2011年8月3日水曜日

1勝2敗。

阪本順治監督『大鹿村騒動記(12)』

南アルプスの山間の村。大河原町のバス停に、バスが停まる。運転手の越田一平(佐藤浩市)が、先に降りて老婆の手助けをする。「ばあちゃんいくつになったの?」「97歳です」「婆ちゃん、今度薬持ってきてやるよ」「ありがとうございます」その後に、茶髪の若者。更にサングラスを掛けた年配の男女がおりる。
一平、二人を目で追う。橋の上でサングラスを直す二人を見て、「あれ、治さんと、貴子さんじゃないか・・・」
橋の上の二人。「善ちゃん!!懐かしい!!」「俺は善じゃねえ。治だって・・・」無邪気に笑う貴子(大楠道代)と、途方に暮れる治(岸部一徳)。
バスを降りた茶髪の若者が地図を見ながら歩いていくる。その先に「ディアイーター」と白地に黒く書かれた看板を見つけて、うなずく。小鹿が2頭入った檻の中にいるテンガロンハットを被った男に声を掛ける。男は、歌舞伎のせりふらしいものを喋っている。「すみません・・・」「何だ?」「その鹿食べちゃうんですか?」「小鹿に気がつかずに母鹿を撃っちまったんだ」「長野のタウン誌に」「ああアルバイト」テンガロンハットの男は風祭善(原田芳雄)。シカ料理屋の主人である。「僕、働きたいんです」「若い奴はつづかねえぞ。ここには若い奴なんていねえ」「何にもねえぞ」「ハァ、テレビもめぇ、ラジオもねぇ。車もそんなに走ってねえ。おら、こんな村やだ~、おら、こんな村やだ~。でも芝居はある。」「僕、自分のことを誰も知らないところで働きたいんです」「名前は?」「大地です」「下の名は?」「雷音です。雷に音」「立派な名前だな。芝居をやれ。役者をやらねえ奴は、嫁の来てもねえ」しかし、善は、一人で店をやっているようだ。

村内放送のアナウンスをする村役場総務課の織井美江(松たか子)。「本日、午後五時半から役場2階の会議室でリニア新幹線に関する公聴会を開催します・・・・」

大浴場に、治と貴子が入っている。入り口から覗いている大塩館の主人山谷一夫(小野武彦)。「おい、やっぱり貴子じゃねえか!?」「覗きはまずいですよ」「入ってきた時は、よくわからなかったから確認さしたんだ。善は知ってんのか?」「まずいでしょ」「まずいってたって、知らせねばもっとまずいだろ。でも、何で今頃帰って来たんだ?」「俺だって知らないですよ」
そこに、善たちがやってくる。
役場の会議室「んだから、リニア新幹線が走れば、若いもんだって帰ってくるから」土木業を営む重田権三(石橋蓮司)。「農業を捨てる奴が増えるだけだろ」白菜農家の柴山満(小倉一郎)「白菜農家が!!」「白菜農家を馬鹿にしたな」「まあまあ、二人とも落ち着けって。芝居の練習しよう」食料品屋の朝川玄一郎(でんでん)。「だって、東京と大阪が50分だ!!50分!!な、美恵だってうれしいだろ」「わたしは・・・・」表情の曇る美恵の彼氏の?は、東京に行ったきり、戻って来ないのだ。「でも、ここに駅なんか出来る保証ないんだろ」「このあたりは、糸魚川静岡構造線の大断層帯が走っているし、難しいと思うよ」「リニアって、線路はあるのか?」間の抜けた質問をする一平。「リニアだから!!!」「村長はどうなんだ?」権三。「私は、みなさんのご意見をまとめさせていただいて」「リニア新幹線の開業は、2027年。みんないねえんじゃないの?芝居の練習すっぺ」一夫。「そうだ、まずは芝居の練習だ」と話を切り上げ、立ち上る善。

舞台上で練習をする村人たち。題目は、大鹿歌舞伎の「六千両後日文章 重忠館の段」源頼朝役の玄一郎、台詞に詰まる。畠山重忠役は権三。道柴役は女形の一平だ。主人公の悪七兵衛景清役の善に、満の三保谷四郎国俊が斬りかかる。しかし、どうも上手く息が合わない。芝居まで、あと5日しかないのだ。更に、満と権三は、リニアのことで喧嘩になり、満はもう辞めると言い出した。舞台から、貴子と治の姿が見える。「まずい!!何で来るんだ?!」と一平と一夫。18年ぶりに現れた妻の貴子と駆け落ち相手で、友達の治を見た善は絶句し、一度舞台の幕を閉じ、再び幕を開けてから、二人に声を掛ける
「何で?!」

善の家の前、「鹿牧場はどうした?」「お前たちが居なくなったから、断念したんだ」「俺が困った時に、相談に乗ってくれたお前がいなくなったから、困ったんだ。貴子と俺が喧嘩した時に仲裁するのは、お前だったし、俺とお前が喧嘩した時に、中に入るのは貴子だっただろ。だから、本当に困ったんだ。」
二人をよそに、家の玄関にスタスタと入っていく貴子。「?」「記憶がどんどんどん無くなっていくんだ」「えっ?」「俺のことも、善と間違えている。どうしようもない。だから返しに来たんだ」「だから返しに来たって?!」治を殴る善。「いてえなあ」

   原田芳雄の遺作という看板は余計だ。役者も揃って、このところ残念な感じの作品も多かった阪本順治監督も面目躍如、じゃなかった名誉挽回。笑えて、少し泣けるいい映画。こういう90分の尺の丁度いい、普通の映画が少なくなった。


  宮崎吾朗監督『コクリコ坂から(13)』
  朝目をさます少女、松崎海。身支度をして、階段を降りて、台所、お釜のお米の水加減を確認して、マッチでガスに火をつける。コップに水を汲み、写真立ての前のコッブと取り替え、花瓶の花を直す。
庭に出て、信号旗を揚げる。台所に戻り、フライパンでハムエッグを作りながら、キャベツの千切りを作る海。
「広小路さん」



   スタジオ・ジブリのブランド力で、劇場は入っているけれど・・・。うーん。もう一つだなあ。日活の青春映画を時代考証の参考にしたらしいけれど、もっと本数見てほしかったなあ。

     デイビッド・イェーツ監督 『ハリーポッター死の秘宝PART2【3D】(14)』
 3Dらしく奥行きあったのは途中まで(苦笑)。PART1と2を分けて公開したのは、制作日程の問題だったのかあと思う。何だか物足りない。ハリポッターだけは観てきたけれど、これで完結というのは・・・。