2009年11月7日土曜日

博華がずっと休みなので心配だ。

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、昭和の銀幕に輝くヒロイン【第50弾】叶順子
   58年大映東京田中重雄監督『愛河(633)』
   河原に、ショートパンツ姿の若い娘たちの10名程のグループが、ハイキングに来ている。他の男たちのグループの品定めや恋愛談義で姦しい。化粧品会社のセールスウーマンらしい。結婚まで、純潔を守ると言う信子は少数派だ。堺新子(叶順子)は、今の交際を尋ねられ、目下順調に進行中だと答える。
    伊勢丹ネクタイ売り場で働く矢崎三三子[みさこ](若尾文子)。そこに友人の新子がやって来る。恋人の三井明(田宮二郎)にプレゼントするネクタイを買いに来たのだ。「ねえ、どれがいい?」「恋人へのプレゼントくらい自分で選ぶものよ」「じゃあ、これにする。」「千円頂きます」「割引してくれないの?」「ふふふ」「そうだ、水沢さん元気?」「今日、面接試験なんだ」
   学生服姿の水沢保夫(川口浩)が、日東物産の面接試験を受けている。専務(大山健二)総務部長(見明凡太郎)ら七人程の面接官だ。「君は運転が出来ると書いているが。」「一年生から自動車部に所属していました。」「君、ガールフレンドはいるかね」「はい、います。」「何人いるのかね?」「勿論一人です。が、恋愛と就職にどんな関係があるんですか?」「特にないな。個人的な関心だ。」「君はなかなか素直でいいよ」
  絵画館前で、美沙子と待ち合わせる水沢。「面接、どうだったの?」「ガールフレンドは何人いるかなんて聞くから、就職と関係あるのかって聞いちゃったよ。」「みんな他人の恋愛に関心があるのよ」「仕事が決まったら、伊豆に行って、君との話しをしてくるんだ。」「まあ」「僕は男は独身の仕事が出来ると言う主義だったけど、君と会ってから、考えが変わったよ。」「相手次第じゃないの?」
    家の庭で洗濯物を干している三三子。「水沢さんから電話。」と母の声。「どうだったの?」「合格したよ。君、今日は公休日だろ。会えないか?」「いいわよ」「じゃあ、3時にいつものところで、」浮かれた気分で居間に戻ると、雑誌記者をしている兄の剛一(川崎敬三)が遅い朝食を取っている。「何かいいことでもあったのか?」「内緒よ」「最近、新子さんに会うか?」「お兄さんって恋愛音痴ね。」「お代わりよそってくれよ」「お兄さん、昨日も徹夜だったの?」「この原稿を入れなきゃならないんだ。」「お兄さんって恋愛音痴ね。あら10時よ」慌てて立ち上がった剛一に、母康子(三宅邦子)が「まだ、9時前よ。」「騙したな!」「あなたたちは、また兄弟喧嘩。」「兄妹である証明よ」
   ジャズ喫茶ハイヌーン、ステージではシロー(平尾昌晃)が「ダイアナ」を歌っている。女性ファンが騒いでいる。後ろの席で、身体を揺らしながら聴いている新子。そこに、この店の支配人でもある三井が声を掛ける。「シローいかすわね。」「そうだろう。打合せをすぐ済ませるから今日はドライブに行こう!」「まあ、ステキ。」そこにウェイターが「晃さん。社長がお呼びです。」
   裏の事務所には、明の父親慶吉(十朱久雄)が、シャンソン歌手の暁美(若松和子)と話している。「私はジャズやら全く分からないので息子に全て任せているんです。」「素敵な店ですわね」。晃が入ってきて「どうしても、暁美さんにこの店で歌って欲しくて来て頂いたんです。お父さん、ギャラ弾んで上げてよ」「そういった話はお前にみんな任せているだろ。では、ごゆっくり」父親が出て行くと、「じゃあ暁美さん、ギャラはF万でどう?」「いいわよ」「じゃあ、明日から宜しくお願いします。」
   三井と新子が店を出ようとすると、入れ替わりに、水沢と三三子が入って来る。

矢崎三三子(若尾文子)矢崎剛一(川崎敬三)三宅邦子(矢崎康子)水沢保夫(川口浩)水沢昌江(滝花久子)堺新子(叶順子)いすず自動車外村(菅原謙二)三井明(田宮二郎)三井慶吉(十朱久雄)事務員A(中条静夫)事務員B(杉田康)事務員C(渡辺鉄弥)河原(津田駿二)市川(守田学)大学生(佐々木尚夫)梨恵(穂高のり子)サントリーバーの女給(市田ひろみ)神戸のゆうこの女給(毛利郁子)神戸のゆうこの女給(新宮信子)アパート管理人(竹里光子)神戸のアパート管理人(村田扶実子)若い女性A(久保田紀子)若い女性B(小田桐桂子)香坂民雄(北原義郎)優子(角梨枝子)暁美(若松和子)新関(三島雅夫)

引き続きラピュタで、俳優 佐藤慶
66年日生劇場プロダクション篠田正浩監督『処刑の島(634)』
    伊豆七島か、島の港に船が停まり、


    神保町シアターで、日本文芸散歩
    60年大映東京市川崑監督『おとうと(635)』
     雨の中、通学の学生たちの中を、蛇の目傘を差したげん(岸恵子)が、弟の碧郎(川口浩)を追い掛けている。碧郎は傘を差さず、濡れ鼠だ。やっと足を止めたので、げんは追い付く。「やっと気がついた。」「違うよ。姉さんがかわいそうだからだよ。」「この傘持って行きなさいよ」「女ものの傘なんて恥ずかしいよ」「あら、お父さんの蝙蝠傘持ってくれば良かったわね。」「いや、また姉さんが怒られるよ。お弁当のおかずは何?」「鰹節よ」「また鰹節か。あの人は何もしてくれないからな。僕の傘だって全部骨が折れたって気がつかないだろう。」「あの人だなんていけないわ。お母さんでしょ。」
     三越の売り場で、大きな風呂敷を持ったげんが、刑事(夏木章)に万引きだと捕まっている。「やっていません。」「強情な女だ。俺はちゃんと見たんだからな。」「皆さんの見ている前で確かめればいいでしょう。」「つべこべ言わずに来い!」と裏に連れて行かれる。
「住所は?」「向島です。」「向島のどこだ?」「父親は何をしている。」「私は何もしていません。母に頼まれた物を買っていただけです。」刑事は、ベルトを出しテーブルに打ちつけ脅しつけるが、げんは「叩くのであれば、テーブルではなくて、私を叩きなさい!」「このアマぁ」「これが、頼まれ物の手紙です。」「何々?リュウマチの薬?」「母がリュウマチなんです。」「白髪染め?リュウマチで寝ているばばあが髪を染めるのか?下駄に…」げんが風呂敷を開くと、そのリストの物しか入っていない。「これが受取で、お釣りです。」気まずそうになる刑事と番頭たち。


