2009年4月11日土曜日

映画は映画だ。そりゃ、そうだ・・・。

   何だか昨日調子に乗って飲み過ぎ、二日酔いというわけではないが、結局、惰眠と読書。
 
   独身美人OLと、偽装夫婦50歳割引きで、新宿のシネマスクエアとうきゅう。
     チャン・フン監督『映画は映画だ(239)』
    一人の男が映画館にいる。スクリーンでは、スタ(カン・ジファン)が出演するアクション映画が上映されている。男が、映画館を出てくると、子分たちが車の前で待っている。男は、ヤクザのガンペ(ソ・ジソブ)。ビルの建築現場で、現場監督を絞め上げる。海に船を出し、頭から麻袋をかぶせ、胸ポケットに、あの世への旅費を押し込んで沈めてしまう。
  病院から、スタが出てくる。マスコミが取り囲む。共演者を怪我させ入院させてしまったのだ。マネージャーの先輩に、お前はやり過ぎだと怒られるが、全く聞く耳を持たない。先輩の尽力で何とか代役は見つかったのだが・・・。
  ガンペと子分達が、高級クラブにやってくる。美人とすれ違う。見たことあるなというガンペに、子分の一人が女優ですよと言う。個室で飲み始める。スタやさっきの女優のカン・ミナ(ホン・スヒョン)達が呑んでますよ、兄貴に挨拶させに連れて来ましょうかと言う子分。じゃあ、サインを貰ってきてくれとガンペ。しかし、スタは、本人に来させろと言う。結局、ガンペがスタたちの部屋におもむく。尊大なスタの態度に腹を立てた子分を叩きのめすガンペ。
   代役も決まり、撮影は再開されたが、アクションシーンでのリアリティのなさにボン監督(コ・チャンソク)は納得がいかないようだ。相手役のパンチが数発スタに決まってしまう。腹を立てたスタも、本気で手を出す。しかし、倒れ込んだ相手役の上に、スクラップが落ちてきて大怪我をさせてしまう。再び、病院に見舞いに行くスタ。病院を出てきたスタを取り囲むのはマスコミだけでなく、相手役のファンたちだ。ファンたちは、スタに卵や小麦粉を投げつけ抗議する。更に、スタの車は、ボロボロに汚されてしまう。
   追い込まれたスタは、恋人のウンソン(チャン・ヒジン)を呼び出す。しかし、人目を避け、人けのない河原に止めた車の中で、身体だけを求めるスタに、ウンソンは傷つき、自分は売春婦ではないと言って去る。不遜で、乱暴者のスタと共演する役者はいない。このままでは、映画自体が無くなってしまう。万策尽きたスタは、ヤクザのカンペのことを思い出す。スタの付き人に子分が怪我をさせたので、治療代だと言って渡された小切手の裏側にガンペの携帯番号が書いてある。ビルの屋上に、ガンペを呼び出すスタ。本気でやるならいいと話を受けるガンペ。
   ガンペは、拘置所にいる組織のペク会長(ソン・ヨンテ)の面会に行く。カンペはそこで、囲碁をやりながら、いろいろな指示を受ける。この裁判次第では、娑婆に出て来れない可能性もある会長は、部下の誰も信じていない。タン社長の動きを探らせる意味でも、自分が育てたガンペを使っている。しかし、100%信頼している訳では勿論ない。ガンペは面会した後に、タン社長のもとに行く。タンは、信じている宗教はあるかと言う。ないと答えるガンペに、沢山ある仏像のひとつを持って行って信心しろと言う。
   映画の撮影が始まった。スタをガンペを挑発するばかりだ。慣れない撮影現場に、自分を抑えながら黙々と監督の指示に従うガンペに、子分達は釈然としないものを感じている。主演女優のカンは、スタとは、お互いの無名時代に交際していた。この映画の中でも、スタとガンペの間で揺れ動く女性を演じているカンは、虚無的で哀しみを湛えているようなガンペの眼差しに徐々に心を惹かれていく。撮影現場でも、修羅場をくぐってきたガンペの存在感は、リアリティを追求する監督やスタッフたちを魅了する。ガンペも、別の人間を演じることで、その眼差しには人間的な温かみを取り戻していく。
  スタと、ウンソンが車の中でSEXをしている光景が隠し撮りされ、そのビデオで脅迫された。このビデオが世の中に巻かれれば、俳優生命には致命的だ。スタには、金を用意できず、ガンペに頼む。ガンペは、会長の金を貸す。恐喝グループは、ガンペたちが捕まえ、袋叩きにする。
  タン社長が、会長を裏切っていたことが判明する。拘置所で、消せと命じられ、タンの部下たちを倒し、拉致して、海で殺そうとする。しかし、最後のところで、ガンペは、「お前は遠くに消えて、死んだ人間として生きろ。」と映画の台詞を言って、タンの命を救う。壊れた眼鏡を殺した証拠として、拘置所に持っていくガンペ。しかし、そのことは、会長への裏切りを意味する。
  ある日、タンは、再び街に戻っていることが分る。タンを消さなければ、自分と子分達は殺されるしかない。ガンペは、映画から降りると言って、スタ、カン、監督の前から姿を消す。タン社長を待ち伏せしたが、相手の方が一枚上手だった。逆にやられるガンペ。しかし、タン社長は、ガンペを殺さなかった。
  映画会社のCEO室で、スタと監督は、映画製作をやめることまで追い込まれていた。そこに、傷だらけの酷い顔で、ガンペがやってくる。スタは切れかかるが、撮影は再開する。
   
   
   キム・ギドクが監督しなかったことで、非常にバランスのいいエンターテイメント作品になったと思う。時々、甘ったるいセンチメンタリズムが鼻につくが、これはこれでいいのだろう。スタというスターと、ガンペ(ヤクザ)という名のやくざ、「宿命」など、最近の多くの韓国映画が失敗している男と男の物語。なかなかだなあ。
  
   独身美人OLと、ベトナム料理。辛さというよりは、甘酢系の味付けはいいなあ。ここ数日、ちょっと気になっていたことを確認して、少し落ち込む(苦笑)。

2009年4月10日金曜日

仲代達矢、田宮二郎、関西の医者は濃いなあ。

    シネマヴェーラ渋谷で、昭和文豪愛欲大決戦!
    59年大映市川崑監督『(236)』。
    京都、古美術の鑑定では名高い元大学教授の剣持(中村鴈治郎)が、大学病院を訪ねている。相馬教授(浜村純)が会議のため、インターンの木村(仲代達矢)に診察を受けている。血圧が高い以外、特別どこが悪いと言うことはないが、初老を迎え、妻郁子(京マチ子)と夜を共に出来ないことを気にしていた。剣持は、今夜家に来ないかと、木村を誘った。剣持は娘の紀子としこ(叶順子)と木村の結婚を望んでいる。木村は、長崎の実家から唐墨が送ってきたので、お持ちしようと思っていたと訪問を約束した。その暫く後、相馬のもとに郁子がやってきて、娘の紀子から、夫がこちらに通っているらしいと聞いたのだが、夫はどこか悪いのかと尋ねている。相馬は昨年の9月から剣持が来ている。特にどこがということはないが、最近のご主人の性欲はいかがですか。旧家で厳しく育てられた郁子は、赤面し、自分が来たことは、剣持には内緒にしておいて欲しいと頭を下げた。木村は剣持に誘われ、唐墨を持ってお訪ねしますと告げた。更に、剣持の娘の紀子が大学を訪ねてくる。紀子は誘っていた昨夜の演奏会に木村が現れなかったことを言い、無駄になったチケットを木村に渡す。木村はまた、大阪のあそこに行きましょうと話し、今晩唐墨を持って家を訪問することを紀子にも伝えた。
     剣持が帰宅する。家の中に声を掛けるが、何の返事もない。誰もいてへんのかと独りごちて、テレビをつけると体操をやっている。合わせて身体を動かし始めるが、滑ってひっくり返った所に、通いの婆やのハナ(北林谷栄)が戻ってきた。どこ行っていたんやと尋ねると、隣家に塩を借りに行っていたと言う。昨日も小麦粉が無くて借りたのだとハナ。郁子に今朝渡したんだがと剣持。郁子が帰宅する。どこ行ってたんやと尋ねると、錦小路に行っていたと答える郁子。剣持と郁子の話は、すれ違いがちで、当てこすりのようなやり取りだ。娘の紀子が帰宅する。紀子とも、会話が成立しない。寒々とした家庭である。
    その晩遅く、木村がやってくる。誰も、昼間木村と会ったことを会話に出さない。木村が持ってきた唐墨を肴に、ブランデーを呑む。酒を飲まない紀子は二階の自室に上がってしまう。一旦、剣持が、席を外して戻ると、郁子と木村が楽しそうに笑っている。唐墨が、魚の干したものだと郁子は勘違いしていたのだ。剣持は、郁子に酒をどんどん飲ませる。フラフラと部屋を出て行く郁子。大分酔っているようだけど、大丈夫ですかと木村が尋ねても、剣持は、あいつは酔っ払うと厠に引きこもるんやと平然としている。しかし、あまりに戻ってこない郁子を心配した木村が家内を声を掛けて回っても返事はない。二階から紀子が降りてきたので、奥さんがいなくなったのですと伝え、二人で捜す。すると、紀子は浴槽の中で気を失っている郁子を発見する。剣持は、慌てて浴槽から引き上げる。身体を拭き、寝室に運ぶのを手伝えと木村に言う剣持。バスタオルを掛けていても目のやり場に困る木村。

    ユーロスペースで、岩淵弘樹監督『遭難フリーター(237)』
  実際に、キャノンの工場に、製造業派遣として働く岩淵弘樹(23才)が、自分の毎日を切り取って作ったドキュメンタリー。

    神保町シアターで、浪花の映画の物語
    66年大映東京山本薩夫監督『白い巨塔(238)』
    浪花大学医学部付属病院第1外科助教授の財前五郎(田宮二郎)が手術室に入ってくる。手際良く開腹し、胃の噴門部を切除し、縫い合わせていく。手術は成功し、時計を見る財前。?分か、新記録だなと誇らしげに言う。手術室を出て病院の中庭で一服する財前。その姿を教授室から見下ろし、職員に財前くんを呼んでくれと言って、財前の記事が載っているサンデー毎日を手に葉巻をくゆらす。第1外科の教授の東(東野英治郎)である。財前が教授室にやってくると、サンデー毎日の記事を差して、この取材の話は聞いていないがと言う。手術室にカメラを入れるのであれば、第1外科部長の私に事前に言ってくれたまえと東。君の独断はとかく学内で非難する人も多い。来年の3月には、私も退官する。後任の教授として、君を推薦しずらくなると言う。決してそんなつもりはと言いながら不満そうな財前。
     病院を出て財前は、大阪中央郵便局に向かう。岡山にいる母親に宛て、現金書留に金と手紙を入れている財前。学校の教師をしていた父を早くに亡くし、母親は女手ひとつで、五郎を育て上げた。その期待に応え、よく勉強をした五郎は、奨学金と村の篤志家の援助で、旧帝大の浪花大学の医学部に入学、その優秀さに目を付けた、浪花大学OBで、産婦人科を開業する財前又一(石山健二郎)の目に止まり、娘の杏子(長谷川待子)と結婚し婿養子となる。

2009年4月9日木曜日

入学式で卒業

   午前中は、4月から非常勤講師を務めることになった専門学校の入学式で九段会館。ある意味、自分にとっては、一年間のモラトリアム期間からの卒業と言うことだ。とは言え、講義は、5月1日からなので、まだ映画三昧の生活は、もう少しモラトリアムなのだ。5月分の講師料が振り込まれる6月の下旬まで、無収入は続くよどこまでも(苦笑)
     代々木の校舎に移動し、講師会。当たり前だが、色々と心得あるんだなあ。水道橋の再就職支援会社で、支援終了手続き。紀尾井町の映画会社に立ち上げプロジェクトのプレゼン。
   朝からネクタイ・スーツ・革靴。卒業祝いに飲もうかと思っていたが、疲労困憊。西荻まで、帰り、博華で餃子にビール。久しぶりに映画館に寄らない1日。徐々に、社会復帰のリハビリも必要と言うことで。

