2009年10月3日土曜日

やっぱり日本は、スポーツも映画も完敗だ。

    何だか微妙な空模様だが、明日は太陽が拝めるようなので、一気に洗濯し、更に浴室、トイレの大掃除。

   午後は、ラピュタ阿佐ヶ谷で、CINEMA★忍法帖

   82年角川春樹事務所/東映斎藤光正監督『伊賀忍法帖(563)
   走ってくる若侍の姿、伊賀の笛吹城太郎(真田広之)。人馬入り乱れての合戦光景。人はなぜ戦うのか。人はなぜ殺し合うのか。誰もが口ではみな平和を唱えるが、殺し合うことを止めはしない。永楽の頃、戦国時代の真っ只中、果心居士(成田三樹夫)という妖術師がいた。身を鳥に変えたり、変幻自在に妖術を使ったという。
   松田弾正久秀(中尾彬)の信貴山城の天守閣に、弾正の主である三好義興(松橋登)と奥方の右京太夫(渡辺典子)が訪れていた。天守閣からの景色に見とれる右京太夫に、右京太夫さまが喜んで下さるのであれば、お招きしたかいもあったものと言う弾正。弾正は千宋易が作らせたと言う平蜘蛛の茶釜を持っていた。その茶釜で沸かした茶を振る舞われながら、自分の屋敷に戻る途中、右京太夫に、「弾正には、宝の持ち腐れだ」と腐す義興。
   主が帰ったあと、一転にわかに書き曇り、雷鳴が轟く。面妖な事態に、弾正の家臣の柳生新左衛門(千葉真一)が、空に向かい「何者か」と誰何する。「わっはっはっはっ、流石、柳生の庄の主新左衛門!ワシが来たことをよくぞ見抜いたの」と言って姿を現す果心居士。「弾正!おぬしの願いを叶えにやって来た。三好義興の女、右京太夫に懸想したな。太夫の心を掴み、天下を取らせてやる」
   新左衛門は弾正に「この男は魔性の者です」と必死に止めるが、弾正はすっかりその気になっており、どうすればよい?と尋ねる。果心居士は、ワシの力を信じてくれればよいと言って、托鉢僧姿の羅刹坊を呼び出し、この僧を頭に5人の弟子を遣わせると言って果心居士は姿を消した。尚も諫めようとする柳生新左衛門を弾正は遠ざける。

   伊賀の里で、篝火(渡辺典子)



   「オン・マリシエイ・ソワカ」

   池袋新文芸坐で、魅惑のシネマクラシックスVol.10

   ナ・ホンジン監督『チェイサー(564)』

   クリント・イーストウッド監督『グラン・トリノ(565)』

2009年10月2日金曜日

河内桃子、マルコス・イメルダ、美しい人への絶対的な崇拝(苦笑)

    ラピュタ阿佐ヶ谷で、昭和の銀幕に輝くヒロイン【第49弾】雪村いづみ
    55年東宝青柳信雄監督『制服の乙女たち(561)』
    武蔵野にある女子高平和学園、音楽室からピアノの前奏が聞こえて来る。独唱するのは、二年の峯村知子(雪村いづみ)、曲はアーニーローリー、澄んで伸びやかに歌いきると、南先生(岡村文子)も満足そうに頷く。しかし、クラスメートの歓声と拍手が止まらないので、音楽の授業は演奏会ではありませんと注意する。次の生徒に歌わせる前に鐘が鳴り、終業を告げた。知子は、グローブとボールを持ち校庭に出て、三年の三宅京子(青山京子)にキャッチボールをしようと声を掛ける。そこにガマ先生(森川信)がやって来たので、慌てて、グローブとボールを後ろに隠す。しかし、ガマ先生は、回れ右と号令を掛けて、取り上げられ、「また、君たちか。女の子なのにキャッチボールはいけない。君たちは成績は一番なのに、窓ガラスをいつも割って」とお小言を頂戴する。しかし、二人は懲りずにボールだけで、キャッチボールを続ける。
   その頃応接室では会議が開かれている。学校の有力支援者である藤原財閥の当主藤原金作(小川虎之助)と奥方の雅江(一の宮あつ子)が来て、ロンドンで勉学を修めていた息子の秀也が10年振りに帰国するので嫁選びをしたいとの申し入れだ。校長の峯村鶴代(吉川満子)は、夫で理事長の大造(十朱久雄)に、全校で優秀な生徒が記録されたホワイトリストを持って来させる。そこに上がっている5人であれば、文句なく推薦出来るでしょうと言う。2年の峯村知子は、学年一番。校長と理事長の一人娘だ。みな口々に校長と理事長の血を引いた知子さんなら文句なしでしょうと言うが、満更でもない表情ながらも、こういうことは民主的に進めませんとと言う。3年の一番は、三宅京子だ。京子の父親は大きな貿易会社を経営していたが、戦争で両親を亡くし、寿司屋を営む叔父(藤原釜足)夫妻に引き取られた。
そこに、知子京子のボールが飛び込んで来て窓ガラスを割る。教頭の小野(牧壮吉)が、後で職員室に来るようにと言った。
   藤原夫妻を玄関まで送り、校長と理事長は、娘の知子が藤原財閥に嫁げば、学園経営が盤石になると、早くもその気になっている。藤原財閥の令息の嫁取り話は、学園中の噂になっている。職員室でも、生徒たちの間でも、やれ峯村知子がいいとか三宅京子がと喧しい。
    当の京子と知子は、教頭に叱られ、そんなことでは、藤原財閥の嫁選びには残らないぞと言われる。そんなことは気にする二人ではないが、今後は、風紀を重んじて厳しくするという話に前校長で、知子の祖母の白鳥先生(東山千栄子)が作った自由でのびのびとした校風が台無しになることに気が滅入る。二人は学園寮で同室だったが、京子は今日はお稽古があると出掛けて行く。知子は音楽部の練習だ。部員たちは、藤原財閥の噂で賑やかだが、知子は練習をちゃんとしようと言って、部員の演奏に合わせてジャズを歌う。
   その日の夕食後、副委員長の?が、学校から、寮の風紀の締め付けで、門限9時、消灯10時、寮監を常駐させると連絡が来ていると告げる。勿論寮生たちは、みんな大反対だ。取り敢えず、委員長の京子がまだ帰っていないので、週末に寮生の意見を纏めることになる。京子は、その日柔道の稽古だった。学校のストレスを汗で流し、叔父さんの店で、思う存分寿司を食べた。
   京子は、寮に戻ると、知子が用意してくれた縄梯子で二階の部屋に登る。お土産の寿司の折り詰めを受け取った知子は、学園の校風がどんどん改悪されていく現実を祖母に手紙で知らせようかと、京子に相談する。日曜日に、校長理事長夫婦は、藤原家に挨拶に出掛ける。PTA会長の?が既に来ていた。藤原金作は、息子は内気な性格で、派手に出迎えに来てくれるなと言っているので、我々も羽田には行かないつもりだと言う。しかし、PTA会長も理事長も、生徒教員父母総出で盛大にお出迎えますと約束する。
   羽田空港には、藤原秀也さんお帰りなさいと書かれた大段幕と生徒、教職員総出の団体が小旗を振って待ち受けている。その時、南が京子がいないことに気付く。機内で、藤原秀也(石原忠)が菅野康介(小林桂樹)に、打合せ通り僕の身代わりになって下さいねと頼んでいる。菅野は東朝新聞のロンドン特派員で秀也の信頼する先輩で親友だ。菅野は、サングラスを掛け「1日だけの財閥の御曹司も悪くない、1日俺の言うことを聞け」と結構その気だ。
    菅野が片手を挙げ、飛行機のタラップを降りると、女学生が押しかけ、菅野はもみくちゃだ。秀也は、藤原家の執事の山田(沢村いき雄)に、あの男に「おぼっちゃま」と声を掛けて藤原家の迎えの自動車に乗せるように言う。山田がその通りにしたので、騒ぎに拍車がかかるが、菅野と秀也は何とか車に乗り逃げることが出来たが、哀れ、山田は女生徒たちにもみくちゃになって、取り残される。
   車の後部座席で、「いやあ、大変だったな。」「先輩、だから嫌になるんですよ。」「約束通り、今日は1日、言うとおりにしてもらうよ。」
   京子の叔父の寿司屋のカウンターに、菅野と秀也の姿がある。いや、10年振りに日本に帰ってきて、やっぱり寿司を食べたかったんだとご満悦の菅野。カウンターの中には京子の姿もあり、握ってみせるが、玄人はだしの腕だ。叔父の正吉が、藤原秀也さんの出迎えサボって拙かったんじゃないかと心配する。そんな金持ちっていうだけの人なんて嫌いだからと吐き捨てる京子に、菅野を秀也だと紹介する秀也。正吉は青い顔をして「こりゃ、大変失礼しました。京子お詫びしろ。」と言うが、京子はおかしいことは言っていないと言う。
   菅野も秀也は、財閥の御曹司というだけでの、あの熱烈歓迎に辟易していたので、逆に京子に好感を持った。菅野は、君の名前はなんて言うのと尋ねるが、何も答えない京子。そこで恐縮しきった正吉が「いや、三宅京子と言って、私の姪です。同じ女学校を出た姉がいるんですが、ピアノを勉強しに行くんだと言って、海外に行ったものの無しの礫で、どこでどうしているものやら・・・」と答えると、「三宅さん・・・・。」と菅野は何かを考えているかのようだ。やっぱり、食べモノも女性も日本だなあと菅野は笑う。そして、久し振りの日本観光の案内をしてくれないかと言いだした。財閥の御曹司が気に入らない京子は断るが、この機会に姪の京子を幸せにと思う正吉はご案内しなさいと言う。では、私の案内したいところに行くのでもいいですかと京子は笑う。
   柔道場、菅野は京子に幾度も投げられ、足元がふらついている。では次に「菅野さんも」と秀也を誘う京子。いや僕はと言うが、簡単に投げられる。一度で参りましたと言う京子。菅野は、秀也に少なくとも彼女は、財閥の御曹司ではなく、君自身に好意を抱いたようだなと言う。
   知子は、郵便局の前で、掃き掃除をしているボーイフレンドの三郎(江原達治)に出会い、借りていた探偵小説を返す。三郎は、探偵小説マニアだ。

