とても寂しい時代。