54年新東宝井上梅次監督『東京シンデレラ娘(537)』
銀座のネオンや、レビューの殿堂日劇…、しかし、ここは場末の芝居小屋。不揃いな脚線美のレビューや、調子はずれのジャズ、時代遅れの大衆芝居、奇術、何でもありだ。
楽屋で奇術師のジョニー(伴淳三郎)と、三味線弾きの女(花岡菊子)が言い争いをしている。ジョニーは、三味線弾きの娘の良子を、舞台のアシスタントに使っていたが、3日経っても、ギャラを払わないので、連れて帰ると言うのだ。良子の将来性をありとあらゆる美辞麗句で誉めそやし、収入も、日劇の舞台から引きが掛かっていて、明日にはその契約金が50万入ると言うが、全く信用されていない。今日でこの小屋もクビになるが、ギャラは前借りなので、一銭も入ってこないのを、知られているのだ。しかし、ジョニーは、直ぐあとの舞台に、アシスタントの少女が必要だ。
揉めていると、楽屋番の男が、ジョニー宛てに客があると言う。適当に追い返せと言っていると、かっての奇術師仲間のタニマンからの遺書を持ってくる。タニマンとは騙し騙され、金を貸し借りしていた悪友だ。警察病院に入院しているが、もう長くはないので、一人娘のみどりを、借金の方に渡すと書かれている。舞台の時間を催促され、みどり(雪村いずみ)に中国服を着せ、舞台に上がる。
ハンカチの手品や、洋傘をクラリネットに替えて吹いてみせたり、みどりを的にナイフ投げをしたり、それなりに達者なものだが、客席は、見慣れているからなのか、拍手や喚声などはほとんど起こらない。
舞台袖には、上手に偽物のセメントを売りつけた土建屋(伊東健)下手には贋の質札で騙した高利貸し(山田長正)が、ジョニーをふん縛って警察に突き出してやろうと待ち構えている。それに気がついたジョニーは、みどりを入れて、刀剣を刺す筈の箱の中に入り、消えてしまう。困ったみどりも、後から箱に入り、いなくなる。
小屋を抜け出し、商店街を歩くジョニーを追って来たみどり。タニマンは三日前に亡くなったと聞いて、しんみりするジョニー。二人とも空腹だが、パンを買う金もない。ジョニーには住む家もない。住んでいた高級アパートは、家賃を溜めて追い出されてしまったと言う。みどりは、酷い家主さんねと言うが、3年4ヶ月住んで、一度も家賃を払っていないと聞いて驚く。
モダンでスマートな所があると言って、ルンペンたちのねぐらの原っぱに連れて行く。ジョニーがチャルメラを吹くとルンペンたちが集まった。タニマンが三日前に警察病院で亡くなり、このみどりが娘だと言うと喇叭吹き(南里文雄!!)のラッパで黙祷を捧げる。ルンペンたちの寝床の土管もどこも塞がっていて、ここでも住宅難だ。気の毒そうに頭を下げる大さん(岸井明)に、手を振るジョニーとみどり。
寝る所の当てもなく、公園のベンチで座り込む二人。弱気になったジョニーは、自分の荷物は、蝙蝠傘一つ、みどりのことが重荷だと話す。私がジョニーさんに頼って来たのが悪かったんですと謝るみどり。ジョニーは立ち去る。雨が降って来た。雨の中ずぶ濡れで、「オー・マイ・パパ」を切々と歌うみどり。戻ってきたジョニーが傘を差し掛ける。
雨は激しくなってきた。山田と言う表札の掛かった大きなお屋敷の軒先で雨宿りをする二人。お茶でも一杯貰おうかと中に声を掛けるが、何の返事もない。ドアノブに触ると、取れてしまったので、中に入る二人。住人は留守のようだ。居間には、暖炉とソファー、ピアノがあり、台所には、外国製の缶詰めの山と、日立の大型冷蔵庫、中には、みどりが見たこともないようなご馳走が詰まっている。神のお恵みだと調子のいいジョニー。
