2009年9月19日土曜日

女優 林由美香。

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、昭和の銀幕に輝くヒロイン【第49弾】雪村いずみ
    54年新東宝井上梅次監督『東京シンデレラ娘(537)』
   銀座のネオンや、レビューの殿堂日劇…、しかし、ここは場末の芝居小屋。不揃いな脚線美のレビューや、調子はずれのジャズ、時代遅れの大衆芝居、奇術、何でもありだ。
   楽屋で奇術師のジョニー(伴淳三郎)と、三味線弾きの女(花岡菊子)が言い争いをしている。ジョニーは、三味線弾きの娘の良子を、舞台のアシスタントに使っていたが、3日経っても、ギャラを払わないので、連れて帰ると言うのだ。良子の将来性をありとあらゆる美辞麗句で誉めそやし、収入も、日劇の舞台から引きが掛かっていて、明日にはその契約金が50万入ると言うが、全く信用されていない。今日でこの小屋もクビになるが、ギャラは前借りなので、一銭も入ってこないのを、知られているのだ。しかし、ジョニーは、直ぐあとの舞台に、アシスタントの少女が必要だ。
    揉めていると、楽屋番の男が、ジョニー宛てに客があると言う。適当に追い返せと言っていると、かっての奇術師仲間のタニマンからの遺書を持ってくる。タニマンとは騙し騙され、金を貸し借りしていた悪友だ。警察病院に入院しているが、もう長くはないので、一人娘のみどりを、借金の方に渡すと書かれている。舞台の時間を催促され、みどり(雪村いずみ)に中国服を着せ、舞台に上がる。
ハンカチの手品や、洋傘をクラリネットに替えて吹いてみせたり、みどりを的にナイフ投げをしたり、それなりに達者なものだが、客席は、見慣れているからなのか、拍手や喚声などはほとんど起こらない。
    舞台袖には、上手に偽物のセメントを売りつけた土建屋(伊東健)下手には贋の質札で騙した高利貸し(山田長正)が、ジョニーをふん縛って警察に突き出してやろうと待ち構えている。それに気がついたジョニーは、みどりを入れて、刀剣を刺す筈の箱の中に入り、消えてしまう。困ったみどりも、後から箱に入り、いなくなる。
    小屋を抜け出し、商店街を歩くジョニーを追って来たみどり。タニマンは三日前に亡くなったと聞いて、しんみりするジョニー。二人とも空腹だが、パンを買う金もない。ジョニーには住む家もない。住んでいた高級アパートは、家賃を溜めて追い出されてしまったと言う。みどりは、酷い家主さんねと言うが、3年4ヶ月住んで、一度も家賃を払っていないと聞いて驚く。
    モダンでスマートな所があると言って、ルンペンたちのねぐらの原っぱに連れて行く。ジョニーがチャルメラを吹くとルンペンたちが集まった。タニマンが三日前に警察病院で亡くなり、このみどりが娘だと言うと喇叭吹き(南里文雄!!)のラッパで黙祷を捧げる。ルンペンたちの寝床の土管もどこも塞がっていて、ここでも住宅難だ。気の毒そうに頭を下げる大さん(岸井明)に、手を振るジョニーとみどり。
    寝る所の当てもなく、公園のベンチで座り込む二人。弱気になったジョニーは、自分の荷物は、蝙蝠傘一つ、みどりのことが重荷だと話す。私がジョニーさんに頼って来たのが悪かったんですと謝るみどり。ジョニーは立ち去る。雨が降って来た。雨の中ずぶ濡れで、「オー・マイ・パパ」を切々と歌うみどり。戻ってきたジョニーが傘を差し掛ける。
     雨は激しくなってきた。山田と言う表札の掛かった大きなお屋敷の軒先で雨宿りをする二人。お茶でも一杯貰おうかと中に声を掛けるが、何の返事もない。ドアノブに触ると、取れてしまったので、中に入る二人。住人は留守のようだ。居間には、暖炉とソファー、ピアノがあり、台所には、外国製の缶詰めの山と、日立の大型冷蔵庫、中には、みどりが見たこともないようなご馳走が詰まっている。神のお恵みだと調子のいいジョニー。
    食べようとした瞬間、外に車が止まり、男女が降りてくる。凄い豪邸だなあ。これなら練習場にぴったりだ。啓子(新倉美子)の叔父である山田老人の持ち物だが、別荘に行っているので、留守番を任されている。しかし、山田老人は、金持ちだがすこぶるケチで、財産は誰にも譲らず、あの世に全て持って行くが口癖だと説明する啓子。
   啓子と三田(中山昭二)新井(高島忠夫)松本(和田孝)が入って来たので、慌てて電気を消し隠れるジョニーとみどり。お化けがでそうだなあと言う新井に、啓子は、本当にそういう噂はあるのと言う。山田老人の一人娘の真知子が、ここで自殺をし、それ以来、真知子の部屋は18年間開かずの間になっていると言う。暖炉の薪を取りに来たのを見て、ジョニーはいっちょお化けを出すかと言う。新井と松本が台所に食べ物を取りに来たのを、白いシーツを被った二人が動くと、二人は大騒ぎをし、4人とも裸足で逃げ出した。
    笑いながら、二人は見たこともないご馳走を食べ満腹に。二階の部屋に上がると、そこのベッドはふわふわだ。大喜びで、跳ねるみどり。ジョニーは、美しい女性のポートレートを見つける。裏から遺書と書かれた手紙が落ちる。文面は、お父様、私はあの男に騙されていました。先立つ不幸をお許し下さいというものだ。山田老人の娘の開かずの間だった。ふわふわのベッドで眠りにつく二人。
  翌日、ルンペン野原に、ジョニーとみどりがやってきて、今晩拙宅でパーティを開くといってビラを撒く。正装をして来いとある。夜、様々な“正装”をしたルンペンが、山田老人の邸宅に集まり飲んで歌っている。巡査(三木のり平)が、山田さんの家は留守だった筈だがと顔を出す。ジョニーが、留守番をしているが、山田老人が近隣のルンペンに食事を施しているのだと言う。酒を勧められ、公務中ですからと断ると、お茶ですよと言われ、お茶でしたらと二杯御馳走になってしまう。
   啓子や、三田、新井、松本や、音楽仲間(渡辺晋とシックスジョーンズ)が屋敷に来ると、賑やかだ。昨日の幽霊は連中の仕業だったかと話していると、千鳥足の巡査とすれ違う。とっちめてやろうかと言う新井に、ルンペンたちが歌っている曲を聞いて、おいいいイメージが湧いて来たぞと三田。リズムとイントロを歌うと、皆も乗ってきた。いっちょやろうかと楽器を持って屋敷に入る。三田の弾くピアノに合わせて、ルンペンのテーマを演奏する。ご機嫌だ。
   ジョニーが気づくと、一人の老人(古川緑波)がいる。今日は何の宴会ですかなと尋ねられ、山田老人というケチで有名な人が開いてくれたのです。え?と同じ質問を繰り返す。その度に酔ったジョニーは、ケチな山田さんと言う人がと繰り返すのだ。酒を勧めるうちに、その老人も楽しそうだ。みどりも歌を披露する。そこに、山田修一(有木山太)がやってきて、これは何の騒ぎですか?という老人も、啓子も、良く分からないがあの男に聞いてくれとジョニーを指さす。とんちんかんなやりとりの後、老人が山田吾平本人で、修二はその甥で山田老人の計理士をしていることが判明する。今すぐに出ていかないと、家宅侵入罪と、無断で人の物を飲み食いしたので窃盗罪で訴えるぞと言い出し、ルンペンたちは青くなり、ゾロゾロと帰り始める。ちょうど、先程の巡査もやってきたが、自分も酒を飲んだので、窃盗罪という言葉に、今は公務中ですからと後ずさりして逃げ出す。
   追い詰められたジョニーは、みどりこそが、この家の令嬢真知子の忘れ形見だと言う。今日は真知子の誕生日、真知子の恋人から自分が預かって育てていたが、母親が住んでいた家を見せてやりにきたのだと言う。真知子は、ずっと家にいて亡くなったので、そんな出産なんて、ありえない胡散臭い話だと思うが、今日が真知子の誕生日だったということは事実であり、100%嘘だとは言いきれない。

  井上梅次。この頃は、ハリウッド的なジャズレビュー映画を真剣に作っていたんだなあ。カラー、モノクロの差はあるものの、セットはかなり頑張っている。ジャズミュージシャン、ダンサー、当時の一流総出演だったんだろうが、正直ダンスに関しては、沢山出せば出すほど、技量の差が出てしまって、どうも群舞が揃わない・・。しかし、音楽は最高だ。雪村いずみ、耳がよかったんだなあ、発音、音程パーフェクト!!どうもひばりさんばかりが昭和の歴史に残る天才少女歌手として、フューチャーされるが、江利チエミ含めた3人娘が、昭和ポップス史の中で秀逸なんだと再認識する。奥二重気味の雪村いずみかっこいい。更に、浅学にして知らなかったが、啓子役の新倉美子の歌はてっきり吹替だと思っていたら、辰巳柳太郎の娘にして、ジャズ歌手として大人気だったと知る。中音で少しハスキーな声は魅力的だ。勿論美しい!!