2009年4月8日水曜日

私は泣いています。ベッドの上で。

    池袋新文芸坐で、熊坂出監督『パークアンドラブホテル(234)』
    白く髪の色を抜いた少女(梶原ひかり)が灰色の空を見上げている。大きなバックパックを背負い、首から下げたポラロイドカメラで、街を撮りながら歩いている。メモを見て、たどり着いた先は一戸のありふれた建て売り住宅だ。二階のテラスで主婦が洗濯物を干している。娘に布団を干しなさいと声を掛ける。その風景を眺めていた少女は、また街へ戻っていく。ラブホテルが並ぶ一角を少女が歩いていると、後ろから小学生の女の子たちか、少女の白い髪を面白そうに見ながら付いて来る。一軒の古いラブホテル“流水”に、三人連れの老人や、小学生の男児たちが「こんにちは」と声を掛けて入っていく。少女の後ろを歩いていた女児たちもそうだ。不思議に思いながら少女も付いて入ってみる。女児から「おばさん」と声を掛けられ、これでも13歳だからと答えると、「やっぱおばさんじゃん」と言われてしまう。男児が名前はと尋ねるが、人に名前を聞くときは、自分が先に名乗るものでしょと言って、美香だと答える少女。
    ラブホテルの屋上は、公園だった。滑り台、シーソー、ブランコ、ベンチには、ストリートミュージシャンや、老人や子供、なかなか賑やかだが、ゆったりとした時間が流れている。夕方になると女主人(リリィ)が、もう終わりだと声を掛ける。髪の白い子は?尋ねると男児たちは、美香は、もう帰ったんじゃないかと言う。誰もいなくなった屋上公園を片付け始める女主人。小さな小屋の中に美香はいた。今日1日撮ったポラロイドにメモを書こうとして鉛筆を出し芯を削ろうとカッターを出したところで、ドアが開き、女主人が入ってくる。思わずカッターを取り上げようとする女主人。何か勘違いしてると思うんですけど、と美香。勘違いも何も、ここを片付けるのは私だから迷惑だと言う。女主人は、手首を切ると思ったらしい。カッターを奪うと、ご飯食べる?と尋ねる。私は何も食べなくてもいいと答える美香。
   美香と女主人は食卓を囲んでいる。おばあさんのご飯はおいしいと言う美香。何度もおばあさんはと言うので、女主人は私は59歳だからおばあさんではないと言う。だったらおばあさんじゃないと言う美香。美香の入浴中に荷物を改める女主人。沢山のポラロイドが入っている。東京の街、人々、特に老婆たちを撮ったスナップが多い。風呂から上がった美香は、女主人の入浴中に、室内を見回す。若い自分の女主人が夫らしき男とこのホテルの前で撮影した写真がフォトスタンドに入れられている。二人で、布団を敷く。赤い方で寝ていい?と美香。電気を消したが、美香は女主人に話し掛ける。
    翌朝、女主人が目覚めると、美香はいない。布団はきちんと畳まれており、礼と自殺しようとしていた訳ではないと、整った字で書かれた手紙が残っている。女主人は、日課であるホテルの前の通りをしている。ウォーキングしている女が朝の挨拶をして通り過ぎる。美香が昨日訪れた建て売り住宅、主人らしい男が狭い庭にいる。外から家の中にいる妻子の写真を一枚撮る。携帯に出ると、美香だ。男は美香の父親らしい。独りで温泉に出掛けていることになっているらしい。何かあったら、必ず連絡しろと言っている。電話を切り、車で仕事に向かう父親。実は、すぐ近くに美香はいて、父親を見ながら電話をしていたのだ。
    美香はホテル流水に戻ってくる。女主人は、美香に布を巻き、髪を黒く染め始める。父親の家に行ってみたら、奥さんも子供もとてもいい雰囲気だったと、涙を流す美香。黒い髪になった美香が、元気に手を振る。ホテル流水の前で美香を見送りながら笑顔の女主人。手には、美香から貰ったポラロイド写真の束がある。最初の一枚は美香と撮ったツーショットだ。
    ひとりの主婦(ちはる)が料理をしている。食卓には、ラップを掛けられた一人分の食事がある。女はノートに数字を書き込んでいる。深夜1時半頃、女が寝室で眠っている。夫が女の隣に潜り込む。翌朝、女はいつものようにウォーキングを始める。ホテル流水の前で、掃除をしている女主人に挨拶をしてラブホテル街を歩いていると、男に呼び止められる。お金を払うので、携帯を貸してくれと言うのだ。携帯を貸し、再び歩き始める。信号待ちしていると、自転車に乗った男に何度も呼ばれる。なかなか気付かない主婦。ウエストポーチが開いていますよと言われ、見ると慌てる女。ノートを落としたのだ。慌てて、今来た道を引き返し、パトロール中の巡査にも探してくれと言う。途中、夫から電話がある。申し訳ないが、落し物をして今から交番に行くので、朝食は出勤途中にしてくれと頼む主婦。
   とぼとぼと帰宅する途中、ホテル流水の前を通りかかると、女主人が午前の営業が終了、午後は2時からという札を下げているところだ。おやと目を止める女主人。女主人は玉城艶子と、主婦は沢村月と名乗り合った。老人たちがホテルの中に入っていく、艶子は、良かったら寄って行きませんかと、戸惑う月を屋上の公園に連れていく。月は「いいですね、ここ」と固かった表情を始めて心の底から緩めて笑顔になった。私は、今までの歩いていた歩数を毎日記録していたのだと言う。16年前、この街に引っ越してきた時に、このホテルの工事をしていたのを拝見したんです、と月。このホテルは実は夫が建てたもので、20年前に夫が失踪、16年前は改装の工事をしていたのだと艶子。手伝ってはいたけど、経営とか分からず大変だった。困ったことがあるたびに夫ならどうしただろうと考えてやってきた。いなくなってからのほうが、夫と会話していたかもしれませんと言った。
   今夜も夫が帰宅するのは、深夜1時27分だ。翌朝も、月はウォーキングで、ホテル流水の前を通りかかる。艶子に挨拶をして、歩き始めるが、立ち止まり戻ってくる。「ここで働かせて下さい。給料とかはいりません」「けっこうきついわよ」「ありがとうございます。直ぐに着替えて来ます」。家へと走っていく月。
   

     横浜聡子監督『ジャーマン+雨(235)』
      まき(藤岡涼音)のもとに、友達が走ってきて、よし子が戻ってきたという。ドイツ人のイケメン植木職人カイ(ペーター・ハイマン)に手を振る女子で鈴なりの窓から見ると、林よし子(野嵜好美)が昔と変わらない姿で、植木職人の助手をしている。よし子は、歌手を目指して東京に出たが、戻ってきた。まきがどうして戻って来たのかと聞くと、かっこいいドイツ人がいると聞いたからと答えるよし子。

    銀座で、友人のNさんから仕事の話。Nさんの人脈というか、面白い人間と知り合う才能は凄いと思う。好奇心と行動力の人だな。
   
    夜は、高校時代の友人が幹事をしている。異業種勉強会に出席。電子マネー・ポイント・エコマネーなどについての話。今立ち上げを手伝っているプロジェクトに関係もあって、とても面白い。もう一度、経済勉強してみよう。

2009年4月7日火曜日

松竹映画三千本記念作品

    阿佐ヶ谷ラピュタで、昭和の銀幕に輝くヒロイン【第46弾】嵯峨三智子
    59年松竹京都大曽根辰保監督『修羅桜(231)』
    夜更けの神奈川宿、10名ほどの覆面姿の侍が、ある宿屋に向かっている。勘定奉行配下の岸波半兵衛(河野秋武)の嫡男岸波叉四郎(森美樹)が眠っていると、女が部屋に逃げ込んできて、追われているので匿ってくれと言って布団に潜り込んだ。目明し蝮の吉蔵(永田光男)が襖を入ってきて、女泥棒が逃げ込んできたので、引き渡せろ言う。無礼者、布団の中の妻は怯えているではないか、これ以上の狼藉は斬ると脅して吉蔵を帰らせる。礼を言う女泥棒、千里のお虎(嵯峨三智子)に、今度は私の番だというなり、覆面姿の侍たちが抜刀して部屋に押し入ってきた。お虎は、火を吹き消し、二人で旅籠を逃げだした。東海道を江戸へ、道行きとなる二人。to be continued.

伊織(松本錦四郎)おむら(夏川静江)孔雀屋長兵衛(高田浩吉)おつま(山田五十鈴)大野備前守(高橋貞二)斎藤弥九郎(石黒達也)雪乃(富士真奈美)雲切十兵衛(伴淳三郎)
(近衛十四郎)(桑野みゆき)

本郷の映画会社に立ち上げプロジェクトのプレゼンに。会社のHPのアクセスに上がっている地図を見て行ったら、全く方角を間違えて、5分のところ、30分近くグルグルと。久方振りに、方向音痴を露呈。

    神保町シアターで、浪花の映画の物語
    66年松竹大船前田陽一監督『スチャラカ社員(232)』
    大阪某所の上原ビルに、長門勇、ダイマルラケット、ルーキー新一が、出勤してくる。満員のエレベーターも10階までに、4人以外の社員は降りてしまう。彼らは、このビルの屋上を間借りしている都田物産の社員だ。屋上にある木造平屋の事務所に入ると、今日も返品の山だ。段ボール23箱、やっと中に入ると女事務員の恵美ちゃん(新藤恵美)が、社長さんが来て、返品の山を見て落ち込んでいると言う。営業部長の長門が社長室に入ると都田社長(ミヤコ蝶々)が溜め息をついていた。いつも金策に走り回って会社を空けているが、いよいよ決断したと言う。屋上に社員を集めて、社員には申し訳ないけれど、万策つきて会社を畳むと言う。返品の鍋釜を退職金代わりに持って行ってくれと頭を下げる。
   長門は、そんなことを言わず、もう一度だけ頑張りましょうと言う。この社員たちは、よその会社に行っても使い物にならないので、死ぬしかない。死ぬ気で頑張れば何とかなるかもしれないと土下座をする長門。では、もう一回だけ、全国金策に廻ろうと言うのだった。早速、返品された按摩器を売りに行く社員たち。ダイマルラケットは、ある店に行き、按摩器の良さを挙げて別名按摩要らずだと言うが、按摩屋だった。逆に按摩たちに揉みまくられる二人。新一は、街頭でアピールしようと、電柱から電気を盗み、按摩器に座ってみせる。通行人の反応は悪くなかったが、電気を盗んでいた電柱の上には、電気工事の工員が登っていた。長門は床屋に行き、客と主人に試しに座らせる。いいけど、5万じゃ払えない。5千円だったら払えるから貸してくれと言われ、長門は閃く。
       会社に戻るとみんないるが、一人も一台も売っていない。部長はどうでっかと聞かれて、一台も売れなかったが、貸して来たんじゃと岡山弁で答える長門。部下に、これからはリース時代や、とにかく家にあるものを持って来い!と長門部長。はっきり言って、ガラクタばかり、テレビも箱だけだ。社員全員で、「リースのデパート。無いものも貸します。都田物産」と書いた立て看やらビラで宣伝しまくる。しかし、一向に客は現れない。同じビルに入っているバレエ教室の先生がプレイヤーが故障したので貸してくれとやって来た。美人の先生に鼻の下を伸ばした新一が付いていく。しかし、所詮ボロなプレイヤー、途中から回転が早くなり、バレリーナたちの踊りも、どんどん早くなる。
    今日は一件かと諦めかけたところに、若い男・弘(藤岡弘)がやって来て、明日の祇園祭用に彼女を貸してくれと言う。恵美を貸す訳にはいかないと長門は答えたが、恵美は、二時間だけならいいわよと言う。翌日、祇園祭をみる恵美と弘の姿がある。なかなかいい感じだったが、弘は本当の借り主は自分ではないと言い、友人のブ男(?)に引き渡す。ブ男は恵美を何とかして、連れ込み旅館に誘い込もうとして、あまりのしつこさに恵美に顔をぶたれた上に逃げられる。
    数日後、ダイマル・ラケットが宿直していると怪しい男たち(夢路いとし・喜味こいし)が現れ、本物そっくりの日本刀や拳銃や、覆面を用意してくれと言う。恵美がミシンを漕ぎ覆面を縫っていると、弘が再び現れ、金を返して貰えないかと言うが、恵美にあっけなく断られる。ちょっと言えない事情があるんだと思わせぶりな弘。翌日大阪城に、覆面を被った人間が集結し、ハイルヒットラー風の敬礼をしながら、「まいど!」を連呼する。ダイマル・ラケット曰わく、関西独立運動らしい。こりゃ大変なことになったと警察に110通報する。しかし、これはテレビ映画の撮影だった。
   数日後、長門部長が出社すると、ビルがやけに賑やかだ。ブラスバンド、チアガールに脂下がっていた長門は、テキサス・リースと言う看板を出した見て飛び上がる。アメリカから世界屈指のリース会社が、よりによって同じビルに進出してきたのだ。10F建てのビル全てがテキサス・リースだ。弘は、そこの社員だった。大規模なセレモニーが開かれ、オフィス用品、レジャー用品、ファッション、車、モーターボート、ジェット機まで一億五千万点の商品を揃えた、本物のリースのデパートだ。長門が慌てて、屋上まで上がるとダイマル・ラケット、新一は、裸になって日光浴をしている。下のパーティーで酒を飲んでご機嫌だ。お前ら、リースっちゅうことは、ライバルじゃとどやされて、ようやく事態を把握した社員と、怪しい格好(ビートルズ?モンキーズ?)で楽器を持って、ビルの前にいれテキサス・リースの楽団に乱入、騒がしいだけで、滅茶苦茶な演奏が延々と続いている。テキサス・リースの注文の電話が、ジャンジャン鳴り続けている。一方、都田産業の電話は沈黙のままだ。
   西陣のミナミ産業と言うところから、都田物産とテキサス・リースはパーティーの企画の発注を競合で受ける。良かった方には、今後数億規模の契約が入ると言う。テキサス・リースは、巨大水槽内で、何十人と言う水着美女の水中バレエを見せると言う。苦し紛れに、長門は、今大人気の都はるみの歌謡ショーをやると宣言してしまう。しかし、都田物産の社名から、都はるみの名を思いつきで出しただけで、何のコネもない。テキサス・リースの水中バレエは素晴らしい出来だ。長門は社員たちに、誰でもいいので、都はるみに似た娘を連れて来いと言う。偶然、テレビ局で都はるみのそっくりショーをやっていて、ダイマル・ラケットは、テレビ局前で、都はるみにそっくりな娘を確保した。
   テープに合わせて歌えといって、人前に出す。本物そっくりだ。テープが切れてもそのまま歌っている。本物を間違えて連れて来たのだ。勿論、大成功の都はるみショウ。ミナミ産業の社長は大喜びで、都田産業とテキサスリースと大口の契約を結んでくれた。さっそくリース商品を倉庫に搬入する。鍋釜やガラクタばかりの都田産業に比べて、オフィス用品を運ぶテキサスリースが優先される。なぜか、新一が中に忍び込んだソファーを運ぶダイマル・ラケット。
   実は、みなみ産業は詐欺集団で、リースされた商品をトラックに積み込んで逃走する。

    小学校低学年の時、てなもんや三度笠は時々見た記憶はあるが、スチャラカ社員は、ほとんど記憶はない。しかし、関西お笑いスター全員集合的で、全く力の入らない作りはいいなあ。当時のベタなギャグ、小学生の一般常識だった。新藤恵美がかわいい。小池栄子を美人にした感じのツンデレ感が最高だ。

    61年大映京都田中徳三監督『悪名(233)』
    昭和初期、河内八尾中野村の農家の倅、朝吉(勝新太郎)は、隣村の高安から盗んできた軍鶏で闘鶏博打をやっていた。家に帰ると、父親に河内の百姓は軍鶏博打をして身を滅ぼす奴ばかりで、お前は勘当だと激怒され、高安まで返しに行く。妹の千代(中田康子)に念を押す朝吉。朝吉と幼馴染の辰吉(丸凡太)は若いエネルギーを持て余し、女が欲しいが、金などない。軍鶏で揉めた隣村高安の盆踊りに出掛ける。すると千代が誘ってくる。二人が深い仲になるのに時間はかからなかった。実は、千代は男の妹ではなく、妻だった。千代は、朝吉の子を妊娠したと告白し、噂になる前に駆け落ちしようと言う。
    二人は、有馬温泉に逃げ、千代は女中になった。間借りしている筆屋の主人(浅尾奥山)は、自分の妻もかって堂島の売れっ子芸者で、気の進まぬ旦那からの身請け話に、二人で駆け落ちをして、今ではこうなったが、まだ若いのだから故郷に戻ってやり直せと忠告する。お腹の子がなければという朝吉に、筆屋の妻(橘公子)は、とうに流れていると教えてくれた。そのことに納得いかない朝吉は、千代を置いて、有馬から大阪に戻る。
    しかし、大阪駅で、偶然お伊勢参りの帰りの幼なじみの辰吉らに再会する。彼らは、精進落としに松島の遊廓に遊びに行くところだと聞いて、同行する。店に上がり、琴糸(水谷良重)の哀しげな表情に惹かれる朝吉。福岡の炭坑町から売られてきたのだ。
   店では辰吉に付いた女郎白糸(若杉曜子)が、他の客と喧嘩になって大騒ぎが起こる。飛び出して行こうとする朝吉を止める琴糸。酒癖の悪い白糸は、仕舞いには地元のヤクザだと言う男の頭を瓶で殴りつけ気絶させる。翌朝、朝吉と琴糸の部屋に辰吉が現れ、昨夜の吉岡組の連中が待ち伏せしていると言う。朝吉は、全く動ぜず、吉岡組の連中の真ん中を歩いていく。吉岡組の貞吉(田宮二郎)が、モートルの貞と少しは知られた男だが、面子を潰されて黙っている訳にはいかないと襲いかかってくるが、朝吉は滅法強く、貞吉をのしてしまう。貞吉は、朝吉に惚れ込み兄貴分となってくれと言うが、ヤクザは嫌いだと相手にしない。そこに吉岡組の親分吉岡(山茶花究)がやって来て事務所に来てくれと言う。行く当てがなければ、客分として、この組にいてくれと言う。ヤクザは嫌いだと断っていたものの、貞吉が喧嘩の現場から逃げ出した弟分たちに折檻を加えるのを止めたことで、草鞋を脱ぐことに。
   ある日、女郎暮らしを嘆く琴糸に、一緒に逃げてやると約束をする。しかし、貞吉がそこに現れ、千日前の親分の出入りに加勢することになったので、助っ人に来てくれと言う。直ぐに着替えた朝吉は、吉岡組の前で、ダンブカーに乗り込む。すると朝吉を心配した琴糸が店を抜け出して来ていた。これでは足ぬけになってしまうが、吉岡の姉さん(倉田マユミ)に、とりあえず匿ってくれと預けて出入りに向かう朝吉。
    戻ってくると、遊廓を仕切る松嶋組に取り囲まれている。既に姉さんは、琴糸を隣家に逃がしていたが、松嶋組の兄貴分(須賀不二男)に凄まれて、吉岡はうちは全く関係ない、朝吉が戻り次第すぐに松嶋組に行かせると答える。吉岡のあまりの情けなさに、貞吉は盃を返して、朝吉と二人で、吉岡組を出る。琴糸は、隣家の母親が一緒に逃げた後だったが、隣家の娘、お絹(中村玉緒)とお照(藤原礼子)が気に入り、一緒に飯でも食わないかと誘う二人。今から、勤め先の千日前の肉屋“くいだおれ"に出なければ行けないと聞いて、四人で出かけることに。
  しかし、松嶋組の連中が待ち伏せしている。顔を貸せと言われ、一人空地についていく朝吉。ドスを手にしている兄貴分の男に、懐手で、銃を突き付ける朝吉。さすがにピストルにはビビる兄貴分。ピストルを捨てるので、ドスを捨て、手下を帰らせろと言う朝吉。迫力負けした男が言われた通りにすると、男のドスを拾い上げて脅す朝吉。勿論ピストルは嘘で、着物の下の人差し指という子供騙し、しかし、朝吉の度胸は、並の男には通じないのだ。
   くいだおれで、4人で食事するうちに、貞吉はお照が、朝吉はお絹に惚れ、宝塚温泉に。お絹は、一生の妻にするという一筆を入れさせて、惚れた男に女を捧げた。お絹とお照に一旦家に帰すが、なかなか戻ってこない。二人が戻ってきて、大坂では大変なことが起きているという。松嶋組は、吉岡を半死半生の目に合わせ、またせっかく逃げながら、琴糸は朝吉を心配して、大阪に様子を見に来て、松嶋組に捕まって、瀬戸内海の因島に売られてしまったと言う。朝吉は琴糸を助け出しに行くと決めたが、ある程度纏まった金を作っていかないといけないが、手持ちはない。
   思案の末、朝吉は、有馬温泉に行き、筆屋を訪ねる。まだ、千代はそこにいた。帰ってきてくれたんだといいながら、金を作りに来たと聞いて、私がなんとかしようと言う千代。千代は神戸で行われる大規模なボンの世話役をするので、自分が合図を出すので、儲ければよいと言うのだ。イカサマは嫌いな朝吉だったが、背に腹は代えられず、千代の言う通りにすることに。纏まった金を持って、朝吉と貞吉は、因島に乗り込んだ。思案の末、朝吉は、有馬温泉に行き、筆屋を訪ねる。まだ、
千代はそこにいた。帰ってきてくれたんだといいながら、金を作りに来たと聞いて、私がなんとかしようと言う千代。千代は神戸で行われる大規模な花盆(?)の世話役をするので、自分が合図を出すので、儲ければよいと言うのだ。イカサマは嫌いな朝吉だったが、背に腹は代えられず、千代の言う通りにすることに。纏まった金を持って、朝吉と貞吉は、因島に乗り込んだ。
    土生の港に上がり、近くにいた男にいい旅館がないかと尋ねると、渡海屋がいいと言う。さっそく渡海屋の部屋に上がり、女中おしげ(阿井美千子)に声を掛ける。おしげは、身持ちも固く、遊ぶなら島内どこにもあるから行ってくればと言う。朝吉と貞吉は、遊廓を流して歩いた上、島からの脱出方法を考えるがよい知恵は浮かばない。宿に戻り、おしげの人柄を見込んで頭を下げ、女を助け出しに来たと告白する。遊廓を縄張りにするのはシルクハットの親分(永田靖)と呼ばれる男。島を脱出する船を頼める信頼おける人間として、おしげのおじである漁師(嵐三右ヱ門)を紹介してくれた。
   貞吉は、女郎屋の大和楼に、琴糸がいることを発見、琴糸には朝吉と二人で助けに乗り込んできたのだと伝え、琴糸を励ました。しかし、琴糸が、大和楼から外出出来るのは、明後日の縁日の日しかない。朝吉は、貞吉と同行していることを隠すため、島内のもう一人の実力者、造船所関係を牛耳る女親分の麻生イト(浪花千栄子)が経営する島内一の格式ある旅館麻生館に移った。
    縁日の日、貞吉と琴糸、朝吉とおしげの二組は歩き回り、途中おしげと琴糸は入れ替わった。裏道を抜け、漁師の家に出向くと、足を怪我している。代わりに漁師の妻が漕ぎ出したが、瀬戸内海途中で潮目が代わり、結局、朝吉らが乗った伝馬船は、因島に押し戻された。ままよと、琴糸を連れ朝吉は麻生館に戻る。シルクハットの親分と子分たちが、麻生館に乗り込んできた。多勢に無勢、取り囲まれる朝吉たち。しかし、朝吉は懐からピストルを出して、親分に迫る。 そこに麻生イトが現れ、シルクハットの親分に、ここがワイの宿と知ってはったら、あんまりな振る舞いやおへんかと迫り、この場は私に預からせてくれと言う。イトの迫力にシルクハットの親分も頷くしかない。
    手打ちの式を行い、琴糸はイトが預かることになった。シルクハットの親分たちが去った後、イトは、ワシは二千人から子分がいるさかい、シルクハットの何ちゃらみたいには甘うあらしまへんでと言う。このまま琴糸と別れるのはと言う朝吉に、イトは、一週間だけあんさんにやるさかい必ず戻してくるんやでと念を押した。
    大阪に琴糸を連れて戻る朝吉。くいだおれの店に行く。そこには、勿論お絹とお照がいる。無事で帰ってきてと涙ぐむお照とお絹。お絹は、琴糸に朝吉の妻ですと挨拶をする。切ない顔になる琴糸。お照と貞吉は、久しぶりの再会にすぐ消えた。琴糸は、今から一人で因島のイトの下に戻ると言う。朝吉は、あんな嫌な所に戻ることはないと言うが、お絹と別れることは出来ない。とりあえず、朝吉、お絹、琴糸と言う三人で京都見物に出掛ける。嵐山で、朝吉は、琴糸に東京へ行って幸せに暮らせと言い、独りで因島のイトの下に戻る。
    イトは、二人で逃げて戻らぬように因果を含めたつもりが、のこのこ一人で戻ってきた朝吉に、女だと思って舐めているのかと怒りに震える。どうにでもしてくれと言う朝吉を連れて海岸に行き、持っていたステッキで、朝吉を打ち据える。意地でも、その苦痛に耐える朝吉。容赦なく打ち続けながら、イトはあんたは大きな人間になって名を上げるだろうと言って、このステッキ付いてどこでも行けと子分たちを引き連れて帰っていく。朝吉は、ステッキをへし折り、なんぼ名前を上げる言うても、所詮悪名や。なんも嬉しくはないわい。とにかく琴糸は自由になったんや。ワイは勝ったんや。砂浜で横になり、空を見上げる朝吉。

    さすがに、大ヒットしてシリーズ化された第1弾。後期の、全国巡業スタイルになってしまい、小林旭の渡り鳥シリーズみたいになってからのものしか見ていなかった。それはそれで、B級プログラムピクチャーとして楽しんでいたのだが、第1弾は別物だ。朝吉と貞吉の男が男に惚れ、なおかつ、課長・島耕作のようにピンチになっても、女に助けられて、大逆転。負け知らずの男。かっこいいなあ。勝新太郎以外の男は、田宮二郎を除けば本当に情けない。

2009年4月6日月曜日

天使の眼、野獣の街

    午前中は職安、最後の認定日。26年雇用保険払い続けて、11カ月の支給は短いなあ。職安の混雑は更に酷くなっている。凄い、歳末のアメ横と言う感じだ。エレベーターの中で毎日来てるが仕事なんか見つからないと独り言を尋常ならざる大声で話す、いや叫ぶ男がいて、満員のエレベーター内に緊張感が高まる。自分の身を守るに、落とせっこないミサイル騒いで、防衛費アップのプロパガンダに乗るより、不況下で、崩壊しつつある日本社会の立て直しが必要だろう。 景気回復には、戦争しかないという愚かしい歴史を繰り返すしかないのだろうか。その後これから非常勤講師をする専門学校で、ようやく契約。独身美人OLに惣菜差し入れ。

     神保町シアターで浪花の映画の物語
     61年東宝堀川弘通監督『猫と鰹節(228)』
     大阪駅、岡山からドブ板に繊維ものの仕入れに来た男(西村晃)に、煙草の火を貸してくれと頼む白神膳八(森繁久彌)。同業者のふりをして、男の懐を当て、確実な儲け話があり、元手を倍にした上、奥さんに内緒で遊ぶ金もできますよと囁くと簡単に乗ってくる男。

    48年大映京都伊藤大輔監督『王将(229)』

    シネマート六本木で、ヤウ・ナイホウ監督『天使の眼、野獣の街(230)』
   香港中環地区、一人の男が路面電車に乗ってくる。車内は混んでいたが、学生風の若い娘の隣が運良く空き座る。数字のパズルをやり始める。ある停留所で男は降りる。隣の娘も、おもむろに立ち上がり下車した。男は、通りをしばらく歩き、辺りを見渡せる場所に上がった。彼は宝石強盗団のリーダーだ。娘は一人の男を尾行していた。ハンバーガーショップに入る、ハンバーガーを食べていると、後をつけていた筈の男が声を掛けてくる。「子豚ちゃん。お母さんは元気か?」娘は人違いだと答えるが、ずっとつけていただろうと言われる。尾行はばれていたのだ。電車を降りてから俺は何をしていたと尋ねられ、携帯で電話をしていたこと、電話ボックスに入り、電話を掛けながら、書いたメモを紫色のゴミ箱に捨てたこと、車内でぶつかった女が着ていた服や身長などを答える。しかし、車内で落とした新聞を拾った男の特徴は?と尋ねられて、絶句する。試験は不合格ですねと肩を落とす娘に、いやお前なら警官には見えないだろうと言う男。男は、香港警察特別捜査部観察班のリーダー犬頭。
    娘は名乗ろうとすると、ここでは全てコードネームで呼び合うのだと言われ、勝手に子豚と命名され、女ボスや仲間に紹介された。その頃既に中環地区の宝石店は強盗に襲われ、宝石を奪われていた。あまりに手際良く警察の到着前に逃亡している。特別捜査部の分析班は、宝石店店内だけでなく、周囲のカメラに写った映像をチェックし続ける。常にモノを食べ続けている男が浮かび上がる。男がコンビニでカードで支払ったことで、購買履歴だけは判明した。ファットマンの洗い出しに観察班は全力を上げる。絞り込んだエリアの中で、ある者は甘栗の露天を、ある者は若いアベックを、ある者は会社員を装って巡回する。

    こりゃ面白い。ありがちな設定かもしれないが、脚本もよくできているし、テンポもいい!断然お勧め。

2009年4月5日日曜日

にちようび。

     シネマヴェーラ渋谷で、昭和文豪愛欲大決戦!
     87年東映降旗康男監督『別れぬ理由(225)』。
     雑誌クロッキーの女性記者の速水房子(三田佳子)がカメラマンの松永(古尾谷雅人)とレースの取材をしている。取材終わりで松永に娘の弘美(湊広子)の寄宿制高校に寄って貰う房子。房子の夫の外科医の速水修平(津川雅彦)は、手術が終わると、スポーツジムで知り合った人妻の洋子(南條玲子)と浮気をしている。洋子が8時には帰宅しないといけないと言うので、早くに帰宅すると、房子はまだ帰っていない。プロ野球ニュースを見ながらビールを飲んでいると、電話がなる。男の声で「早く着いたんですね…」と言って、修平だと分かると慌てたように電話は切れた。この時初めて、修平は房子の浮気を疑う。
    翌日、ジムに行く。友人(平尾昌晃)から若い愛人が浮気をしているんじゃないかと相談を受ける。愛人じゃなく妻の浮気を心配したほうがいいんじゃないかと修平が言うと、それはないと確信しているが、妻の浮気は生理的に耐えられないと言う友人。その後洋子とラブホテルに行き、この後、夫から求められたらどうすると尋ねると、洋子は今日は疲れているから駄目だと断ると答える洋子。その夜も、房子の帰宅は遅い。房子が敷く夫婦の寝室の夜具の間隔も、昔に比べれば徐々に広がっている。その夜、強引に房子を求める修平。疲れているからと拒む房子に、意地になる修平。諦めたように房子は抵抗を止めるが、洋子と関係してきた修平は果たせない。
    結婚記念日に修平は、房子が見たがっていたタンゴのショーに連れて行く。妻への疑惑に落ち着かない修平は、房子が不倫をテーマに取材していると聞いて無理矢理ラブホテルに誘う。嫌がっていた房子だが、俺は夫だと言われ受け入れる。久しぶりに二人は燃え上がった。
    しかし、修平は学会が行われる札幌に洋子を誘う。ちょうど、その日房子は大分湯布院に取材に行っている。勿論カメラマンは松永だ。教えられていた修平のホテルに房子は電話をするが、宿を変えていた。夫の浮気に気持ちが揺れ動く房子は、若く真っ直ぐに自分を愛する松永を受け入れる。翌朝、娘が調べてくれた松永の宿泊先に、房子は電話をし、羽田で待ち合わせて親子三人で食事をしようと言うが、何時の便になるか分からないと断る修平。しかし、夜の便で修平と洋子が羽田に降り立つと、到着ロビーに房子と娘が待っていた。気まずい空気の中、娘はこのまま寄宿舎に帰るので、夫婦で食事をしてと去った。結局、修平と房子はそのまま帰宅し、お互いの気持ちをぶつけ合った。まんじりともしない一夜が明ける。房子は修平の為に一人分の朝食を作る・・・。to be continued.

   渡辺淳一原作・W不倫夫婦の話、濃厚なラブシーン多数。三田佳子っていい女優だったんだなあ。しかし、87年、日本映画の底辺の時期、降旗康男にして何か迷いがある映画。当時新しいとされた風俗と、古臭い手法が混然としている感じ。何だかテレビを大スクリーンで見ている気分になってしまう。
  しかし、87年当時の東京、インクスティック芝浦隣の"タンゴ"というカフェバー、船上バー、タンゴ・アリゼンティーノ風なダンスショー、スポーツジムと人妻のレオタード(笑)、ラブホテル。バブルな時代が懐かしい。バブルに全く縁がなかった映画人がバブルを撮ると、本当に嘘っぽい(苦笑)。まあ、嘘っぽく薄っぺらい時代ではあったが・・・。三丁目のバブルな夕日のような、2007年の「バブルへGO」まで時間が必要だったのだ。

56年大映吉村公三郎監督『四十八歳の抵抗(226)』
    西村耕太郎(山村聰)は今日で48歳になった。妻のさと子(杉村春子)と23歳になる娘の理枝(若尾文子)の三人暮らし。理枝は何度か持ち込まれた縁談を断っている。西村は昭和火災海上の次長をしている。今日は部内の慰安会で熱海に出かけるのだ。散髪をした後、駅前の本屋で、文芸春秋を買い、また、世界文学全集のファウストが何故か気になって買い求める。駅で部下で、理枝の同級生だった能代雪江(小野道子)と一緒になる。to be continued

池袋新文芸坐で、ファントム・フィルム万田邦敏監督『接吻(227)』
住宅街をひとりの男(豊川悦司)が歩いている。おもむろに一軒の家の門をくぐるが、玄関のドアは鍵が掛かっている。再び歩き出す男。すれ違う主婦に挨拶をして井上と表札が掛かる家に入る。ドアの鍵は開いている。中に入る男。食堂からか娘が帰ってきたと思った母親の声がする。しばらくして、小学生の娘が帰って来る。一度玄関から逃げようとして再び中に引き戻される。日が暮れて、父親が帰宅する。夕刊がまだポストに刺さっているのを取って家に入る。
     男が家でテレビを見ている。井上家惨殺事件の報道が流れている。男は各局のニュース番組にメールを出し、血痕の着いた服のままATMに出掛け、血だらけのキャッシュカードで金を下ろし携帯電話で110番に電話をする。その後、河川敷に行き、各局に再び電話をし、終わると携帯を投げ捨てる。サッカーのボールが転がってくる。男児が取りに来る。一家を惨殺した金槌を取り出した男を見て母親が慌て子供を引っ張って逃げ出した。その後、男は手を広げ、近くのブランコに向かって歩いていく。
    男のアパートに二台のパトカーが着く。警官が男の部屋に入ると、男はおらず、テレビがついている。正に井上一家殺人犯をマスコミが取り囲んでいる場面が映っている。舌打ちして河原に急行する刑事たち。ようやく逮捕され笑って連行されていく男。
     夜のオフィス、遠藤京子(小池栄子)が残業をしている。同僚の女は、タクシー代を出すからと言って仕事を押し付け遊びに出掛けてしまう。京子はタクシーに乗り帰宅する。翌日京子の同僚の女たちが彼女の話をしている。みんないいように京子に仕事を押し付けているのだ。京子が14000円近いタクシーの領収書を出すと、こんなに高ければ直ぐには払えないと言われる。
    その夜も、京子が遅くに帰宅して、テレビを付けると、一家を殺した男・坂口秋生が笑顔で連行されていくところだ。京子はとりつかれたように事件が載っている古新聞を探す。更にコンビニに行き、その日の夕刊紙と大学ノート、糊を買う。財布に入っていたタクシーの領収書を捨てる京子。帰宅した京子は、事件と男に関する詳細なスクラップブックと報道されるメモを取り始める。
    坂口の国選弁護人となった長谷川幸秀(仲村トオル)が、西東京拘置所で坂口と面会している。長谷川は、弁護士として「私はあなたの味方です。思い出すことがつらいことでも、素直に話して下さい」と言うが、坂口は何も喋らない。警察でも、3人を殺害したということを認め、死刑にしてくださいといっただけで、全く話をしかないまま起訴されたのだ。初公判でも、坂口は一言も口を開かなかった。
   初公判を終え、裁判所を出てきた長谷川に、京子が声を掛ける。坂口に差し入れをしたいと言う。坂口の知り合いかと長谷川が尋ねると、この事件で初めて知ったのだと答える京子。変だと思うかもしれませんが、親近感があります、知らない人間からの差し入れを坂口は断るはずなので、自分のことを坂口に伝えてくれと頭を下げる京子。長谷川が公判のことを話し掛けても、何も喋らない坂口。京子の話をした時にも変わらなかったが、差し入れは受け取った。
   次の公判でも、坂口の態度は変わらなかった。裁判所を出てきた長谷川に京子が再び声を掛ける。お陰様で差し入れを受けとってもらえましたと礼を言う京子。面会しませんかと言う長谷川に、今はいいです、まだ会いたくない筈だからという京子。坂口を理解していると言う京子に、そうして何も話さないんですと尋ねると、話したくないからですと答える。to be continued.