     69年松竹大船中村登監督『わが恋わが歌(636)』
    健次(竹脇無我)が待っていると、「ケンジ!!」と声を掛けリサが駆けてくる。「やっぱり親父に会うのは止めないか。長谷の大仏でも見た方がいいと思うよ。」「ワタシは、ドーシテモ、古都に住む歌人に会いたいノ…。」「そーかい。」気乗りしない健次は、実家にリサを連れて行く。「あなた、あなた、お客さまよ。」ととみ子(岩下志麻)「いないと言え」と吉野秀雄(中村勘三郎)。「あなた、健ちゃんが、スウェーデンの女性を連れて来たのよ。」「何?スウェーデン?!!」健次が吉野に、「こちら、ウチの大学の留学生。和歌について話を聞きたいと言うから連れて来たんだ。」 「ワタシは、リサ・?センです。和歌の心、歌の心を知りたいのデス。」「僕にだって分からないのに、外人には無理だよ。」「それは、お前の能力の問題だ。和歌は、人間の心を歌うのだから、日本人だけのものではありません。」吉野とリサの会話が成立して、健次がホッとしたのも束の間、リサが「センセイ、一つ聞いてもいいデスカ?和歌デモ、SEXを歌うことはあるのデスカ?」「んん?」「SEXは、愛する者の最も人間的な行為デス。」「日本人は、人前で性について話すことは、恥ずべきことだと言われている。神州もとより清潔の民だ!!不愉快だ、帰ってくれ!!」
    ホテルのプールサイドに、健次とリサがいる。「だから、あんな親父に会わない方がいいと言っただろ。テンで頭が固いんだ。」「デモ、素敵なお父サンだと思うヨ。ケンジは、お父サンを恐れてイル。」
その夜、ホテルの部屋。「ケンジ帰らなくてイイノ?シンパイしてるヨ。」「いいんだ。」抱き合う二人。
    翌朝、健次がコソコソと帰ってくる。とみ子にコッソリ「二千円貸して貰えない?ホテル代が足りないんだ。オヤジ怒っていた?」「そりゃそうよ。仕方ないわね。」とみ子が財布を出そうとすると、「とみ子!!金なんか貸す必要はない!!健次!!あのスウェーデンの女と一緒だったのか?出ていけ!!」

2009年11月6日金曜日

俺にはコミック雑誌なんかいらない・・・筈だった。

   朝から、新宿ピカデリーで、
    ケニー・オルテガ監督『THIS IS IT (631)』

   映画を見ながら、イカロスの翼だったかの話しを思い出した。ある日空を飛びたいと思っていたイカロスは、翼を付け空を飛ぶ。より高くと思い太陽に近づくと、翼を付けたノリが溶け、墜落してしまった。マイケルが、このリハーサルを経て掴もうとしていたステージは、人間の領域を超えたものだったかもしれない。エンターテインメントの神になりそうだったマイケルは、生きて実現することは出来なかった。実現していたとして、自分はロンドンでの50公演を見に行かなかったし、DVDか何かを暫く経って見ただけだったろう。万が一、実現していた時に、目撃した人しか、神になったマイケルを語れないと言うと言い過ぎだろうか。世評に捉われず、50公演を目撃しようとチケットを握った人間にしか"奇跡"は、目撃できなかった筈なのだ。
   同い年のスーパースター、50年しか生きられなかったのか、50年も生きたのか…。
   少なくとも、この公演に全てを賭けていたんだな。凡人である自分は、いつ人生を賭けるタイミングがあるのだろうか?


   代々木まで歩いて、学校。二年は就活でもあり、就活への挫折もあり、出席が悪い。大変だよな。2コマ目は、水曜に続き、ゲスト講師を迎えて。先週末の、中学同窓会で頼んでいたCM音楽のプロデューサーK。持って来てくれたプロフィールを改めて見て、なかなかいい仕事しているなあと思う。自分自身が聞きだい話しで、進行してしまったきらいはあるが(苦笑)、とてもいい話をしてくれた。特に学生の顔写真入り名簿を見て、コミュニケーションを取ろうとしてくれたのを見て、勉強になる。恥ずかしい。

   マイケル、マドンナ、プリンス、TK(!?)、同じ学年だと言うことで、感傷的になってしまうが、そこに何か意味があるのだろうかと、ふと我に帰る。偶然発見した褒め殺し(笑)、思い入れというものは、個人的なものでしかなく、自分の限界を吐露する行為なような気がする。自分自身、他人を論うことを生業にしているようなもので、目糞鼻糞だが(苦笑)。

   ポレポレ東中野で、女優 岡田茉莉子。   
   60年松竹太秦吉村公三郎監督『女の坂(632)』
   京都の老舗の和菓子屋鍵村。跡継ぎが、今は箱根湯本の旅館の女将となっている津川恵子(乙羽信子)の娘明恵(岡田茉莉子)とすると言う話しに、長兄で暖簾分けをし、今では「藤膳」の主人をしている分家の藤崎浩造(澤村國太郎)は不満である。弟で骨董品屋をしている松井太平(殿山泰司)に同意を求めようとするが、鍵村の一枚看板の菓子、京時雨を奪おうと言うのが見え見えで、賛同されない。鍵村の後見人である清水焼きの清井三郎次(中村鴈治郎)も、秋江が継ぐことに文句はないようだ。
三郎次の娘千穂(高千穂ひづる)と太平の娘の由美(河内桃子)と秋江は、仲がよく、秋江がやってくることを喜んだ。母親に連れられ、鍵村にやって来る秋江。先代が亡くなってから、職人の谷次(富本民平)が、先代を悪く言った職人と喧嘩になり突き飛ばしたことで過失致死の罪を問われ、山科の監獄に入ってから、店は畳み、老女中のお静(滝花久子)が一人で番をしていた広い町屋の家はお化け屋敷のようだ。蜘蛛の巣、鼠・・・。赤と青の灯りが交互に写る窓、明恵が、思い切って窓を開けると、ナショナルのネオンが点滅するタワーがある(何のタワーだろうか?)菓子作りの仕事場は、もう何年も使われていない死んだ場所である。
  翌日、洋裁学校に、千穂を訪ね、由美と三人で話しながら歩く明恵。明恵は、菓子屋を廃業し、洋裁学校でも始めようかと思い始めていた。由美は、自分の恋人の矢崎善三(西田智)を、京都市役所で紹介する。矢崎は、かって学生運動の闘士だったが、現在は京都市の助役の秘書をしていた。矢崎との結婚を望んでいたが、矢崎は煮え切らなかった。続いて、由美は千穂のフィアンセを紹介すると言って、千穂の父がやっている清水焼の窯場に連れて行く。千穂の父三郎次は、芸術院の会員になるという野望をもっており、そのために発言力のある会員の息子である修二(北上弥太朗)を養子とし、千穂の許婚としたが、その後修二の父は亡くなった。修二は陶芸家としての才能はあったが、芸術院への野望の役にたたなくなったので、三郎次は急に千穂と結婚させるという熱が冷めてしまったのだ。明恵に窯を案内してくれる修二。
   由美の家、骨董屋「松へい」では、沢山の男たちに仕事を割り振る父親松井太平の姿がある。太平は、骨董屋の傍ら配膳組合の会長をしており、冠婚葬祭や行事に人を派遣する仕事をしているのだ。由美の兄の時夫(森美樹)が経営する喫茶店「珈琲・洋酒 くらろて」でコーヒーを飲みながら、四方山話をする三人。時夫も、かっては矢崎と共に学生運動に関わっていたが、逮捕された際に父親が実力者に手をまわして釈放させたことで、仲間と気まずくなり脱落、屈折し寡黙な男になっていた。
   刑務所の塀の前を、出所した職人の谷次と歩く明恵の姿がある。鍵村に戻り、風呂に入り今日はゆっくり休みなさいという明恵。谷次は仕事場をゆっくり確かめるように眺め、洋裁学校を開くというのは本当かと明恵に尋ねる。決めたわけではないが、そう思っていると明恵が応えると、京時雨を食べたことがなければ、作らせてくれと言う。綺麗に片付いた仕事場で、キビキビと働く谷次の姿をみつめる明恵。上質な葛を使ったシンプルな京時雨を食べて、おいしさに頷く明恵。
  浩造が太平の店にやってくる。「えらいこっちゃ、明恵さんが鍵村を再興させると言いだした。」「聞いたで・・・。兄さんの京時雨と、暖簾を手に入れるという狙いは水の泡になったな。」「そんなことやない。京都の老舗の暖簾を、菓子作りもやったことのない若い娘にでける訳がないと、心配しとんのや。」
   鍵村の前に、詰襟を着た応募者が沢山集まっている。小僧さんの募集に集まっているのだ。明恵が面接している。志願者(頭師孝雄)の一人に志望理由を尋ねると「菓子を腹一杯食べてみたくて」「少し経つと、見るのも嫌になるわよ」と明恵。
  すらっとしたスラックス姿で、自ら運転をして、小僧(頭師孝雄)と、お茶屋、料理屋を営業再開の挨拶をして周る明恵。「あらまあ、鍵村はんは、随分と威勢のええお方どすなあ。」洋装で溌剌とした明恵に目を見張る京の人々。
  店に戻ると、母の恵子が、東京の版画家の矢追三郎(佐田啓二)を連れて来ていた。矢追が、舞妓を描きたいというので案内したのだと言う。部屋数だけは旅館をしてもいいくらいあるので、何時までも泊ってくださいと明恵。
   由実が、舞妓の手配をしてくれ、鍵村の二階で、矢追は舞妓(北条喜久)のデッサンをしている。由実は立ち会ってくれた。「先生、一休みしたらどうどす?」「うんそうだな」「コーヒーにします?お紅茶?」「コーヒーを」「あんたはどないする?」「私はごちゃごちゃ」由実は下に降りて近くの喫茶店に電話を掛ける。「鍵村まで、コーヒーと、お紅茶と、フルーツパフェ。コーヒーは熱いんでないとあきまへんえ」由実が明恵を探すと、店の外にある車の下に潜って修理をしている。「今から配達?じゃあ、私もドライブに連れて行って!」「ドライブじゃなくと、配達よ。」

兄晴太郎(真木康次郎) 妻吉野(金剛麗子)娘咲子(樋口美子)
万力のおかみ(和歌浦糸子)京大和のおかみ(高山裕子)

2009年11月5日木曜日

山田VS岡田。でも今日の1番は佐藤。

 ポレポレ東中野で、女優 岡田茉莉子

  58年松竹大船澁谷實監督『悪女の季節(627)』
   現代人の行動は、直接的にせよ、間接的にせよ、殺人につながっているものである。胸部レントゲン写真、心電図…。医師、「八代さんは、何万人に一人の丈夫な身体です。20才は若い、100才まで生きられますよ。」と、人間ドックの結果に太鼓判を押す。
   大金持ちの八代(東野英治郎)は、人間ドックを受け、何万人に1人の健康的な肉体だと、医者から誉められる。68歳の八代は、20歳は若いと言われ、帰宅し、妻の妙子(山田五十鈴)に100歳まで生きると大威張りだ。妙子は陰で診断書を破り捨て冗談じゃないと怒る。彼女は、芸者をしていてひかされたが、籍を入れてくれる訳でも、2号のようにお手当を毎月貰える訳でもなく、無給の女中を20年近くさせられてきた。転がり込む遺産のことで我慢してきたのに、この生活が何十年と続くと考えると冗談ではない。
   焼き肉を食べて、八代が眠ったのを見て、ガス栓を開いておいて、1階のばあやに風呂を焚くと言って元栓を開けさせた。ばあやはかなり耄碌しており、主人の顔を忘れるほどだ。風呂に入りながら、様子を窺う妙子。しかし、白タクの運転手で、妙子のかっての客だった片倉(伊藤雄之助)が、車の月賦の無心をしようと家に忍び込んできたことで、間一髪八代は助かる。片倉は、ガス漏れに不審を抱き、妙子にカマをかけ、警察に話に行くと脅して、白状させる。しかし、金と八代の眼球だけが欲しいだけの片倉は、矢島殺しの片棒を担ぐ。妙子と片倉は、殺し屋の秋ちゃん(片山明彦)に手伝ってもらうことにする。色々考えを巡らすがうまく行かない。
   そこに妙子の娘の眸(岡田茉莉子)がやってくる。眸は義父の八代に、今後一切縁を切るので、百万くれと頼むが、八代の方が一枚上手で、ちゃんと結婚して届けを持ってきたら、お祝いとして百万をあげるとはぐらかされる。眸の百万は、ヌードダンサーをしている友人の美美(岸田今日子)に車の代金を払わなければならないのだ。もう待てないと言われて、ピストルを渡される。眸は、自分で手を下そうと、八代の寝室に忍び込むと、ベッドにナイフを突き立てる影がある。灯りを点けると八代の甥の慎二郎だ。彼は、死の直前の母親から船員だった叔父の八代が、南米で成功した父親の全財産であるダイアモンドを横取りするために、ヨーロッパで狩猟時の事故を装って父親を殺したのだという告白を聞いていた。その口止めのために、母親を自分の女にした非道な男の八代に復讐するのだと言う。協力するという眸。二人は、バイクで都内の街を走り、キスをする。
    八代と妙子は、片倉の運転する車で山道を走っている。浅間にある別荘に向かっているのだ。 3人の乗る車を、バイクの集団が追い抜いていく。その中に慎二郎と眸の姿を見つけて驚く八代と妙子。別荘に着くと、バイクの若者たちが庭を占拠している。あまりの騒がしさに、八代は、裏山続きの気象観測所に泊まらせて貰おうとするが、教授からは学生たちが多く物置しか空いていないと言われる。それでも騒がしい自分の別荘よりはいいと言って移る。しかし途中、別荘の防空壕に入り缶詰などの裏側にある隠し扉を開け、宝石箱を入れ替えている。
   夜になり、眸に促されて慎二郎は八代にナイフを向ける。八代は、母親の話を、有名な小説の話で、自分は、全財産を慎二郎に譲るつもりでいるのだと言い、慎二郎は説得され戻ってくる。小説の話かどうか、明日図書館に確かめにいくのだと言い出す慎二郎に呆れる眸。八代のもとに、殺し屋の秋ちゃんが現れる。八代の殺しを頼まれたが、あまりにギャラが安いので、情報を教えるので金をくれと言う。依頼人は妙子で、八代を怒らせて心臓発作を装って殺そうとしているのだと言うと、まさに妙子と片倉がやってくる。八代のベッドの陰に隠れる秋ちゃん。片倉に脅され貞操の危機にあると訴える妙子。真実を知っている八代は、妙子と片倉がどう話そうが、全く動じない。
   翌日、山を下りて図書館で、八代に担がれたことを知って怒る慎二郎。自分の言ったとおりだと言う眸。山に戻る二人。秋ちゃんは、八代が財産をどこかに隠していることを知って、穴を掘っている。そこから出てきたのは、旧日本軍の不発弾だ。しかし秋ちゃんはこれが八代の隠した宝石箱だと信じて疑わない。開けようと金槌で叩いていると暴発、秋ちゃんは爆死、近くにいた慎二郎も巻き添えを食う。重症で唸っている慎二郎の前で、八代、妙子、眸、片倉が言い争いをしている。妙子の女の武器も、真実を知っている八代には通じない。妙子と眸は、掴みあいの大ゲンカをする。その最中、慎二郎は死ぬ。お前に全財産を譲るつもりだったと言い、天国に持って行けと言って、気象観測用の気球に宝石箱をつけ放す八代。片倉と眸は、漂う気球を追いかけていく。別荘に残った妙子と八代。八代は、あの宝石箱は偽物だと言う。妙子は、別荘の猟銃を取り出し、八代に突き付け、本物の宝石箱を取り立たせる。蓋を開けると、手元のものは偽物だった。八代の勘違いで本物を飛ばしてしまったのだ。殺せるものなら殺してみろという八代に、引き金を引く妙子。弾は当たらなかったが、八代は心臓発作を起こして倒れる。
  いつのまにやら気球を追って浅間山の火口に、片倉と眸は来ている。そこに妙子が現れ、八代は死んだという。気球は火口の入口に止まっている。もう疲れたから三人で山分けしようと言う片倉に同意するふりをして、片倉を突き落とす眸。眸と妙子はつかみ合いになるが、縺れ合ったまま火口に落ちていく。強い風が吹いて再び、浮き上がる風船。火口に、立ち上がった片倉らしい姿が見えるが、硫黄煙にかすんでよく見えない。

  岡田茉莉子の悪女がキュートだなあ。丸く大きな瞳をくりくり動かす表情は、本当にかわいい。

   59年松竹大船澁谷實監督『霧ある情事(628)』
   大きな屋敷、葬式の準備中だ。かなり沢山の花輪が届いている。浴室に室岡専治(加東大介)の姿がある。背中一面に立派な刺青が入っている。女中が警察からの電話を受け、若旦那が留置場に泊められていて、誰か引き取りに来てくれないかと仰有っていますと伝える。室岡は、今日は家内はる子の告別式だから、行けないと言う。そこに、室岡の2号の池内園子(岡田茉莉子)からの電話が入る。室岡が今日は忙しいと言うと、御焼香上げるつもりで出て来たと園子は言う。亡妻の前ではっきりさせて欲しい。別れる覚悟も出来ている。親族や社員たちの手前もあり今日は来ないでくれと言ってから、では息子の引き取りに警察署に行ってくれと頼む室岡。
   淀橋警察署員(佐野浅夫)は、あなたが浩一くんの叔母さんだと言うから敢えて言うが、三島組の常務さんの息子で、何一つ不自由していないのに、度々問題を起こすのは家庭に問題があるからではないかと、説教された上に、浩一(三上真一郎)からは、「叔母さんと言うから誰かと思ったら、お園さんか…。」と言われる園子。「お葬式にちゃんと参列してね」と伝言し、浩一と別れる。
  池内と言う表札の金の掛かった日本家屋に帰る園子。室岡に住まわせて貰っているのだ。留守番を頼んでいた近くの女子大生倉まみ江(芳村真理)に、小遣いを渡していると、告別式の済んだ室岡がやってくる。室岡に別れたいと切り出すが、愛しているから別れないと言われてしまう。尚も言い張っていると、何の技術もない園子は、一度贅沢を覚えてしまった以上生活していけないだろうと言われてしまう。言い返すことも出来ず、泣き崩れる園子。去年の夏、園子が看護婦をしている病院に、人間ドックで入ってきた室岡は、園子を見初め、園子も看護婦の厳しい毎日が嫌になって、妾になったのだ。室岡は、元沖仲士だったが、土建屋として今の地位を築いたのだ。
  園子は、室岡の秘書の森野聰(津川雅彦)が風邪を引いて休んでいると聞いて、下宿を訪ねる。今月分の手当てを森野を通じて渡されるが、気がつくと封筒には富子と書いてある。室岡に新しい女が出来たのだ。富子って誰?と森野を問い詰めると、銀座のグロリアと言うバーの女らしい。
   園子は、実家である三浦半島の三崎に出掛ける。父親から話があると連絡があったからだが、あいにく行き違いで東京に行ったと小僧の梅次(神山繁)に言われる。その頃、会社の役員室で仕事をしていた室岡に森野が来客ですと告げる。誰だと尋ねると園子の父親で、酒の臭いがすると言う。いないと言えと言うと既に応接に通してしまっていた。室岡は、園子の父、池内吾平(菅井一郎)と会う。「社長さん、いつも娘の園子がお世話になっています。」「私は社長ではない。常務だ。園子から身寄りはないと聞いていたんだが。」「園子は、母親が亡くなって以来寄り付きませんで…。」「言いだしにくかったんだろう。そのことはまあいい。で、ご用は?」「実は、呑み屋で?という店が近くにありまして…。これが?の手拭いで…。こっちがマッチです…まあ、そこの女将から内容証明が送られて参りやして…。」「金が欲しいのか?」「まあ、早い話しが…。頂くと言うんではごさいやせん。お借りねがえねえかて言う訳で…。」「不肖、室岡専治、ゆすりたかりの類いに金は出さん!!これは汽車賃だ。帰ってくれ!!」と2、3枚の紙幣を投げ捨てる。室岡の剣幕に、すごすごと帰る吾平。
   森野がついてくる。会社のビルを出たところで、お昼を如何ですかと声を掛ける。蕎麦屋で吾平が、ビールを飲み、ご機嫌で話している。食べ終わったのを見て、自分の手のつけていない丼を吾平の前に押しやる森野。「お父さんはお困りなんですよね。よろしかった僕がお貸しします。」
   翌日、森野が園子の家を訪ねると、家の前にリヤカーが停めてあり、倉まみ江が玄関近くの部屋に荷物を運んでいた。「君は誰だ。」「居候させてもらうことになったまみ江よ。お姉さん?出掛けたわ。」

室岡浩一(三上真一郎)池内吾平(菅井一郎)倉まみ江トミ子(京塚昌子)梅次きん(桜むつ子)


  神保町シアターで、日本文芸散歩

  39年東宝東京並木鏡太郎監督『樋口一葉(629)』
   雨の中歩く女の足元、樋口一葉(山田五十鈴)は、半井桃水[なからいとうすい](高田稔)のもとに、桃水主宰の雑誌「武蔵野」の原稿を届けるところだった。桃水の門前で、女流同人の野々宮さく子(渋谷正子)が立っていて、桃水は留守だと言う。原稿だけ預けて来たら、待っているからと野々宮。頷いて、一葉は門をくぐる。桃水はいた。気の進まない客は、婆やに居留守を使わせると言って、一葉がやって来る時は、いつも雨なのでお待ちしていたと桃水。一葉の才能を誉め、もっと多くの人間に会うことが文学を深めることに繋がると、尾崎紅葉を紹介したいと言う。一葉は、士族であった父親を亡くしてから、母と妹の生活を背負っていた。桃水は生活費を貸してくれていた。いつまでも出て来ない桃水を探しに、野々宮が入って来る。親しげに話す二人の姿を目撃する野々宮。
   帰りに煙草の辰巳屋で母親のために煙草の葉を買い求める。辰巳屋の録之助(佐山亮)は、幼なじみのせき子(宮川照子)と想い合っていた。中島歌子(英百合子)の歌会で一緒になるので、手紙を預かる一葉。
    しかし、一葉が少し遅れて出席すると、中島が風邪で流会だと言う。寝付いていた中島は、一葉と桃水が夫婦同然だと言う噂が、自分の顔に泥を塗ったも同然だと非難し、一葉の弁解に耳を傾けようとしない。その時、せき子が父親に連れられ中島を訪ねて来た。同人の娘たちは、せき子が玉の輿に乗るらしいと噂をしている。桃水との悪質な噂に傷付いて帰宅する一葉。
  一葉が帰宅すると、妹のくに子(堤真佐子)が母親(水町庸子)に言われ質屋の伊勢屋に出かけるところだった。母は、許婚であった渋谷三郎が新潟の検事として出世をしたが、足許を見て多額の持参金を求めて来たので破談になったと言う。一葉は、許婚がいたという話は初めて聞いたので、どうでもいい。質屋に行くのであれば、亡父の残した掛軸があったと思うので、それも出してほしい、そのお金を元にして、商売を始めると言う。
  一葉は、荒物屋を始めた。荒物卸の田島屋に仕入れに出掛け、番頭(深見泰三)に、ちり紙と箒と履物を頼む。番頭は、店を開いた場所が下谷竜泉寺町と聞いて、吉原の近くで男冥利につきる場所だ、好き合った男と商売を始めるのですかと言うので、一葉は顔を曇らす。ふと見ると、自分の文章が載った文芸誌が置いてある。思わず手を取ると、番頭は、それはうちの若旦那の趣味だと言う。若旦那の石之助(北沢彪)がやってきて、興味があるなら上げようと言う。石之助は、帳場から売上金を借りるぞと言って、金を掴んで行く。止めようとした番頭と揉み合っている。

  樋口一葉の頃は、可憐だった山田五十鈴が、悪女の季節では、百戦錬磨の芸者上がりの手練手管。昭和14年から33年までの日本の変遷だ(笑)。冗談はさておき、樋口一葉は、改めてちゃんと読もうと思う。


   71年近代映協/松竹吉村公三郎監督『甘い秘密(630)』
   逗子に住む小説家稲村(小沢栄太郎)のもとに、小説家志望の松川葉子(佐藤友美)が、夫(入江洋佑)と、北海道からやってきた。梢葉子の名前で書いたかなりの分量の原稿「流れるままに」を読んで、小説家になれるか感想を聞かせて欲しいと言う。「大変な情熱ですね。どうも僕はこういう原稿をご紹介できる程顔が広くないんです。お預かりしてもいいんですが、暇な時にゆっくり読んでおく。」と答えると、二人は帰って行った。稲村の妻(丹阿弥谷津子)「綺麗な方ですのね」「北海道の奥さんらしい。牧場をやっているらしい。一緒にいたのが旦那だよ」と答える。
   稲村の家を出た葉子は、夫に、戻ってちゃんと意見を聞いて来てくれと言う。海岸で寝ている葉子の下に戻った夫は、「先生は誉めて下さったよ。」「ほんと?」「本当だよ。実感が出ていると言ってくれたよ。葉子、北海道に帰ろうよ。」「分かったわ。」
白樺の林をスーツケースを下げた葉子が歩いている。乗り込んだバスの行き先は、札幌ターミナルとなっている。
   稲村の書斎、「こんなもの預かってしまって困っているんだよ。君一つ読んでくれないか。ぶつけるような情熱はあるんだが…。」そこに家内が入って来る。「この間の、梢さんがお見えです。」「先生、先日は有難うございました。」「紹介しよう。こちらは雄文堂と言う出版社の専務で一色くん。こちらが話した梢葉子くん。北海道から来たの?御主人は?」「私離婚してきましたの・・・。」一色(伊丹十三)は、美しい葉子に興味を持ったようで、原稿を読みたいと言って預かると、葉子と一緒に、稲村の家を後にする。稲村と家内は、「どうやら、一色くんは、あの梢葉子に関心があるようだ。」「確か、一色さん奥様を亡くされたんでしたわね。」

  新藤兼人にしては珍しく、葉子が何故あそこまで小説家になって自活することに執着するのかなど書かれていない。吉村公三郎が関心なく、切り取ってしまったのかもしれない。しかしそんなことは関係ないほど、小悪魔佐藤友美は魅力的だ。男を虜にして破滅させていくが、そこに、葉子は自覚的である訳ではなく、自分の気持ちに忠実なだけである。ひょっとすると、葉子に翻弄される稲村の姿は、佐藤友美の虜になっている吉村公三郎なのかもしれない。

2009年11月4日水曜日

アカデミ8部門VSヴェネチア金獅子賞。

   学校は3コマの日。2コマ目の1年の講義には、特別講師として、ライブハウスeggmanの代表のNさん。私とのQ&A方式で1時間、学生からの質問で30分。初めてだと言う割に、なかなかいい話をしてくれる。来年結婚って羨ましいなあ。

   池袋新文芸坐で、
    ダニー・ボイル監督『スラムドッグ$ミリオネア(625)』

    世界中の人気番組「クイズ$ミリオネア」は、インドでも大人気だ。ボンベイのスラム街出身で、現在は電話会社のコールセンターでアシスタントオペレーターと言っても、仕事はお茶汲みをしているジャマール・マリクと言う18歳の青年が登場する。満足な教育も受けていないスラムドッグ(スラム街の野良犬)が、次々に正解を重ねていく。
    場面が変わり、ジャマールは警官に拷問を受けている。最後の一つ前まで正解したのはインチキだろう。客席に仲間がいたのか、体にマイクロチップを入れていたのか白状しろと、殴られ、水の入ったバケツに頭を入れられ、最後には電流を流される。警部が入ってきて、医者でも弁護士でも判らないのに、スラムドッグが正解出来る訳がないと、皆思っているのだ。しかし青年は答えを知っていたからだと答える。地下室から取り調べ室に身柄を移し、取り調べが始まった。ジャマールが出演しているビデオを流しながら、どうして答えを知っていたのかを尋ね始める警部。
    場面は再び変わり、飛行場で野球をしていて警官に追われ逃げまくる幼いジャマールと兄のサリームの姿がある。知り抜いたスラム街の抜け道を縦横無尽に走り続けたが、母親に捕まり、お仕置きをされ、学校に入れられる二人。そこでは「三銃士」が語られている。ある日、スラムにインドの大スターがやってきた。ジャマールはサリームにトイレに閉じ込められる。トイレは川沿いにあって、使いたい人間から幾ばくかのお金を取っているのだ。どうしても憧れの大スターに会いたいジャマールは、トイレの穴から飛び降りる。ウンコまみれになったジャマールが、大スターを取り囲む大人たちの人だかりに入っていく。大スターは黄金の仏像のようになったジャマールのプロマイドにサインをしてくれる。母親はジャマールを洗っている。その隙に、サリームは映画館の主人にサイン入りのプロマイドを売ってしまう。
 ある日、イスラム教徒が多いスラム街をヒンズー教徒が襲って来た。生きたまま火をつけ、殴り続ける恐ろしい人間たちに、母は撲殺される。サリームと逃げ惑う時に、青い姿のシヴァ神を何度も目撃するジャマール。やはり身寄りがなくなった女の子ラティカと三人で、ゴミを拾いながら暮らし始めた。
   しかしある日、ママと言う男たちにコーラを貰い、森の中にある沢山の子供がいる施設のような所に連れられて行かれる。何故か脚や眼などに障害がある子供たちばかりだが、食事を与えられ、歌を覚えて物乞いとして生きる術を教えられた。しかし、そこは、物乞いとして同情を買いやすいように目を潰し、脚を切断される、ギャングたちのしのぎのための恐ろしい場所だった。サリームは、ジャマールの目を潰すので連れて来いと命じられ、三人は逃げ出す。サリームとジャマールは何とか走る汽車に乗り込んだが、ラティカは間に合わず。ママたちに捕らえられた。ラティカのことを忘れられないジャマールだったが、鉄道の車内で、タジマハールの宮殿で白人の観光客相手の贋ガイドをしたり、盗みをしたり逞しく生き抜いた。
   しかしラティカを忘れられないジャマールはサリームを無理矢理引っ張ってボンベイに戻ってくる。ある日、クリシナ神に捧げる歌を歌って物乞いをしている盲目の少年に会う。ママのアジトで一緒だった彼と再会を喜ぶ。ママのアジトに近づくなと忠告し、ラティカは今ピーチと呼ばれて歓楽街で働いていると教えてくれた。ジャマールは、観光客から貰った虎の子のアメリカの 100$札を渡す。匂いを嗅ぎ、ドル札だなとい言われ、100$だと言うと、そんな大金!?誰の絵が描いてある?と尋ねられ、特徴を答えると、それはベンジャミン・フランクリンだと言う。ママたちギャンクに失明させられた少年も必死に生きる術を身に付けているのだ。
   ジャマールとサリームは、教えられた歓楽街で、売春宿を一軒一軒覗いてラティカの姿を求め、ピーチを尋ね歩く。最後に、踊りを教えられているラティカを見つける。部屋に入り、一緒に逃げようと言う。しかし、そこにママたちが現れる。彼は、美しいラティカの処女は高く売れるのだ。俺の宝物を盗もうという奴は許さないと言った。突然サリームがリボルバーを出し、ギャングたちに突き付け座れと言った。ママは、財布を出し今回は特別にお前らのことを忘れてやると言ったが、サリームは、ママは絶対に忘れないだろと言って射殺する。金を持ち、ジャマールとラティカを連れ逃走するサリーム。高級ホテルにチェックインし、ルームサービスの酒を飲みまくるサリーム。ラティカはシャワーを浴びている。ジャマールとラティカは再会を喜ぶ。ずっと忘れた事はなかった。僕たちは運命なんだとラティカに言うジャマール。
   サリームはホテルを抜け出し、ママに対抗するギャングのボスに会いに行く。ママを殺してきたと言うと、ボスは敵の敵は味方だ、お前のような奴を探していたんだと言って、子分にしてくれた。ホテルに戻ってきたサリームは変わっていた。ラティカを自分のものにしようと、ジャマールをリボルバーを突き付け部屋から叩きだした。
   ボンベイはムンバイとなった。ジャマールは、通信会社のコールセンターでお茶を配っている。ある日、「クイズ$ミリオネア」を見たいオペレーターが、少しの間変わってくれと言う。イギリスからの問い合わせにうまく答えら得ず切られてしまうが、ふと思い立って、ラティカを検索してみると、何万人もの名前と電話番号がヒットした。しかし、サリーム・マリクと打込むと15名だった。電話をし始めた。何人目かで聞き覚えのある声がする。お得な通信プランのお勧めですと話し始めると、サリームはジャマールか?お前は生きていたのか?と話し掛けてきた。
   翌日、高層ビルの建設現場で兄弟は再会する。ジャマールは一瞬、このままサリームと飛び降り自殺をしようかと頭によぎるが、一発殴った。ホテルにママの部下たちがやって来たので逃げたんだ。伝言を残したが、連絡が来なかったんというサリームに、ジャマールは嘘だ、恨んでいるといった。しかし、兄弟は、かって自分が住んでいたスラム街に建とうとしている高層ビルから下を見ている。今や、ムンバイは世界の中心だ。そしてムンバイを仕切るボスの子分なのだ。これから一緒に暮そうと言うサリーム。ラティカはどうしたんだと聞くと、随分前に別れて今は知らないと答えるサリーム。

   2度目でも、やはり人生のドラマに心が動く。ただ、スタイリッシュな映像的カッコよさは、どうかな・・・。刺激が薄れて、何だか弛緩した印象が残る。


    ダーレン・アロノフスキー監督『レスラー(626)』
    ランディ“ザ・ラム”ロビンソン(ミッキー・ローク)は、80年代に全米で絶大なる人気を誇ったプロレスラーだ。かっては、マジソン・スクエア・ガーデンを満杯にした彼も、ニュージャージー周辺のドサ廻り。入りが悪ければギャラも微々たる金額で、借りているトレーラーハウスの家賃を滞納し、管理人に締め出される始末だ。食うためには、近くのスーパーマーケットでアルバイトをしている。

  ダーレン・アロノフスキー?と思ったら「π」「レクイエム・フォー・ドリーム」か…。ダニー・ボイルと一緒で、登場のインパクトが強くて、こまめに洋画をチェックしない自分には、一発屋感が強かった。どうも予告編が、自分の琴線に触れなかったので未見だった。いいと聞いていたが、やっぱりいいなあ。駄目で、馬鹿な男は、死ななきゃ治らない。格好悪いって何て格好いいだろう。

2009年11月3日火曜日

ハイキング

  同居人と、奥多摩へ。奥多摩駅から、奥多摩むかしみちという4時間のハイキングコースを登りバスで降りてきて、もえぎの湯と言う日帰り温泉。いやー緩々な一日だ。もえぎでビール。西荻に戻って、モツ鍋屋でビール。

2009年11月2日月曜日

やっぱり梶芽衣子。

    実家経由で、日野市役所の出張所に廻り、午後二まで、事務手続き。苦手だ。

  こうした時にはやはり、池袋新文芸坐で、映画夫婦渡世 中原早苗&深作欣二

    73年東映京都深作欣二監督『仁義なき戦い 広島死闘編(623)』

   やっぱり、個人的には、この2作目が好きだな。梶芽衣子の切ない咽び泣き。やはり、男ばかりの切った張った、裏切られたばかりの話の仁義ワールドの中では、情が勝っている異色作だとは思うのだが。どうも、男ばかりよりも、女子がいないと・・・。

   73年東映京都深作欣二監督『仁義なき戦い 代理戦争(624)』

    
   殺伐とした気分を昇華させるか、更に荒んだものにするかは微妙だが(笑)。まあ、やっぱり仁義のシリーズは、男の馬鹿で駄目な性(さが)を、これでもかこれでもかと爆け出して、マゾヒスティックに傷口に練り込むものだと思う。

2009年11月1日日曜日

仁義なき太宰治。

   久し振りの実家での朝。昨日喋り続けたせいか、声が枯れている(苦笑)。
   母親はフォークダンスの発表会があると言って、サウンドオブミュージックの民族衣装のような可愛い刺繍の入ったブラウスを来て、朝早く出掛けて行った。今月末に論文集を出版すると張り切っている父親が、小金井まで出ると言うので、昼頃、2人で豊田駅から中央線特別快速に乗る。

     池袋新文芸坐で、映画夫婦渡世 中原早苗&深作欣二

     澤井信一郎監督、深作建太監督山根貞夫氏のトークショー。自分の聞き間違えでなければ、澤井監督の、最近の映画は構図を決めて、その中で役者が演技するようで、映画的というより演劇的だといった言葉が、物凄く腑に落ちた。

   73年東映京都深作欣二監督『仁義なき戦い(620)』


    学生時代に見たフィルムはどれもこれもかなり傷だらけだったので、何だか不思議な気がするくらいいい状態のプリントで、雰囲気が出ない(笑)。が、改めて見て、やっぱりそれまでのやくざ映画とは全く趣のことなり、凄惨な暴力と権力欲を、殺伐と、畳み掛けるように描いて行く実録路線は、やはり衝撃的だったと思う。ある意味、日本版アメリカンニューシネマ(笑)はここにある。救いのなさ、削ぎ落とされた情感、60年代後半の学生紛争の高揚感と、敗北感に打ちひしがれた70年代初頭の気分は、東映やくざ映画を変えたのだろうか。

   64年東映東京深作欣二監督『狼と豚と人間(621)』
   黒く汚い海に面した街がある。そこは、人間が住むようなところではなく、掃き溜めで、ブタ小屋のようなところだ。黒木市郎(三國連太郎)次郎(高倉健)三郎(北小路欣也)の三人兄弟は父親を早くに亡くした。しかし10年前に市郎が、5年前に次朗が、僅かばかりの米代を盗んで逃げ出し、三郎が母親(近衛秀子)の面倒を最後まで見た。次朗は、相棒の水原(江原真二郎)と組んで這い上がるために何でもやったが、結局街を仕切る岩崎組に潰されて、刑務所に入っていた。三兄弟の母親が亡くなり、位牌と遺体を三郎と仲間たちは3輪トラックに載せ火葬場に向かう。そこに三日前出所した次郎がやってくる。出所後直ぐに来れば死に目に会えたかもしれねえなと言う次郎を冷たい目で睨んでトラックを出させる三郎。
     開店祝いの花が並ぶクラブ・フェニックスの前に車が止まり、後部座席から市郎が降りてくる。支配人、社長がお見えですといわれ、社長の岩崎(沢彰謙)たちの前に立つ市郎。「なかなかいい店だ。お前にこんなセンスがあるとは思わなかったぜ」と岩崎は誉めるが、2日前に次朗が出所してきたことは知っているかと言われ、緊張した表情の市郎。お前の弟たちを目の届く場所で落ち着いていらせるか、金を出して旅に出すか、それがお前が今のお前の地位を守る唯一の方法だと言う岩崎。そこに、三郎が遺骨を持ってやってくる。なんだ嫌がらせかと言う市郎に、お袋の骨だと答える三郎。おまえ何で知らせなかったと言われ、生きていた時に捨てたくせに、死んでから会いに来るのはおかしいだろと言う。市朗は、言葉を失うが、金を取り出し、どこかの寺に預かってもらえと言う。
    海へ母親の遺骨を投げ捨てる三郎と仲間の姿がある。タケシ(岡崎次朗)アキラ(泗水誠一)イサオ(越前谷政二)ヒロシ(石橋蓮司)マコ(志麻ひろ子)は皆この街で育ったのだ。流れていく遺骨の白い箱を見ながら、よく2年間寝たきりの母親の面倒をみたなとサブを褒め、この街を出て、自由になりたいと口々に言う。
   その頃、次郎は、金持ちの爺さんの妾の女、杏子(中原早苗)のマンションにいた。次郎は杏子のヒモだ。海を見ながら、あの向こうにある国に脱出して自由になりたいと言う。そして、明後日2000万を手に入れる算段がある。その金を持って一緒に海外に行こうと誘い、杏子も、その賭けに乗ることにした。


西村(春日俊二)野田(菅沼正)木村(室田日出男)鞄を持った男(八名信夫)

   テアトル新宿で、冨永昌敬監督『パンドラの匣(622)』

  1945年、井戸端の桶に顔を付けている小柴利助(染谷将太)。利助の母親(洞口依子)が、「あらあら、利助何をしているの・・・?」てな調子で声を掛ける。利助は身体が弱く。太平洋戦争中の子供としては、圧倒的なコンプレックスを抱いていた。そんな役にたたない自分の身体を苛めるように、田畑を耕し、芋や南瓜を育てようとしていた。時々喀血をしていたが、家族には内緒にし、密かに倒れて死んでしまえばいいと思っていたのだ。
  しかし、その年の8月15日、ラジオからは玉音放送が流れた。何だか拍子抜けをした利助は、喀血する。母を呼ぶが、天皇陛下がお話になっているのです、後にしなさいと窘める母。「僕が吐血したのです。」と言うと、ようやく母親は「まあ。」と答える。
  山奥に久坂健康道場がある。そこは、結核患者の療養施設だった。利助は入場し、「ひばり」というあだ名をもらう。その日は、回復した西脇つくし(窪塚洋介)が退院する日だった。「頑張れよ。」「よしきた。」「やっとるか?」「やっとるで。」というやりとりと、患者、職員をあだ名で呼ぶこと、そして独自の治療法が施されていた。助手のマァ坊こと三浦正子(仲里依紗)は、涙を浮かべている。つくしが向かうバス停に向かって走るバスに、気だるそうに眠っている女(川上未映子)の姿がある。「次は、久坂療養所前」と、バスガールが言う。
  つくしは、バス停までの道で、女と擦れ違う。美しい女に振り返るつくし。患者たちと職員に、新しい組長として、大阪にある鶴島健康道場からやってきたと竹中静子としてバスの女が紹介される。男たちは、竹やんと呼ばれることになった関西弁の女に関心を持つ。ひばりは、桜の間で同室で年配の越後獅子(小田豊)や、かっぽれ(杉山彦々)、冷奴らが批評しているのには加わらない。つくしを恋しがるマァ坊に言われ、手紙を書く。新しく来た竹やんという組長は大きくて堂々としている年増女で、特別美人ではないとか、日常の出来事を書き綴るひばり。

   太宰治生誕百年映画化2本目。予告編で流れた、妙に大作アピールをする「人間失格」は非常に心配だ(笑)。映画ファーストデイのせいか、お客さんは結構入っている。自画自賛が過ぎるパンフレットは辟易だが、映画自体は悪くない。監督、製作、撮影など皆若いのに、昭和の時代を出すのに頑張っている。一言文句をいえば、廃校になっている学校を使うにあたって、もう少し、丁寧に掃除をして、古いけど清潔な感じを出していると満点だった気がする。不安なような安心なような菊地成孔の音楽がいい。川上未映子と仲里依紗、KIKI、洞口依子と女優が好みの芯を食っているのが一番かもしれない。川上未映子が、何故かボブのカツラを一度脱いでまた被るのがいいなあ。