2009年4月15日水曜日

嗚呼!花の応援団。懐かしいのネンのネン。

   新文芸坐で、芸能生活70周年、淡島千景の歩み
   57年松竹大船渋谷実監督『気違い部落(246)』
   緞帳が降りたステージ。司会者風の男(森繁久彌)が下手から現れる。解説者らしい。東京日本橋、車が溢れかえっている。そこから西南に50~60㎞先に、この映画の舞台となる“気違い部落”がある。この部落は、14世帯、一世帯当たり2反の石だらけの田畑。むろんそれでは食べられないので、何かしら兼業をしている。一時間に1本しかないバスの停留所の名無し川の前は、金貸しの川端又一(須賀不二夫)の家だが、家の軒先にパスを待つ者に勝手に座って欲しくないため、五寸釘を剣山のように立ててあるほどのケチだが、部落の意見を纏める、二人しかいない親方の一人だ。すぐ近くの味噌、醤油、酒始め何でも商う店は、木崎三造(信欣三)の妻お紺(清川虹子)がやっている。この店は、塩には水差しで、目方を増やし、酒は水で薄めている。大倉仁太郎(藤原釜足)の妻。自転車の主人は青木助夫(三井弘次)。もう一人の親方は、機織りの工場を営む部落一番の金持ちの野村良介(山形勲)。妻のお三重(三好栄子)長男の太一(諸角啓二郎)と東京に行っている次男の次郎(石浜朗)。良介は、機織りに働きに来た女は手当たり次第に手を付けてしまう。
    下の部落の男たちが、チョボ一賭博の勝負をつけにやってくる。自転車屋の助夫は、又一と良介に報告に行く。軍資金とメンバーが大事だ。村田鉄次(伊藤雄之助)を誘おうとなり、鉄次ね家に行くと、女房のお秋(淡島千景)がウチのような貧乏人は、こんな時間に上がっていたら、飢え死にすると愛想がない。裏山に行くと、鉄次は、何故か鉄次と焼き印を押した杭を打ち縄張りしようとしている。鉄次は、博打のような悪さはもうしないと言う。良介らは、鉄次が親方の座を狙っていると言う噂を聞いて不満顔だ。
    良介と鉄次の仲が悪いことを鉄次の娘の光子(水野久美)は心配顔だ。弟の保(藤木満寿夫)に、良介の次男の次郎が手紙を渡してくれと頼む。夜、朧月夜の中で、光子と次郎はランデブーする。しかし、二人はきれいな関係だ。ただ、光子は風邪がなかなか治らないといって、時々咳をするのが気がかりだ。次郎は、東京では大学を出たのに、クリーニング屋の配達をしている。今度、国会のエレベーターボーイになると言う。この仕事で何とか代議士にコネを作って議員秘書になろうと思っているのだ。その時、バイクの音がする。駐在の酒盛巡査(伴淳三郎)が、山道を登っていく。その頃、部落の寺では、チョボ一賭博の真っ最中だ。

野村良介(山形勲)太一(諸角啓二郎)次郎(石浜あきら)お三重(三好栄子)川端又一(須賀不二夫)
木崎三造(信欣三)木崎お紺(清川虹子)大倉仁太郎(藤原釜足)おらく(賀原夏子)お千代(瞳麗子)土屋俵太郎(中村是好)孫娘(町田祥子)酒盛巡査

    56年大映市川崑監督『日本橋(247)』
    日本橋元大工町に、自殺した芸者のお若の幽霊が出ると噂の露地がある。そこに、稲葉屋お孝(淡島千景)が引っ越してきた。九人の芸者を置き、手狭なので、怪談話を笑い飛ばしてやってきたのだ。お孝を、赤熊と呼ばれる五十嵐伝吉(柳永二郎)が訪ねてくる。赤熊は、北海道の出身で、一時は海産物の商いでかなり羽振りが良かったが、すっかり身を持ち崩し、樋熊の毛皮を身にまとい乞食に落ちぶれていた。かって入れあげたお孝が忘れられず何かとつきまとっていた。お孝は、所詮芸者の自分とは、飽き足ら別れるという約束の関係、昔のことを持ち出されてもしょうがないと叩き出す。
   ある夜、お孝は、半玉のお千代(若尾文子)を連れて、待合いのお鹿の座敷に上がった。女中上がりの女将(沢村貞子)は、自分の店を恐縮するが、お孝はそういうことには拘らない気性だった。しかし、隣の座敷に一人でいる客が、この界隈では一番の人気芸者の滝の屋清葉(山本富士子)に熱を上げていると聞いて嫉妬心を燃やす。お孝は、清葉の客というだけで、冷静ではいら
れなくなるのだった。赤熊こと五十嵐伝吉も、元は清葉に振られていた客に、自分から声を掛け、いい仲になったのだった。お座敷を出る時に、清葉とすれ違ったお孝は、少し前まで、女将への言葉とは正反対に、こんな安い座敷に清葉姉さんともあろう人が上がるのは、問題だと皮肉を言う。
   清葉を呼んだ客は、実は東京帝国大学の医学博士の葛木晋三(品川隆二)だった。葛木は、幼い頃に両親を亡くし、ただ一人の肉親の姉が身を売り男の妾になって弟を大学にまで進ませた。今は行方不明になってしまった姉の面影を清葉に見て、告白したのだ。清葉は葛木の気持ちを嬉しく思いながらも、旦那のいる身で、娘も育てている。葛木の気持ちには応えられないと言い、別れの杯を交わす。
お酌お千世(若尾)葛木晋三(品川隆二)五十嵐伝吉(柳永二郎)
笠原信八郎(船越)
植木屋甚平(杉寛)蒟蒻島の阿婆(岸輝子)清葉の母(浦辺粂子)お鹿の女将(沢村貞子)腕白大将(川口浩)