    とにかく、青山京子の姉役の河内桃子の美しさが秀逸だ。特撮映画の女優かテレビの母親役と思い込んでいた自分の不明を恥じ、私家版昭和女優番付、10月2日現在芦川いずみ永久横綱を抑えて、最高位に。若い時こんなに美しかったなんて!中学の時に好きだった女の子に似ているんだな・・・。ああ切ない(苦笑)。1950年代の東宝映画、河内桃子のフィルモグラフィで見ていかなくては。

   ポレポレ東中野で、ラモーナ・ディアス監督『イメルダ(562)

   フィリピンの独裁大統領のフェルディナンド・マルコスの妻にして、8年間毎日履いても余る3000足の靴というくらいのイメージしかなかった自分には、いろいろなことを教えてくれる映画だ。多分彼女は、フィリピンに帰国、数々の訴追を受けながら、国民からは熱烈な歓迎を受け、下院議員に当選、その後、自分の娘が下院議員、息子が知事選挙に出馬(彼女的には当然当選)、著書を出版したことのプロモーションとして受けたドキュメンタリー映画かもしれない。
  しかし、彼女が没落した名家の娘で、母を早くに亡くしたが、その美貌と美声を、マッカーサーによって見出され、ミス・マニラになり(実は、準ミスだったが、自ら市長に抗議し、その評決を覆させた)、抗日戦線の英雄だったマルコスと出会って11日目に電撃結婚、マルコスが大統領になり親米政府を作ったことで、ファーストレディとして君臨、権勢を誇ったが、軍事クーデターによってマルコス失脚、アメリカから見放され、ハワイに逃亡、不正蓄財した財産は、10億ドルとも100億ドルとも言われ、アメリカ政府からも訴追、マルコスは祖国に戻ることなくハワイで客死、イメルダはアメリカでの裁判で無罪を勝ち取って帰国・・・まるで橋田寿賀子の"おんな太閤記"か"おしん"のような女・波乱万丈伝だ。
   女も男も美しく生まれたことは才能だなあ。本当にうらやましい(笑)。才能に恵まれ、その才能故にのし上がった人間は強い。イメルダの中では、何も疚しいことのない私が、親類や周りの人たちによって、いろいろな目に遭わされてきた。自分はこれだけ苦労してきたのだから、神は自分を天国に召すだろうと回顧する。何だか、30年位前の小説のタイトル「ダイヤモンドは傷つかない」という言葉を思い出す。世間には、美しい人間への絶対的な信仰、完璧な人間への憧憬ってあるからなあ。

   代々木で、元上司と待ち合わせ、旗の台の事務所まで。友人N氏の元ボスへのプレゼンは、渾身の大リーグボールを、中日のオズマにあっけなく場外ホームランされた星飛雄馬のようだったが、元ボスの繰り出す知識の洪水を浴び続けると、何だか台風一過の青空のように清々しくなっていた(笑)

   元会社系列のデザイン会社に少し顔を出し、八重洲で、高校時代からの友人がやっている異業種交流勉強会で11月の講師を頼まれ、その打合せ。自分でいいのだろうかと不安を感じながら、今学校の冒頭でやっている「デジタルが、エンターテインメントの何を変えたのか?」を中心に話をすることに。
  私の講義を聞いてみたいと本当に思っている方が万が一いた場合は、11月11日の夜銀座で行われるので、こっそりメール下さい。

2009年10月1日木曜日

今様時代劇。

    午前中は、広告代理店の元会社の担当で、友人とベンチャーでファンド会社を立ち上げたIさんに会いに新丸ビルまで。仕事を貰うということではなく(笑)、何か一緒にやれたらいいなあ。


   渋谷TOEI①で、田中光敏監督『火天の城(557)』

   天明4年、熱田神宮の宮番匠の岡部又右衛門(西田敏行)の仕事場では、若頭の平次(岡島進)、熊蔵(山本太郎)、太助(裵ジョンミョン)、留吉(前田健)、弥吉(上田耕一)、市造(石田卓也)、又右衛門の娘の凛(福田沙紀)らがいた。そこに、織田信長(椎名桔平)が、丹波長秀(西岡徳馬)、中川左近(田口浩正)、羽柴秀吉(河本準一)らが馬を駈ってやってきた。信長は、安土の山に五重の天守閣を持つ古今東西にもない城を作るのだと言う。作れるかと尋ねられ、体の中が熱く感じながら、肯く又右衛門。
   築城奉行の丹羽長秀を初め、木村次郎左衛門らは、田舎大工の又右衛門がそんな大仕事はできないだろうと思っていた。又右衛門は、自らの資料を調べ、大建築に赴き、それぞれの工夫を写しとり始めた。又右衛門の妻、田鶴(大竹しのぶ)は温かく微笑みながら、夫を送り出すのだった。ある日、又右衛門が安土に出掛けると、騎乗の信長自身が、広大な安土城の建設予定地の縄張りをしているのに出くわす。信長は又右衛門の姿を見ると、天守閣を建てたいという山の頂上に誘い、琵琶湖畔からここまで石を積み、大和全体を睥睨するのだと言う。天下統一のために、この場所は日本の真ん中になるのだと言って、又右衛門を驚かす。

