2009年4月5日日曜日

にちようび。

     シネマヴェーラ渋谷で、昭和文豪愛欲大決戦!
     87年東映降旗康男監督『別れぬ理由(225)』。
     雑誌クロッキーの女性記者の速水房子(三田佳子)がカメラマンの松永(古尾谷雅人)とレースの取材をしている。取材終わりで松永に娘の弘美(湊広子)の寄宿制高校に寄って貰う房子。房子の夫の外科医の速水修平(津川雅彦)は、手術が終わると、スポーツジムで知り合った人妻の洋子(南條玲子)と浮気をしている。洋子が8時には帰宅しないといけないと言うので、早くに帰宅すると、房子はまだ帰っていない。プロ野球ニュースを見ながらビールを飲んでいると、電話がなる。男の声で「早く着いたんですね…」と言って、修平だと分かると慌てたように電話は切れた。この時初めて、修平は房子の浮気を疑う。
    翌日、ジムに行く。友人(平尾昌晃)から若い愛人が浮気をしているんじゃないかと相談を受ける。愛人じゃなく妻の浮気を心配したほうがいいんじゃないかと修平が言うと、それはないと確信しているが、妻の浮気は生理的に耐えられないと言う友人。その後洋子とラブホテルに行き、この後、夫から求められたらどうすると尋ねると、洋子は今日は疲れているから駄目だと断ると答える洋子。その夜も、房子の帰宅は遅い。房子が敷く夫婦の寝室の夜具の間隔も、昔に比べれば徐々に広がっている。その夜、強引に房子を求める修平。疲れているからと拒む房子に、意地になる修平。諦めたように房子は抵抗を止めるが、洋子と関係してきた修平は果たせない。
    結婚記念日に修平は、房子が見たがっていたタンゴのショーに連れて行く。妻への疑惑に落ち着かない修平は、房子が不倫をテーマに取材していると聞いて無理矢理ラブホテルに誘う。嫌がっていた房子だが、俺は夫だと言われ受け入れる。久しぶりに二人は燃え上がった。
    しかし、修平は学会が行われる札幌に洋子を誘う。ちょうど、その日房子は大分湯布院に取材に行っている。勿論カメラマンは松永だ。教えられていた修平のホテルに房子は電話をするが、宿を変えていた。夫の浮気に気持ちが揺れ動く房子は、若く真っ直ぐに自分を愛する松永を受け入れる。翌朝、娘が調べてくれた松永の宿泊先に、房子は電話をし、羽田で待ち合わせて親子三人で食事をしようと言うが、何時の便になるか分からないと断る修平。しかし、夜の便で修平と洋子が羽田に降り立つと、到着ロビーに房子と娘が待っていた。気まずい空気の中、娘はこのまま寄宿舎に帰るので、夫婦で食事をしてと去った。結局、修平と房子はそのまま帰宅し、お互いの気持ちをぶつけ合った。まんじりともしない一夜が明ける。房子は修平の為に一人分の朝食を作る・・・。to be continued.

   渡辺淳一原作・W不倫夫婦の話、濃厚なラブシーン多数。三田佳子っていい女優だったんだなあ。しかし、87年、日本映画の底辺の時期、降旗康男にして何か迷いがある映画。当時新しいとされた風俗と、古臭い手法が混然としている感じ。何だかテレビを大スクリーンで見ている気分になってしまう。
  しかし、87年当時の東京、インクスティック芝浦隣の"タンゴ"というカフェバー、船上バー、タンゴ・アリゼンティーノ風なダンスショー、スポーツジムと人妻のレオタード(笑)、ラブホテル。バブルな時代が懐かしい。バブルに全く縁がなかった映画人がバブルを撮ると、本当に嘘っぽい(苦笑)。まあ、嘘っぽく薄っぺらい時代ではあったが・・・。三丁目のバブルな夕日のような、2007年の「バブルへGO」まで時間が必要だったのだ。