食べようとした瞬間、外に車が止まり、男女が降りてくる。凄い豪邸だなあ。これなら練習場にぴったりだ。啓子(新倉美子)の叔父である山田老人の持ち物だが、別荘に行っているので、留守番を任されている。しかし、山田老人は、金持ちだがすこぶるケチで、財産は誰にも譲らず、あの世に全て持って行くが口癖だと説明する啓子。
啓子と三田(中山昭二)新井(高島忠夫)松本(和田孝)が入って来たので、慌てて電気を消し隠れるジョニーとみどり。お化けがでそうだなあと言う新井に、啓子は、本当にそういう噂はあるのと言う。山田老人の一人娘の真知子が、ここで自殺をし、それ以来、真知子の部屋は18年間開かずの間になっていると言う。暖炉の薪を取りに来たのを見て、ジョニーはいっちょお化けを出すかと言う。新井と松本が台所に食べ物を取りに来たのを、白いシーツを被った二人が動くと、二人は大騒ぎをし、4人とも裸足で逃げ出した。
笑いながら、二人は見たこともないご馳走を食べ満腹に。二階の部屋に上がると、そこのベッドはふわふわだ。大喜びで、跳ねるみどり。ジョニーは、美しい女性のポートレートを見つける。裏から遺書と書かれた手紙が落ちる。文面は、お父様、私はあの男に騙されていました。先立つ不幸をお許し下さいというものだ。山田老人の娘の開かずの間だった。ふわふわのベッドで眠りにつく二人。
翌日、ルンペン野原に、ジョニーとみどりがやってきて、今晩拙宅でパーティを開くといってビラを撒く。正装をして来いとある。夜、様々な“正装”をしたルンペンが、山田老人の邸宅に集まり飲んで歌っている。巡査(三木のり平)が、山田さんの家は留守だった筈だがと顔を出す。ジョニーが、留守番をしているが、山田老人が近隣のルンペンに食事を施しているのだと言う。酒を勧められ、公務中ですからと断ると、お茶ですよと言われ、お茶でしたらと二杯御馳走になってしまう。
啓子や、三田、新井、松本や、音楽仲間(渡辺晋とシックスジョーンズ)が屋敷に来ると、賑やかだ。昨日の幽霊は連中の仕業だったかと話していると、千鳥足の巡査とすれ違う。とっちめてやろうかと言う新井に、ルンペンたちが歌っている曲を聞いて、おいいいイメージが湧いて来たぞと三田。リズムとイントロを歌うと、皆も乗ってきた。いっちょやろうかと楽器を持って屋敷に入る。三田の弾くピアノに合わせて、ルンペンのテーマを演奏する。ご機嫌だ。
ジョニーが気づくと、一人の老人(古川緑波)がいる。今日は何の宴会ですかなと尋ねられ、山田老人というケチで有名な人が開いてくれたのです。え?と同じ質問を繰り返す。その度に酔ったジョニーは、ケチな山田さんと言う人がと繰り返すのだ。酒を勧めるうちに、その老人も楽しそうだ。みどりも歌を披露する。そこに、山田修一(有木山太)がやってきて、これは何の騒ぎですか?という老人も、啓子も、良く分からないがあの男に聞いてくれとジョニーを指さす。とんちんかんなやりとりの後、老人が山田吾平本人で、修二はその甥で山田老人の計理士をしていることが判明する。今すぐに出ていかないと、家宅侵入罪と、無断で人の物を飲み食いしたので窃盗罪で訴えるぞと言い出し、ルンペンたちは青くなり、ゾロゾロと帰り始める。ちょうど、先程の巡査もやってきたが、自分も酒を飲んだので、窃盗罪という言葉に、今は公務中ですからと後ずさりして逃げ出す。
追い詰められたジョニーは、みどりこそが、この家の令嬢真知子の忘れ形見だと言う。今日は真知子の誕生日、真知子の恋人から自分が預かって育てていたが、母親が住んでいた家を見せてやりにきたのだと言う。真知子は、ずっと家にいて亡くなったので、そんな出産なんて、ありえない胡散臭い話だと思うが、今日が真知子の誕生日だったということは事実であり、100%嘘だとは言いきれない。
井上梅次。この頃は、ハリウッド的なジャズレビュー映画を真剣に作っていたんだなあ。カラー、モノクロの差はあるものの、セットはかなり頑張っている。ジャズミュージシャン、ダンサー、当時の一流総出演だったんだろうが、正直ダンスに関しては、沢山出せば出すほど、技量の差が出てしまって、どうも群舞が揃わない・・。しかし、音楽は最高だ。雪村いずみ、耳がよかったんだなあ、発音、音程パーフェクト!!どうもひばりさんばかりが昭和の歴史に残る天才少女歌手として、フューチャーされるが、江利チエミ含めた3人娘が、昭和ポップス史の中で秀逸なんだと再認識する。奥二重気味の雪村いずみかっこいい。更に、浅学にして知らなかったが、啓子役の新倉美子の歌はてっきり吹替だと思っていたら、辰巳柳太郎の娘にして、ジャズ歌手として大人気だったと知る。中音で少しハスキーな声は魅力的だ。勿論美しい!!
体験入学の講師。男子2人、女子1人。
シネマヴェーラ渋谷で、妄執、異形の人々Ⅳ。
77年松竹定永方久監督『錆びた炎(538)』
渋谷ラブホテル紫苑。青い鳥籠に入れられたシャム猫。眠っている男の首に繋いだストッキングを巻き、力一杯引っ張り絞殺する女。。
渋谷医大ゼミと言う予備校のトイレの窓から、双眼鏡で、辺りを覗いている男多木浩(中島久之)がいる。喫茶店のカップルを、毛皮を着たホステスらしい女、青い鳥籠にシャム猫を入れて下げて歩く女を見つけ、いきなり女を追いかけて走りだす多木。女の手から鳥籠を取って声を掛ける。
毛皮を着たホステス(ひろみ麻耶)が、自分のマンションにタクシーで帰宅する。女を見ている多木の姿がある。多木は、狭い下宿に帰宅する。ラジオを点けると、渋谷道玄坂のラブホテル紫苑で、サンジョルジュ総合病院の医師佐島が殺されたことを報道している。佐島と一緒にホテルに入った鳥籠に猫を入れた女を重要参考人として、探していると言っている。
数日後、深夜の種村総合病院、巡回の看護婦が、面会謝絶という札が掛かっている病室の子供の患者の様子を確認する。翌日、病院院長の種村誠一郎(丹波哲郎)と息子で副院長の種村光晴(大林丈史)が慌ただしく病院にやってくる。いつのことだと事務長とに尋ねると、丸山和也という子供の患者が深夜の0時から4時の間にいなくなったのですと言う。光晴は、丸山和也ですか・・血友病患者ですと顔を曇らせる。子供の両親丸山正己(斉藤真)雅子(二宮さよ子)は誘拐されたと言って、直ぐに警察に通報をと頭を下げるが、現在、医大設立の申請をしていてその認可に差し支えるので、外に漏らすなと誠一郎。
翌日、田園調布あたりだろうか高台に聳え立つ種村邸に、サイレンを鳴らして、東京ガスの車がやってきた。中に入るなり、ガス会社の制服を脱ぎ棄てる刑事たち。この事件のキャップを務める警視庁上野毛署の遠丸次郎警部(平幹二朗)、ベテラン刑事池広(村田正雄)、永本(綿引洪→勝彦)若い浦山(重田尚彦)の四人が乗り込んできた。電話の回線を確認し、逆探知システムを設置する。この屋敷は高台にあるのでどこからも見張りやすいのだ。種村家は、誠一郎、光晴と登志子(梶芽衣子)夫婦と、お手伝いの伊山比佐子(原田美枝子)の4人暮らしだ。