   シネマヴェーラ渋谷で、追悼、長谷部安春

    長谷部安春監督『鑑識・米沢守の事件簿(558)』
   東京ビッグシティマラソンが狙われた事件を、特命係の杉下と亀山が解決したきっかけは、警視庁鑑識課の米沢守(六角精児)が顔の認識システムでマラソン参加者の中から、犯人を割り出したことだったが、米沢は、更に重大な事実を発見してしまった。参加者の中に、8年前に突然離婚届だけ残して失踪してしまった妻の知子(紺野まひる)を発見してしまったからだ。特命係の2人に相談しようかと思ったが、マラソン事件は政財界をも巻き込んだ大事件に発展しそうで忙しいようだ。米沢は意を決して、シティマラソンの事務局に出掛け、警察手帳を提示し、事件の重要参考人だと嘘をついて、知子のゼッケン番号から、名前、住所、勤め先を聞き出す。再婚したのか名字が変わっていて真鍋知子、住所は墨田区、勤め先は警視庁の外郭団体の青少年防犯協会。灯台下暗しで、意外に近くにいたのだ。不審そうに、面倒くさがりながらも女性担当者は彼女が途中危険したことも教えてくれた。
  米沢は、住まいに行ってみる。古ぼけたアパートには灯りがついている。ドアをノックしようとしたが、勇気が出ず、帰る米沢。妻の知子と再会する夢を見ていると、携帯が鳴る。事件だ。隅田区のアパートで、真鍋知子という女性が死んでいると言う。びっくりして飛び起きる米沢。慌てて現場に出かける。青酸系毒物を飲んでの自殺じゃないかと言う。被害者の顔を見ると、知子だ。心臓が止まりそうになるが、元妻には首に黒子がある。被害者には、なかった。念のため、髪の毛を一本盗んで、鑑識課に持ち帰る。いつも以上に慎重に調べると被害者の血液型はO型だ。元妻の知子と自分はB型なのだ。ほっと胸をなで下ろす米沢。
   所轄の千束署の刑事、相沢誠(萩原聖人)が米沢を訪ねてくる。実は、被害者の知子は元妻なのだと言う。勿論捜査から外されたが、どうも気になって動いているうちに、東京ビッグシティマラソンの事務局に知子のことを調べにきた米沢の名前が浮かんだという。実は、マラソンの前に電話があり、相談があるので翌日会うことになっていたのに、自殺するなんて信じられないのだと言う。米沢は一応「悔いが残る。こんな結果に終わって残念だ。」という本人の筆跡の遺書らしきものと、青酸カリの粉末が入っていたビニール袋がベッドの脇にあったこと。青酸カリが入っていたと思われる封筒が台所にあったことなどが、自殺説の根拠となっていることを伝える。その夜、米沢は、駅前で、高田渡の「生活の柄」をギターの弾き語りをしている。

   70年ホリ企画長谷部安春監督『女番長 野良猫ロック(559)』
  向こうからバイクがやってくる。ここは新宿東口らしい。交差点で停まると、後ろからバイクを従えたバギーが、数台のバイクにぶつけて停まる。ぶつけられたバイクに乗った男がヘルメットを脱ぐと、アコ(和田アキ子)だ。バギーに乗ったリーダーは勝也(藤竜也)、新宿でならしている黒シャツ隊(苦笑)だ。アコが、何すんねんと言うと笑うだけの勝也。アコを残し去って行く。アコは、ガソリンスタンドで給油を頼み、コーラを飲んでいると、メイ(梶芽衣子)が、急いでいるので、西口まで乗せてくれないかと声を掛けてくる。ヘルメットを被ったアコが男かと思い、今は急いでいるが、今度付き合ってあげる、私が駄目ならかわいい子紹介してあげるわと言って、溜まり場の店のマッチを投げ走り出す。新宿西口はまだ、高層ビルもなく空き地ばかりだ。

    渋谷TOEI②で、中野裕之監督『TAJOMARU(560)』

    うーん、とにかく凄く疲れる映画だな。「羅生門」がとか「藪の中」がとかではなく、単純に役者小栗旬を見せる映画なんだな。目一杯泣き、怒り、叫び、長台詞語り、馬に乗り、刀振り回し…。松方弘樹も、萩原健一も、小栗旬映画の盛り上げのための福神漬けか、らっきょうの甘酢漬け、あるいは、新聞の写真の中の煙草。まあ、これ以上は言うまい…。

2009年9月30日水曜日

哀しい邦画を見た。

     二日酔いではないのだが、飲み過ぎたせいか腹を下し、朝を抜き二度寝。昼も抜こうかとも思ったが、昨日の朝食の浅利の味噌汁が冷蔵庫に入っていることを思い出し、温めて飲むと消化器系も生き返り、軽いご飯と納豆、いい塩梅に漬かっていた根菜類のピクルス。
    酢で完全復活し、携帯の謎のメモを発見。昨日のプロダクションI社長の所に、同世代の放送局新規事業室長になったT氏が来ると言う話だと確認して出掛ける。そういえば、元の会社で関わった作品を 持って来てくれと頼まれていたことを思い出し、学校の講師室に寄って、CDやDVDをピックアップして大橋に。残念ながら、T氏は来られなくなったが、IさんとMさんとこれからのことの打合せが出来て良かった。