   体験入学の講師。男子2人、女子1人。

   シネマヴェーラ渋谷で、妄執、異形の人々Ⅳ

   77年松竹定永方久監督『錆びた炎(538)』
    渋谷ラブホテル紫苑。青い鳥籠に入れられたシャム猫。眠っている男の首に繋いだストッキングを巻き、力一杯引っ張り絞殺する女。。
   渋谷医大ゼミと言う予備校のトイレの窓から、双眼鏡で、辺りを覗いている男多木浩(中島久之)がいる。喫茶店のカップルを、毛皮を着たホステスらしい女、青い鳥籠にシャム猫を入れて下げて歩く女を見つけ、いきなり女を追いかけて走りだす多木。女の手から鳥籠を取って声を掛ける。
   毛皮を着たホステス(ひろみ麻耶)が、自分のマンションにタクシーで帰宅する。女を見ている多木の姿がある。多木は、狭い下宿に帰宅する。ラジオを点けると、渋谷道玄坂のラブホテル紫苑で、サンジョルジュ総合病院の医師佐島が殺されたことを報道している。佐島と一緒にホテルに入った鳥籠に猫を入れた女を重要参考人として、探していると言っている。
   数日後、深夜の種村総合病院、巡回の看護婦が、面会謝絶という札が掛かっている病室の子供の患者の様子を確認する。翌日、病院院長の種村誠一郎(丹波哲郎)と息子で副院長の種村光晴(大林丈史)が慌ただしく病院にやってくる。いつのことだと事務長とに尋ねると、丸山和也という子供の患者が深夜の0時から4時の間にいなくなったのですと言う。光晴は、丸山和也ですか・・血友病患者ですと顔を曇らせる。子供の両親丸山正己(斉藤真)雅子(二宮さよ子)は誘拐されたと言って、直ぐに警察に通報をと頭を下げるが、現在、医大設立の申請をしていてその認可に差し支えるので、外に漏らすなと誠一郎。
   翌日、田園調布あたりだろうか高台に聳え立つ種村邸に、サイレンを鳴らして、東京ガスの車がやってきた。中に入るなり、ガス会社の制服を脱ぎ棄てる刑事たち。この事件のキャップを務める警視庁上野毛署の遠丸次郎警部(平幹二朗)、ベテラン刑事池広(村田正雄)、永本(綿引洪→勝彦)若い浦山(重田尚彦)の四人が乗り込んできた。電話の回線を確認し、逆探知システムを設置する。この屋敷は高台にあるのでどこからも見張りやすいのだ。種村家は、誠一郎、光晴と登志子(梶芽衣子)夫婦と、お手伝いの伊山比佐子(原田美枝子)の4人暮らしだ。
   副院長の光晴が、患者の病状を説明する。血友病の丸山和也は定期的な輸血が必要で、入院中の輸血から72時間が経つと生命の危機があると言う。しかし、種村総合病院は、丸一日経って、誘拐犯から身代金の連絡があってから警察に通報したので、あと48時間あまりしか、時間は残っていない。誠一郎は、馬鹿げている、なぜ患者の身代金を払わなければならないのだ、病院は、緊急の患者のためにいつも開けておけなければならない、その責任は取れないと苦々しげに言い放つ。

   小林久三が、原作、製作、脚本。浅学にして知らなかったが、松竹の助監督だったとは・・・。既にどん底の日本映画の時代、全て空回りし、スタッフ・キャスト一丸となって堕ちていく時代の代表的な映画。原田美枝子、30年前か20年後に、世の中に現れていれば、田中絹代、原節子、高峰秀子と並んで呼ばれる大女優だったなと勝手に思い入れる。この映画の唯一の救いが原田美枝子。血友病の扱いが、誤謬にまみれているので問題になったと、この企画のパンフに書いてあったが、それ以前に、やってもうた!!的な映画。
   しかし、身代金の受け渡しの指示が、都内の地下鉄を乗り継ぎ続けさせるという設定なので、当時の営団地下鉄各線の雰囲気が分る貴重な映像資料(笑)。更に、32年前、自分が通っていた頃の高田馬場駅前、何だか懐かしい。

    97年新東宝映画/国映渡邊元嗣監督
    『好色くノ一忍法帖 ヴァージン・スナイパー美少女妖魔伝(539)』
   東京副都心に登った月が、青から赤に変わる。ローラースケートを履いたくノ一が疾走する。風が、セーラー服芸者の金魚(樋口みつき)のスカートを巻き上げる。金魚「OH!もーれつ」(苦笑)
   政財界の黒幕として、今も隠然たる権力を握る十九代徳川虎長(久保新二)の屋敷に、風魔の女忍者花風(林由美香)が忍び込んだ。虎長の寝所で、人相書きを確認し、眠っている虎長を刺激し始める。虎長の股間は既に鋼鉄のように硬い。花風の任務は、虎長の子種を奪ってくることだ。しかし、花風は愕然とする。虎長の一物は、銀行の大金庫のように正に鋼鉄で覆われているのだ。数字を探り、鋼鉄の頭頂部を外すと、警報が屋敷内に響き渡り、パトライトが点滅する。虎長の正室綾乃(しのざきさとみ)が薙刀を持ちやってくる。何とか花風は、寝所から逃げ出し、風魔忍法花粉散らしで、追っ手たちにくしゃみをさせ、大凧に載って脱出する。しかし、豊臣家末裔のねね子は、月風(和泉由紀子)に続いて、虎長の子種の奪取に失敗したことを責め、怒り狂う。
    綾乃は、徳川家の危機に、秘書の蛇口一角(池島ゆたか)に、十三代服部半蔵(螢雪次朗)を呼べと言う。
  
    ピンク映画で、時代ものとは珍しいと思ったら、違うんだな。しかし、なかなか楽しい。

   ポレポレ東中野で、松江哲朗監督『あんにょん由美香(540)』
   「あんにょん由美香」、林由美香、松江哲朗・・・。全てにやられる。素晴らしい。

2009年9月18日金曜日

みんな貧乏が~♪、みんなビンボが悪いんや・・。

今日の学校は、一年生のスキルアップ講座。午後90分×2。

    シネマヴェーラ渋谷で、妄執、異形の人々Ⅳ

    57年東宝青柳信雄監督『生きている小平次(534)』
   奥州の郡山の芝居小屋、外題は四谷怪談。囃し方の太久郎(芥川比呂志)が太鼓を叩いている。舞台の上では、小平次(中村扇雀)がお岩を演じている。袖で見ていた一座の女おたね(一の宮あつ子)が、首を竦める。雨漏りのようだ。
   楽屋で、小平次が太久郎に話があると言う。どうしたい?と太久郎が尋ねると、ここでは何だから改めて話すと言う。ドサ廻りも長くなった。江戸を離れて七十余日、小平次はもう江戸に帰りたいと言う。小屋の男が、太久郎さんに女のお客さんがと声を掛けに来る。出ていく太久郎に、あいつは囃子方のくせに、女にもてて、役者の俺たちはかたなしだと愚痴を言う。おたねが、あんまり酷いので、江戸に帰ったら、おかみさんのおちかに告げ口してやろうと思うと言う。太久郎は、地元の女(中田康子)と相々傘で、しっぽり。
  近くの安積沼に小舟を出し、釣りをする太久郎と小平次。で、話ってなんだいとせかす太久郎に、意を決したように、お前のかみさんのおちかのことだが、きっぱり諦めて俺にくれと言う。もともと、小平次とおちかが想い合って4年、そろそろと思っていたところに、太久郎が、強引に口説いて嫁にしてしまったのだ。しかし、女房を役者に取られたとなると俺の面子は潰れる。お前にも言い分はあるだろうが、俺にとっても、おちかは恋女房だ。そんな相談には乗れねえなと言うと、思いつめた小平次と小舟の上で揉み合いに。舟は大きく揺れ、小平次は沼に落ちる。必死に船にしがみ付く小平次に、思わず、板で、舟をつかむ手を、頭を、叩く太久郎。大変なことをしたと、舟を漕ぎ逃げる太久郎。しかし、恨めし気に睨む小平次の姿が沼から浮かび上がる。必死に逃れようと櫓を漕ぐが、なかなか前に進まない。
   空では、稲光と雨が降り始める。芝居小屋で、おたねが、「二人は遅いねえ。それにしても、おちかさんは可哀そうだ。二人の男の間で、気を使って胸を痛めているんだから同情しちまうよ」と言うと、役者たちは、「あの女は、そんなタマじゃない。小平次が着ている羽織は、おちかが縫ったんだ。普通だったら、夫の太久郎に縫うもんだろう。」と鼻で笑う。
   江戸では、夫の太久郎の帰りを待つおちか(八千草薫) 。お祭りで喧嘩をする子供たちに声を掛けている。ふと、自分の名を呼ぶ者がある。見ると小平次だ。小平次の頭に傷があり、流血している。小平次さん帰って来たのかい?うちの人も一緒かいと尋ねるおちか。 

   56年東宝千葉泰樹監督『鬼火(535)』
   土手をアイスキャンデー売り(佐田豊)の自転車が走る。腰を下ろして汗を拭っていた男が、呼び止める。彼岸を過ぎても、こんなに暑いと参ったと言う男に、私たちの商売は涼しくなったら、弱っちまいますがねと答える。
   ガス会社の集金人、力丸忠七(加東大介)は、担当が山の手から下町に変わった。こちらは貧しい家庭も多く、なかなか回収できない家も多い。山岸家と表札の出ている家の勝手口から入り声を掛けるが、飼い猫が顔を出すだけだ。ふと台所を見ると、がま口が置いたままだ。手を伸ばすと、飼い猫は忠七を凝視する。元に戻し、鍋を被せる忠七。勝手口から出ると、農薬の散布器を背負った人相の悪い男(広瀬正一)が入って行こうとするので、この家は留守で、鍵が掛かっていると告げる。そこに、その家の主婦(中北千枝子)が帰って来る。魚屋で、がま口を忘れたことに気付いて戻って来たと言う。ガス会社の人間だと名乗り、近頃は物騒で、気になったので、鍋を被せておいたと言うと、主婦は、460円のガス代を払った上、ラッキーストライクを一箱くれた。下駄の鼻緒職人をしている叔父の家に訪ねる。今度、こっちの担当に変わったんだと言うと、何かしくじって、飛ばされたのかと叔父は言う。いや、なかなか集金に手こずる家も多いので、優秀な人間が担当させられるんだと忠七。
店の前を通った豆腐屋を呼んだ近所の女がシミーズ姿なのを見て、生唾を飲む忠七。いい稼ぎなんだろ、早くかみさんを貰えと言われて、安月給で下宿代を払ったら何も残らないので、結婚できないうちに、頭が薄くなってきちまったと忠七。ラッキーストライクを5本ばかり、お裾分けして、仕事に戻る。
次の家に向かう途中、集金人仲間の吉川(堺左千夫)と出会う。昼飯を食おうと言う吉川に、そこの家を片付けてしまうと答える忠七。
   水原欣伍相談所と看板が出ている。勝手口から入り声を掛けるが返事はない。しかしガス台に掛かったヤカンがふきこぼれそうだったので、上に上がってガスを止める。ふと女中部屋に、女の艶めかしい脚が見え、いざって覗こうとすると、水原(中村伸郎)が浴衣を着ながら出て来て、覗くとはけしからん、名前を名乗れと叱責する。ヤカンがふきこぼれそうだったと弁明しても、ガス会社に電話してやると言うので、頭を下げ続ける忠七。電話が鳴り、女中(中田康子)が出て「奥様は、明日まで里に行っていらして留守です」と言うのを聞いて、思わずニヤリと笑ってしまう忠七。ガス代は、明日取りに来いと言う主人。
   飯屋で、 吉川に愚痴っている忠七。そうか女中を頂いてたって訳か…。俺も2、3軒頂いたことがあると言う吉川。「女中か?」「女中もあれば、未亡人も…」と言われて生唾を飲む忠七。
   次の家は、廃屋のようだ。あそこは、主人がずっと伏せっていて、全くとれねえぜと?。もともとは結構なウチらしかったらしく、かみさんは、なかなか磨けば光るタマだが…。ガタガタ鳴る勝手口の戸を開けると、薬湯を煎じている。声を掛け続けると女(津島恵子)が現れる。赤貧洗うがごとくの生活をしているが、なかなかの美人だ。夫は脊髄カリエスで7年も寝込んでいるらしい。ガス代は払えないが、薬を煎じないといけないのでガスは止めないでくれと懇願する。しかし、これだけ溜めていると無理だと答えてから、ふと女に欲情した忠七は、もし自分の相手をしてくれたら考えてやると言う。女は、頷くが、ここでは困りますと小さな声で言う。分かった吾妻町の水菓子屋の近くの、産婆の二階が俺の下宿だと言って、自分の名刺と電車代だと金を渡す忠七。女は、思い詰めた顔で、本当にガスは止めないで下さるんですねと言う。奥から夫らしい弱々しい声で、広子…と呼ぶ。
    忠七はご機嫌で銭湯にいる。丹念に髭を当たっている。その頃、女の家では、鶏肉だろうか、煮込んでいる。女は、寝たきりの夫(宮口精二)に食べさせてやっている。美味しいなあ、今日のお前は優しいなと言う夫。「そうだ、お前は出掛けると言っていたじゃないか」「止めました。帯がありません。細ひも一つでは外出出来ない女の気持ちは、あなたにはお分かりにならないと思いますが…。」夫は、自分の兵児帯を外し、夜なら分からないのじゃないかと差し出す。
   忠七は、まだ髭を当たっている。化粧をし、少し華やいだ表情の女が、忠七の下宿にやってくる。ちゃんと着物も持っているじゃねえかと言うと、一つしかない帯の柄が時代遅れで恥ずかしいと女。ここいらにしてはまあまあの味だと、寿司を勧める忠七。俺はこれをやるからと焼酎を手酌しようとすると、酌をしてくれる女。忠七に勧められ、寿司を食べる女。ほう、やっぱりこういう仕草に、ちゃんとした育ちだってことが知れるね。昔は大した家だったて言うじゃねえか、旦那は何をやっていたんだい?と言うと、昔のことは止めてくださいと女。そうだな、今日は泊っていけるんだろと言う忠七に、恥ずかしそうに頷く女・・・。顔を切りそうになって、我に帰る忠七。すべて妄想だった。鮨屋の親父(如月寛多)に、随分やに下がっているじゃねえかと冷やかされ、そうそう、上鮨二人前出前してくれ、上鮨だぜと念を押す忠七。
  久しぶりの長風呂で、絶好調の忠七は、部屋で落ち着かない。鮨屋の出前が届き、一階に住む大家で産婆の松田しげ(清川玉枝)が、家賃を溜めているいるのにどうしたんだと怒ってくる。女の客が来る!!今日だけは訳ありなんだと、ひたすら頭を下げるしかない忠七。随分待ったが、女は現れない。上鮨は空振りだったかと思った時に、一階から声が掛かる。身を縮めた女だ。恥ずかしいので電気を消してくださいという女に、唇を舐める忠七。電気を消して、女を自分の部屋に上げる。窓を一度は閉めたが、暑いので窓を開け、簾を下ろす。
本当にガスは止めないで頂けるんですねと念を押す女に、内金を自分で払って、止められないようにしてやったんだ、信じられないなら伝票もあるぞと、スタンドを点けてしまう。女は昼間と同じ着物だ。気を取り直した忠七が、今日は泊れるんだろと聞くと、帰らないといけませんと言う。忠七は、時間がないなと、慌てて押入れから布団を出し始める。その姿を見て、女は急に我に返り、やっぱり出来ませんと言って、脱兎のように走り、帰って行った。玄関で擦れ違った大家のしげが、笑いながら上がってくる。堅気さんだろ、堅気さんは焦っちゃいけない、その気で来ても、考えちゃうもんだ、次には出来るんだから・・あんたはまだまだ駄目だねえ、自棄酒かい?上鮨いただこうかね?勝手にしやがれ!!さすがに、中々おいしいねというしげの尻に目が行き、手を伸ばす忠七。おしげは、手をぴしりと叩き、「酔わす奴の下心~♪」と唸って笑う。
  女が帰宅する。夫は、目を瞑っているが眠ってはいない。帯を返す女。静かに目を閉じる夫が、考えていたことに気付いた女は、私はガスを止められないように、男の元を訪ねてしまいました。しかし、我に返って、帰ってきました。何もなかったんです。昼間、ガス会社の集金人が来た時に、ガスを止められない一心で、承諾してしまいました。魔が差したんです。でも大丈夫だったんですと女。そんなことなら、もっと早く身を売っていればよかったのに・・・。しかし夫は、何も言わずに目を閉じる。あなたは、信じていらっしゃらないんですねと、夫に泣き崩れる女。夫が、女の肩を抱き「俺たちって、不幸だな・・。」と声を掛ける。
  翌日、忠七は水原の家を訪ねる。女中は旦那さまが今日はいないので払えないと小声で言う。すると奥から、妻(三條利喜江)が現れ、昨日主人が言ったんですか?昨日主人は家にいたんですか?と目を吊り上げる。
  昨日、恥をかかせたあの廃屋に入って行く忠七。吉川が、その家は回収できないだろと言うと、元手が随分掛かっているんだと入る忠七。勝手口の戸は開かない。中を覗くとガス台に火が灯っている。止めないと思ってひどいことしやがると呟いて、玄関に廻る。無理矢理戸を開けて入ると、布団に寝る病人らしき姿がある。電球を点けようとするが、電気を止められいるのか、灯りはつかない。ふと台所の方を覗いた忠七が、腰を抜かす。ガス台の火に照らされて、女が首を括っている。腰を抜かしたまま、後ずさりをすると、寝ている病人にぶつかる。暗さに慣れた忠七の目に、死んでいる夫の姿が映った。
  腰を抜かしたまま、済まなかった!済まなかった!!と言いながら、転げながら廃屋から逃げようと必死な忠七。