副院長の光晴が、患者の病状を説明する。血友病の丸山和也は定期的な輸血が必要で、入院中の輸血から72時間が経つと生命の危機があると言う。しかし、種村総合病院は、丸一日経って、誘拐犯から身代金の連絡があってから警察に通報したので、あと48時間あまりしか、時間は残っていない。誠一郎は、馬鹿げている、なぜ患者の身代金を払わなければならないのだ、病院は、緊急の患者のためにいつも開けておけなければならない、その責任は取れないと苦々しげに言い放つ。
小林久三が、原作、製作、脚本。浅学にして知らなかったが、松竹の助監督だったとは・・・。既にどん底の日本映画の時代、全て空回りし、スタッフ・キャスト一丸となって堕ちていく時代の代表的な映画。原田美枝子、30年前か20年後に、世の中に現れていれば、田中絹代、原節子、高峰秀子と並んで呼ばれる大女優だったなと勝手に思い入れる。この映画の唯一の救いが原田美枝子。血友病の扱いが、誤謬にまみれているので問題になったと、この企画のパンフに書いてあったが、それ以前に、やってもうた!!的な映画。
しかし、身代金の受け渡しの指示が、都内の地下鉄を乗り継ぎ続けさせるという設定なので、当時の営団地下鉄各線の雰囲気が分る貴重な映像資料(笑)。更に、32年前、自分が通っていた頃の高田馬場駅前、何だか懐かしい。
97年新東宝映画/国映渡邊元嗣監督
『好色くノ一忍法帖 ヴァージン・スナイパー美少女妖魔伝(539)』
東京副都心に登った月が、青から赤に変わる。ローラースケートを履いたくノ一が疾走する。風が、セーラー服芸者の金魚(樋口みつき)のスカートを巻き上げる。金魚「OH!もーれつ」(苦笑)
政財界の黒幕として、今も隠然たる権力を握る十九代徳川虎長(久保新二)の屋敷に、風魔の女忍者花風(林由美香)が忍び込んだ。虎長の寝所で、人相書きを確認し、眠っている虎長を刺激し始める。虎長の股間は既に鋼鉄のように硬い。花風の任務は、虎長の子種を奪ってくることだ。しかし、花風は愕然とする。虎長の一物は、銀行の大金庫のように正に鋼鉄で覆われているのだ。数字を探り、鋼鉄の頭頂部を外すと、警報が屋敷内に響き渡り、パトライトが点滅する。虎長の正室綾乃(しのざきさとみ)が薙刀を持ちやってくる。何とか花風は、寝所から逃げ出し、風魔忍法花粉散らしで、追っ手たちにくしゃみをさせ、大凧に載って脱出する。しかし、豊臣家末裔のねね子は、月風(和泉由紀子)に続いて、虎長の子種の奪取に失敗したことを責め、怒り狂う。
綾乃は、徳川家の危機に、秘書の蛇口一角(池島ゆたか)に、十三代服部半蔵(螢雪次朗)を呼べと言う。
ピンク映画で、時代ものとは珍しいと思ったら、違うんだな。しかし、なかなか楽しい。
ポレポレ東中野で、松江哲朗監督『あんにょん由美香(540)』
「あんにょん由美香」、林由美香、松江哲朗・・・。全てにやられる。素晴らしい。
楽屋で奇術師のジョニー(
揉めていると、楽屋番の男が、
ハンカチの手品や、洋傘をクラリネットに替えて吹いてみせたり、
舞台袖には、上手に偽物のセメントを売りつけた土建屋(伊東健)
小屋を抜け出し、
モダンでスマートな所があると言って、
寝る所の当てもなく、