     新宿へ出て、角川シネマ新宿で、森岡利行監督『女の子ものがたり(556)』
    多摩川らしき土手を歩く葵出版の漫画誌の編集者、財前静生(福士誠治)。古い一軒家の玄関を叩く。「あの、誰かいませんか?」「いないよ」返事が後ろからする。犬の散歩の帰りのような漫画家の高原菜都美。「葵出版の財前です。上がっていいですか。」散らかった室内。赤字で寿と書かれた金色の丼にドッグフードを入れ子犬に食べさせる菜都美。「部屋片付けていいですか?」返事を待たず財前はゴミを纏め始める。「漫画好きなの?」「僕、中学の時に高原先生のファンだったんです。」「だったんですか・・・。」「こころの中の箪笥好きでした。」「ああココタンね。全然売れなかったね。」と言って缶ビールをごくりとやる菜都美。「えっ、ビールですか?」「ゼンザイクンも、飲む?」「いや財前です。」菜都美の机を見て、「全然描けていないじゃないですか・・・」「まあ、そのうちやります。」と言って、ソファで昼寝をする菜都美。
    ・・・子どものころ、大きくなったら、家を出て、遠くに行かなければ幸せにはなれない。ここでないどこかに、きっと自分がいてもいい場所があると思っていた・・・・。
 田園風景、小型トラックが走る。荷台には、そんなに多くはない引越しの荷物。運転席には、高原菜都美(森迫永依)、父房蔵(板尾創路)、母光代(奥貫薫)、古びた一軒家で荷物を下ろしている房蔵。部屋では片付けをしている母に、菜都美は、「私がお腹にいた時に、お母さんは海苔が好きだったでしょ。私は、お腹の中で、海苔を枕に眠っていたの・・・。」「アホなことばかり言っていると、新しいお父さんに怒られるよ。外でしばらく遊んでいな。」近くの原っぱに行く菜都美。トタンの小屋の前で、ケンケンをしている二人の女の子がいる。近くに菜都美が行くと「どこの子?」「ねえ、どこの子?知ってる?」「知らない。遊んであげんからね。」「それと、ここウチらの原っぱだから勝手に入らんどいて。」
    菜都美が困った顔をして離れると、草むらに子猫が捨てられているのを見つける。菜都美が抱き上げると、二人が寄ってくる。「あんた名前は?」「なつみ」「触らせてなっちゃん。」「チエちゃん、抱き方いかんわ。」「みさちゃん、取らないで」菜都美は、きみこ(三吉彩花)とみさ(佐藤初)と友達になった。子猫のエサをどうしようかということになり、みさの家に行くが、みさの母親は、うちは団地だから飼えない。父ちゃんの稼ぎもなくて、子供も沢山いるのに、これ以上食べられないと怒って、みさをぶった。きみこの家に行くが、きみこの家は輪をかけて貧しい。家が汚いからと言ってみさは土足で上がる。近所の子供はみんなキミちゃんの家に行くと汚れるから行っちゃいけんと言われているとミサ。冷蔵庫を覗いたきみこは、牛乳なんてハイカラなものはないと言う。原っぱにおいて、明日学校終わりで食べ物をやろうと言うことになった。学校帰りに原っぱに行くと子猫は死んでいた。黒猫は祟ると婆ちゃんが言っていたとみさ。急いで埋めて拝む三人。ふときみこが犬の糞を踏んでしまった。えんがちょだと騒ぐみさ。逃げようとして転ぶみさを、みさちゃんはドン臭いと言うきみこ。三人はとても仲良しになった。
   家で、房蔵の身体を揉む菜都美。房蔵は、菜都美が揉んでくれると気持ちがいいと言う。そして、「なつみ、お前は違うで・・・。お前は人と違う人生を送るかもしれん。」と言って頭を撫でてくれる房蔵。翌日学校の帰り、男子がきみことみさを苛めている。貧乏!貧乏!と言って、ランドセルに貧乏人と書いた紙を貼る男子たち。少し離れたところで、菜都美が困っていると、クラスで背も高く美人なマナちゃんが菜都美に声を掛ける「なっちゃんどんなシール持っている?」あんまり持っていないと答えると、かわいいシール買って貰ったから、今度あげるねと言われる。苛められている二人が気になりながら、マナと一緒に歩いて行く菜都美。
   その後、トタンの小屋の前で、話している菜都美、みさ、きみこ。マナちゃん胸大きいな。ブラジャーしとったな。ブラジャーすると大人になれるんかな?バスに乗って街にブラジャーを買いに行こうということになる。着ていく服がないきみこに自分のワンピースを貸してやり、バスに乗る三人。街のデパートの下着売り場に行くが、紫色のブラジャーを見て、お互いの胸に押し付けあって、逃げ出す三人。翌日、やはりきみことみさが男子に苛められている。そのことに胸を痛めている菜都美を見て、マナは男子をやっつける。マナのグループが怒ると男子はタジタジだ。「なっちゃんに貸しを作った」というマナに、菜都美は「マナちゃん!みさちゃんも、キーちゃんも嫌いだけど、あんたのことが一番嫌いだ!!」と言って、走り出す。呆然と見送る。マナたち、みさ、きみこ・・。
   その夜、布団で寝ている菜都美。房蔵と光代が言い争いをしている。房蔵の会社が潰れたらしい。「そんなもん。潰れたんやから、しゃあないやないか。出て行きたいなら、出て行けばええやろ!!」「なつみと私で、どうやっていけばいいんですか。」「どうもこうも、やる気があれば、どうにでもなるやろ。」「あなたは、私に水商売をやれと言うんですか。」「お前じゃ、水商売は務まらん。」
両親の喧嘩を聞きながら、私は幸せ、私は幸せ。私は可愛がられていると呪文を唱え続ける菜都美。
   光代と菜都美が歩いている。「なっちゃん、お友達を選ばんとあかんよ。そして、いい学校に入りなさい。でないと、おかあさんみたいになってしまう・・・。」「なつみ、おかあさんみたいになりたい。」「アホなこと言うんじゃないの。私は、どれだけなっちゃんのために辛抱しているか・・・。」「おかあさんも、私みたいに呪文を唱えればいいのに。私は幸せ、私は幸せ、私は可愛がられている。」菜都美が絵を描いている。みさときみこが何を描いているのと言う。「あたしの好きな空と海。」「空なのに、青だけじゃなくて、色々な色があるね。」菜都美は、二人に自分宛の手紙を書いて海に投げると自分の夢が叶うと言う。三人で自転車に乗り海まで走る。菜都美は、「どこかに、私のことを全部好きになってくれる友達がいますように!!」と言って手紙の入った牛乳瓶を投げる。みさ、きみこも投げる。
  ・・・・・・私たちは、本当に大人になったら、幸せになれないと思っていた。失敗したコケシみたいな顔の私たちは、不安でいっぱいだった・・・・。
   「先生、今回も恋愛ものですか・・・。先生の作品って、最近恋愛ものばかりですね。交通事故で恋人が亡くなって・・・。」と編集者の財前。「編集さんの希望よ。交通事故がなんだったら、難病ものに変える?」「・・・・。」「ゼンザイクンって名前は?」「静生です。」「ぜんざいしるこ?」「財前静生です。」「ゼンザイクン。クーちゃんの散歩行ってきてよ。友達になってあげてよ、クーちゃんと」土手を犬の散歩をする財前。「ダメ犬、ダメ漫画家、ダメ編集者・・・・・」
   
