2008年12月24日水曜日

悲しい女が似合う女優坂井真紀。

     渋谷シネマヴェーラで、官能の帝国ロマンポルノ再入門2
     83年日活中原俊監督『3年目の浮気(378)』。専業主婦の京子(門万里子)と、人形メーカーの企画部に勤めるサラリーマンの秀樹(阿部雅彦)は結婚して3年目。秀樹は会社のOLで、最近パパと別れたばかりの知美(林亜里沙)に迫られ浮気をしている。妻の京子は水泳教室のコーチ川又(金田明夫)に独身だと言っている。隣に住む大家の夫婦、斉藤又一郎(鶴田忍)、博美(朝比奈順子)は、非常にSEXにオープンで積極的だ。ヒロシ&キーボーの「三年目の浮気」のヒットで企画された、3年目の少し倦怠期を迎えた夫婦の危機を描くコメディー。
  未見、根岸吉太郎脚本、中原俊監督ということで、少し期待していたが、まあ、ロマンポルノの末期。手慣れた作り方ばかりが目について、退屈だった。
 78年日活田中登監督『人妻集団暴行致死事件(379)』。
   東京から荒川を渡った埼玉県吉加谷市の旧住民の若者有田善作(酒井昭)20才は、ガス会社のガス管埋設の仕事をしている。その日は、大雨で仕事は中止に、ガールフレンドの八重子(志方亜紀子)と食事をして「ロッキー」を見た。3回目のデート、なんとかモノにしたいと迫るが、拒絶される。農家の息子池本礼二(深見博)19才は、鋳物工場を辞めて、家の畑を手伝っている。職安に失業保険を貰いに行くと、中学の1年先輩の歌川昭三(古尾谷雅人)20歳に会う、白タクをしている昭三はキャバレーで働く元スケバンの尚子(日夏たより)と優子(岡麻美)を紹介してくれると言う。優子は頼めばやらせてくれるというのだ。女将(絵沢萌子)の飲み屋ヤマサトで、3人は再会。直子たちの勤めるキャバレーに行こうとするが、所持金が足りない。そこに荷台に卵を積んだ車が止まっている。捌くルートを知っていると言って自分たちの車に積み替えさせる昭三。しかし、直子たちのキャバレーはもう閉店していた。川に卵を投げ捨てる3人。
   翌朝、善作と礼二は家族に起こされる。昨晩の卵泥棒が通報され、既に昭三は警察に捕まっているという。礼二の祖父は、被害者の江口泰三(室田日出男)のもとに2人を連れて行き、謝らせた上に、金を払って示談にしてくれるように頼んだ。泰三は、元々上野で香具師をしており、人がいい。警察に直ぐに行き、昭三も貰い下げた。3人に焼き肉を奢った上に、後の小遣いまで渡す泰三。その金で、尚子と優子を誘い、3人は思いを遂げる。しかし、善作と礼二の性欲に油を注いだことにしかならなかった。善作と礼二が帰宅すると言うので、昭三は実家に帰る。藍染めを営む父親(小松方正)は、他の2人は親が動いてくれたので、警察に入らず済んだのに、酷い親だという昭三に、こんな親不孝な息子は知らないと言う。父子2人殴り合いだ。兄は笑っているだけだ。母親一人とりなそうとするが、まずは謝れしかいわない母に、昭三はいたたまれず、家を出る。
   昭三がアパートを借り、引っ越し祝いをすることになる。直子たちも来るので、いつもお世話になっている泰三も呼ぼうと言うことに。しかし、礼二が泰三を連れてアパートに行くと女の子はいない。団地の大学生たちにドライブに誘われて帰ってしまったのだ。せっかくの若い連中の好意に応えようと、酔わせると裸になると言う噂のヤマサトの女将を呼ぶ。盛り上がったが、部屋の中で小便までしてしまう女将。酔った女将を途中で撒いたが、泰三は酔いつぶれてしまった。3人は送って行くが、泰三の家に着いた時、泰三の妻枝美子(黒沢のり子)を強姦してしまう。江梨子は心臓が悪く死んでしまう。
  日活ロマンポルノの中では、傑作としてあげられることの多い作品。長部日出雄の原案をもとに、佐治乾脚本。古尾谷雅人がセンセーショナルに登場した「女教師」に続いて、また確か「嗚呼!!花の応援団」のオーディションから出てきた深見博らが、ギラギラした近郊の不良少年として好演、また「サード」でデビューした志方亜紀子と、当時は「音楽」から久しぶりの登場の印象だった黒沢のり子という二人の少年たちの欲望に花を散らす無垢なヒロイン二人など、見るべきものはたくさんあるが、何よりも、干されていたピラニア軍団の兄貴分の室田日出夫が、非常に力が入った素晴らしい演技を見せる。