雨は激しくなってきた。
食べようとした瞬間、
啓子と三田(中山昭二)新井(高島忠夫)松本(和田孝)
笑いながら、
翌日、ルンペン野原に、ジョニーとみどりがやってきて、今晩拙宅でパーティを開くといってビラを撒く。正装をして来いとある。夜、様々な“正装”をしたルンペンが、山田老人の邸宅に集まり飲んで歌っている。巡査(三木のり平)が、山田さんの家は留守だった筈だがと顔を出す。ジョニーが、留守番をしているが、山田老人が近隣のルンペンに食事を施しているのだと言う。酒を勧められ、公務中ですからと断ると、お茶ですよと言われ、お茶でしたらと二杯御馳走になってしまう。
啓子や、三田、新井、松本や、音楽仲間(渡辺晋とシックスジョーンズ)が屋敷に来ると、賑やかだ。昨日の幽霊は連中の仕業だったかと話していると、千鳥足の巡査とすれ違う。とっちめてやろうかと言う新井に、ルンペンたちが歌っている曲を聞いて、おいいいイメージが湧いて来たぞと三田。リズムとイントロを歌うと、皆も乗ってきた。いっちょやろうかと楽器を持って屋敷に入る。三田の弾くピアノに合わせて、ルンペンのテーマを演奏する。ご機嫌だ。
ジョニーが気づくと、一人の老人(古川緑波)がいる。今日は何の宴会ですかなと尋ねられ、山田老人というケチで有名な人が開いてくれたのです。え?と同じ質問を繰り返す。その度に酔ったジョニーは、ケチな山田さんと言う人がと繰り返すのだ。酒を勧めるうちに、その老人も楽しそうだ。みどりも歌を披露する。そこに、山田修一(有木山太)がやってきて、これは何の騒ぎですか?という老人も、啓子も、良く分からないがあの男に聞いてくれとジョニーを指さす。とんちんかんなやりとりの後、老人が山田吾平本人で、修二はその甥で山田老人の計理士をしていることが判明する。今すぐに出ていかないと、家宅侵入罪と、無断で人の物を飲み食いしたので窃盗罪で訴えるぞと言い出し、ルンペンたちは青くなり、ゾロゾロと帰り始める。ちょうど、先程の巡査もやってきたが、自分も酒を飲んだので、窃盗罪という言葉に、今は公務中ですからと後ずさりして逃げ出す。
追い詰められたジョニーは、みどりこそが、この家の令嬢真知子の忘れ形見だと言う。今日は真知子の誕生日、真知子の恋人から自分が預かって育てていたが、母親が住んでいた家を見せてやりにきたのだと言う。真知子は、ずっと家にいて亡くなったので、そんな出産なんて、ありえない胡散臭い話だと思うが、今日が真知子の誕生日だったということは事実であり、100%嘘だとは言いきれない。
井上梅次。この頃は、ハリウッド的なジャズレビュー映画を真剣に作っていたんだなあ。カラー、モノクロの差はあるものの、セットはかなり頑張っている。ジャズミュージシャン、ダンサー、当時の一流総出演だったんだろうが、正直ダンスに関しては、沢山出せば出すほど、技量の差が出てしまって、どうも群舞が揃わない・・。しかし、音楽は最高だ。雪村いずみ、耳がよかったんだなあ、発音、音程パーフェクト!!どうもひばりさんばかりが昭和の歴史に残る天才少女歌手として、フューチャーされるが、江利チエミ含めた3人娘が、昭和ポップス史の中で秀逸なんだと再認識する。奥二重気味の雪村いずみかっこいい。更に、浅学にして知らなかったが、啓子役の新倉美子の歌はてっきり吹替だと思っていたら、辰巳柳太郎の娘にして、ジャズ歌手として大人気だったと知る。中音で少しハスキーな声は魅力的だ。勿論美しい!!
体験入学の講師。男子2人、女子1人。
シネマヴェーラ渋谷で、妄執、異形の人々Ⅳ。
77年松竹定永方久監督『錆びた炎(538)』
渋谷ラブホテル紫苑。青い鳥籠に入れられたシャム猫。眠っている男の首に繋いだストッキングを巻き、
渋谷医大ゼミと言う予備校のトイレの窓から、双眼鏡で、
毛皮を着たホステス(ひろみ麻耶)が、自分のマンションにタクシーで帰宅する。女を見ている多木の姿がある。多木は、狭い下宿に帰宅する。ラジオを点けると、渋谷道玄坂のラブホテル紫苑で、サンジョルジュ総合病院の医師佐島が殺されたことを報道している。佐島と一緒にホテルに入った鳥籠に猫を入れた女を重要参考人として、探していると言っている。
数日後、深夜の種村総合病院、巡回の看護婦が、面会謝絶という札が掛かっている病室の子供の患者の様子を確認する。翌日、病院院長の種村誠一郎(丹波哲郎)と息子で副院長の種村光晴(大林丈史)が慌ただしく病院にやってくる。いつのことだと事務長とに尋ねると、丸山和也という子供の患者が深夜の0時から4時の間にいなくなったのですと言う。光晴は、丸山和也ですか・・血友病患者ですと顔を曇らせる。子供の両親丸山正己(斉藤真)雅子(二宮さよ子)は誘拐されたと言って、直ぐに警察に通報をと頭を下げるが、現在、医大設立の申請をしていてその認可に差し支えるので、外に漏らすなと誠一郎。
翌日、田園調布あたりだろうか高台に聳え立つ種村邸に、サイレンを鳴らして、東京ガスの車がやってきた。中に入るなり、ガス会社の制服を脱ぎ棄てる刑事たち。この事件のキャップを務める警視庁上野毛署の遠丸次郎警部(平幹二朗)、ベテラン刑事池広(村田正雄)、永本(綿引洪→勝彦)若い浦山(重田尚彦)の四人が乗り込んできた。電話の回線を確認し、逆探知システムを設置する。この屋敷は高台にあるのでどこからも見張りやすいのだ。種村家は、誠一郎、光晴と登志子(梶芽衣子)夫婦と、お手伝いの伊山比佐子(原田美枝子)の4人暮らしだ。
副院長の光晴が、患者の病状を説明する。血友病の丸山和也は定期的な輸血が必要で、入院中の輸血から72時間が経つと生命の危機があると言う。しかし、種村総合病院は、丸一日経って、誘拐犯から身代金の連絡があってから警察に通報したので、あと48時間あまりしか、時間は残っていない。誠一郎は、馬鹿げている、なぜ患者の身代金を払わなければならないのだ、病院は、緊急の患者のためにいつも開けておけなければならない、その責任は取れないと苦々しげに言い放つ。
小林久三が、原作、製作、脚本。浅学にして知らなかったが、松竹の助監督だったとは・・・。既にどん底の日本映画の時代、全て空回りし、スタッフ・キャスト一丸となって堕ちていく時代の代表的な映画。原田美枝子、30年前か20年後に、世の中に現れていれば、田中絹代、原節子、高峰秀子と並んで呼ばれる大女優だったなと勝手に思い入れる。この映画の唯一の救いが原田美枝子。血友病の扱いが、誤謬にまみれているので問題になったと、この企画のパンフに書いてあったが、それ以前に、やってもうた!!的な映画。
しかし、身代金の受け渡しの指示が、都内の地下鉄を乗り継ぎ続けさせるという設定なので、当時の営団地下鉄各線の雰囲気が分る貴重な映像資料(笑)。更に、32年前、自分が通っていた頃の高田馬場駅前、何だか懐かしい。
97年新東宝映画/国映渡邊元嗣監督
『好色くノ一忍法帖 ヴァージン・スナイパー美少女妖魔伝(539)』
東京副都心に登った月が、青から赤に変わる。
綾乃は、
ピンク映画で、時代ものとは珍しいと思ったら、違うんだな。しかし、なかなか楽しい。
ポレポレ東中野で、松江哲朗監督『あんにょん由美香(540)』
「あんにょん由美香」、林由美香、松江哲朗・・・。全てにやられる。素晴らしい。