   高校お制服姿の、きみこ(波瑠)みさ(高山侑子)と菜都美(大後寿々花)がゲームセンターにいる。きみこの眉を書いてあげている菜都美。みさが、あき姉ちゃん(落合恭子)!!!と声を掛ける。最近、彼氏のたかさん(大東俊介)と暮らしているんでしょ。うんまあねと言って、煙草を吹かすあき。こんど家に遊びに行ってもいいですか?とみさが、あきに声を掛ける。  
   あきのアパートの前に三人がいる。嫌がる菜都美を引っ張って行くみさときみこ。声を掛けるが返事はないので、中に入る。1DKの台所から声を掛けても返事はない。覗いてみると、息を呑むきみこ。菜都美とあきも覗いてみると、あきとたかは、騎乗位でセックスの真っ最中だ。刺激が強すぎて、悲鳴を上げて、部屋から走り出す。外に出て、「大人にはなれへん」と言い合っていると、服を着ながら、たかが出てきた。「お前ら、タイミングが悪かったな。また遊びに来いや・・・」そして、きみこを見て「お前かわいいな。愛人にしてやって、店でも持たせてやるわ・・。」
    ・・・・大人になると、この街からみんな出て行く。男の子は、やくざになって得意げに帰ってくる子もいるが、女の子は帰って来ない・・・。「どこへ行ってしまうんやろうなあ。」「香港らしいで。」「香港ってどこ?」「知らへん。」・・・・・・
    菜都美は、みさに手伝って貰って、トタンの小屋に絵を描こうと、白いペンキを塗り始める。すると、自転車に乗って、きみこの母親(風吹ジュン)がやってくる。「きみこが、一昨日から帰って来ないの?」と娘を探している。二人は、たかのアパートに行ってみる。あきは、他の男が出来て出て行ったのだと言う。きみこは、そこにいた。あきは「きいちゃんは、貧乏やから捨てられるで・・・」という。ワシの一月の小遣いは100万円、着ているものは、アルマーニだ。たかさん下着もアルマーニですか?と後輩の男が言う。たかがアルマーニのスーツを脱ぎ始め、それをきみこはたたもうとするが、ただ、折り畳むだけだ。きみこは物心ついた時には父親がいなかったので、男物のスーツのしまい方など知らないのだ。「おまえ、ワシの大事なアルマーニ、しわくちゃやないか。」たかに殴られるきみこ。ごめんね、ごめんねと謝るきみこに、菜都美は、苛立って「何で謝るん?きいちゃん謝るのは違うやろ。」と菜都美。
   ドライブに行くことになる。たかのデカいアメ車のガソリンを近くの車のガソリンタンクからホースで盗む手伝いをしているきみこ。菜都美は馬鹿馬鹿しくて、むくれていると、サイレンが聞こえ、パトカーがやってきた。ホースを持ったままのきみこと、菜都美とみさを残し、たかたちは逃げて行く。「たかさんは、帰ってこない。帰ろう」と菜都美が言っても「きっと、帰ってくるから、待っている」と言い張るきみこ。「待っていたいねん。来なくてもずっと待っている」どんどんムカついた菜都美が行こうと言うと、「あっ、帰ってきた」ときみこ。たかの車は、三人の前を素通りして、パトカーに追いかけられたまま、反対方向に走り去った。
   山の中に置いてきぼりになった三人は、歩いて山を降りる。しかし、歩いても歩いてもバス停さえみつからない。おしっこを我慢していたみさが茂みに走り込む。連れションをして元気が戻った三人は、近道だと歩き始めたが、日が暮れても道もみつからない。河原で焚き火をする(キャンプ場の焚き火のようだ(苦笑))。ガールズトークで笑い合う三人。翌朝、綺麗な滝で、服を着たまま水浴びをする菜都美とみさ。きみこは、すやすやと眠っている。やっとのことで、林道に出る。そこに軽トラが行きすぎる。走って追いかけて、荷台に乗せて貰う。軽トラが銭湯の前に停まる。制止する主人を振り切って、服のまま、お湯に飛び込み、服を乾燥機で乾かす間、バスタオルを捲いて、眠る三人。銭湯を出てきたところに、主人が呼んだ警官がやってくる。逃げだすが捕まった。警察署の廊下、それぞれの母親が迎えに来て帰ってゆく。菜都美は、光代から「だから、ともだちは選びなさいと言ったでしょう。」と言う。急に静かになった廊下に、一人佇む菜都美。
   夕暮れ時、家の前で、ちょっと煙草を買いに出かけるという義父の房蔵に出会う。「菜都美、お前はどこか違うで。他人とは違う人生を送る気がするねん。」と言って、菜都美の頭を撫でて、坂を降りてゆく房蔵。ちょっと煙草を買いに行く筈だった房蔵はしばらく帰ってこなかった。
  



   IMJ製作の原作モノだったことを忘れていたので、愕然として、後悔した。西原理恵子を生み出した高知の田舎、田舎で貧しく美しくもない女の子たちが、大人になること、幸せになることを美しく描き、考えさせてくれる原作だった筈が、自称オーバー30の女性プロデューサー2人の、自分探しの自己満足に使われちゃった感じの映画だ。なんせ、出来の悪いコケシみたいな私たちなのに、キイちゃん(三吉彩花→波瑠)ミサちゃん(佐藤初→高山侑子)役は雑誌モデルだから、きれいで、都会的で、垢抜けて、カッコいい。ちょっと不細工で、カッコ悪いのは、森迫永依→大後寿々花→深津絵里と成長する主人公だけだ(苦笑)。
    昭和の田舎の貧乏な小学生や女子高生の格好、違うだろう。さすがに、歯並び悪くしろとは言わないけれど、口元殴られたのなら、せめて含み綿くらいやってくれ(笑)。小学生で、男子たちから貧乏人と言って苛められるきみこ(三吉彩花)とみさ(佐藤初)。垢抜けて美人の同級生との差は、胸が大きくて小学生なのにブラジャーをしているという点だけだ。身長も体系もきみことかわらないぞ(苦笑)。高校生になっても三人でゲーセンにいるが、本当だったら、制服は改造しまくり、眉毛は無かったろう。煙草じゃなくて、アンパンだ。ヤンキーで煙草吸い、男と同棲しているあき姉ちゃん(落合恭子)と彼氏のたか(大東俊介)のアパートを訪ねて、二人がセックスしているのを見て驚いて逃げ出すが、貧乏で狭い家子沢山の家庭なんだから、そんなに未通女(おぼこ)い高校生はいないだろ。何だか、都会の女子高生のガールズトーク。一晩外泊して、誰もいない銭湯に服のまま入っただけで、駐在所じゃなくて、街の警察署まで連行して親を呼んで説諭なんてしないだろ。これが、女の子版「スタンド・バイ・ミー」なのか(苦笑)。
   更に、漫画家の仕事場兼自宅、連載こそないものの、読み切りの仕事が継続していると言う設定な筈なのに、漫画家と言うリアリティは全くない。
   プロデューサーと監督は、世代的に、田舎とか貧乏とか生活へのリアリティないんだろうか。それだけに、自分たちは大人になっても幸せになれるとは思っていなかったとか、この街を出て行って、二度と帰ってくるなという台詞が本当に薄っぺらいものになってしまっている。目を背けたくなるばかりの現実の前に、私は幸せだと言う呪文や、私のことをみんな好きになってくれる友達が出来ますようにと叫んで、希望の牛乳瓶を投げているのだ。そして、逞しく処女を捨てて大人になるんじゃないだろうか。アルマーニやら何だか高そうな時計やらスーツを男に買って貰う反面、友達から一万借りるんじゃないのか…。本当は、この街を出るしか明日はない奈津美は、そんな簡単に一万円財布から出して貸しちゃうことは出来ないんじゃないのか。少なくとも今の5万円位の価値があるんじゃないのか?
  プロデューサーと監督は、原作で描かれていること以上のことを想像出来ない。素晴らしい原作と、頑張っている出演者がもったいない。まあ、西原理恵子本人は、どっちでもいいんだろうけど。本人カメオ出演。そこだけ昭和のリアルおばさん。

2009年9月29日火曜日

ペ・ドゥナ!!!!

   午前中は、大門の睡眠障害クリニック。

   渋谷に出て、シネマライズで、是枝裕和監督『空気人形(553)』
   夜、レインボーブリッジを走るゆりかもめの客席に秀雄(板尾創路)の姿がある。コンビニで、シャンプーの香りを確かめる秀雄。雨の中走って古いアパートのドアを開ける。部屋で、コーヒーを手に、働く店の同僚の噂をしている秀雄。向かいの席に座っているのはラブドールだ。
  その後、ベッドで、ラブドールを抱きながら、「のぞみ・・・きれいや・・・。」と声を出す秀雄。かっての彼女の名前らしい。翌朝、ラブドールの取り外し式のあの部分を丁寧に洗う秀雄の姿が浴室にある。「のぞみ、行ってくるで。」と秀雄が出掛けて行く。ベッドに横たわっていたラブドールがゆっくり揺れている。息使いが聞こえる。いつの間にか人形は立ち上がる。全裸のまま、開いた窓の外にある手すりの水滴に手を伸ばし、「キ・レ・イ・・・キ・レ・イ・・・」と呟く。窓の外を見ているノゾミ(ペ・ドゥナ)。
  ノゾミは、そこにある服を着てみる。セーラー服、スパンコール付きのブルーのビキニ、掛かっているメイド服を着てみて満足そうに鏡に映す。外に出るノゾミ。何か開発から取り残されたような一角だ。目の前にゴミの回収場所があり、通勤、通学途中の近所の人々がポリ袋を捨ててゆく。目の前に老婆千代子(富司純子)が、擦れ違う人や、印刷屋の中に、挨拶をしながら歩いている。後ろを歩きながら、老婆の動作の真似をしているノゾミ。老婆は交番に行き、巡査轟(寺島進)相手に、テレビでやっていた事件の犯人は自分だと自首するのだ。あの犯人は、もう捕まったよと答える轟。保育園のお散歩のあとを歩くノゾミ。園児がノゾミの伸ばした手を握るが、「冷たい!!」と走って列の戻る。・・・私は空気人形・・・。空っぽな、性欲処理の「代用品」・・・。
   ノゾミは、レンタルビデオ屋シネマサーカスの前に立つ。自動ドアが開いて中に入るノゾミ。カウターに店員の純一(ARATA)を見つめる。「心」を持ってしまった・・・。持ってはいけない「心」を持ってしまった。


   ペ・ドゥナ主演。何だか変な顔なんだけど、好きなんだな。この話は甘ったるいなとか、この登場人物は少し薄っぺらいなとか、途中思うことは沢山あるのだが、ペ・ドゥナが出ているだけで、全てオッケーだ。メイド服姿が、オールヌードがとかもあるが、空気が抜ける時と、空気を吹き込まれる時の切ない表情を見るだけで最高だ。素晴らしい!!自分の今年の主演女優賞は、勿論ペ・ドゥナで決定だが、ペ・ドゥナが出ているだけで、作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、技術賞…全部門独占させてもよしと言う気分だ。痩せてるなあ。何か美味しいものを食べさせてあげたい気持ちだ。

   シネマヴェーラ渋谷で、追悼、長谷部安春
   71年日活蔵原惟二監督『不良少女 魔子(554)』
   渋谷のボーリング場、魔子(夏純子)が男に勝負しないかと声を掛ける。魔子を見た男は勿論オッケーだ。意外な程の強さで魔子が勝つと、魔子の仲間のズベ公たちが現れ、男を裏に連れて行く。大して金を持っていないチンケな男だと悪口を言うズベ公たち。ユリ(戸部夕子) ナナ(相川圭子春美(美波節子) 早苗(太田美鈴)おカズ(原田千枝子)。
   魔子は、仲間と別れ一人で渋谷の街を歩く。途中、子犬を拾う。可愛がる一方、子犬を放り投げたり、魔子は気まぐれだ。最後には、車のブレーキ音がして、子犬の悲鳴が聞こえるが、顔をしかめただけだ。再び魔子と合流するズベ公グループ、歩きながら、みんなで「タンタン、たぬきの金玉はかーぜもないのに、ブーラブラ」と合唱する。何だか可愛らしい(笑)
   ディスコで、ズベ公の仲間たちと踊り狂う魔子。そこに、不良青年たちがやって来る。その中の秀夫(清宮達夫)が、魔子に目を付ける。一緒にどこか行かないかと声を掛けると、マリファナが手に入る所があると言う魔子。オープンカーの助手席に魔子を乗せ、言われるままに行くと、人気のない行き止まりだ。秀夫が不審に思うと、ズベ公たちが現れる。秀夫を殴り有り金を巻き上げ去る魔子と仲間たち。
   女子高生のスケ番たちが、婦人下着屋で万引きをしている。宮下公園で、魔子たちと擦れ違う。かっぱらった下着に魔子が気付き、スケ番たちを袋叩きにして、万引きしたものをカツアゲする。意気揚々と山手線のガードをくぐり抜け、今のタワーレコードのビルの横に出ると、徹(小野寺昭)や洋次(岡崎二朗)たちが、秀夫の仕返しをしようと待ち伏せしていた、みんなズベ公たちは殴られ、魔子は徹たちの車で拉致られる。
   サブ(清水国雄)のオヤジ(河上喜史郎)が経営する自動車整備工場が、彼らのアジトだ。徹は、魔子を秀夫と二人部屋に閉じ込め、昨日の仕返ししてやりなと言う。秀夫は、お前ら汚いぞと言いながら、魔子を殴る。



    なぜ蔵原惟善の弟の惟二の監督作が、と思ったら、別名で脚本を書いていたのだ。


   69年日活長谷部安春監督『広域暴力 流血の縄張【しま】(555)』
   関東桜会を解散させると、桜会会長で、藤岡組組長藤岡伸作(見明凡太郎)が解散声明を読み上げ、自分に続いて署名をしてくれと言う。警視庁の暴力団撲滅運動の強化により、昭和44年ヤクザの看板を下ろし、"カタギ"の仮面に掛け替え始めた時代のことである。藤岡組代貸で桜会副会長の板倉和夫(葉山良二)が、関東の各親分たちに回す。上村組組長上村覚、遠井組組長遠井隆弥ら次々と署名をするが、三人目の大野木組組長大野木幸次郎(加藤嘉)は、自分の組は解散しないと言う。今まで、何の手入れも受けてこなかった大野木組は別に代貸の矢頭清一(中丸忠雄)も、150人の一家のため、シマの平和のため看板を下ろさないと言う。騒然とする中、組員の小松勇治(小林旭)を呼び、帰って行く大野木組の三人。示しがつかないと騒然とする会場だったが、我々も堅気になったのだとしばらく様子を見ようと言う藤岡。
    組に戻ってきた大野木たち。客分の湊茂夫 (髭のない藤竜也)が黒猫を抱きながら、組を無くしちゃいけねえ、組を無くした自分が一番身に沁みていることです。最近シマ内で、チンピラや愚連隊が小さな騒動を起こしている。今まで無かったことだ。そこに、美しい女(姫ゆり子)が訪ねてくる。クラブ・バッキンガムの岡野道代と名乗り、シマ内に開店したので御挨拶に来たと言って帰ってゆく。菓子折りと一緒に、100万の小切手が入っていて驚く組員たち。
   そこに、連込み旅館から、チンピラ達が嫌がる娘を手篭めにしようとしていると電話が入る。駆け付ける勇治、湊、サブ(岡崎二朗)たち、服を脱がされマワされそうになっていた娘(牧まさみ?)を間一髪で助ける。チンピラたちを叩きのめす。少し前にパチンコ屋で暴れていた男たちだ。一人リーダー格の男を絞め上げて、誰に命じられたと迫る。中々口を割らない男の腕に湊はドスを刺す。あまりの苦痛にクラブ・バッキンガムにいる男に頼まれたという。バッキンガムに行き、男(名和宏)を呼び出す。なかなか胆の据わった男だ。そこに、矢頭が現れ、「陣野さん、あんまりじゃないですか・・」と言い、勇治たちを引き揚げさせる。
   矢頭は女房が女将をする小料理屋に、勇治たちを連れてくる。サブは女将の和江(峰京子)の実の弟だ。陣野は、関西連合会会長の陣野万之助(須賀不二男)の弟の政吉だと言う。関西連合会が大野木組のシマを狙っていると騒然とする組員たちに、軽挙妄動するなと厳命する矢頭。
  その頃、陣野政吉は、クラブ・バッキンガムのママ道代のマンションにいる。おめえは俺の持ち物だと言って、道代を抱く政吉。

    東映の任侠ものとは、少し違う手触りだ。

    夜は、外苑前の粥屋喜々で、20年ほど前にJというバンドの仕事でご一緒したプロダクション社長のIさんと、ハイパー・コピーライターのT氏と、友人N氏とで会食。何だか、かなり酔っ払った。いかんなあ。
  

