シネマヴェーラ渋谷で、
昭和文豪愛欲大決戦! 59年大映市川崑監督『鍵(236)』。
京都、古美術の鑑定では名高い元大学教授の剣持(中村鴈治郎)が、大学病院を訪ねている。相馬教授(浜村純)が会議のため、インターンの木村(仲代達矢)に診察を受けている。血圧が高い以外、特別どこが悪いと言うことはないが、初老を迎え、妻郁子(京マチ子)と夜を共に出来ないことを気にしていた。剣持は、今夜家に来ないかと、木村を誘った。剣持は娘の紀子としこ(叶順子)と木村の結婚を望んでいる。木村は、長崎の実家から唐墨が送ってきたので、お持ちしようと思っていたと訪問を約束した。その暫く後、相馬のもとに郁子がやってきて、娘の紀子から、夫がこちらに通っているらしいと聞いたのだが、夫はどこか悪いのかと尋ねている。相馬は昨年の9月から剣持が来ている。特にどこがということはないが、最近のご主人の性欲はいかがですか。旧家で厳しく育てられた郁子は、赤面し、自分が来たことは、剣持には内緒にしておいて欲しいと頭を下げた。木村は剣持に誘われ、唐墨を持ってお訪ねしますと告げた。更に、剣持の娘の紀子が大学を訪ねてくる。紀子は誘っていた昨夜の演奏会に木村が現れなかったことを言い、無駄になったチケットを木村に渡す。木村はまた、大阪のあそこに行きましょうと話し、今晩唐墨を持って家を訪問することを紀子にも伝えた。
剣持が帰宅する。家の中に声を掛けるが、何の返事もない。誰もいてへんのかと独りごちて、テレビをつけると体操をやっている。合わせて身体を動かし始めるが、滑ってひっくり返った所に、通いの婆やのハナ(北林谷栄)が戻ってきた。どこ行っていたんやと尋ねると、隣家に塩を借りに行っていたと言う。昨日も小麦粉が無くて借りたのだとハナ。郁子に今朝渡したんだがと剣持。郁子が帰宅する。どこ行ってたんやと尋ねると、錦小路に行っていたと答える郁子。剣持と郁子の話は、すれ違いがちで、当てこすりのようなやり取りだ。娘の紀子が帰宅する。紀子とも、会話が成立しない。寒々とした家庭である。
その晩遅く、木村がやってくる。誰も、昼間木村と会ったことを会話に出さない。木村が持ってきた唐墨を肴に、ブランデーを呑む。酒を飲まない紀子は二階の自室に上がってしまう。一旦、剣持が、席を外して戻ると、郁子と木村が楽しそうに笑っている。唐墨が、魚の干したものだと郁子は勘違いしていたのだ。剣持は、郁子に酒をどんどん飲ませる。フラフラと部屋を出て行く郁子。大分酔っているようだけど、大丈夫ですかと木村が尋ねても、剣持は、あいつは酔っ払うと厠に引きこもるんやと平然としている。しかし、あまりに戻ってこない郁子を心配した木村が家内を声を掛けて回っても返事はない。二階から紀子が降りてきたので、奥さんがいなくなったのですと伝え、二人で捜す。すると、紀子は浴槽の中で気を失っている郁子を発見する。剣持は、慌てて浴槽から引き上げる。身体を拭き、寝室に運ぶのを手伝えと木村に言う剣持。バスタオルを掛けていても目のやり場に困る木村。
ユーロスペースで、岩淵弘樹監督『遭難フリーター(237)』
実際に、キャノンの工場に、製造業派遣として働く岩淵弘樹(23才)が、自分の毎日を切り取って作ったドキュメンタリー。
神保町シアターで、浪花の映画の物語。
66年大映東京山本薩夫監督『白い巨塔(238)』
浪花大学医学部付属病院第1外科助教授の財前五郎(田宮二郎)が手術室に入ってくる。手際良く開腹し、胃の噴門部を切除し、縫い合わせていく。手術は成功し、時計を見る財前。?分か、新記録だなと誇らしげに言う。手術室を出て病院の中庭で一服する財前。その姿を教授室から見下ろし、職員に財前くんを呼んでくれと言って、財前の記事が載っているサンデー毎日を手に葉巻をくゆらす。第1外科の教授の東(東野英治郎)である。財前が教授室にやってくると、サンデー毎日の記事を差して、この取材の話は聞いていないがと言う。手術室にカメラを入れるのであれば、第1外科部長の私に事前に言ってくれたまえと東。君の独断はとかく学内で非難する人も多い。来年の3月には、私も退官する。後任の教授として、君を推薦しずらくなると言う。決してそんなつもりはと言いながら不満そうな財前。
病院を出て財前は、大阪中央郵便局に向かう。岡山にいる母親に宛て、現金書留に金と手紙を入れている財前。学校の教師をしていた父を早くに亡くし、母親は女手ひとつで、五郎を育て上げた。その期待に応え、よく勉強をした五郎は、奨学金と村の篤志家の援助で、旧帝大の浪花大学の医学部に入学、その優秀さに目を付けた、浪花大学OBで、産婦人科を開業する財前又一(石山健二郎)の目に止まり、娘の杏子(長谷川待子)と結婚し婿養子となる。
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