   ヒューマントラストシネマ文化村通りで、熊切和嘉監督『ノン子36歳(家事手伝い)(380)』。
   ノン子は、かって売れない芸能人だった。マネージャーだった夫宇田川(鶴見信吾)と離婚し、実家の神社に戻ってきている。何もなく、行き場のない田舎町へのやりきれなさに、ノン子の屈託は深まるばかりだ。神主の父(斉木しげる)は、自堕落な娘に腹を立て、母(宇都宮雅代)は、殺伐としたノン子の気持ちを持て余し気味だ。同級生の富士子(新田恵利)に会う。やはりバツイチだが、母親から引き継いだ和風スナック藤のママをしている。
  ある日、若い男マサル(星野源)が神社を訪ねてきて、お祭りの時に店を出させて欲しいという。縁日は香具師の仕切りなので、安川時生(津田寛治)のところに何故かノン子が連れて行くことに。神主修行中の義弟の要領を得ない連絡のせいて、何度も無駄足を踏む2人。やっと会えた時生は、届け出や他の店への承諾が必要なので駄目だと言う。しかし、ワタルは、香具師は義理と人情の人なので、最後には承諾してくれるだろうと判断する。
  富士子の店で、煙草を買ってくると言って放り出されたマサルは、なぜかお祭りの日まで、ノン子の家に居候することになる。ノン子の父は、薪割りなどの手伝いをさせる。不器用で、しかし何かをしようとしている若者にノン子の気持ちは動き始めている。元夫の宇田川が、復帰の話をもってやってくる。断りながら、しかし気持は揺れ、一夜を共にしてしまうノン子。
   ひよこが詰められた沢山の段ボールが届く。マサルは、オスのひよこが破格の値段で売ってもらえることを知って、夜店で売って、ひと儲けしようと考えたのだ。しかしお祭りの日、大雨が降り、延期になってしまう。泥だらけのひよこを一つずつ洗っているマサルを見ているノン子。逃げたひよこを二人で追いながらいつのまにやら笑顔が戻っているノン子。マサルと結ばれるノン子。この街を出ることにしたというノン子に、お祭りが終わったらいっしょに旅しようというマサル。しかし、ノン子の街を出るという意味は、東京に出て、もう一度やり直すという意味だ。
  ようやく、お祭りの日がやってきた。いきなり、時生に、土下座をしてひよこを売らせてくれと言い出すワタル。驚きながら、断った筈だという時生。お前らは義理人情じゃないのかというマサルに、お前には義理はないという時生。時生にしがみついて許すまで離れないというマサルを、香具師の若者たちが引き剥がして、痛めつける。ノン子の父親が止め、とにかく出て行ってくれとマサルに言う。
 そのころ、ノン子は、巫女姿で祭事を手伝う筈だったが、怪しげな変装をした元夫の姿を見つける。東京に戻るというノン子に、いきなり土下座した宇田川は、再デビューの話は嘘で、先日は借金の保証人になってもらいに来たのだと謝る。更に、富士子が借金の相談に乗ってくれるので、もうノン子は無用になったと言う。キレるノン子が家に戻るところを、ボコボコにされたマサルが追いかけてくる。祭りのお囃子が鳴っている。うるさい!と叫んでうずくまるノン子。気がつくと、お囃子の音とマサルの姿が消えている・・・。
   この後の破天荒な展開とあっけないエンディングは、新作だし書かない。好き嫌いは分かれるだろう。しかし、自分は、「鬼畜大宴会」に感じた違和感が少し弱まった。熊切監督よくなったなあという感じだ。自分勝手に思い込んだストーリーで他者に期待していたことを裏切られて、暴力的な衝動でぶち壊してしまうマサルは、最近の無差別殺人に通じるものを感ずる。ノン子が出した結論は、こういう感じなんだと思う。坂井真紀、「連合赤軍」といい、救いのない少し痛い女の役が似合う女優になったな。
  地元でミニ忘年会。今日も少し飲みすぎに。

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