2009年9月28日月曜日

「かもめ食堂」「めがね」に続くシリーズ第3弾って言ったら・・・。

   赤坂メンタルクリニック。

   新宿ピカデリーで、大森美香監督『プール(550)』
  タイ、チェンマイ。ゲストハウスの庭にあるプールに落ちた枯れ葉を掬うタイ人の少年。「ビー」呼ぶゲストハウスの女主人、京子(小林聡美)。「ビー、買い物に行こう、夕飯何がいい? 」「チラシ・ズ・シ…」とビー(シッティチャイ・コンピラ)「ちらし寿司?」と京子。
   バンコクの空港、東京からの飛行機から降り立ったらしい、少年のような娘(さよ)。スーツケースを引き、到着ゲートを出てくる。出迎えを探すが見つからないようだ。バッグからタイ語のガイドブックのようなものを出していると、「伽奈さんですよね?」と声を掛ける男(加瀬亮)。「出迎えが男の人だと思わなくて…」と伽奈。「まだ夕食まで、時間があるので、どこか見ますか?」と言うが、何の当てもないようだし、いきなり躓いて転んでしまう全く頼りない男だ。
    そこに市尾の携帯がなり、そこに行きますと答えている。案内された先は、涅槃仏のある寺院だ。そこには菊子(もたいまさこ)と言う女性が待っていた。菊子も、今日の夕飯を誘われていると言う。3人が、京子のゲストハウスに戻った。「また背が伸びたね」と京子。「子供じゃないから、もう伸びないよ」「そのワンピース似合っているよ」何かぎこちない伽奈と京子が母娘だと知って、驚く市尾。しかし、伽奈も、タイ人の男の子ビーを、こともなげにウチの子と言う母親に面食らう。「産んだの!?」「9才だから違うよ…」。4年振りに会う母親には、やっぱり打ち解けられないのだ。京子が用意した晩餐を、疲れているからと言って、部屋に戻る。横になって、気がついたら翌朝だった。窓を開けると、綺麗な庭が広がっている。
    伽奈が、台所兼居間に行くと誰もいない。テーブルにあったバナナを食べてぼーっとしていると、京子が戻ってきた。パンと卵でいいでしょと京子。私が作ると伽奈。ほうといった表情で、娘の成長を感じて京子は任せながら、自分も野菜を切る。母娘で台所に立つのは何年振りか、初めてなのか、すこしぎこちない。パンとスクランブルエッグとベーコンの朝食をとる母娘。
    「みんなは?」「もう働いているわ・・・。菊子さんは散歩、市尾さんは仕事・・・」「あの子は?」「小学校に行っているわ。」「ふーん。」
    伽奈は庭に出てみると、プールに気が付く。水辺で足を濡らし気持ちよさそうに揺らしている娘を、遠くから微笑ましく見ている京子。
    小学校からビーが帰ってきた。お腹が空いたというビーに、揚げバナナを作ってやる京子。同じテーブルに付くが、話しかけてくるビーにあたってしまう伽奈。再びプールに出てみると、市尾がいる。市尾は、タイの小型の熱気球ロイカトーンを作っていた。「あの子はどの位日本語が分るの?」「えっ?」「何だか大人げないことを言ってしまって・・・。悪いことをしたと思っています。」「ギーなら大丈夫ですよ・。」

   始まるまで、「かもめ食堂」「めがね」に続く作品だと思っていた(苦笑)。桜沢えりかが原作で、昔大好きだったのでまあいいけど。「ヒット作『かもめ食堂』『めがね』の製作陣が再結集したこの癒し系ムービー」という惹句は厳しいな。ジェリー・ブラッカイマー製作総指揮(「トップガン」・「アルマゲドン」「パイレーツ・オブ・カリビアン」)という感覚で監督やキャストが無名な場合はプロデューサーで売るのは映画業界の常識だけど、せっかく、「かもめ食堂」で掘り起こした新しい女性映画ファンに、オーガニックレストランのシェフが、近所のスーパーで買い物しているのを見ちゃったという気分にしているんじゃないだろうか・・。第一、大森美香が可哀そうだし、荻上直子には失礼だそういう表現も二人に失礼か(苦笑)
   「めがね」は見ていないので何とも言えないが、「かもめ食堂」は、トーンが違う記憶だが・・・。この分では、三谷幸喜の妻が出演とか、「やっぱり猫が好き」の出演者が再結集とか(苦笑)。確かに海外ロケで、テレビ局出資なので、バジェットも多いとは思うけど、製作委員会の各社のプロデューサーたちが、現地に表敬訪問しないだけでも倹約になったのでは・・。というより、試写会呼んで貰ったお礼に、貰ったプレスリリース通りに紹介する映画ライターたちと映画コーナー編集者が最低。

   少年のような主人公役さや、小林聡美、もたいまさこ、タイの子供、唯一の成人男性が加瀬亮…。女性、男性、母性など性と言うのかセクシャリティを感じさせない映画だ。こうした映画も決して嫌いではない。
  しかし、せっかくスクリーンで観ていても、あまりタイの空気とか風を感じられないのと、時々、言葉が説明的に感じられてしまう。細かい言い方に変えれば、広い絵の時に、ピンがぼーっとしているのは、狙いなのか、撮影の問題なのか、上映の問題なのか、私の視力の問題なのか…。
  更にもう少し、テレビじゃないのだから、台詞をもっと切ったほうが、小津や成瀬のように、静かに、映像が語る映画になった気がするのだが…。

    ラピュタ阿佐ヶ谷で、CINEMA★忍法
     
    68年宝塚映画川崎徹広監督『風来忍法帖 八方破れ(551)』

    一作目より続編のほうが各段によいと随分と書かれていたので観るが、比較論だな(苦笑)。ただ、どうも撮影してみたら、長くなりすぎて、切ることができずに、前後篇に分けて公開。起承部分の全編はあまりに評判悪く、転結にあたる後編の公開まで3年開いてしまったという印象だ。

    65年東映京都長谷川安人監督『忍法忠臣蔵(552)』
    元禄十四年、江戸城に詰める伊賀のお庭番、無明綱太郎(丹波哲郎)に仲間が耳打ちをする。「そんな訳はない。おゆうは私の許嫁だ。お庭お目見えと言ったら、殿のお手つきになってしまうでないか!?」
   男子禁制の大奥に忍び込み、廊下を渡るおゆう(桜町弘子)に駆け寄り、声を掛ける。表情を変えず、殿の御意向に従うのが忠義だと言い放つおゆう。将軍綱吉(神戸瓢介)の寝所で、おゆうを正に抱こうとした時に、布団が宙に舞い、這いまわる綱吉を高笑いして無明は消える。(原作では、おゆうを斬り捨てたとなっている)
   ちょうど、浅野内匠守の松の廊下での刃傷沙汰が起こり、その隙に、無明は江戸城を脱出し、日光・奥州街道を宇都宮へと逃げる途中、10名程の忍者がつけて来ていることに気づき、誰の命だと言って、斬り捨てる。能登忍者万軍記(佐藤京一)らは、無明の前を行く虚無僧姿の二人の女を追っていたことがわかるが、追っ払う無明。二人の女は、上杉家城代家老の千坂兵部(西村晃)の娘織江(桜町弘子)と侍女卯女(岡島艶子)だった。江戸屋敷で、主君上杉綱憲(五十嵐義弘)が、織江を側女として、夜伽をせよと言い張るので、逃げ出して来たのだと告白した。織江が、おゆうと瓜二つなことに驚く無明は、織江に誘われるまま、千坂家の屋敷に居候となった。
    城から戻った兵部は、無明を呼び、蔵に閉じ込める。蔵の中には、くノ一のお琴(阿井美沙子)、お弓(三島ゆり子)、お桐(小島恵子)、お梁(扇町京子)、お杉(弥永和子)、鞆絵(内田高子)、6人がいて、無明を誘惑する。兵部は、卯女に上杉家の大事なので、もし無明が一晩くノ一たちからの誘惑に勝ったら、お家の大事の秘密を明かして重大な任務を頼もうと思っているという。それを盗み聞きしていた織江は、無明はそんな誘惑に弱いお方ではないと言い張る。兵部は、織江が無明を愛していることが分ったが、お前にもお家大事のときには重要な任務が待っていると告げる。