  鬼火といえば、ルイ・マルな感じだが、46分の掌編。小心者の加東大介、類型的な描写だが、やっぱりうまい。しかし、本当に救いのない映画だ。岡林の「チューリップのアップリケ」のように、「みんな貧乏が、みんなビンボが悪いんや」。今村昌平映画のように、底辺の人間の生きるど根性が一切ない、宮口精二と津島恵子の夫婦は、よくここまで生き延びたなという感想だ。夫の最後の台詞「俺たちって、不幸だな・・。」夫婦涙、涙。もう少し早く気がつけよと突っ込みたくなってしまう。貧乏で死人が出た時代の最後だったかもしれない。既に、新たにその時代は始まってはいるが・・・。
ガス同様、電気も水道も払っていないだろうに、通じている。電話→電気→ガス→水道の順番だったろうか。セイフティ・ネットという言葉もなく、民主党もなかった時代の話である(笑)

  池袋新文芸坐で、魅惑のシネマクラシックスVol.10 輝ける名画の世界へ
  63年フェデリコ・フェリーニ監督『81/2(536)』
  30年以上前に、フェリーニのオールナイト上映を何度見ても爆睡していたのは、ここ池袋文芸坐だっただろうか。

2009年9月17日木曜日

のりピー、ガッキーな一日。

    友人Nと、某大手出版社社長にプレゼン。あっけなくNG(苦笑)。企画自体は気に入ってくれたので、まあよしとする。めざまし占いでは、仕事の企画が通るとかで、自信満々だったのになあ(笑)。
   元会社系デザイン会社に行き、後期の講義の協力と、本当につまらないことを依頼。快諾してもらって、申し訳ない。

   新宿ピカデリーで、山崎貴監督『BALLAD 名もなき恋のうた(533)』
   川上真一(武井証)は、突然戦国時代の天明2年にタイムスリップした。小国春日の国の侍大将井尻又兵衛(草彅剛)は、鬼の又兵衛と呼ばれる強い武将だ。城主康綱(中村敦夫)とその娘廉姫(新垣結衣)。
   大倉井高虎(大沢たかお)

    勿論ストーリーはいいし、三丁目の夕日チーム、CG上手く使って雰囲気だしているが、大作でも何でもない昨日の『くノ一忍法』と比べてしまっても、負けている気がする。時代劇作るのは難しい。まだ、江戸時代の時代設定ならともかく、戦国時代ともなると、何だかスタッフが共有出来るイメージが、NHK大河ドラマか、角川春樹事務所映画の「戦国自衛隊」止まりだなんていうと、嫌みだろうか。せめて、黒澤映画をスタッフ・キャスト全員で、DVDでなくちゃんとしたスクリーンで見て、自分たちが登ろうとしている山の恐ろしさを体験し直した所で始めるべきでなかろうか。Tシャツとサンダルで富士山ご来光イェイ!!な、なんちゃって時代劇。
   でも、そんなこと言っても、ガッキーは可愛い。時代劇コスプレのアイドル映画としては全くオッケーだ(笑)。少なくとも、詰め襟コスプレだった「フレフレ少女」には完勝。

  元同僚と大久保飯。独身美人OL含め、韓流食事会

2009年9月16日水曜日

浅草の歌姫と中洲の安藤美姫。

    午前中は、旗の台で打合せ。昼から学校、前期最終講義。携帯の電池が死んだので、渋谷ドコモ。
   その後、元上司がブッキング関わっていると言っていた新丸ビルのバーへ。ジャズをやっていると言うので、大人ジャズバーかと構えていたら、至って気楽。ギャルっぽい若い娘が、カバーを歌う。歌上手いが、耳がいいのが災いして、曲によってカバーした歌い手のコピーに終わっている。福岡出身で、中洲の安藤美姫と言うビジュアルなので、カッコつけず、ダサくやった方が魅力的な気がする。カッコいいってことは、なんてカッコ悪いんだろうと言うと、元上司は怒るだろうか(笑)。

2009年9月15日火曜日

星由里子、野川由美子、藤純子、三田佳子。ヒロイン4連発。

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、CINEMA☆忍法帖

   63年東宝岡本喜八監督『戦国野郎(529)』
   木曽谷で、越智吉丹(加山雄三)に襲い掛かる武田方の忍者の雀の三郎左(中丸忠雄)。三郎佐は谷底に落ちて行く。吉丹は、抜け忍だった。次々追って来る忍者たちを、倒し、逃げていた。銅子播磨(中谷一郎)も追っての一人だったが、腕が立つ吉丹を見て考えを変えたと言う。18人も、お前は斬ったなと播磨。数えていないが、それが正しければ、19人目だと言って、忍者を倒す吉。
    二人が歩いていると、一人の山猿のような男(佐藤允)が、現れる。自分は一国一城の主になると大言壮語する男。山道を馬借隊の隊列がやってくる。馬借隊とは、塩や米を運ぶ馬方たちだが、山賊たちが跋扈する戦国時代、武装した命知らずの集団だ。男は、吉丹と播磨に、追っ手から逃れたいならば、あの連中に潜り込めと知恵を授ける。隊列は、坂本の馬借、有吉党の頭、有吉宗介の娘、佐霧(星由里子)が率いていた。二人は臭い芝居を打って、子分にして貰う。
   有吉党の屋敷に戻ってくると、剣の稽古をしている侍崩れの男たちは、胡散臭い者ばかりだが、頭の有吉宗介(田崎潤)は、馬が使えるか、腕が立てば誰でもよいと言う。やってきたばかりの六(長谷川弘)と地獄(天本英世)の弓の腕は勝るとも劣らない。佐霧は、吉をキチキチバッタからバッタ、播磨を針鼠と呼ぶ。武士出身の夏(江原達怡)は、佐霧に懸想して付け文をするが、相手にされない。山で出会った男は、桶狭間で名を上げた木下藤吉郎だった。堺で、武田方が買う約束をしていた種子島三百丁を、金に物言わせて横取りし、堺港から摂津城への運搬を、有吉党に依頼しに来たのだ。いつもの塩や米と違い大量の種子島の運搬は命懸けだ。大事な子分たちの命を考え、腕組みをして考え込む宗介。その頃、吉たちを追ってか、有吉党と藤吉郎を探ってか、武田方の間者が忍び込んでいる。種子島の件は聞かれてしまう。その夜、六は、人足たちと賽子博打をやって、身ぐるみ巻き上げる。  
   宗介は、手下を全員集めて、この話に乗るか尋ねる。1日につき金一枚の運び賃で7日の旅、更に成功したら有吉党にまとまった軍資金を渡そうと言い、銀をバラまく。結局受けることに。
   藤吉郎は、種子島の担ぎ手を一人貸せと頼み、吉が行くことになった。二人で堺に向かう。吉はやけに健脚で、藤吉郎は疲労困憊だ。途中、山伏姿の武田方の間者が、2騎で追ってくる。気配に気付いた吉は、藤吉郎を突き飛ばし、崖を駆け上がる。そして飛びかかり、二人を倒した。馬を奪い、藤吉郎と堺港に向かった。堺で、藤吉郎は村上水軍の百蔵(滝恵一)に、堺港から熱田港まで、種子島三百丁の海路での運搬を依頼する。元々、海賊である村上水軍の龍神丸、女首領の滝姫(水野久美)は、種子島三百丁を自分たちのものにする魂胆で、運搬を了解する。その話に、種子島を運ぶのは有吉党じゃないかと言う表情の吉に、さあてどっちで運ぶかと笑う藤吉郎。
    堺港で、網を直す漁師に、龍神丸を尋ねる山伏姿の二人組は、武田方の間者たちだ。漁師姿の男は、雀の三郎佐だ。お頭の無事を喜ぶ二人に、ようやく吉と藤吉郎を追い詰めたと笑う三郎佐。しかし、 馬上から、生きていたのかと声を掛け、走り去る吉。再び歯軋りする三郎佐。
有吉党の物見櫓のてっぺんに、佐霧の姿がある。夏が、そんなにバッタの野郎が気になるんですかと声を掛ける。図星なのでうろたえ怒る佐霧。播磨が、剣で決着をつけろと言う。佐霧が紙一重の差で腕が立つようだ。そこに吉が現れる。


    男勝りの星由里子!!ツンデレ具合が素晴らしい。

    64年東映京都中島貞夫監督『くノ一忍法(530)』
    燃え盛る大阪城、落城前夜、大阪方の智将、真田幸村(北村英三)が、配下のくノ一を5人集め、明日には城は落ちる。城と共に秀頼公も最期を遂げられる。 家康(曽我廼家明蝶)も孫娘の千姫の命を救えと命じている。残念ながら千姫さまには子が出来なんだ。そなたたちは、直ぐに大奥に行き、秀頼さまの子種を信濃忍法壺吸いの術で戴き、必ずや秀頼様の子を産み、徳川家を呪うのだと言う。
    翌日、猿飛佐助(市川小金吾)を呼ぶ幸村、しかし、直ぐに流れ弾に当たり亡くなる二人。二人の魂が抜け出る。お互い呆気ない最期でございましたなという佐助の魂、極楽浄土に行く前に、一つだけこの娑婆に未練があると言う幸村の魂。
   結局、坂崎出羽守(露木茂)が、千姫を助け出した。駿府城に連れて来られた千姫(野川由美子)は、家康(曽我廼家明蝶)の気持ちに反して、自分は豊臣の人間だと言う。服部半蔵が言うには、千姫の腰元1人の内5人は、真田の息の懸った女忍者で、秀頼の子を懐妊しているとの情報を得た。「半蔵、その方が申したこと本当でじゃろうのう。千の腰元の中に、敵真田の息の掛かった女忍者が紛れ込んでいるとを言うのは・・・。」
   そこで、駿府城にやってきた千姫に家康が問いただすと、「千は戻りとうございませんでした。私は、豊臣の女にございます。」「秀頼の子を孕んだ女が混ざっていると聞いたが。」「ご存知でございましたか。お千が産ませて育てます。命の限り、徳川の家に祟るように…。たとえ、お祖父様であろうとも、千はお手向かいいたしまする。」と開き直る。千姫の傍らには、12人の腰元がついている。
    千姫は千姫御殿に籠もった。腰元として傍に仕えるくノ一は、お眉(芳村真理)お由比(中原早苗)お瑶(三島ゆり子)お喬(金子勝美)お奈美(葵三津子)の5人。全員が秀頼の子を授かっていた。   
   家康は、服部半蔵(品川隆二)に命じ、くノ一に対抗できる者を集めさせた。半蔵の手下の黒鍬者たちでは、間者は出来ても、忍術ではかなわない。伊賀の上士五名が、集められた。。鼓隼人(大木実) 七斗捨兵衛(待田京介)般若寺風伯(吉田義夫)雨巻一天斎(山城新伍)薄墨友康(小沢昭一)。しかし、家康が要件を伝えると、斯様なことなはらば、我らのうち、一人で充分でござると皆薄笑いを浮かべる伊賀衆。

    家康が怒ると、薄墨は、ここにいる最も貞操堅固な娘を一人お貸し下されと言い、家康が、お志津(笹みゆき)を指名すると、突然、薄墨は、お志津に、タンポポの羽根よりも細い針を吹きかけた。するとお志津は、ふらふらと薄墨の下に寄って行く。すると薄墨は、家康が止める間もなく、お志津の口を吸い抱き締めた。するとあら不思議、薄墨がお志津の姿になっているではないか。足元には脱け殻のようになったお志津の肉体が転がっている。驚愕する家康に、薄墨は伊賀忍法くノ一化粧と言い、他の伊賀忍術たちは笑った。
   その頃、千姫を救い出した者には、嫁に遣わすとの家康の約束を反故にされかかっている坂崎出羽守は、直接千姫に訴えようと、家来の中で一二を争う遣い手3名を千姫御殿に使者として使わせた。しかし、千姫は、自分は秀頼の妻であり、余計なことをした出羽守の妻になるつもりはないと言う。3名の使者は、おめおめ帰れないと居座ろうとする。すると、お眉が観音菩薩像を取り出す。すると、不思議にも、使者たちは突然劣情を催し、夢幻の中に舞う裸女たち(OSMのダンサー、星ひとみ、久美エリカ、右京ナオミ、阿井美紗子、ミッチ佐藤)に導かれるように、庭の井戸に自ら飛び込んで死んだ。お眉の信濃忍法幻菩薩と言う声を聞いた千姫は、井戸の上に祈仏堂を建立せよと命じた。
    祈仏堂の観音菩薩像を、お奈美が拝んでいると、これは秀頼の菩提だなと声がする。お志津の姿になった薄墨である。お奈美に襲い掛かり、女の法悦を味わせてやると薄墨。花開きの術で、お奈美の姿に変わるが、お奈美は息絶える瞬間、信濃忍法月の輪と呟く。お奈美の姿に変わり、屋敷に戻ろうとすると、お眉に、間者だなと見破られる。信じられない薄墨に、お奈美が命に代えて、そなたに掛けた月の輪の術、池に顔を映してみよとお眉。薄墨が池に顔を映すと、額に三日月模様が浮かんでいる。驚いた表情のまま、息絶える薄墨。
   出羽守は一向に千姫への使者が戻らぬことに苛立っていた。自ら出向くと言うのを必死に押し止め、家老の十兵衛が小姓を連れ、千姫御殿に向かう。十兵衛も、お眉の幻菩薩の術に掛かり、連れ出され、更に忍法露枯らしを掛けられる。小姓は忍法幻菩薩に掛からない。使者の一人?の許嫁の?が男装していたのだ。許嫁と再会するがよいと祈仏堂の井戸に落とされる?。十兵衛は信濃忍法露枯らしの術にかかり、ミイラのような姿で屋敷に戻る。出羽守に、千姫を求めてはいけない。お家が絶えてしまいますと言って、出羽守の腕の中で絶命した。
   井戸の底の?の上に花びらが舞い落ちる。伊賀忍法花開きの術だ。これを浴びた女は、その男の体が欲しくて堪らなくなり、死ぬまで追い求めると言う恐ろしい術だ。一天斎は、?を我がものにする。
   次に祈仏堂に現れたお喬に同じ術を掛ける。お喬は術に掛かりながら、自らも、一天斎の逸物を貝のように閉じて離れなくなる信濃忍法天女貝と言う術を掛ける。一天斎はお喬から離れることが出来なくなり、命を落とす。
   元和元年、家康は、駿府を出て、江戸に入った。徳川方は、伊賀忍者の二人の行方が分からなくなった。このままでは、家康の御威光にも差し支える。 阿福(木暮実千代)は、 策略を提案する。今建立中の江戸城の人柱として、乙女の(処女の)娘を選抜し、千姫の腰元も差し出させたらどうかと言う。自分配下の腰元たちは、生娘ばかりだという阿福に、般若寺風伯は「果たしてそうかな」と笑う。 それに対し阿福は、ここにいる娘は全て生娘だと言うが、現実には、婚外で男と契った娘はいたのだ。風伯が術を掛けると、腰元中で、阿福もよもやと思う桔梗(松代章子)がふらふらと風伯の元に歩み寄る。桔梗は乙女ではなかった。伊賀忍法忍法日影月影の術といい女の肉体に入り込み、この腰元の腹の中には子供がいると言う風伯。ここにいる腰元は20人、しかし心の臓の音は21個聞こえたのだと言う。風伯は、小さな鼓動さえ聞き分けられる。そうすれば、やってきた千姫の腰元が秀頼の子を宿しているか分かると言う。
   家康からの書状を読み、千姫は顔色を変えた。お眉は自分が家康の下に行くという。お由比もお瑶も、それでは私どもがと言うが、誰も行かなければこちらで三人とも殺されるだろう。たぶん何かの魂胆もあるに違いないが、おめおめと殺されはしないと言う。
   美しい腰元が集められた。その中に勿論お眉もいる。阿福がやってくる。風伯は、伊賀忍法忍法日影月影の術を使い、阿福の中に入り込む。やってきた阿福に、お眉は観音菩薩像を見せ、幻菩薩の術を使う。阿福には、風伯が入りこんでいるため男にかかる術が掛けられたのだ。そして、お眉は別室に連れ込み、自分の腹の子を、阿福の胎内に移す。信濃忍法やどかりの術だ。
   次々と、風伯が潜む廊下を腰元があるいていくが、皆心音は一つしかない。最後に部屋から出てきたお眉を凝視して、風伯は、心の臓の音は一つだと言う。しかし、急に腹を押さえ苦しみだす。何か犯されたように苦しいのだと脂汗を流す。阿福の心の臓の音が二つあることが分かった。さすが、真田のくノ一、やどかりの術で阿福に秀頼の子を移すとは・・・。阿福は、風伯たちを罵倒する。服部屋敷で、中絶をすることが決まった。
   戻って来たお眉から話を聞き、お瑶は今度は私が参りますと言う。お瑶は、自分の腹の子をお眉に移し、服部半蔵の屋敷におもむく。半蔵の手下で厳重に幾重も警備がされているが、黒鍬者も所詮は男、幻菩薩の術の前では、裸女の舞に導かれ、持場を離れてしまう。
   中では、風伯が阿福に迫っていた。この年で、女に惚れるとは思わなかった。必ず、うまく子を始末するので、一夜お前を抱かせて貰えまいかというのだ。用意が出来たら、畳を二度叩けと言う風伯。怒りに震える阿福だが、秀頼の子を宿したという事実が知れたら、どんなことになるかも知れない。寝所に入る。
    畳が二度叩かれ、好色そうに笑いながら布団に入る風伯。やはり、くノ一が入りこんでおったか、殺す前にといって、お瑶を押さえ襲いかかる風伯。しかし、信濃忍法露枯らしの術に遭い、年老いた顔が更にミイラのようになり亡くなった。そして、お瑶は、阿福の腹から無事に自分の腹に取り戻した。
 家康は天海僧正と話し合い、半蔵を呼び、女忍者たちを千姫もろとも斬り捨てよと最後の決断をする   
    雪の中逃げる4人を七斗捨兵衛が待ち受けていた。お瑶が、ここは私が引き受けるので、逃げてくださいと言った。悲痛な声で、お瑶の名を呼ぶ千姫を庇い、連れて去るお眉とお由比。捨兵衛は、伊賀忍法花開きの術を掛ける。捨兵衛に抱かれ、信濃忍法露枯らしを掛け返すお瑶
     真田の隠し砦の洞窟に隠れた千姫とお眉とお由比。臨月が近づいた二人を気遣い、自ら食事の支度をする千姫。ふと気配を感じたお眉が、外に出て行く。千姫も出ようとするが、お由比が、お腹のややこが動きましたと苦しい息の中、呼び止める。お由比の懐に手を入れた千姫の顔が輝いた。
   外では、捨兵衛が様子を窺っていた。お眉は、幻菩薩の術を掛けたが、捨兵衛は手裏剣で、観音菩薩像を破壊し、辛くも逃れた。形勢は逆転し、お眉は捨兵衛に討たれるが、死に際に?の術を掛け、壮絶な同士打ちをした。
    半蔵が、火縄銃を持った黒鍬者の集団を連れ現れた。激しい陣痛に苦しみながら、お由比は洞窟の外に出て来る。皆が撃とうとすると、千姫が身を持って立ちふさがる。千姫諸共討ち果たせと言われていても、家康の愛孫を撃つことは躊躇われた。突然、お由比は、信濃忍法夢幻泡影を放つ。下半身からピンク色の妖しげな煙りが噴出する。半蔵は、その煙りを吸うなと止めようとしたが、黒鍬者たちは次々と絶命した。遂に、半蔵が火縄銃を撃ち、お由比を射殺する。それを見ていた鼓隼人が駆け寄り、半蔵を斬り捨てた。鼓隼人は徳川を裏切り、千姫に付いたのだ。お由比に駆け寄る千姫。お由比は死んだが、子供を出産する。遂に、秀頼の血は受け継がれたのだ。
   精一杯の産声を上げる赤ん坊を抱き上げる千姫。千姫を仰ぐ鼓隼人。
   家康が原因不明の高熱で、苦しんでいる。そこに「千姫さまが!!」という家臣たちの声がする。秀頼の子を抱いた千姫が艶然と微笑みながら、祖父家康の臨終に立ち会いにやってきたのだ。た家康は「女が、女が、襲ってくる、、」と苦しい息の下で叫ぶ。勝ち誇った笑顔で、江戸城の廊下を進む千姫。


    遊撃の美学、中島貞夫の初監督作品。成人指定だが、カラーで、オールセット、かなり豪華だ。OSミュージックダンサーの中の2人とお喬(金子勝美)お奈美(葵三津子)志津(笹みゆき)といったなかなか美人に目移りしながらも、当時の松竹、日活などの現代劇でのクールでギラギラしていかした役とは正反対のくノ一役、芳村真理かっこいいなあ。しかし、何と言っても一番は、千姫役の野川由美子だ。美しさ、演技、素晴らしい。代表作の一つといっていいのではないのだろうか。鈴木清順「肉体の門」が映画デビューの筈だが、正直、好きか嫌いかというと好きなタイプの顔ではないと思い込んでいた。同じ年にこんな演技していたとは・・・。

   池袋新文芸坐で、鮮烈なる東映'50s~'70s

   66年東映京都マキノ雅弘監督『日本大侠客(531)』
   明治中期、戸畑の大瀧組の闘鶏で、勝ち続ける吉田磯吉(鶴田浩二)。もう若松に帰るので換金してくれと言うが、大瀧組の連中は勝ち逃げはないとイチャモンを付ける。わしゃもう帰らんといけんと言う磯吉と喧嘩になる。金を掴んで逃げ出す磯吉。若松新開地の大吉楼の居候の吉田磯吉だと名乗り小舟に飛び乗る。若松に着くと、岡部亭蔵(大木実)に取ってきた金を渡し、折尾行きの乗合馬車に乗せる。亭蔵は、船大工になるのが嫌で、長崎に行って船乗りになりたいと言うのだ。その旅費を稼ぎに行っていたのだ。
   大吉楼に戻り、姉のスエ(木暮実千代)に怒られる磯吉。私たちが留守の間に、店の売り上げを持ち出したばかりか、これだけの借金を作るとはと嘆かれると、たった一人の肉親のスエに嘆かれると磯吉も辛いのだ。あんたは、舟船頭になりたいと言うから船を買えば、友人に渡してしまう。義兄加山正一(徳大寺伸)は、磯やん、金ば、持ち出していることを咎めているんじゃない、使い道を言ってるんだ。また誰かに渡したんだろう。あんたのそのお人良しは直らんだろうなと笑う正一。スエは、伊予の松山藩の名家、吉田の家の後継ぎは磯やんだ。吉田家の再興を望んでいる両親の気持ちだけは裏切らないでおくれと言うスエ。そんなスエに、分かったが、お父やんの形見の短刀をくれないと言う磯吉。
   その頃、大吉楼の玄関は、居候の吉田磯吉を出せと言う大瀧組の連中が押し掛けていた。老番頭の塩谷源之助(河野秋武)が相手をして、そんな男は知らないと言っても男たちは納得しない。出て行こうとする磯吉を、正一とスエは何とか押し留める。女中のおふじ(三島ゆり子)に、二階のどこかの部屋に隠してお貰いというスエ。おふじは、芸者お竜(藤純子)の部屋に匿ってもらえないかと頭を下げる。あんたも男だったら、来る場所が違うんじゃないのかいと磯吉に言い、下にいる大瀧組の連中に、あんたたちが探している男はここにいるよと声を掛ける。お竜の持つピストルを腕ごと借りて、上がってきた大瀧組の連中を外に出す。ピストルを前に手も足も出ない。玄関には、岩万組の代貸の桜井義三郎(近衛十四郎)が客人を連れて着いたところだった。こん若松のことは岩万組が預かると言う。製鉄所社長の奥田嘉兵衛(市川裕二)を連れて来たのだ。ワシの顔を潰したら、金輪際仕事がでけんようなるぞと言う儀三郎。磯吉の撃つピストルに蜘蛛の子を散らすように戸畑に逃げて行った。ピストルの弾を、一発残して撃ち、おなごがこん危なかモン持っていたらいけんので、ねえさんが女の操ば立てる時に使う一発だけ残しちゃったといって、お竜にピストルを返す磯吉。その上で、ワシがこん家にばいたら、姉やんに迷惑しか掛けんばいと言って、大吉楼を出る。大吉楼の人間だけでなく、若松新開地中の人間が、若大将!若大将!と心配をして声を掛ける。
   若松港の蓄炭場、仲士に混じって、ショベルを振う磯吉の姿がある。仲士の大谷組の組頭の堺平助(品川隆二)たちが、「兄やん。うちの組に入って、組頭やってくれないか」と言うが、ワシはこれでええんじゃと耳を貸さない。
  岩万組の岩崎万吉こと岩万(内田朝雄)が、蓄炭場にやってきて、たまにはうちの賭場に遊びに来いと平助に声を掛ける。平助たちは、ヤクザが嫌いだ。磯吉が、かって自分の持ち物だった船を見つける。懐かしそうに見ていると、花山精吉(天津敏)が、兄やん!!と声を掛ける。二人で昼飯を食べることに。かって、磯吉は、自分の船を精吉にやった。そのことに精吉は感謝し、いつでも恩返ししようと思っているという。そこに大吉楼の女中のおふじが、スエから預かった着替えを持って来る。それとお竜からの手紙も渡す。磯吉は、精吉に誘われ、小倉に出掛ける。
   その夜、大吉楼で、暴れる大瀧組の連中がいる。平助たちが走ってきて、叩き出す。さあみんな上がって呑んでいってとスエが言うと、ワシら服が汚いので迷惑かかると遠慮し、いつでも何かあったら呼んでくれと言う。平助たちに叩きだされた二人が戸畑に帰ろうとしていると、男たちが二人を襲う。一人は殺された。
  翌朝、戸畑の大瀧組が人を集めて、若松に殴り込みにやってくると言う。仲士たちも血の気は多い。喧嘩仕度をしていると、義三郎がやってきて、この喧嘩を買わせてくれないかと言う。戸畑大瀧組の大滝喜一郎(中村竹弥)を岩万が誘い、大吉楼の二階で、この件自分が買うと言う。喜一郎は、人の命は千両だぞと言う。そこに、事情を聞いた磯吉が平助を連れて現れる。こん男がおたくの若い衆と喧嘩をしたが、殺していないと言っちょる。この喧嘩わしに買わせてくれないかと頭を下げる。喜一郎は了解するが、岩万の面子は潰れた。
 


岡部亭蔵(大木)小野田修次(岡田英次)中村秀四郎(神戸瓢介)
岩崎万吉河童の五郎(楠本健二)ダルマ兼(大木五郎)浪七(汐路章)熊辰(加賀邦男)柳川大六(千利介)源蔵(小田部通麿)松五郎(国一太郎)六蔵(脇中昭夫)

   63年東映東京石井輝男監督『昭和侠客伝(532)』
   昭和5年浅草(エンコ)、関東桜一家、三代目千之助(嵐寛寿郎)と一人娘の良子(三田佳子)と、子分の深見(内田良平)が浅草寺裏を歩いている。千之助が、突然「深見!傘を貸せ。刃物に臭いがする。良子を頼んだぜ」と言う。直ぐに10人近くの男たちが、千之助を取り囲む。抵抗するが、多勢に無勢で腹を刺される千之助。
   関東桜一家の重宗(鶴田浩二)は、翌日の出店の段取りをしていると、親分が刺されたと知らせが入る。千之助は何とか一命を取り止める。皆が、殺気立つが、千之助は、相手の見当はつかないと言う。若頭の?に、おめえが落ち着かないでどうする。わけえ奴らが、何かしでかさねえようにするのがおめえの仕事だと一喝される。戻ってきた重宗は、枕許に、良子と池上の叔父貴(三井弘次)がいるのを見て、何も言わずにいたが、深見が思い詰めた表情で、出て行くのを見て、後を追う。深見は自分が付いていながら、こんなことになったことを恥じていた。黒帯組にちげえねえと言う深見に、証拠がないなら今日のところは、一緒に帰ろうと誘う。
   翌日、浅草の街では、掏摸、かっぱらいなどが多発している。中華料理屋でもチャリンコの信坊(岡部正純)ハイダシの吉(潮健児)が、ここは油虫の入ったもん食わせるのかと暴れ始める。そこに黒帯組の常(大木実)が現れ、チンピラたちを叩きだし、今後警備をやっているので、みかじめ料を寄こせと言う。浅草寺の裏に、掏摸やチンピラたちが集まっている。常がやってきて、関東桜組のシマで、どんどん揉め事を起こせといって、小遣いをやる。
   牛鍋屋に、愚連隊青空一家の勝男(梅宮辰夫)譲次(待田京介)がやってくる。ここで働く雪子(丘さとみ)は、勝男の姉で、梨江(坂本スミ子)は譲次の女なのだ。


   黒帯組二代目土井(平幹二朗)雄三(亀石征一郎)松(佐藤?也)隆(室田日出男)辰(山本麟一)
宮地(芦屋雁之助)富子(安城百合子)夢子(木村俊恵)仙吉(志摩栄)

2009年9月14日月曜日

東映京都撮影所の時代劇映画。

  午前中、赤坂のメンタルクリニック、世の中はどんどん悪くなっているという話で一致。まあ、精神的にやられる人間が増え、患者が増えて増えて、嬉しい悲鳴かもしれないなと疑っていると、酒量増えていないよね、と何度も言われて、お見通しだな・・・。
   それから、大手町のクリニック。糖尿病の経過観察だが、もう、随分血糖値も、血圧も正常値、まあ、毎月が、一月半に一回になり、隔月にと言われる。先日のエコーの結果は、脂肪肝ですが、血液検査はかなり改善されていますねということだったが、太っている人は、膵臓が見られないので、CTやりましょうと言われる。

   池袋新文芸坐で、鮮烈なる東映'50s~'70s
  65年東映京都沢島忠監督『いれずみ判官(527)』
 天保十三年一月末の ある夜、深川木場にある足場から南町奉行配下本所深川方与力、梶川三五郎(栗塚旭)が落ちて亡くなった。月番の北町奉行遠山左衛門尉(鶴田浩二)は、自殺と判断した。明けて二月、南町奉行鳥居甲斐守(佐藤慶)の担当であり、非番の北町奉行遠山左衛門尉は、木場人足金四郎と名乗って木場に潜り込んだ。
   近江屋の人足頭のグズ安(遠藤辰雄)は、権力を傘に人足たちに暴力を振るうだけでなく、工賃をネコババしていたことがバレて、近江屋仁平(原健策)に、クビを言い渡される。折しも、日光東照宮改築普請の入札が控えており、人徳、実績ともに近江屋が確実だと人足たち誰もの噂であったが、難波屋太佐衛門(阿部九州男)も密かに狙っていた。
  ある夜、木場では人足たち相手の賭場が開かれていた。久しぶりの賭場で、摺ってしまう金四郎。そこに町方たちがやってくる。間一髪のところを、病み夜鷹のおしの(南田洋子)に助けられる金四郎。お礼に遊んで行きなというおしのだが、素寒貧の金四郎は、酒一杯奢ることもできない。呆れたおしのは、自分が奢ってやると言って、夜泣きうどん屋の幸吉(藤山寛美)の屋台に連れていく。幸吉と妹のお加代(藤純子)は、上方で喰いつめて江戸に下ってきた。しかし、何の充てもなく出てきた二人に生活の糧など無かった。偶然知り合った近江屋は、お加代に店の下女中の仕事を世話し、幸吉には屋台を貸してくれたのだと言う。幸吉の上方風の味付けを喜んでくれた近江屋に、2年間、欠かさずに饂飩を届けているという。
   今日も、幸吉は饂飩を持って近江屋に向かった。幸吉は、木場で、近江屋仁平に出会う。しかし、既に近江屋は刺殺されている。そこに、南町奉行所筆頭与力兼田軍次(天津敏)が現れ、幸吉を近江屋殺しの下手人として捕縛した。大番屋で厳しく自白を迫られる幸吉。大恩ある近江屋さんを殺すなんて絶対ないと否定する幸吉だが、兼田に作られた書面に、無理矢理爪印を押されてしまう。南町奉行の月番のうちに、鳥居甲斐守は自白を証拠として死罪を宣告、老中水野忠邦(内田朝雄)の承認も受けた。
  近江屋の死により、東照宮改築は難波屋の手に落ちた。グズ安は、さっそく難波屋の法被を着て、得意げに人足たちに菰酒を振舞っている。一方、源兵ゑ長屋では、家主の源兵衛(田中春男)が、人殺しの妹は長屋に置いておけないと言っている。お加代は、兄さんは近江屋さんを殺すことなどあり得ないと言うが、源兵衛は、自分の長屋から人殺しが出たなんて世間様に申し訳ないと冷たく言う。長屋の住人たちは、お加代のことが好きな木場人足の与吉(河原崎長一郎)や、座頭の宅市(芦屋雁之助)をはじめ、全員が幸吉とお加代の味方だ。そこに、金四郎が現れ、幸吉の無実を必ず晴らすと誓う。
   梶川三五郎の墓前に、妻のお藤(桜町弘子)がいる。少し前に現れた小春(南田洋子)が手向けていた花を憎々しげに捨て、芸者風情の花など、梶川家には汚らわしいと言う。三五郎は、低い身分であったが、梶川家に婿入りしたのだ。武士でありながら、自殺したことで、梶川家が廃絶されたことの恨み言を語るお藤。帰宅したお藤は、辺りを窺い、裏の土蔵に入る。そこの二階には、お藤の弟で狂人となって廃嫡された清次が幽閉されている。お藤は夫の三五郎を罵りながら、寵愛する弟のためなら、何でもすると誓う。しかし、空気を入れ替えるつもりで開けた窓から覗いている病み夜鷹のおしのの眼がある。慌てて後を追うお藤。
   普請奉行榊原備前守(徳大寺伸)に難波屋太佐衛門は、賄賂を贈っていた。20万両の予算のうち、2万両をキックバックし、更に1万両寄越せと言う備前守。勿論、備前守の先には、鳥居甲斐守、水野忠邦がいる。兼田軍次からの報告で、遠山左衛門尉が、金四郎として深川木場に潜り込んでいることを知って、消せと命ずる甲斐守。忠邦も老中隠密坂崎(楠本健二)に同様の指図をする。
  死罪の沙汰が下った幸吉。お加代の姿が源兵衛長屋から姿を消した。源兵衛初めみな必死に探すが見つからない。大川に入って行くお加代の姿がある。その光景を見ている村上新次郎(大木実)。源兵衛長屋にいた金四郎のもとにちょっと、来てもらえないかという使いがある。不審に思いながら、同行すると、橋を渡っている途中、向こうから来た竹屋が、突然金四郎に襲いかかる。次々に飛んでくる竹槍をかわし、追い払う金四郎。使いの者にドスを突き付け、誰に頼まれた?!と迫る金四郎。
   案内されたところに、村上新次郎がいる。新次郎と金四郎は、同じ旗本部屋住み時代からの友人だった。新次郎は、大川に身投げしたお加代を助け医者に見せていた。安心した金四郎と酒を酌み交わす新次郎。
   東照宮改築の木材の積み出しが始まった。金四郎は、お藤がその場に現れたのに気が付く。お藤は、難波屋を呼び、梶川が残した書置きに、難波屋が、普請奉行の榊原備前守に、入札前に1千両、その後二万両の賄賂を贈った事実が書かれていると脅す。そのやりとりを、小春が聞いている。お藤が帰宅すると、家の中は梶川の書置きを探したのか、荒されている。こんなところに隠しているわけはないのにと鼻で笑うお藤。土蔵に入って行くお藤の後をつけた小春は、気絶させられる。その後に入って行った金四郎も同様だ。 
   土蔵で縛られている金四郎。必死に縄を切ろうとしているが、かなり厳重に縛られている。その頃、水野忠邦のもとに、難波屋、備前守、甲斐守、坂崎が集まっている。たかが女一人、どうにでもなるだろうと言う甲斐守。また、お藤の元に金四郎が捕らえられているという隠密からの情報に、ここで殺してしまえと忠邦。
   