56年大映吉村公三郎監督『四十八歳の抵抗(226)』
    西村耕太郎(山村聰)は今日で48歳になった。妻のさと子(杉村春子)と23歳になる娘の理枝(若尾文子)の三人暮らし。理枝は何度か持ち込まれた縁談を断っている。西村は昭和火災海上の次長をしている。今日は部内の慰安会で熱海に出かけるのだ。散髪をした後、駅前の本屋で、文芸春秋を買い、また、世界文学全集のファウストが何故か気になって買い求める。駅で部下で、理枝の同級生だった能代雪江(小野道子)と一緒になる。to be continued

池袋新文芸坐で、ファントム・フィルム万田邦敏監督『接吻(227)』
住宅街をひとりの男(豊川悦司)が歩いている。おもむろに一軒の家の門をくぐるが、玄関のドアは鍵が掛かっている。再び歩き出す男。すれ違う主婦に挨拶をして井上と表札が掛かる家に入る。ドアの鍵は開いている。中に入る男。食堂からか娘が帰ってきたと思った母親の声がする。しばらくして、小学生の娘が帰って来る。一度玄関から逃げようとして再び中に引き戻される。日が暮れて、父親が帰宅する。夕刊がまだポストに刺さっているのを取って家に入る。
     男が家でテレビを見ている。井上家惨殺事件の報道が流れている。男は各局のニュース番組にメールを出し、血痕の着いた服のままATMに出掛け、血だらけのキャッシュカードで金を下ろし携帯電話で110番に電話をする。その後、河川敷に行き、各局に再び電話をし、終わると携帯を投げ捨てる。サッカーのボールが転がってくる。男児が取りに来る。一家を惨殺した金槌を取り出した男を見て母親が慌て子供を引っ張って逃げ出した。その後、男は手を広げ、近くのブランコに向かって歩いていく。
    男のアパートに二台のパトカーが着く。警官が男の部屋に入ると、男はおらず、テレビがついている。正に井上一家殺人犯をマスコミが取り囲んでいる場面が映っている。舌打ちして河原に急行する刑事たち。ようやく逮捕され笑って連行されていく男。
     夜のオフィス、遠藤京子(小池栄子)が残業をしている。同僚の女は、タクシー代を出すからと言って仕事を押し付け遊びに出掛けてしまう。京子はタクシーに乗り帰宅する。翌日京子の同僚の女たちが彼女の話をしている。みんないいように京子に仕事を押し付けているのだ。京子が14000円近いタクシーの領収書を出すと、こんなに高ければ直ぐには払えないと言われる。
    その夜も、京子が遅くに帰宅して、テレビを付けると、一家を殺した男・坂口秋生が笑顔で連行されていくところだ。京子はとりつかれたように事件が載っている古新聞を探す。更にコンビニに行き、その日の夕刊紙と大学ノート、糊を買う。財布に入っていたタクシーの領収書を捨てる京子。帰宅した京子は、事件と男に関する詳細なスクラップブックと報道されるメモを取り始める。
    坂口の国選弁護人となった長谷川幸秀(仲村トオル)が、西東京拘置所で坂口と面会している。長谷川は、弁護士として「私はあなたの味方です。思い出すことがつらいことでも、素直に話して下さい」と言うが、坂口は何も喋らない。警察でも、3人を殺害したということを認め、死刑にしてくださいといっただけで、全く話をしかないまま起訴されたのだ。初公判でも、坂口は一言も口を開かなかった。
   初公判を終え、裁判所を出てきた長谷川に、京子が声を掛ける。坂口に差し入れをしたいと言う。坂口の知り合いかと長谷川が尋ねると、この事件で初めて知ったのだと答える京子。変だと思うかもしれませんが、親近感があります、知らない人間からの差し入れを坂口は断るはずなので、自分のことを坂口に伝えてくれと頭を下げる京子。長谷川が公判のことを話し掛けても、何も喋らない坂口。京子の話をした時にも変わらなかったが、差し入れは受け取った。
   次の公判でも、坂口の態度は変わらなかった。裁判所を出てきた長谷川に京子が再び声を掛ける。お陰様で差し入れを受けとってもらえましたと礼を言う京子。面会しませんかと言う長谷川に、今はいいです、まだ会いたくない筈だからという京子。坂口を理解していると言う京子に、そうして何も話さないんですと尋ねると、話したくないからですと答える。to be continued.
  

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