2009年9月27日日曜日

女優魂

  「女優魂 中原早苗」を読み始めると止まらない。面白い。中平康監督の「学生野郎と娘たち」のノエミや、「あいつと渡し」の白川貴子のような、美人で、粋で、頭の回転もよくて、ポンポンと思ったことをストレートに小気味いい位に話す人なんだろうな。人によっては相当ムっとするだろうが(苦笑)、監督や共演者に対して、思ったままに切って捨て、褒めて、決して驕らないコメントは小気味いい。本人の芸名、中原早苗は、田絹代と節子から取られたと言うのと、深作欣二との間の長男の深作健太は、高倉と菅原文から取られたという中々味な話は少し笑えた。

破天荒なものは実力が必要だ。

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、CINEMA★忍法帖
   65年宝塚映画川崎徹広監督『風来忍法帖(549)』
  天正18年、天下統一のため豊臣秀吉(有島一郎)は、石田三成(堺駿二)と共に、北條の小田原城攻めを行っている。そんな中、北條方の足軽相手に、賽子博打で、身包み巻き上げている男達がいる。悪源太なり平(渥美清)腎虚兵衛 (佐藤允)なんぼベンケイ(佐々十郎)。彼らは香具師らしい。

  実は足軽たちは、丁しか出ない筈の自分たちのイカサマ賽を使ったが、悪源太は何枚も上手だった。足軽たちは下帯以外全て奪われる。更に山中砦から、女たちが逃げるのを護衛するという役目も。三人は、その女たちを横取りして、売り払えば170両の銭に化けるだろうと皮算用したのだ。
護衛の侍大将を縄で縛りあげ木に吊るし、悪源太は、20人ほどの女たちに、赤い花を手に迫って行く。どんな女も、悪源太にかかると、身を許し、言うことを聞くようになるのだ。女たちは、うっとりした表情になり、着物を脱ぎ始める。虚兵衛と、弁慶も加わって、女たちを抱こうとすると、煙玉が投げられる。
    気が付くと、三人は女ではなく木に抱きついており、女たちも消えている。笠を被った僧侶姿の5人組がたちはだかり、女たちは連れていくと言う。彼らは口から針を飛ばし、火を放つ。一人が笠を脱ぎ棄てると、美しい娘だ。「下郎懲りたか!女を金に換えようとは、犬畜生にも劣る連中だ!!」
  悪源太は、その娘の美しさに一目惚れ。懲りずに寄っていくと、一人の男が、「忍法もぐら落とし!」と忍術を掛けると、足もとに穴が開き落ちる悪源太。必死に這い上がろうとするのを足で踏む女。僧侶姿の怪しい忍術使いたちは去って行った。「くそ、ぜったいあの女をものにしてやる。ヨツにカマってやる(強姦してやるということらしい)」と悪源太。
   小田原城に、先程、僧侶姿だった娘が、美しい着物姿で座っている。北条方一のキレ者、執権の松田尾張守(戸上城太郎)が、「どこに行っておられました?」「散歩です。」「姫様。城外は危険でござる」と言い、配下の風魔忍者の頭目風摩小太郎(平田昭彦)と戸来刑四郎(千葉敏郎)、御巫燐馬(早川恭二)、黒破連斎(川治誠)に麻也姫から目を離すでないぞ!!と命じた。
   その頃秀吉の陣地では、石田光成を含めた家来たちを前に作戦会議中だった。忍城城主、太田三楽斎(藤田進)を味方につけられるかが肝心で、そのためには三楽斎の孫娘で、小田原城で人質となっている麻也姫(中川みき)を奪還することが重要だと進言する光成。太田三楽斎は、太田道灌の孫で秀吉は、あまり関心がないようだが、その麻也姫は美しいのかと言うことだけに興味を持つ。
17歳3か月という年齢にも触手を動かしたようだ。光成配下の伊賀忍者に、麻也姫を拉致して来いと命ずる秀吉。
   小田原城下で、弁慶が特効薬・陣中膏の露店を出している。そこに、武士に追われた百姓が逃げてくる。目の前で指を斬り落される百姓。弁慶は、百姓の手に陣中膏を塗り布を巻く、あら不思議、切り落された筈の指がくっ付いて、動くようになっている。その効用を見た通行人は我も我もと手を伸ばしている。勿論、武士は腎虚兵衛、百姓は悪源太、子供騙しの田舎芝居だ。しかし、しばらく後、遊廓で女たちをはべらせて、酒を飲む三人の姿がある。そこに、南条練平(波田久夫)という怪しげな浪人がやってくる。小田原城の風魔忍者が人を集めているので、一緒に参加しようというのだ。腎虚兵衛と弁慶は気乗りがしないが、下見に行った小田原城内に、麻也姫の姿を見た悪源太は、少しでも彼女に近づこうと風魔忍者に加わることにする。
   尾張守は、北条家の成田左馬助(加藤春哉)と麻也姫を夫婦にしようと考えていた。三楽斎は、孫娘の縁談には同意していると、尾張守は言うが、うらなりの瓢箪のような左馬助がどうしても、好きになれないし、祖父がそんなことに同意したと言われても信用できない。どうしても、三楽斎に会いに行きたいと言い出した麻也姫が、忍城に行くことを仕方なしに同意し、小太郎に絶対目を離すなと言った。

   オープニングは、結構派手に始まり(ひょっとして、他の映画の馬上の合戦シーンかもしれないが・・・)、なかなか魅力的な出演者、かなりワクワクしながら見始めたが、途中からどんどん失速し、息切れしてしまう。やっぱり山田風太郎の破天荒な世界を映画化するのは、そうとう大変なんだろう。こりゃひどい・・・。

    なかの芸能小劇場で、快楽亭ブラック毒演会 映画秘宝寄席

    恐る恐る、後輩Kを誘って出掛けると、想像を大幅に裏切って、かなり楽しめた。放禁落語家の二つ名を持つ快楽亭ブラックは、映画だけでなく、本当に落語好きなことがわかる。30年程前にZOOM UPと言うエロ本で映画紹介を書いていた立川一門の前座か二つ目の落語家として、知って以来、イベントや映画館で幾度となくお見かけしていたが、ちゃんと落語を聞くのは、初めてだ。良かった。本当に良かった。立川一門を破門になり、色々な曲折を経て、敢えてアンダーグラウンド落語家として活動する彼の姿は、かっての生涯落語家のような落語に殉じた男の生き方をなぞっているかのようだ。今日のネタにも出たような、月曜日朝4時しかテレビに落語番組が存在しない(勿論、「笑点」が落語家が出演出来る番組で、落語番組でないと言う前提だ)今、落語家が落語を語れるウィンドウ(窓)は、寄席などライブしかないのかもしれない。
  坂元頼光がゲストで出て、サザザさんと、快楽亭ブラックと鈴木則文監督のオープニングを。youtube では何度もみていたサザザさん。初めて生で見たが、やっぱり最高だなあ。