(阿部九州男)梶川三五郎(栗塚旭)おしのお藤(桜町弘子)

   沢島忠にとっては、全く満足できない作品らしいが(「沢島忠全仕事 ボンゆっくり落ちやいね」)、決して悪くない。確かに、全体の流れは、ギクシャクするかもしれないが、最近のなんちゃって時代劇映画ばかり見させらて育った自分の世代には、沢島忠監督をちゃんと見ない限り、まだまだと反省してしまう。

   63年東映京都マキノ雅弘監督『次郎長三国志(528)』
   遠州秋葉神社、清水の米屋の倅で長五郎こと次郎長(鶴田浩二)は、神社境内の山博打で馬定(加藤浩)のイカサマに引っ掛かって裸になっていた尾張名古屋の桶屋の鬼吉(山城新伍)を助ける。すっかり次郎長に惚れ込んだ鬼吉は、次郎長の子分になると決め、喧嘩でぼろ切れのようになった着物を預ける。
   清水大熊一家の堺吉(堺駿二)は、笠を被ったままの見かけない渡世人が現れて仁義を切り始めて困った。江尻の大熊(水島道太郎)が不在だと言うと、妹のお蝶(佐久間良子)に仁義を切る。実は二年前に夫婦約束をして旅に出ていた次郎長がふざけていたのだ。嬉し涙のお蝶。
   寿々屋の二階で、江尻の大熊と叔父貴の和田島の太左衛門(香川良介)に向かいあっている。二年旅をして、やくざとなったという長五郎。裏稼業、覚悟はあるだろうなと言われ肯くと、二人とも認めてくれた。じゃあ、一杯やるかというと、旅に出てからさっぱり酒は止めたと長五郎。かって清水にいた時の長五郎は、酒を飲んでは暴れて手がつけられなかった。清水を出るときに、お蝶と約束した酒を止めるという約束を守っていたのだ。そこに、鬼吉が駆け付ける。男に惚れて子分になりに来たという。お蝶に紹介する次郎長。ぼろぼろの鬼吉の着物は、お蝶によって繕われていた。
  鬼吉は、寿々屋の看板娘お千(藤純子)に一目惚れ。寿々屋の向かいにある桶由(阿部九州男)に、住込み職人として押し掛ける。しかし、お千が気になって、仕事をしている風はない。
   馬定は秋葉神社の一件を根に持ち、客分の関東綱五郎(松方弘樹)を喧嘩口上の使者にした。喧嘩口上の使者を無傷で帰すのが仁義だったが、ほとんどの場合は血祭りに上げられる命がけの仕事である。次郎長は、綱五郎に手を出すなと止めた上で、返事の使者を使わせると答えた。鬼吉は、桶由に走り棺桶を背負い、美保の松原まで走る。次郎長は、お千から預かったという赤い簪を鬼吉に渡したので、千人力だ。簪は、次郎長が近くの小間物屋で買ったものだ(笑)。鬼吉は、張りきって、喧嘩を受けるという次郎長の口上を伝える。馬定は、鬼吉を叩き斬れと言うが、綱五郎は、拳銃を撃ち、自分を無事に帰した次郎長への義理があるので、手出しはしねえでくれと言って、助っ人両を返す。そこに、次郎長と、助っ人の大熊一家が到着する。綱五郎は、次郎長に惚れこみ、寝返る。
   綱五郎を連れて、鬼吉は寿々屋に出かける。自慢げにお千を紹介する鬼吉に、俺が奢るから飲もうと綱五郎。綱五郎は、お千から貰ったと鬼吉が思いこんでいる簪を売って飲み代を作っていたのだ。喧嘩になったところに、一人の侍が現れ、その喧嘩を買うと言う。次郎長の子分だと聞くと、お前らでは相手にならないので、親分を呼べと言う。次郎長は、訳が分からないまま、駆け付け、侍と向かい合う。その男の槍は、なかなかのものだった。 次郎長も冷や汗を掻き、周りの者たちも手に汗を握っていると、突然男は笑いだし頭を下げた。次郎長の剣の師である三州小川武一の紹介で訪ねてきた伊藤政五郎(大木実)だと名乗る。俺を試すとは人が悪いと言いながらも、客人として迎える。しかし、そこに、政五郎の妻のぬい(小畑絹子)がやってきた。政五郎は、ついてきてくれたのだと感激をする。政五郎は足軽の身分だったが。剣の力で、伊藤家に婿入りした。更に励み、槍では免許皆伝、藩内では無敵な存在となったが、低い身分の出を同輩たちから侮辱され、つくづく武士が嫌になって出奔したのだ。しかし、ぬいは、家を捨てられないと泣く。その夜酔い潰れ、黒田節を歌う政五郎の姿がある。髷を落とし、次郎長に子分にしてくれと言う政五郎。
   次郎長の叔父貴、和田島の太左衛門(香川良介)と、甲州津向の文吉(原健策)の出入りである。次郎長は、叔父貴の助っ人として参加しようとしたが、政五郎は、この喧嘩の仲裁に入って男を上げろと言う。まだ、駆け出しの自分は、そんな器ではないと一度は断る次郎長だが、次郎長の肝次第だと懇願する政五郎に、子分、鬼吉、綱五郎、政五郎に命を預けろと言って、仲裁を買って出る。双方の言い分を聞くと、甲州の三馬政(中村錦司)が、お互いの悪口を伝えて、仲違いをさせていたことが判明する。三馬政を捕まえ、文吉の元に突き出す次郎長。喧嘩の場所であった河原にいた、喧嘩好きの生臭坊主、法印の大五郎(田中春男)がいつのまにやらついて来ている。
   この件で、次郎長は男を上げた。しかし、お上から追われることになる。寿々屋の二階で手打ちをした和田島の太左衛門と、甲州津向の文吉の二人の親分を無事に逃がすと、捕り方たちの中に飛び込んでいく次郎長一家たち。
    次郎長たちの後を、法印の大五郎が着いてくる。汚く臭いので、皆困り顔だ。来る者は拒まない次郎長は仕方なしに認める。雨宿りに、法印の大五郎が案内した荒れ寺で一泊すると、翌日外が騒がしい。まだ、若い男女が、二人組のヤクザに追われている。仇討だと言う。若者が、ヤクザに仇討しようとして、帰り討ちにあっているのかと次郎長たちは思ったが、逆で、若者の増川の仙右衛門(津川雅彦)は、叔父の仇で、赤鬼の金平の身内の源右衛門を斬ったため、逆に、その兄弟分の比奈の民蔵(和崎俊也)力蔵(神木真寿雄)兄弟に又仇として狙われていたのだ。連れの少女は妹かと思うとおきぬ(御影京子)と言い、二人で駆け落ちしてきたと言う。
   沼津に着いた次郎長は、子分たちに、兄貴分がやっている駿河屋と言う料理屋で、豪勢に行こうと言う。しかし、目抜き通りにあった筈の駿河屋は、場所も変わり寂れて、営業もしていないようだ。兄貴分の佐太郎(藤山寛美)お徳(千原しのぶ)夫婦は、それでも次郎長たちを歓迎する。お徳は、残った数枚の着物を持って、売りに行く。兄貴分夫婦の窮状を察した次郎長は、財布を佐太郎に渡し、お徳含め内緒にし、今日の飲み代と、明日の草鞋銭にしてくれと言う。

  軽いフットワークで魅せてしまうマキノ雅弘。今日の2本は、時代劇映画に関して、自分は全然観ていないと思い知らされる。結局今日も、このブログを書きながら飲んでいると、止まらない。