   池袋から阿佐ヶ谷に行く途中、ばったり元同僚に会い、驚く。就職祝いに、渡そうと思っていたんですと、ちょっと意外なものを貰って、これは嬉しかった。50年間の人生の中で、何度も使ったことはあるが、自分のものを持つのは初めてだ。自分で所有している人は少ないだろうなあ。

   ラピュタ阿佐ヶ谷で、孤高のニッポン・モダニスト映画監督中平康
   56年日活中平康監督『牛乳屋フランキー(248)』
   長州追分駅、東京に働きに出る堺六兵衛(フランキー堺)を村人総出で見送っている。村長で、六兵衛の叔父の堺小五郎(フランキー堺)は、長州男子たるもの誉をたてるまで故郷の土を踏まない覚悟をしろと言い、六兵衛は、長州の偉人である月形半兵衛の12倍の数を付けたのだから、それだけの働きをして来いと送り出す。東京駅に六兵衛が着く、小学生の少年が、お前は堺六兵衛だろうと言う。六兵衛は、叔父の杉健一と言う人が迎えにくる筈だと答えると、死んだ父親は、六兵衛の父親の一番下の弟だったので、小学生の自分が叔父の健一だと言う。健一はタクシーを止め、北沢にある自宅に連れ帰ろうとするが、六兵衛は、宮城に寄って行きたいと言う。話が分かるなあと健一は、タクシーで向かった先は、後楽園球場だ。
  やっとの思いで、杉牛乳店に辿り着くが、六兵衛はすっかり車酔いだ。


   76年日活曽根中生監督『嗚呼!花の応援団(249)』
   大阪の南河内にある、南河内大学、略して南河大、またナンパ大とも言われ、どこにも入れない受験生が入学してくる底辺大学だ。新入生の富山一実(香田修)と北口(深見博)は、無理矢理の勧誘で、応援団に入部する。応援団は、1回生ゴミ、2回生奴隷、3回生人間、4回生神様と言われる程厳しい上下関係の中、1回生たちは、しごかれ、殴られる毎日だ。
   ある日、応援団の部室に制服をボロボロにした婦人警官の今成いくら(伊佐山ひろ子)が、怒鳴り込んでくる。3回生で親衛隊長の青田赤道(今井均)に大事に守ってきた女の操を奪われたと言う。婦人警官と青田赤道は、もつれあったまま、部室の窓の外の川に落ちていった。巻き添えを食った大団旗も、びしょ濡れだ。そこで、富山と北口は、川の土手で、大団旗の虫干しをしていると言う訳だ。
しばらく後、青田が浪花大の応援団を袋叩きにしたので、浪花大応援団の連中が殴り込みに来るとの情報が入った。団長の木村誠(坂田情児)、副団長の下村等(坂田金太郎)ら4回生は、口では勇ましいことを言うが、卑怯で軟弱だ。富山と北口は、裏門で襲撃に備えろと命じられる。夜になり、車が裏口に止まり、下りてきたのは、サングラスにマスクをし、日本刀を持った男だ。北口は一人部室に報告に行く。団員を連れ裏門に戻ると、富山は腰を抜かしている。男はトイレに行ったと聞き、団長たちが向かうと、イボ痔が痛いのネンのネンと聞き慣れた声が個室の中からする。青田赤道は、停学中だが、浪花大の殴り込みだと聞いてやってきたのだと言う。
  喧嘩は先制攻撃だと青田は、富山と北口を連れて浪花大に向かう。応援団の部室に飛び込むともぬけの殻だ。果たして、その時、南河大応援団部室は殴り込みを受けていた。ボコボコにされる幹部や団員たち。青田のお陰で、無傷だった富山と北口は今日も大団旗の虫干しだ。ふと気がつくと、河原で逢い引きする男女がいる。女はいつぞやの婦人警官、男は青田赤道だ。触らぬ神に祟りなし、二人が団旗に戻ると、土手を走るトラックからの吸い殻の投げ捨てで、団旗の真ん中が焼けて穴が開いている。応援団の命の大団旗、これがバレたら、二人の命はない。富山は近くで寝る青田のくわえ煙管を見て、青田に罪をかぶせる。青田は団長たちを前に男としてケジメを付けると、ドスで腹を刺す。苦痛に飛び上がりながら、何事かを思い付いた青田。
   浪花大に果たし状を書き、富山と北口は届けに行く。安達ヶ原では、人糞を投げたりの奇襲作戦と青田の人間離れした怪力で南河大の勝利となる。浪花大の団旗を奪い、返還する際に、争いの最中に南河大の大団旗が破けたといちゃもんをつけ、団旗の修繕費と怪我をした幹部の治療費を巻き上げる。団旗は修繕したものの、治療費は、青田と親衛隊のメンバーのアルサロ貸切代に化ける。おんな達を独占したことで、やくざがいちゃもんをつけてくる。しかし、返り討ちし、やくざを袋叩きにする青田。この事件で、青田は再び停学になる。
   南河大の野球部が、関西三部リーグの決勝戦に出ることになった。しかし、大団旗は、あまりの重さのため、青田にしか掲げられないのだ。2回生の小林(野崎英則)は、4回生たちのいじめにあっている。大量の革靴を磨かされ、1000円と手書きで書いた紙で、タバコを買いに行かされる。精神安定剤を大量に飲んだ小林は、幹部たち用のジョニ黒を3本も飲み干し高鼾で眠っているところをどやされる。河原で青田の代役を探すが、あまりの重さに次々と失敗する。小林は、自分がやると前に出たが、背骨を折ってしまう。それを見ていて、富山が手を挙げる。何とか、持ちあげることは出来たが、試合が続く限り、団旗は掲げ続けなければならないのだ。
   

0 件のコメント: